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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134090
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】厨房機器
(51)【国際特許分類】
   G06F 9/445 20180101AFI20240926BHJP
【FI】
G06F9/445
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044196
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】苔口 和也
(72)【発明者】
【氏名】大西 郁雄
【テーマコード(参考)】
5B376
【Fターム(参考)】
5B376AE00
5B376GA11
(57)【要約】
【課題】ペアリング済の厨房機器及び外部機器の間の通信接続を安定化する。
【解決手段】コンロ10は、外部機器との間での近距離無線通信のためのBLE基板16と、BLE基板16を介した近距離無線通信によって外部機器と通信する制御基板14とを備える。BLE基板16は、特定の外部機器としての情報端末機器30との間で通信接続を確立するためのペアリング情報のうちの少なくとも一部を記憶する不揮発性メモリ26aを有する。制御基板15は、起動処理の実行毎にBLE基板16に対して、不揮発性メモリ26aに記憶されたペアリング情報の少なくとも一部の送信を要求する通信を実行するとともに、当該通信に応じてBLE基板16から送信された情報を用いて、ペアリング情報によって示される情報端末機器30との間で通信接続を確立する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部機器との間の近距離無線通信のための通信部と、
前記通信部を介した前記近距離無線通信によって前記外部機器と通信する制御部とを備え、
前記通信部は、特定の前記外部機器との間で通信接続を確立するためのペアリング情報のうちの少なくとも一部である第1の情報を不揮発的に記憶するように構成され、
前記制御部は、起動処理の実行毎に前記通信部に対して前記第1の情報の送信を要求する通信を実行するとともに、前記通信に応じて前記通信部から送信された前記第1の情報を用いて前記ペアリング情報によって示される前記外部機器との間で通信接続を確立する、厨房機器。
【請求項2】
前記制御部は、電源投入毎に前記起動処理を実行する、請求項1記載の厨房機器。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1の情報の送信を要求する通信において、前記第1の情報に対応する通信パケットを識別する第2の情報を前記通信部に送信する、請求項1記載の厨房機器。
【請求項4】
前記厨房機器は、コンロである、請求項1~3のいずれか1項に記載の厨房機器。
【請求項5】
前記外部機器は、携帯型情報端末機器である、請求項4記載の厨房機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厨房機器に関し、より特定的には、外部機器との間での近距離無線通信による通信システムを構成する厨房機器に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱調理器等の厨房機器と、携帯端末と、給湯リモコンと、サーバとを備えた通信システムにおいて、加熱調理器と、携帯端末及び給湯リモコンとの間でBluetooth(登録商標)方式による通信(BT通信)を行うとともに、給湯リモコンがWiFi(登録商標)方式による通信(Wi-Fi通信)を実行してインターネット経由でサーバに通信接続する構成が、特開2020-112319号公報(特許文献1)に記載されている。
【0003】
特許文献1には、上記通信システムにおいて、給湯リモコン及び加熱調理器の間でBT通信が確立されている場合に、サーバに格納されたレシピデータが、中継装置として動作する給湯リモコンを経由して、加熱調理器に送信されることが記載される。又、給湯リモコンの代わりに、加熱調理器の近傍に配置される機器、例えばレンジフードを、中継装置として使用してもよいことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-112319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
加熱調理器(コンロ)等の厨房機器と、情報端末機器(例えば、スマートフォン又はタブレット端末)等の外部機器とが、上記BT通信又はWi-Fi通信等の近距離無線通信によって通信接続される通信システムを構築する際には、相互認証するための初期設定として、所謂、ペアリング処理が必要となる。ペアリング処理の完了後には、相互認証完了後の機器と通信するための情報(以下、「ペアリング情報」)を用いて、ペアリング済の厨房機器及び情報端末機器の間の通信接続が、都度実現されることになる。
【0006】
このような通信システムを構成する厨房機器の一態様として、外部機器との近距離無線通信のための通信部(通信モジュール又は通信用マイコン)と、厨房機器全体を制御する制御部(メインマイコン)とが個別に配置されて、制御部が通信部を介して外部機器と通信接続されて、当該外部機器との間でデータの送受信を実行する構成のものがある。
【0007】
この様な構成の厨房機器では、上記ペアリング情報を通信部で不揮発的に記憶する一方で、制御部は、電源投入に伴う起動処理時に通信部から送信されたペアリング情報を用いて外部機器と通信接続する態様とすることで、制御部での記憶容量を抑制できる。
【0008】
しかしながら、上記通信態様では、制御部の記憶容量を抑制できる一方で、ペアリング情報の全てが制御部に不揮発的に記憶されていないので、制御部に意図しない初期化処理(例えば、起動処理に伴うリセット動作)等が発生した際に、ペアリング済の厨房機器及び外部機器の間の通信接続が確立できなくなることが懸念される。
【0009】
本発明はこの様な問題点を解決するためになされたものであって、本発明の目的は、ペアリング済の厨房機器及び外部機器の間の通信接続を安定化することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のある局面では、厨房機器が提供される。厨房機器は、外部機器との間の近距離無線通信のための通信部と、制御部とを備える。制御部は、通信部を介した近距離無線通信によって外部機器と通信する。通信部は、特定の外部機器との間で通信接続を確立するためのペアリング情報のうちの少なくとも一部である第1の情報を不揮発的に記憶するように構成される。制御部は、起動処理の実行毎に通信部に対して第1の情報の送信を要求する通信を実行するとともに、通信に応じて通信部から送信された第1の情報を用いてペアリング情報によって示される外部機器との間で通信接続を確立する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、制御部で起動処理が実行される一方で、通信部では起動処理が実行されないケースが発生しても、制御部からの要求に応じて通信部から制御部にペアリング情報を送信することによって、ペアリング済の厨房機器及び外部機器の間の通信接続を安定化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施の形態に係る厨房機器の配置例を説明する斜視図である。
図2図1に示された厨房機器によって構成される通信システムを説明するブロック図である。
図3】コンロのBLE基板の起動処理におけるペアリング情報に係る処理を説明するフローチャートである。
図4】コンロの制御基板の起動処理のうちのペアリング情報に係る処理を説明するフローチャートである。
図5】本実施の形態に係る厨房機器の変形例を説明する図表である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお以下では、図中の同一又は相当部分には同一符号を付して、その説明は原則的に繰返さないものとする。
【0014】
図1は、本実施の形態に係る厨房機器の配置例を説明する斜視図である。
図1に示される様に、本実施の形態に係る厨房機器は、コンロ10又はレンジフード100を用いて構成される。
【0015】
コンロ10は、1個または複数個のバーナ12と、各バーナ12に対応する操作ユニット11とを有する。又、コンロ10には、図示しないグリルが配置されてもよい。各バーナ12及びグリル(図示せず)は、操作ユニット11のユーザ操作に応じて、作動又は停止される。又、操作ユニット11は、バーナ12の作動(燃焼)を伴わずに、後述する、通信機能のみをオンするためのスイッチ(図示せず)を含んでもよい。
【0016】
コンロ10は、各バーナ12の燃焼が停止されており、かつ、上記通信機能もオフされているときに「電源オフ状態」であるものとし、それ以外のときに「電源オン状態」であるものとする。即ち、電源オン状態には、バーナ12が燃焼されていない一方で、通信機能がオンされている状態が含まれる。
【0017】
レンジフード100は、コンロ10の上方近傍に配設される。レンジフード100は、枠部材101と、照明102と、整流板110と、操作部105と、筐体に内蔵されるファン120(例えば、シロッコファン)とを備える。
【0018】
整流板110は、枠部材101の下縁によって形成される開口部に着脱可能に取り付けられる。整流板110が上記開口部に取り付けられた状態でファン120を回転駆動すると、枠部材101及び整流板110の隙間115から空気が吸い込まれて、図示しないダクトを通じて屋外へ排出される。
【0019】
操作部105は、ユーザ操作用の各種スイッチ、スピーカ、LED(Light Emitting Diode)による表示部等を含む。ユーザは、操作部105によって、レンジフード100の運転オンオフを指示することができる。照明102のオンオフ(点灯/消灯)についても、操作部105へのユーザ操作に応じて制御することができる。
【0020】
レンジフード100のファン120のオン及びオフの少なくとも一方は、コンロ10の動作に連動して制御されてもよい。具体的には、バーナ12及び/又はグリルの作動及び停止に連動して、レンジフード100が制御されてもよい。
【0021】
図2に示される様に、厨房機器であるコンロ10及びレンジフード100は、外部機器との間で通信接続するための通信システム2を構成する。
【0022】
図2を参照して、通信システム2は、図1に示したコンロ10及びレンジフード100に搭載された複数の通信基板によって、外部通信網(例えば、インターネット40)と接続されたサーバ50、及び、スマートフォン、又は、タブレット端末等で構成される携帯型の情報端末機器30と通信接続することができる。情報端末機器30は「外部機器」の一実施例に対応する。
【0023】
コンロ10は、操作ユニット11に対応して設けられる操作基板14と、制御基板15と、近距離無線通信のための通信基板16と、を備える。
【0024】
操作基板14には、図示しないマイコンが搭載されており、操作ユニット11に対するユーザ操作を受け付けるための処理、及び、操作ユニット11に設けられた表示機能の制御処理が、当該マイコンによって実行される。
【0025】
制御基板15には、図示しないマイコンが搭載されており、当該マイコンは、操作ユニット11のユーザ操作に従ってコンロ10の動作を制御するメインコントローラの機能を有する。制御基板15は「制御部」の一実施例に対応する。
【0026】
例えば、制御基板15は、操作ユニット11のユーザ操作に直接対応して、図1に示されたバーナ12の点火又は消火、及び、点火時の火力を制御する。或いは、制御基板15によって、操作ユニット11に対するメニュー選択操作に応じて、バーナ12又は図示しないグリルにおいて、点火及び消火タイミング、並びに、点火中の火力が、予め定められたパターンに従って自動制御される。
【0027】
制御基板15は、不揮発性メモリ25aと、揮発性メモリ25bとを有する。不揮発性メモリ25aは、電源オフ状態でも記憶内容を保持する様に構成されており、代表的には、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)によって構成される。例えば、不揮発性メモリ25aに格納されたプログラムを実行することによって上記メインコントローラの機能が実現される。一方で、揮発性メモリ25bは、代表的には、DRAM(Dynamic Random Access Memory)によって構成され、起動処理の際に記憶内容が初期化される。
【0028】
上述の様に、操作ユニット11は、バーナ12の作動(燃焼)を伴わずに、通信機能をオンするためのスイッチ11Zを有する。スイッチ11Zをオンすることにより、BLE基板16による通信機能がオンされる。制御基板15は、電源オン状態において、BLE基板16によるコンロ10の外部との間の通信についても制御する。
【0029】
通信基板16は、BLE(Bluetooth Low Energy(登録商標))に従う通信(以下、BLE通信)等の近距離無線通信機能を有する。通信基板16には、近距離無線通信用の通信モジュールが搭載される。以下では、通信基板16をBLE基板16とも称する。通信基板16は「通信部」の一実施例に対応する。通信基板16は、不揮発性メモリ25a同様の不揮発性メモリ26a、及び、揮発性メモリ25bと同様の揮発性メモリ26bを有する。
【0030】
例えば、コンロ10の制御基板15は、BLE基板16による近距離無線通信(BLE通信)によって、予めペアリング処理された情報端末機器30との間で通信接続される。この際には、ペアリング処理によって確立された通信接続先の識別情報を含む「ペアリング情報」がコンロ10に格納されることで、相互認証済の特定の外部機器(情報端末機器30)のみを対象とした限定的な通信接続が可能となる。これにより、ユーザがコンロ10を制御及び/又は監視するためのアプリケーションソフトウェア(以下、単に「アプリ」と称する)が起動された情報端末機器30との間でも、BLE接続されることでアプリを実行するためのデータを送受信することができる。
【0031】
従って、ペアリング情報については、コンロ10にて不揮発的に記憶する必要があるが、一般的に、制御基板15の不揮発性メモリ25aでは、メインマイコンとして機能するために記憶すべきデータ及びプログラムの容量が大きくなるため、ペアリング情報については、少なくとも一部をBLE基板16の不揮発性メモリ26aに記憶することが好ましい。
【0032】
例えば、コンロ10は、電池17からの電力供給によって駆動される。即ち、コンロ10が電源オフ状態のときには、電池17から、制御基板15、通信基板16、及び、操作基板14への電源供給は停止される。そして、コンロ10が、ユーザ操作に応じて、電源オフ状態から電源オン状態に遷移すると、制御基板15、通信基板16、及び、操作基板14の各々において、電池17からの電源が投入されるのに応じて、起動処理が実行される。
【0033】
レンジフード100は、電源基板130と、操作基板140と、通信基板150及び160とを含む。
【0034】
通信基板150は、インターネット接続するためのルータ20と通信するための通信機能を有する。ルータ20は、代表的には、無線LAN(Local Area Network)ルータであり、通信基板150は、ルータ20との間で無線LAN通信(例えば、Wi-Fi(登録商標)通信)を実行するための、無線LANモジュールを搭載する。以下では、通信基板150を無線LAN通信基板150とも称する。
【0035】
通信基板160は、通信基板(BLE基板)16と同様の近距離無線通信機能を有することで、BLE基板16との間で通信する。従って、通信基板160についてもBLE通信を行うので、BLE基板160とも称する。
【0036】
尚、通信基板16及び160によるBLE通信(近距離無線通信)の通信可能距離は、通信基板150による無線LAN通信の通信可能距離よりも短く、この結果、通信基板16及び160の各々の消費電力も、通信基板150の消費電力より小さい。
【0037】
操作基板140は、操作部105へのユーザ入力に従ってレンジフード100が動作する様に、ファン120及び照明102等の動作を制御するメインコントローラの機能を有する。
【0038】
電源基板130は、商用系統等の交流電源5からの交流電圧を、レンジフード100内で使用される電源電圧に変換する。電源基板130は、ファン120(図1)の電源電圧Vdcを生成するとともに、操作基板14からの指令に応じて、ファンに対する電源電圧Vdcの供給オンオフを制御することで、ファン120の動作/停止を制御することができる。
【0039】
更に、電源基板130が生成する電源電圧には、図2に示す様に、通信基板160によるBLE通信及び操作基板140のための電源電圧Vcc1(例えば、3.3[V])と、通信基板150の無線LAN通信用の電源電圧Vcc2(例えば、15[V])とが含まれる。
【0040】
さらに、操作基板140は、無線LAN通信基板150及びBLE基板160の各々と通信することが可能であり、無線LAN通信基板150及びBLE基板160を用いた、レンジフード100の外部との間の通信機能を制御する。なお、操作基板140と無線LAN通信基板150との通信と、操作基板140とBLE基板160との間の通信とは、時分割等により、同一の通信ライン上で行われる様に構成することが可能である。
【0041】
これにより、操作基板140は、無線LAN通信基板150及びルータ20を介して、通信網(代表的には、インターネット40)と通信接続された機器(例えば、サーバ50)との間で、データを送受信することができる。
【0042】
レンジフード100の操作基板140についても、BLE基板160による近距離無線通信(BLE通信)、及び、無線LAN通信基板150による近距離無線通信(Wi-Fi通信)によって、予めペアリング処理されたコンロ10(BLE基板16)及びルータ20と通信接続される。この際にも、ペアリング情報がレンジフード100内に格納されることで、相互認証済の特定の外部機器(コンロ10及びルータ20)のみを対象とした限定的な通信接続が可能となる。
【0043】
この結果、通信システム2によれば、コンロ10は、コンロ10とレンジフード100との間のBLE通信と、レンジフード100とルータ20との間の無線LAN通信を介して、インターネット40と接続されたサーバ50との間でデータを送受信することができる。即ち、コンロ10の電源オン中には、レンジフード100のBLE基板160及び無線LAN通信基板150を中継装置として、コンロ10とサーバ50との間に通信経路を形成することが可能である。
【0044】
ここで、コンロ10において、上述した様に、ペアリング情報のうちの少なくとも一部の情報をBLE基板16の不揮発性メモリ26aに記憶したときの、ペアリング情報の取り扱いを考察する。なお、以下で説明する図3及び図4の起動処理前に、コンロ10及び情報端末機器30の間のペアリング処理は完了しており、当該情報端末機器30に係るペアリング情報のうちの少なくとも一部の情報が、BLE基板16の不揮発性メモリ26aに格納済である。不揮発性メモリ26aに格納済の上記少なくとも一部の情報は「第1の情報」に対応する。
【0045】
図3には、コンロ10のBLE基板16の起動処理時におけるペアリング情報に係る処理を説明するフローチャートが示される。
【0046】
図3に示される様に、BLE基板16は、電源投入に応じて、ステップ(以下、単に「S」と表記する)110がYES判定とされると起動処理を実行する。例えば、BLE基板16に入力される電源電圧が、予め定められた電圧よりも低い状態から、当該電圧を超えることにより、所謂、パワーオンリセットが起動されることで、S110はYES判定とされる。
【0047】
BLE基板16は、起動処理の一環として、揮発性メモリ25bが初期化された後に、S120により、不揮発性メモリ26aからペアリング情報(少なくとも一部)が読み出される。S130では、S120で読み出されたペアリング情報(少なくとも一部)が、制御基板15に対して送信される。
【0048】
制御基板15では、BLE基板16からペアリング情報を受信すると、S210がYES判定とされることで、S220により、受信したペアリング情報を揮発性メモリ25bに記憶する。ペアリング情報の全部がBLE基板16(不揮発性メモリ26a)で記憶されている場合には、S220により、ペアリング情報の全てが揮発性メモリ25bに記憶された状態となる。
【0049】
また、ペアリング情報の一部が制御基板15の不揮発性メモリ25aに記憶されている場合には、当該一部の情報を不揮発性メモリ25aからさらに読み出すことで、揮発性メモリ25bは、ペアリング情報の全てが記憶された状態を形成することができる。
【0050】
コンロ10の通常の電源オフ状態から電源オン状態への遷移では、BLE基板16及び制御基板15の両方でパワーオンリセットに応じた起動処理が実行されることにより、図3で説明した様に、制御基板15は、ペアリング情報に対応する情報端末機器30との通信接続を確立することができる。
【0051】
これに対して、コンロ10の電源オン状態中において、コネクタ又はハーネスの緩み等の要因によって、BLE基板16では電源電圧が正常に維持される一方で、制御基板15の電源電圧が一時的に低下することで、制御基板15のみでパワーオンリセットが発生して、起動処理が実行されるケースを想定する。この様なケースでは、制御基板15では起動処理が実行されることにより、揮発性メモリ25bの記憶内容が初期化される。一方で、BLE基板16の起動処理は実行されないので、図3に示される、BLE基板16から制御基板15へのペアリング情報の送信は実行されない。この結果、制御基板15(揮発性メモリ25b)にペアリング情報が記憶されない状態となることで、コンロ10及び情報端末機器30の間の通信接続が確立できなくなる。この様にして、コンロ10(厨房機器)と情報端末機器30(外部機器)との通信接続が不安定になる虞があるという課題を、発明者は新規に見出したものである。
【0052】
従って、本実施の形態では、この様な課題を解決するために、コンロ10の制御基板15の起動処理を図4に示す様に実行する。図4には、制御基板15の起動処理のうちのペアリング情報に係る処理を説明するフローチャートが示される。
【0053】
図4を参照して、制御基板15は、図3のS110と同様のS200により、電源投入に応じて起動処理を実行する。従って、一時的な電源電圧の低下の発生後に、当該電源電圧が復帰した場合にも、S200はYES判定とされる。
【0054】
制御基板15は、起動制御の一環として、S205により、BLE基板16に対して、ペアリング情報のリード要求を出力する。当該リード要求では、通信のパケットを識別するIDをBLE基板16へ送信することができる。当該IDは、BLE基板16から制御基板15へ送信して欲しい情報、即ち、不揮発性メモリ26aに格納されたペアリング情報の少なくとも一部の情報を送信する通信のパケットを表すものである。当該IDは、「第2の情報」の一実施例に対応する。
【0055】
BLE基板16は、制御基板15からのリード要求を受信すると、S150がYES判定とされることで、図3と同様のS120及びS130により、不揮発性メモリ26aからペアリング情報(少なくとも一部)を読み出して、読み出されたペアリング情報(少なくとも一部)を制御基板15へ送信する。
【0056】
制御基板15は、図3と同様に、BLE基板16からペアリング情報を受信すると、S210がYES判定とされることで、S220により、初期化された揮発性メモリ25bに対して、受信したペアリング情報を記憶することができる。これにより、図3でのS220と同様に、制御基板15において、ペアリング情報の全てが揮発性メモリ25bに記憶された状態を形成することができる。
【0057】
これにより、BLE基板16の起動処理が実行されない一方で、制御基板15で起動処理が実行されるケースが発生しても、当該起動処理後において、制御基板15は、揮発性メモリ25bに記憶されたペアリング情報を用いて、ペアリング情報に対応する情報端末機器30との通信接続を確立することができる。これにより、コンロ10(厨房機器)と情報端末機器30(外部機器)との通信接続を安定化することができる。
【0058】
なお、BLE基板16及び制御基板15の両方で起動処理が実行されると、BLE基板16から制御基板15に対して、起動処理の一環としてのペアリング情報の送信と、制御基板15からのリード要求に応じたペアリング情報の送信との両方が実行されることが想定される。この場合には、制御基板15の揮発性メモリ25bでは、同じメモリ領域に対して、同一のペアリング情報が上書きを伴って書き込まれるので、複数回の書込処理(S220)の後での記憶内容は変わらない。このため、ペアリング情報に対応する情報端末機器30との通信接続は正常に確立されることが理解される。
【0059】
一般的に、一時的な電圧低下が発生したことを抽出して検知することは困難である。このため、図4に示した様に、パワーオンリセット(電源投入)に応じた起動処理の一環として、電源投入毎にBLE基板16から制御基板15に対してペアリング情報を書込むことで、簡易な制御処理によって、コンロ10(厨房機器)と情報端末機器30(外部機器)との通信接続の安定化を図ることができる。
【0060】
なお、図3及び図4では、起動処理が電源投入に応じて実行される例を説明したが、通信エラーからの復帰時、例えば、制御基板15及びBLE基板16の間の通信が一時的に異常となった後に正常に復帰した場合にも、同様の起動処理を実行することが可能である。
【0061】
また、図2では、電池駆動式のコンロ10の例を説明したが、コンロ10が交流電源5によって駆動される構成であっても、コネクタ又はハーネスの緩み等の要因によって、制御基板15では起動処理が実行される一方で、BLE基板16の起動処理は実行されないケースは同様に発生し得る。したがって、図4に示した起動処理を適用することで、コンロ10の駆動電源に関わらず、コンロ10(厨房機器)と情報端末機器30(外部機器)との通信接続の安定化を図ることが可能であることが理解される。
【0062】
以上の様に、図3及び図4では、コンロ10と情報端末機器30との間でのペアリング情報に係る制御処理を例示したが、他の厨房機器についても同様の制御を適用することが可能である。
【0063】
図5は、本実施の形態に係る厨房機器の変形例を説明する図表である。
図5の第1行には、図3及び図4で例示した、コンロ10の制御基板15を、起動処理時にリード要求を発生する「基板A」とし、コンロ10のBLE基板16をリード要求を受信してペアリング情報を出力する「基板B」とした組み合わせが示される。即ち、基板Aは「制御部」に対応し、基板Bは「通信部」に対応する。
【0064】
これに対して、図5の第2行には、レンジフード100を「厨房機器」として、操作基板140を「基板A」、BLE基板160を「基板B」とする第1の変形例が示される。当該第1の変形例では、操作基板140及びBLE基板160は、制御基板15及びBLE基板16と同様に、不揮発性メモリ及び揮発性メモリを有するように構成され、BLE基板160の不揮発性メモリによって、ペアリング済のコンロ10を「外部機器」として特定するための「ペアリング情報」の少なくとも一部が記憶される。
【0065】
そして、第1の変形例においても、図3及び図4での制御基板15及びBLE基板16による処理が、操作基板140及びBLE基板160によってそれぞれ実行されることで、操作基板140の電源電圧が一時的に低下した場合にも、レンジフード100(厨房機器)とコンロ10(外部機器)との通信接続の安定化を図ることができる。
【0066】
図5の第3行には、レンジフード100を「厨房機器」として、操作基板140を「基板A」とし、無線LAN通信基板150を「基板B」とする第2の変形例が示される。当該第2の変形例では、操作基板140及び無線LAN通信基板150は、制御基板15及びBLE基板16と同様に、不揮発性メモリ及び揮発性メモリを有するように構成され、無線LAN通信基板150の不揮発性メモリによって、ペアリング済のルータ20を「外部機器」として特定するための「ペアリング情報」の少なくとも一部が記憶される。
【0067】
そして、第2の変形例においても、図3及び図4での制御基板15及びBLE基板16による処理が、操作基板140及び無線LAN通信基板150によってそれぞれ実行されることで、操作基板140の電源電圧が一時的に低下した場合にも、レンジフード100(厨房機器)とルータ20(外部機器)との通信接続の安定化を図ることができる。
【0068】
なお、図5の例の他、コンロ10及びレンジフード100以外の任意の厨房機器についても、ペアリングを伴って通信システム2に参加するものであれば、ペアリング情報の運用について同様の制御を適用することが可能である。
【0069】
尚、本実施の形態において、コンロ10と、レンジフード100及び情報端末機器30との間の近距離無線通信は、本実施の形態で例示したBLE通信に限定されず、Blootooth(登録商標)、Zigbee(登録商標)等の他の通信方式が用いられてもよい。同様に、サーバ50に接続するためのレンジフード100からの通信についても、無線LAN通信(Wi-Fi通信)とは異なる通信方式によって、通信基板150が構成されてもよい。
【0070】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0071】
2 通信システム、5 交流電源、10 コンロ、11 操作ユニット、11Z スイッチ、12 バーナ、14,140 操作基板、15 制御基板、16,160 通信基板(BLE基板)、17 電池、20 ルータ、25a,26a 不揮発性メモリ、25b,26b 揮発性メモリ、30 情報端末機器、40 インターネット、50 サーバ、100 レンジフード、101 枠部材、102 照明、105 操作部、110 整流板、115 隙間、120 ファン、130 電源基板、150 通信基板(無線LAN通信基板)。
図1
図2
図3
図4
図5