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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134086
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】蓄圧器ラック
(51)【国際特許分類】
   F17C 13/08 20060101AFI20240926BHJP
【FI】
F17C13/08 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044192
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】593166462
【氏名又は名称】サムテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100143085
【弁理士】
【氏名又は名称】藤飯 章弘
(72)【発明者】
【氏名】三島 慎一
(72)【発明者】
【氏名】宇井 紀喬
(72)【発明者】
【氏名】高橋 和也
(72)【発明者】
【氏名】竹之内 慶彦
(72)【発明者】
【氏名】猿渡 祐紀
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB01
3E172BA01
3E172BB05
3E172BD05
3E172CA29
(57)【要約】
【課題】軽量化を図るとともに、散水された水が溜まってしまうことを効果的に抑制することができる蓄圧器ラックを提供する。
【解決手段】圧縮ガスを充填可能な蓄圧器が収容される筐体を有する蓄圧器ラックであって、前記筐体は、底部を構成する底部構造体と、天井部を構成する天井部構造体と、前記底部構造体及び前記天井部構造体とを接続し、水平方向に互いに間隔をあけて立設配置される複数の支柱と、前記底部構造体及び前記天井部構造体の間において、上下方向に互いに間隔をあけて水平配置される複数の梁と、外側面において前記各支柱及び前記各梁で囲まれる領域に取り付けられ該領域を塞ぐ複数の側面板とを備えており、前記側面板によって塞がれる領域を形成する前記各梁は、T形鋼により構成されていることを特徴とする蓄圧器ラック。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮ガスを充填可能な蓄圧器が収容される筐体を有する蓄圧器ラックであって、
前記筐体は、底部を構成する底部構造体と、天井部を構成する天井部構造体と、前記底部構造体及び前記天井部構造体とを接続し、水平方向に互いに間隔をあけて立設配置される複数の支柱と、前記底部構造体及び前記天井部構造体の間において、上下方向に互いに間隔をあけて水平配置される複数の梁と、外側面において前記各支柱及び前記各梁で囲まれる領域に取り付けられ該領域を塞ぐ複数の側面板とを備えており、
前記側面板によって塞がれる領域を形成する前記各梁は、T形鋼により構成されていることを特徴とする蓄圧器ラック。
【請求項2】
T形鋼により構成される前記各梁は、フランジプレートが前記筐体の外側を向き、ウェブプレートが前記筐体の内側を向くように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の蓄圧器ラック。
【請求項3】
前記筐体は、幅寸法の長い長尺方向、及び、前記長尺方向に対して垂直で幅寸法の短い短尺方向を有しており、
前記各支柱は、H形鋼であり、
前記H形鋼のウェブプレートが前記短尺方向と平行となるように、前記各支柱は、前記底部構造体及び前記天井部構造体とを接続して立設配置されていることを特徴とする請求項1に記載の蓄圧器ラック。
【請求項4】
前記天井部構造体の上方に配置されるルーフ部を備えており、
前記天井部構造体と前記ルーフ部とは、複数のスペーサ部材を介して空間部を設けた状態で接続されており、
前記各スペーサ部材は、前記支柱と同軸上に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の蓄圧器ラック。
【請求項5】
複数の前記スペーサ部材の一部は、中空状の筒状部材と、プレート体とを備えており、
前記筒状部材は、一方の開口部側を前記天井部構造体上に当接させた状態で、該天井部構造体に接続されており、
前記プレート体は、前記筒状部材の他方の開口部と前記ルーフ部の下面との間に介在して配設されており、
前記プレート体には、前記ルーフ部に形成される貫通孔を介して挿入されるボルト部材と螺合する雌ネジ部が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の蓄圧器ラック。
【請求項6】
複数の前記スペーサ部材の一部は、中実部材として形成されており、前記ルーフ部に形成される貫通孔を介して挿入される吊りボルトと螺合する雌ネジ部が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の蓄圧器ラック。
【請求項7】
前記ルーフ部の上面は、傾斜面として形成されており、
前記ルーフ部の傾斜面下端部には、鉛直下方側に垂下する雨水案内部が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の蓄圧器ラック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄圧器ラックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水素ガスを燃料電池車に補給するための施設である水素ステーションが知られている。一般に、水素ステーションは、水素ガスを燃料電池車のタンクに補給するディスペンサと、ディスペンサに水素ガスを供給する圧縮機と、水素ガスを貯蔵する蓄圧器とを備えている。
【0003】
水素ステーションの一部を構成する蓄圧器は、例えば、図15に示すような蓄圧器ラック100の内部に収容されて配置される。蓄圧器ラック100は、水平方向に互いに間隔をあけて配置される複数の支柱と、上下方向に互いに間隔をあけて配置される複数の梁とにより構成される筐体を備えており、この筐体の外表面には、各支柱及び各梁で囲まれる領域を塞ぐ複数の側面板101が固定手段により固定されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、蓄圧器ラック100を構成する各支柱や各梁は、H形鋼を用いられることが一般的であるが、H形鋼を支柱部材や梁部材として用いる場合、蓄圧器ラック100の全体重量が大きくなるという問題があった。また、H形鋼を梁部材として用いる場合、図16に示すように、H形鋼の内外の縁全体に対して溶接を施して支柱に接続する必要があり、溶接に要する時間やコストが多大になるという問題もあった。また、水素ステーションにて蓄圧器ラック100を使用する場合、内部の温度が例えば40℃を超えると自動的に散水して内部に収容される蓄圧器を冷却するという運用が必要であり、散水された水が、H形鋼により構成される梁のウェブプレート200上(ウェブプレート200と一対のフランジプレート201,201とによって形成されるポケット部202)に溜まってしまい、梁に錆が発生しやすくなるという問題もあった。なお、H形鋼のウェブプレート200上に水が溜まらないようにするためには、例えば、ウェブプレート200に所定間隔をあけて貫通孔を設けることにより対応することは可能であるが、このような貫通孔を設けることは製造コストの増加や製造効率の悪化の要因となる。
【0005】
本発明は上記問題を解決すべくなされたものであり、軽量化を図るとともに、散水された水が溜まってしまうことを効果的に抑制することができる蓄圧器ラックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の前記目的は、圧縮ガスを充填可能な蓄圧器が収容される筐体を有する蓄圧器ラックであって、前記筐体は、底部を構成する底部構造体と、天井部を構成する天井部構造体と、前記底部構造体及び前記天井部構造体とを接続し、水平方向に互いに間隔をあけて立設配置される複数の支柱と、前記底部構造体及び前記天井部構造体の間において、上下方向に互いに間隔をあけて水平配置される複数の梁と、外側面において前記各支柱及び前記各梁で囲まれる領域に取り付けられ該領域を塞ぐ複数の側面板とを備えており、
前記側面板によって塞がれる領域を形成する前記各梁は、T形鋼により構成されていることを特徴とする蓄圧器ラックにより達成される。
【0007】
また、上記蓄圧器ラックにおいて、T形鋼により構成される前記各梁は、フランジプレートが前記筐体の外側を向き、ウェブプレートが前記筐体の内側を向くように配置されていることが好ましい。
【0008】
また、前記筐体は、幅寸法の長い長尺方向、及び、前記長尺方向に対して垂直で幅寸法の短い短尺方向を有しており、前記各支柱は、H形鋼であり、前記H形鋼のウェブプレートが前記短尺方向と平行となるように、前記各支柱は、前記底部構造体及び前記天井部構造体とを接続して立設配置されていることが好ましい。
【0009】
また、前記天井部構造体の上方に配置されるルーフ部を備えており、前記天井部構造体と前記ルーフ部とは、複数のスペーサ部材を介して空間部を設けた状態で接続されており、前記各スペーサ部材は、前記支柱と同軸上に配置されていることが好ましい。
【0010】
また、複数の前記スペーサ部材の一部は、中空状の筒状部材と、プレート体とを備えており、前記筒状部材は、一方の開口部側を前記天井部構造体上に当接させた状態で該天井部構造体に接続されており、前記プレート体は、前記筒状部材の他方の開口部と前記ルーフ部の下面との間に介在して配設されており、前記プレート体には、前記ルーフ部に形成される貫通孔を介して挿入されるボルト部材と螺合する雌ネジ部が形成されていることが好ましい。
【0011】
また、複数の前記スペーサ部材の一部は、中実部材として形成されており、前記ルーフ部に形成される貫通孔を介して挿入される吊りボルトと螺合する雌ネジ部が形成されていることが好ましい。
【0012】
また、前記ルーフ部の上面は、傾斜面として形成されており、前記ルーフ部の傾斜面下端部には、鉛直下方側に垂下する雨水案内部が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、軽量化を図るとともに、散水された水が溜まってしまうことを効果的に抑制することができる蓄圧器ラックを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る蓄圧器ラックが有する支柱・梁構造の正面図である。
図2図1に係る蓄圧器ラックの支柱・梁構造の背面図である。
図3】(a)は、図1に係る蓄圧器ラックの支柱・梁構造の左側面図であり、(b)は、図1に係る蓄圧器ラックの支柱・梁構造の右側面図であり、(c)は、上面図である。
図4】本発明に係る蓄圧器ラックが備える底部構造体の概略構成図である。
図5】本発明に係る蓄圧器ラックが備える支柱の構成を説明する概略構成説明図である。
図6】本発明に係る蓄圧器ラックが備えるルーフ部を説明するための概略構成図である。
図7】本発明に係る蓄圧器ラックが備えるスペーサ部材を説明するための概略構成断面図である。
図8】本発明に係る蓄圧器ラックが備えるスペーサ部材を説明するための概略構成断面図である。
図9】蓄圧器ラックの要部拡大図である。
図10】(a)(b)共に、蓄圧器ラックに蓄圧器を収容した状態を示す説明図である。
図11】本発明に係る蓄圧器ラックが備える梁を説明するための概略構成断面図である。
図12】側面板を固定する固定手段を説明するための説明図である。
図13】梁と支柱との接続構造の変形例を説明するための概略構成図である。
図14】ルーフ部におけるシール構造を説明するための説明図である。
図15】従来から知られている蓄圧器ラックに係る斜視図である。
図16】梁部材としてH形鋼が用いられている状態を示す概略構成断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る蓄圧器ラックについて添付図面を参照して説明する。なお、各図は、構成の理解を容易ならしめるために部分的に拡大・縮小している。
【0016】
本発明に係る蓄圧器ラックは、例えば、水素ガスを燃料電池車に補給するための施設である水素ステーションにおいて、水素ガス貯蔵用の蓄圧器を内部に収容する収容体であり、背景技術の説明にて示した図15の斜視図に示すような構造を備えている。より具体的に説明すると、図1図3に示すように、底部を構成する底部構造体1と、天井部を構成する天井部構造体2と、底部構造体1及び天井部構造体2とを接続し、水平方向に互いに間隔をあけて立設配置される複数の支柱3と、底部構造体1及び天井部構造体2の間において、上下方向に互いに間隔をあけて配置される複数の梁4とを組み合わせた骨組みにより構成される筐体5を備えている。この筐体5は、幅寸法の長い長尺方向、及び、当該長尺方向に対して垂直で幅寸法の短い短尺方向を有して構成されている。ここで、図1は、蓄圧器ラックの骨組み構造の正面図であり、図2は、その背面図である。また、図3(a)は、図1に係る蓄圧器ラックの骨組み構造の左側面図であり、図3(b)は、右側面図であり、図3(c)は、上面図である。
【0017】
底部構造体1は、図4の概略構成図に示すように、例えば、H形鋼等の鋼材1aを縦横に所定間隔をあけて配置して組み合わせた骨組構造により構成されている。天井部構造体2も、同様に、例えば、H形鋼等の鋼材を縦横に所定間隔をあけて配置して組み合わせた骨組構造により構成されている。本実施形態においては、底部構造体1及び天井部構造体2を同一の形態として構成しており、鋼材としてはH形鋼を用いている。底部構造体1及び天井部構造体2を構成するH形鋼同士の接続は、溶接によって、或いは、ボルト・ナット等の締結部材によって一体化することによって行われる。底部構造体1及び天井部構造体2においては、筐体5の長尺方向に沿って配置される複数の鋼材(H形鋼)のそれぞれを、単一の鋼材によって構成し、筐体5の長尺方向に沿って配置される複数の鋼材同士の間において、筐体5の短尺方向に沿って配置される複数の鋼材を配置して組み合わせて骨組み構造を形成し、接続箇所を溶接等で固定することが好ましい。
【0018】
底部構造体1と、当該底部構造体1上に立設配置される支柱3とは、溶接によって、或いは、ボルト・ナット等の締結部材によって一体化されている。また、同様に、立設配置される支柱3と、当該複数の支柱3上に配置される天井部構造体2とについても、溶接によって、或いは、ボルト・ナット等の締結部材によって一体化されている。
【0019】
また、底部構造体1上に立設配置される支柱3の立設位置については特に限定されないが、底部構造体1において縦横に配置されるH形鋼同士の接続箇所近傍位置において支柱3を立設させるように構成することが、筐体5の強度を高めるという観点から好ましい。特に、筐体5の長尺方向に沿って配置される複数の鋼材(H形鋼)上に支柱3を立設させるようにして構成することがより好ましい。
【0020】
同様に、天井部構造体2と各支柱3との接続位置についても特に限定されないが、天井部構造体2において縦横に配置されるH形鋼同士の接続箇所近傍位置において各支柱3と接続するように構成することが、筐体5の強度を高めるという観点から好ましい。特に、筐体5の長尺方向に沿って配置される複数の鋼材(H形鋼)に支柱3を接続させるようにして構成することがより好ましい。支柱3を構成する鋼材としては、例えば、H形鋼、I形鋼、T形鋼等を好ましく用いることができるが、強度向上の観点からH形鋼を採用することが好ましい。また、H形鋼によって支柱3を構成する場合、図5(a)(b)の概略構成説明図に示すように、H形鋼のウェブプレート3aが、筐体5における短尺方向と平行となるように、各支柱3が、底部構造体1及び天井部構造体2とを接続して立設配置されるように構成することが好ましい。
【0021】
また、H形鋼を組み合わせて構成される天井部構造体2の上方には、ルーフ部6が配置されており、雨水等が筐体5内部に進入しないように構成されている。また、天井部構造体2とルーフ部6とは、複数のスペーサ部材7を介して空間部8を設けた状態で接続されている。当該空間部8は、筐体5内外の通風を良好にするための開口部を構成する。ルーフ部6の上面は、図6の概略構成図に示すように、傾斜面6aとして形成されることが好ましく、ルーフ部6の傾斜面6a下端部には、鉛直下方側に垂下する雨水案内部6bが設けられていることが好ましい。雨水案内部6bは、例えば平板状のルーフ部6形成用の板状部材の一の側縁部を湾曲あるいは屈曲等させることにより形成することができる。なお、ルーフ部6の傾斜方向は特に限定されないが、筐体5において幅寸法の長い長尺方向の一方の外側面側に向かって下方に傾斜するように構成することが好ましい。また、ルーフ部6は、天井部構造体2の輪郭が占める面積よりも大きい面積を有するように構成されている。各スペーサ部材7は、支柱3と同軸上の位置に配置されていることが好ましい。また、各スペーサ部材7の下端側は天井部構造体2の上面に溶接によって固定されていることが好ましい。
【0022】
また、複数のスペーサ部材7の一部は、図7の概略構成断面図に示すように、中空状の筒状部材71と、プレート体72とを備えて構成される。筒状部材71は、一方の開口部側を天井部構造体2上に当接させた状態で該天井部構造体2に接続されており、プレート体72は、筒状部材71の他方の開口部とルーフ部6の下面との間に介在して配設されている。プレート体72には、ルーフ部6に形成される貫通孔を介して挿入されるボルト部材と螺合する雌ネジ部が形成されている。なお、筒状部材71とプレート体72とは溶接によって固定されている。また、筒状部材71の形態は特に限定されず、例えば、角柱状、円柱状等、種々の形態のものを使用することができる。プレート体72は、筒状部材71の他方の開口部を閉塞できる大きさとして形成することが、雨水等の水が筒状態の内部に侵入することを防止できる観点から好ましい。また、プレート体72の形態は特に限定されず、平面視矩形状、または円形状等、種々の形状として形成することができる。ルーフ部6は、プレート体72に形成される雌ネジ部に螺入されるボルト部材によって筐体5と一体化される。なお、ルーフ部6とボルト部材のボルト頭との間には、シールワッシャーやコーキング材が介在しており、ルーフ部6に形成される貫通孔や、プレート体72に形成される雌ネジ部に雨水が進入することを防止される。
【0023】
また、複数のスペーサ部材7の一部は、図8の概略構成断面図に示すように、中実部材として形成されており、ルーフ部6に形成される貫通孔を介して挿入される吊りボルト9と螺合する雌ネジ部が形成されている。吊りボルト9は、クレーン装置などを用いて、蓄圧器ラックを持ち上げて移動等する際に使用されるワイヤ等の吊り具を引っ掛けて固定する際に使用されるものであり、一般的には、所定間隔離れた4か所に設置すれよい。なお、これら4か所におけるスペーサ部材7以外のスペーサ部材7については、図7に示すように、中空状の筒状部材71とプレート体72とを備えるようにスペーサ部材7を構成することが好ましい。また、吊りボルト9は、クレーン装置などによる蓄圧器ラックの移動が完了した段階で取り外されるが、吊りボルト9を取り外した後、ルーフ部6に形成される貫通孔を塞いで雨水が当該貫通孔内に進入しないように、ルーフ部6に形成される貫通孔を介してボルトが雌ネジ部に螺合される。この時、ルーフ部6とボルト部材のボルト頭との間には、シールワッシャーやコーキング材が配置される。
【0024】
また、筐体5は、図9の要部拡大図に示すように、その外側面において、各支柱3及び各梁4で囲まれる領域に取り付けられ該領域を塞ぐ複数の側面板10と、各側面板10を固定する複数の固定手段固定手段11とを備えて構成されている。筐体5の側面は十分な強度を持った構造とし、筐体5の内部で圧力が急上昇した場合に損傷することなく圧力を上方に逃がすことができるようにするため、筐体5の側面に配置される側面板10は、例えば厚みが6mm以上の鋼板製のパネルにより構成される。このような構成の筐体5(蓄圧器ラック100)の内部には、例えば、図10の説明図に示すように上下方向に並列配置した複数の蓄圧器Zが収容される。
【0025】
側面板10によって塞がれる領域を形成する各梁4は、図11に示すように、T形鋼により構成されている。T形鋼により構成される各梁4は、フランジプレート4aが筐体5の外側を向き、ウェブプレート4bが筐体5の内側を向くように配置されている。つまり、ウェブプレート4bが、筐体5の内側において水平方向に延びるように各梁4が設置される。ここで、T形鋼は、H形鋼を横に切断してT形鋼にしたCT形鋼を含む。
【0026】
本発明に係る蓄圧器ラックが備える固定手段11は、各支柱3及び各梁4で囲まれる領域に側面板10を強固に取り付けることができるものであればその具体的構成は問わないが、例えば、図12(a)~(c)に示すように、支柱3又は梁4のいずれかに形成される貫通孔111と、ボルト頭112aを有する半ネジボルト112と、プッシュナット113と、ナット114とを備えて構成されることが好ましい。半ネジボルトとは、ボルトのボルト軸(首下部分)の先端から半分ほどに雄ネジ部が形成されており、ボルト軸のボルト頭側の所定領域には雄ネジ部が形成されていないボルトをいう。なお、図12(b)においては、ワッシャー115を更に備える構成を示している。ボルト112は、ボルト軸の先端側が筐体5の外側に向けて突出するように貫通孔111に配置される。貫通孔111に挿入されて配置されたボルト112は、筐体5の外側からボルト軸に挿入されるプッシュナット113により、図12(a)に示すように支柱3又は梁4上に固定される。換言すると、ボルト112は、プッシュナット113とボルト頭112aとの間で支柱3又は梁4を挟持した状態で固定される。
【0027】
各支柱3及び各梁4で囲まれる領域に設置固定される側面板10は、ボルト軸が挿通可能な挿通孔を備えており、当該挿通孔に、図12(b)のようにプッシュナット113とボルト頭112aとの間で支柱3又は梁4を挟持した状態で固定されるボルト112のボルト軸を挿通させて、その後、ボルト軸にナット114を螺合して締結することにより側面板10は筐体5の外側面上に固定される。ここで、プッシュナット113とは、軸に一定方向から挿入することにより、内径側の爪が軸の外径をとらえ所定位置に固定するナットであり、ボルト頭112aとの間で支柱3又は梁4を挟持した状態でボルト112を固定できるものであればその具体的構造については問わない。また、側面板10の平面視形状は特に限定されないが、通常、平面視矩形状の形態を有しており、その四隅にボルト軸が挿通可能な挿通孔が形成される。また、図12(c)に示すようにプッシュナット113とボルト頭112aとの間で支柱3又は梁4を挟持して固定される半ネジボルト112において、雄ネジ部が形成されていない軸部112bが、支柱3又は梁4の表面よりも外側に突出しており、上述のプッシュナット113が、雄ネジ部が形成されていない半ネジボルト112の軸部112bにカシメられて固定されるように構成してもよい。また、半ネジボルト112の雄ネジ部が形成されていない軸部11bの外径は、雄ネジ部が形成されている軸部112cの外径よりも太く形成されていることが好ましい。また、図12(c)に示すように、プッシュナット113とボルト頭112aとの間で支柱3又は梁4を挟持して固定される半ネジボルト112において、雄ネジ部が形成されていない軸部112bの長さ寸法が、側面板10の挿通孔10aの内周面を支持可能となるように設定されることが好ましい。また、図12(a)等に示すように、プッシュナット113が配置される貫通孔111の一方の開口部側に、プッシュナット113が収容可能な座繰り部116を支柱3又は梁4に形成するよう構成してもよい。このような座繰り部116を備えることにより、図12(b)に示すように、側面板10の一方面(筐体内部側を向く面)が、支柱3又は梁4の表面に当接した状態で側面板10が設置固定されるため、設置時の安定性が向上する。なお、この座繰り部116を設けないようにして構成してもよい。
【0028】
本発明においては、上述のように、側面板10によって塞がれる領域を形成する各梁4がT形鋼により構成されるようにしているため、従来のように梁4をH形鋼により構成する場合に比べて、当該梁4に関する重量を軽量化することができ、その結果、蓄圧器ラック100の全体重量を軽減化することができる。
【0029】
また、各梁4をT形鋼によって構成することにより、例えば、各梁4の端部を支柱3に溶接して固定する際、従来のように梁4をH形鋼により構成する場合に比べて、溶接を施す部分の長さを短くすることができる。また、H形鋼の場合、図16に示すように、ウェブプレート200の両側に配置される一対のフランジプレート201,201を備えているため、ウェブプレート200と支柱3とを溶接によって接続固定する場合に、一対のフランジプレート201,201が邪魔な部位となり、溶接の作業性が悪くなるという問題が生じるが、T形鋼を梁4の部材として用いる場合には、邪魔になるような部位が存在しないため、極めて効率よく溶接作業を実施することができ、その結果、溶接に要する時間を減じ、また、製造に関するコストを軽減化することができる。
【0030】
また、水素ステーションにて蓄圧器ラック100を使用する場合において、内部の温度が例えば40℃を超えると自動的に散水して、収容される蓄圧器Zを冷却するという運用がなされる際、従来のようにH形鋼を用いて梁4を構成すると、図16に示すようにウェブプレート200と一対のフランジプレート201,201とによって形成されるポケット部202に散水された水が溜まってしまうことになるが、本発明のように、T形鋼によって梁4を構成することにより、図11に示すように、水が貯留されるようなポケット部が形成されず、ウェブプレート4b上に落下した水が該ウェブプレート4b上に溜まることなく下方側に落下することになり、梁4に錆が発生することを効果的に防止することができる。
【0031】
また、上記実施形態においては、H形鋼によって構成される支柱3に関し、H形鋼のウェブプレート3aが筐体5の短尺方向と平行となるように、各支柱3が、底部構造体1及び前記天井部構造体2とを接続して立設配置されるように構成されているが、このような構成を採用することにより、筐体5(蓄圧器ラック100)の短尺方向の地震の揺れに対する強度をより高めることが可能となる。このように筐体5(蓄圧器ラック100)の短尺方向の地震の揺れに対する強度を高めることができる結果、短尺方向の支柱3の数を減じることができ、蓄圧器ラック100の全体重量をさらに軽減化させることが可能となる。また、筐体5の短尺方向の支柱3の数を減じることができる結果、底部構造体1や、天井部構造体2、梁4との溶接等による固定箇所も減じることができ、製造に係る時間や製造コストを低減化することができる。
【0032】
また、本実施形態においては、T形鋼により構成される各梁4に関し、フランジプレート4aが筐体5の外側を向き、ウェブプレート4bが筐体5の内側を向くように配置されている。ここで、仮に、ウェブプレート4bが筐体5の外側を向くように各梁4を設置する場合、筐体の外側に存在するウェブプレート4b上に砂埃等が堆積したり、ウェブプレート4bに人や物が引っかかったりすることが懸念されが、本実施形態のように、フランジプレート4aが筐体5の外側を向き、ウェブプレート4bが筐体5の内側を向くように各梁を配置することにより、ウェブプレート4b上に砂埃等が堆積したり、ウェブプレート4bに人や物が引っかかったりすることを効果的に防止することができる。
【0033】
また、天井部構造体2とルーフ部6との間に配置される各スペーサ部材7を支柱3と同軸上に配置して溶接固定することにより、吊りボルト9にワイヤ等の吊り具を引っ掛けて、クレーン等によって蓄圧器ラック100を持ち上げて移動させる際に、スペーサ部材7と天井部構造体2との接続箇所に生じる応力を低減化させることが可能となる。
【0034】
また、複数のスペーサ部材7の一部に関し、図7に示すように、中空状の筒状部材71と、プレート体72とを備えるように構成することにより、スペーサ部材7の重量を低減化させることができ、その結果、蓄圧器ラック100全体の重量を軽量化させることが可能となる。
【0035】
また、ルーフ部6の上面は、傾斜面6aとして形成することにより、ルーフ部6の上面に雨水が溜まることを防止することができる。また、ルーフ部6の傾斜面6a下端部に、鉛直下方側に垂下する雨水案内部6bを設けるように構成することにより、傾斜面6aを伝って流下する雨水を確実に地面側に落下させることが可能となる。なお、鉛直下方側に垂下する雨水案内部6bが形成されていない場合、傾斜面6aを伝って流下する雨水の一部が、傾斜面6aの裏面を伝って、筐体5の天井部構造体2側に導かれてしまい、天井部構造体2や外側面等が濡れて錆が生じるおそれがある。
【0036】
以上、本発明の一実施形態に係る蓄圧器ラック1について説明したが、その具体的構成は、上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施形態において、蓄圧器ラック1に収容される蓄圧器Zとして、水素ステーションにおいて使用される水素ガス貯蔵用の蓄圧器を例示しているが、蓄圧器Zに貯蔵される圧縮ガスとしては、水素に限定されるものではなく、窒素ガス、酸素ガス、アルゴンガス等種々の圧縮ガスであってもよい。
【0037】
また、上記実施形態において、梁4と支柱3との接続構造を図13の概略構成図に示すような構造として構成してもよい。具体的には、支柱3の側面に板状体35を溶接等によって立設固定し(支柱3の側面に対して板状体35を垂直となるように固定し)、この板状体35の上に梁4におけるT形鋼のウェブプレート4bを載置するとともに、ボルト・ナット等の締結部材により、板状体35とT形鋼のウェブプレート4bとを接続固定するようにして構成してもよい。このような梁4と支柱3との接続構造を採用することにより、溶接個所を減じることができ、製造効率を向上させ、また、製造コストを低減化させることができる。
【0038】
上記実施形態においては、ルーフ部6は、ボルト部材を用いてスペーサ部材7に設置固定されており、ルーフ部6とボルト部材のボルト頭との間には、シールワッシャーやコーキング材が介在しており、ルーフ部6に形成される貫通孔や、プレート体72及び中実部材として構成されるスペーサ部材7に形成される雌ネジ部に雨水が進入することを防止されるが、雨水の進入を防止する具体的構成として、このような構成に限定されず、例えば、図14の説明図に示すように、ワッシャー65の下面外周近傍位置にリング状の溝を形成し、当該溝にOリング66を挿入配置したOリング付きワッシャー67と、シールワッシャ68とを組み合わせたシール構造を採用して、ルーフ部6に形成される貫通孔や、プレート体72及び中実部材として構成されるスペーサ部材7に形成される雌ネジ部への雨水の進入を防止するようにしてもよい。なお、このようなシール構造を採用する場合、Oリング付きワッシャー67におけるOリング66が取り付けられる面をルーフ部6の上面に当接させ、Oリング付きワッシャー67とボルト頭69との間にシールワッシャー68を配置するように構成することが好ましい。
【符号の説明】
【0039】
100 蓄圧器ラック
1 底部構造体
2 天井部構造体
3 支柱
3a H形鋼のウェブプレート
3b H形鋼のフランジプレート
35 板状体
4 梁
4a T形鋼のフランジプレート
4b T形鋼のウェブプレート
5 筐体
6 ルーフ部
6a 傾斜面
6b 雨水案内部
7 スペーサ部材
71 筒状部材
72 プレート体
8 空間部(開口部)
9 吊りボルト
10 側面板
11 固定手段
111 貫通孔
112 ボルト
112a ボルト頭
112b 雄ネジ部が形成されていない軸部
112c 雄ネジ部が形成されている軸部
113 プッシュナット
114 ナット
116 座繰り部
200 H形鋼のウェブプレート
201 H形鋼のフランジプレート
202 ポケット部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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