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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134083
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】ガス制御システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/22 20060101AFI20240926BHJP
   B01D 71/02 20060101ALI20240926BHJP
   B01D 71/06 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
B01D53/22
B01D71/02
B01D71/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044189
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(72)【発明者】
【氏名】春山 晃寿
(72)【発明者】
【氏名】安田 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】畑間(田岸) 未来子
(72)【発明者】
【氏名】福村 琢
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA41
4D006JA53Z
4D006JA57Z
4D006JA65Z
4D006KA02
4D006KA52
4D006KA53
4D006KA55
4D006KA56
4D006KA64
4D006KA67
4D006KB30
4D006KE02Q
4D006KE03P
4D006KE06Q
4D006KE13P
4D006MC01
4D006MC03
4D006MC07
4D006MC09
4D006PA01
4D006PB62
4D006PB63
4D006PB64
(57)【要約】
【課題】分離対象となるガスの組成が変化した場合であっても柔軟に対応することができるガス制御システムを提供すること。
【解決手段】分離対象ガスを分離膜に導入することで特定ガス成分を分離するガス制御システムにおいて、ガス透過性能が異なる並列に配置された複数の膜分離器と、複数の膜分離器に対応する調圧弁と、調圧弁を制御することにより、複数の膜分離器に流入する分離対象ガスの流量を調整する制御部と、を備えることを特徴とする。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離対象ガスを分離膜に導入することで特定ガス成分を分離するガス制御システムにおいて、
ガス透過性能が異なる並列に配置された複数の膜分離器と、
前記複数の膜分離器に対応する調圧器と、
前記調圧器を制御することにより、前記複数の膜分離器に流入する前記分離対象ガスの流量を調整する制御器と、
を備えることを特徴とするガス制御システム。
【請求項2】
前記複数の膜分離器の下流にガス成分を測定する測定器を備え、
前記制御器は、前記測定器により測定された前記ガス成分に基づいて前記調圧器を制御することにより、前記複数の膜分離器に流入する前記分離対象ガスの流量を調整する
ことを特徴とする請求項1に記載のガス制御システム。
【請求項3】
前記ガス透過性能は、前記各列の膜分離器は第1優先透過ガス成分が同様であり、第2優先透過ガス成分が異なる
ことを特徴とする請求項2に記載のガス制御システム。
【請求項4】
前記複数の膜分離器は、前記第2優先透過ガス成分の調節用に割り当てられる
ことを特徴とする請求項3に記載のガス制御システム。
【請求項5】
前記各列の膜分離器の上流側に加熱器を更に備え、
前記制御器は、前記調圧器の制御だけでは目標仕様に不足する場合には、前記加熱器により前記分離対象ガスを昇温して、前記膜分離器の透過性能を向上させる
ことを特徴とする請求項1から4のうち何れかに記載のガス制御システム。
【請求項6】
前記各列の膜分離器の下流側に冷却塔を更に備える
ことを特徴とする請求項1から4のうち何れかに記載のガス制御システム。
【請求項7】
前記各列の膜分離器は、多段構成とする
ことを特徴とする請求項1から4のうち何れかに記載のガス制御システム。
【請求項8】
前記膜分離器を構成する前記分離膜は、有機膜、無機膜、ゼオライト膜のうち少なくとも1つである
ことを特徴とする請求項1から4のうち何れかに記載のガス制御システム。
【請求項9】
前記各列の膜分離器の上流側および/または下流側にポンプを更に備え、加圧方式および/または減圧方式により前記各列の膜分離器に差圧を設ける
ことを特徴とする請求項1から4のうち何れかに記載のガス制御システム。
【請求項10】
前記測定器は、前記複数の膜分離器の透過ガスを測定する
ことを特徴とする請求項2から4のうち何れかに記載のガス制御システム。
【請求項11】
前記測定器は、前記複数の膜分離器の未透過ガスを測定する
ことを特徴とする請求項2から4のうち何れかに記載のガス制御システム。
【請求項12】
分離対象ガスから特定ガスを透過する分離膜を備える複数の膜分離器と、
前記分離膜の差圧を調節し、前記膜分離器に対応して設けられる調圧器と、
前記調圧器を制御する制御器と、
を備え、
前記複数の膜分離器は、
前記分離対象ガスが並列に流入するように設けられる、
ことを特徴とするガス制御システム。
【請求項13】
前記制御器は、
前記複数の膜分離器の透過ガス成分に基づいて、前記調圧器を制御する、
ことを特徴とする請求項12に記載のガス制御システム。
【請求項14】
前記制御器は、
前記透過ガスの特定ガス成分が予め設定した回収濃度未満の際、透過ガスの内、前記特定ガス成分以外のガス成分であって濃度が高いガス成分を調整対象ガス成分として、透過流量を減少させるように前記調圧器を制御する、
ことを特徴とする請求項13に記載のガス制御システム。
【請求項15】
前記制御器は、
前記複数の膜分離器のうち、ガス透過性能において2番目に透過流量が多い透過ガス成分が前記調整対象ガス成分と同じである前記分離膜を備える膜分離器に対応する前記調圧器を制御する、
ことを特徴とする請求項14に記載のガス制御システム。
【請求項16】
前記制御器は、
前記複数の膜分離器のうち、ガス透過性能において前記調圧器の制御による差圧の増分に対して透過流量の変化量が大きくなるようなガス成分が調整対象ガス成分と同じである前記分離膜を備える膜分離器に対応する前記調圧器を制御する、
ことを特徴とする請求項14に記載のガス制御システム。
【請求項17】
前記制御器は、
前記調整対象ガス成分の透過流量を減少させるように前記調圧器を制御するとともに、
前記特定ガスの透過流量を増加させるように前記調圧器以外の調圧器を制御する、
ことを特徴とする請求項14から16のうち何れかに記載のガス制御システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスを分離する技術の必要性が増している。そこで例えば、特許文献1は、第2透過ガス排出ラインの一部から分岐し、第2透過ガスを、原料ガス又は第1未透過ガスに戻す第2透過ガスの戻しラインと、を備えるCO分離装置を開示している。また、特許文献2は、少なくとも2種の生成物を高い純度で同時に供給することができる方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-93767号公報
【特許文献2】特開2016-505354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ガス制御システムにおいては、予め目標としている透過ガス成分又は未透過ガス成分の回収率や回収濃度が決まっている。このため、特許文献1、2では、2つの膜により未透過成分のガスの回収率を向上させることができるものの、分離対象となるガスの組成が変化した場合にガスの組成に柔軟に対応することが困難であるという課題が存在していた。なお、回収率とは、ガス制御システムに流入するガスの全流量に含まれる分離対象ガスの流量に対する透過した分離対象ガス流量の比率である。また、分離対象ガスの回収濃度とは透過ガス流量に対する透過した分離対象ガスの流量の比率である。
【0005】
本実施形態の課題としては、分離対象となるガスの組成が変化した場合であっても柔軟に対応することができるガス制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態における一態様のガス制御システムは、分離対象ガスを分離膜に導入することで特定ガス成分を分離するガス制御システムにおいて、ガス透過性能が異なる並列に配置された複数の膜分離器と、前記複数の膜分離器に対応する調圧器と、前記調圧器を制御することにより、前記複数の膜分離器に流入する前記分離対象ガスの流量を調整する制御器と、を備えることを特徴とする。
【0007】
このため、制御部は、ガス透過性能が異なる並列に配置された複数の膜分離器に対応する調圧弁を制御することにより、複数の膜分離器に流入する分離対象ガスの流量を調整することができる。したがって、分離対象となるガスの組成が変化した場合であっても制御部により調圧器を制御するだけで、特定ガス成分の分離に柔軟に対応することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ガスの組成が変化した場合であっても柔軟に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態にかかるガス制御システムの概略図である。
図2】膜分離器毎の第1優先透過ガス成分及び第2優先透過ガス成分を含む透過ガスの透過流量と、差圧と、の関係を示す図である。
図3】A列~C列における各膜分離器にかかる差圧の変化の一例を示す図である。
図4】第1優先透過ガス成分及び第2優先透過ガス成分の回収濃度と、経過時間と、の関係の一例を示す図である。
図5】他の実施形態にかかるガス制御システムの一例を示す図である。
図6】他の実施形態にかかるガス制御システムの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本実施形態にかかるガス制御システム1の概略図である。図1に示すように、分離対象ガスを導入する分離対象ガス導入ラインL11と、分離対象ガス導入ラインL11に接続され、導入された分離対象ガスを調圧する複数の調圧弁21A~調圧弁21Cと、各調圧弁21A~調圧弁21Cにそれぞれ接続された複数の加熱器22A~加熱器22Cと、各加熱器22A~加熱器22Cにそれぞれ接続された複数の膜分離器23A~膜分離器23Cと、各膜分離器23A~膜分離器23Cを透過した透過ガスの排出側に接続された複数の調圧弁24A~調圧弁24Cと、各調圧弁24A~調圧弁24Cを通過したガスを集合する集合ラインL12と、集合ラインL12の下流に接続された透過側ポンプ26と、透過側ポンプ26を通過したガスを測定する測定器部27と、各膜分離器23A~膜分離器23Cを透過できなかった未透過ガスの排出側に接続された未透過側ポンプ28と、制御部29と、を備える。ガス制御システム1は、図1に図示していない他の構成を備えていてもよい。
【0011】
調圧弁21A、加熱器22A、膜分離器23A、調圧弁24Aと、調圧弁21B、加熱器22B、膜分離器23B、調圧弁24Bと、調圧弁21C、加熱器22C、膜分離器23C、調圧弁24Cと、はそれぞれ各A列~C列に並列して配置されている。
【0012】
分離対象ガス導入ラインL11は、ガス制御システム1において分離対象となる複数の組成により構成される分離対象ガスが導入される。本実施の形態においては、ガス組成がCO:5%、N:75%、O:20%の分離対象ガスが全流量「100,000kg/h」で流入されている例について説明する。
【0013】
本実施の形態においては、複数の調圧弁21A~調圧弁21CはA列からC列に沿って3つ並列に配置されているため、分離対象ガス導入ラインL11は、3つに分岐されている。以下、複数の調圧弁21A~調圧弁21Cを特に区別して説明しない場合には、「調圧弁21」とも呼ぶ。複数の調圧弁21A~調圧弁21Cが3つ以上並列して配置されている場合には、配置されている調圧弁21の数に応じて、分離対象ガス導入ラインL11を並列に分岐させる。
【0014】
各調圧弁21A~調圧弁21Cは、例えば、電磁式の弁により構成され、制御部29の制御に基づき個別に開閉動作が行われる。調圧弁21の開動作により、分離対象ガス導入ラインL11から導入された分離対象ガスを下流に排出し、調圧弁21の閉動作により、分離対象ガス導入ラインL11から導入された分離対象ガスを下流に排出することを止める、および/または、減少させる。すなわち、制御部29は、調圧弁21A~調圧弁21Cの各開度を調整することにより、各A列~C列のうち特定の列の差圧や透過流量を調整することができ、特定ガス成分の回収率および/または回収濃度を制御することができる。
【0015】
加熱器22A~加熱器22Cは、例えば、ヒータにより構成され、調圧弁21A~調圧弁21Cから導入された分離対象ガスを加熱する。加熱器22A~加熱器22Cは、各膜分離器23A~膜分離器23Cの上流側に配置されているため、分離対象ガスが冷却され、膜分離器23A~膜分離器23Cによる分離性能が低下した場合であっても、膜分離器23A~膜分離器23Cに導入される分離対象ガスを加熱し昇温させることができる。これにより、膜分離器23A~膜分離器23Cの透過性能を向上させ、ガス制御システム1の出力を補填することができる。したがって、制御部29は、調圧弁21A~調圧弁21C、調圧弁24A~調圧弁24Cの制御だけでは目標とする仕様に不足する場合であっても、加熱器22A~加熱器22Cにより分離対象ガスを昇温して、膜分離器の透過性能を向上させることができる。なお、本実施の形態においては、ガス制御システム1は加熱器22A~加熱器22Cを備えているがこの限りではない。例えば、分離対象ガスが十分に暖かい環境においては、加熱器22A~加熱器22Cの構成を省略してもよい。これによりガス制御システム1の製作コストの削減を図ることができる。なお、本実施例では、加熱器22A~加熱器22Cとしているが、ガス温度を冷却する冷却器としての機能を備えていてもよい。この場合、ガス温度の低下により分離対象ガスの分離膜に対する透過流量が低下する。これにより後述する特定ガス成分の回収率および/または回収濃度を制御することができる。
【0016】
膜分離器23A~膜分離器23Cは、対象となるガスを選択的に透過する分離膜を有する分離装置であり、分離対象ガスを導入することで対象となる特定ガス成分を選択的に分離することができる。分離膜としては、例えば有機膜、無機膜、ゼオライト膜等を含有する二酸化炭素分離用ゼオライト膜、分子ゲート中空糸膜、分子ゲート膜等を用いることができる。例えば、分離対象とするガスがCOである場合には、COを選択的に透過する分離膜であれば、これらに限定されるものではない。膜分離器23A~膜分離器23Cを特に区別して説明しない場合には、以下「膜分離器23」とも呼ぶ。
【0017】
膜分離器23A~膜分離器23Cの分離膜は、それぞれガス透過性能が異なるように選定される。本実施の形態において、ガス透過性能とは、優先して透過する透過ガスの成分が異なることをいい、具体的には、第1優先透過ガス成分が同様であり、第2優先透過ガス成分が異なることを意味する。ガス透過性能は、GPUの単位により表すこともできる。GPUは、SI単位系に換算すると、1GPU=3.35×10-10mol・m-2・s-1・Pa-1により表させる。なお、1GPU=1.00×10-cm(STP)/(s・cm・cmHg)により表すこともできる。
【0018】
第1優先透過ガス成分とは、対象となる分離対象ガスのうち、第1の優先順位で透過するガス成分、第2優先透過ガス成分とは、対象となる分離対象ガスのうち、第2の優先順位で透過するガス成分をいう。本実施の形態においては、第1優先透過ガス成分として膜分離器23A~膜分離器23Cに共通してCOとなるよう選定され、第2優先透過ガス成分として膜分離器23A~膜分離器23C毎に、それぞれ異なるガス成分であるO、N、CHとなるよう選定されている。この場合、膜分離器23Aは、O調整用として割り当てられ、膜分離器23Bは、N調整用として割り当てられ、膜分離器23Cは、CH調整用として割り当てられる。すなわち、各膜分離器23A~膜分離器23Cは、第2優先透過ガス成分の調節用に割り当てられる。本実施の形態においては、第1優先透過ガス成分としてCOが選定されているがこの限りではなく、分離を所望する気体(SOx、NOx等)を第1優先透過ガス成分として任意に選定することができる。
【0019】
図2は、膜分離器23A~膜分離器23C毎の第1優先透過ガス成分及び第2優先透過ガス成分を含む透過ガスの透過流量と、差圧と、の関係を示す図である。図2(1)~図2(3)は、それぞれ、膜分離器23A~膜分離器23Cの第1優先透過ガス成分及び第2優先透過ガス成分を含む透過ガスの関係を示す。なお、差圧とは、膜分離器23において、分離膜によって区画される上流室と下流室との圧力差のことである。
【0020】
図2(1)~図2(3)に示すように、膜分離器23A~膜分離器23Cの第1優先透過ガス成分はCOで共通している。これに対し、膜分離器23Aの第2優先透過ガス成分はOであり、膜分離器23Aの第2優先透過ガス成分はNであり、膜分離器23Aの第2優先透過ガス成分はCHであるため、膜分離器23A~膜分離器23Cの第2優先透過ガス成分それぞれ異なるように選定されている。
【0021】
各膜分離器23A~膜分離器23Cを透過した透過ガスは、それぞれ各調圧弁24A~調圧弁24C側に排出される。なお、各調圧弁21A~調圧弁21C及び各調圧弁24A~調圧弁24Cは、上流側から下流側へ設定した圧力で供給する弁である。
【0022】
各調圧弁24A~調圧弁24Cは、例えば、電磁式の弁により構成され、制御部29の制御に基づき個別に開閉動作が行われる。調圧弁24の開動作により、調圧弁の上流側から下流側への流量を調節する。
【0023】
具体的には、制御部29は、調圧弁24Aの開度を閉方向に制御することにより、A列に配置された膜分離器23Aの分離膜に対する差圧を下げることができる。また、調圧弁24Aの開度を開方向に制御することにより、A列に配置された膜分離器23Aの分離膜に対する差圧を上げることができる。これにより、制御部29は、A列に配置された膜分離器23Aの第2優先透過ガス成分であるOの回収濃度および回収率を制御することができる。なお、調圧弁24Aは該当列への供給流量を決定するため、差圧調整は主に調圧弁24Aで行うことが望ましい。
【0024】
同様に、制御部29は、調圧弁24Bの開度を閉方向に制御することにより、B列に配置された膜分離器23Bの分離膜に対する差圧を下げることができる。また、調圧弁24Bの開度を開方向に制御することにより、B列に配置された膜分離器23Bの分離膜に対する差圧を上げることができる。これにより、制御部29は、B列に配置された膜分離器23Bの第2優先透過ガス成分であるNの回収濃度および回収率を制御することができる。なお、調圧弁24Bは該当列への供給流量を決定するため、差圧調整は主に調圧弁24Bで行うことが望ましい。
【0025】
同様に、制御部29は、調圧弁24Cの開度を閉方向に制御することにより、C列に配置された膜分離器23Cの分離膜に対する差圧を下げることができる。また、調圧弁24Cの開度を開方向に制御することにより、C列に配置された膜分離器23Cの分離膜に対する差圧を上げることができる。これにより、制御部29は、C列に配置された膜分離器23Cの第2優先透過ガス成分であるCHの回収濃度および回収率を制御することができる。なお、調圧弁24Cは該当列への供給流量を決定するため、差圧調整は主に調圧弁24Cで行うことが望ましい。
【0026】
以上のように、制御部29は、調圧弁21A~調圧弁21Cおよび/または調圧弁24A~調圧弁24Cの各開度を調整するだけで、各A列~C列のうち特定の列の差圧や透過流量を調整することができ、特定ガス成分の回収率および/または回収濃度を制御することができる。これにより、分離対象となるガスの組成が変化した場合であっても調圧弁21A~調圧弁21C及び調圧弁24A~調圧弁24Cの各開度を調整するだけで、要求されるガス濃度に柔軟に対応することができる。
【0027】
調圧弁24A~調圧弁24Cを通過したガスは、集合ラインL12により集合されて、減圧方式により透過側ポンプ26へ排出される。透過側ポンプ26は、減圧ポンプ又は真空ポンプなどにより構成される。透過側ポンプ26は、各A列~C列の下流に配置され、A列~C列から排出された透過ガスを減圧する減圧方式により各膜分離器23A~膜分離器23Cに差圧を設け、吸入した透過ガスを測定器部27へ送る。
【0028】
測定器部27は、透過ガスの組成、回収濃度、流量、のうち少なくとも1つ以上を測定することができる。測定器部27による測定周期は2secにより測定することができる。測定器部27による測定周期は、2secに限定されず、0.01sec~60.00secなど任意の周期に設定することができる。
【0029】
本実施の形態においては、回収濃度は、CO65%、N5%、O30%で回収されている。透過ガスは、透過側ポンプ26を介して外界へ排出される。
【0030】
各膜分離器23A~膜分離器23Cを透過できなかった未透過ガスは、それぞれ未透過側ポンプ28側に流れ、未透過側ポンプ28を介して外界へ排出される。
【0031】
ここで、ガス組成がCO:5%、N:75%、O:20%の分離対象ガスが全流量「100,000kg/h」で流入されている場合において、目標仕様、すなわち、目標とするCOの回収率が15%以上、かつ、COの回収濃度が70%以上とする場合について説明する。
【0032】
本実施形態においては、A列~C列に配置された膜分離器23A~膜分離器23Cの第1優先透過ガス成分は、ともにCOが選定され、A列~C列に配置された膜分離器23A~膜分離器23Cの第2優先透過ガス成分は、それぞれ異なるガス成分となるように選定されている。
【0033】
具体的には、A列に配置された膜分離器23Aの第1優先透過ガス成分であるCOのGPUは、「1,000」となるように設定され、第2優先透過ガス成分であるOのGPUは、「250」となるように設定されている。すなわち、A列に配置された膜分離器23Aは、第2優先透過ガス成分として設定されているO調整用として選定されている。
【0034】
また、B列に配置された膜分離器23Bの第1優先透過ガス成分であるCOのGPUは、「1,000」となるように設定され、第2優先透過ガス成分であるNのGPUは、「180」となるように設定されている。すなわち、B列に配置された膜分離器23Aは、第2優先透過ガス成分として設定されているN調整用として選定されている。
【0035】
また、C列に配置された膜分離器23Cの第1優先透過ガス成分であるCOのGPUは、「800」となるように設定され、第2優先透過ガス成分であるCHのGPUは、「200」となるように設定されている。すなわち、C列に配置された膜分離器23Cは、第2優先透過ガス成分として設定されているCH調整用として選定されている。
【0036】
制御部29は、測定器部27において測定したガス成分濃度が0%の場合には、該当する列の調圧弁21を全閉することができる。これにより、不要な列へのガス導入を抑制し、制御の簡素化を図ることができる。本実施の形態においては、測定器部27において測定したガス成分には、CHが含まれていないため、制御部29は、CH調整用として選定されているC列の調圧弁21Cを全閉する。
【0037】
制御部29は、測定器部27において測定したCOの回収率および/または回収濃度が未達の場合には、次にガス濃度が高いガス成分調整用として選定されている膜分離器に対応する列の調圧弁24の開度を閉方向に調整する。本実施の形態においては、次にガス濃度が高いガス成分は、Oであるため、制御部29は、O調整用として選定されている膜分離器23Aが配置されたA列に対応する列の調圧弁24Aの開度を閉方向に調整する。制御部29は、目標仕様とするCOの回収率および回収濃度となるまで、測定器部27において測定した測定結果をフィードバックしながら、調圧弁24Aの開度を閉または開方向に調整する。
【0038】
図3は、A列~C列における各膜分離器23A~膜分離器23Cにかかる差圧[kPa]の変化の一例を示す図である。本実施の形態においては、測定器部27において測定したガス成分にCHが含まれていないため、CH調整用として選定されているC列の調圧弁21Cを全閉している。
【0039】
測定器部27において測定したCOの回収濃度が未達であるため、制御部29は、次にガス濃度が高いガス成分であるO調整用として選定されている膜分離器23Aが配置されたA列に対応する列の調圧弁24Aの開度を閉方向に調整する。その結果、図3に示すように、A列の膜分離器23Aにかかる差圧は「90.2」kPaから「84.6」kPaへ調整される。これにより、O流量が減少する。一方、CO流量も減少してしまうため、本実施例では、制御部29は、B列に対応する列の調圧弁21B及び調圧弁24Bの開度を開方向に調整する。その結果、図3に示すように、B列の膜分離器23Bにかかる差圧は「90.5」kPaから「95.0」kPaへ少しだけ調整される。これにより、COの回収率を比較的維持しながらCOの回収濃度を調整することができる。
【0040】
図4は、第1優先透過ガス成分及び第2優先透過ガス成分の回収濃度と、経過時間と、の関係の一例を示す図である。図4に示すように、ガス制御システム1における分離対象ガスの調整前においては、測定器部27おいて測定されたCOの回収濃度は65%であり、Oの回収濃度は30%である。
【0041】
ここで、COの回収濃度を目標仕様として設定されている70%以上とするために、制御部29は、O調整用として選定されている膜分離器23Aが配置されたA列に対応する列の調圧弁24Aの開度を閉方向に調整する。その結果、A列の膜分離器23Aにかかる差圧は「90.2」kPaから「84.6」kPaへ調整され、図4に示すように、A列の膜分離器23Aにおいて回収されるOの回収濃度を減少することができる。
【0042】
分離対象ガスの全流量には変化がないため、A列に流入していた分離対象ガスはB列に流入することとなる。また、本実施例では、上述のようにA列の膜分離機から回収されるCO流量が減少する補填として、B列の膜分離機から回収されるCO流量を増やす。そのためにB列に対応する列の調圧弁24Bの開度を開方向に調整している。その結果、B列の膜分離器23Bにかかる差圧は「90.5」kPaから「95.0」kPaへ調整され、図4に示すように、B列の膜分離器23Bにおいて回収されるCOの回収濃度を増加することができる。制御部29による調整の結果、図4に示すように、経過時間t1においてCOの回収濃度を目標仕様である70%以上にすることができる。このように、目標仕様として設定された分離対象となるCOの回収濃度の組成が65%から70%に変化した場合であっても、制御部29が調圧弁21A~調圧弁21C、調圧弁24A~調圧弁24Cを制御するだけで、柔軟に対応することができる。
【0043】
図5は、他の実施形態にかかるガス制御システム1の一例を示す図である。ガス制御システム1を船舶で使用する場合や、高湿度化で使用する場合等、分離対象ガスに水分が含まれる場合がある。この場合、膜分離器23を透過後の減圧などで水分が液化し、透過側ポンプ26に悪影響を及ぼす可能性ある。この場合、図5に示すように、各A列~C列の膜分離器23の下流側に冷却塔31を更に備えることができる。冷却塔31により透過ガスを冷却することで、水分を除去する構成とすることができる。これにより、分離対象ガスに水分により透過側ポンプ26が故障することを未然に防ぐことができる。
【0044】
図6は、他の実施形態にかかるガス制御システム1の一例を示す図である。図1の実施の形態においては、ガス制御システム1は、各A列~C列に1つの膜分離器23を備えているがこの限りではない。図6に示すように、各A列~C列に複数の膜分離器23-1、膜分離器23-2を備えて、多段階の構成にしてもよい。これにより、分離対象ガスの中から所望の特定ガス成分を分離する回収率の向上を図ることができる。なお、図6においては、膜分離器23-1、23-2は2段階となっているがこの限りではなく、3つ以上備えて3段階以上としてもよい。更に、図示しないが、排出された未透過ガスを再び分離対象ガスとして処理するリサイクル構成としてもよい。具体的には、2段目以降の未透過ガス(合流後)を分離対象ガス導入ラインL11側に流入させても良い。このような構成により、膜分離器23-1で第1優先ガスであるCOが濃縮されるため、膜分離器23-2の未透過のCO濃度が分離対象ガス導入ラインL11側の分離対象ガスのCO濃度よりも高くなり、最終的な回収濃度向上に繋がる。これにより、分離対象ガスの中から所望の特定ガス成分を分離する回収率および/または回収濃度の向上を図ることができる。
【0045】
上述の実施の形態においては、透過側ポンプ26は、各A列~C列の下流に配置され、A列~C列から排出された透過ガスを減圧する減圧方式により各膜分離器23A~膜分離器23Cに差圧を設けているがこの限りではない。例えば、各A列~C列の上流側に図示しないポンプを配置し、A列~C列に対し加圧する加圧方式により各膜分離器23A~膜分離器23Cに差圧を設けてもよい。これにより、ポンプの配置の自由度を向上させ、ガス制御システム1を作成する際の製作コストの削減を図ることができる。
【0046】
したがって、制御部29は、ガス透過性能が異なる並列に配置された複数の膜分離器23A~膜分離器23Cに対応する調圧弁21A~調圧弁21C、調圧弁24A~調圧弁24Cを制御することにより、膜分離器23A~膜分離器23Cに流入する分離対象ガスの流量を調整することができる。したがって、分離対象となるガスの組成が変化した場合であっても制御部29が調圧弁21A~調圧弁21C、調圧弁24A~調圧弁24Cを制御するだけで、COなどの特定ガス成分の分離に柔軟に対応することができる。
【0047】
上記実施例では、第2優先透過ガス成分とは、対象となる分離対象ガスのうち、第2の優先順位で透過するガス成分としているが、図2のグラフで示すように制御時点での差圧増分に対して透過流量の増分(グラフの勾配)が大きいガス成分としてもよい。この際、最も増分が大きいガス成分としてもよい。これにより、調圧弁24の開度を閉方向に調整し、分離膜に対する差圧を下げた際のO流量を効果的に減少させることができる。また、制御時点での差圧増分に対して透過流量の増分に加えて、第1優先透過ガス成分の差圧増分に対して透過流量の増分を考慮しても良い。例えば、第2優先透過ガス成分の上記傾きがほぼ同等だった時等は、差圧を下げても第1優先透過ガス流量が減少しない膜分離機を調整用として設定する。
【0048】
本発明の実施の形態は上記の各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、本発明の技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、本発明の技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【符号の説明】
【0049】
1 :ガス制御システム
21、21A~21C :調圧弁
22A~22C :加熱器
23、23A~23C、23-1、23-2 :膜分離器
24、24A~24C :調圧弁
26 :透過側ポンプ
27 :測定器部
28 :未透過側ポンプ
29 :制御部
31 :冷却塔
L11 :分離対象ガス導入ライン
L12 :集合ライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6