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2024-134063レーザ加工装置およびレーザ加工品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134063
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】レーザ加工装置およびレーザ加工品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/16 20060101AFI20240926BHJP
   B23K 26/36 20140101ALI20240926BHJP
【FI】
B23K26/16
B23K26/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044158
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】390002473
【氏名又は名称】TOWA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】最上 拓也
(72)【発明者】
【氏名】大川 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】三原 孝之
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AD00
4E168CB07
4E168FA01
4E168FC01
4E168JA17
(57)【要約】
【課題】粉塵を効率よく吸引しながらレーザ加工を実施可能なレーザ加工装置を得る。
【解決手段】レーザ加工装置は、ステージ60と、ステージ60に近い側から遠い側に向かって中空空間Sが延びるように配置される外周壁部30と、中空空間Sを内側空間S1と外側空間S2とに区画する筒状壁部20と、レーザ光が内側空間S1を通過して加工対象物Wに照射されるようにレーザ光Lを出射する照射部40と、内側空間S1を塞ぐように設けられる透明部材50と、第1開口部11を有し筒状壁部20と外周壁部30との間で外側空間S2を塞ぐように配置される蓋部材10とを備え、筒状壁部20は、透明部材50よりも近い側の位置に第2開口部22を有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象物に対してレーザ加工を実施する、レーザ加工装置であって、
前記加工対象物が配置されるステージと、
中空空間を内側に形成し、前記ステージに近い側から遠い側に向かって前記中空空間が延びるように配置される、外周壁部と、
筒形状を有し、前記中空空間内に配置され、前記中空空間を、前記筒形状の内側に位置する内側空間と、前記筒形状の外側に位置する外側空間とに区画する、筒状壁部と、
前記遠い側から前記近い側に向かってレーザ光が前記内側空間を通過して前記加工対象物に照射されるように前記レーザ光を出射する、照射部と、
前記筒状壁部の前記近い側における端部から前記遠い側に離れた位置において前記内側空間を塞ぐように設けられる、透明部材と、
第1開口部を有し、前記筒状壁部と前記外周壁部との間で前記外側空間を塞ぐように配置される蓋部材と、を備え、
前記外側空間は吸引装置に連通しており、前記レーザ加工によって発生した粉塵は、前記第1開口部および前記外側空間を通して吸引され、前記第1開口部の流路断面積は、前記筒状壁部と前記外周壁部との間の前記外側空間の流路断面積よりも小さく、
前記筒状壁部は、前記透明部材よりも前記近い側の位置に第2開口部を有する、
レーザ加工装置。
【請求項2】
前記第2開口部は、前記筒状壁部の前記近い側における前記端部で開口する形状を有している、
請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記第2開口部は、前記近い側から前記遠い側に向かってスリット状に延在する形状を有している、
請求項1または2に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記筒状壁部は、筒軸を中心とする円筒または回転対称の形状を有し、
前記筒状壁部には、複数の前記第2開口部が設けられており、
複数の前記第2開口部は、前記筒軸に対して対称となる位置に配置されている、
請求項1から3のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記蓋部材には、複数の前記第1開口部が設けられており、
複数の前記第1開口部は、前記筒軸に対して対称となる位置に配置されている、
請求項4に記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記筒状壁部と前記外周壁部との間で前記外側空間を上方側から塞ぐように配置される天板部材を有し、
前記天板部材には吸引口が設けられており、
前記外側空間は前記吸引口を介して吸引装置に連通している、
請求項1から5のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
前記蓋部材と前記ステージとの間の空間を囲うように設けられる囲い壁をさらに備える、
請求項1から6のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。
【請求項8】
前記囲い壁には、第3開口部が形成されており、
前記囲い壁の外側から前記囲い壁の内側に向かって、前記第3開口部を通してエアブローが供給される、
請求項7に記載のレーザ加工装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載のレーザ加工装置を使用するレーザ加工品の製造方法であって、
前記ステージに配置された前記加工対象物にレーザ光を照射する工程を備える、
レーザ加工品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、レーザ加工装置およびレーザ加工品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ加工装置が加工対象物に対してレーザ加工を実施した際に、加工対象物から微細な粉塵が発生する。加工対象物の表面上やレーザ照射部と加工対象物との間の空間に多くの粉塵が存在していると、レーザ光のエネルギーが減衰し、たとえば、加工割合が所望の値からずれることがあり得る。特開2013-006200号公報(特許文献1)に開示されているように一般的には粉塵は吸引装置を利用して排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-006200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書は、粉塵を効率よく吸引しながらレーザ加工を実施することが可能なレーザ加工装置、およびそのようなレーザ加工装置を使用して加工対象物に対してレーザ加工を実施する、レーザ加工品の製造方法を開示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に基づくレーザ加工装置は、加工対象物に対してレーザ加工を実施する、レーザ加工装置であって、前記加工対象物が配置されるステージと、中空空間を内側に形成し、前記ステージに近い側から遠い側に向かって前記中空空間が延びるように配置される、外周壁部と、筒形状を有し、前記中空空間内に配置され、前記中空空間を、前記筒形状の内側に位置する内側空間と、前記筒形状の外側に位置する外側空間とに区画する、筒状壁部と、前記遠い側から前記近い側に向かってレーザ光が前記内側空間を通過して前記加工対象物に照射されるように前記レーザ光を出射する、照射部と、前記筒状壁部の前記近い側における端部から前記遠い側に離れた位置において前記内側空間を塞ぐように設けられる、透明部材と、第1開口部を有し、前記筒状壁部と前記外周壁部との間で前記外側空間を塞ぐように配置される蓋部材と、を備え、前記外側空間は吸引装置に連通しており、前記レーザ加工によって発生した粉塵は、前記第1開口部および前記外側空間を通して吸引され、前記第1開口部の流路断面積は、前記筒状壁部と前記外周壁部との間の前記外側空間の流路断面積よりも小さく、前記筒状壁部は、前記透明部材よりも前記近い側の位置に第2開口部を有する。
【0006】
本開示に基づくレーザ加工品の製造方法は、上記のレーザ加工装置を使用するレーザ加工品の製造方法であって、前記ステージに配置された前記加工対象物にレーザ光を照射する工程を備える。
【発明の効果】
【0007】
上記構成を備えたレーザ加工装置によれば、粉塵を効率よく吸引しながらレーザ加工を実施することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1におけるレーザ加工装置100を模式的に示す断面図である。
図2】実施の形態1におけるレーザ加工装置100に備えられる蓋部材10、筒状壁部20、外周壁部30および天板部材70の断面構成を示す斜視図である。
図3】実施の形態1におけるレーザ加工装置100に備えられる蓋部材10、筒状壁部20、外周壁部30および天板部材70を示す他の斜視図である。
図4図2中のIV-IV線に沿った矢視断面図である。
図5】実施の形態1におけるレーザ加工装置100によってレーザ加工を実施している際の様子を模式的に示す断面図である。
図6】実施の形態2におけるレーザ加工装置に備えられる蓋部材10Aを示す図である。
図7】実施の形態3におけるレーザ加工装置に備えられる筒状壁部20Aを示す図である。
図8】実施の形態4におけるレーザ加工装置100Aを模式的に示す断面図である。
図9】実施の形態5におけるレーザ加工装置100Bを模式的に示す断面図である。
図10】第1検証実験により得られた結果として、ステージ上の粉塵の飛散の程度を示す図である。
図11】第2検証実験により得られた結果として、ステージ上の粉塵の飛散の程度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示の実施の形態について説明する。以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本開示の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本開示にとって必ずしも必須のものではない。同一の部品および相当部品には同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
【0010】
[実施の形態1]
図1図5を参照して、実施の形態1におけるレーザ加工装置100について説明する。レーザ加工装置100は、半導体ウエーハ等の加工対象物W(図1図5参照)に対してレーザ加工を実施することにより、レーザ加工品を製造することができる。
【0011】
図1は、レーザ加工装置100を模式的に示す断面図である。図2は、レーザ加工装置100に備えられる蓋部材10、筒状壁部20、外周壁部30および天板部材70の断面構成を示す斜視図である。図3は、レーザ加工装置100に備えられる蓋部材10、筒状壁部20、外周壁部30および天板部材70を示す他の斜視図であり、蓋部材10を、筒状壁部20および外周壁部30から取り外した状態を示す。図4は、図2中のIV-IV線に沿った矢視断面図である。
【0012】
図1に示すように、レーザ加工装置100は、ステージ60、照射部40、蓋部材10、筒状壁部20、外周壁部30、透明部材50、および天板部材70を備える。ステージ60の表面に加工対象物Wが配置され、照射部40から加工対象物Wに向かってレーザ光が照射される。レーザ加工の一例としては、加工対象物Wが配置されたステージ60を、照射部40がレーザ光を照射している状態で移動させる。レーザ加工の他の一例としては、照射部40が加工対象物Wにおいて光を照射する位置を、ステージ60が固定されている状態で変更する。
【0013】
(外周壁部30)
図2図4(特に図3)に示すように、外周壁部30は全体として円筒状の形状を有し、中空空間Sを外周壁部30の内側に形成している。外周壁部30は、ステージ60(図1)が配置される側の端部37(図3)から天板部材70が配置される側に向かって、筒軸AXに沿って延びている。
【0014】
外周壁部30は、その内側に中空空間Sを形成できるものであれば、円筒状に限られず、矩形や多角形、楕円など、任意の形状を有していてよい。また、外周壁部30は、中空空間Sを区画形成する外周壁の形状を有してさえいれば、「筒」の形状に限られず、任意の形状を有していてよい。外周壁部30は、中空空間Sがステージ60に近い側から遠い側に向かって延びるように配置される。
【0015】
(筒状壁部20)
図3に示すように、筒状壁部20は筒形状を有している。筒状壁部20は、中空空間S内に配置され、中空空間Sを内側空間S1と外側空間S2とに区画する。内側空間S1は筒状壁部20の筒形状の内側に位置し、外側空間S2は筒状壁部20の筒形状の外側に位置する。
【0016】
図1図3に示すように、内側空間S1は、円柱状の形状を示す。内側空間S1も、ステージ60に近い側から遠い側に向かって延びるように形成される。外側空間S2は、円筒状に延びる形状を示す。外側空間S2も、ステージ60に近い側から遠い側に向かって延びるように形成される。
【0017】
筒状壁部20は、ステージ60に近い側の位置に端部27を有している。端部27は、おおむね円環状に形成されている。詳細は後述するが、蓋部材10は、第1開口部11を有し、筒状壁部20は第2開口部22を有している。第2開口部22は、筒状壁部20の内周面側から外周面側に向かって筒状壁部20を厚み方向に貫通するように形成されている。レーザ加工によって発生した粉塵は、内側空間S1および第2開口部22を通して吸引される(図5参照)。
【0018】
レーザ加工装置100においては、第2開口部22は、筒状壁部20の端部27で開口する形状を有している。換言すると第2開口部22は端部27に到達する長さまたは形状を有して形成されている。当該構成は必須ではなく、第2開口部22は、端部27から離れた位置で筒状壁部20を貫通する、貫通孔の形状を有していてもよい。
【0019】
レーザ加工装置100においては、第2開口部22は、ステージ60に近い側(すなわち端部27に近い側)から遠い側に向かってスリット状に延びる形状を有している。スリット状とは、孔の横断面(流体等の流れに対する直交断面)の形状が、短手方向に対して長手方向に十分に長い形状である。具体的な形状は、長方形状、楕円状、長穴状等のいずれでもよい。これらの構成も必須ではなく、第2開口部22の形状は、円形状などであってもよく、直線状に延びて形成されていなくてもよい。
【0020】
図3および図4に示すように、レーザ加工装置100においては、筒状壁部20が筒軸AXを中心とする円筒の形状を有しており、筒状壁部20には複数の(ここでは2つの)第2開口部22が設けられている。複数の第2開口部22は、筒軸AXに対して対称となる位置に配置されている。当該構成は、筒状壁部20が回転対称の形状を有している場合にも採用可能である。ここでいう回転対称とは、筒軸AXの周りに筒状壁部20の一部分を回転させたとき、2π/nラジアン(nは正の整数)の回転角度で同じ図形が繰り返される性質を意味する。これらの構成も必須ではなく、複数の第2開口部22は、筒状壁部20における任意の位置に配置されていてよい。
【0021】
(天板部材70)
天板部材70は、筒状壁部20と外周壁部30との間で外側空間S2を上方側から塞ぐように配置される。天板部材70は、平板部71、2つの排出部72、穴部73、および2つの吸引口74を有している。2つの排出部72は、平板部71から突出して設けられており、排出部72の内側に吸引口74が設けられている。穴部73は平板部71を貫通して設けられており、透明部材50が穴部73の内側に設けられる。
【0022】
天板部材70は、2つの吸引口74が外側空間S2に連通するように位置合わせされる。外側空間S2の大部分は平板部71によって覆われる。一方で外側空間S2は、吸引口74および排出部72を介して吸引装置80(図1)に連通する。吸引装置80に連通する吸引口74の位置はこのような構成に限られず、たとえば外周壁部30に同様な機能を有する吸引口が設けられ、その吸引口が吸引装置80に連通していてもよい。
【0023】
(蓋部材10・第1開口部11)
図3に示すように、蓋部材10は、上述のとおり第1開口部11を有し、筒状壁部20と外周壁部30との間で外側空間S2を塞ぐように配置される。たとえば蓋部材10は、底板部15、外側筒状部12、内側筒状部13、第1開口部11、および連通孔17を有する。底板部15は、円盤状の形状を有し、底板部15の中央には円形状の連通孔17が厚み方向に貫通して形成されている。
【0024】
外側筒状部12および内側筒状部13は、底板部15から起立するように設けられており、外側筒状部12は内側筒状部13を囲うように、内側筒状部13の外側に配置されている。レーザ加工装置100においては、底板部15に2つの第1開口部11が設けられている。第1開口部11は、筒軸AXを中心とする径方向において、外側筒状部12と内側筒状部13との間に位置している。
【0025】
蓋部材10は、外側筒状部12および内側筒状部13が筒状壁部20と外周壁部30との間に挿入されるように、位置合わせされる。外側空間S2の大部分は底板部15により覆われる。一方で外側空間S2は、2つの第1開口部11を通して、ステージ60および加工対象物Wが配置されている空間に連通している。
【0026】
レーザ加工装置100においては、蓋部材10に複数の(ここでは2つの)第1開口部11が設けられている。複数の第1開口部11は、筒軸AXに対して対称となる位置に配置されている。第1開口部11の各々は、筒軸AXを中心とする周方向に沿って延在している。これらの構成も必須ではなく、複数の第1開口部11は、底板部15における任意の位置に、任意の形状を有して配置されていてよい。
【0027】
ステージ60および加工対象物Wが配置されている空間は、第1開口部11および外側空間S2を通して吸引装置80に連通している。レーザ加工によって発生した粉塵は、第1開口部11および外側空間S2を通して吸引装置80によって吸引される。流体等の流れに対する直交断面において、第1開口部11の流路断面積A1(図1)は、筒状壁部20と外周壁部30との間の外側空間S2の流路断面積A2(図1)よりも十分に小さい。
【0028】
(照射部40)
照射部40は、発振器、ミラーおよびレンズ等、不図示の任意の光学系を利用して、加工対象物Wに向かってレーザ光L(図5)を照射する。レーザ光Lがステージ60に遠い側から近い側に向かって進行し、かつ、レーザ光Lが内側空間S1を通過して加工対象物Wにレーザ光Lが照射されるように、照射部40はレーザ光Lを出射する。
【0029】
(透明部材50)
図1に示すように、透明部材50は、内側空間S1を塞ぐように設けられている。上述のとおり、筒状壁部20は、ステージ60に近い側の位置に端部27を有している。透明部材50は、筒状壁部20の端部27からステージ60に遠い側に向かって離れた位置において、内側空間S1を塞ぐように設けられている。
【0030】
レーザ加工装置100においては、天板部材70に設けられた穴部73の内側に透明部材50が配置されている。透明部材50は、筒状壁部20の端部27から上記遠い側に向かって離れた位置に設けられていれば、穴部73の内側の位置に配置されていなくてもよい。透明部材50はたとえば、筒状壁部20の内側に設けられていてもよい。筒状壁部20の端部に直接フタをするように、筒状壁部20の端部(上端部)に接して透明部材50が配置されていてもよい。
【0031】
透明部材50は、レーザ光の通過を許容する部材から構成される。透明部材50は、レーザ加工によって発生した粉塵が、ステージ60に近い側から遠い側に向かって内側空間S1を通過して照射部40に到達することを抑制する。
【0032】
(第2開口部22)
図1および図2を参照して、上述のとおり、筒状壁部20は第2開口部22を有する。第2開口部22は、筒状壁部20のうち、透明部材50よりもステージ60に近い側の位置に設けられる。レーザ加工装置100においては、第2開口部22は、筒状壁部20の端部27で開口する形状を有している。換言すると第2開口部22は端部27に到達する長さまたは形状を有して形成されている。
【0033】
透明部材50よりもステージ60に近い側の位置であれば、第2開口部22はより長い形状を有して筒状壁部20に設けられていてもよい。たとえば第2開口部22は、筒状壁部20における端部27とは反対側の端部29に到達するように形成されていてもよい。図1に示すように、そのような構成を有する第2開口部22であっても、透明部材50よりもステージ60に近い側に配置されることとなる。
【0034】
(作用および効果)
図5は、レーザ加工装置100によってレーザ加工を実施している際の様子を模式的に示す断面図である。レーザ加工品の製造方法としては、レーザ加工装置100を使用して、ステージ60に配置された加工対象物Wにレーザ光Lを照射する工程を備える。
【0035】
レーザ加工装置100が加工対象物Wに対してレーザ光Lを照射してレーザ加工を実施した際には、加工対象物Wから微細な粉塵が発生する。特に樹脂やゴムなどの高分子材料を加工した場合、ガスの発生や、粉塵により加工対象物Wや装置内が汚染し得る。粉塵には、粒径が比較的大きくて重たい粉塵E1と、粒径が比較的小さくて軽い粉塵E2とが含まれる場合がある。
【0036】
重たい粉塵E1が加工対象物W上に積もっていたり、軽い粉塵E2が空中に浮遊していたりした場合には、品質の高い加工を行うことが難しくなる。空中に浮遊している軽い粉塵E2だけではなく、加工対象物W上に積もっている重い粉塵E1も吸引除去することが好ましい。
【0037】
重い粉塵E1は、加工対象物Wに比較的近い空間RRで浮遊したり、加工対象物Wの表面に付着したりしやすい。レーザ加工装置100においては、蓋部材10を用いない場合に比べて(流路断面積A2)、蓋部材10の第1開口部11の存在によって流路断面積が小さくなっている(流路断面積A1)。
【0038】
蓋部材10を用いない場合に比べて(流路断面積A2)、吸引装置80による吸引能力が第1開口部11によって高められており、重い粉塵E1を吸引するために、加工対象物Wに比較的近い空間RRにおいて風速が速い吸引を実現することができており、比較的大きくて重たい粉塵E1を第1開口部11を通して効率よく吸引することが可能となっている。
【0039】
蓋部材10の底板部15と加工対象物Wとの間の距離は、適宜設定可能であり、たとえば40mm程度とすることができる。蓋部材10および/またはステージ60を上下移動可能に構成して、第1開口部11を介した吸引能力を高めるために蓋部材10が加工対象物Wに接近可能なように構成されていてもよい。加工対象物Wの厚みに応じて、蓋部材10から加工対象物Wまでの距離を変更可能に構成しても良い。
【0040】
比較的小さく軽い粉塵E2は、加工対象物Wに比較的近い空間RRだけでなく、加工対象物Wと蓋部材10との間の空間や、内側空間S1に向かって飛散しやすい。透明部材50は、レーザ加工によって発生した粉塵E1(あるいは粉塵E2)が、ステージ60に近い側から遠い側に向かって内側空間S1を通過して照射部40に到達することを抑制する。
【0041】
透明部材50が設けられない場合には、たとえばダウンフローを供給することによって照射部40に粉塵が到達することを防ぐ必要があるが、レーザ加工装置100においては透明部材50の存在によって、そのようなダウンフローを発生させる機構は設けられていなくてもよい。
【0042】
仮に筒状壁部20に第2開口部22が設けられていない場合には、加工対象物Wと蓋部材10との間の空間や、特に、内側空間S1に入り込んだ粉塵E1(あるいは粉塵E2)は、第1開口部11を通して吸引されにくい場合があり得る。
【0043】
これに対してレーザ加工装置100においては、筒状壁部20に第2開口部22が設けられている。したがって、加工対象物Wと蓋部材10との間の空間や、内側空間S1に向かって飛散した粉塵E1(あるいは粉塵E2)は、透明部材50に対してステージ60に近い側に位置する内側空間S1から、第2開口部22および外側空間S2を通して効率よく吸引されることが可能となっている。たとえば吸引能力の小さい吸引装置80を利用する場合であっても、効率の良い吸引を行うことが可能となっている。
【0044】
レーザ加工装置100においては、第2開口部22は、筒状壁部20の端部27で開口する形状を有している。当該構成によれば、第2開口部22を通して、ステージ60あるいは加工対象物Wにより近い位置で吸引を行うことができる。
【0045】
レーザ加工装置100においては、第2開口部22は、ステージ60に近い側から遠い側に向かってスリット状に延在する形状を有している。当該構成によれば、ステージ60に近い側から遠い側に向かう方向において、広い範囲で第2開口部22を通して吸引を行うことができる。
【0046】
レーザ加工装置100においては、複数の第2開口部22が筒軸AXに対して対称となる位置に配置されている。当該構成によれば、筒軸AXを中心として均等な吸引能力を発生させることができる。レーザ加工装置100においては、複数の第1開口部11も、筒軸AXに対して対称となる位置に配置されている。当該構成によっても、筒軸AXを中心として均等な吸引能力を発生させることができる。
【0047】
レーザ加工装置100においては、天板部材70に吸引口74が設けられている。第1開口部11や第2開口部22から吸引された粉塵が、外側空間S2を上方に向かって進行した後、そのまま上方に向かってさらに移動して吸引口74を通して排出される。外側空間S2を通過した粉塵がスムーズに排出されやすい経路が形成されている。
【0048】
[実施の形態2]
図6は、実施の形態2におけるレーザ加工装置に備えられる蓋部材10Aを示す図である。蓋部材10Aにおいては、4つの第1開口部11が蓋部材10Aに設けられている。4つの第1開口部11は、筒軸AXに対して対称となる位置に配置されている。偶数個または奇数個の第1開口部11が、筒軸AXに対して点対称あるいは線対称となる位置に配置されていてもよい。
【0049】
[実施の形態3]
図7は、実施の形態3におけるレーザ加工装置に備えられる筒状壁部20Aを示す図である。筒状壁部20Aにおいては、4つの第2開口部22が筒状壁部20Aに設けられている。4つの第2開口部22は、筒軸AXに対して対称となる位置に配置されている。偶数個または奇数個の第2開口部22が、筒軸AXに対して点対称あるいは線対称となる位置に配置されていてもよい。
【0050】
[実施の形態4]
図8は、実施の形態4におけるレーザ加工装置100Aを模式的に示す断面図である。レーザ加工装置100Aは、レーザ加工装置100(実施の形態1)の構成に加えて、囲い壁90をさらに備えている。囲い壁90は、蓋部材10とステージ60との間の空間を囲うように設けられる。
【0051】
囲い壁90により、レーザ加工によって発生した粉塵が囲い壁90の内側から囲い壁90の外側に到達することが抑制される。囲い壁90と加工対象物Wとの間の隙間を小さくして吸引のための風速をさらに向上させてもよい。囲い壁90は、加工対象物Wの位置に対して上下に移動可能に構成されていてもよい。
【0052】
[実施の形態5]
図9は、実施の形態5におけるレーザ加工装置100Bを模式的に示す断面図である。レーザ加工装置100Bにおいては、囲い壁90に、第3開口部93が形成されており、囲い壁90の外側から囲い壁90の内側に向かって、第3開口部93を通してエアブローBが供給される。エアブローBの供給により、加工対象物W上の粉塵が浮遊され、さらに、レーザ加工によって発生した粉塵が囲い壁90の内側から囲い壁90の外側に到達することがさらに抑制される。また、ゴム等を加工する場合には、レーザ加工時の発熱による溶解に対処するため、エアブローBで加工対象物Wを冷却するとよい。
【0053】
[検証実験]
図10および図11は、それぞれ、第1および第2検証実験により得られた結果として、ステージ上の粉塵の飛散の程度を示す図である。
【0054】
図10に示す第1検証実験結果は、図8に示す構成(レーザ加工装置100A)により加工対象物Wの近傍で2.4m/sの風速が得られた場合に基づいている。粉塵は図10中に白色ないし灰色で示されているが、加工対象物Wの近傍からほとんど除去されていることがわかる。
【0055】
図11に示す第2検証実験結果は、図5に示す構成(レーザ加工装置100)から蓋部材10を取り除いた構成において、加工対象物Wの近傍で0.5m/sの風速が得られた場合に基づいている。粉塵は図11中に白色ないし灰色で示されている。加工対象物Wの近傍において、点線で示す方向に向けて粉塵の残存物が長く延びていることがわかる。
【0056】
図5に示す構成(レーザ加工装置100)で除去される粉塵の量は、図5に示す構成から蓋部材10を除いた構成で除去される粉塵の量よりも多くなる。
【0057】
図10および図11に示す結果からも、本明細書に開示されたレーザ加工装置によれば、粉塵を効率よく吸引しながらレーザ加工を実施することが可能になることがわかる。
【0058】
以上、本開示の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0059】
10,10A 蓋部材、11 第1開口部、12 外側筒状部、13 内側筒状部、15 底板部、17 連通孔、20,20A 筒状壁部、22 第2開口部、27,29,37 端部、30 外周壁部、40 照射部、50 透明部材、60 ステージ、70 天板部材、71 平板部、72 排出部、73 穴部、74 吸引口、80 吸引装置、90 囲い壁、93 第3開口部、100,100A,100B レーザ加工装置、A1,A2 流路断面積、AX 筒軸、B エアブロー、E1,E2 粉塵、L レーザ光、RR 空間、S 中空空間、S1 内側空間、S2 外側空間、W 加工対象物。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2023-03-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象物に対してレーザ加工を実施する、レーザ加工装置であって、
前記加工対象物が配置されるステージと、
中空空間を内側に形成し、前記ステージに近い側から遠い側に向かって前記中空空間が延びるように配置される、外周壁部と、
筒形状を有し、前記中空空間内に配置され、前記中空空間を、前記筒形状の内側に位置する内側空間と、前記筒形状の外側に位置する外側空間とに区画する、筒状壁部と、
前記遠い側から前記近い側に向かってレーザ光が前記内側空間を通過して前記加工対象物に照射されるように前記レーザ光を出射する、照射部と、
前記筒状壁部の前記近い側における端部から前記遠い側に離れた位置において前記内側空間を塞ぐように設けられる、透明部材と、
第1開口部を有し、前記筒状壁部と前記外周壁部との間で前記外側空間を塞ぐように配置される蓋部材と、を備え、
前記外側空間は吸引装置に連通しており、前記レーザ加工によって発生した粉塵は、前記第1開口部および前記外側空間を通して吸引され、前記第1開口部の流路断面積は、前記筒状壁部と前記外周壁部との間の前記外側空間の流路断面積よりも小さく、
前記筒状壁部は、前記透明部材よりも前記近い側の位置に第2開口部を有する、
レーザ加工装置。
【請求項2】
前記第2開口部は、前記筒状壁部の前記近い側における前記端部で開口する形状を有している、
請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記第2開口部は、前記近い側から前記遠い側に向かってスリット状に延在する形状を有している、
請求項1または2に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記筒状壁部は、筒軸を中心とする円筒または回転対称の形状を有し、
前記筒状壁部には、複数の前記第2開口部が設けられており、
複数の前記第2開口部は、前記筒軸に対して対称となる位置に配置されている、
請求項1または2に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記蓋部材には、複数の前記第1開口部が設けられており、
複数の前記第1開口部は、前記筒軸に対して対称となる位置に配置されている、
請求項4に記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記筒状壁部と前記外周壁部との間で前記外側空間を上方側から塞ぐように配置される天板部材を有し、
前記天板部材には吸引口が設けられており、
前記外側空間は前記吸引口を介して吸引装置に連通している、
請求項1または2に記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
前記蓋部材と前記ステージとの間の空間を囲うように設けられる囲い壁をさらに備える、
請求項1または2に記載のレーザ加工装置。
【請求項8】
前記囲い壁には、第3開口部が形成されており、
前記囲い壁の外側から前記囲い壁の内側に向かって、前記第3開口部を通してエアブローが供給される、
請求項7に記載のレーザ加工装置。
【請求項9】
請求項1または2に記載のレーザ加工装置を使用するレーザ加工品の製造方法であって、
前記ステージに配置された前記加工対象物にレーザ光を照射する工程を備える、
レーザ加工品の製造方法。