(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134058
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】研磨パッド
(51)【国際特許分類】
B24B 37/24 20120101AFI20240926BHJP
B24B 37/22 20120101ALI20240926BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
B24B37/24 A
B24B37/22
B24B37/24 C
H01L21/304 622F
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044147
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000116127
【氏名又は名称】ニッタ・デュポン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】村上 陽平
(72)【発明者】
【氏名】薄谷 美由紀
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AB04
3C158AC04
3C158CA06
3C158CB01
3C158CB10
3C158DA02
3C158DA17
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5F057AA02
5F057AA24
5F057AA25
5F057BA11
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5F057BB03
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5F057EB30
5F057FA25
(57)【要約】 (修正有)
【課題】研磨パッドを高硬度のものとすること以外で、被研磨物の外周平坦度を高めることができる研磨パッドを提供する。
【解決手段】研磨パッド10は、研磨面10aを有する研磨層1と、研磨面の反対面において研磨層に積層される下地層2とを備え、研磨面がポリウレタン樹脂発泡体の表面で構成されており、下地層の5%モジュラスの値M
Lに対する、前記研磨層の5%モジュラスの値M
Pの比(M
P/M
L)が、5以上である。下地層の5%モジュラスの値MLが1MPa以下である
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨面を有する研磨層と、前記研磨面の反対面において前記研磨層に積層される下地層とを備え、
前記研磨面がポリウレタン樹脂を含むポリウレタン樹脂発泡体の表面で構成されており、
前記下地層の5%モジュラスの値MLに対する、前記研磨層の5%モジュラスの値MPの比(MP/ML)が、5以上である
研磨パッド。
【請求項2】
前記下地層の5%モジュラスの値MLが1MPa以下である
請求項1に記載の研磨パッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨パッドに関する。より詳しくは、本発明は、被研磨物をポリッシング加工するための研磨パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコンウェハのような半導体ウェハやガラス板などの被研磨物をポリッシング加工(鏡面研磨加工)するための研磨パッドとして、ポリウレタン樹脂発泡体によって研磨面が形成された研磨パッドが知られている(例えば、下記特許文献1)。
【0003】
前記研磨パッドを用いた被研磨物のポリッシング加工は、例えば、円盤状をなすヘッドと、円盤状をなすとともに該ヘッドと対向配置される下定盤とを備えるポリッシング研磨機を用いて、以下の手順にしたがって実施される。
(1)前記ポリッシング研磨機の前記ヘッドの下面に円盤状の保持材を介して円盤状の被研磨物を貼り付けるとともに、前記ポリッシング研磨機の前記下定盤の上面に円盤状の研磨パッドを貼り付ける。
(2)前記ヘッドを下方に移動させるとともに前記下定盤を上方に移動させて、前記ヘッドの下面に貼り付けられた前記被研磨物を前記下定盤に貼り付けられた前記研磨パッドの研磨面(上面)に当接させる。
(3)前記被研磨物を前記研磨パッドに当接させた状態で、前記研磨パッドの研磨面(上面)に研磨用スラリーを供給しつつ、前記ヘッド及び前記下定盤を回転させる。これにより、前記研磨パッドによって前記被研磨物をポリッシング加工する。
【0004】
近年、前記被研磨物のポリッシング加工においては、前記被研磨物の外周部分の平坦度(以下、外周平坦度という)を高めることが、ますます求められている。
そして、例えば、下記特許文献2には、高硬度の研磨パッド(例えば、見掛け密度が0.50g/cm3以下であり、かつ、5%モジュラスが4.00MPa以上の研磨パッド)を用いることにより、前記被研磨物の外周平坦度を高めることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-274361号公報
【特許文献2】特開2007-250166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、研磨パッドを高硬度のものとすること、すなわち、研磨パッドを硬質化することには限界がある。
また、研磨パッドを高硬度のものにすればするほど、被研磨物を研磨しているときに、前記研磨パッドに破損が生じ易くなる。
このように、前記研磨パッドに破損が生じると、該研磨パッドのパッドライフが短くなるので好ましくない。
【0007】
上のような点から、高硬度とする以外で、被研磨物の外周平坦度を高めることができる研磨パッドが要望されているものの、それについての検討は、未だ十分になされているとは言い難い。
【0008】
そこで、本発明は、上記のような状況に鑑み、高硬度とする以外で、被研磨物の外周平坦度を高めることができる研磨パッドを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る研磨パッドは、
研磨面を有する研磨層と、前記研磨面の反対面において前記研磨層に積層される下地層とを備え、
前記研磨面がポリウレタン樹脂を含むポリウレタン樹脂発泡体の表面で構成されており、
前記下地層の5%モジュラスの値MLに対する、前記研磨層の5%モジュラスの値MPの比(MP/ML)が、5以上である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高硬度とする以外で、被研磨物の外周平坦度を高めることができる研磨パッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係る研磨パッドの使用状態を示す概略断面図。
【
図2】本実施形態に係る研磨パッドを示す概略断面図。
【
図3】接着剤層を介して本実施形態に係る研磨パッドを研磨機の定盤に貼り付けた状態を示す概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
なお、以下では、本発明の一実施形態を、単に、本実施形態と称することがある。
【0013】
本実施形態に係る研磨パッド10は、
図1に示したように、定盤(下定盤)100及びヘッド200を備える研磨機(ポリッシング研磨機)1000において、被研磨物20を研磨するために用いられる。
本実施形態においては、研磨機1000は、定盤100及びヘッド200に加えて、研磨スラリーを供給するためのスラリー供給部300を備えている。
また、本実施形態においては、研磨機1000のヘッド200は、被研磨物20を保持するための保持材(上定盤)200aを備えている。
本実施形態に係る研磨パッド10は、
図1に示したように、定盤100に貼り付けられた後、研磨パッド10の研磨面10aによって、ヘッド200の保持材200aに貼り付けられた被研磨物20の被研磨面20aを研磨するために用いられる。
なお、
図1では、本実施形態に係る研磨パッド10を、被研磨物20の片面を研磨するための片面研磨機に取り付ける例について説明しているが、本実施形態に係る研磨パッド10は両面研磨機に取り付けて用いられてもよい。
より具体的には、本実施形態に係る研磨パッド10は、対向配置された一対の定盤を備える両面研磨機において、前記一対の定盤のそれぞれに取り付けられて用いられてもよい。
【0014】
本実施形態に係る研磨パッド10は、
図2に示したように、研磨面10aを有する研磨層1と、研磨面10aの反対面10bにおいて研磨層1に積層される下地層2とを備えている。
なお、当然のことながら、本実施形態に係る研磨パッド10は、研磨層1の研磨面10aを露出させた状態とすべく、下地層2側が、研磨機1000の定盤100に貼り付けられる。
【0015】
本実施形態に係る研磨パッド10においては、研磨面10aは、ポリウレタン樹脂を含むポリウレタン樹脂発泡体の表面で構成されている。
本実施形態に係る研磨パッド10においては、研磨層1は、前記ポリウレタン樹脂発泡体で構成されていてもよい。
本実施形態に係る研磨パッド10においては、下地層2の5%モジュラスの値MLに対する、研磨層1の5%モジュラスの値MPの比(MP/ML)が、5以上である。
本実施形態の研磨パッド10は、前記研磨面10aと被研磨物の露出面(被研磨面20a)との間に砥粒を含んだ研磨用スラリーを介在させて前記研磨面10aと前記被研磨面20aとが摺接されることで該被研磨面20aを研磨する。
被研磨物20としては、光学材料、半導体デバイス、ハードディスク、ガラス板、シリコンウェハのような半導体ウェハなどが挙げられる。
【0016】
研磨層1の5%モジュラスの値MPは、JIS K 6251:2010に準じて、研磨層1を用いてダンベル状試験片(ダンベル1号形試験片)を作製し、該ダンベル型試験片を引張速度100mm/minで引っ張ったときの値を測定することにより求めることができる。
また、下地層2の5%モジュラスの値MLも、下地層2を用いて前記ダンベル状試験片を作製する以外は、研磨層1の場合と同様にして求めることができる。
【0017】
本実施形態に係る研磨パッド10では、下地層2の5%モジュラスの値MLに対する、研磨層1の5%モジュラスの値MPの比(MP/ML)が、5以上であることが重要である。
すなわち、下地層2の5%モジュラスの値MLが、研磨層1の5%モジュラスの値MPよりも十分に小さいことが重要である。
【0018】
ここで、5%モジュラスとは、ダンベル状試験片などの試験体のひずみεが5%のときの引張応力δ(単位はMPa)を意味するものであり、5%モジュラスの値が大きいほど、その材料は硬いという性質を示すようになり、5%モジュラスの値が小さいほど、その材料は軟らかいという性質を示すようになる。
そして、本実施形態に係る研磨パッド10では、上で説明したように、下地層2の5%モジュラスの値MLが、研磨層1の5%モジュラスの値MPよりも十分に小さくなっている。
すなわち、本実施形態に係る研磨パッド10では、研磨層1が十分な硬さを有するものとなる一方で、下地層2が十分な軟らかさを有するものとなっている。
【0019】
研磨層1にて被研磨物20を研磨しているときには、研磨層1と被研磨物20との当接部分と、研磨層1と被研磨物20との非当接部分と、の境目に応力が集中し易くなっていると考えられる。
すなわち、被研磨物20の外周部分に応力集中が生じていると考えられる。すなわち、研磨層1における被研磨物20との当接部分と、研磨層1における被研磨物20との非当接部分とには圧力ムラが生じていると考えられる。
このような状態で、研磨層1にて被研磨物20を研磨すると、被研磨物20において中心部分よりも外周部分の平坦度が劣ってしまうことがある。すなわち、被研磨物20においてエッジロールオフが生じてしまうことがある。
しかしながら、本実施形態に係る研磨パッド10では、下地層2が十分な軟らかさを有していることから、研磨層1よりも下地層2の方が先に潰れるようになる。
これにより、研磨層1における被研磨物20との当接部分と、研磨層1における被研磨物20との非当接部分とに圧力ムラが生じることを抑制することができる。
すなわち、研磨層1よりも下地層2の方が先に潰れることで、研磨層1に圧力ムラが生じることをキャンセルすることができる。
そのため、研磨層1にて被研磨物20の被研磨面20aを研磨しているときに、被研磨物20の外周部分が過度に研磨されてエッジロールオフが生じることを抑制できる。
上記により、被研磨物20の外周平坦度を高めるように、被研磨物20の被研磨面20aを十分に研磨することができる。
【0020】
本実施形態に係る研磨パッド10においては、MP/MLは、6以上であってもよいし、7以上であってもよい。
また、MP/MLの上限値は、通常、20である。
MP/MLを上記のごとき範囲とすることにより、研磨パッド10の研磨層1で被研磨物20の被研磨面20aを研磨しているときに、研磨層1における被研磨物20との当接部分と、研磨層1における被研磨物20との非当接部分とに圧力ムラが生じることをより一層抑制することができる。
すなわち、被研磨物20の外周平坦度をより一層高めることができる。
【0021】
なお、MP/MLは、研磨層1を構成する材料と下地層2を構成する材料とを適宜選択したり、研磨層1の厚さと下地層2の厚さとを適宜調整したりすることにより調整できる。
例えば、研磨層1を構成する材料として発泡樹脂(例えば、ポリウレタン樹脂など)を用い、下地層2を構成する材料として高弾性を有する材料(例えば、ゴムなど)を用いることにより調整することができる。
また、研磨層1を構成する材料と下地層2を構成する材料として同種のもの(例えば、ポリウレタン樹脂発泡体)を用いる場合には、研磨層1の厚さを下地層2の厚さよりも厚くする(例えば、研磨層1の厚さを下地層2の厚さよりも10倍以上厚くする)ことにより調整することができる。
【0022】
本実施形態に係る研磨パッド10においては、下地層2の5%モジュラスの値MLは、0.1MPa以上であってもよいし、0.2MPa以上であってもよいし、0.3MPa以上であってもよい。
また、本実施形態に係る研磨パッド10においては、下地層2の5%モジュラスの値MLは、1MPa以下であってもよいし、0.9MPa以下であってもよいし、0.8MPa以下であってもよいし、0.7MPa以下であってもよい。
下地層2の5%モジュラスの値MLを上記のごとき範囲とすることにより、研磨パッド10の研磨層1で被研磨物20の被研磨面20aを研磨しているときに、研磨層1における被研磨物20との当接部分と、研磨層1における被研磨物20との非当接部分とに圧力ムラが生じることをより十分に抑制することができる。
【0023】
本実施形態に係る研磨パッド10においては、研磨層1の5%モジュラスの値MPは、1MPa以上であってもよいし、2MPa以上であってもよいし、3MPa以上であってもよい。
また、本実施形態に係る研磨パッド10においては、研磨層1の5%モジュラスの値MPは、10MPa以下であってもよいし、8MPa以下であってもよいし、7MPa以下であってもよいし、5MPa以下であってもよい。
研磨層1の5%モジュラスの値MPが上記のごとき範囲とすることにより、研磨層1を被研磨物20の被研磨面20aを研磨するのにより十分な硬さを有するものとすることができる。
【0024】
本実施形態に係る研磨パッド10においては、研磨層1の厚さT1は、0.1mm以上であってもよいし、0.2mm以上であってもよいし、0.5mm以上であってもよいし、0.8mm以上であってもよいし、1.0mm以上であってもよい。
研磨層1の厚さT1の上限値は、通常、5.0mmである。
【0025】
本実施形態に係る研磨パッド10においては、下地層2の厚さT2は、0.01mm以上であってもよいし、0.02mm以上であってもよいし、0.05mm以上であってもよいし、0.07mm以上であってもよい。
下地層2の厚さT2は、1mm以下であってもよいし、0.8mm以下であってもよいし、0.5mm以下であってもよいし、0.2mm以下であってもよいし、0.1mm以下であってもよい。
【0026】
本実施形態に係る研磨パッド10においては、研磨層1の厚さT1が下地層2の厚さT2よりも厚いことが好ましい。
本実施形態に係る研磨パッド10においては、研磨層1の厚さT1に対する下地層2の厚さT2の比(T2/T1)は、0.03以上であってもよいし、0.05以上であってもよいし、0.07以上であってもよい。
T2/T1は、0.5以下であってもよいし、0.2以下であってもよいし、0.1以下であってもよい。
【0027】
前記ポリウレタン樹脂発泡体に含まれるポリウレタン樹脂は、一般的な研磨パッドに用いられているものと同様のものを採用することができる。
ポリウレタン樹脂は、ポリイソシアネート化合物(例えば、分子鎖の両末端にイソシアネート基を有するプレポリマー)と硬化剤とを含む。
即ち、本実施形態に係るポリウレタン樹脂発泡体は、前記ポリイソシアネート化合物と前記硬化剤とを含む液状の混和物を調製し、該混和物に気泡を含有させて硬化させることによって調製される。
【0028】
本実施形態のポリイソシアネート化合物としては、例えば、構成単位として1又は2種以上のポリオールと1又は2種以上のポリイソシアネートとを含み、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーが挙げられる。
本実施形態のポリイソシアネート化合物は、複数のウレタンプレポリマーの混合物であってもよく、後段において示すようなポリイソシアネートの1又は2種以上であってもよい。
本実施形態のポリイソシアネート化合物は、1又は2種以上のウレタンプレポリマーと1又は2種以上のポリイソシアネートとの混合物であってもよい。
【0029】
前記ポリオールとしては、例えば、1,4-ベンゼンジメタノール、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンなどの芳香族ポリオール;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール等の脂肪族ポリオール;1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、水添加ビスフェノールA等の脂環族ポリオール;グリセリン、トリメチロールプロパン、トリブチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多官能ポリオールなどが挙げられる。
【0030】
前記ポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエステルポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどのポリオールポリマーであってもよい。
ポリオールポリマーとしては、ヒドロキシ基を分子中に3以上有する多官能ポリオールポリマーであってもよい。
【0031】
前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、ポリエチレンアジペートグリコール、ポリブチレンアジペートグリコール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリヘキサメチレンアジペートグリコールなどが挙げられる。
【0032】
前記ポリエステルポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリカプロラクトンポリオールなどのポリエステルグリコールとアルキレンカーボネートとの反応生成物が挙げられ、また、エチレンカーボネートを多価アルコールと反応させて得られた反応生成物をさらに有機ジカルボン酸と反応させた反応生成物も挙げられる。
【0033】
前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレンオキサイド付加ポリプロピレンポリオールなどが挙げられる。
【0034】
前記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリテトラメチレンエーテルグリコールなどのジオールと、ホスゲン、ジアリルカーボネート(例えばジフェニルカーボネート)又は環式カーボネート(例えばプロピレンカーボネート)との反応生成物などが挙げられる。
【0035】
前記ポリイソシアネートは、例えば、芳香族イソシアネート、脂肪族イソシアネート、脂環族イソシアネートなどが挙げられる。
【0036】
前記芳香族イソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネートが挙げられる。
また、前記芳香族イソシアネートとしては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)の変性物なども挙げられる。
【0037】
ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)の変性物としては、例えば、カルボジイミド変性物、ウレタン変性物、アロファネート変性物、ウレア変性物、ビューレット変性物、イソシアヌレート変性物、オキサゾリドン変性物等が挙げられる。斯かる変性物としては、具体的には、例えば、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート(カルボジイミド変性MDI)が挙げられる。
【0038】
前記脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、エチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)などが挙げられる。
【0039】
前記脂環族ジイソシアネートとしては、例えば、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、メチレンビス(4,1-シクロヘキシレン)=ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0040】
本実施形態での前記硬化剤は、例えば、ポリアミンが挙げられる。
なお、前記ポリアミンは、活性水素としてアミノ基を有する。すなわち、前記ポリアミンは、活性水素含有化合物である。
【0041】
前記ポリアミンとしては、例えば、4,4’-メチレンビス(2-クロロアニリン)(MOCA)、4,4’-メチレンジアニリン、トリメチレンビス(4-アミノベンゾアート)、2-メチル-4,6-ビス(メチルチオ)ベンゼン-1,3-ジアミン、2-メチル-4,6-ビス(メチルチオ)-1,5-ベンゼンジアミン、2,6-ジクロロ-p-フェニレンジアミン、4,4’-メチレンビス(2,3-ジクロロアニリン)、3,5-ビス(メチルチオ)-2,4-トルエンジアミン、3,5-ビス(メチルチオ)-2,6-トルエンジアミン、3,5-ジエチルトルエン-2,4-ジアミン、3,5-ジエチルトルエン-2,6-ジアミン、トリメチレングリコール-ジ-p-アミノベンゾエート、1,2-ビス(2-アミノフェニルチオ)エタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチル-5,5’-ジメチルジフェニルメタンなどが挙げられる。
【0042】
前記硬化剤は、前記ポリオールであってもよい。
なお、前記ポリオールは、活性水素として水酸基を有する。すなわち、前記ポリオールも、活性水素含有化合物である。
また、前記硬化剤は、前記ポリオールと前記ポリアミンとの混合物であってもよい。
【0043】
前記ポリウレタン樹脂を発泡状態にするための発泡剤としては、水が用いられてもよい。
前記発泡剤として水を用いる場合、該水の添加量を調整することにより、前記ポリウレタン樹脂発泡体の見掛け密度の値を調整できる。
また、前記ポリウレタン樹脂発泡体の見掛け密度の値は、ポリウレタン樹脂において、ポリイソシアネート化合物の末端に存在するイソシアネート基に対する、硬化剤の活性水素基の当量比であるR値(活性水素/NCO)を調整することによっても調整できる。
【0044】
前記ポリウレタン樹脂発泡体は、ポリイソシアネート化合物と硬化剤との反応を促進する触媒や気泡の形成を制御する整泡剤を含んでいてもよい。
【0045】
前記ポリウレタン樹脂発泡体が前記触媒を含んでいる場合、その触媒としては、例えば、N,N-ジメチルアミノエチルエーテル、トリエチレンジアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N-メチルイミダゾールなどのアミン系触媒やジオクチルチンジラウレート等の有機金属系触媒などが挙げられる。
前記触媒は、1種単独で用いられても2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0046】
前記ポリウレタン樹脂発泡体が前記触媒を含んでいる場合、前記ポリウレタン樹脂発泡体での前記触媒の含有量は、気泡の大きさや数を所望の状態に調整することが容易となる点において、ポリイソシアネート化合物100質量部に対して0.03質量部以上0.1質量部以下とすることが好ましい。
前記触媒の含有量は、0.05質量部以上0.1質量部以下であることがより好ましい。
【0047】
本実施形態において用いられる前記整泡剤としては、例えば、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、イオン性界面活性剤などが挙げられる。
【0048】
前記ポリウレタン樹脂発泡体での前記整泡剤の含有量は、その効果をより確実に発揮させる上において、ポリイソシアネート化合物100質量部に対して1質量部以上10質量部以下とすることが好ましい。
【0049】
本実施形態に係る研磨パッド10において、研磨層1がポリウレタン樹脂発泡体で構成されている場合、研磨層1は、例えば、以下のようにして製造される。
【0050】
本実施形態に係る研磨層1の製造方法では、末端基としてイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、整泡剤(例えば、前記シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、イオン性界面活性剤など)とを混合することにより、空気が気泡として分散した分散液を得る。
そして、前記分散液と、活性水素含有化合物(例えば、前記ポリアミンや前記ポリオールなど)たる硬化剤とを混合して、前記ウレタンプレポリマーを重合させることにより、ポリウレタン樹脂発泡体で構成された研磨層1を得ることができる。
本実施形態に係る研磨層1の製造方法において、前記ウレタンプレポリマーと前記整泡剤との混合、及び、前記分散液と前記硬化剤との混合は、ミキシングヘッドなどを用いて実施することができる。
また、本実施形態に係る研磨層1の製造方法において、前記ウレタンプレポリマーと前記整泡剤との混合性を高めるためや、前記ウレタンプレポリマーの重合性を高めるために、加熱しながら混合を実施してもよい。
【0051】
本実施形態に係る研磨パッド10では、下地層2は、ポリウレタン樹脂、ブタジエンゴム、イソプレンゴムなどのエラストマーを材料として作製することができる。
また、下地層2は、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂などの樹脂を材料としても作製することができる。
【0052】
なお、本実施形態に係る研磨パッド10は、研磨層1に下地層2を貼り合わせることにより得ることができる。
研磨層1への下地層2の貼り合わせは、各種公知の方法で実施することができる。
各種公知の方法としては、研磨層1と下地層2との間に粘着剤や接着剤を介在させて貼り合わせる方法、研磨層1と下地層2との積層体を得た後、該積層体を厚さ方向にプレスして貼り合わせる方法、前記積層体に超音波処理を施して貼り合わせる方法などが挙げられる。
【0053】
本実施形態に係る研磨パッドで研磨する被研磨物としては、先に説明したように、光学材料、半導体デバイス、ハードディスク、ガラス板、シリコンウェハなどの半導体ウェハなどが挙げられる。
また、本実施形態に係る研磨パッドは、シリコンウェハなどの半導体ウェハやガラス板の研磨に好適に用いられる。
さらに、本実施形態に係る研磨パッドは、被研磨物の被研磨面に鏡面仕上げを施すためのポリッシング加工(鏡面研磨加工)に好適に用いられる。
【0054】
上で説明したように、本実施形態に係る研磨パッド10は、研磨機1000の定盤(下定盤)100に貼り付けられて用いられる。
本実施形態に係る研磨パッド10は、
図3に示したように、接着剤層3を介して、定盤100に貼り付けられてもよい。
接着剤層3としては、例えば、両面テープが挙げられる。
前記両面テープは、基材と、該基材の両面のそれぞれに積層される粘着剤層と、を備えている。
前記基材としては、例えば、樹脂フィルムが用いられる。
前記樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが挙げられる。
前記粘着剤層としては、アクリル系ポリマーを含む粘着剤層(アクリル系の粘着剤層)が挙げられる。
【0055】
接着剤層3の厚さは、0.05mm以上であってもよいし、0.08mm以上であってもよいし、0.10mm以上であってもよい。
また、接着剤層3の厚さは、0.50mm以下であってもよいし、0.30mm以下であってもよいし、0.15mm以下であってもよい。
なお、接着剤層3が前記両面テープの場合には、接着剤層3の厚さとは、基材の厚さと基材の両面のそれぞれに積層された粘着剤層の厚さ(2層分)との合算値を意味する。
【0056】
本明細書によって開示される事項は、以下のものを含む。
【0057】
(1)
研磨面を有する研磨層と、前記研磨面の反対面において前記研磨層に積層される下地層とを備え、
前記研磨面がポリウレタン樹脂を含むポリウレタン樹脂発泡体の表面で構成されており、
前記下地層の5%モジュラスの値MLに対する、前記研磨層の5%モジュラスの値MPの比(MP/ML)が、5以上である
研磨パッド。
【0058】
斯かる構成によれば、前記下地層の5%モジュラスの値MLを前記研磨層の5%モジュラスの値MPよりも十分に小さくすることができる。
これにより、前記研磨層を十分な硬さを有するものとした上で、前記下地層を十分な軟らかさを有するものとすることができる。
そのため、前記研磨層で被研磨物を研磨しているときに、前記研磨層よりも前記下地層の方が先に潰れるようになる。
その結果、前記研磨層における前記被研磨物との当接部分と、前記研磨層における前記被研磨物との非当接部分とに圧力ムラが生じることを抑制することができる。
そのため、前記研磨層にて前記被研磨物の被研磨面を研磨しているときに、前記被研磨物の外周部分が過度に研磨されてエッジロールオフが生じることを抑制でいる。
これにより、前記被研磨物の外周平坦度を高めるように、前記被研磨物の被研磨面を十分に研磨することができる。
【0059】
(2)
前記下地層の5%モジュラスの値MLが1MPa以下である
上記(1)に記載の研磨パッド。
【0060】
斯かる構成によれば、前記研磨パッド研磨層で前記被研磨物の前記被研磨面を研磨しているときに、前記研磨層における前記被研磨物との当接部分と、前記研磨層における前記被研磨物との非当接部分とに圧力ムラが生じることをより十分に抑制することができる。
記被研磨物の外周平坦度をより一層高めるように、前記被研磨物の被研磨面を十分に研磨することができる。
【0061】
なお、本発明に係る研磨パッドは、上記実施形態に限定されるものではない。また、本発明に係る研磨パッドは、上記した作用効果によって限定されるものでもない。さらに、本発明に係る研磨パッドは、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【実施例0062】
次に、実施例、及び、比較例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。以下の実施例は本発明をさらに詳しく説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0063】
(実施例1)
[研磨層]
第1ポリウレタン樹脂発泡体で構成された研磨層Aを準備した。
なお、研磨層Aの厚さは、1.00mmであった。
【0064】
[下地層]
下地層として、第1ポリウレタンフィルムを準備した。なお、以下では、実施例1に係る下地層を下地層βと称する。
なお、下地層βの厚さは、0.07mmであった。
【0065】
[研磨パッド]
研磨層Aと下地層βとを貼り合わせることにより、実施例1に係る研磨パッドを得た。
研磨層Aと下地層βとの貼り合わせは、研磨層Aと下地層βとを積層させた積層体を得た後、該積層体を厚さ方向にプレスすることにより実施した。
【0066】
(実施例2)
[研磨層]
実施例1と同様に研磨層Aを用いた。
【0067】
[下地層]
下地層として、前記第1ポリウレタンフィルムとは異なる第2ポリウレタンフィルムを準備した。なお、以下では、実施例2に係る下地層を下地層γと称する。
なお、下地層γの厚さは、0.07mmであった。
【0068】
[研磨パッド]
実施例1と同様にして、研磨層Aと下地層γとを貼り合わせることにより、実施例2に係る研磨パッドを得た。
【0069】
(比較例1)
実施例1と同様に研磨層として研磨層Aを用い、下地層を用いずに、比較例1に係る研磨パッドを得た。
すなわち、比較例1に係る研磨パッドは、研磨層Aのみを備えるものであった。
【0070】
(比較例2)
[研磨層]
前記第1ポリウレタン樹脂発泡体となる異なる第2ポリウレタン樹脂発泡体で構成された研磨層Bを準備した。
なお、研磨層Bの厚さは、1.00mmであった。
【0071】
[下地層]
下地層として、不織布に樹脂を含浸させて作製された研磨パッド(ニッタ・デュポン社製の商品名「SUBA(登録商標)400」)を準備した。なお、以下では、比較例2に係る下地層を下地層αと称する。
なお、下地層αの厚さは、1.30mmであった。
【0072】
[研磨パッド]
実施例1と同様にして、研磨層Bと下地層αとを貼り合わせることにより、比較例2に係る研磨パッドを得た。
【0073】
各例に係る研磨パッドの構成を以下の表1に示した。
【0074】
【0075】
(5%モジュラス)
各例に係る研磨パッドについて、研磨層の5%モジュラスの値MP、及び、下地層の5%モジュラスの値MLを測定した。
研磨層の5%モジュラスの値MP、及び、下地層の5%モジュラスの値MLは、先に説明した方法にしたがって測定した。
その測定結果を上の表1に示した。
また、各例に係る研磨パッドについて、下地層の5%モジュラスの値MLに対する、研磨層の5%モジュラスの値MPの比(MP/ML)を算出した結果についても、上の表1に示した。
【0076】
(圧縮変位量)
各例に係る研磨パッドについて繰り返し圧縮をした後の圧縮変位量を測定した。
繰り返し圧縮は、面積が1cm2の円形板を用いて実施した。
具体的には、前記繰り返し圧縮は、周波数1.0Hzの条件で、前記円形板によって加える荷重を10gfと200gfとの間で行き来させるようにして実施した。
そして、圧縮変位量としては、繰り返し圧縮前の研磨パッドの厚さに対する、繰り返し圧縮を2000回実施した後の研磨パッドの厚さの変位量を求めた。
その結果を上の表1に示した。
【0077】
(研磨試験)
各例に係る研磨パッドを用いて、下記の研磨条件で被研磨物の研磨を実施した。
・被研磨物:Etched wafer(厚さ約790μm)
・研磨機:DSM 20B-5P-4D(Speed FAM社製)
・スラリーのタイプ:Nanopure(登録商標) NP6610(砥粒としてコロイダルシリカを含有。ニッタ・デュポン社製)
・スラリーの流量:5L/min
・評価機:ナノメトロ300TT-A
なお、前記被研磨物である「Etched wafer」は円盤形状を有するものであった。
【0078】
なお、研磨試験においては、前記評価機を用いて、各例に係る研磨パッドを用いて前記被研磨物を研磨したときの外周平坦度を測定した。
具体的には、外周平坦度の測定は、前記被研磨物の外周部において、指定した範囲にある放射状データ列の平均データ列についてのPV値(Peak to Valley)を算出することにより実施した。
前記PV値は、対象となる放射状データ列の解析範囲内におけるベストフィット後のデータ列に対して算出した。
その結果について、上の表1に示した。
なお、上の表1では、実施例1の外周平坦度を1.00として、実施例2、比較例1、及び、比較例2については、実施例1の外周平坦度に対する相対値を示している。
すなわち、実施例2、比較例1、及び、比較例2については、外周平坦度の値が1.00よりも大きくなればなるほど、外周平坦度に劣る結果となることを意味する。
【0079】
表1より、各実施例に係る研磨パッドを用いて被研磨物を研磨した場合、該被研磨物では外周平坦度は小さい値を示していることが分かる。すなわち、外周平坦度が十分に高められていることが分かる。
これに対し、各比較例に係る研磨パッドを用いて被研磨物を研磨した場合、該被研磨物では外周平坦度は大きな値を示すようになることが分かる。すなわち、外周平坦度が十分に高められていないことが分かる。
この結果から、下地層の5%モジュラスの値MLに対する、研磨層の5%モジュラスの値MPの比(MP/ML)を5以上とすることにより、被研磨物の外周平坦度を十分に高めることができることが把握される。
1 研磨層、2 下地層、3 接着剤層、10 研磨パッド、20 被研磨物、100 定盤、200 ヘッド、300 スラリー供給部、1000 研磨機、
10a 研磨面、20a 被研磨面、200a 保持材。