IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士フイルムヘルスケア株式会社の特許一覧

特開2024-134066X線撮影装置、および、その制御方法
<>
  • 特開-X線撮影装置、および、その制御方法 図1
  • 特開-X線撮影装置、および、その制御方法 図2
  • 特開-X線撮影装置、および、その制御方法 図3
  • 特開-X線撮影装置、および、その制御方法 図4
  • 特開-X線撮影装置、および、その制御方法 図5
  • 特開-X線撮影装置、および、その制御方法 図6
  • 特開-X線撮影装置、および、その制御方法 図7
  • 特開-X線撮影装置、および、その制御方法 図8
  • 特開-X線撮影装置、および、その制御方法 図9
  • 特開-X線撮影装置、および、その制御方法 図10
  • 特開-X線撮影装置、および、その制御方法 図11
  • 特開-X線撮影装置、および、その制御方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134066
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】X線撮影装置、および、その制御方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20240101AFI20240926BHJP
   A61B 6/40 20240101ALI20240926BHJP
【FI】
A61B6/00 320Z
A61B6/00 300D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044161
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】弁理士法人山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹之内 忍
(72)【発明者】
【氏名】小川 充
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA01
4C093CA16
4C093EA02
4C093EB12
4C093EB13
4C093EB17
4C093EC02
4C093EC03
4C093FA04
4C093FA15
(57)【要約】
【課題】天井や床に設置されたレールに沿って、操作者が手動で自由にX線源を移動させることができるX線撮影装置でありながら、透視画像を撮影可能な装置を提供する。
【解決手段】X線制御ユニット31は、X線検出器2aが保持されている位置に対応する、レール1上の予め定めた位置1aにX線源5が停止しているという条件を含む、1以上の所定の条件を満たす場合にのみ、透視撮像X線源5から連続してX線を出射させ透視撮影を許可する。具体的には、X線制御ユニット31は、透視撮影スイッチ24の操作を可能にし、透視撮影スイッチ24を操作者が操作した場合には、X線管に連続して管電流・管電圧を供給する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井または床面に設置されたレールと、X線源と、前記X線源をレールに沿って移動可能に支持するX線源支持機構部と、前記X線源支持機構部に備えられたハンドルと、被検体の撮影すべき部位にX線検出器を保持する立位用または臥位用の撮影台と、前記被検体の静止画の撮影を指示する静止画撮影スイッチと、前記被検体の透視画像の撮影を指示する透視撮影スイッチと、X線制御ユニットとを有し、
前記X線制御ユニットは、1以上の所定の条件を満たす場合に、前記透視撮影スイッチの操作を許可し、
前記所定の条件には、操作者が前記ハンドルを操作して移動させた前記X線源が、前記X線検出器が保持されている位置に対応する、前記レール上の予め定めた位置に停止していること、が含まれることを特徴とするX線撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載のX線撮影装置であって、前記レールには、前記予め定めた位置を示す第1マークが備えられ、前記X線源支持機構部の前記レールと接する部分の側面には目印となる第2マークが備えられ、
前記X線源が、前記レール上の前記予め定めた位置に停止しているとき、前記第2マークは、前記第1マークが示す位置にあることを特徴とするX線撮影装置。
【請求項3】
請求項1に記載のX線撮影装置であって、
前記X線源支持機構部は、前記X線制御ユニットの制御により、前記X線源の移動を停止させるブレーキを備え、
操作者が前記ハンドルを操作して前記X線源を移動させ、前記X線源が、前記X線検出器が保持されている位置に対応する、前記レール上の前記予め定めた位置に接近した場合、前記X線制御ユニットは、前記ブレーキを動作させ、前記X線源を予め定めた位置に停止させることを特徴とするX線撮影装置。
【請求項4】
請求項1に記載のX線撮影装置であって、臥位用の前記撮影台は、前記被検体を搭載する天板と、前記X線検出器を載置するトレーと、前記トレーを前記天板の長手方向に沿ってスライド可能に保持する検出器保持部と、前記検出器保持部に保持された前記X線検出器が予め定めた第2位置にあるかどうかを検出する位置センサとを含み、
前記X線制御ユニットが、前記透視撮影スイッチの操作を許可する所定の条件には、前記位置センサが、前記X線検出器が前記第2位置にあることを検出していること、が含まれることを特徴とするX線撮影装置。
【請求項5】
請求項1に記載のX線撮影装置であって、臥位用の前記撮影台は、前記X線検出器を載置するトレーと、前記トレーに載置された前記X線検出器の向きが予め定めた向きにあるかどうかを検出する向き検出部をさらに含み、
前記X線制御ユニットが、前記透視撮影スイッチの操作を許可する所定の条件には、前記向き検出部が、前記X線検出器が前記予め定めた向きにあることを検出していること、が含まれることを特徴とするX線撮影装置。
【請求項6】
請求項5に記載のX線撮影装置であって、前記向き検出部は、前記トレーの前記X線検出器が載置される面に配置された2つのセンサを含み、2つの前記センサの間隔は、前記X線検出器の短辺よりも長く、長辺よりも短いことを特徴とするX線撮影装置。
【請求項7】
請求項1に記載のX線撮影装置であって、前記X線制御ユニットは、前記X線検出器と、前記X線源との距離を求め、
前記X線制御ユニットが、前記透視撮影スイッチの操作を許可する前記所定の条件には、前記X線源と前記X線検出器の距離が、予め定めた距離であること、が含まれることを特徴とするX線撮影装置。
【請求項8】
請求項1に記載のX線撮影装置であって、前記X線源には、絞りと、前記絞りの開度を調整する開度調整部とが備えられ、
前記X線制御ユニットが、前記透視撮影スイッチの操作を許可する前記所定の条件には、前記開度調整部が調整した開度が、所定値以下であること、が含まれることを特徴とするX線撮影装置。
【請求項9】
請求項1に記載のX線撮影装置であって、立位用の前記撮影台は、前記X線検出器を操作者の所望の高さに保持する検出器保持部と、前記検出器保持部に保持された前記X線検出器の高さを検出する高さセンサとを含み、
前記X線源支持機構部は、前記X線源の高さを、前記X線制御ユニットの制御により調整する駆動部を含み、
前記X線制御ユニットは、前記高さセンサの検出した前記X線検出器の高さに応じて、前記X線源が前記X線検出器と対向する位置に配置されるように前記駆動部の動作を制御し、
前記X線制御ユニットが、前記透視撮影スイッチの操作を許可する前記所定の条件には、前記X線源が前記X線検出器と対向する位置に配置されていること、が含まれることを特徴とするX線撮影装置。
【請求項10】
天井または床面に設置されたレールと、X線源と、前記X線源を前記レールに沿って移動可能に支持するX線源支持機構部と、前記X線源支持機構部に備えられたハンドルと、被検体の撮影すべき部位にX線検出器を保持する立位用または臥位用の撮影台とを有するX線撮影装置の制御方法であって、
前記X線検出器が保持されている位置に対応する、前記レール上の予め定めた位置に前記X線源が停止しているという条件を含む、1以上の所定の条件を満たす場合にのみ、前記X線源から連続してX線を出射させ透視撮影を可能にすることを特徴とするX線撮影装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井または床面に配置したレールに沿ってX線源を移動させ、立位または臥位の被検体の撮影対象部位にX線を照射して撮影を行うX線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検体にX線を照射して撮影する装置には、胸部X線撮影装置のように、静止画を撮影するX線撮影装置と、動画像(透視画像)を撮影してリアルタイムに表示装置に表示するX線TV(エックス線テレビ)装置(X線透視装置とも呼ばれる)の2種類が知られている。
【0003】
前者のX線撮影装置は、天井や床にレールが設置され、操作者がレールに沿ってX線源を移動させる構造である。被検体は、立位用の撮影台の前に立つか、臥位用の撮影台の上に横たわる。撮影台の内部には、FPD(Flat Panel Detector)等のX線検出装置が配置されている。よって、X線撮影装置では、X線源の配置の自由度が高く、操作者は所望の位置にX線源を配置して撮影を行うことができる。
【0004】
一方、後者のX線TV装置では、X線源の照射範囲に、X線検出器が常に配置されていることが規格(IS Z4751-2-54 医用電気機器-第2-54部:撮影・透視用X線装置の基礎安全及び基本性能に関する個別要求事項)により義務付けられている。そのため、X線源は、被検体が搭載される寝台の脇に設けられた支柱により、寝台の上部に支持される。寝台やX線検出器の位置を移動させる駆動機構と、X線源の位置を移動させる駆動機構は、連動するように制御され、X線源とX線検出器は常に対向配置される。
【0005】
特許文献1には、X線撮影装置においては、ケーブルレスのFPDカセッテが、撮影台に対して縦向きに配置されているか、横向きに配置されているかを検出してコンソールに表示する技術が開示されている。これにより、撮影者の意図と異なる向きのFPDカセッテによって撮影し、再撮影になることを防ぐ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-11057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、静止画を撮影するX線撮影装置によって、透視画像を撮影したいという要望がある。上述したように、透視画像を撮影するためには、X線源とX線検出器は常に対向配置された関係にあることが上記規格を満たすために必要である。
【0008】
しかしながら、X線撮影装置は、天井や床に設置されたレールに沿って、操作者が、手動で自由にX線源を移動させることができる構成である。臥位の撮影台のFPDの位置についても、操作者が所望の位置にスライドさせることができる。FPDカセッテのサイズも複数の種類がある。立位の撮影台のFPDの高さについても、操作者が所望の高さに設定することができる。
【0009】
すなわち、X線撮影装置においては、X線源の位置は、FPD等のX線検出器の位置とは連動しておらず、手動で自由に配置することができるように設計されており、X線源とX線検出器は常に対向配置された関係で透視画像を撮影するという条件を満たすことは容易ではない。
【0010】
本発明の目的は、天井や床に設置されたレールに沿って、操作者が手動で自由にX線源を移動させることができるX線撮影装置でありながら、透視画像を撮影可能な装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明によれば、天井または床面に設置されたレールと、X線源と、X線源をレールに沿って移動可能に支持するX線源支持機構部と、X線源支持機構部に備えられたハンドルと、被検体の撮影すべき部位にX線検出器を保持する立位用または臥位用の撮影台と、被検体の静止画の撮影を指示する静止画撮影スイッチと、被検体の透視画像の撮影を指示する透視撮影スイッチと、X線制御ユニットとを有するX線撮影装置が提供される。X線制御ユニットは、1以上の所定の条件を満たす場合に、透視撮影スイッチの操作を許可する。所定の条件には、操作者がハンドルを操作して移動させたX線源が、X線検出器が保持されている位置に対応する、レール上の予め定めた位置に停止していること、が含まれる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、天井や床に設置されたレールに沿って、操作者が手動で自由にX線源を移動させることができるX線撮影装置でありながら、透視画像を撮影することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態1のX線撮影装置の全体構成を示すブロック図。
図2】(a)および(b)は、実施形態1のX線撮影装置のX線の照射野5aとX線検出器の受像面20a,20bとの位置関係を示す説明図。
図3】実施形態1のX線撮影装置のX線源支持機構部51の内部レール150を示す斜視図。
図4】(a)および(b)は、実施形態1のX線撮影装置の天板41を取り外した状態の臥位用撮影台の構造を示す斜視図。
図5】(a)~(f)は、実施形態1のX線撮影装置のトレー42上の向き検出部46とX線検出器2aの種々の配置を示す上面図、(g)は向き検出部46の検出結果と透視の可否を示す説明図。
図6】実施形態1のX線撮影装置の臥位用の撮影台4aの高さの変化にX線源5がオートトラッキングすることを示す説明図。
図7】実施形態1のX線撮影装置の立位用の撮影台4bの高さの変化にX線源5がオートトラッキングすることを示す説明図。
図8】実施形態1のX線撮影装置の絞り6の開度の調整を説明する図。
図9】実施形態1のX線撮影装置のX線制御ユニット31の動作を示すフローチャート。
図10】(a)および(b)図8のフローにおいてモニタ49に表示される表示例を示す説明図。
図11】実施形態1のX線撮影装置において、手動でX線源5の高さを設定する際の支柱部52の位置を示す図。
図12】実施形態2のX線撮影装置のX線源支持機構部51の構造を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【0015】
<<実施形態1>>
実施形態1のX線撮影装置の構成について説明する。
【0016】
図1は、X線撮影装置の全体構成を示す図であり、図2は、X線の照射野5aとX線検出器の受像面20a,20bとの位置関係を示す図である。図3は、X線源支持機構部51の内部レール150を示す斜視図である。図4は、天板41を取り外した状態の臥位用撮影台の構造を示す斜視図である。
【0017】
X線撮影装置は、天井または床面に設置された一対のレール1と、X線源5と、X線源5をレール1に沿って移動可能に支持するX線源支持機構部51とを備えている。X線源支持機構部51の詳しい構成については後述する。
【0018】
X線源5には、ハンドル22が備えられている。ハンドル22には、複数の操作スイッチが備えられている。
【0019】
また、X線撮影装置は、臥位用撮影台4aと立位用撮影台4bを備えている。臥位用撮影台4aは、被検体10を搭載する天板41と、天板41を支持する枠体45と、枠体45を床面に対して支持する脚部16と、X線検出器2aを支持する検出器保持部43とを備えている。
【0020】
立位用撮影台4bは、X線検出器2bを保持する立位用トレー61と、X線検出器2bの受像面20bを床面に垂直に向けて保持する立位用検出器保持部62と、立位用検出器保持部62を床面に対して上下動可能に支持する立位用脚部63とを備えている。
【0021】
また、X線撮影装置は、被検体10の静止画の撮影の指示を受け付ける静止画撮影スイッチ23と、被検体10の透視画像の撮影の指示を受け付ける透視撮影スイッチ24と、撮影条件等の入力を操作者から受け付けるX線操作卓25が備えられている。
【0022】
X線源5には、管電圧・管電流を供給するX線高電圧装置30が接続されている。X線高電圧装置30は、X線制御ユニット31と、X線制御ユニット31の制御下で管電圧を発生する高電圧発生装置32とを含む。
【0023】
X線検出器2a、2bには、X線画像処理装置40が接続されている。X線画像処理装置40は、画像処理ユニット48とモニタ49とを備えている。画像処理ユニット48は、X線検出器2a、2bの出力信号を受け取って、X線画像(静止画像または透視画像)を生成する。
【0024】
一対のレール1の長手方向は、臥位用撮影台4aの天板41の長手方向に一致している。
【0025】
X線制御ユニット31は、所定の条件を満たす場合にのみ、透視撮影スイッチ24の操作を許可する。
【0026】
X線制御ユニット31が透視撮影スイッチ24の操作を許可する条件には、操作者がハンドル22を操作して移動させたX線源5が、レール1上の予め定めた透視撮影用X線源位置1aまたは位置1bに停止しているという条件が含まれる。透視撮影用X線源位置1a、1bは、臥位用撮影台4aのX線検出器2aまたは立位用撮影台4bのX線検出器2bが保持されている位置に対応する、レール1上の位置である。
【0027】
具体的には、透視撮影用X線源位置1aは、臥位用撮影台4aのX線検出器2aの受像面20aに、X線源5の照射野5aが含まれるようにX線源5を配置するためのレール1の長手方向の位置である。透視撮影用X線源位置1bは、立位用撮影台4bのX線検出器2bの受像面20bに、X線源5の照射野5aが含まれるようにX線源5を配置するためのレール1の長手方向の位置である。すなわち、図2(a)に示すように、X線源の照射野5aが、X線検出器2a,2bの受像面20a、20bの内側に位置するように、X線源5を配置するためのレール1の長手方向の位置が、透視撮影用X線源位置1a、1bである。
【0028】
さらに詳しく説明すると、透視撮影用X線源位置1aは、臥位用撮影台4aで透視撮影を行うために予め定めたX線検出器2aの透視撮影用トレー位置41aに一致している。
【0029】
また、透視撮影用X線源位置1bは、立位用撮影台4bで透視撮影を行うために、立位用撮影台4bに保持されたX線検出器2bの受像面から予め定めた距離(X線源5の焦点距離)だけ離れた位置である。
【0030】
X線源支持機構部51の構成について詳しく説明する。X線源支持機構部51は、X線源5を吊り下げて支持し、レール1に沿って滑らかに移動可能にする機構である。X線源支持機構部51は、レール1の長手方向に対して垂直な方向に長手方向が向けられた一対の内部レール150と、内部レール150に支持された台車151と、台車151に上端が固定された支柱部52とを備えて構成される。台車151は、内部レール150に対して、内部レールの長手方向にスライド可能に支持されている。X線源5は、支柱部52の先端(下端)に取り付けられている。
このような構成であるため、X線源支持機構部51は、内部レール150とともに台車151をレール1の長手方向に沿って移動させることができるとともに、内部レール150の長手方向に沿って台車を移動させることができる。よって、支柱部52を介して台車151に支持されたX線源5を、レール1の長手方向に移動させることできるとともに、レール1の長手方向に垂直な方向に移動させることができる。
【0031】
また、支柱部52には、上下方向に伸縮可能な伸縮機構が備えられている。支柱部52の伸縮機構については、後で詳しく説明する。
【0032】
また、X線源支持機構部51は、X線制御ユニット31の制御によりレール1の長手方向に沿ったX線源5の移動を停止させるブレーキ33と、レール1の長手方向に沿ったX線源5の位置を検出するX線源位置検出器34とを備えている。X線源位置検出器34は、レール1の長手方向についてX線源支持機構部51の位置を検出する。X線源位置検出器34は、例えばポテンシオメータを用いることができる。ブレーキ33は、どのような構造であってもよいが、例えば特開2015-167655号公報に記載されたブレーキのように、電磁石を含む静音型のブレーキを用いることが好ましい。
【0033】
X線源位置検出器34の出力は、X線制御ユニット31に入力されている。ブレーキ33は、X線制御ユニット31の制御、および、ハンドル22の操作によって動作する。
【0034】
操作者がハンドル22を操作してブレーキ33を解除し、ハンドル22を掴んでレール1の長手方向に移動させることにより、レール1の長手方向にX線源5を支持するX線源支持機構部51全体を移動させることができる。X線制御ユニット31は、X線源位置検出器34の出力を受け取って、X線源5を支持するX線源支持機構部51が、レール1上の透視撮影用X線源位置1aまたは1bに所定の距離Lまで接近したかどうかを判定し、所定の距離まで接近した場合には、ブレーキ33の動作を開始させる。距離Lは、予め求めておいたブレーキ33の制動距離に設定されている。これにより、ブレーキ33の制動動作により、X線源支持機構部51は、レール1上の透視撮影用X線源位置1aまたは位置1bで停止する。
【0035】
レール1には、透視撮影用X線源位置1a、1bに、目印となるマーク101a,101bが、図1のように、それぞれ取り付けられている。一方、X線源支持機構部51には、レール1と接する部分の側面にマーク53が取り付けられている。X線源支持機構部51のマーク53が、レール1のマーク101aと一致する状態で、X線源支持機構部51が停止していることを、操作者が目視で確認することにより、X線源5は、レール1の長手方向について、臥位用の透視撮影用X線源位置1aにあることを操作者は確認することができる。
【0036】
また、図示していないが、X線源支持機構部51は、X線制御ユニット31の制御により内部レール150の長手方向に沿ったX線源5の移動を停止させるブレーキと、内部レール150の長手方向に沿ったX線源5の位置を検出するX線源位置検出器とを備えている。
【0037】
操作者がハンドル22を操作して内部レール150のブレーキを解除し、ハンドル22を掴んで内部レール150の長手方向に移動させることにより、内部レール150の長手方向にX線源5を吊り下げた台車151を移動させることができる。X線制御ユニット31は、内部レール150の長手方向のX線源5の位置を検出するX線源位置検出器の出力を受け取って、X線源5が、内部レール150上の予め定めた透視撮影用X線源位置152に所定の距離L2まで接近したかどうかを判定し、所定の距離L2まで接近した場合には、ブレーキの動作を開始させる。距離L2は、予め求めておいたブレーキの制動距離に設定されている。これにより、ブレーキの制動動作により、X線源5を吊り下げた台車151は、内部レール150上の透視撮影用X線源位置152で停止する。これにより、内部レール150の長手方向(レール1の長手方向に垂直な方向)についても、X線源5を臥位用撮影台4aのX線検出器2aに対向する位置に配置することができる。これにより、X線源5の照射野5aを、X線検出器2a,2bの受像面20a、20bの内側に位置するように配置することが可能になる。
立位用撮影台4bの場合も、同様であり、レール1の長手方向についてX線源5を移動させ、立位用の透視撮影用X線源位置1bに配置した後、内部レール150の長手方向(レール1の長手方向に垂直な方向)について、X線源5を移動させ、立位用の透視撮影用X線源位置152に配置することにより、立位用撮影台4bのX線検出器2bに対向する位置に、X線源5を配置することができる。
【0038】
内部レール150には、透視撮影用X線源位置152に、目印となるマーク153が、図3のように取り付けられている。台車151には側面にマーク154が取り付けられている。マーク153とマーク154が一致していることにより、内部レール150の長手方向について、X線源5が透視撮影用X線源位置152にあることを操作者は目視で確認できる。
【0039】
また、操作者は、透視ではなく、撮影を行いたい場合には、X線制御ユニット31の制御により透視撮影用X線源位置1aまたは位置1bに停止したX線源支持機構部51を、ハンドル22によりブレーキ33を手動で解除して、所望の位置に移動させることも可能である。内部レールの長手方向についても同様に所望の位置に移動させることが可能である。
【0040】
X線源5の構造について詳しく説明する。X線源5は、筐体と、筐体内部に配置されたX線管と、X線管から出射されたX線の照射範囲を制限する絞り6とを備えている。筐体は、X線源支持機構部51の支柱部52の下端によって支持されている。筐体には、X線源5を回転させる回転機構と、回転機構の回転角度を検出する角度検出部50が備えられている。
【0041】
操作者がハンドル22を操作して、回転機構を回転させることにより、X線源5がX線を照射する方向を、少なくとも下方(0度)から水平方向(90度)までの角度範囲について変化させることができる。X線源5がX線を照射する方向が、下方である場合、臥位用撮影台4a上の被検体に対してX線を照射して撮影を行うことができる。また、X線源5がX線を照射する方向が、水平である場合、立位用撮影台4b上の被検体に対してX線を照射して撮影を行うことができる。
【0042】
角度検出部50の出力は、X線制御ユニット31に入力され、X線制御ユニット31は、臥位撮影か、立位撮像かをX線源5の回転角度から判断することができる。
【0043】
臥位用撮影台4aは、上述したように、被検体10を搭載する天板41と、天板41を支持する枠体45と、枠体45を床面に対して支持する脚部16とを備えている。
【0044】
脚部16には伸縮機構が備えられ、枠体45を所望の高さで支持する。
【0045】
枠体45の下面には、検出器保持部43が配置されている。検出器保持部43は、X線検出器2aを収容したトレー42を保持する。検出器保持部43は、トレー42を天板41の長手方向に沿ってスライドさせることができるように構成されている。例えば検出器保持部43は、天板41の長手方向に沿ったレール状の部材であり、トレー42は、検出器保持部43と係合し、検出器保持部43の長手方向に移動する構成とすることができる。
【0046】
検出器保持部43には、トレー42が、予め定めた透視撮影用トレー位置41aにあるかどうかを検出するトレー位置センサ44が備えられている。
【0047】
例えばトレー位置センサ44は、図4(b)に示すように、検出器保持部43に備えられたマイクロスイッチ44aを含み、マイクロスイッチ44aは、トレー42に備えられたドグ44bと接触することにより動作し、トレー42が予め定めた透視撮影用トレー位置41aにあることを検出する構成である。また、マイクロスイッチ44aは、光学的にドグ44bを検出する構成であってもよい。
【0048】
また、検出器保持部43には、マイクロスイッチ用レール44cが取り付けられ、マイクロスイッチ用レール44cに沿った任意の位置にマイクロスイッチ44aを取り付け可能な構成としてもよい。
【0049】
検出器保持部43には、透視撮影用トレー位置41aを示すマーク43aが備えらえている。トレー42には、マーク42aが備えらえている。トレー42のマーク42aが、検出器保持部43のマーク43aと一致している場合(図4(a))、トレー42は、透視撮影用トレー位置41aにあることを操作者は目視で確認することができる。
【0050】
X線制御ユニット31が、透視撮影スイッチ24の操作を許可する所定の条件には、トレー位置センサ44が、トレー42が検出器保持部43上の所定の透視撮影用トレー位置41aにあることを検出している、という条件が含まれている。この条件を満たすことにより、レール1のX線源位置1aに停止したX線源5のレール1の長手方向の位置が、臥位用撮影台4aの透視撮影用トレー位置41aにあるトレー42に正しい向きで保持されたX線検出器2aの中心位置と一致する。
【0051】
また、トレー42には、X線検出器2aが予め定めた正しい向きで載置されているかどうかを検出する向き検出部46が備えられている。X線検出器2aは、ここでは、半切サイズのFPD(フラットパネルディテクタ)を用いる。FPDには、X線を検出結果である信号を出力するためのコネクタ21が長辺の端面に備えられ、コネクタ21にはケーブル21aが接続されている。
【0052】
図5(a)に示すように、向き検出部46は、2つのセンサ46a,46bを含む。センサ46a,46bは、トレー42の上面の予め定めた位置にそれぞれ配置され、センサ46a,46bの上にX線検出器2aが搭載されているかどうかを検出する。センサ46a,46bとしては、例えば、X線検出器2aに向かって光を出射し、反射光を受光することにより、X線検出器2aが存在することを検出する光電センサを用いることができる。
【0053】
センサ46aとセンサ46bのトレー42の幅方向における間隔は、半切サイズ(35.6×43.2cm)のX線検出器2aの場合、短辺より大きく長辺寄り短い距離(例えば380mm)に設定されている。センサ46aとセンサ46bのトレー42上の位置は、X線検出器2aが正しい配置でトレー42に搭載されたときに、センサ46aとセンサ46bの両方がX線検出器2aで覆われ、X線検出器2aが正しくない配置でトレー42に搭載されたときに、センサ46aおよびセンサ46bのうちの一方のみがX線検出器2aで覆われるように定められている。なお、ここでは、上記正しい配置とは、半切サイズのX線検出器2aの長辺が、トレー42の幅方向に一致する向きであり、正しくない配置とは、半切サイズのX線検出器2aの長辺が、トレー42の幅方向に直交する向きである。
【0054】
また、向き検出部46は、センサ46a,46bの他に、X線検出器2aのコネクタ21が、トレー42の手前側(取手42b側)にあるかどうかを検出するケーブル接続検出部47をさらに備えている。コネクタ21がトレー42の手前側に位置するようにX線検出器2aをトレー42に搭載するのは、ケーブル21aをトレー42から引き出して、X線画像処理装置40に接続するためである。ここでは、ケーブル接続検出部47は、ケーブル21aの端子が、X線画像処理装置40に接続されているかどうかを検出することにより、コネクタ21がトレー42の手前側にあるかどうかを検出する。例えば、ケーブル接続検出部47は、ケーブル21aの端子がX線画像処理装置40の差し込み口に差し込まれているかどうかを検出するセンサであってもよい。具体的には、差し込み口の周囲に設けられたマイクロスイッチや光センサをケーブル接続検出部47として用いることができる。また、X線画像処理装置40の差し込み口に、端子が差し込まれ、X線検出器2aと電気的に接続したかどうかを、X線画像処理装置40が電気的に判定する回路をX線画像処理装置40内に配置し、ケーブル接続検出部47として用いてもよい。また、X線画像処理装置40が、ケーブル接続検出部47を兼用し、X線画像処理装置40がX線検出器2aの出力を受け取った場合には、ケーブル21aの端子が接続されていることを示す信号を、X線制御ユニット31に出力する構成であってもよい。
【0055】
X線制御ユニット31は、向き検出部46が、X線検出器2aが所定の位置および向きでトレー42に搭載されていることを検出している場合には、透視撮影スイッチ24の操作を許可する。
【0056】
すなわち、向き検出部46のセンサ46a,46bがいずれもX線検出器2aが上に載っていることを検出し、ケーブル接続検出部47が、ケーブル21aがX線画像処理装置40に接続されていることを検出している場合には、図5(a)のようにX線検出器2aが正しい向きでトレー42に搭載されているので、X線制御ユニット31は、透視撮影を許可する(図5(g)参照)。
【0057】
一方、向き検出部46のセンサ46a,46bはいずれもX線検出器2aが上に載っていることを検出しているが、ケーブル接続検出部47が、ケーブル21aがX線画像処理装置40に接続されていることを検出していない場合には、図5(b)のようにX線検出器2aの本体は正しい向きであるが、コネクタ21がトレー42の奥に向いており、ケーブル21aをトレー42から引き出せない状態であるので、X線制御ユニット31は、透視撮影を許可しない(図5(g)参照)。
【0058】
また、向き検出部46のセンサ46a,46bは、いずれか一方のみがX線検出器2aが上に載っていることを検出し、他方は、X線検出器2aを検出していない場合、ケーブル21aがX線画像処理装置40に接続されていることを検出している場合であっても、図5(c)~(e)のようにX線検出器2aの本体の向きが正しくない(X線検出器2aの長辺が、トレーの幅方向と直交)状態であるので、X線制御ユニット31は、透視撮影を許可しない(図5(g)参照)。
【0059】
次に、X線源5を吊り下げている支柱部52の伸縮機構と、臥位用撮影台4aの脚部16の伸縮機構について説明する。
【0060】
支柱部52は、上下方向に伸縮可能な伸縮機構として、スライドレールと、スライドレールを駆動して伸縮させる駆動部と、伸縮機構の変位を検出することによりX線源5の位置を検出する変位センサ52aを備えている。変位センサ52aとしては、例えばポテンシオメータを用いることができる。
【0061】
一方、脚部16は、上下方向に伸縮可能な伸縮機構として、スライドレールと、スライドレールを駆動して伸縮させる駆動部と、伸縮機構の変位を検出することによりX線検出器2aの位置を検出する変位センサ16aを備えている。変位センサ16aとしては、例えばポテンシオメータを用いることができる。
【0062】
X線制御ユニット31は、変位センサ52aの出力を取り込んでX線源5の位置を取得し、支柱部52の駆動部を動作させることにより、X線源5を所望の高さに配置することができる。また、X線制御ユニット31は、変位センサ16aの出力を取り込んで、X線検出器2aの位置を取得し、脚部16の駆動部を動作させることにより、X線検出器2aを所望の高さに支持することができる。
【0063】
また、操作者がハンドル22を掴んで上下動させることにより、手動でX線源5を所望の位置に配置することも可能である。
【0064】
ハンドル22またはX線操作卓25に備えられているオートトラッキングスイッチがオンになっている場合、X線制御ユニット31は、脚部16の変位センサ16aの出力から、床面からのX線検出器2aまでに高さを得て、さらに、X線源5を支持する支柱部52の変位センサ52aの出力からX線源5の高さを得て、X線源5の焦点位置がX線検出器2aの受像面に一致するように、支柱部52の駆動部を動作させ、X線源5をX線検出器2aの変位に追従させて上下動させる(図6参照)。
【0065】
つぎに、立位用撮影台4bについて説明する。
【0066】
立位用撮影台4bは、上述したように、X線検出器2bを保持する立位用トレー61と、X線検出器2bの受像面20bを床面に垂直に向けて保持する立位用検出器保持部62と、立位用検出器保持部62を床面に対して上下動可能に支持する立位用脚部63とを備えている。立位用脚部63は、スライドレールと、スライドレールを駆動して伸縮させる駆動部とを備え、駆動部が動作することにより、立位用検出器保持部62を上下動させることができる。これにより、操作者の所望の高さにX線検出器2bを支持することができる。
【0067】
また、立位用脚部63には、立位用検出器保持部62の高さを検出するセンサ54が備えられている。センサ54が検出した立位用検出器保持部62の高さは、X線制御ユニット31に入力される。
【0068】
X線制御ユニット31は、ハンドル22またはX線操作卓25に備えられているオートトラッキングスイッチがオンになっていて、かつ、X線源5が90度回転して立位撮影用の向きに設定されている場合、センサ54の出力から、床面からのX線検出器2bの受像面の中心までに高さを求め、X線源5を支持する支柱部52の駆動部に駆動量を指示する。これにより、X線源5の高さが、X線検出器2aの受像面の中心に一致するようにX線源5を上下動させ、X線源5を立位用のX線検出器2bの上下動に追従させることができる(図7参照)。
【0069】
X線制御ユニット31が透視撮影スイッチ24の操作を許可する所定の条件には、高さ調節部が、X線源5をX線検出器と対向する位置に配置しているという条件が含まれている。
【0070】
立位用トレー61の構成は、臥位用のトレー42と同様であり、X線検出器2bが予め定めた正しい向きで載置されているかどうかを検出する向き検出部が備えられている。立位用トレー61の向き検出部は、2つのセンサ46a,46bを含み、臥位用のトレー42の向き検出部46と同様の構成であるので詳細な説明を省略する。また、立位用トレー61の向き検出部は、X線検出器2bのコネクタ21が、トレー42の手前側(取手42b側)にあるかどうかを検出するケーブル接続検出部をさらに備えている。ケーブル接続検出部は、臥位用のトレー42のケーブル接続検出部47と同様の構成であるので説明を省略する。
【0071】
また、X線源5の絞り6には、絞り6の筐体の側面に、絞り6の開度(照射範囲)を調整するための調整部601,602が備えられている。調整部601は、照射範囲の縦方向の開度を設定し、調整部602の照射範囲の横方向の開度を設定する。調整部601,602は、操作者が回転させることにより、開度が変化する。調整部601,602には、三角形の指標プレート611,612が備えられている。絞り6の筐体の側面には、絞り6の照射範囲が、X線検出器2a,2bの受像面20a,20bに一致する開度(透視撮影時の最大開度)を示す目盛り621、622が、X線検出器2a,2bのサイズに応じて予め描かれている。図8(a)は、X線検出器2a,2bが17インチ×17インチの場合の受像面20a,20bに一致する開度(透視撮影時の最大開度)を示す目盛り621、622を示し、図8(b)は、X線検出器2a,2bが14インチ×17インチの場合の受像面20a,20bに一致する開度(透視撮影時の最大開度)を示す目盛り621、622を示す。
【0072】
操作者は、三角形の指標プレート611,612の先端が、目盛り621、622よりも内側(絞り6の筐体の中央寄り)の範囲で、所望の位置を向くように調整部601,602を回転させることにより、所望の開度を絞り6に設定することができる。
【0073】
<透視撮影時のX線制御ユニット31の制御動作>
つぎに、本実施形態のX線撮影装置を用いて透視撮影を行う場合、X線制御ユニット31は、図9のフローチャートのように動作する。
【0074】
X線制御ユニット31は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサーと、メモリとを備えたコンピュータ等によって構成され、CPUが、メモリに格納されたプログラムを読み込んで実行することにより、図9のフローの動作をソフトウエアにより実現する。なお、X線制御ユニット31は、その一部および全部をハードウエアにより構成することも可能である。例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)のようなカスタムICや、FPGA(Field-Programmable Gate Array)のようなプログラマブルICを用いて、各部の機能を実現するように回路設計を行えばよい。
【0075】
(ステップ800、801)
X線制御ユニット31は、ハンドル22またはX線操作卓25を操作者が操作して透視モードに切り替えたことを検出した場合(ステップ800)、角度検出部50の出力を取り込み、X線源5の向きを判定する。X線源5の角度が下向きである場合、臥位での撮影であると判定して、ステップ802に進み、X線源5の角度が横向きである場合、立位での撮影であると判定してステップ813に進む。なお、操作者が、X線操作卓25等の操作によって臥位か立位かを入力し、X線制御ユニット31が入力を受け取ることにより判定してもよい。
【0076】
(ステップ802、808)
臥位での撮影の場合、X線制御ユニット31は、さらに角度検出部50の出力からX線源5の角度が、0°(下向き)かどうかを判定する。0°ではない場合、X線源5の照射野5aが臥位用撮影台4aのX線検出器2aの受像面20aの内側に入らないため、X線制御ユニット31は、ステップ808に進み、エラー表示をX線画像処理装置40のモニタ49に表示する。具体的には例えば、図10(a)のように、ステップ808において、X線制御ユニット31は、「X線源の角度が0°ではありません」とモニタ49に表示する。
【0077】
ステップ802においてX線源5の角度が、0°である場合、X線制御ユニット31は、ステップ803に進む。
【0078】
(ステップ803、809)
X線制御ユニット31は、ステップ803において、X線源位置検出器34の出力を取り込んで、レール1の長手方向および内部レール150の長手方向についてX線源5が透視撮影用X線源位置1a、152に停止しているかどうかを判定する。
【0079】
さらに、X線制御ユニット31は、トレー位置センサ44の出力を取り込んで、トレー42が、透視撮影用トレー位置41aにあるかどうかを判定する。
【0080】
X線源5が透視撮影用X線源位置1a、152に停止していないか、または、トレー42が透視撮影用トレー位置41aにない場合、ステップ809に進み、エラー表示をX線画像処理装置40のモニタ49に表示する。具体的には、ステップ809において、X線制御ユニット31は、「照射野中心と受像面の中心が一致していません」とモニタ49に表示する。
【0081】
X線源5が透視撮影用X線源位置1aに停止し、かつ、トレー42が透視撮影用トレー位置41aにある場合、X線制御ユニット31はステップ804に進む。
【0082】
(ステップ804、810)
X線制御ユニット31は、ステップ804において、ハンドル22またはX線操作卓25に備えられているオートトラッキングスイッチがオンになっているかどうか判定する。
オートトラッキングスイッチがオンになっていない場合、ステップ810に進み、エラー表示をX線画像処理装置40のモニタ49に表示する。具体的には、ステップ810において、X線制御ユニット31は、「X線源とX線検出器の距離が指定値ではありません」とモニタ49に表示する。
【0083】
オートトラッキングスイッチがオンになっている場合、X線制御ユニット31はステップ805に進む。
【0084】
(ステップ805、811)
X線制御ユニット31は、ステップ805において、向き検出部46の検出結果を取り込み、トレー42上のX線検出器2aの向きを判定する。X線検出器2aがトレー42上に正しい向きで載置されていない場合、ステップ811に進み、エラー表示をX線画像処理装置40のモニタ49に表示する。具体的には、ステップ811において、X線制御ユニット31は、「X線検出器の向きが正しくありません」とモニタ49に表示する。
【0085】
X線検出器2aがトレー42上に正しい向きで載置されている場合、X線制御ユニット31はステップ806に進む。
【0086】
(ステップ806、812)
X線制御ユニット31は、ステップ806において、ハンドル22のX線源5の絞り6の調整部に設定されている開度を取り込み、X線検出器2aのサイズに応じて予め定めておいた所定値以下かどうかを判定する。絞り6の開度が、受像面20a,20bに一致する開度(透視撮影時の最大開度)より大きい場合、ステップ812に進み、エラー表示をX線画像処理装置40のモニタ49に表示する。具体的には、ステップ811において、X線制御ユニット31は、「絞りの開度が上限を超えています」とモニタ49に表示する。
【0087】
絞りの開度が、X線検出器2aに応じて予め定めておいた所定値以下の場合、X線制御ユニット31はステップ807に進む。
【0088】
(ステップ807)
X線制御ユニット31は、上述のようにステップ802~806で判定したすべての条件を満たしていたので、臥位での透視可能を操作者に報知する表示を、例えば図10(b)のようにモニタ49に表示し、透視撮影スイッチ24の操作を許可する。透視撮影スイッチ24が踏まれた(操作された)場合には、操作を受け付け、X線制御ユニット31は、高電圧発生装置32からX線源5に透視撮影用の管電流・管電圧を連続して供給する。
【0089】
これにより、X線源5からX線が連続して照射される。X線の照射野5aは、図2(a)に示すように、X線検出器2aの受像面20aの内側に位置する。よって、被検体10に無効被曝を避けながら、X線検出器2aにより被検体10を通過したX線を検出することができる。X線検出器2aにより検出された信号は、ケーブル21aを介してX線画像処理装置40に入力される。
【0090】
X線画像処理装置40の画像処理ユニット48は、受け取った信号からX線画像(動画)を生成し、モニタ49に表示する。
【0091】
これにより、通常は、X線検出器2aと、X線源5とを操作者の所望の位置に配置して、静止画撮影スイッチ23を操作者が操作することにより、静止画を撮影するX線撮影装置でありながら、ステップ802~806の条件を満たすときに限って透視画像を撮影することができる。
【0092】
一方、上記ステップ801において、X線制御ユニット31が、立位での撮影であると判定した場合、X線制御ユニット31は、ステップ813に進み、以下のように制御を行う。
【0093】
(ステップ813、819)
立位での撮影の場合、X線制御ユニット31は、まず角度検出部50の出力を取り込み、X線源5の向きを判定する。X線源5の角度が、90°または-90°(水平向き)ではない場合、X線源5の照射野5aが立位用撮影台4bのX線検出器2aの受像面20bの内側に入らないため、X線制御ユニット31は、ステップ819に進み、エラー表示をX線画像処理装置40のモニタ49に表示する。具体的には、ステップ819において、X線制御ユニット31は、「X線源の角度が90°または-90°ではありません」とモニタ49に表示する。
【0094】
ステップ813においてX線源5の角度が、0°である場合、X線制御ユニット31は、ステップ814に進む。
【0095】
(ステップ814、820)
X線制御ユニット31は、ステップ814において、ハンドル22またはX線操作卓25に備えられているオートトラッキングスイッチがオンになっているかどうか判定する。オートトラッキングスイッチがオンになっていない場合、ステップ820に進み、エラー表示をX線画像処理装置40のモニタ49に表示する。具体的には、ステップ820において、X線制御ユニット31は、「照射野中心と受像面の中心が一致していません」とモニタ49に表示する。
【0096】
オートトラッキングスイッチがオンになっている場合、X線制御ユニット31はステップ815に進む。
【0097】
(ステップ815、821)
X線制御ユニット31は、ステップ815において、X線源位置検出器34の出力を取り込んで、レール1の長手方向についてX線源5が透視撮影用X線源位置1bに停止し、内部レール150の長手方向についてX線源5が透視撮影用X線源位置152に停止しているかどうかを判定する。
【0098】
X線源5が透視撮影用X線源位置1b、152に停止していない場合、ステップ821に進み、エラー表示をX線画像処理装置40のモニタ49に表示する。具体的には、ステップ821において、X線制御ユニット31は、「X線源とX線検出器の距離が指定値ではありません」とモニタ49に表示する。
【0099】
X線源5が透視撮影用X線源位置1b、152に停止している場合、X線制御ユニット31はステップ816に進む。
【0100】
(ステップ816、822)
X線制御ユニット31は、ステップ816において、トレー61の向き検出部の検出結果を取り込み、トレー61上のX線検出器2bの向きを判定する。X線検出器2bがトレー61上に、正しい向きで載置されていない場合、ステップ822に進み、エラー表示をX線画像処理装置40のモニタ49に表示する。具体的には、ステップ811において、X線制御ユニット31は、「X線検出器の向きが正しくありません」とモニタ49に表示する。
【0101】
X線検出器2bがトレー61上に正しい向きで載置されている場合、X線制御ユニット31はステップ817に進む。
【0102】
(ステップ817、823)
X線制御ユニット31は、ステップ817において、ハンドル22のX線源5の絞り6の調整部に設定されている開度を取り込み、X線検出器2bのサイズに応じて予め定めておいた所定値以下かどうかを判定する。開度が所定値より大きい場合、ステップ823に進み、エラー表示をX線画像処理装置40のモニタ49に表示する。具体的には、ステップ811において、X線制御ユニット31は、「絞りの開度が上限を超えています」とモニタ49に表示する。
【0103】
絞りの開度が、X線検出器2bのサイズに応じて予め定めておいた所定値以下の場合、X線制御ユニット31はステップ818に進む。
【0104】
(ステップ818)
X線制御ユニット31は、上述のようにステップ813~817で判定したすべての条件を満たしていたので、立位での透視可能を操作者に報知する表示をモニタ49に表示し、透視撮影スイッチ24の操作を許可する。透視撮影スイッチ24が踏まれた(操作された)場合には、操作を受け付け、X線制御ユニット31は、高電圧発生装置32からX線源5に透視撮影用の管電流・管電圧を連続して供給する。
【0105】
これにより、X線源5からX線が連続して照射される。X線の照射野5aは、図2(a)に示すように、X線検出器2bの受像面20bの内側に位置する。よって、被検体10に無効被曝を避けながら、X線検出器2bにより被検体10を立位で透視撮影することができる。
【0106】
<静止画撮影時のX線制御ユニット31の制御動作>
操作者は、ハンドル22およびX線操作卓25を操作して、臥位および立位いずれの場合も、X線検出器2a、2bに対して、X線源5を所望の位置に配置する。すなわち、図2(a)のように、X線検出器2a、2bの受像面20a、20bの内側にX線の照射野5aが含まれる場合に限らず、図2(b)のように、受像面20a、20bの外側にX線の照射野5aの一部があってもよい。静止画撮影スイッチ23を操作者が操作した場合、X線制御ユニット31は操作を受け付け、高電圧発生装置32からX線源5に静止画撮影用の管電流・管電圧を供給する。
【0107】
これにより、X線源5からX線が曝射され、X線検出器2aまたは2bにより被検体10を通過したX線が検出される。X線検出器2aにより検出された信号は、ケーブル21aを介してX線画像処理装置40に入力される。X線画像処理装置40の画像処理ユニット48は、受け取った信号からX線画像(静止画)を生成し、モニタ49に表示する。
【0108】
上述してきたように、実施形態1のX線撮影装置は、天井に設置されたレール1に沿って、操作者が手動で自由にX線源を移動させることができるX線撮影装置でありながら、所定の複数条件を満たす場合には、臥位であっても立位であっても透視画像を撮影することが可能であり、利便性が高い。
【0109】
なお、本実施形態では、ステップ804においてオートトラッキングスイッチがオンになっていない場合、ステップ810でエラー表示をする構成であったが、手動でX線源5を上下動させて、図11のように支柱部52の伸縮機構を所定の高さ120に設定することにより、X線源5をX線検出器2aから所定の位置に配置してもよい。ただし、臥位用の撮影台4aの脚部16には、伸縮機構が備えられていないか、伸縮機構が動作しないように設定されている場合に限られる。
【0110】
<<実施形態2>>
実施形態1のX線撮影装置は、天井にレール1を設置した構造であったが、実施形態2のX線撮影装置は、図12に示すように、床面にレール201を設定した構造である。
【0111】
X線源支持機構部51は、レール201に嵌合し、レール201に沿ってスライド可能なベース253と、ベース253上に立設された支柱251を含む。支柱251には、上下方向にガイド溝256が設けられ、ガイド溝256にはアーム252の一端が上下動可能に嵌合している。アーム252の先端には、ジョイント255を介してX線源5が取り付けられている。ジョイント255は、X線源5を回転可能にアーム252の先端に保持している。これにより、X線源5の角度を臥位撮影用の0°(下向き)から立位撮影用の90°(水平向き)の範囲で少なくとも回転させることができる。
【0112】
アーム252は、内蔵されている駆動部によってガイド溝256に沿って上下動することが可能である。駆動部は、X線制御ユニット31により制御されている。これにより、X線源5と臥位用撮影台4aのX線検出器2aとの距離を所定の距離に保つようにX線源5を上下動させるオートトラッキングを行うことができる。また、X線源5と立位用撮影台4bのX線検出器2bの高さを一致させるオートトラッキングを行うこともできる。
【0113】
また、アーム252は、手動でガイド溝256に沿って上下動させることも可能である。その場合、支柱251の予め定めた高さに設けたマーク251aと、アーム252の基部に設けたマーク252aとを一致するように、手動でアーム252を上下方向に移動させることにより、予め定めた高さにある臥位用撮影台4aのX線検出器2aに対して所定の距離にX線源5を配置することができる。
【0114】
他の構成および動作は、実施形態1のX線撮影装置と同様であるので説明を省略する。
【0115】
実施形態2のX線撮影装置は、床面に設置されたレール201に沿って、操作者が手動で自由にX線源5を走行させることができるX線撮影装置でありながら、所定の複数条件を満たす場合には、臥位であっても立位であっても透視画像を撮影することが可能である。
【符号の説明】
【0116】
1 レール
1a 透視撮影用X線源位置
1b 透視撮影用X線源位置
2a X線検出器
2b X線検出器
4a 臥位用の撮影台
4b 立位用の撮影台
5 X線源
5a 照射野
10 被検体
16 脚部
16a 変位センサ
20a 受像面
20b 受像面
21 コネクタ
21a ケーブル
22 ハンドル
23 静止画撮影スイッチ
24 透視撮影スイッチ
25 X線操作卓
30 X線高電圧装置
31 X線制御ユニット
32 高電圧発生装置
33 ブレーキ
34 X線源位置検出器
40 X線画像処理装置
41 天板
41a 透視撮影用トレー位置
42 トレー
42a マーク
42b 取手
43 検出器保持部
43a マーク
44 トレー位置センサ
44a マイクロスイッチ
44b ドグ
44c マイクロスイッチ用レール
45 枠体
46 向き検出部
46a センサ
46b センサ
47 ケーブル接続検出部
48 画像処理ユニット
49 モニタ
50 角度検出部
51 X線源支持機構部
52 支柱部
52a 変位センサ
53 マーク
54 センサ
61 立位用トレー
62 立位用検出器保持部
63 立位用脚部
101a マーク
101b マーク
150 内部レール
151 台車
201 レール
251 支柱
251a マーク
252 アーム
252a マーク
253 ベース
255 ジョイント
256 ガイド溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12