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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134081
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】タイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/38 20060101AFI20240926BHJP
【FI】
B29D30/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044187
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隆聖
【テーマコード(参考)】
4F215
4F501
【Fターム(参考)】
4F215AH20
4F215AK03
4F215AR20
4F215VA11
4F215VD07
4F215VL01
4F215VL11
4F215VM01
4F215VM02
4F215VM04
4F215VR03
4F501TA11
4F501TC07
4F501TE01
4F501TE10
4F501TF01
4F501TF02
4F501TF04
4F501TN03
4F501TT03
4F501TU20
4F501TV13
(57)【要約】
【課題】タイヤの性能を安定させること
【解決手段】
タイヤ10の製造方法は。複数のブレーカー材料を用意する工程と、トレッドゴムと、カーカスとの間に、複数のブレーカー材料を配置する工程とを含む。複数のブレーカー材料41~44を用意する工程では、複数のブレーカー材料41~44のうち少なくとも1つのブレーカー材料を用意する際に、当該ブレーカー材料が半加硫状態になるように電子線が放射される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のブレーカー材料を用意する工程と、
トレッドゴムと、カーカスとの間に、前記複数のブレーカー材料を配置する工程と
を含み、
前記複数のブレーカー材料を用意する工程では、前記複数のブレーカー材料のうち少なくとも1つのブレーカー材料を用意する際に、当該ブレーカー材料が半加硫状態になるように電子線が放射される、
タイヤの製造方法。
【請求項2】
複数のブレーカー材料を用意する工程は、
エッジ部にカバリングが施されたブレーカー材料を用意する工程と、
エッジ部にカバリングが施されていないブレーカー材料を用意する工程と
を含み、
前記エッジ部にカバリングが施されていないブレーカー材料を用意する工程は、当該ブレーカー材料が半加硫状態になるように電子線を放射する工程を含み、
前記複数のブレーカー材料を配置する工程では、
前記トレッドゴムと、前記カーカスとの間に、前記エッジ部にカバリングが施されたブレーカー材料と、前記エッジ部にカバリングが施されていないブレーカー材料とが予め定められた順番で重ねられる、
請求項1に記載されたタイヤの製造方法。
【請求項3】
前記電子線を放射する工程において、電子線が放射されるブレーカー材料の単位質量当たりの電子線を放射する量が、34.8kGy以上35.2kGy以下である、請求項1に記載されたタイヤの製造方法。
【請求項4】
前記電子線の強度が、電子線が放射されるブレーカー材料の単位質量当たり475kV以上525kVである、請求項1に記載されたタイヤの製造方法。
【請求項5】
前記複数のブレーカー材料を用意する工程は、
並行に並べられた複数のコード材にゴムシートを貼り付けて幅広のブレーカー材料を得る工程と、
前記幅広のブレーカー材料にフィルム材を貼り付けて搬送し、予め定められた幅に裁断する工程と、
前記裁断する工程後に、前記ブレーカー材料に電子線が放射される工程と、
を含む、請求項1に記載されたタイヤの製造方法。
【請求項6】
前記複数のブレーカー材料を用意する工程は、
並行に並べられた複数のコード材にゴムシートを貼り付けて幅広のブレーカー材料を得る工程と、
前記幅広のブレーカー材料にフィルム材を貼り付けて搬送する工程と、
前記幅広のブレーカー材料に電子線が放射される工程と、
前記幅広のブレーカー材料を予め定められた幅に裁断する工程と、
を含む、請求項1に記載されたタイヤの製造方法。
【請求項7】
前記複数のブレーカー材料を用意する工程は、
並行に並べられた複数のコード材にゴムシートを貼り付けて幅広のブレーカー材料を得る工程と、
幅広のブレーカー材料にフィルム材を貼り付けて搬送し、予め定められた幅に裁断する工程と
を備えており、
前記裁断する工程の後、前記複数のブレーカー材料のうち一部のブレーカー材料は、エッジ部にカバリングが施され、カバリングが施されない他のブレーカー材料は、電子線が放射される、請求項1に記載されたタイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2008-138047号公報には、トラック・バス用タイヤではタイヤの耐久性・操縦安定性を確保するため、複数枚のブレーカー材料が使用されること、および、剥離を抑制するために、ブレーカーエッジにゴムシートをカバリングし、ブレーカーエッジ周りのゴムゲージを確保し、大きな歪を受けた場合にも、剥離しにくい構造が採用されることが開示されている。同公報によれば、ブレーカーエッジカバリングとは、ブレーカーのエッジ部(ブレーカーエッジ)を補強する部材であり、大きな変形応力を受け、剥離しやすいブレーカーエッジの剥離を抑制する部材である。同公報には、ブレーカーエッジカバリング用ゴム組成物に関し、ゴム成分100重量部に対して、平均短径(A)に対する平均長径(B)の比(B/A)が1.1~30である紙繊維を1~15重量部配合することが開示されている。
【0003】
特開2016-36947号公報には、プライ材料の製造方法が開示されている。ここで開示されるプライ材料の製造方法は、タイヤ用の未加硫のプライ材料に、電子線を放射してプライ材料を半加硫する電子線放射工程と、電子線放射工程を終えたプライ材料の表面に、導電性を有する糸を付着させる導電性糸付着工程とを含んでいる。電子線放射工程は、プライ材料に導電性の糸を付着させる前に行われる。同公報では、このため、例えば、電子線が、導電性の糸を介して作業者や放射装置に悪影響を及ぼすことがない、とされている。
【0004】
特開2020-104459号公報には、ランフラットタイヤの製造方法が開示されている。同公報では、未加硫のゴムストリップを押出機から押し出す押出工程と、ゴムストリップを用いて成形されたサイド補強ゴムを用いて生タイヤを成形する成形工程と、生タイヤを加硫する加硫工程とを含んでいる。ここで、押出工程と成形工程との間には、ゴムストリップに電子線を放射してゴムストリップを予備加硫するEBR工程が含まれている。同公報では、これにより、加硫工程での加硫時間を短縮することのできる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-138047号公報
【特許文献2】特開2016-36947号公報
【特許文献3】特開2020-104459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、複数枚のブレーカー材料が用いられる場合でも、エッジ部に歪が溜まりにくい一部のブレーカーには、カバリングが施されない場合がある。ブレーカーのリールは、成形機にセットし、ポリで引きはがしながら送り出して成形する。ポリで引きはがしなら送り出すことでブレーカーには引っ張り力が働く。カバリングがあるブレーカーは引っ張られても伸びにくいが、それに比べて、カバリングの無いブレーカーは引っ張られるとブレーカーが伸びやすい。ブレーカーが伸びるとブレーカーの幅が狭くなる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここで提案されるタイヤの製造方法は、複数のブレーカー材料を用意する工程と、トレッドゴムと、カーカスとの間に、複数のブレーカー材料を配置する工程とを含む。複数のブレーカー材料を用意する工程では、複数のブレーカー材料のうち少なくとも1つのブレーカー材料を用意する際に、当該ブレーカー材料が半加硫状態になるように電子線が放射される。
【発明の効果】
【0008】
タイヤの製造方法によれば、電子線が放射されたブレーカー材料は、伸びが抑制され幅寸法が安定する。このため、タイヤの性能が安定する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、タイヤ10の断面構造を示す断面図である。
図2図2は、ブレーカー材料41~44が、帯状の状態でリール111~114に用意される工程を説明するフロー図である。
図3図3は、ローカバーを成形する成形装置100の模式図である。
図4図4は、エッジ部にカバリングが施されているブレーカー材料42,43を示す模式図である。
図5図5は、エッジ部にカバリングが施されていないブレーカー材料41,44を示す模式図である。
図6図6は、ここで提案されるタイヤ10の製造方法を説明するフロー図である。
図7図7は、第1ブレーカー41と第4ブレーカー44とが用意される工程を示す模式図である。
図8図8は、他の形態を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、ここで開示されるタイヤの製造方法を図面に基づいて説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。各図面は模式的に描かれており、必ずしも実物を反映していない。また、各図面は、一例を示すのみであり、特に言及されない限りにおいて本発明を限定しない。また、同一の作用を奏する部材・部位には、適宜に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0011】
〈タイヤ10〉
図1は、タイヤ10の断面構造を示す断面図である。図1では、タイヤ10のトレッド部11の幅方向に沿った断面が示されている。タイヤ10は、複数の未加硫のゴム部材が組み合わされた未加硫のタイヤであるローカバーが加硫され、一体化され、かつ、トレッドパターンなどの外形形状が成形されたものである。図1には、加硫前のローカバーでのタイヤ10を構成する部材の境界が分かるように、加硫前のゴム部材の境界が描かれている。加硫前のローカバーでのタイヤ10を構成する部材の境界について、加硫後は一体化されている。また、図を見やすくするために、一部においてハッチングは省略されている。なお、図1は、タイヤの一実施形態が例示されているに過ぎず、特に言及されない限りにおいて、タイヤの構造は、図1に示された形態に限定されない。また、各部材の配置や組み合わせる順番なども、特に言及されない限りにおいて変更されうる。タイヤ10は、トラック・バスなどに用いられ得る重荷重用のタイヤであり、トレッド部11に複数のブレーカー材料41~44が配置されている。
【0012】
図1に示されているタイヤ10は、トレッド部11の幅方向の両側には、ショルダー部12とサイドウォール部13が設けられている。サイドウォール部13の内径側の端部には、図示は省略されるが、ビード部が設けられている。
【0013】
ここで、ビード部は、ホイールに組み合わせる部分で、ホイールリムに全周に渡って装着され、タイヤ10とホイールリムを固定させる部位である。サイドウォール部13は、タイヤ10の側面で径方向に沿った部位である。サイドウォール部13は、タイヤが最もたわむ部分である。ショルダー部12は、サイドウォール部13とトレッド部11とを繋ぐ部分である。ショルダー部12は、路面と摩擦によって走行時に発生するトレッド部11や内部の熱を発散する役目がある。トレッド部11は、直接路面と接する部分であり、タイヤ10の外周面に設けられており、外周面に沿って周方向に連続した接地面を有している。トレッド部11は、路面との摩擦によって徐々に摩耗していく部位である。トレッド部11は、所要の厚さを有しており、予め定められたパターンの溝11aが形成されている。かかる溝11aは、トレッドパターンとも称される。トレッド部11には、周方向において予め定められた複数箇所にスリップサイン11bが設けられている。
【0014】
図1に示された形態では、タイヤ10は、ローカバーの状態において、インナーライナー21と、カーカス22と、クッションゴム23と、ブレーカー25と、アンダートレッドゴム26と、トレッドゴム27と、サイドウォールゴム28とを備えている。
【0015】
インナーライナー21は、タイヤコードの内側に配置されるゴムシートの層であり、空気入りタイヤの気密性を確保するための部材である。カーカス22は、タイヤコードと称されるコードが含まれたコード層である。この実施形態では、カーカス22は、複数の層で形成されている。インナーライナー21およびカーカス22は、それぞれ成形ドラムに巻かれることによって円筒状に成形される。インナーライナー21およびカーカス22の幅方向の両端部には、図示は省略するがビードが配置される。インナーライナー21およびカーカス22の幅方向の両端は、ビードを覆うように折り返されている。また、インナーライナー21およびカーカス22は、幅方向の中央部が外径側に膨らまされてトロイダル状に成形される。
【0016】
クッションゴム23と、ブレーカー25と、アンダートレッドゴム26と、トレッドゴム27と、サイドウォールゴム28とは、トロイダル状に成形されたインナーライナー21およびカーカス22の予め定められた位置に貼り付けられる。そして、ゴム材料の繋ぎ目などの形状が整えられることによって、未加硫のタイヤであるローカバーが作製される。
【0017】
ここで、トレッドゴム27は、走行時に接地する部分となるトレッド部11を構成するゴム部材である。トレッドゴム27は、ローカバーのうち外周面に貼られるゴム層であり、所要の厚さを有している。ブレーカー25は、配置されたコード層である。サイドウォールゴム28は、サイドウォール部13に貼り付けられたゴムである。
【0018】
ブレーカー25は、路面等からの衝撃を緩和し、トレッドゴム27に受けた外傷が、直接カーカス22に達するのを防ぐとともに、トレッドゴム27とカーカス22との剥離を防止する役割を果たす。ブレーカー25には、複数枚のブレーカー材料41~44が巻かれている。ブレーカー材料41~44は、それぞれコードが並列に並べられた帯状のゴムシートである。
【0019】
クッションゴム23は、ブレーカー25のエッジ部において、ブレーカー25とカーカス22との間に配置されている。ブレーカー25のエッジ部が受ける力がカーカス22に作用するのを緩和する緩衝材として作用する。
【0020】
アンダートレッドゴム26は、トレッドゴム27とブレーカー25との間に配置されている。この実施形態では、アンダートレッドゴム26は、特に、ブレーカー25のエッジ部を覆うように設けられており、ブレーカー25のエッジ部が受ける力がトレッドゴム27に作用するのを緩和する緩衝材として作用する。
【0021】
〈ブレーカー材料41~44〉
図1に示された形態では、ブレーカー25には、4枚のブレーカー材料41~44が巻かれている。ここで、4枚のブレーカー材料41~44は、カーカス22側(タイヤ10の内径側)からトレッド11側(タイヤ10の外径側)に向けて順に、第1ブレーカー41,第2ブレーカー42,第3ブレーカー43,第4ブレーカー44と称される。4枚のブレーカー材料41~44は、それぞれコードが並列に並べられた帯状のゴムシートである。コードには、スチールやテキスタイルが用いられる。トラック・バス用タイヤ(重荷重用のタイヤ)では、カーカス22のコードや、ブレーカー材料41~44のコードには、スチールが用いられる。また、カーカス22のコードは、タイヤ10のラジアル方向に沿って配され、ブレーカー材料41~44のコードは、タイヤ10の周方向に沿って配されている。
【0022】
図1に示された形態では、4枚のブレーカー材料41~44のうち、第2ブレーカー42,第3ブレーカー43は幅が広い。第2ブレーカー42および第3ブレーカー43のエッジ部は、車両走行時の振動を受けやすく、歪みが溜まりやすい。このため、第2ブレーカー42および第3ブレーカー43のエッジ部には、カバリング42a,43aがそれぞれ施されている。ここでカバリング42a,43aは、第2ブレーカー42と第3ブレーカー43のエッジ部を覆い、エッジ部を保護する部材である。カバリング42a,43aは、例えば、ゴム材料で構成されているとよい。かかるカバリング42a,43aが施されていることによって、第2ブレーカー42および第3ブレーカー43のエッジ部が車両走行時の振動を受けても、機械疲労や熱疲労が緩和される。また、タイヤ10のトレッド部11の端部の剛性を向上させることができ、タイヤ10の偏摩耗を抑制することができる。
【0023】
第1ブレーカー41と第4ブレーカー44は、第2ブレーカー42および第3ブレーカー43に比べて幅が狭く、上記のようにエッジ部に歪みが溜まる問題は生じにくい。このため、第1ブレーカー41と第4ブレーカー44のエッジ部には、それぞれカバリングが施されていない。ブレーカー材料41~44は、それぞれ帯状の状態でリール111~114に用意される。
【0024】
図2は、ブレーカー材料41~44が、帯状の状態でリール111~114に用意される工程を説明するフロー図である。ブレーカー材料41~44は、上述のように並行に並べられた複数のスチールコードにゴムシートが貼り付けられた材料である。ブレーカー材料41~44は、複数のスチールコードにゴムシートが貼り付けられた幅広のシートが用意される(S11)。そして、用意された幅広のシートは、搬送用にフィルム材に貼られて所定の経路を通され、引っ張られながら搬送され(S12)、ブレーカー材料41~44の予め定められた幅に応じて裁断される(S13)。その後、図2に示されているように、第2ブレーカー42と第3ブレーカー43は、エッジにゴムシートでカバリングされ(S15)、その後、リール112,113にそれぞれ巻き取られる(S16)。第1ブレーカー41と第4ブレーカー44は、カバリングされずにリール111,114にそれぞれ巻き取られる(S18)。トレッドゴム27は、ゴム材料がダイを通して押し出されて、所定の厚さおよび幅の帯状のシートで得られ、リール110に巻き取られる(図1参照)。
【0025】
図3は、ローカバーを成形する成形装置100の模式図である。図3では、ローカバーを成形する成形装置100のうち、トレッドゴム27と、ブレーカー材料41~44とが組み付けられる部位が模式的に描かれている。なお、図3では、ローカバーを構成するその他の部材については、図示が省略されている。
【0026】
ブレーカー材料41~44は、それぞれ引き出し用のフィルムが貼り付けられた状態で予め定められた幅に裁断されており、リール110~114に巻き取られた状態で用意されている。トレッドゴム27は、リール110に巻き取られている。第1ブレーカー41は、リール111に巻き取られている。第2ブレーカー42は、リール112に巻き取られている。第3ブレーカー43は、リール113に巻き取られている。第4ブレーカー44は、リール114に巻き取られている。このうち、第2ブレーカー42と第3ブレーカー43は、エッジ部にカバリングが施されている。第1ブレーカー41と第4ブレーカー44は、エッジ部にカバリングが施されていない。
【0027】
図3に示されているように、トレッドゴム27が巻き取られたリール110と、ブレーカー材料41~44が巻き取られたリール111~114は、それぞれローカバーを成形するための成形装置100にセットされる。成形装置100において、トレッドゴム27、ブレーカー材料41~44は、それぞれフィルム41a~44aを引き剥がしつつリール110~114から引き出され、それぞれ引き出し経路に設けられたカッター120~124によって、予め定められた長さに切断されて、搬送コンベア121を通じて順に成形ドラム122に送られる。フィルム41a~44aは、リール131~134に巻き取られて回収されるとよい。
【0028】
成形ドラム122では、ブレーカー材料41~44と、トレッドゴム27とが予め定められた順番に重ねられた第2カバーが作製されてもよい。この場合、インナーライナー21やカーカス22などで構成され、トロイダル状に成形された第1カバーが別途作製されているとよく。第2カバーは、第1カバーの外周にセットされ、第1カバーがトロイダル状に変形するのに合わせて第1カバーに貼り付けられるとよい。また、他の形態として、インナーライナー21やカーカス22などで構成され、トロイダル状に成形された第1カバーの外周に、ブレーカー材料41~44と、トレッドゴム27とが、予め定められた順に巻き付けられてもよい。
【0029】
ところで、図4は、エッジ部にカバリングが施されているブレーカー材料42,43を示す模式図である。図5は、エッジ部にカバリングが施されていないブレーカー材料41,44を示す模式図である。第2ブレーカー42と第3ブレーカー43は、図4に示されているように、エッジ部にカバリング42a,43aが施されている。カバリング42a,43aが施されたエッジ部の剛性は高い。このため、成形装置100においてリール112,113から引き出される際に、長手方向に引っ張られても、第2ブレーカー42と第3ブレーカー43は、それぞれ伸びにくく、伸びに伴う変形が生じにくい。
【0030】
これに対して、第1ブレーカー41と第4ブレーカー44は、図5に示されているように、エッジ部にカバリングが施されていない。第1ブレーカー41と第4ブレーカー44は、成形装置100においてリール111,114から引き出される際に、それぞれ長手方向に伸びやすい。そして、図5に破線で示されているように、第1ブレーカー41と第4ブレーカー44は、伸びに伴って幅が狭くなりやすい。第1ブレーカー41と第4ブレーカー44の幅が狭くなると、タイヤ10の設置面積に対する第1ブレーカー41と第4ブレーカー44の幅が狭くなる。タイヤ10の設置面積に対して第1ブレーカー41と第4ブレーカー44の幅が狭くなると、これに起因してタイヤ10が偏摩耗する場合がありうる。
【0031】
〈電子線を放射する工程〉
ここで提案されるタイヤ10の製造方法には、複数のブレーカー材料を用意する工程と、トレッドゴムと、カーカスとの間に、複数のブレーカー材料を配置する工程とが含まれている。複数のブレーカー材料41~44を用意する工程では、複数のブレーカー材料41~44のうち少なくとも1つのブレーカー材料を用意する際に、当該ブレーカー材料が半加硫状態になるように電子線が放射される。図6は、ここで提案されるタイヤ10の製造方法を説明するフロー図である。ここで提案されるタイヤ10の製造方法では、図6に示されているように、エッジ部にカバリングが施されていない第1ブレーカー41と第4ブレーカー44を用意する工程において、当該ブレーカー材料が半加硫状態になるように電子線を放射する工程(S17)が含まれている。この場合、電子線が放射されたブレーカー材料は、伸びが抑制され幅寸法が安定する。このため、製造されるタイヤの性能が安定する。かかるタイヤの製造方法は、特に、一部においてエッジ部がカバリング42a,43aされたブレーカー材料42,43が含まれうるタイヤ、例えば、トラック・バス用タイヤ(重荷重用のタイヤ)において有効である。
【0032】
ここで、半加硫状態とは、ゴムの一部において加硫が生じているが、未加硫部分も一定程度残っている状態をいう。第1ブレーカー41と第4ブレーカー44は、電子線が放射されると、第1ブレーカー41と第4ブレーカー44においてトッピングされたゴムの加硫が部分的に進む。ゴムの加硫が部分的に進むと、加硫が生じた部分において、ゴムの架橋によってゴムが伸びても戻ろうとする力が働く。このため、成形装置100において、リール111,114から第1ブレーカー41と第4ブレーカー44が引っ張り出される場合でも、第1ブレーカー41と第4ブレーカー44の幅寸法が変化しにくくなる。電子線を放射する工程では、第1ブレーカー41と第4ブレーカー44の幅寸法が変化しにくくなる程度に、第1ブレーカー41と第4ブレーカー44が部分的に加硫されるとよく、そのような半加硫状態が実現される程度の強度で電子線が放射されるとよい。
【0033】
なお、半加硫状態の程度は、例えば、成形装置100においてリール111,114から引き出される際に、それぞれ伸びが抑制される程度に加硫反応が生じるように調整されているとよい。また、ローカバーを成形する際に他の部材と密着するように所要の粘度を有しているとよい。加硫が進みすぎると、ゴムの硬度が高くなりすぎ、コード材とゴムとの密着性が悪くなる。かかる観点において、第1ブレーカー41と第4ブレーカー44にトッピングされたゴムのうち、大凡10%以上、好ましくは20%以上、また、60%以下、好ましくは50%以下において、未加硫の状態で残っているとよい。
【0034】
本発明者の知見では、電子線が強すぎると、加硫が進みすぎる。このため、電子線を放射する工程において、電子線が放射されるブレーカー材料に含まれるゴムの単位質量(ここでは、1g)当たりの電子線を放射する量が、34.8kGy以上35.2kGy以下であるとよい。また、ブレーカー材料に含まれるゴムの単位質量(ここでは、1g)当たりの電子線の強度は、475kV以上525kVであるとよい。ブレーカー材料は、搬送されつつ、電子線が放射されるとよく、当てられる電子線の強さは、ブレーカー材料の搬送速度によっても調整されうる。
【0035】
このように、タイヤ10の製造において、エッジ部にカバリングが施されていない第1ブレーカー41と第4ブレーカー44が用意される工程において、当該ブレーカー材料が半加硫状態になるように電子線が放射されているとよい。これにより、成形装置100で引き出される際に、第1ブレーカー41と第4ブレーカー44の伸びが抑制される。エッジ部にカバリングが施されていないブレーカー材料(ここでは、第1ブレーカー41と第4ブレーカー44)の幅も、周方向で安定している。これにより、ブレーカー材料41~44の幅が安定していることに起因して、タイヤ10として安定した性能が得られる。
【0036】
図7は、第1ブレーカー41と第4ブレーカー44とが用意される工程を示す模式図である。例えば、第1ブレーカー41が裁断後に巻き取られたリール111aと、第4ブレーカー44が裁断後に巻き取られたリール114aが用意され、リールから巻き出しつつ搬送され、電子線放射装置200において、電子線E1が放射された後、リール111b,114bに巻き取られるとよい。
【0037】
図6に示されているように、複数のブレーカー材料41~44を用意する工程は、並行に並べられた複数のコード材にゴムシートを貼り付けて幅広のブレーカー材料を得る工程(S11)と、幅広のブレーカー材料にフィルム材を貼り付けて搬送し、予め定められた幅に裁断する工程(S12,S13)とを備えているとよい。複数のブレーカー材料41~44のうち一部のブレーカー材料42,43は、エッジ部にカバリング42a,43aが施され(S15)、エッジ部にカバリングが施されない他のブレーカー材料41,44は、ブレーカー材料が半加硫状態になるように電子線が放射されてもよい(S17)。これにより、第1ブレーカー41と第4ブレーカー44は、電子線が放射されており半加硫状態であるので、裁断された幅寸法を維持しやすくなる。
【0038】
なお、ここでは、エッジ部にカバリングが施されていないブレーカー材料41,44に電子線が放射されることを挙げたが、エッジ部にカバリングが施されているブレーカー材料42,43についても電子線が放射されてもよい。この場合、エッジ部にカバリングが施されているブレーカー材料42,43についても伸びにくく、寸法精度が向上する。これにより、ブレーカー材料41~44の幅が安定し、タイヤ10として安定した性能が得られる。
【0039】
例えば、図8は、他の形態を示すフロー図である。第1ブレーカー41と第4ブレーカー44は、図8に示されているように、予め定められた幅に裁断される前、例えば、幅広のブレーカー材料が用意された際に、電子線が放射され、その後に、予め定められた幅に裁断されてもよい。
【0040】
つまり、図8に示されているように、複数のブレーカー材料41~44を用意する工程は、並行に並べられた複数のコード材にゴムシートを貼り付けて幅広のブレーカー材料を得る工程(S11)と、幅広のブレーカー材料にフィルム材を貼り付けて搬送する工程(S12)と、幅広のブレーカー材料が半加硫状態になるように電子線を放射する工程(S17)と、幅広のブレーカー材料を予め定められた幅に裁断する工程(S13)とを備えていてもよい。そして、複数のブレーカー材料41~44のうち一部のブレーカー材料42,43は、エッジ部にカバリング42a,43aが施されてもよい(S15)。このように、裁断する前に、ブレーカー材料41~44に電子線が放射されてもよい。この場合も、エッジ部にカバリングが施されていないブレーカー材料41,44は、電子線が放射されており半加硫状態であるので、裁断された幅寸法を維持しやすくなる。
【0041】
このように、かかるタイヤ10の製造方法では、複数のブレーカー材料41~44のうち少なくともエッジ部にカバリングが施されていないブレーカー材料41,44に電子線が放射され、当該ブレーカー材料41,44にトッピングされたゴムが半加硫状態になっているとよい。これにより、エッジ部にカバリングが施されていないブレーカー材料41,44は引っ張られた際に伸びにくく、幅方向の寸法が変わりにくい。これにより、ブレーカー材料41~44の幅が安定し、タイヤ10として安定した性能が得られる。
【0042】
ここでは、いわゆるラジアル構造の空気入りタイヤが例示されているが、タイヤは、特に言及されない限りにおいて、ラジアル構造に限定されない。ここで開示されるタイヤは、上述のように複数のブレーカー材料を有するタイヤであればよい。かかる観点において、タイヤの構造は、特段言及されない。タイヤは、いわゆるバイアス構造でもよい。また、タイヤはチューブを有するチューブタイヤでもよい。タイヤは、トレッド部11だけを張り替えることができるリドレッドタイヤでもよい。
【0043】
以上、ここでの開示について、種々説明したが、ここでの開示は、特に言及されない限りにおいて、上述した実施形態や変形例に限定されない。また、種々言及した実施形態や変形例の各構成は、互いに阻害しない関係であれば、適宜に組み合わせることができる。
【0044】
本発明(1)は、タイヤの製造方法に関する。
ここで、本発明(1)におけるタイヤの製造方法は、
複数のブレーカー材料を用意する工程と、
トレッドゴムと、カーカスとの間に、前記複数のブレーカー材料を配置する工程と
を含み、
前記複数のブレーカー材料を用意する工程では、前記複数のブレーカー材料のうち少なくとも1つのブレーカー材料を用意する際に、当該ブレーカー材料が半加硫状態になるように電子線が放射される。
【0045】
本発明(2)は、(1)のタイヤの製造方法であって、
複数のブレーカー材料を用意する工程は、
エッジ部にカバリングが施されたブレーカー材料を用意する工程と、
エッジ部にカバリングが施されていないブレーカー材料を用意する工程と
を含み、
前記エッジ部にカバリングが施されていないブレーカー材料を用意する工程は、当該ブレーカー材料が半加硫状態になるように電子線を放射する工程を含み、
前記複数のブレーカー材料を配置する工程では、
前記トレッドゴムと、前記カーカスとの間に、前記エッジ部にカバリングが施されたブレーカー材料と、前記エッジ部にカバリングが施されていないブレーカー材料とが予め定められた順番で重ねられる。
【0046】
本発明(3)は、(1)または(2)のタイヤの製造方法であって、
前記電子線を放射する工程において、電子線が放射されるブレーカー材料の単位質量当たりの電子線を放射する量が、34.8kGy以上35.2kGy以下である。
【0047】
本発明(4)は、(1)から(3)の何れかに記載されたタイヤの製造方法であって、
前記電子線の強度が、電子線が放射されるブレーカー材料の単位質量当たり475kV以上525kVである。
【0048】
本発明(5)は、(1)から(4)の何れかに記載されたタイヤの製造方法であって、
前記複数のブレーカー材料を用意する工程は、
並行に並べられた複数のコード材にゴムシートを貼り付けて幅広のブレーカー材料を得る工程と、
前記幅広のブレーカー材料にフィルム材を貼り付けて搬送し、予め定められた幅に裁断する工程と、
前記裁断する工程後に、前記ブレーカー材料に電子線が放射される工程と、
を含む。
【0049】
本発明(6)は、(1)から(4)の何れかに記載されたタイヤの製造方法であって、
前記複数のブレーカー材料を用意する工程は、
並行に並べられた複数のコード材にゴムシートを貼り付けて幅広のブレーカー材料を得る工程と、
前記幅広のブレーカー材料にフィルム材を貼り付けて搬送する工程と、
前記幅広のブレーカー材料に電子線が放射される工程と、
前記幅広のブレーカー材料を予め定められた幅に裁断する工程と、
を含む。
【0050】
本発明(7)は、(1)から(4)の何れかに記載されたタイヤの製造方法であって、
前記複数のブレーカー材料を用意する工程は、
並行に並べられた複数のコード材にゴムシートを貼り付けて幅広のブレーカー材料を得る工程と、
幅広のブレーカー材料にフィルム材を貼り付けて搬送し、予め定められた幅に裁断する工程と
を備えており、
前記裁断する工程の後、前記複数のブレーカー材料のうち一部のブレーカー材料は、エッジ部にカバリングが施され、カバリングが施されない他のブレーカー材料は、電子線が放射される。
【符号の説明】
【0051】
10 タイヤ
11 トレッド部
11a 溝
11b スリップサイン
12 ショルダー部
13 サイドウォール部
21 インナーライナー
22 カーカス
23 クッションゴム
25 ブレーカー
26 アンダートレッドゴム
27 トレッドゴム
28 サイドウォールゴム
41 第1ブレーカー(ブレーカー材料)
42 第2ブレーカー(ブレーカー材料)
43 第3ブレーカー(ブレーカー材料)
44 第4ブレーカー(ブレーカー材料)
41a~44a フィルム
42a,43a カバリング
100 成形装置
110~114 リール
120~124 カッター
121 搬送コンベア
122 成形ドラム
131~134 リール
200 電子線放射装置
E1 電子線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8