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  • 特開-ステータの製造方法、及びステータ 図1
  • 特開-ステータの製造方法、及びステータ 図2
  • 特開-ステータの製造方法、及びステータ 図3
  • 特開-ステータの製造方法、及びステータ 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134091
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】ステータの製造方法、及びステータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/04 20060101AFI20240926BHJP
   H02K 15/12 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
H02K15/04 C
H02K15/12 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044197
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】河上 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 滉人
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB07
5H615BB14
5H615PP13
5H615QQ02
5H615QQ06
5H615QQ19
5H615QQ25
5H615RR07
5H615SS24
(57)【要約】
【課題】ボビンに対してコイルを安定して固定させつつ、コイルと外部との絶縁性能を確保する。
【解決手段】ステータの製造方法は、ボビンにコイルを配置する配置工程と、配置工程の後に、ボビン及びコイルの外側を覆うように、電気的絶縁性を有し熱によって変形する固着材を配置する被覆工程と、被覆工程の後に、固着材を加熱して、加熱されて変形した固着材によってボビンとコイルとを固着する成形工程と、を備える。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前記ボビンにコイルを配置する配置工程と、
前記配置工程の後に、前記ボビン及び前記コイルの外側を覆うように、電気的絶縁性を有し熱によって変形する固着材を配置する被覆工程と、
前記被覆工程の後に、前記固着材を加熱して、加熱されて変形した前記固着材によって前記ボビンと前記コイルとを固着する成形工程と、
を備えるステータの製造方法。
【請求項2】
前記固着材は、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物である、
請求項1に記載のステータの製造方法
【請求項3】
前記成形工程における前記固着材の加熱時間は10分以上2時間以下である、
請求項2に記載のステータの製造方法。
【請求項4】
ボビンと、
前記ボビンの外周面に配置されるコイルと、
前記ボビン及び前記コイルの外側を覆うように設けられ、電気的絶縁性を有し熱によって変形する固着材で形成される被覆部と、
を備えるステータ。
【請求項5】
前記被覆部の厚みは、1mm以下である、
請求項4に記載のステータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ステータの製造方法、及びステータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、巻線を巻型上に巻線パターンで巻き付けることにより空心電機子を形成することが知られている。巻型には、巻線の巻き付け前に巻型に接着される接着剤が設けられており、当該接着材によって巻型に対して巻線が固定される。また、巻線に対してガラス繊維/エポキシで構成されたオーバーラップを包むことで、オーバーラップが巻線を圧縮して電機子エアギャップの必要な厚さの減少が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2019-531046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来構成のように、巻型つまりボビンと巻線との間に設けた接着剤によって巻線をその内側から固定する場合、モータ軸方向への力に対して巻線の接着を維持することが難しくなる。このため、モータの運転により生じる加振力等がモータ軸方向に沿って接着部分に繰り返し作用することで、その接着部分が破断するおそれがある。また、巻線に対してオーバーラップを圧縮して包むだけではオーバーラップと巻線との密着性を確保することが難しい場合があり、巻線外側の絶縁性能の低下を招くという問題がある。
【0005】
そこで、ボビンに対してコイルを安定して固定させつつ、コイルと外部との絶縁性能を確保できるステータの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、一実施形態によるステータの製造方法では、前記ボビンにコイルを配置する配置工程と、前記配置工程の後に、前記ボビン及び前記コイルの外側を覆うように、電気的絶縁性を有し熱によって変形する固着材を配置する被覆工程と、前記被覆工程の後に、前記固着材を加熱して、加熱されて変形した前記固着材によって前記ボビンと前記コイルとを固着する成形工程と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態によるステータを備える回転電機の一例を概略的に示す正面図
図2】一実施形態によるステータについて、コイルが巻き付けられたボビンを固着材によって被覆した状態の一例を示す平面図
図3】一実施形態によるステータについて、コイルが巻き付けられたボビンを固着材によって被覆した状態の一例を示す断面図
図4】一実施形態によるステータの製造工程の一例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、一実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図では、説明の便宜上、必要に応じて各構成の寸法を適宜拡大している場合があり、各構成同士の寸法比は実際と同一であるとは限らない。図1に示す実施形態の回転電機1は、例えばコアレス型の回転電機で構成されている。回転電機1は、図1に示すように、フレーム10、ロータ20、及びステータ30を含んで構成されている。つまり、ステータ30は、ロータ20とともに、回転電機1の一部を構成する。なお、以下の説明において、ロータ20の回転中心軸Оに対して平行な方向を軸方向と称する。回転中心軸Oを中心にロータ20を回転させたとき、ロータ20の外周面が回転する方向を周方向と称する。回転中心軸Oに対して直交する方向を径方向と称する。
【0009】
フレーム10は、回転電機1の外殻を構成している。フレーム10は、例えば円筒状に形成されている。フレーム10は、例えば放熱用の図示しないフィンを複数有している。複数のフィンは、フレーム10の外周面に径方向に突出して形成されている。
【0010】
ロータ20は、フレーム10の内部に配置される。ロータ20は、全体として中心軸Oを中心とした例えば円柱状に形成されている。ロータ20は、例えばステータ30の内側に設けられ、ステータ30に対して所定の隙間を介して回転可能に設けられている。つまり、回転電機1は、例えばインナーロータ型の回転電機として構成されている。
【0011】
ロータ20は、図示しない永久磁石を有している。永久磁石は、ロータ20の外周面に沿って周方向に間隔をあけて複数配置されている。永久磁石は、ロータ20の外周に例えば接着剤で固定される。また、ロータ20は、シャフト21と一体的に回転中心軸O周りに回転可能に構成されている。ロータ20とシャフト21とは、例えば圧入や焼嵌めによって強固に固定されている。シャフト21の回転中心軸は、ロータ20の回転中心軸Oと一致している。
【0012】
ステータ30は、フレーム10の内側に設けられている。ステータ30は、例えば全体として略円筒状に形成されている。ステータ30の内径寸法は、ロータ20の外形寸法よりもやや大きく設定されている。ステータ30は、ボビン31、コイル32、バックヨーク33、及び被覆部34を有している。
【0013】
ボビン31は、例えば絶縁性を有する合成樹脂製であって、円筒状に形成されている。ボビン31の外周面には、コイル32が巻回される。なお、コイル32は、ボビン31の内周に巻回される構成としても良い。コイル32は、例えば丸線で形成された巻線によって構成されている。巻線の種類は、丸線に限らず、平角線やリッツ線等の他の形状で構成しても良い。
【0014】
コイル32は、図2に示すように、例えばボビン31に対して波状に配置されるいわゆる波巻で構成されている。コイル32は、ボビン31に対して例えば1層で巻回される。コイル32の巻き方は、波巻に限らず、同心巻や重ね巻等の他の巻き方であっても良い。コイル32は、詳細は図示しないが、複数の相つまりU相、V相、及びW相の三相で構成される。コイル32は、接続端子を介して図示しない制御回路と電気的に接続されており、電力が供給される。各相のコイルは、1本又は複数本の巻線によって構成されている。本実施形態では、各相のコイルは、同一の巻線数で構成されており、それぞれ複数本例えば5本を1組の巻線として構成されている。
【0015】
バックヨーク33は、例えば電磁鋼板等の磁性材であって、円筒状に形成されている。バックヨーク33の内面には、コイル32が巻き付けられたボビン31が例えば嵌め込まれて固定される。そして、ボビン31が取り付けられたバックヨーク33は、フレーム10に対して固定される。
【0016】
ボビン31は、図2及び図3に示すように、本体部311及び溝部312を有している。本体部311は、円筒状に形成され、ボビン31の主体を構成している。溝部312は、ボビン31の軸方向に沿って設けられており、コイル32を収容可能に構成されている。溝部312の溝深さつまりボビン31の周面から溝部312の底面までの径方向の寸法は、コイル32の外径よりも大きく設定されている。
【0017】
溝部312は、本体部311の周面この場合外周面に互いに間隔をあけて複数設けられている。溝部312同士の間隔は、例えば等間隔に設定されている。溝部312同士の間隔は、不等間隔であっても良い。なお、図2等において、図面を見やすくするために、溝部312の符号は一部のみ付しており、その他の溝部312の符号は省略している。
【0018】
被覆部34は、ボビン31及びコイル32の外側を覆うように全周に亘って設けられている。被覆部34は、図2に斜線ハッチングで示すように、コイル32のうち、ボビン31から軸方向に突出した部分であるいわゆるコイルエンドを除く部分を覆っている。被覆部34の厚みは、1mm以下で構成されており、より好ましくは0.4mm以下である。被覆部34の厚みを極力抑えることで、ステータ30の小型化を図ることができる。なお、被覆部34が形成されないコイルエンドの部分には、絶縁性を確保するための図示しない絶縁紙を各相のコイル間に挿入しても良い。
【0019】
本実施形態では、被覆部34は、熱によって変形する固着材341で形成される。固着材341は、コイル32と外部とを電気的に絶縁する機能を有する。固着材341は、ボビン31及びコイル32の外周に巻き付け可能なシート状又はボビン31及びコイル32を内部に収容可能な円筒状に構成できる。固着材341をシート状で構成する場合、固着材341は、例えばアクリル/エポキシや酸化アルミニウム/エポキシ等の熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物で構成できる。一方、固着材341を円筒状で構成する場合、固着材341は、例えばシリコーンゴム等の熱収縮性又は自己融着性を有する組成物で構成できる。また、固着材341は、コイル32の熱を外部に放出させやすいことが好ましいため、熱伝導率が高いことが好ましい。
【0020】
次に、ステータ30の製造方法について説明する。ステータ30の製造においては、図4に示すように、例えばステップS11の配置工程、ステップS12の被覆工程、及びステップS13の成形工程が順に実行される。ステップS11の配置工程は、ボビン31にコイル32を配置する工程を含んでいる。配置工程では、まずW相コイルをボビン31の外周に全周に亘って巻き付け、その後、V相コイル及びU相コイルを順次ボビン31の外周に全周に亘って巻きつけることで、ボビン31に対してコイル32が配置される。なお、各相コイルのボビン31に対する巻順は、任意に設定できる。また、ボビン31にはコイル32が巻き付けられる前に、コイル32を仮止めするための例えば粘着テープを貼り付けておいても良い。
【0021】
ステップS12の被覆工程は、ボビン31及びコイル32の外周に固着材341を配置する工程を含んでいる。例えば固着材341をシート状で構成した場合、被覆工程では、ボビン31を正方向又は逆方向の一方向に回転させるとともに、図示しない外部の押圧装置によって固着材341をボビン31及びコイル32の外周に押し付けるようにして配置する。固着材341の始端と終端との間に隙間が生じないように、固着材341は、複数周回例えば2周巻きつけられる。固着材341を円筒状に構成した場合、固着材341の内側にボビン31及びコイル32が密着するように固着材341を配置する。
【0022】
ステップS13の成形工程は、固着材341を加熱して、加熱されて変形した固着材341によってボビン31とコイル32とを固着する工程を含んでいる。固着材341の加熱温度は、例えば120℃以上160℃以下に設定できる。また、固着材341の加熱時間は、例えば10分以上2時間以下に設定できる。固着材341を加熱することで、固着材341をボビン31とコイル32との間の隙間に入り込ませることができる。そして、固着材341が加熱後に例えば硬化又は収縮することで被覆部34が形成されるとともに、ボビン31とコイル32とが密着した状態で固着される。
【0023】
以上説明した実施形態によれば、ステータ30は、配置工程と、被覆工程と、成形工程と、を含んで製造される。配置工程は、ボビン31にコイル32を配置する工程である。被覆工程は、配置工程の後に、ボビン31及びコイル32の外側を覆うように、電気的絶縁性を有し熱によって変形する固着材341を配置する工程である。成形工程は、固着材341を加熱して、加熱されて変形した固着材341によってボビン31とコイル32とを固着する工程である。
【0024】
これによれば、ボビン31に配置されたコイル32を固着材341で覆った後に固着材341を加熱することで、加熱によって変形した固着材341によってボビン31とコイル32との間の隙間を低減しつつボビン31とコイル32とを被覆できる。これにより、ボビン31に対してコイル32を安定して固定させつつ、コイル32と外部との絶縁性能を確保できる。
【0025】
固着材341は、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物である。これによれば、樹脂組成物を用いてボビン31及びコイル32を覆うことで、ボビン31とコイル32とを安定して固定できるとともに、ステータ30の製造時の作業性を確保できる。
【0026】
また、成形工程における固着材341の加熱時間は、10分以上2時間以下である。これによれば、固着材341の加熱作業によって生じるステータ30の製造時間の遅延を極力抑えつつ、ボビン31とコイル32との確実な固定及びコイル32の絶縁性の確保を図ることができる。
【0027】
更に、固着材341によって形成される被覆部34の厚みは、1mm以下である。これによれば、被覆部34の厚みを極力抑えることで、ステータ30の小型化を図ることができる。
【0028】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0029】
図面中、30はステータ、31はボビン、32はコイル、34は被覆部、341は固着材、を示す。
図1
図2
図3
図4