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特開2024-134093回転電機の制御装置、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134093
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】回転電機の制御装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02P 27/06 20060101AFI20240926BHJP
【FI】
H02P27/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044200
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100207859
【弁理士】
【氏名又は名称】塩谷 尚人
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 一範
【テーマコード(参考)】
5H505
【Fターム(参考)】
5H505AA16
5H505BB05
5H505CC04
5H505DD08
5H505HA10
5H505HB01
5H505LL22
5H505LL41
(57)【要約】
【課題】負荷電流が流れることに起因して発生するノイズを低減することができる回転電機の制御装置を提供する。
【解決手段】制御装置50は、高圧蓄電池11と、インバータ30と、回転電機20とを備えるシステム10に適用される。制御装置50は、スイッチを有し、スイッチのスイッチング制御により負荷電流を出力するスイッチング電源を備え、スイッチング電源から供給される負荷電流を電源として、回転電機20を制御する複数の制御機能が動作するように構成されている。制御装置50は、制御システム10の外部に設けられた外部電源210から高圧蓄電池11に充電する外部充電制御中であるとの条件、又は制御システム10の外部に設けられた外部給電対象に高圧蓄電池11から給電する外部給電制御中であるとの条件が成立したと判定した場合に、回転電機10の制御機能を制限する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電部(11)と、
前記蓄電部に接続されたインバータ(30)と、
前記インバータに接続された電機子巻線(21)を有する回転電機(20)と、を備えるシステム(10)に適用される回転電機の制御装置(50)において、
スイッチ(Q,70b)を有し、前記スイッチのスイッチング制御により負荷電流を出力するスイッチング電源(61~63,70)を備え、
前記スイッチング電源から供給される負荷電流を電源として、前記回転電機を制御する複数の制御機能が動作するように前記制御装置が構成されており、
前記システムの外部に設けられた外部電源(210)から前記蓄電部に充電する外部充電制御中であるとの条件、又は前記システムの外部に設けられた外部給電対象に前記蓄電部から給電する外部給電制御中であるとの条件が成立したと判定した場合に、複数の前記制御機能の少なくとも一部を制限する制限処理を行う制限部を備える、回転電機の制御装置。
【請求項2】
複数の前記制御機能のうち最大の負荷電流が前記スイッチング電源から供給される制御機能を特定機能とし、
前記制限部は、前記外部充電制御中であるとの条件、又は前記外部給電制御中であるとの条件が成立したと判定した場合に、前記制限処理として、前記特定機能の消費電流を低減する処理を行う、請求項1に記載の回転電機の制御装置。
【請求項3】
複数の前記制御機能には、前記回転電機の電気角を検出する角度検出機能が含まれ、
前記制限部は、前記外部充電制御中であるとの条件、又は前記外部給電制御中であるとの条件が成立したと判定した場合に、前記制限処理として、前記角度検出機能を停止する処理を行う、請求項2に記載の回転電機の制御装置。
【請求項4】
前記スイッチング電源から負荷電流が供給されることにより、交流の励磁信号を生成する励磁信号生成部(52)を備え、
前記システムは、前記回転電機の電気角に応じて前記励磁信号を変調し、変調した前記励磁信号を角度信号として出力する角度センサ(40)を備え、
前記角度検出機能は、前記角度センサの角度信号に基づいて、前記回転電機の電気角を検出する機能であり、
前記制限部は、前記角度検出機能を停止する処理として、前記励磁信号生成部により前記励磁信号が生成されることを停止する処理を行う、請求項3に記載の回転電機の制御装置。
【請求項5】
前記インバータが有する上下アームスイッチ(SWH,SWL)のスイッチング指令を生成するマイコン(51)を備え、
前記マイコンは、前記制御機能として、前記回転電機を駆動するように前記スイッチング指令を生成する指令生成機能を有し、
前記制限部(43)は、前記外部充電制御中であるとの条件、又は前記外部給電制御中であるとの条件が成立したと判定した場合に、前記制限処理として、前記マイコンの前記指令生成機能を停止する処理を行う、請求項1に記載の回転電機の制御装置。
【請求項6】
前記インバータが有する上下アームスイッチ(SWH,SWL)の駆動回路(71,72)を備え、
前記駆動回路は、前記制御機能として、
前記駆動回路により前記上下アームスイッチをオンオフさせる駆動機能と、
前記駆動回路により前記上下アームスイッチをオフ状態に保持するオフ保持機能と、を有し、
前記制限部は、前記外部充電制御中であるとの条件、又は前記外部給電制御中であるとの条件が成立したと判定した場合に、前記制限処理として、前記駆動回路が有する前記制御機能のうち前記オフ保持機能以外の機能を停止する処理を行う、請求項1に記載の回転電機の制御装置。
【請求項7】
前記スイッチング電源の負荷電流が流れる電気経路(L1~L5)と、
前記電気経路に設けられている遮断スイッチ(121~125)と、を備え、
前記制限部は、前記外部充電制御中であるとの条件、又は前記外部給電制御中であるとの条件が成立したと判定した場合に、前記制限処理として、前記遮断スイッチをオフする、請求項1~6のいずれか1項に記載の回転電機の制御装置。
【請求項8】
前記システムは、各相の前記電機子巻線の中性点に前記外部電源又は前記外部給電対象を接続可能とする外部充電機構(12)を備え、
前記インバータが有する上下アームスイッチ(SWH,SWL)のスイッチング指令を生成するマイコン(51)を備え、
前記マイコンは、前記制御機能として、
前記回転電機を駆動するように前記スイッチング指令を生成する駆動機能と、
前記外部充電制御中に前記中性点を介して外部電源から入力される充電電力の電圧を昇圧する、又は前記外部給電制御中に前記中性点を介して前記給電対象へと供給する給電電力の電圧を降圧するように、前記スイッチング指令を生成する変圧機能と、を有し、
前記制限部は、前記外部充電制御中であるとの条件、又は前記外部給電制御中であるとの条件が成立したと判定した場合に、前記制限処理として、前記変圧機能を継続しつつ、前記駆動機能を停止する処理を行う、請求項1に記載の回転電機の制御装置。
【請求項9】
蓄電部(11)と、
前記蓄電部に接続されたインバータ(30)と、
前記インバータに接続された電機子巻線(21)を有する回転電機(20)と、を備えるシステム(10)に適用される制御装置(50)のプログラムにおいて、
前記制御装置は、スイッチ(Q,70b)を有し、前記スイッチのスイッチング制御により負荷電流を出力するスイッチング電源(61~63,70)を備え、
前記スイッチング電源から負荷電流が供給されることにより、前記回転電機を制御する複数の制御機能が動作するように前記制御装置が構成されており、
コンピュータ(51)に、前記システムの外部に設けられた外部電源(210)から前記蓄電部に充電する外部充電制御中であるとの条件、又は前記システムの外部に設けられた外部給電対象に前記蓄電部から給電する外部給電制御中であるとの条件が成立したと判定した場合に、複数の前記制御機能の少なくとも一部を制限する制限処理を実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電部と、蓄電部に接続されたインバータと、インバータに接続された電機子巻線を有する回転電機とを備えるシステムに適用される回転電機の制御装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の回転電機の制御装置としては、インバータが有する上下アームスイッチの駆動回路に給電するスイッチング電源を備えるものが知られている。この制御装置は、外部電源から蓄電部への外部充電制御中において、スイッチング電源を間欠的に作動させる。これにより、スイッチング電源のスイッチング制御に伴い発生するノイズの低減を図っている。このような技術の例として、特許文献1に開示された技術が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-118417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
外部電源から蓄電部への外部充電制御中において、スイッチング電源から駆動回路へと負荷電流が出力されることに起因して、ノイズが発生することが懸念される。例えば、スイッチング電源を間欠的に作動させる場合、動作停止期間において負荷電流の出力が停止されるものの、作動期間において負荷電流が出力されることに起因して、ノイズが発生することが懸念される。
【0005】
なお、スイッチング電源の負荷電流が供給される電力供給対象は、インバータが有するスイッチの駆動回路に限らず、その他の電気負荷であっても、同様の問題が生じる。
【0006】
本発明の主たる目的は、スイッチング電源の負荷電流が流れることに起因して発生するノイズを低減することができる回転電機の制御装置及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
蓄電部と、
前記蓄電部に接続されたインバータと、
前記インバータに接続された電機子巻線を有する回転電機と、を備えるシステムに適用される回転電機の制御装置において、
スイッチを有し、前記スイッチのスイッチング制御により負荷電流を出力するスイッチング電源を備え、
前記スイッチング電源から供給される負荷電流を電源として、前記回転電機を制御する複数の制御機能が動作するように前記制御装置が構成されており、
前記システムの外部に設けられた外部電源から前記蓄電部に充電する外部充電制御中であるとの条件、又は前記システムの外部に設けられた外部給電対象に前記蓄電部から給電する外部給電制御中であるとの条件が成立したと判定した場合に、複数の前記制御機能の少なくとも一部を制限する制限処理を行う制限部を備える。
【0008】
制御装置は、前記スイッチング電源から供給される負荷電流を電源として、回転電機の制御機能を動作させる。この場合に、スイッチング電源の負荷電流が流れることに起因してノイズが発生することが懸念される。
【0009】
ところで、外部充電制御中又は外部給電制御中では、回転電機の制御に用いられる制御機能を継続させることが不要となる場合がある。
【0010】
そこで、本発明によれば、外部充電制御中であるとの条件、又は外部給電制御中であるとの条件が成立したと判定された場合に、回転電機の制御機能が制限される。この場合、スイッチング電源から供給される負荷電流が低減される。これにより、負荷電流が流れることに起因して発生するノイズを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係る制御システムの全体構成図。
図2】制御装置及びその周辺構成を示す図。
図3】下アームドライバ等の構成を示す図。
図4】マイコンの動作を停止する処理の一例を示す図。
図5】マイコンが実行する制御の処理手順を示すフローチャート。
図6】第2実施形態に係る制御装置の構成図。
図7】第3実施形態に係る制御システムの全体構成図。
図8】制御装置及びその周辺構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
以下、本開示に係る回転電機の制御装置を具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態の回転電機の制御装置は、電気自動車又はハイブリッド車等の電動車両に搭載されている。
【0013】
図1に示すように、制御システム10は、高圧蓄電池11と、回転電機20と、インバータ30とを備えている。高圧蓄電池11は、充放電可能な2次電池であり、例えば百V以上となる端子電圧を有している。高圧蓄電池11は、例えば、リチウムイオン蓄電池又はニッケル水素蓄電池である。
【0014】
回転電機20は、車載主機であり、そのロータが車両の駆動輪と動力伝達可能とされている。本実施形態では、回転電機20は、ステータ巻線として星形結線された3相分の電機子巻線21を備えている。回転電機20は、例えば永久磁石同期機である。
【0015】
インバータ30は、スイッチング操作により、高圧蓄電池11から供給される直流電力を3相交流電力に変換し、変換した交流電力を回転電機20へと供給する電力変換回路である。インバータ30は、上アームスイッチSWHと下アームスイッチSWLとの直列接続体を3相分備えている。本実施形態において、各スイッチSWH,SWLは、電圧制御形の半導体スイッチング素子であり、より具体的には、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。上,下アームスイッチSWH,SWLには、フリーホイールダイオードである上,下アームダイオードDH,DLが逆並列に接続されている。なお、インバータ30の各スイッチは、IGBTに代えて、例えばNチャネルMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)であってもよい。
【0016】
各上アームスイッチSWHの高電位側端子であるコレクタには、バスバー等の正極母線31Hを介して、高圧蓄電池11の正極端子が接続されている。各下アームスイッチSWLの低電位側端子であるエミッタには、バスバー等の負極母線31Lを介して、高圧蓄電池11の負極端子が接続されている。各相において、上アームスイッチSWH及び下アームスイッチSWLの接続点は、電機子巻線21の第1端に接続されている。各相の電機子巻線21の第2端は、中性点で互いに接続されている。
【0017】
正極母線31H及び負極母線31Lには、それぞれ電源スイッチSMR(システムメインリレー)が設けられている。電源スイッチSMRがオンされることにより、高圧蓄電池11とインバータ30とが電気的に接続され、電源スイッチSMRがオフされることにより、高圧蓄電池11とインバータ30との間が電気的に遮断される。各電源スイッチSMRは、制御システム10が備える制御装置50によって駆動されてもよいし、制御装置50に対して上位の制御装置である上位ECU42(図2参照)によって駆動されてもよい。
【0018】
インバータ30は、平滑コンデンサ32を備えている。平滑コンデンサ32は、正極母線31Hのうち電源スイッチSMRよりもインバータ30側と、負極母線31Lのうち電源スイッチSMRよりもインバータ30側とを電気的に接続している。なお、平滑コンデンサ32は、インバータ30の内部に設けられていてもよいし、外部に設けられていてもよい。
【0019】
制御システム10は、角度センサ40と、電流センサ41とを備えている。角度センサ40は、回転電機20の電気角に応じた角度信号を出力する。本実施形態では、角度センサ40はレゾルバである。電流センサ41は、回転電機20の各電機子巻線21に流れる相電流のうち、少なくとも2相分の電流を検出し、電流信号を出力する。角度センサ40の角度信号と、電流センサ41の電流信号とは、制御装置50に入力される。
【0020】
続いて、制御システム10を構成する外部充電関連の構成について説明する。
【0021】
制御システム10は、外部充電機構12を備えている。外部充電機構12は、インレット13と、リレー14とを含む。インレット13は、リレー14を介して、各母線31H,31Lのうち高圧蓄電池11及びインバータ30の間と、各相の電機子巻線21の中性点とに接続されている。
【0022】
外部充電は、インレット13が充電設備200に電気的に接続された場合に実施される。充電設備200は、外部電源210と、コネクタ220を備える。コネクタ220は、車両のインレット13に接続可能に構成されている。外部電源210は、例えば、直流電源であるが、交流電源であってもよい。この場合、AC/DCコンバータが必要となる。
【0023】
図2を用いて、制御装置50の構成について説明する。制御装置50は、マイコン51を備えている。マイコン51は、車両を走行させるための回転電機20の駆動制御と、外部充電制御と、外部給電制御とを行う。マイコン51は、各センサ40,41の検出値を入力するためのADコンバータを備えている。
【0024】
回転電機20の駆動制御は、回転電機20の制御量(例えばトルク)を指令値に制御するための制御であって、インバータ30が有する各スイッチSWH,SWLのスイッチング制御である。マイコン51は、この駆動制御のために、各スイッチSWH,SWLを交互にオンするためのスイッチング指令を生成する。言い換えると、マイコン51は、各スイッチSWH,SWLの指令生成機能を実現する。スイッチング指令は、オン指令又はオフ指令である。
【0025】
外部充電制御は、車両の停車中において、充電設備200から外部充電機構12を介して高圧蓄電池11に充電するための制御である。外部給電制御は、車両の停車中において、高圧蓄電池11から外部充電機構12を介して制御システム10の外部に設けられた外部給電対象に給電する制御である。外部給電対象が住居等の建物の電気機器の場合における外部給電制御は、V2H(Vehicle to Home)とも呼ばれる。また、外部給電対象が、系統電源としての外部電源210である場合における外部給電制御は、V2G(Vehicle to Grid)とも呼ばれる。
【0026】
なお、図1には、リレー14を介して、各相の電機子巻線21の中性点とインレット13とを電気的に接続した状態で、外部充電/給電を実行可能な構成が示されているが、この構成は必須ではない。以下、本実施形態では、リレー14を介して、正極母線31H及び負極母線31Lとインレット13とが電気的に接続された状態で、外部充電制御又は外部給電制御が行われる場合について説明する。
【0027】
上位ECU42は、車両の状態が外部充電/給電可能な状態であるか否かを判定し、その判定結果に応じて車両状態信号Sgaを出力する。車両状態信号Sgaは、Hiレベルにより車両が外部充電/給電可能な状態であることを示し、Lowレベルにより車両が通常状態であることを示す。具体的には、上位ECU42は、車両の車両側コネクタ22と外部充電装置25の外部コネクタ26とが接続されていると判定した場合、Hiレベルの車両状態信号Sgaを出力し、車両側コネクタ22と外部コネクタ26とが未接続であると判定した場合、Lowレベルの車両状態信号Sgaを出力する。
【0028】
マイコン51は、上位ECU42の車両状態信号Sgaを取得する。マイコン51は、取得した車両状態信号SgaがHiレベルであると判定した場合、外部充電制御中又は外部給電制御中であると判定する。本実施形態において、マイコン51は、外部充電制御中又は外部給電制御中において、電源スイッチSMRをオンに維持する。一方、マイコン51は、取得した車両状態信号SgaがLowレベルであると判定した場合、回転電機20の駆動制御を行う。
【0029】
ちなみに、マイコン51、及び上位ECU42が有するマイコンは、プロセッサ(具体的にはCPU)を備えている。各マイコンが提供する機能は、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェア及びそれを実行するコンピュータ、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、各マイコンがハードウェアである電子回路によって提供される場合、それは多数の論理回路を含むデジタル回路、又はアナログ回路によって提供することができる。例えば、各マイコンは、自身が備える記憶部としての非遷移的実体的記録媒体(non-transitory tangible storage medium)に格納されたプログラムを実行する。プログラムには、例えば、後述する図5等に示す処理のプログラムが含まれる。各マイコンにインストールされたプログラムが実行されることにより、プログラムに対応する方法が実行される。記憶部は、例えば不揮発性メモリである。なお、記憶部に記憶されるプログラムは、例えばOTA(Over The Air)等、インターネット等の通信ネットワークを介してダウンロード及び更新が可能である。
【0030】
制御装置50は、励磁アンプ52、角度インターフェース回路53及び電流インターフェース回路54を備えている。マイコン51は、正弦波状の励磁信号を生成し、励磁アンプ52に出力する。励磁アンプ52は、マイコン51から入力された励磁信号を増幅し、増幅した励磁信号を、角度センサ40を構成するレゾルバステータに供給する。角度センサ40のレゾルバステータでは、回転電機20の電気角に応じて励磁信号が変調され、変調された励磁信号が角度信号として出力される。レゾルバステータから出力された角度信号は、角度インターフェース回路53に入力される。角度インターフェース回路53は、角度信号をマイコン51に入力可能な信号に変換し、変換後の角度信号をマイコン51に出力する。マイコン51は、角度インターフェース回路53からの角度信号に基づいて、回転電機20の電気角を算出する。
【0031】
電流センサ41から出力された電流信号は、電流インターフェース回路54に入力される。電流インターフェース回路54は、電流信号をマイコン51に入力可能な信号に変換し、変換後の電流信号をマイコン51に出力する。マイコン51は、電流インターフェース回路54から入力される信号に基づいて、相電流を算出する。なお、励磁アンプ52、角度インターフェース回路53及び電流インターフェース回路54は、制御装置50の低圧領域に設けられている。
【0032】
制御装置50は、第1~第3電源61~63を備えている。第1~第3電源61~63は、制御装置50の低圧領域に設けられている。制御システム10は、低圧蓄電池60を備えている。低圧蓄電池60は、高圧蓄電池11よりも出力電圧(具体的には定格電圧)が低い蓄電池であり、例えば鉛蓄電池である。
【0033】
第1電源61は、低圧蓄電池60の出力電圧VBを昇圧することにより、第1電圧V1(例えば30V)を生成する。第1電源61は、第1電気経路L1を介して励磁アンプ52に接続されている。この場合、第1電源61の第1電圧V1は、励磁アンプ52に供給される。これにより、励磁アンプ52は、レゾルバステータに増幅した励磁信号を供給することが可能とされている。なお、励磁アンプ52が、「励磁信号生成部」に相当する。本実施形態において、第1電源61は、スイッチQを有する昇圧チョッパ方式のスイッチング電源である。スイッチQは、電圧制御型の半導体スイッチであり、具体的にはNチャネルMOSFETである。第1電源61は、出力電圧を第1電圧V1にフィードバック制御すべく、スイッチQのデューティ比を設定すると共に、デューティ比に基づいてスイッチQのスイッチング制御を行う。デューティ比は、スイッチQの1スイッチング周期に対するオン期間の比率である。
【0034】
第2電源62は、低圧蓄電池60の出力電圧VBを降圧することにより、第2電圧V2(例えば5V)を生成する。第2電源62は、第2電気経路L2を介して角度インターフェース回路53及び電流インターフェース回路54に接続されている。この場合、第2電源62の第2電圧V2は、角度インターフェース回路53及び電流インターフェース回路54に供給される。これにより、各インターフェース回路53,54は、各センサ40,41から出力された信号をマイコン51に入力可能な信号に変換することが可能とされている。
【0035】
第3電源61は、低圧蓄電池60の出力電圧VBを降圧することにより、第3電圧V3(例えば1.5V)を生成する。第3電源61の第3電圧V3は、マイコン51に供給される。これにより、マイコン51は、各種制御を実行可能とされている。
【0036】
本実施形態において、第2,第3電源62,63は、中間電源62a,63aと、後段電源62b,63bとにより構成されている。各電源62,63の中間電源62a,63aは、スイッチQを有する降圧チョッパ方式のスイッチング電源である。第2電源62の中間電源62aは、低圧蓄電池60の出力電圧VBを降圧して中間電圧(例えば6V)を生成し、第3電源63の中間電源63aは、低圧蓄電池60の出力電圧VBを降圧して中間電圧(例えば2.5V)を生成する。各電源62,63の中間電源62a,63aは、出力電圧を第1,第2電圧V2,V3にフィードバック制御すべく、スイッチQのデューティ比を設定すると共に、デューティ比に基づいてスイッチQのスイッチング制御を行う。
【0037】
各電源62,63の後段電源62b,63bは、シリーズレギュレータやシャントレギュレータ等のリニアレギュレータである。第2電源62の後段電源62bは、中間電源62aの中間電圧を降圧して第2電圧V2を生成する。第3電源63の後段電源63bは、中間電源63aの中間電圧を降圧して第3電圧V3を生成する。なお、第2,第3電源62,63は、リニアレギュレータを含まないで構成されてもよい。
【0038】
制御装置50は、絶縁電源70、上アームドライバ71及び下アームドライバ72を備えている。絶縁電源70及び上,下アームドライバ71,72は、制御装置50の低圧領域と高圧領域との境界を跨いで、低圧領域及び高圧領域に設けられている。本実施形態において、上アームドライバ71は、各上アームスイッチSWHに対応して個別に設けられ、下アームドライバ72は、各下アームスイッチSWLに対応して個別に設けられている。このため、ドライバ71,72は合わせて6つ設けられている。絶縁電源70は、3相の上アームドライバ71それぞれに対して個別に設けられている上アーム絶縁電源と、3相の下アームドライバ72に共通の下アーム絶縁電源とを備えている。なお、下アーム絶縁電源は、3相の下アームドライバ72それぞれに対して個別に設けられていてもよい。
【0039】
図3に、下アーム絶縁電源を例にして絶縁電源70の構成を示す。絶縁電源70は、フライバック式のスイッチング電源である。絶縁電源70は、トランス70aと、制御用スイッチ70bと、電源制御部70cと、出力ダイオード70dと、出力コンデンサ70eと、出力電圧検出部70fとを備えている。制御用スイッチ70bは、電圧制御型の半導体スイッチであり、具体的にはNチャネルMOSFETである。
【0040】
トランス70aは、入力巻線及び出力巻線を有し、各巻線が共通のコアにより磁気結合している。トランス70aの入力巻線の第1端が、低圧蓄電池60の正極端子に接続され、トランス70aの入力端子の第2端が、制御用スイッチ70bのドレインに接続されている。制御用スイッチ70bのソースが、低圧領域で接地されている。トランス70aの出力巻線の第1端が、出力ダイオード70dのアノードに接続され、トランス70aの出力巻線の第2端が、下アームスイッチSWLのエミッタに接続されている。出力ダイオード70dのカソードと、トランス70aの出力巻線の第2端とが、出力コンデンサ70eを介して接続されている。出力コンデンサ70eの電圧が、下アーム駆動電圧VdLとして下アームドライバ72に供給される。
【0041】
出力電圧検出部70fは、出力コンデンサ70eの電圧を検出し、電源制御部70cに伝達する。電源制御部70cは、出力電圧検出部70fの検出値を目標値にフィードバック制御すべく、制御用スイッチ70bをオンオフする。具体的には、電源制御部70cは、制御用スイッチ70bの1スイッチング周期におけるオン時間の比率であるデューティ比を設定する。
【0042】
続いて、上,下アームドライバ71,72の構成、及び上,下アームドライバ71,72が有する機能ついて説明する。上,下アームドライバ71,72は、上,下アームスイッチSWH,SWLを駆動する駆動機能、上,下アームスイッチSWH,SWLをオフ状態に維持するオフ保持機能、上,下アームスイッチSWH,SWLの温度を検出する温度検出機能、上,下アームスイッチSWH,SWLの過電流異常を検出する異常検出機能、及び過電流異常が発生した場合に上,下アームスイッチSWH,SWLを保護する保護機能を有している。ここでは、図3を用いて、下アームドライバ72の構成及び機能について詳細に説明する。
【0043】
下アームドライバ72は、下アームスイッチSWLの駆動機能が動作するように構成されている。詳しくは、下アームドライバ72は、下アーム駆動部80と、第1絶縁伝達部81とを備えている。下アーム駆動部80は、高圧領域に設けられている。第1絶縁伝達部81は、低圧領域と高圧領域との境界を跨いで低圧領域及び高圧領域に設けられている。第1絶縁伝達部81は、低圧領域及び高圧領域の間を電気的に絶縁しつつ、マイコン51と下アーム駆動部80との間で下アームスイッチSWLのスイッチング指令を伝達する。
【0044】
本実施形態において、第1絶縁伝達部81は、フォトカプラ81a、付加抵抗体81b及び定電圧電源81cを有する。定電圧電源81cは、下アームドライバ72内の高圧領域に設けられており、絶縁電源70の出力電圧を電源として定電圧を生成する。フォトカプラ81aの低圧領域側には、マイコン51から下アームスイッチSWLのスイッチング指令が入力される。フォトカプラ81aの高圧領域側は、フォトトランジスタにより構成されている。フォトカプラ81aを構成するフォトトランジスタのコレクタは、付加抵抗体81bを介して、定電圧電源81cに接続されている。フォトカプラ81aを構成するフォトトランジスタのエミッタは、下アームスイッチSWLのエミッタに接続されている。下アーム駆動部80は、下アームスイッチSWLのスイッチング指令として、フォトカプラ81aを構成するフォトトランジスタのコレクタ側の電圧を取得する。下アーム駆動部80は、取得したスイッチング指令に基づいて、下アームスイッチSWLをオンオフする。なお、後述する第2~第3絶縁伝達部82~84は、第1絶縁伝達部81と同様の構成である。
【0045】
下アームドライバ72は、ゲート充電用の定電圧電源90、充電スイッチ91、充電抵抗体92、放電スイッチ93及び放電抵抗体94を備えている。本実施形態では、充電スイッチ91としてPチャネルMOSFETが用いられ、放電スイッチ93としてNチャネルMOSFETが用いられている。
【0046】
ゲート充電用の定電圧電源90には、充電スイッチ91及び充電抵抗体92を介して、下アームスイッチSWLのゲートが接続されている。また、下アームスイッチSWLのゲートには、放電抵抗体94及び放電スイッチ93を介して、下アームスイッチSWLのエミッタが接続されている。充電スイッチ91及び放電スイッチ93のゲートは、下アーム駆動部80に接続されている。なお、定電圧電源90は、絶縁電源70の出力電圧を電源として定電圧を生成する。
【0047】
下アーム駆動部80は、取得した下アームスイッチSWLのスイッチング指令がオン指令である場合、充電スイッチ91をオンし、かつ放電スイッチ93をオフする。これにより、下アームスイッチSWLのゲート電圧がその閾値電圧以上となり、下アームスイッチSWLがオン状態に切り替えられる。一方、下アーム駆動部80は、取得した下アームスイッチSWLのスイッチング指令がオフ指令である場合、充電スイッチ91をオフし、かつ放電スイッチ93をオンする。これにより、下アームスイッチSWLのゲート電圧がその閾値電圧未満となり、下アームスイッチSWLがオフ状態に切り替えられる。
【0048】
下アームドライバ72は、下アームスイッチSWLのオフ保持機能が動作するように、構成されている。詳しくは、下アームドライバ72は、下アームオフ保持スイッチ95を備えている。下アームオフ保持スイッチ95は、NチャネルMOSFETである。下アームオフ保持スイッチ95のドレインは、下アームスイッチSWLのゲートに接続されており、下アームオフ保持スイッチ95のソースは、下アームスイッチSWLのエミッタに接続されている。下アームオフ保持スイッチ95のゲートは、下アーム駆動部80に接続されている。
【0049】
下アーム駆動部80は、下アームスイッチSWLのスイッチング指令がオン指令である場合に、下アームオフ保持スイッチ95をオフし、下アームスイッチSWLのスイッチング指令がオフ指令である場合に、下アームオフ保持スイッチ95をオンする。下アームスイッチSWLのオフ指令中に、下アームオフ保持スイッチ95がオンされることにより、下アームスイッチSWLのゲート及びエミッタが短絡される。これにより、下アームスイッチSWLのセルフターンオンの発生が抑制される。
【0050】
なお、上,下アームスイッチSWH,SWLのセルフターンオンについて補助的に説明すると、上,下アームスイッチSWH,SWLの寄生容量を介して上,下アームスイッチSWH,SWLのゲートに電荷が供給されることにより、上,下アームスイッチSWH,SWLのゲート電圧がその閾値電圧Vth以上になり得る。この場合、上,下アームスイッチSWH,SWLをオフに維持したいにもかかわらず、上,下アームスイッチSWH,SWLが誤ってオンに切り替えられてしまう現象であるセルフターンオンが発生し得る。ここで、上,下アームスイッチSWH,SWLのセルフターンオンは、外部充電制御中又は外部給電制御中においても発生し得る。この点、外部充電制御中又は外部給電制御中においても、上,下アームドライバ71,72が有するオフ保持スイッチがオンされることにより、セルフターンオンの発生が抑制される。
【0051】
制御システム10は、温度検出用の定電流源100及び温度センサ101を備えている。定電流源100は、絶縁電源70の出力電圧を電源として定電流を生成する。温度センサ101は感温ダイオードを含み、感温ダイオードのアノード側が定電流源100に接続され、感温ダイオードのカソード側が下アームスイッチSWLのエミッタに接続されている。下アームスイッチSWL、下アームダイオードDL及び温度センサ101は、半導体モジュールとして一体化されている。下アームスイッチSWLの温度と、温度センサ101における感温ダイオードの電圧降下量とは相関を有する。
【0052】
下アーム駆動部80は、下アームスイッチSWLの温度検出機能が動作するように構成されている。詳しくは、下アーム駆動部80は、第1コンパレータ102及びキャリア生成部103を備えている。第1コンパレータ102の非反転入力端子には、温度センサ101における感温ダイオードのアノードの電圧が印加される。第1コンパレータ102の反転入力端子には、キャリア生成部103のキャリア信号が印加される。キャリア信号は、例えば三角波信号である。第1コンパレータ102は、非反転入力端子の入力信号と、キャリア信号との大小比較により、非反転入力端子の入力信号をパルス幅変調して出力する。これにより、第1コンパレータ102の出力信号は、非反転入力端子の入力信号に応じて、キャリア信号の1周期に対するHiレベルの期間の比率である時比率が変化する温度信号Tpとなる。
【0053】
下アームドライバ72は、第2絶縁伝達部82を備えている。第2絶縁伝達部82は、低圧領域と高圧領域との境界を跨いで低圧領域及び高圧領域に設けられている。第2絶縁伝達部82は、低圧領域及び高圧領域の間を電気的に絶縁しつつ、下アーム駆動部80とマイコン51との間で温度信号Tpを伝達する。
【0054】
下アームドライバ72は、下アームスイッチSWLに流れる電流を検出可能なように構成されている。詳しくは、下アームドライバ72は、異常検出用の定電流源110、検出用コンデンサ111及び検出用ダイオード112を備えている。定電流源110は、絶縁電源70の出力電圧を電源として定電流を生成する。定電流源110は、検出用コンデンサ111の第1端に接続されている。検出用コンデンサ111の第2端には、下アームスイッチSWLのエミッタが接続されている。
【0055】
検出用コンデンサ111の第1端には、検出用ダイオード112のアノードが接続されている。検出用ダイオード112のカソードは、下アームスイッチSWLのコレクタに接続されている。つまり、検出用コンデンサ111から下アームスイッチSWLに向かう方向が順方向となるように、検出用ダイオード112が接続されている。
【0056】
検出用コンデンサ111には、検出用ダイオード112のアノードと下アームスイッチSWLのエミッタとの間の電圧である判定電圧Vjdが印加される。なお、下アームスイッチSWLのコレクタエミッタ間の電圧をVceとし、検出用ダイオード112の順方向電圧をVfとして、判定電圧は、Vjd=Vce+Vfである。なお、上述した判定電圧Vjdに基づいて電流を検出する方式は、デサット検出方式と呼ばれる。
【0057】
下アーム駆動部80は、下アームスイッチSWLの異常検出機能が動作するように構成されている。詳しくは、下アーム駆動部80は、第2コンパレータ113及び異常検出用の定電圧源114を備えている。検出用コンデンサ111の第1端は、第2コンパレータ113の非反転入力端子に接続されている。第2コンパレータ113の反転入力端子は、定電圧源114の正極端子に接続されている。定電圧源114の負極端子は下アームスイッチSWLのエミッタに接続されている。
【0058】
定電圧源114は、下アームスイッチSWLのエミッタに対して所定電圧だけ高い電圧を、第2コンパレータ113の反転入力端子に印加する。定電圧源114の所定電圧は、下アームスイッチSWLに過電流が生じていないときにおける下アームスイッチSWLのコレクタエミッタ間の電圧Vceと、検出用ダイオード112の順方向電圧Vfとの和よりも高く設定されている。この場合、第2コンパレータ113は、判定電圧Vjdが所定電圧未満である場合、下アームスイッチSWLに過電流が生じていないと判定し、Lowレベルの異常信号FLを出力する。一方、第2コンパレータ113は、判定電圧Vjdが所定電圧以上である場合、下アームスイッチSWLに過電流が生じていると判定し、Hiレベルの異常信号FLを出力する。
【0059】
下アームドライバ72は、第3絶縁伝達部83を備えている。第3絶縁伝達部83は、低圧領域と高圧領域との境界を跨いで低圧領域及び高圧領域に設けられている。第3絶縁伝達部83は、低圧領域及び高圧領域の間を電気的に絶縁しつつ、下アーム駆動部80とマイコン51との間で異常信号FLを伝達する。
【0060】
下アームドライバ72は、上,下アームスイッチSWH,SWLの保護機能が動作するように構成されている。詳しくは、下アームドライバ72は、ソフト遮断スイッチ96及びソフト遮断抵抗体97を備えている。本実施形態では、ソフト遮断スイッチ96としてNチャネルMOSFETが用いられている。下アームスイッチSWLのゲートには、ソフト遮断抵抗体97及びソフト遮断スイッチ96を介して、下アームスイッチSWLのエミッタが接続されている。ソフト遮断抵抗体97の抵抗値は、放電抵抗体94の抵抗値よりも大きい。
【0061】
下アーム駆動部80は、異常信号FLがHiレベルである場合に、充電スイッチ91、放電スイッチ93及びオフ保持スイッチ95をオフすると共に、ソフト遮断スイッチ96をオンする。これにより、下アームスイッチSWLのターンオフに伴って発生するサージ電圧が抑制されつつ、下アームスイッチSWLがオフ状態に切り替えられ、上,下アームスイッチSWH,SWLの保護が図られる。
【0062】
なお、上アームドライバ71の構成は、下アームドライバ72と基本的には同じである。そのため、上アームドライバ71は、下アームドライバ72と同様に、上アームスイッチSWHを駆動する駆動機能、上アームスイッチSWHをオフ状態に維持するオフ保持機能、上アームスイッチSWHの温度を検出する温度検出機能、上アームスイッチSWHの過電流異常を検出する異常検出機能及び上,下アームスイッチSWH,SWLの保護機能を有する。
【0063】
ここで、制御装置50は、第1~第3電源61~63及び絶縁電源70から供給される負荷電流を電源として、回転電機20の各種制御機能が動作するように構成されている。具体的には、第1電源61から励磁アンプ52に負荷電流が供給され、かつ第2電源62から角度インターフェース回路53に負荷電流が供給されることにより、制御装置50の角度検出機能が動作する。第2電源62から電流インターフェース回路54に負荷電流が供給されることにより、制御装置50の相電流検出機能が動作する。第3電源63からマイコン51に負荷電流が供給されることにより、マイコン51の指令生成機能が動作する。絶縁電源70から上,下アームドライバ71,72に負荷電流が供給されることにより、上,下アームドライバ71,72の駆動機能、オフ保持機能、温度検出機能、異常検出機能及び保護機能が動作する。
【0064】
ところで、外部充電制御中又は外部給電制御中において、スイッチング電源である各電源61,62a,63a,70の負荷電流が流れることに起因して、ノイズが発生することが懸念される。
【0065】
この点、外部充電制御又は外部給電制御が行われている状況では、制御装置50が有する各種制御機能のうち一部を継続することが不要となり得る。そこで、制御装置50は、制御装置50が有する各種機能を制限する制限処理を行う。以下では、制限処理を実行するための構成について説明する。
【0066】
制御装置50は、第1~第5遮断スイッチ121~125を備えている。第1,第2遮断スイッチ121,122は、マイコン51により駆動される。第3~第5遮断スイッチ123~125は、上,下アームドライバ71,72により駆動される。第1~第5遮断スイッチ121~125は、各電源61~63,70の負荷電流が流れる電気経路に設けられている。具体的には、第1遮断スイッチ121は、第1電気経路L1に設けられている。第2遮断スイッチ122は、第2電気経路L2に設けられている。
【0067】
第3,第4遮断スイッチ123,124は、上,下アームドライバ71,72それぞれに個別に設けられている。下アームドライバ72を例にして説明すると、図3に示すように、第3遮断スイッチ123は、第1絶縁伝達部81の定電圧電源81cからフォトカプラ81aへと電流を供給する第3電気経路L3に設けられている。第4遮断スイッチ124は、異常検出用の定電流源110から検出用コンデンサ111へと電流を供給する第4電気経路L4に設けられている。
【0068】
第5遮断スイッチ125は、上,下アームスイッチSWH,SWLの温度センサ101に対応して個別に設けられている。下アームスイッチSWLを例にして説明すると、図3に示すように、第5遮断スイッチ125は、温度検出用の定電流源100から温度センサ101へと電流を供給する第5電気経路L5に設けられている。
【0069】
なお、第1~第5遮断スイッチ121~125は、リレー又は半導体スイッチング素子であり、オンされることにより双方向の電流の流通を許容し、オフされることにより双方向の電流の流通を遮断する。
【0070】
マイコン51は、上位ECU42から取得した車両状態信号Sgaを上,下アームドライバ71,72に伝達する。下アームドライバ72を例にして説明すると、図3に示すように、下アームドライバ72は、第4絶縁伝達部84を備えている。第4絶縁伝達部84は、低圧領域と高圧領域との境界を跨いで低圧領域及び高圧領域に設けられている。第4絶縁伝達部84は、低圧領域及び高圧領域の間を電気的に絶縁しつつ、下アーム駆動部80とマイコン51との間で車両状態信号Sgaを伝達する。下アーム駆動部80は、車両状態信号Sgaとして、第4絶縁伝達部84の出力信号を取得する。下アーム駆動部80は、取得した車両状態信号Sgaに基づいて、車両の状態が通常状態であるか外部充電状態であるかを認識する。
【0071】
マイコン51は、車両状態信号SgaがHiレベルであると判定した場合、上述した制御装置50が有する制御機能を制限する制限処理を行う。本実施形態では、マイコン51は、制限処理として、各スイッチSWH,SWLの指令生成機能と、励磁アンプ52及び角度インターフェース回路53の角度検出機能と、電流インターフェース回路54の相電流検出機能と、上,下アームドライバ71,72が有する機能のうちオフ保持機能以外の機能とを制限する。
【0072】
具体的には、マイコン51は、Hiレベルの車両状態信号Sgaを取得した場合、制限処理として以下の処理を実行する。すなわち、マイコン51は、
・各スイッチSWH,SWLのスイッチング指令の生成を停止する処理と、
・励磁信号の生成を停止する処理と、
・第1電気経路L1に設けられている第1遮断スイッチ121をオフする処理と、
・第2電気経路L2に設けられている第2遮断スイッチ122をオフする処理と、
・上位ECU42から取得したHiレベルの車両状態信号Sgaを、上,下アームドライバ71,72に伝達する処理と、
を実行する。
【0073】
各スイッチSWH,SWLのスイッチング指令の生成が停止され、各スイッチSWH,SWLの指令生成機能が停止されると共に、励磁信号の生成が停止される。これにより、マイコン51の消費電流が低減され、第3電源63からマイコン51へ供給される負荷電流が低減される。なお、マイコン51は、車両状態信号Sgaを取得する処理等のその他の処理を実行してもよい。この場合、マイコン51が有する制御機能が制限される。
【0074】
マイコン51における励磁信号の生成が停止されることにより、励磁アンプ52による励磁信号を増幅させる動作が停止される。また、第1遮断スイッチ121がオフされることによっても、励磁アンプ52による励磁信号を増幅させる動作が停止される。第2遮断スイッチ122がオフされることにより、角度インターフェース回路53の動作が停止される。これにより、角度検出機能が停止される。この場合、第1電源61から励磁アンプ52へ供給される負荷電流が低減され、第2電源62から角度インターフェース回路53へ供給される負荷電流が低減される。
【0075】
第2電気経路L2に設けられている第2遮断スイッチ122がオフされることにより、電流インターフェース回路54の動作が停止される。これにより、相電流検出機能が停止される。この場合、第2電源62から電流インターフェース回路54へ供給される負荷電流が停止される。
【0076】
上,下アームドライバ71,72は、マイコン51からHiレベルの車両状態信号Sgaを受信した場合に、オフ保持機能を継続しつつ、駆動機能、温度検出機能、異常検出機能及び保護機能を停止する。この場合、絶縁電源70から供給される負荷電流が低減される。以下では、下アームドライバ71を例にして、具体的に説明する。
【0077】
下アームドライバ72は、マイコン51からHiレベルの車両状態信号Sgaを受信した場合に、オフ保持スイッチ95をオンすると共に、充電スイッチ91、放電スイッチ93及びソフト遮断スイッチ96をオフする。また、下アームドライバ72は、第3遮断スイッチ123をオフし、第1絶縁伝達部81の定電圧電源81cからフォトカプラ81aへの電流の供給を停止する。これにより、下アームスイッチSWLのオフ保持機能が継続されつつ、駆動機能が停止される。
【0078】
下アームドライバ72は、マイコン51からHiレベルの車両状態信号Sgaを受信した場合に、第2コンパレータ113の動作を停止し、異常検出用の定電圧源114による所定電圧の生成を停止する。また、下アームドライバ72は、第4遮断スイッチ124をオフする。これにより、異常検出機能及び保護機能が停止される。
【0079】
下アームドライバ72は、マイコン51からHiレベルの車両状態信号Sgaを受信した場合に、第1コンパレータ102の動作を停止し、キャリア生成部103によるキャリア信号の生成を停止する。また、下アームドライバ72は、第5遮断スイッチ125をオフする。これにより、温度検出機能が停止される。
【0080】
なお、図4には、第1コンパレータ102の動作を停止する構成の一例を示す。第1コンパレータ102は、内部回路102a、定電圧電源102b及び停止スイッチ102cを備えている。内部回路102aの正極端子は、停止スイッチ102cを介して定電圧電源102bに接続され、内部回路102aの負極端子は、下アームスイッチSWLのエミッタに接続されている。定電圧電源102bは、絶縁電源70の出力電圧を電源として定電圧を生成する。内部回路102aは、定電圧電源102bから電圧が供給されることにより、非反転入力端子の入力信号及び反転入力端子の入力信号の大小比較に応じて温度信号Tpを出力する。停止スイッチ102cは、例えば半導体スイッチング素子であり、オンされることにより双方向の電流の流通を許容し、オフされることにより双方向の電流の流通を遮断する。下アームドライバ72は、マイコン51からHiレベルの車両状態信号Sgaを受信した場合に、停止スイッチ102cをオフする。これにより、第1コンパレータ102の動作が停止される。なお、第2コンパレータ113の動作を停止する構成も、第1コンパレータ102と同様に構成することが可能である。
【0081】
図5に、マイコン51により実行される制御の処理手順を示す。この制御は所定周期ごとに繰り返し実行される。
【0082】
ステップS10では、上位ECU42から入力される車両状態信号SgaがHiレベルであるか否かを判定する。ステップS10において肯定判定した場合、ステップS11に進む。一方、ステップS10において否定判定した場合、ステップS13に進む。
【0083】
ステップS11では、制限処理として、Hiレベルの車両状態信号Sgaを上,下アームドライバ71,72に伝達する。この場合、各アームドライバ71,72は、上述したように、上,下アームドライバ71,72が有する機能のうちオフ保持機能以外の機能を停止する。
【0084】
ステップS12では、制限処理として、指令生成機能、角度検出機能及び電流検出機能を停止する。本実施形態では、各スイッチSWH,SWLのスイッチング指令の生成を停止し、励磁信号の生成を停止すると共に、第1,第2遮断スイッチ121,122をオフする。ステップS13では、外部充電制御又は外部給電制御を行う。この場合、電源スイッチSMRをオンに維持する。なお、ステップS11,S12の処理が「制限部」に相当する。
【0085】
ステップS14では、回転電機20の駆動制御を行う。この場合、制御装置50が有する各種制御機能の制限を行わない。
【0086】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0087】
車両状態信号SgaがHiレベルであると判定された場合に、制御装置50が有する回転電機20の制御機能が制限される。この場合、各電源61,62,70から励磁アンプ52、角度インターフェース回路53、電流インターフェース回路54及び上,下アームドライバ71,72へと供給される負荷電流が低減される。これにより、例えば、各電源61,62,70により生成される電力が低減され、スイッチング電源のスイッチング制御に伴い発生するノイズを低減することができる。また、例えば、負荷電流の低減に伴い制御装置50のスイッチング電源以外の部分に流れる電流が低減されるため、ノイズ発生の要因となる磁束の発生を抑制することができる。その結果、各電源61,62,70の負荷電流が流れることに起因して発生するノイズを低減することができる。
【0088】
外部充電制御中又は外部給電制御中では、回転電機20を駆動させないため、回転電機20の電気角を検出する角度検出機能を継続させることが不要となる。そこで、本実施形態によれば、車両状態信号SgaがHiレベルであると判定された場合に、角度検出機能が停止される。これにより、第1電源61から励磁アンプ52へと供給される負荷電流を的確に低減でき、負荷電流に起因して発生するノイズを的確に低減することができる。
【0089】
車両状態信号SgaがHiレベルであると判定された場合に、上,下アームドライバ71,72が有する制御機能のうちオフ保持機能以外の機能が停止される。この場合、オフ保持機能が継続されることにより、外部充電制御中又は外部給電制御中において上,下アームスイッチSWH,SWLが意図せずオンすることを抑制できる。また、上,下アームドライバ71,72のオフ保持機能以外の機能として、上,下アームスイッチSWH,SWLを駆動する駆動機能、上,下アームスイッチSWH,SWLの温度を検出する温度検出機能、上,下アームスイッチSWH,SWLの過電流異常を検出する異常検出機能、及び過電流異常が発生した場合に上,下アームスイッチSWH,SWLを保護する保護機能が停止される。これにより、絶縁電源70から上,下アームドライバ71,72へと供給される負荷電流を低減することができる。その結果、外部充電制御中又は外部給電制御中に上,下アームスイッチSWH,SWLが意図せずオンすることを抑制しつつ、絶縁電源70の負荷電流が流れることに起因して発生するノイズを低減することができる。
【0090】
車両状態信号SgaがHiレベルであると判定された場合に、第1~第5遮断スイッチ121~125がオフされる。これにより、励磁アンプ52、角度インターフェース回路53、電流インターフェース回路54及び上,下アームドライバ71,72の電力供給経路に流れる電流が遮断される。これにより、各電源61,62,70から励磁アンプ52、角度インターフェース回路53、電流インターフェース回路54及び上,下アームドライバ71,72へと供給される負荷電流を的確に低減することができる。
【0091】
<第1実施形態の変形例>
・リレー14を介して、各相の電機子巻線21の中性点とインレット13とが電気的に接続された状態で、外部充電/給電が行われてもよい。この場合に、マイコン51は、各スイッチSWH,SWLのスイッチング制御を行う。このスイッチング制御は、例えば、外部電源210の出力電圧を昇圧して高圧蓄電池11に供給したり、平滑コンデンサ32の電圧を降圧して外部給電対象に給電したりするために行われる制御である。言い換えると、マイコン51は、外部充電制御中に中性点を介して外部電源210から入力される充電電力の電圧を昇圧する、又は外部給電制御中に中性点を介して給電対象へと供給する供給電力の電圧を降圧するように、スイッチング指令を生成する変圧機能が動作可能に構成されている。そのため、本実施形態では、マイコン51は、外部充電制御中又は外部給電制御中にスイッチング制御を実行するための制御機能を継続しつつ、その他の制御機能を制限する。具体的には、マイコン51は、先の図5のステップS11の処理を行わず、ステップS12において角度検出機能を停止する処理のみ実行する。この場合、相電流検出機能、変圧機能、上,下アームドライバ71,72の各種制御機能は継続される。
【0092】
本実施形態によれば、車両状態信号SgaがHiレベルである場合において、相電流検出機能、マイコン51の変圧機能、上,下アームドライバ71,72の各種制御機能が継続される。これにより、インバータ30の入出力電圧を変圧するためのスイッチング制御が実行可能とされる。一方で、角度検出機能が停止されることにより、第1,第2電源61,62の負荷電流が低減される。その結果、外部充電制御中又は外部給電制御中においてインバータ30の入出力電圧を変圧するためのスイッチング制御を実行しつつ、負荷電流が流れることに起因して発生するノイズを低減することができる。
【0093】
・励磁アンプ52に入力される励磁信号を生成するのは、マイコン51に限らない。励磁信号を生成するための信号生成回路を、マイコン51とは別に設けてもよい。この場合、マイコン51は、先の図5のステップS12において、信号生成回路の動作を停止させることにより、角度検出機能を停止してもよい。
【0094】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0095】
外部充電制御中又は外部給電制御中では、回転電機20を駆動させないため、マイコン51の動作を継続させることが不要となる。そこで、本実施形態では、車両状態信号SgaがHiレベルであるに、制限処理として、マイコン51の動作が停止される。本実施形態では、車両状態信号SgaがHiレベルであるに、マイコン51がリセットされることにより、マイコン51の動作が停止される。マイコン51のリセットは、マイコン51のリセット端子の電圧レベルをLowレベルとすることにより実行可能である。
【0096】
なお、図6には、マイコン51をリセットする構成の一例を示す。制御装置50は、リセット回路43(「制限部」に相当)を備えている。リセット回路43は、マイコン51のリセット端子Trにリセット信号Sgbを出力する回路である。リセット信号Sgbは、Lowレベルによりマイコン51をリセットする旨を伝達し、Hiレベルによりマイコン51のリセットを解除する旨を伝達する信号である。なお、図6において、先の図2に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。
【0097】
リセット回路43は、リセット用の定電圧電源43a、リセット抵抗体43b及びリセットスイッチ43cを備えている。定電圧電源43aはリセット抵抗体43bの第1端に接続され、リセット抵抗体43bの第2端はリセットスイッチ43cの高電位側端子に接続されている。リセットスイッチ43cの低電位側端子は接地されている。リセットスイッチ43cは、例えば半導体スイッチング素子であり、上位ECU42の車両状態信号SgaがHiレベルである場合にオンされ、車両状態信号SgaがLowレベルである場合にオフされる。マイコン51のリセット端子Trには、リセット信号Sgbとして、リセット抵抗体43b及びリセットスイッチ43cの間の電圧が入力される。マイコン51のリセット端子Trに、Lowレベルのリセット信号Sgbが入力された場合、マイコン51がリセットされる。一方、マイコン51のリセット端子Trに、Hiレベルのリセット信号Sgbが入力された場合、マイコン51のリセットが解除される。なお、上位ECU42の車両状態信号Sgaが、マイコン51のリセット端子Trに直接入力され、車両状態信号Sgaの電圧レベルに応じてマイコン51がリセットされる構成とすることも可能である。
【0098】
本実施形態によれば、車両状態信号SgaがHiレベルであると判定された場合に、マイコン51がリセットされ、マイコン51の動作が停止される。これにより、第3電源63からマイコン51へと供給される負荷電流を的確に低減することができ、負荷電流が流れることに伴い発生するノイズを的確に低減することができる。
【0099】
<第3実施形態>
制御装置50は、1モータ制御システムに適用されることに限らず、2モータ制御システムに適用されてもよい。詳しくは、図7に示すように、2モータ制御システムは、第1回転電機20a及び第1インバータ30aの組と、第2回転電機20b及び第2インバータ30bの組とを備える。第1回転電機20aのロータ及び第2回転電機20bのロータは、動力分割機構を介して駆動輪や車載主機としてのエンジンのクランクシャフトに連結されている。第1回転電機20aは、第1インバータ30aに接続され、エンジンのクランクシャフトに初期回転を付与するスタータや、車載機器に給電するための発電機等の役割を果たす。一方、第2回転電機20bは、第2インバータ30bに接続され、車載主機等の役割を果たす。なお、図7において、先の図1に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。
【0100】
外部充電機構12のリレー14は、第2回転電機20bが有する電機子巻線21のいずれかにおける第2インバータ30b側と、第2インバータ30bの負極母線とに接続されている。第1回転電機20aが有する各相の電機子巻線21の中性点と、第2回転電機20bが有する各相の電機子巻線21の中性点とは、接続配線33を介して接続されている。接続配線33には、接続スイッチ34が設けられている。なお、接続スイッチ34は、リレー又は半導体スイッチング素子であり、オンされることにより双方向の電流の流通を許容し、オフされることにより双方向の電流の流通を遮断する。接続スイッチ34は、例えば制御装置50又は上位ECU42により駆動される。
【0101】
図8に示すように、制御装置50は、第1インバータ30aが有する各スイッチSWH,SWLのスイッチング指令を生成する第1マイコン51aと、第2インバータ30bが有する各スイッチSWH,SWLのスイッチング指令を生成する第2マイコン51bとを備えている。なお、図8において、先の図2に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。
【0102】
本実施形態では、外部充電制御中において、第1回転電機20a及び第1インバータ30aは、外部電源210の出力電圧を昇圧する昇圧回路として用いられる。この場合、第1マイコン51aは、外部電源210の出力電圧を昇圧して高圧蓄電池11に供給するために、第1インバータ30aのスイッチング指令を生成する。また、外部給電制御において、第1回転電機20a及び第1インバータ30aを、平滑コンデンサ32の電圧を降圧して外部給電対象に給電するための降圧回路として用いることも可能である。外部充電制御中又は外部給電制御中において、第1マイコン51aにより昇圧制御又は降圧制御を行うためのスイッチング指令が生成される場合、第1マイコン51aの変圧機能が継続される。
【0103】
リセット回路43のリセット信号Sgbは、第2マイコン51bのリセット端子Trに入力される。この場合、リセット信号SgbがLowレベルである場合に、第2マイコン51bがリセットされる。これにより、第2マイコン51bの動作が停止される。一方、第1マイコン51aにはリセット信号Sgbが入力されないため、第1マイコン51aの変圧機能が継続される。
【0104】
本実施形態によれば、2モータ制御システムにおいて車両状態信号SgaがHiレベルである場合に、第2マイコン51bの動作が停止され、第3電源63から第2マイコン51bへと供給される負荷電流が低減される。この場合、各回転電機20a,20bの駆動制御中に比べて、第3電源63から各マイコン51a,51bへと供給される負荷電流を低減することができる。また、第1マイコン51aの変圧機能が継続されるため、車両状態信号SgaがHiレベルである場合に、第1インバータ30aの入出力電圧を変圧するためのスイッチング制御が実行可能とされる。その結果、外部充電制御中又は外部給電制御中においてインバータ30の入出力電圧を変圧するためのスイッチング制御を継続しつつ、負荷電流が流れることに起因して発生するノイズを低減することができる。
【0105】
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0106】
・外部充電制御又は外部給電制御中に行われる処理としては、第1実施形態、第2実施形態及び第3実施形態で説明した処理のうちいずれか1つが実行されればよい。すなわち、各スイッチSWH,SWLのスイッチング指令の生成を停止する処理と、励磁信号の生成を停止する処理と、第1電気経路L1に設けられている第1遮断スイッチ121をオフする処理と、第2電気経路L2に設けられている第2遮断スイッチ122をオフする処理と、上位ECU42から取得したHiレベルの車両状態信号Sgaを、上,下アームドライバ71,72に伝達する処理と、マイコン51のリセット処理とのうちいずれか1つが、マイコン51又はリセット回路43により実行されればよい。
【0107】
本実施形態では、角度検出機能、相電流検出機能、指令生成機能及び上,下アームドライバ71,72が有する制御機能のうち最大の負荷電流がスイッチング電源から供給される機能を特定機能とし、特定機能の消費電流が低減されるように、外部充電制御又は外部給電制御中の処理が行われる。
【0108】
例えば、特定機能がマイコン51の指令生成機能である場合、外部充電制御又は外部給電制御中の処理として、マイコン51によりスイッチング指令の生成が停止される処理や、リセット回路43によりマイコン51の動作が停止される処理が行われる。これにより、マイコン51の指令生成機能の消費電流が低減される。なお、各制御機能が継続されることによりスイッチング電源から供給される負荷電流の大きさに鑑みて、角度検出機能や上,下アームドライバ71,72が有する各種制御機能を特定機能としてもよい。
【0109】
本実施形態によれば、車両状態信号SgaがHiレベルであると判定された場合に、マイコン51の指令生成機能の消費電流が低減される。この場合、第3電源63は、出力電圧を第3電圧V3にフィードバック制御する際に設定するスイッチQのデューティ比を小さくする。これにより、第3電源63の負荷電流が低減される。ここで、マイコン51の指令生成機能は、複数の制御機能のうち最大の負荷電流がスイッチング電源から供給される制御機能であるため、指令生成機能の消費電流が低減されることにより、第3電源63からマイコン51へと供給される負荷電流を的確に低減できる。
【0110】
・外部充電制御又は外部給電制御中において、上述した各処理のうち少なくとも2つが実行されてもよい。
【0111】
・上,下アームドライバ71,72は、Hiレベルの車両状態信号Sgaを取得した場合に、駆動機能、温度検出機能、異常検出機能及び保護機能を停止することに代えて、駆動機能、温度検出機能、異常検出機能及び保護機能のうち1つ、2つ又は3つを停止してもよい。
【0112】
・上,下アームスイッチSWH,SWLに流れる電流を検出するのに、デサット検出方式を採用することに代えて、上,下アームスイッチSWH,SWLのコレクタエミッタ間に流れる電流に比例して流れるセンス電流を検出してもよい。
【0113】
・低圧蓄電部及び高圧蓄電部は、蓄電池に限らず、例えばコンデンサ(電気二重層コンデンサ)であってもよい。
【0114】
・制御装置が搭載される移動体は、車両に限らず、例えば、航空機又は船舶であってもよい。
【0115】
・本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0116】
・以下、上述した各実施形態から抽出される特徴的な構成を記載する。
[構成1]
蓄電部(11)と、
前記蓄電部に接続されたインバータ(30)と、
前記インバータに接続された電機子巻線(21)を有する回転電機(20)と、を備えるシステム(10)に適用される回転電機の制御装置(50)において、
スイッチ(Q,70b)を有し、前記スイッチのスイッチング制御により負荷電流を出力するスイッチング電源(61~63,70)を備え、
前記スイッチング電源から供給される負荷電流を電源として、前記回転電機を制御する複数の制御機能が動作するように前記制御装置が構成されており、
前記システムの外部に設けられた外部電源(210)から前記蓄電部に充電する外部充電制御中であるとの条件、又は前記システムの外部に設けられた外部給電対象に前記蓄電部から給電する外部給電制御中であるとの条件が成立したと判定した場合に、複数の前記制御機能の少なくとも一部を制限する制限処理を行う制限部を備える、回転電機の制御装置(50)。
[構成2]
複数の前記制御機能のうち最大の負荷電流が前記スイッチング電源から供給される制御機能を特定機能とし、
前記制限部は、前記外部充電制御中であるとの条件、又は前記外部給電制御中であるとの条件が成立したと判定した場合に、前記制限処理として、前記特定機能の消費電流を低減する処理を行う、構成1に記載の回転電機の制御装置。
[構成3]
複数の前記制御機能には、前記回転電機の電気角を検出する角度検出機能が含まれ、
前記制限部は、前記外部充電制御中であるとの条件、又は前記外部給電制御中であるとの条件が成立したと判定した場合に、前記制限処理として、前記角度検出機能を停止する処理を行う、構成1又は2に記載の回転電機の制御装置。
[構成4]
前記スイッチング電源から負荷電流が供給されることにより、交流の励磁信号を生成する励磁信号生成部(52)を備え、
前記システムは、前記回転電機の電気角に応じて前記励磁信号を変調し、変調した前記励磁信号を角度信号として出力する角度センサ(40)を備え、
前記角度検出機能は、前記角度センサの角度信号に基づいて、前記回転電機の電気角を検出する機能であり、
前記制限部は、前記角度検出機能を停止する処理として、前記励磁信号生成部により前記励磁信号が生成されることを停止する処理を行う、構成3に記載の回転電機の制御装置。
[構成5]
前記インバータが有する上下アームスイッチ(SWH,SWL)のスイッチング指令を生成するマイコン(51)を備え、
前記マイコンは、前記制御機能として、前記回転電機を駆動するように前記スイッチング指令を生成する指令生成機能を有し、
前記制限部(43)は、前記外部充電制御中であるとの条件、又は前記外部給電制御中であるとの条件が成立したと判定した場合に、前記制限処理として、前記マイコンの前記指令生成機能を停止する処理を行う、構成1~4のいずれか1つに記載の回転電機の制御装置。
[構成6]
前記インバータが有する上下アームスイッチ(SWH,SWL)の駆動回路(71,72)を備え、
前記駆動回路は、前記制御機能として、
前記駆動回路により前記上下アームスイッチをオンオフさせる駆動機能と、
前記駆動回路により前記上下アームスイッチをオフ状態に保持するオフ保持機能と、を有し、
前記制限部は、前記外部充電制御中であるとの条件、又は前記外部給電制御中であるとの条件が成立したと判定した場合に、前記制限処理として、前記駆動回路が有する前記制御機能のうち前記オフ保持機能以外の機能を停止する処理を行う、構成1~5のいずれか1つに記載の回転電機の制御装置。
[構成7]
前記スイッチング電源の負荷電流が流れる電気経路(L1~L5)と、
前記電気経路に設けられている遮断スイッチ(121~125)と、を備え、
前記制限部は、前記外部充電制御中であるとの条件、又は前記外部給電制御中であるとの条件が成立したと判定した場合に、前記制限処理として、前記遮断スイッチをオフする、構成1~6のいずれか1つに記載の回転電機の制御装置。
[構成8]
前記システムは、各相の前記電機子巻線の中性点に前記外部電源又は前記外部給電対象を接続可能とする外部充電機構(12)を備え、
前記インバータが有する上下アームスイッチ(SWH,SWL)のスイッチング指令を生成するマイコン(51)を備え、
前記マイコンは、前記制御機能として、
前記回転電機を駆動するように前記スイッチング指令を生成する駆動機能と、
前記外部充電制御中に前記中性点を介して外部電源から入力される充電電力の電圧を昇圧する、又は前記外部給電制御中に前記中性点を介して前記給電対象へと供給する給電電力の電圧を降圧するように、前記スイッチング指令を生成する変圧機能と、を有し、
前記制限部は、前記外部充電制御中であるとの条件、又は前記外部給電制御中であるとの条件が成立したと判定した場合に、前記制限処理として、前記変圧機能を継続しつつ、前記駆動機能を停止する処理を行う、構成1~7のいずれか1つに記載の回転電機の制御装置。
【符号の説明】
【0117】
10…制御システム、11…高圧蓄電池、20…回転電機、21…電機子巻線、30…インバータ、50…制御装置、51…マイコン、52…励磁アンプ、53…角度インターフェース回路、54…電流インターフェース回路、61~63…第1~第3電源、71,72…上,下アームドライバ、210…外部電源。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8