(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134059
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】影響予測システム、影響予測方法及び影響予測プログラム
(51)【国際特許分類】
G01T 1/16 20060101AFI20240926BHJP
G01W 1/00 20060101ALI20240926BHJP
G01W 1/02 20060101ALI20240926BHJP
G01T 1/17 20060101ALN20240926BHJP
【FI】
G01T1/16 A
G01W1/00 Z
G01W1/02 Z
G01T1/17 D
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044148
(22)【出願日】2023-03-20
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】592131906
【氏名又は名称】みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】鋤田 大日
(72)【発明者】
【氏名】重信 薫
(72)【発明者】
【氏名】相澤 祐一
(72)【発明者】
【氏名】笠間 俊夫
【テーマコード(参考)】
2G188
【Fターム(参考)】
2G188BB02
2G188BB04
2G188GG08
2G188GG09
(57)【要約】
【課題】放射線の影響を効率的かつ的確に予測するための影響予測システム、影響予測方法及び影響予測プログラムを提供する。
【解決手段】支援サーバ20は、放射線を発生する放射線源状況を取得する制御部21を備える。そして、制御部21が、放射線源状況を取得し、放射線源状況に対応した放射線源に対する管理対象物の位置関係を取得し、放射線源状況に対応した管理対象物の障害発生履歴を取得する。更に、制御部21は、放射線源状況、位置関係、障害発生履歴を組み合わせたデータセットを用いて、放射線源状況と管理対象物の配置とから、管理対象物の障害発生を予測する予測モデルを生成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を発生する放射線源状況を取得する制御部を備えた影響予測システムであって、
前記制御部が、
放射線源状況を取得し、
前記放射線源状況に対応した放射線源に対する管理対象物の位置関係を取得し、
前記放射線源状況に対応した前記管理対象物の障害発生履歴を取得し、
前記放射線源状況、前記位置関係、前記障害発生履歴を組み合わせたデータセットを用いて、前記放射線源状況と前記管理対象物の配置とから、前記管理対象物の障害発生を予測する予測モデルを生成することを特徴とする影響予測システム。
【請求項2】
前記制御部が、
将来時点の放射線を発生する放射線源状況を予測し、
前記将来時点の前記放射線源と前記管理対象物との位置関係を予測し、
前記将来時点の放射線源状況、前記位置関係を前記予測モデルに入力して、前記管理対象物の障害発生を予測することを特徴とする請求項1に記載の影響予測システム。
【請求項3】
前記データセットには、前記管理対象物の累積被曝量を更に含めることを特徴とする請求項1又は2に記載の影響予測システム。
【請求項4】
前記データセットには、前記管理対象物の仕様を更に含めることを特徴とする請求項1又は2に記載の影響予測システム。
【請求項5】
前記データセットには、前記管理対象物の環境状況を更に含めることを特徴とする請求項1又は2に記載の影響予測システム。
【請求項6】
放射線を発生する放射線源状況を取得する制御部を備えた影響予測システムを用いて、前記放射線源状況から障害発生状況を予測する方法であって、
前記制御部が、
放射線源状況を取得し、
前記放射線源状況に対応した放射線源に対する管理対象物の位置関係を取得し、
前記放射線源状況に対応した前記管理対象物の障害発生履歴を取得し、
前記放射線源状況、前記位置関係、前記障害発生履歴を組み合わせたデータセットを用いて、前記放射線源状況と前記管理対象物の配置とから、前記管理対象物の障害発生を予測する予測モデルを生成することを特徴とする影響予測方法。
【請求項7】
放射線を発生する放射線源状況を取得する制御部を備えた影響予測システムを用いて、前記放射線源状況から障害発生状況を予測するためのプログラムであって、
前記制御部を、
放射線源状況を取得し、
前記放射線源状況に対応した放射線源に対する管理対象物の位置関係を取得し、
前記放射線源状況に対応した前記管理対象物の障害発生履歴を取得し、
前記放射線源状況、前記位置関係、前記障害発生履歴を組み合わせたデータセットを用いて、前記放射線源状況と前記管理対象物の配置とから、前記管理対象物の障害発生を予測する予測モデルを生成する手段として機能させるための影響予測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、放射線の影響を予測する影響予測システム、影響予測方法及び影響予測プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
環境には多様な放射線源がある。例えば、太陽の表面で「太陽フレア」という現象が発生すると、X線、ガンマ線、高エネルギー荷電粒子の放出が生じる。また、太陽コロナ中の物質が放出されるコロナ質量放出(CME)が発生することもある。高エネルギー荷電粒子が地球に到達すると、磁気嵐、オーロラ発生、デリンジャー現象(通信障害)等が生じることがある。このような現象が生じると、地球上や人工衛星等に大きな被害を及ぼす可能性がある。
【0003】
そして、荷電粒子による宇宙環境の変動は「宇宙天気」と呼ばれている。また、宇宙天気を予測することを「宇宙天気予報」と呼ぶ。太陽や太陽風の観測結果から宇宙天気を予測する宇宙天気影響予測システムも検討されている(例えば、特許文献1)。この文献に記載された技術では、時刻tmにおいて観測された太陽の全球観測画像の2次元ウェーブレット変換後に、各波長の成分すべての和を取ることにより、n次元の特徴ベクトルを得る(第1のステップ)。次に、時刻tmにおける特徴ベクトルから、時刻tmから時刻tm+kまでに観測された宇宙天気予報対象への写像を機械学習する(第2のステップ)。そして、多数の時刻において、第1のステップと第2のステップを行なう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
放射線は、人工衛星のみならず、各種施設や設備に影響を与える。従って、宇宙天気を予測したとしても、各種設備に対する影響は様々である。また、この影響は、設備の種類や場所によって異なるため、予測が困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する影響予測システムは、放射線を発生する放射線源状況を取得する制御部を備える。前記制御部が、放射線源状況を取得し、前記放射線源状況に対応した放射線源に対する管理対象物の位置関係を取得し、前記放射線源状況に対応した前記管理対象物の障害発生履歴を取得し、前記放射線源状況、前記位置関係、前記障害発生履歴を組み合わせたデータセットを用いて、前記放射線源状況と前記管理対象物の配置とから、前記管理対象物の障害発生を予測する予測モデルを生成する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、放射線の影響を効率的かつ的確に予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態の影響予測システムの説明図である。
【
図3】実施形態のハードウェア構成の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1~
図4に従って、影響予測システム、影響予測方法及び影響予測プログラムを具体化した実施形態を説明する。本実施形態では、
図2に示すように、放射線源として太陽40から放出される放射線の影響を評価する。この場合、地球50の軌道51上を移動する人工衛星52を、放射線の影響を受ける管理対象物として想定する。
【0010】
図1に示すように、放射線の影響を予測するための影響予測システムは、計測装置10、ユーザ端末15、支援サーバ20、管理対象装置30を備える。
【0011】
(ハードウェア構成例)
図3は、計測装置10、ユーザ端末15、支援サーバ20、管理対象装置30等として機能する情報処理装置H10のハードウェア構成例である。
情報処理装置H10は、通信装置H11、入力装置H12、表示装置H13、記憶装置H14、プロセッサH15を有する。なお、このハードウェア構成は一例であり、他のハードウェアを有していてもよい。
【0012】
通信装置H11は、他の装置との間で通信経路を確立して、データの送受信を実行するインタフェースであり、例えばネットワークインタフェースや無線インタフェース等である。
【0013】
入力装置H12は、利用者等からの入力を受け付ける装置であり、例えばマウスやキーボード等である。表示装置H13は、各種情報を表示するディスプレイやタッチパネル等である。
【0014】
記憶装置H14は、計測装置10、ユーザ端末15、支援サーバ20、管理対象装置30の各種機能を実行するためのデータや各種プログラムを格納する記憶装置である。記憶装置H14の一例としては、ROM、RAM、ハードディスク等がある。
【0015】
プロセッサH15は、記憶装置H14に記憶されるプログラムやデータを用いて、計測装置10、ユーザ端末15、支援サーバ20、管理対象装置30における各処理(例えば、後述する制御部21における処理)を制御する。プロセッサH15の一例としては、例えばCPUやMPU等がある。このプロセッサH15は、ROM等に記憶されるプログラムをRAMに展開して、各種処理に対応する各種プロセスを実行する。例えば、プロセッサH15は、計測装置10、ユーザ端末15、支援サーバ20、管理対象装置30のアプリケーションプログラムが起動された場合、後述する各処理を実行するプロセスを動作させる。
【0016】
プロセッサH15は、自身が実行するすべての処理についてソフトウェア処理を行なうものに限られない。例えば、プロセッサH15は、自身が実行する処理の少なくとも一部についてハードウェア処理を行なう専用のハードウェア回路(例えば、特定用途向け集積回路:ASIC)を備えてもよい。すなわち、プロセッサH15は、以下で構成し得る。
【0017】
(1)コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ
(2)各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する1つ以上の専用のハードウェア回路、或いは
(3)それらの組み合わせ、を含む回路(circuitry)
プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリを含み、メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【0018】
(各情報処理装置の機能)
図1を用いて、計測装置10、ユーザ端末15、支援サーバ20、管理対象装置30の機能を説明する。
【0019】
計測装置10は、放射線源の状況や、放射線の影響を受ける範囲の環境を観測するコンピュータシステムである。本実施形態では、放射線源として太陽を想定する。この太陽からは、放射線として、高い運動エネルギーを持つ粒子線や電磁放射線が放出される。この放射線は、太陽の表面で起きる爆発(太陽フレア)等により生じる。
太陽フレアを観測する計測装置10としては、太陽フレア望遠鏡や太陽観測衛星等を用いることができる。
また、放射線の影響を受ける範囲の環境を観測する計測装置10としては、地磁気観測装置、気象観測装置等を用いることができる。
【0020】
ユーザ端末15は、本システムを利用するユーザが用いるコンピュータ端末である。
【0021】
支援サーバ20は、放射線の影響を予測するコンピュータシステムである。この支援サーバ20は、制御部21、観測情報記憶部22、管理対象情報記憶部23、教師情報記憶部24、学習結果記憶部25を備えている。
【0022】
制御部21は、後述する処理(管理段階、学習段階、予測段階等を含む処理)を行なう。このための影響予測プログラムを実行することにより、制御部21は、管理部211、学習部212、予測部213等として機能する。
【0023】
管理部211は、放射線の影響を予測するための情報を取得する処理を実行する。
学習部212は、影響を予測するための予測モデルを生成する処理を実行する。
予測部213は、予測モデルを用いて、影響を予測する処理を実行する。
【0024】
観測情報記憶部22には、放射線源の観測情報が記録される。この観測情報は、放射線源を観測した場合に記録される。観測情報には、計測装置識別子、観測日時、発生位置、観測位置、放射線源状況、放射線発生状況に関するデータが記録される。
【0025】
計測装置識別子は、放射線源を観測した計測装置10を特定するための識別子である。
観測日時は、放射線源を観測した年月日及び時刻である。
発生位置は、観測した放射線源の位置座標である。例えば、太陽フレアを計測した場合、太陽の所在位置の座標を用いる。
観測位置は、放射線源を観測した計測装置10の位置座標である。太陽フレアの場合、太陽観測衛星の所在位置の座標を用いる。
【0026】
放射線源状況は、放射線源の発生状況である。例えば、太陽表面で生じた現象(フレア発生)について、太陽の表面上の座標やフレアの規模等を用いる。
放射線発生状況は、放射線源から受けた放射線の計測装置10における観測状況である。例えば、計測装置10において、太陽フレアによって生じた放射線の計測日時、放射線量等を用いる。
【0027】
管理対象情報記憶部23は、放射線によって影響を受ける機器や設備等の構造体(管理対象物)に関する管理対象情報が記録される。この管理対象情報は、管理対象物が登録され、障害が生じた場合に記録される。管理対象情報には、基本情報、所在情報、障害発生履歴情報、累積被曝量が含まれる。
【0028】
基本情報には、管理対象ID、管理対象物の種別、仕様等に関する情報が含まれる。
管理対象IDは、管理対象物を特定するための識別子である。
管理対象物の種別は、管理対象物の機器や設備等の構造体の種類である。本実施形態では、管理対象物として人工衛星を想定する。
仕様は、構造体の形状、構造、寸法、構成材料、機能、性能等に関する内容である。
【0029】
所在情報には、管理対象物の所在位置を特定するための情報が含まれる。この所在情報を用いることにより、特定の年月日及び時刻に対して、管理対象物の所在位置を特定することができる。例えば、放射線源が太陽の場合、惑星上の構造体に関しては、年月日及び時刻において太陽に対して惑星の位置及び惑星上の構造体が配置された高度や位置を特定するための情報である。
【0030】
障害発生履歴情報には、障害発生日時、障害内容等に関する情報が含まれる。
障害発生日時は、管理対象物に障害が生じた年月日及び時刻である。
障害内容は、この管理対象物に生じた障害種別や障害規模等である。
累積被曝量は、この管理対象物が、放射線源から受けた放射線の被曝量の累積値(トータルドーズ)である。この累積被曝量によって、管理対象物の構成要素(部品等)の機能の劣化が生じる。この累積被曝量は、構成要素の新設時や更改時からの累積値を用いる。この累積被曝量は、管理対象物に備えられたセンサを用いて、放射線量を計測する。また、計測装置10で計測した過去の放射線源状況から、計測装置10と管理対象物との位置関係に応じて、累積被曝量を予測してもよい。
【0031】
教師情報記憶部24には、学習に用いる教師情報が記録される。この教師情報は、教師情報の作成処理が行なわれた場合に記録される。教師情報には、放射線源状況、累積被曝量、位置関係、障害発生状況を組み合わせたデータセットが記録される。
【0032】
放射線源状況は、放射線源の発生状況である。
累積被曝量は、この管理対象物が、放射線源から受けた放射線の被曝量の累積値である。
位置関係は、放射線源と管理対象物との相対位置関係である。相対位置関係としては、距離や、放射線源と管理対象物との間の状況(地球や磁場等の障害物の存在)等である。
障害発生状況は、管理対象物に生じた障害の内容である。
【0033】
学習結果記憶部25には、障害の発生を予測するための予測モデルが記録される。この予測モデルは、学習処理が実行されることにより予測モデルが生成された時に記録される。予測モデルは、放射線源の位置、放射線源状況、管理対象物の位置の入力に対して、障害発生を予測するモデルである。
【0034】
管理対象装置30は、放射線の影響を受ける構造体である。例えば、管理対象装置30として、人工衛星を想定する。
【0035】
(予測処理)
次に、
図4を用いて、予測処理を説明する。本実施形態では、太陽フレアによる人工衛星への影響を予測する。
まず、支援サーバ20の制御部21は、太陽のフレア履歴の取得処理を実行する(ステップS11)。具体的には、制御部21の管理部211は、観測情報記憶部22から、所定期間の太陽フレアの発生について観測情報を取得する。
【0036】
そして、支援サーバ20の制御部21は、太陽フレアの発生毎、管理対象物毎に、以下の処理を繰り返す。
ここでは、支援サーバ20の制御部21は、管理対象物の配置履歴の取得処理を実行する(ステップS12)。具体的には、制御部21の管理部211は、管理対象情報記憶部23を用いて、太陽フレアの発生時から影響期間内の管理対象物の位置を特定する。ここでは、影響期間として、放射線源の位置と管理対象物の位置との距離に応じて、放射線源から管理対象物に放射線の到達所要時間以降の所定期間を用いる。例えば、高エネルギー粒子は、30分~10数時間で、地球に到達する。フレアX線放射は、8分で地球に到達する。太陽風擾乱は、1~3日程度で地球に到達する。
【0037】
次に、支援サーバ20の制御部21は、管理対象物の被曝履歴の取得処理を実行する(ステップS13)。具体的には、制御部21の管理部211は、管理対象情報記憶部23から、管理対象物の累積被曝量を取得する。
【0038】
次に、支援サーバ20の制御部21は、管理対象物の障害履歴の取得処理を実行する(ステップS14)。具体的には、制御部21の管理部211は、管理対象情報記憶部23を用いて、太陽フレアの発生時から影響期間内に生じた障害の有無を特定する。ここで、障害が発生している場合には、障害内容を障害発生状況として特定する。なお、障害が発生していない場合には、障害発生がないことを示す情報を障害発生状況として特定する。
【0039】
次に、支援サーバ20の制御部21は、教師情報の生成処理を実行する(ステップS15)。具体的には、制御部21の学習部212は、放射線源状況、累積被曝量、位置関係、障害発生状況を組み合わせたデータセットを教師情報として、教師情報記憶部24に記録する。
支援サーバ20の制御部21は、以上の処理を、すべての管理対象物、すべての太陽フレアの発生について終了するまで繰り返す。
【0040】
次に、支援サーバ20の制御部21は、障害発生の予測モデルの生成処理を実行する(ステップS16)。具体的には、制御部21の学習部212は、教師情報記憶部24に記録された教師情報を用いて、機械学習により、放射線源状況、累積被曝量、位置関係から障害発生状況を予測する予測モデルを生成し、学習結果記憶部25に記録する。この機械学習には、深層学習等を用いることができる。
【0041】
そして、支援サーバ20の制御部21は、太陽のフレア予測処理を実行する(ステップS21)。具体的には、制御部21の管理部211は、特許文献1等に記載された技術を用いて、太陽フレアの発生予測情報を取得する。この発生予測情報には、発生予測日時、放射線源状況が含まれる。
【0042】
次に、支援サーバ20の制御部21は、障害発生の予測処理を実行する(ステップS22)。具体的には、制御部21の予測部213は、管理対象情報記憶部23の所在情報を用いて、発生予測日時から所定期間内の管理対象物の位置を予測する。予測部213は、発生予測日時における放射線源の位置と、所定期間内の管理対象物の位置とから相対位置関係を算出する。そして、予測部213は、放射線源状況、相対位置関係を、学習結果記憶部25に記録された予測モデルに入力することにより、管理対象物における障害発生状況を予測する。
【0043】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態においては、支援サーバ20の制御部21は、太陽のフレア履歴の取得処理を実行する(ステップS11)。これにより、放射線源における放射線の発生状況を把握することができる。
【0044】
(2)本実施形態においては、支援サーバ20の制御部21は、管理対象物の配置履歴の取得処理を実行する(ステップS12)。これにより、放射線が発生した場合の管理対象物の所在位置を特定することができる。
【0045】
(3)本実施形態においては、支援サーバ20の制御部21は、管理対象物の被曝履歴の取得処理を実行する(ステップS13)。これにより、放射線に対して、管理対象物の累積被曝量の影響を考慮することができる。
【0046】
(4)本実施形態においては、支援サーバ20の制御部21は、管理対象物の障害履歴の取得処理を実行する(ステップS14)。これにより、放射線による障害の可能性を把握することができる。
【0047】
(5)本実施形態においては、支援サーバ20の制御部21は、教師情報の生成処理を実行する(ステップS15)。これにより、機械学習を行なうためのデータセットを生成することができる。
【0048】
(6)本実施形態においては、支援サーバ20の制御部21は、障害発生の予測モデルの生成処理を実行する(ステップS16)。これにより、放射線源状況に応じて、障害発生を予測するためのモデルを生成することができる。
【0049】
(7)本実施形態においては、支援サーバ20の制御部21は、太陽のフレア予測処理(ステップS21)、障害発生の予測処理(ステップS22)を実行する。これにより、放射線の発生の予測から、管理対象物における障害発生の可能性を予測することができる。
【0050】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態、以下の実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0051】
・上記実施形態では、放射線発生源として、太陽フレアを想定するが、放射線発生源は、これに限定されるものではない。例えば、宇宙空間に存在する宇宙線を放射線発生源として用いてもよい。
【0052】
・上記実施形態では、管理対象物として人工衛星を想定したが、管理対象物はこれに限定されるものではない。例えば、地球上のデータセンタや、他の惑星に構築された構造物を想定してもよい。
【0053】
・上記実施形態では、教師情報として、放射線源状況、累積被曝量、位置関係、障害発生状況を組み合わせたデータセットを用いる。教師データは、これらの一部のみを用いたり、他の情報を組み合わせたりしてもよい。例えば、放射線源状況、位置関係及び障害発生状況を組み合わせたデータセットを用いてもよい。
また、他の情報として、例えば、放射線源が影響を与える範囲であって、管理対象物が配置されている周囲の環境状況を用いてもよい。例えば、環境状況として、地球上の各地域の地磁気状態や気象状態、管理対象物周辺の磁場やX線、陽子電子の状態を用いる。この環境状況は、公開された天候サイトや管理対象物に搭載されたセンサ等から、管理対象物の所在位置に応じて取得することができる。
また、管理対象物の仕様(放射線に対する耐性レベル等)を教師情報に含めてもよい。また、位置関係として、放射線発生源に対して、管理対象物の配置(向きや姿勢等)に関する情報を含めてもよい。
【0054】
・上記実施形態では、太陽フレアの発生毎に、管理対象物の配置履歴の取得処理(ステップS12)~教師情報の生成処理(ステップS15)を実行する。ここで、障害発生毎に、太陽のフレア履歴の取得処理(ステップS11)を実行して、教師情報を生成するようにしてもよい。この場合には、障害発生から所定時間前の放射線源状況を取得して、障害発生状況と組み合わせた教師情報を生成する。更に、太陽フレアの発生毎と、障害発生毎との両方を用いて教師情報を生成してもよい。
【0055】
・上記実施形態では、支援サーバ20に観測情報記憶部22を設けた。ハードウェア構成はこれに限定されるものではない。例えば、他のサーバに記録された観測情報を取得するようにしてもよい。
・上記実施形態では、支援サーバ20の制御部21は、障害発生の予測処理を実行する(ステップS22)。ここで、観測情報記憶部22に記録された発生位置、観測位置、放射線源状況、放射線発生状況から、放射線が到達する予想時刻に応じて障害発生を予測してもよい。この場合には、観測情報記憶部22に記録された放射線源の発生位置と計測装置10の所在位置との位置関係に対して、放射線源の観測日時、放射線の計測日時との関係を算出する情報を生成する。そして、新たに観測した放射線源の発生位置と管理対象物の所在位置との位置関係から、管理対象物に放射線が到達する日時を予測することにより、障害が発生する可能性がある日時を予測する。
【符号の説明】
【0056】
10…計測装置、15…ユーザ端末、20…支援サーバ、21…制御部、211…管理部、212…学習部、213…予測部、22…観測情報記憶部、23…管理対象情報記憶部、24…教師情報記憶部、25…学習結果記憶部。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
放射線を発生する放射線源状況を取得する制御部を備えた影響予測システムであって、
前記制御部が、
放射線源状況を取得し、
前記放射線源状況に対応した放射線源から生じる放射線の種類毎に、放射線発生時からの管理対象物に到達するまでの所要時間以降の所定期間である影響期間の前記管理対象物の位置関係を取得し、
前記放射線源状況に対応し、前記影響期間の前記管理対象物の障害発生履歴を取得し、
前記放射線源状況、前記位置関係、前記障害発生履歴を組み合わせたデータセットを用いて、前記放射線源状況と前記管理対象物の配置とから、前記管理対象物の障害発生を予測する予測モデルを生成することを特徴とする影響予測システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項6
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項6】
放射線を発生する放射線源状況を取得する制御部を備えた影響予測システムを用いて、前記放射線源状況から障害発生状況を予測する方法であって、
前記制御部が、
放射線源状況を取得し、
前記放射線源状況に対応した放射線源から生じる放射線の種類毎に、放射線発生時からの管理対象物に到達するまでの所要時間以降の所定期間である影響期間の前記管理対象物の位置関係を取得し、
前記放射線源状況に対応し、前記影響期間の前記管理対象物の障害発生履歴を取得し、
前記放射線源状況、前記位置関係、前記障害発生履歴を組み合わせたデータセットを用いて、前記放射線源状況と前記管理対象物の配置とから、前記管理対象物の障害発生を予測する予測モデルを生成することを特徴とする影響予測方法。
【手続補正3】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項7
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項7】
放射線を発生する放射線源状況を取得する制御部を備えた影響予測システムを用いて、前記放射線源状況から障害発生状況を予測するためのプログラムであって、
前記制御部を、
放射線源状況を取得し、
前記放射線源状況に対応した放射線源から生じる放射線の種類毎に、放射線発生時からの管理対象物に到達するまでの所要時間以降の所定期間である影響期間の前記管理対象物の位置関係を取得し、
前記放射線源状況に対応し、前記影響期間の前記管理対象物の障害発生履歴を取得し、
前記放射線源状況、前記位置関係、前記障害発生履歴を組み合わせたデータセットを用いて、前記放射線源状況と前記管理対象物の配置とから、前記管理対象物の障害発生を予測する予測モデルを生成する手段として機能させるための影響予測プログラム。