(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134092
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】回路部品、電子装置および回路部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 17/06 20060101AFI20240926BHJP
H01F 41/04 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
H01F17/06 A
H01F17/06 F
H01F41/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044199
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(72)【発明者】
【氏名】富士 和則
【テーマコード(参考)】
5E062
5E070
【Fターム(参考)】
5E062FF01
5E070AA01
5E070AB01
5E070AB02
5E070BA14
5E070CB15
(57)【要約】
【課題】 製造の容易化および小型化を図ることが可能な回路部品、電子装置および回路部品の製造方法を提供すること。
【解決手段】 回路部品A1は、磁性体層1と、磁性体層1に対してz方向の一方側に積層された第1絶縁性シード層31と、磁性体層1に対してz方向の他方側に積層された第2絶縁性シード層32と、第1絶縁性シード層31に対してz方向の一方側に積層された第1配線層21と、第2絶縁性シード層32に対してz方向の他方側に積層された第2配線層22と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体層と、
前記磁性体層に対して厚さ方向の一方側に積層された第1絶縁性シード層と、
前記磁性体層に対して前記厚さ方向の他方側に積層された第2絶縁性シード層と、
前記第1絶縁性シード層に対して前記厚さ方向の前記一方側に積層された第1配線層と、
前記第2絶縁性シード層に対して前記厚さ方向の前記他方側に積層された第2配線層と、
を備える、回路部品。
【請求項2】
前記第1絶縁性シード層の厚さは、前記磁性体層の厚さよりも薄い、請求項1に記載の回路部品。
【請求項3】
前記第2絶縁性シード層の厚さは、前記磁性体層の厚さよりも薄い、請求項1に記載の回路部品。
【請求項4】
前記第1絶縁性シード層および前記第2絶縁性シード層に繋がる第3絶縁性シード層と、
前記第3絶縁性シード層上に積層され且つ前記第1配線層および前記第2配線層に導通する第1貫通配線部と、を備え、
前記第1配線層、前記第2配線層および前記第1貫通配線部は、巻線部を構成している、請求項1に記載の回路部品。
【請求項5】
前記磁性体層は、前記厚さ方向に貫通する貫通孔を有し、
前記第3絶縁性シード層は、前記貫通孔の内面に積層されている、請求項4に記載の回路部品。
【請求項6】
前記第1配線層は、複数の第1配線部を含んでおり、
前記複数の第1配線部は、前記厚さ方向に沿って視て、中心を囲む配置とされている、請求項4に記載の回路部品。
【請求項7】
前記第2配線層は、複数の第2配線部を含んでおり、
前記複数の第2配線部は、前記厚さ方向に沿って視て、前記中心を囲む配置とされている、請求項6に記載の回路部品。
【請求項8】
前記厚さ方向に視て、隣り合う2つの前記第1配線部の一部ずつが、1つの前記第2配線部に重なり、
前記厚さ方向に視て、隣り合う2つの前記第2配線部の一部ずつが、1つの前記第1配線部に重なる、請求項7に記載の回路部品。
【請求項9】
前記第1配線部は、平坦な形状である、請求項7または8に記載の回路部品。
【請求項10】
前記第1配線部は、第1部と、前記第1部よりも前記中心から離隔した第2部と、前記厚さ方向に視て前記第1部および前記第2部の間に位置する第3部と、を含み、
前記第3部と前記第2配線部との前記厚さ方向における距離は、前記第1部と前記第2配線部との前記厚さ方向における距離および前記第2部と前記第2配線部との前記厚さ方向における距離のいずれよりも大きく、
前記第1貫通配線部は、前記第1部と前記第2配線部とに繋がる内方貫通配線部と、前記第2部と前記第2配線部とに繋がる外方貫通配線部と、を含む、請求項7または8に記載の回路部品。
【請求項11】
前記第1絶縁性シード層に対して前記厚さ方向の前記一方側に積層された第4絶縁性シード層をさらに備え、
前記第4絶縁性シード層は、前記第1配線層の少なくとも一部を覆う、請求項4に記載の回路部品。
【請求項12】
前記第2絶縁性シード層に対して前記厚さ方向の前記他方側に積層された第5絶縁性シード層をさらに備え、
前記第5絶縁性シード層は、前記第2配線層の少なくとも一部を覆う、請求項4に記載の回路部品。
【請求項13】
前記第5絶縁性シード層に対して前記厚さ方向の前記他方側に位置する第3配線層をさらに備える、請求項12に記載の回路部品。
【請求項14】
前記第5絶縁性シード層を貫通し且つ前記第2配線層と前記第3配線層とに繋がる第2貫通配線部をさらに備える、請求項13に記載の回路部品。
【請求項15】
請求項1に記載の回路部品と、
前記回路部品に導通する電子部品と、を備える、電子装置。
【請求項16】
前記電子部品は、トランジスタを含む、請求項15に記載の電子装置。
【請求項17】
磁性体層を用意する工程と、
前記磁性体層の厚さ方向の一方側に第1絶縁性シード層を積層させる工程と、
前記磁性体層の前記厚さ方向の他方側に第2絶縁性シード層を積層させる工程と、
前記第1絶縁性シード層上に無電解めっき、または無電解めっきおよび電気めっきによって第1配線層を形成する工程と、
前記第2絶縁性シード層上に無電解めっき、または無電解めっきおよび電気めっきによって第2配線層を形成する工程と、
を備える、回路部品の製造方法。
【請求項18】
前記第1絶縁性シード層を積層させる工程の後であって、前記第1配線層を形成する工程の前に、前記第1絶縁性シード層にレーザ光を照射することにより、前記第1絶縁性シード層の無電解めっきを可能とするシード層としての機能を部分的に不活性化する工程をさらに含む、請求項17に記載の回路部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回路部品、電子装置および回路部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インダクタとして構成された回路部品は、種々の電子装置の構成部品として用いられる。特許文献1には、従来の回路部品の一例が開示されている。同文献に開示された構成は、モジュール基板に磁性コアおよび導体コイルが内蔵されている。磁性コアは、磁性体材料からなる環状の部材であり、モジュール基板を構成する樹脂層内に埋め込まれている。導体コイルは、モジュール基板内において、磁性コアに巻回されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
樹脂層内に磁性コアを埋め込むことは、製造方法が煩雑となることが懸念される。また、このような磁性コアに導体コイルを巻回することは、製造方法の煩雑化に加え、電子部品の大型化が問題となる。
【0005】
本開示は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、製造の容易化および小型化を図ることが可能な回路部品、電子装置および回路部品の製造方法を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の側面によって提供される回路部品は、磁性体層と、前記磁性体層に対して厚さ方向の一方側に積層された第1絶縁性シード層と、前記磁性体層に対して前記厚さ方向の他方側に積層された第2絶縁性シード層と、前記第1絶縁性シード層に対して前記厚さ方向の前記一方側に積層された第1配線層と、前記第2絶縁性シード層に対して前記厚さ方向の前記他方側に積層された第2配線層と、を備える。
【0007】
本開示の第2の側面によって提供される電子装置は、本開示の第1の側面によって提供される回路部品と、前記回路部品に導通する電子部品と、を備える。
【0008】
本開示の第3の側面によって提供される回路部品の製造方法は、磁性体層を用意する工程と、前記磁性体層の厚さ方向の一方側に第1絶縁性シード層を積層させる工程と、前記磁性体層の前記厚さ方向の他方側に第2絶縁性シード層を積層させる工程と、前記第1絶縁性シード層上に無電解めっき、または無電解めっきおよび電気めっきによって第1配線層を形成する工程と、前記第2絶縁性シード層上に無電解めっき、または無電解めっきおよび電気めっきによって第2配線層を形成する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、回路部品の製造の容易化および小型化を図ることができる。
【0010】
本開示のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本開示の第1実施形態に係る回路部品を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本開示の第1実施形態に係る回路部品を示す部分平面図である。
【
図3】
図3は、本開示の第1実施形態に係る回路部品を示す部分平面図である。
【
図4】
図4は、本開示の第1実施形態に係る回路部品を示す底面図である。
【
図7】
図7は、本開示の第1実施形態に係る回路部品の一例を示す部分拡大断面図である。
【
図8】
図8は、本開示の第1実施形態に係る回路部品の他の例を示す部分拡大断面図である。
【
図9】
図9は、本開示の第1実施形態に係る回路部品の製造方法を示す断面図である。
【
図10】
図10は、本開示の第1実施形態に係る回路部品の製造方法を示す断面図である。
【
図11】
図11は、本開示の第1実施形態に係る回路部品の製造方法を示す断面図である。
【
図12】
図12は、本開示の第1実施形態に係る回路部品の製造方法を示す断面図である。
【
図13】
図13は、本開示の第1実施形態に係る回路部品の製造方法を示す断面図である。
【
図14】
図14は、本開示の第1実施形態に係る回路部品の製造方法を示す断面図である。
【
図15】
図15は、本開示の第1実施形態に係る回路部品の製造方法を示す断面図である。
【
図16】
図16は、本開示の第1実施形態に係る回路部品の製造方法を示す断面図である。
【
図17】
図17は、本開示の第1実施形態に係る電子装置を示す正面図である。
【
図18】
図18は、本開示の第1実施形態に係る電子装置の第1変形例を示す断面図である。
【
図19】
図19は、本開示の第1実施形態に係る電子装置の第2変形例を示す断面図である。
【
図20】
図20は、本開示の第1実施形態に係る回路部品の第1変形例を示す部分平面図である。
【
図21】
図21は、本開示の第1実施形態に係る回路部品の第1変形例を示す部分平面図である。
【
図22】
図22は、本開示の第2実施形態に係る回路部品を示す断面図である。
【
図23】
図23は、本開示の第2実施形態に係る回路部品の製造方法を示す断面図である。
【
図24】
図24は、本開示の第2実施形態に係る回路部品の製造方法を示す断面図である。
【
図25】
図25は、本開示の第2実施形態に係る回路部品の製造方法を示す断面図である。
【
図26】
図26は、本開示の第2実施形態に係る回路部品の製造方法を示す断面図である。
【
図27】
図27は、本開示の第2実施形態に係る回路部品の第1変形例を示す部分平面図である。
【
図28】
図28は、本開示の第2実施形態に係る回路部品の第1変形例を示す部分平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0013】
本開示における「第1」、「第2」、「第3」等の用語は、単に識別のために用いたものであり、それらの対象物に順列を付することを意図していない。
【0014】
本開示において、「ある物Aがある物Bに形成されている」および「ある物Aがある物B上に形成されている」とは、特段の断りのない限り、「ある物Aがある物Bに直接形成されていること」、および、「ある物Aとある物Bとの間に他の物を介在させつつ、ある物Aがある物Bに形成されていること」を含む。同様に、「ある物Aがある物Bに配置されている」および「ある物Aがある物B上に配置されている」とは、特段の断りのない限り、「ある物Aがある物Bに直接配置されていること」、および、「ある物Aとある物Bとの間に他の物を介在させつつ、ある物Aがある物Bに配置されていること」を含む。同様に、「ある物Aがある物B上に位置している」とは、特段の断りのない限り、「ある物Aがある物Bに接して、ある物Aがある物B上に位置していること」、および、「ある物Aとある物Bとの間に他の物が介在しつつ、ある物Aがある物B上に位置していること」を含む。また、「ある物Aがある物Bにある方向に見て重なる」とは、特段の断りのない限り、「ある物Aがある物Bのすべてに重なること」、および、「ある物Aがある物Bの一部に重なること」を含む。また、本開示において「ある面Aが方向B(の一方側または他方側)を向く」とは、面Aの方向Bに対する角度が90°である場合に限定されず、面Aが方向Bに対して傾いている場合を含む。
【0015】
<第1実施形態 回路部品A1>
図1~
図8は、本開示の第1実施形態に係る回路部品を示している。本開示の回路部品A1は、磁性体層1、配線2、第1絶縁性シード層31、第2絶縁性シード層32、第3絶縁性シード層33、第4絶縁性シード層34、および第5絶縁性シード層35を備える。
【0016】
図1は、回路部品A1を示す斜視図である。
図2および
図3は、回路部品A1を示す部分平面図である。
図4は、回路部品A1を示す底面図である。
図5は、
図2のV-V線に沿う断面図である。
図6は、
図2のVI-VI線に沿う断面図である。
図7は、回路部品A1の一例を示す部分拡大断面図である。
図8は、回路部品A1の他の例を示す部分拡大断面図である。これらの図において、z方向は、本開示の厚さ方向である。
図2は、第1絶縁性シード層31を省略しており、
図3は、第1配線層21、第1絶縁性シード層31および磁性体層1を省略している。
【0017】
回路部品A1は、配線2の巻線部20に流れる電流によりインダクタンスを得る磁性部品である。回路部品A1の大きさは、特に限定されないが、一例ではx方向寸法およびy方向寸法がそれぞれ、1mm以上10mm以下である。
【0018】
〔磁性体層1〕
磁性体層1は、z方向を厚さ方向とし、x方向およびy方向に広がる層である。磁性体層1は、磁性体材料からなり、その一部が回路部品A1における磁性コアを構成する。磁性体層1の具体的構成は、何ら限定されず、磁性コアを構成しうる比透磁率を有する構成であればよい。磁性体層1としては、たとえば磁性体を含有する樹脂材料からなる構成、あるいはフェライト等の磁性体材料からなる基板、磁性コアを構成しうる比透磁率を有する導電体等が挙げられる。後述する製造方法の一例を採用する場合、磁性体層1は、レーザ光によって貫通孔を形成可能な構成が選択される。
【0019】
磁性体層1のz方向の厚さは何ら限定されず、たとえば100μm以上1mm以下である。
【0020】
磁性体層1は、複数の貫通孔101を有する。複数の貫通孔101は、磁性体層1をz方向に貫通している。複数の貫通孔101の配置は何ら限定されず、本実施形態においては、
図1~
図4において小径の丸印で示された位置に配置されている。貫通孔101がレーザ光によって形成される場合、
図5~
図8に示すように、テーパ形状となる場合がある。ただし、貫通孔101の具体的形状は何ら限定されず、たとえばz方向と直交する断面形状が一定の大きさであってもよい。
【0021】
〔第1絶縁性シード層31、第2絶縁性シード層32、第3絶縁性シード層33、第4絶縁性シード層34、第5絶縁性シード層35〕
第1絶縁性シード層31、第2絶縁性シード層32、第3絶縁性シード層33、第4絶縁性シード層34および第5絶縁性シード層35は、磁性体層1とともに積層されている。第1絶縁性シード層31、第2絶縁性シード層32、第3絶縁性シード層33、第4絶縁性シード層34および第5絶縁性シード層35は、配線2を形成するための無電解めっきのシード層として機能する層であって、絶縁性を有する。第1絶縁性シード層31、第2絶縁性シード層32、第3絶縁性シード層33、第4絶縁性シード層34および第5絶縁性シード層35の具体例は何ら限定されず、たとえば株式会社イオックス製のめっきプライマー「メタロイド」(登録商標)を一例として用いることができる。
【0022】
第1絶縁性シード層31、第2絶縁性シード層32、第3絶縁性シード層33、第4絶縁性シード層34および第5絶縁性シード層35の厚さは、何ら限定されない。本実施形態においては、第1絶縁性シード層31、第2絶縁性シード層32、第3絶縁性シード層33、第4絶縁性シード層34および第5絶縁性シード層35の厚さは、磁性体層1のz方向の厚さよりも薄い。第1絶縁性シード層31、第2絶縁性シード層32、第3絶縁性シード層33、第4絶縁性シード層34および第5絶縁性シード層35の厚さの具体例としては、たとえば50nm以上3000nm以下であり、たとえば270nm程度である。
【0023】
第1絶縁性シード層31は、磁性体層1に対して、z方向の一方側に積層されている。第2絶縁性シード層32は、磁性体層1に対して、z方向の他方側に積層されている。第3絶縁性シード層33は、複数の貫通孔101の内面に積層されている。第3絶縁性シード層33は、第1絶縁性シード層31および第2絶縁性シード層32に接しており、図示された例においては第1絶縁性シード層31および第2絶縁性シード層32と一体的に形成されている。第4絶縁性シード層34は、第1絶縁性シード層31に対してz方向の一方側に積層されている。第5絶縁性シード層35は、第2絶縁性シード層32に対してz方向の他方側に積層されている。なお、本開示に係る回路部品は、第4絶縁性シード層34および第5絶縁性シード層35を備えない構成であってもよい。
【0024】
〔配線2〕
配線2は、回路部品A1の機能を実現するための導通経路を構成している。本実施形態の配線2は、第1配線層21、第2配線層22、第3配線層23、第1貫通配線部27および第2貫通配線部28を含む。配線2の材質は何ら限定されず、たとえばCu(銅)またはCu(銅)合金を含む材質であることが好ましい。
【0025】
第1配線層21は、
図5および
図6に示すように、第1絶縁性シード層31に対してz方向の一方側に積層されている。また、本実施形態においては、第1配線層21は、第1絶縁性シード層31と第4絶縁性シード層34との間に位置している。第1配線層21は、第1絶縁性シード層31に直接接している。また、第1配線層21は、第4絶縁性シード層34に直接接している。第1配線層21と第1絶縁性シード層31との間には、Ti(チタン)等の金属からなるシード層が設けられていない。第1配線層21の厚さは何ら限定されず、具体例として100nm以上4000nm以下であり、たとえば270nm程度である。
【0026】
図1、
図2、
図5および
図6に示すように、本実施形態の第1配線層21は、複数の第1配線部211、および連絡配線部212を含む。
【0027】
複数の第1配線部211は、中心Oを取り囲むように配置されている。図示された例においては、複数の第1配線部211は、中心Oを中心とする円形に等ピッチで配置されている。各々の第1配線部211は、テーパ形状である。
【0028】
連絡配線部212は、1つの第1配線部211の繋がっており、y方向に延出している。
【0029】
第2配線層22は、
図5および
図6に示すように、第2絶縁性シード層32に対してz方向の他方側に積層されている。また、本実施形態においては、第2配線層22は、第2絶縁性シード層32と第5絶縁性シード層35との間に位置している。第2配線層22は、第2絶縁性シード層32に直接接している。また、第2配線層22は、第5絶縁性シード層35に直接接している。第2配線層22の厚さは何ら限定されず、具体例として100nm以上4000nm以下であり、たとえば270nm程度である。
【0030】
図1、
図3、
図5および
図6に示すように、本実施形態の第2配線層22は、複数の第2配線部221、連絡配線部222および連絡配線部223を含む。
【0031】
複数の第2配線部221は、中心Oを取り囲むように配置されている。図示された例においては、複数の第2配線部221は、中心Oを中心とする円形に等ピッチで配置されている。各々の第2配線部221は、テーパ形状である。
図1に示すように、z方向に視て、複数の第1配線部211と複数の第2配線部221とは、中心Oについての周方向(トロイダル方向)に、半ピッチ互いにずれている。すなわち、z方向に視て、隣り合う第1配線部211の一部ずつと1つの第2配線部221とが重なっている。また、z方向に視て、隣り合う第2配線部221の一部ずつと1つの第1配線部211とが重なっている。
【0032】
連絡配線部222は、複数の第2配線部221に対して、y方向に離隔して配置されている。連絡配線部222は、x方向に延びた形状である。
【0033】
連絡配線部223は、1つの第2配線部221に繋がっている。連絡配線部223は、1つの第2配線部221からy方向に延出する部分と、当該部分からx方向に延出する部分とを含む。
【0034】
第3配線層23は、
図5および
図6に示すように、第5絶縁性シード層35に対してz方向の他方側に配置されている。図示された例においては、
図1~
図4および
図6に示すように、第3配線層23は、端子部231および端子部232を含む。
【0035】
端子部231は、x方向の端部寄りに配置されている。端子部232は、端子部231に対してx方向に離隔して配置されている。端子部231および端子部232は、たとえば回路部品A1を実装するに用いられる部位である。端子部231および端子部232の表面には、たとえばはんだの濡れ性を改善するめっき層(図示略)が設けられていてもよいし、あるいは、はんだボール(図示略)が設けられていてもよい。
【0036】
第3配線層23の厚さは何ら限定されず、具体例として100nm以上4000nm以下であり、たとえば270nm程度である。
【0037】
第1貫通配線部27は、
図5および
図6に示すように、磁性体層1、第1絶縁性シード層31および第2絶縁性シード層32をz方向に貫通している。第1貫通配線部27は、第3絶縁性シード層33の内面に積層されている。第1貫通配線部27は、第3絶縁性シード層33に直接接している。第1貫通配線部27と第3絶縁性シード層33との間には、Ti(チタン)等の金属からなるシード層が設けられていない。
【0038】
第1貫通配線部27は、第1配線層21と第2配線層22とに繋がっている。
図1~
図6に示すように、本実施形態の第1貫通配線部27は、複数の内方貫通配線部271、複数の外方貫通配線部272および複数の連絡貫通配線部273を含む。
【0039】
図1~
図5に示すように、複数の内方貫通配線部271は、各々が、複数の第1配線部211と複数の第2配線部221とのうち、z方向に視て互いに重なるもの同士に繋がっている。内方貫通配線部271は、複数の第1配線部211および複数の第2配線部221のそれぞれに対して、中心Oに近い位置に配置されている。1つの第1配線部211は、z方向に視て重なる2つの第2配線部221の一方のみと、内方貫通配線部271によって接続されている。また、1つの第2配線部221は、z方向に視て重なる2つの第1配線部211の一方のみと、内方貫通配線部271によって接続されている。内方貫通配線部271の個数は、何ら限定されない。
【0040】
図1~
図5に示すように、複数の外方貫通配線部272は、各々が、複数の第1配線部211と複数の第2配線部221とのうち、z方向に視て互いに重なるもの同士に繋がっている。外方貫通配線部272は、複数の第1配線部211および複数の第2配線部221のそれぞれに対して、中心Oから遠い位置に配置されている。1つの第1配線部211は、z方向に視て重なる2つの第2配線部221の一方のみと、外方貫通配線部272によって接続されている。また、1つの第2配線部221は、z方向に視て重なる2つの第1配線部211の一方のみと、外方貫通配線部272によって接続されている。外方貫通配線部272の個数は、何ら限定されず、本実施形態においては、複数の外方貫通配線部272の個数は、複数の内方貫通配線部271の個数よりも多い。
【0041】
連絡貫通配線部273は、
図1~
図3および
図6に示すように、第1配線層21の連絡配線部212と第2配線層22の連絡配線部222とに繋がっている。
【0042】
図7に示す例においては、第1貫通配線部27は、第3絶縁性シード層33に囲まれた空間を埋めるように形成されており、いわゆる中実な構成である。一方、
図8に示す例においては、第1貫通配線部27は、第3絶縁性シード層33に積層された筒状である。第1貫通配線部27のさらに内部には、第6絶縁性シード層36が形成されている。第6絶縁性シード層36は、たとえば第4絶縁性シード層34および第5絶縁性シード層35を形成する際に一括して形成される。第1貫通配線部27は、
図7および
図8に示す構成をはじめ、様々な構成に形成されうる。
【0043】
複数の第2貫通配線部28は、
図1~
図4および
図6に示すように、第5絶縁性シード層35をz方向に貫通している。より具体的には、第5絶縁性シード層35には、複数の貫通孔359が設けられている。第2貫通配線部28は、貫通孔359に収容されている。第2貫通配線部28は、第2配線層22と第3配線層23とに繋がっている。複数の第2貫通配線部28の一部は、第2配線層22の連絡配線部223と第3配線層23の端子部231とに繋がっている。複数の第2貫通配線部28の他の一部は、第2配線層22の連絡配線部222と第3配線層23の端子部232とに繋がっている。
【0044】
上述の構成とされた複数の第1配線部211、複数の第2配線部221、複数の内方貫通配線部271および複数の外方貫通配線部272によって、巻線部20が構成されている。巻線部20は、電気的にインダクタとして機能する。磁性体層1の一部は、巻線部20についての磁性コアを構成している。
【0045】
次に、回路部品A1の製造方法について、
図9~
図16を参照しつつ、以下に説明する。これらの図においては、z方向の姿勢が、
図5および
図6と同じ姿勢である。回路部品A1の製造方法において、たとえば鉛直方向の上方および下方が、z方向の一方側および他方側のいずれに一致するかは何ら限定されない。製造方法における各工程の便宜によって、適宜設定されてもよい。
【0046】
図9~
図13は、
図5と同じ位置における断面図である。まず、
図9に示すように、磁性体層1を用意する。次いで、
図10に示すように、磁性体層1にレーザ光L0を照射する。レーザ光L0の照射により、磁性体層1に複数の貫通孔101を形成する。
【0047】
次いで、
図11に示すように、第1絶縁性シード層31、第2絶縁性シード層32および第3絶縁性シード層33を積層させる。この工程は、たとえば、第1絶縁性シード層31、第2絶縁性シード層32および第3絶縁性シード層33の材料である液体材料を、磁性体層1に塗布することにより行う。たとえば、磁性体層1のz方向の一方側および他方側から液体材料を塗布することにより、磁性体層1のz方向の両側および複数の貫通孔101の内面に、液体材料が付着する。この液体材料を適宜硬化させることにより、第1絶縁性シード層31、第2絶縁性シード層32および第3絶縁性シード層33が得られる。液体材料を塗布する具体的手法は何ら限定されず、スプレー、スピンコート、バーコート、ディッピング、インクジェット印刷等の様々な手法を採用可能である。
【0048】
次いで、
図12に示すように、第1絶縁性シード層31にレーザ光L1を照射する。また、第2絶縁性シード層32にレーザ光L2を照射する。レーザ光L1を照射する領域は、第1絶縁性シード層31のうち第1配線層21が形成されない領域である。レーザ光L2を照射する領域は、第2絶縁性シード層32のうち第2配線層22が形成されない領域である。すなわち、レーザ光L1の照射は、第1配線層21が形成される領域を避けた領域に施され、レーザ光L2の照射は、第2配線層22が形成される領域を避けた領域に施される。
【0049】
レーザ光L1およびレーザ光L2の照射は、磁性体層1のz方向の両側から同時におこなってもよい。あるいは、同一のレーザ装置を用いて、たとえばレーザ光L1としてのレーザ照射を行った後に、レーザ光L2としてのレーザ照射を行ってもよい。
【0050】
レーザ光L1の波長、出力および照射時間等は何ら限定されない。本実施形態においては、レーザ光L1およびレーザ光L2を照射することにより、第1絶縁性シード層31および第2絶縁性シード層32の後述のシード層としての機能が不活性化される態様で、レーザ光L1およびレーザ光L2を照射する。
【0051】
レーザ光L1の照射により、第1絶縁性シード層31には、第1不活性化領域311が形成される。第1絶縁性シード層31のうちレーザ光L1が照射されなかった領域を、第1活性化領域310と定義する。また、レーザ光L2の照射により、第2絶縁性シード層32には、第2不活性化領域321が形成される。第2絶縁性シード層32のうちレーザ光L2が照射されなかった領域を、第2活性化領域320と定義する。
【0052】
次いで、
図13に示すように、第1配線層21、第2配線層22および複数の第1貫通配線部27を形成する。第1配線層21、第2配線層22および複数の第1貫通配線部27の形成は、第1絶縁性シード層31の第1活性化領域310、第2絶縁性シード層32の第2活性化領域320および第3絶縁性シード層33をシード層とした無電解めっき、または無電解めっきおよび電気めっきにより行う。第1絶縁性シード層31、第2絶縁性シード層32および第3絶縁性シード層33が積層された磁性体層1に対して、無電解めっき、または無電解めっきおよび電気めっきを施すことにより、第1活性化領域310、第2活性化領域320および第3絶縁性シード層33上に、たとえばCu(銅)またはCu(銅)合金を含むめっき層が成長する。このめっき層が、第1配線層21、第2配線層22および複数の第1貫通配線部27となる。一方、第1不活性化領域311および第2不活性化領域321は、シード層としての機能が不活性化されているため、めっき層は成長しない。
【0053】
貫通孔101の大きさ、第3絶縁性シード層33の厚さおよび無電解めっき、または無電解めっきおよび電気めっきのめっき条件等によって、第1貫通配線部27は、
図7に示す構成となる場合があり、あるいは、
図8に示す構成となる場合がありうる。
【0054】
図14~
図16は、
図6と同じ位置における断面図である。
図14は、
図13を参照して説明した第1配線層21、第2配線層22および複数の第1貫通配線部27の形成が完了した状態である。
【0055】
次いで、
図15に示すように、第4絶縁性シード層34および第5絶縁性シード層35を形成する。第4絶縁性シード層34および第5絶縁性シード層35の形成は、たとえば第1絶縁性シード層31、第2絶縁性シード層32および第3絶縁性シード層33の形成と同様に、液体材料を塗布し、その後に塗布された液体材料を硬化させることにより行う。
【0056】
次いで、
図16に示すように、レーザ光L30およびレーザ光L31を第5絶縁性シード層35に照射する。レーザ光L30は、第5絶縁性シード層35を貫通可能な波長、出力および照射時間等のレーザ光である。一方、レーザ光L31は、第5絶縁性シード層35のシード層としての機能を不活性化しうる波長、出力および照射時間等のレーザ光である。レーザ光L30とレーザ光L31とは、別のレーザ装置を用いて照射してもよいし、同一のレーザ装置を用いて、波長、出力および照射時間等を適宜調整することにより、レーザ光L30およびレーザ光L31を照射する構成であってもよい。
【0057】
第5絶縁性シード層35のうち連絡配線部222および連絡配線部223と重なる部分にレーザ光L30が照射されることにより、第5絶縁性シード層35には、複数の貫通孔359が形成される。複数の貫通孔359は、第5絶縁性シード層35をz方向に貫通している。また、第5絶縁性シード層35のうち第3配線層23が形成されない領域にレーザ光L31を照射することにより、第5絶縁性シード層35には、第5不活性化領域351が形成される。また、第5絶縁性シード層35のうちレーザ光L31が照射されなかった領域を第5活性化領域350と定義する。
【0058】
この後は、無電解めっき、または無電解めっきおよび電気めっきを施すことにより、第5活性化領域350上に第3配線層23を形成する。また、複数の貫通孔359内には、複数の第2貫通配線部28が形成される。なお、この無電解めっきに先立ち、第4絶縁性シード層34の全面にレーザ光を照射することにより、第4絶縁性シード層34全体を不活性化しておいてもよい。あるいは、第4絶縁性シード層34に代えて、シード層としての機能を有さない絶縁層を形成してもよい。以上の工程を経ることにより、回路部品A1が得られる。
【0059】
<第1実施形態 電子装置B1>
図17は、回路部品A1を用いた電子装置B1を示している。電子装置B1は、回路部品A1、トランジスタTr、コンデンサC、回路基板91および封止部材92を備えている。
図17は、電子装置B1を示す正面図である。
図17において、封止部材92を想像線(二点鎖線)で示している。
【0060】
電子装置B1は、たとえばBGA(Ball Grid Array)型のパッケージ構造である。本例と異なり、電子装置B1は、BGA型ではなく、他のパッケージ構造であってもよい。電子装置B1は、たとえばトランジスタTrを内蔵した電源モジュールである。
【0061】
回路基板91は、たとえばプリント基板である。回路基板91は、回路部品A1、トランジスタTr、コンデンサCおよび封止部材92を支持する。回路基板91には、図示しない配線パターンが形成されており、当該配線パターンを介して、回路部品A1、トランジスタTr、コンデンサCなどが適宜導通している。回路部品A1が回路基板91に実装された状態では、端子部231,232の形成面が回路基板91に対向し、端子部231および端子部232が上記配線パターンに接合されている。電子装置B1がBGA型のパッケージ構造である例において、回路基板91は、回路部品A1、トランジスタTr、コンデンサCおよび封止部材92などの配置面(上面)とz方向において反対側の面(下面)に、各々が小さいボール状の複数の電極911が形成されている。
【0062】
封止部材92は、回路基板91上に形成され、回路部品A1、トランジスタTrおよびコンデンサCなどを覆う。封止部材92の構成材料は、絶縁性樹脂であり、一例ではエポキシ樹脂である。
【0063】
トランジスタTrは、たとえば、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、または、HEMT(High Electron Mobility Transistor)などである。トランジスタTrの構成材料は、Si、SiC、または、GaNなどの半導体材料である。
【0064】
図18および
図19は、電子装置B1の変形例をそれぞれ示している。
図18は、電子装置B1の第1変形例を示している。本変形例のB11は、回路部品A1が、回路基板91に搭載されている。トランジスタTrおよびコンデンサCは、回路部品A1に搭載されている。すなわち、回路部品A1は、回路基板91によって直接支持されており、トランジスタTrおよびコンデンサCは、回路部品A1を介して回路基板91によって間接的に支持されている。
【0065】
図19は、電子装置B1の第2変形例を示している。本変形例のB12は、トランジスタTrおよびコンデンサCが、回路基板91に搭載されている。回路部品A1は、z方向においてトランジスタTrおよびコンデンサCを挟んで回路基板91とは反対側に配置されている。回路部品A1と回路基板91とは、たとえば導通部材93を介して導通している。導通部材93は、たとえば封止部材92をz方向に部分的に貫通するCu(銅)等からなる部材である。
【0066】
次に、回路部品A1および電子装置B1の作用について説明する。
【0067】
本実施形態によれば、
図5に示すように、巻線部20についての磁性コアは、磁性体層1の一部によって構成される。第1絶縁性シード層31および第2絶縁性シード層32は、磁性体層1に積層されている。第1配線層21および第2配線層22は、第1絶縁性シード層31および第2絶縁性シード層32に積層されている。このため、第1配線層21および第2配線層22と磁性体層1とを確実に絶縁可能であり、磁性体層1として絶縁性の材質からなるもののみを選択することが強いられない。また、第1絶縁性シード層31および第2絶縁性シード層32は、単に無電解めっきのシード層としてのみ機能するものではなく、また、単に絶縁層としてのみ機能するものではない。このため、たとえば絶縁層とシード層とを別々に形成する構成と比べて、製造方法の工程を簡略化することが可能であり、回路部品A1のz方向の大きさを縮小することが可能である。したがって、回路部品A1の製造の容易化および小型化を図ることができる。
【0068】
磁性体層1には、複数の貫通孔101が形成されている。貫通孔101の内面には、第3絶縁性シード層33が積層されており、第1貫通配線部27が第3絶縁性シード層33に積層されている。これにより、第1貫通配線部27と磁性体層1とをより確実に絶縁することができる。また、
図11および
図12に示すように、第1絶縁性シード層31、第2絶縁性シード層32および第3絶縁性シード層33を形成した後に、無電解めっき、または無電解めっきおよび電気めっきを行うことにより、第1配線層21、第2配線層22および複数の第1貫通配線部27を一括して製造することが可能である。これにより、回路部品A1の製造をより容易化することができる。また、第1配線層21、第2配線層22および複数の第1貫通配線部27が一括して形成されることにより、第1配線層21、第2配線層22および複数の第1貫通配線部27を相互により確実に導通させることができる。
【0069】
図12に示すように、無電解めっきに先立ち、第1絶縁性シード層31および第2絶縁性シード層32に第1不活性化領域311および第1絶縁性シード層312を形成する。第1不活性化領域311および第1絶縁性シード層312の形成をレーザ光L1,L2の照射によって行うことにより、第1配線層21および第2配線層22を、より微細に、より正確な形で形成することが可能である。また、レーザ光L1,L2による不活性化によっては、第1絶縁性シード層31および第2絶縁性シード層32には、貫通孔は形成されない。したがって、第1絶縁性シード層31および第2絶縁性シード層32の絶縁層としての機能を維持することが可能である。
【0070】
第5絶縁性シード層35および第3配線層23を備えることにより、回路部品A1をたとえば面実装等の形態で実装可能な構成に、より容易に形成することができる。
【0071】
図20~
図28は、本開示の変形例および他の実施形態を示している。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。
【0072】
<第1実施形態 第1変形例 回路部品A11>
図20および
図21は、回路部品A1の第1変形例である回路部品A11を示している。回路部品A11においては、主に複数の第1配線部211および複数の第2配線部221の形状および配置が、回路部品A1と異なっている。
【0073】
1つの第1配線部211は、z方向に視て、周方向に隣り合う2つの第2配線部221と重なっている。これら2つの第2配線部221のうち周方向において時計回りの後方に位置する第2配線部221と当該第1配線部211とは、中心Oから放射状に定義された径方向の外側に位置する端縁が周方向において同じ位置に配置されており、これらの端縁がz方向に視て互いに一致している。また、これら2つの第2配線部221のうち周方向において時計回りの前方に位置する第2配線部221と当該第1配線部211とは、径方向の内側に位置する端縁が周方向において同じ位置に配置されており、これらの端縁がz方向に視て互いに一致している。
【0074】
本例においては、1つの第1配線部211と1つの第2配線部221とが重なりあう領域に、1つの内方貫通配線部271が配置されている。また、1つの第1配線部211と1つの第2配線部221とが重なりあう領域に、6つの外方貫通配線部272が配置されている。なお、内方貫通配線部271および外方貫通配線部272の個数は、何ら限定されない。
【0075】
本変形例によっても、回路部品A11の製造の容易化および小型化を図ることができる。また、回路部品A11においては、第1配線部211と第2配線部221とが、z方向に視て重なり合う面積を、たとえば回路部品A1と比べて大きくすることが可能である。これにより、回路部品A11のインダクタンスをより大きくすることができる。
【0076】
<第2実施形態 回路部品A2>
図22は、本開示の第2実施形態に係る回路部品を示している。本実施形態の回路部品A2は、主に磁性体層1および配線2およびの構成が、上述した実施形態と異なっている。
【0077】
本実施形態の磁性体層1は、薄肉部111および厚肉部112を有する。薄肉部111と、厚肉部112とは、z方向の大きさが互いに異なる。薄肉部111は、厚肉部112よりも薄い。言い換えると、厚肉部112は、薄肉部111よりも厚い。薄肉部111および厚肉部112の具体的な形状は何ら限定されない。図示された例においては、厚肉部112は、中心Oについての円環形状である。また、厚肉部112は、薄肉部111に対してz方向の一方側に膨出している。複数の貫通孔101は、薄肉部111を貫通している。
【0078】
本実施形態の第1配線層21の複数の第1配線部211は、各々が、第1部2111、第2部2112、第3部2113、第4部2114および第5部2115を有する。
【0079】
第1部2111は、中心Oに近い部位である。第2部2112は、中心Oから離隔した部位である。第1部2111および第2部2112は、z方向に視て、磁性体層1の薄肉部111に重なる。第3部2113は、z方向に視て、第1部2111と第2部2112との間に位置する部位であり、厚肉部112と重なる。第3部2113と第2配線層22(第2配線部221)とのz方向の距離z3は、第2配線層22(第2配線部221)と第1部2111とのz方向の距離z1、および第2配線層22(第2配線部221)と第2部2112とのz方向の距離z2、のいずれよりも大きい。距離z3は、距離z1および距離z2のそれぞれの2倍以上が好ましい。また、図示された例においては、距離z1と距離z2とは、同じである。
【0080】
第4部2114は、第1部2111と第3部2113とを繋いでいる。第4部2114は、z方向に対して傾斜している。第5部2115は、第2部2112と第3部2113とを繋いでいる。第5部2115は、z方向に対して傾斜している。第4部2114および第5部2115は、z方向に視て、厚肉部112と重なる。
【0081】
第3絶縁性シード層33および複数の第1貫通配線部27は、磁性体層1の薄肉部111を貫通している。すなわち、第1貫通配線部27のz方向の大きさは、おおむね距離z1と等しく、距離z3よりも小さい。
【0082】
図23~
図25は、回路部品A2の製造方法の一例を示している。回路部品A2の製造方法は、上述の回路部品A1の製造方法と類似している。
【0083】
まず、
図24に示すように、磁性体層1を用意する。磁性体層1は、薄肉部111および厚肉部112を有する。薄肉部111および厚肉部112の形成は、たとえば金型成型、機械加工等を用いればよい。次いで、磁性体層1の薄肉部111にレーザ光L0を照射することにより、複数の貫通孔101を形成する。
【0084】
次いで、
図25に示すように、第1絶縁性シード層31、第2絶縁性シード層32および第3絶縁性シード層33を形成する。
【0085】
次いで、
図26に示すように、レーザ光L1およびレーザ光L2を照射することにより、第1絶縁性シード層31に第1不活性化領域311を形成し、第2絶縁性シード層32に第2不活性化領域321を形成する。この後は、たとえば
図13~
図16を参照して説明した工程を行うことにより、回路部品A2が得られる。
【0086】
本実施形態によっても、回路部品A2の製造の容易化および小型化を図ることができる。また、複数の内方貫通配線部271および複数の外方貫通配線部272を形成するために、磁性体層1に設けるべき貫通孔19のz方向の寸法を小さくすることが可能である。これにより、貫通孔19を形成するための加工時間の短縮、および内方貫通配線部271および外方貫通配線部272を形成するためのめっき時間の短縮を図ることができる。さらに、貫通孔19へのめっきの充填性を高める効果も期待できる。
【0087】
磁性体層1のうち、巻線部20の磁性コアを構成する部分のほとんどは、第3部2113と第2配線部221との間に位置する。このため、当該磁性コアの体積が減少してしまうことを回避可能である。
【0088】
<第2実施形態 第1変形例 回路部品A21>
図27および
図28は、回路部品A2の第1変形例である回路部品A21を示している。回路部品A21においては、主に複数の第1配線部211および複数の第2配線部221の形状および配置が、回路部品A2と異なっている。
【0089】
本変形例では、複数の第1配線部211は、中心Oと取り囲む矩形環状をなすように配置されている。また、複数の第2配線部221は、中心Oと取り囲む矩形環状をなすように配置されている。個々の第1配線部211および個々の第2配線部221は、テーパ形状である。
【0090】
上述の回路部品A11と同様に、1つの第1配線部211は、z方向に視て、周方向に隣り合う2つの第2配線部221と重なっている。これら2つの第2配線部221のうち周方向において時計回りの後方に位置する第2配線部221と当該第1配線部211とは、中心Oから放射状に定義された径方向の外側に位置する端縁が周方向において同じ位置に配置されており、これらの端縁がz方向に視て互いに一致している。また、これら2つの第2配線部221のうち周方向において時計回りの前方に位置する第2配線部221と当該第1配線部211とは、径方向の内側に位置する端縁が周方向において同じ位置に配置されており、これらの端縁がz方向に視て互いに一致している。
【0091】
本例においても、複数の第1配線部211のそれぞれは、上述の第1部2111、第2部2112、第3部2113、第4部2114および第5部2115を有する。1つの第1配線部211の第1部2111と1つの第2配線部221とが重なりあう領域に、1つの内方貫通配線部271が配置されている。また、1つの第1配線部211の第2部2112と1つの第2配線部221とが重なりあう領域に、4つの外方貫通配線部272が配置されている。なお、内方貫通配線部271および外方貫通配線部272の個数は、何ら限定されない。
【0092】
本変形例によっても、回路部品A21の製造の容易化および小型化を図ることができる。また、本変形例から理解されるように、複数の第1配線部211および複数の第2配線部221が中心Oを取り囲む配置は、円形に限定されず、矩形環状等の種々の配置が適宜採用される。また、第1部2111、第2部2112、第3部2113、第4部2114および第5部2115を有さない回路部品A1について、矩形環状等の配置を適宜採用してもよい。
【0093】
本開示に係る回路部品、電子装置および回路部品の製造方法は、上述した実施形態に限定されるものではない。本開示に係る回路部品、電子装置および回路部品の製造方法の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0094】
〔付記1〕
磁性体層と、
前記磁性体層に対して厚さ方向の一方側に積層された第1絶縁性シード層と、
前記磁性体層に対して前記厚さ方向の他方側に積層された第2絶縁性シード層と、
前記第1絶縁性シード層に対して前記厚さ方向の前記一方側に積層された第1配線層と、
前記第2絶縁性シード層に対して前記厚さ方向の前記他方側に積層された第2配線層と、
を備える、回路部品。
〔付記2〕
前記第1絶縁性シード層の厚さは、前記磁性体層の厚さよりも薄い、付記1に記載の回路部品。
〔付記3〕
前記第2絶縁性シード層の厚さは、前記磁性体層の厚さよりも薄い、付記1または2に記載の回路部品。
〔付記4〕
前記第1絶縁性シード層および前記第2絶縁性シード層に繋がる第3絶縁性シード層と、
前記第3絶縁性シード層上に積層され且つ前記第1配線層および前記第2配線層に導通する第1貫通配線部と、を備え、
前記第1配線層、前記第2配線層および前記第1貫通配線部は、巻線部を構成している、付記1ないし3のいずれかに記載の回路部品。
〔付記5〕
前記磁性体層は、前記厚さ方向に貫通する貫通孔を有し、
前記第3絶縁性シード層は、前記貫通孔の内面に積層されている、付記4に記載の回路部品。
〔付記6〕
前記第1配線層は、複数の第1配線部を含んでおり、
前記複数の第1配線部は、前記厚さ方向に沿って視て、中心を囲む配置とされている、付記4または5に記載の回路部品。
〔付記7〕
前記第2配線層は、複数の第2配線部を含んでおり、
前記複数の第2配線部は、前記厚さ方向に沿って視て、前記中心を囲む配置とされている、付記6に記載の回路部品。
〔付記8〕
前記厚さ方向に視て、隣り合う2つの前記第1配線部の一部ずつが、1つの前記第2配線部に重なり、
前記厚さ方向に視て、隣り合う2つの前記第2配線部の一部ずつが、1つの前記第1配線部に重なる、付記7に記載の回路部品。
〔付記9〕
前記第1配線部は、平坦な形状である、付記7または8に記載の回路部品。
〔付記10〕
前記第1配線部は、第1部と、前記第1部よりも前記中心から離隔した第2部と、前記厚さ方向に視て前記第1部および前記第2部の間に位置する第3部と、を含み、
前記第3部と前記第2配線部との前記厚さ方向における距離は、前記第1部と前記第2配線部との前記厚さ方向における距離および前記第2部と前記第2配線部との前記厚さ方向における距離のいずれよりも大きく、
前記第1貫通配線部は、前記第1部と前記第2配線部とに繋がる内方貫通配線部と、前記第2部と前記第2配線部とに繋がる外方貫通配線部と、を含む、付記7または8に記載の回路部品。
〔付記11〕
前記第1絶縁性シード層に対して前記厚さ方向の前記一方側に積層された第4絶縁性シード層をさらに備え、
前記第4絶縁性シード層は、前記第1配線層の少なくとも一部を覆う、付記4ないし10のいずれかに記載の回路部品。
〔付記12〕
前記第2絶縁性シード層に対して前記厚さ方向の前記他方側に積層された第5絶縁性シード層をさらに備え、
前記第5絶縁性シード層は、前記第2配線層の少なくとも一部を覆う、付記4ないし11のいずれかに記載の回路部品。
〔付記13〕
前記第5絶縁性シード層に対して前記厚さ方向の前記他方側に位置する第3配線層をさら備える、付記12に記載の回路部品。
〔付記14〕
前記第5絶縁性シード層を貫通し且つ前記第2配線層と前記第3配線層とに繋がる第2貫通配線部をさらに備える、付記13に記載の回路部品。
〔付記15〕
付記1ないし14のいずれかに記載の回路部品と、
前記回路部品に導通する電子部品と、を備える、電子装置。
〔付記16〕
前記電子部品は、トランジスタを含む、付記15に記載の電子装置。
〔付記17〕
磁性体層を用意する工程と、
前記磁性体層の厚さ方向の一方側に第1絶縁性シード層を積層させる工程と、
前記磁性体層の前記厚さ方向の他方側に第2絶縁性シード層を積層させる工程と、
前記第1絶縁性シード層上に無電解めっき、または無電解めっきおよび電気めっきによって第1配線層を形成する工程と、
前記第2絶縁性シード層上に無電解めっき、または無電解めっきおよび電気めっきによって第2配線層を形成する工程と、
を備える、回路部品の製造方法。
〔付記18〕
前記第1絶縁性シード層を積層させる工程の後であって、前記第1配線層を形成する工程の前に、前記第1絶縁性シード層にレーザ光を照射することにより、前記第1絶縁性シード層の無電解めっきを可能とするシード層としての機能を部分的に不活性化する工程をさらに含む、付記17に記載の回路部品の製造方法。
【符号の説明】
【0095】
A1,A11,A2,A21:回路部品
B1 :電子装置
1 :磁性体層
2 :配線
19 :貫通孔
20 :巻線部
21 :第1配線層
22 :第2配線層
23 :第3配線層
27 :第1貫通配線部
28 :第2貫通配線部
31 :第1絶縁性シード層
32 :第2絶縁性シード層
33 :第3絶縁性シード層
34 :第4絶縁性シード層
35 :第5絶縁性シード層
36 :第6絶縁性シード層
91 :回路基板
92 :封止部材
93 :導通部材
101 :貫通孔
111 :薄肉部
112 :厚肉部
211 :第1配線部
212 :連絡配線部
221 :第2配線部
222 :連絡配線部
223 :連絡配線部
231 :端子部
232 :端子部
271 :内方貫通配線部
272 :外方貫通配線部
273 :連絡貫通配線部
310 :第1活性化領域
311 :第1不活性化領域
312 :第1絶縁性シード層
320 :第2活性化領域
321 :第2不活性化領域
350 :第5活性化領域
351 :第5不活性化領域
359 :貫通孔
911 :電極
2111 :第1部
2112 :第2部
2113 :第3部
2114 :第4部
2115 :第5部
C :コンデンサ
L0,L1,L2,L30,L31:レーザ光
O :中心
Tr :トランジスタ
z1,z2,z3:距離