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特開2024-134102地物変化検知装置と地物変化検知方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134102
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】地物変化検知装置と地物変化検知方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/174 20170101AFI20240926BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240926BHJP
   G06T 7/70 20170101ALI20240926BHJP
【FI】
G06T7/174
G06T7/00 640
G06T7/00 350B
G06T7/70 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044213
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】三木 亮祐
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 聡一郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 光一郎
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】森田 健一
(72)【発明者】
【氏名】脇阪 直樹
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096AA06
5L096BA02
5L096CA04
5L096DA01
5L096FA06
5L096FA54
5L096FA59
5L096FA69
5L096FA77
5L096GA08
5L096GA10
5L096GA51
5L096JA06
(57)【要約】
【課題】画像から得られた地物の位置と実際の地物の位置との差異を低減して、地物の変化に関する情報を提供できる地物変化検知装置を提供する。
【解決手段】本発明による地物変化検知装置は、上空から地物を撮像した比較対象画像35と過去に上空から地物を撮像した過去画像31のそれぞれから、地物マスク36を生成する地物マスク推定部21と、地物の位置情報が登録された地物領域情報33と、過去画像31から生成された地物マスク36aと比較対象画像35から生成された地物マスク36bのそれぞれに対して、地物領域情報33に登録された地物との重複度を求め、重複度が閾値以上である地物に対応する領域を補正済みマスク情報37に登録する地物マスク補正部22と、過去画像31から得られた補正済みマスク情報37aと比較対象画像35から得られた補正済みマスク情報37bとの差分を求めて、地物の時間変化を検知する地物変化検知部23を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上空または高所から地物を撮像した画像である比較対象画像を撮像するカメラと、
前記比較対象画像の撮像時点よりも前の時点で上空または高所から前記地物を撮像した画像である過去画像と、前記比較対象画像とのそれぞれから、前記地物の位置情報を表す地物マスクを生成する地物マスク推定部と、
前記地物の位置情報が予め登録された地物領域情報と、
前記過去画像から生成された前記地物マスクと前記比較対象画像から生成された前記地物マスクとのそれぞれに対して、前記地物領域情報に登録された前記地物との重複度を求め、前記地物との前記重複度が閾値以上である前記地物に対応する領域を、補正済みの前記地物マスクとして補正済みマスク情報に登録する地物マスク補正部と、
前記過去画像の前記地物マスクを用いて得られた前記補正済みマスク情報と、前記比較対象画像の前記地物マスクを用いて得られた前記補正済みマスク情報との差分を求めることで、前記地物の時間変化を検知する地物変化検知部と、
を備えることを特徴とする地物変化検知装置。
【請求項2】
機械学習により作成された地物マスク推定モデルを備え、
前記地物マスク推定部は、前記地物マスク推定モデルを用いて前記地物マスクを生成する、
請求項1に記載の地物変化検知装置。
【請求項3】
前記カメラと前記地物との間に存在する物体を地上属性とし、
前記地物マスク推定部は、前記過去画像と前記比較対象画像とのそれぞれから、前記地物と前記地上属性との位置情報を表す地物・地上属性マスクを生成する、
請求項1に記載の地物変化検知装置。
【請求項4】
前記地物・地上属性マスクは、前記地物マスクと、前記地上属性の位置情報を表す地上属性マスクを備え、
前記地物マスク補正部は、
前記過去画像から生成された前記地物・地上属性マスクと前記比較対象画像から生成された前記地物・地上属性マスクとのそれぞれに対して、前記地物領域情報に登録された前記地物との重複度を求め、
前記地上属性マスクとの前記重複度が閾値以上である前記地物に対応する領域を、地上属性付加地物として前記補正済みマスク情報に登録する、
請求項3に記載の地物変化検知装置。
【請求項5】
画面を有する出力部を備え、
前記出力部は、前記過去画像の前記地物マスクを用いて得られた前記補正済みマスク情報と、前記比較対象画像の前記地物マスクを用いて得られた前記補正済みマスク情報とで変化があった前記地物を、前記画面に表示する、
請求項1に記載の地物変化検知装置。
【請求項6】
画面を有する出力部を備え、
前記出力部は、前記地上属性付加地物を前記画面に表示する、
請求項4に記載の地物変化検知装置。
【請求項7】
前記地物領域情報には、前記地物として登録されていない物体の位置情報が登録されており、
前記地物変化検知部は、時間変化を検知した前記地物と同じ位置または近傍の位置にある前記物体が、前記過去画像の撮像時点と前記比較対象画像の撮像時点との間で変化したと推定する、
請求項1に記載の地物変化検知装置。
【請求項8】
上空または高所から撮像された地物の画像を比較対象画像とし、
前記地物の位置情報が予め登録された地物領域情報を備える地物変化検知装置に実行され、
前記地物変化検知装置が、前記比較対象画像の撮像時点よりも前の時点で上空または高所から前記地物を撮像した画像である過去画像と、前記比較対象画像とのそれぞれから、前記地物の位置情報を表す地物マスクを生成する地物マスク推定ステップと、
前記地物変化検知装置が、前記過去画像から生成された前記地物マスクと前記比較対象画像から生成された前記地物マスクとのそれぞれに対して、前記地物領域情報に登録された前記地物との重複度を求め、前記地物との前記重複度が閾値以上である前記地物に対応する領域を、補正済みの前記地物マスクとして補正済みマスク情報に登録する地物マスク補正ステップと、
前記地物変化検知装置が、前記過去画像の前記地物マスクを用いて得られた前記補正済みマスク情報と、前記比較対象画像の前記地物マスクを用いて得られた前記補正済みマスク情報との差分を求めることで、前記地物の時間変化を検知する地物変化検知ステップと、
を備えることを特徴とする地物変化検知方法。
【請求項9】
前記比較対象画像を撮像したカメラと前記地物との間に存在する物体を地上属性とし、
前記地物マスク推定ステップでは、前記過去画像と前記比較対象画像とのそれぞれから、前記地物と地上属性との位置情報を表す地物・地上属性マスクを生成し、
前記地物・地上属性マスクは、前記地物マスクと、前記地上属性の位置情報を表す地上属性マスクを備え、
前記地物マスク補正ステップでは、
前記過去画像から生成された前記地物・地上属性マスクと前記比較対象画像から生成された前記地物・地上属性マスクとのそれぞれに対して、前記地物領域情報に登録された前記地物との重複度を求め、
前記地上属性マスクとの前記重複度が閾値以上である前記地物に対応する領域を、地上属性付加地物として前記補正済みマスク情報に登録する、
請求項8に記載の地物変化検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地物の変化を検知するための地物変化検知装置と地物変化検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機などによる上空からのセンシングや人工衛星からのセンシングは、地上の広範囲に渡る状況把握に用いられており、例えば災害発生時の被害状況の把握に活用される。また、無線通信技術の発展やカメラなどのハードウェアの小型化と高性能化が進んだことで、今日ではドローンを活用したリアルタイムなセンシングが一般的になっている。
【0003】
災害発生時には、避難誘導や救助活動を迅速かつ正確に行うために、災害による被害状況をいち早く把握することが非常に重要である。被害状況を測るための要素としては、例えば、土砂の流出領域を表す情報、洪水による浸水領域を表す情報、及び建物の倒壊や道路の破断・陥没を表す情報などがある。これらの情報を迅速かつ正確に把握することで、災害の被害を最小限に抑えることができる。
【0004】
災害による被害状況を認識する従来の方法として、例えば、災害発生後に上空から撮影した画像に対して、予め所定の被災状況を撮影した画像データなどを学習した認識モデルを用いることで、災害発生後の撮影画像内に災害が発生しているか否かを判定したり、被災箇所を表示したりする方法がある。
【0005】
特許文献1には、上空から撮影した画像と、災害発生前に取得された建物ポリゴンとから、建物の災害被害を推定する装置が記載されている。建物ポリゴンは、地表面での2次元の建物形状(建物の位置と領域)を表すデータである。この装置は、建物ポリゴンに対応する建物の被害状況を推定するための学習モデルを備え、ブルーシート被覆状態などを対象の被害状況として設定し、学習モデルの推定結果を特徴画像として出力し、建物ポリゴンごとに当該ポリゴンに対応する特徴画像を参照して、当該建物に発生している災害被害を推定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-95886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、カメラで上空または高所から撮像された光学画像では、レンズ収差による幾何的な変形が生じるため、画像中の建物は、事前に取得された建物ポリゴンとの間で位置にズレが生じることがある。従来の技術では、カメラを所定の手順でキャリブレーションすることでレンズ収差を除去した場合でも、撮像された画像と実際の地図とで位置を合わせないと、画像中の建物と建物ポリゴンとの間で位置が一致せず、特徴画像において建物の位置が実際と異なり、災害による被害状況を十分に正確かつ迅速に把握できないという課題がある。
【0008】
このため、上空から撮像された画像における地物(地上に存在する物体)の位置と実際の地物の位置との差異(位置ズレ)を低減して、地物の変化を正確に検知できる技術が望まれている。
【0009】
本発明の目的は、画像から得られた地物の位置と実際の地物の位置との差異を低減して、地物の変化に関する情報を提供できる、地物変化検知装置と地物変化検知方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による地物変化検知装置は、上空または高所から地物を撮像した画像である比較対象画像を撮像するカメラと、前記比較対象画像の撮像時点よりも前の時点で上空または高所から前記地物を撮像した画像である過去画像と、前記比較対象画像とのそれぞれから、前記地物の位置情報を表す地物マスクを生成する地物マスク推定部と、前記地物の位置情報が予め登録された地物領域情報と、前記過去画像から生成された前記地物マスクと前記比較対象画像から生成された前記地物マスクとのそれぞれに対して、前記地物領域情報に登録された前記地物との重複度を求め、前記地物との前記重複度が閾値以上である前記地物に対応する領域を、補正済みの前記地物マスクとして補正済みマスク情報に登録する地物マスク補正部と、前記過去画像の前記地物マスクを用いて得られた前記補正済みマスク情報と、前記比較対象画像の前記地物マスクを用いて得られた前記補正済みマスク情報との差分を求めることで、前記地物の時間変化を検知する地物変化検知部とを備える。
【0011】
本発明による地物変化検知方法は、上空または高所から撮像された地物の画像を比較対象画像とし、前記地物の位置情報が予め登録された地物領域情報を備える地物変化検知装置に実行され、前記地物変化検知装置が、前記比較対象画像の撮像時点よりも前の時点で上空または高所から前記地物を撮像した画像である過去画像と、前記比較対象画像とのそれぞれから、前記地物の位置情報を表す地物マスクを生成する地物マスク推定ステップと、前記地物変化検知装置が、前記過去画像から生成された前記地物マスクと前記比較対象画像から生成された前記地物マスクとのそれぞれに対して、前記地物領域情報に登録された前記地物との重複度を求め、前記地物との前記重複度が閾値以上である前記地物に対応する領域を、補正済みの前記地物マスクとして補正済みマスク情報に登録する地物マスク補正ステップと、前記地物変化検知装置が、前記過去画像の前記地物マスクを用いて得られた前記補正済みマスク情報と、前記比較対象画像の前記地物マスクを用いて得られた前記補正済みマスク情報との差分を求めることで、前記地物の時間変化を検知する地物変化検知ステップとを備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、画像から得られた地物の位置と実際の地物の位置との差異を低減して、地物の変化に関する情報を提供できる、地物変化検知装置と地物変化検知方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例1による地物変化検知装置の機能構成図。
図2】地物変化検知装置のハードウェア構成の例を示す図。
図3】実施例1において、地物変化検知装置が実行する処理の内容を説明する図。
図4】地物マスク補正部の処理の内容の例を説明する図。
図5】地物変化検知装置が実行する処理を示すフローチャートの例。
図6】地物変化検知装置が出力する表示画面の例を示す図。
図7】本発明の実施例2による地物変化検知装置の機能構成図。
図8】実施例2において、地物変化検知装置が実行する処理の内容を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明による地物変化検知装置と地物変化検知方法では、互いに異なる時点で上空または高所から地物を撮像した少なくとも2枚の画像と、事前に取得された地物の位置情報とから、画像の撮像時点の間に生じた地物の変化を検知する。本発明によると、画像から得られた地物の位置と実際の地物の位置(事前に取得された地物の位置)との差異を低減して、地物の変化に関する情報を提供でき、地物の変化を正確に検知することができる。
【0015】
従来の技術では、地物を認識するための学習モデルを作成するために、地物の変化を起こす災害などを被った建物の画像を事前に大量に取得して学習する必要がある。しかし、災害の発生頻度は一般的に低く、学習に好適な画像を大量に取得することは非常に困難である。本発明では、地物の変化を検知するのに、学習に必要な画像を大量に取得する必要がない。
【0016】
また、従来の技術では、地物(例えば建物)が消失したか否かを判別するのが困難である。これは、画像から単純に得られた情報からは、地物が当初から存在しなかったのか消失したのかを区別できず、例えば、建物ポリゴンの情報に誤りがあり建物がそもそも存在しなかったのか、それとも災害によって建物が消失したのかを判別することができないからである。本発明では、建物が消失したか否かを容易に判別することができる。
【0017】
以下、本発明の実施例による地物変化検知装置と地物変化検知方法を、図面を用いて説明する。本発明の実施例による地物変化検知方法は、本発明の実施例による地物変化検知装置が実行する。
【0018】
本明細書において、地物とは、地上に存在する物体のことであり、例えば建物、道路、及び送電線などの人工物と、例えば植生などの自然物とを含めることができる。地物の変化とは、例えば、地物の形状や位置の変化や、地物の消失や出現のことである。また、地物の位置情報とは、地物の位置と領域(輪郭)を示す情報であり、単に地物の位置とも呼ぶ。
【0019】
なお、本明細書で用いる図面において、同一のまたは対応する構成要素には同一の符号を付け、これらの構成要素については繰り返しの説明を省略する場合がある。
【実施例0020】
本発明の実施例1による、地物変化検知装置と地物変化検知方法を説明する。
【0021】
図1は、本実施例による地物変化検知装置10の機能構成図である。本実施例による地物変化検知装置10は、カメラ11を備えるとともに、地物マスク推定部21、地物マスク補正部22、及び地物変化検知部23の機能部を備える。さらに、地物変化検知装置10は、過去画像31と、地物マスク推定モデル32と、地物領域情報33を備える。
【0022】
カメラ11は、地上の画像を上空または高所から撮像する撮像装置である。カメラ11は、任意の位置に固定されてもよく、航空機やドローンなどの制御された移動体に設置されてもよい。以下では、カメラ11が撮像した画像を比較対象画像35と呼ぶ。比較対象画像35には、カメラ11が撮像した地物が含まれている。
【0023】
過去画像31は、カメラ11が比較対象画像35を撮像した時点よりも前の時点で、上空または高所から地物を撮像した画像である。過去画像31から、過去の地物の位置情報が分かる。過去画像31は、地物変化検知装置10に保存されている。
【0024】
地物マスク推定モデル32は、比較対象画像35と過去画像31から地物マスク36を生成するためのモデルである。地物マスク36とは、画像から得られた地物の位置情報、すなわち、画像から得られた地物の位置と領域を表す情報である。地物マスク36には、1つまたは複数の地物についてのマスクが含まれる。地物マスク推定モデル32は、例えば、画像から地物の位置と領域を認識する機械学習モデルであり、学習用に与えられた画像を用いた機械学習によって予め作成することができる。地物マスク推定モデル32は、地物変化検知装置10に保存されている。
【0025】
地物マスク推定部21は、地物マスク推定モデル32を用いて地物マスク36を推定する。具体的には、地物マスク推定部21は、カメラ11が撮像した比較対象画像35と、過去画像31のうち比較対象画像35と少なくとも一部が重複する画像を入力し、地物マスク推定モデル32を用いて、比較対象画像35と過去画像31のそれぞれに対して地物マスク36を生成する。地物マスク推定部21は、生成した地物マスク36を地物マスク補正部22に出力する。
【0026】
なお、地物マスク36は、地物の位置情報(地物の位置と領域を示す情報)、または任意の処理によって地物の位置情報が得られる情報で表現されればよい。地物マスク36は、任意の形式で表現でき、例えば、地物の輪郭を形成する多角形の頂点や、地物を表すポリゴンなどを用いて表してもよい。
【0027】
地物領域情報33は、地物の位置情報(地物の位置と領域を示す情報)が予め登録された情報であり、地物変化検知装置10に保存されている。地物領域情報33には、予め定められた地物についての位置情報が登録されている。地物領域情報33は、地図などの公知の情報から取得した情報であり、地物変化検知装置10の操作者や管理者が作成した情報でもよい。例えば、地物領域情報33は、地物が存在する領域とそれ以外の領域とを区別したビットマップデータでもよく、または、国土地理院が公開している基盤地図情報に代表される、地物の輪郭を表すポリゴン情報でもよい。
【0028】
また、地物領域情報33には、単一の地物が複数の地物に分割されたことにより形成された地物についての情報が登録されてもよく、複数の地物が単一の地物に統合されたことにより形成された地物についての情報が登録されてもよい。このように、地物領域情報33に登録される地物の単位(1つの地物として扱う範囲)は、任意に定めることができる。
【0029】
地物マスク補正部22は、過去画像31から生成された地物マスク36aと比較対象画像35から生成された地物マスク36bのそれぞれに対して、地物領域情報33に登録されている地物との重複度を求め、地物領域情報33に登録されている地物と地物マスク36a、36bとが、重複度を用いた所定の判定条件を満たす場合には、この地物が存在すると判定する。そして、地物マスク補正部22は、補正済みマスク情報37を作成して出力する。
【0030】
補正済みマスク情報37とは、過去画像31と比較対象画像35のそれぞれから生成された地物マスク36を、地物領域情報33を用いて補正した情報である。補正済みマスク情報37には、地物マスク36で表された地物のうち地物領域情報33により存在が確認された地物について、この地物に対応する領域が補正済みの地物マスクとして登録されている。補正済みマスク情報37には、地物領域情報33に登録されている各地物が存在するか否かも記録される。なお、補正済みマスク情報37は、文字データや画像データなど、任意のデータ形式で表現することができる。
【0031】
地物マスク補正部22は、上記の処理を実施することで、過去画像31から生成された地物マスク36aを用いて、補正済みマスク情報37aを作成し、比較対象画像35から生成された地物マスク36bを用いて、補正済みマスク情報37bを作成する。
【0032】
地物マスク補正部22について詳しく説明する。
【0033】
まず、地物マスク補正部22は、地物マスク推定部21から地物マスク36を取得する。次に、地物マスク補正部22は、地物領域情報33の中から、取得した地物マスク36に含まれる地物が存在する領域(すなわち、過去画像31と比較対象画像35の撮像領域に対応する領域)を抽出する。以下では、抽出した地物領域情報33の領域を、地物領域情報33の参照領域と呼ぶ。
【0034】
なお、本実施例では、一例として、過去画像31と比較対象画像35の撮像領域の全てが互いに一致した場合を例に挙げて説明する。過去画像31と比較対象画像35の撮像領域の一部が互いに一致する場合には、一致する領域に対応する地物領域情報33を抽出してもよい。この場合でも、本実施例と同様の効果を得ることができる。
【0035】
次に、地物マスク補正部22は、取得した地物マスク36と、地物領域情報33の参照領域との位置を合わせる。地物マスク補正部22は、この位置合わせを、任意の方法で行う。例えば、カメラ11の設置位置と姿勢を表す外部パラメータから計算によってカメラ11の撮像領域を求め、この撮像領域に対応する地物領域情報33を求めることで、地物マスク36bと地物領域情報33の参照領域との位置を合わせてもよい。また、比較対象画像35を撮像した際に記録した、カメラ11またはカメラ11が設置された移動体(例えば航空機やドローン)の位置情報を、GPS情報などから取得し、この位置情報を用いて地物マスク36bと地物領域情報33の参照領域との位置を合わせてもよい。
【0036】
次に、地物マスク補正部22は、地物領域情報33の参照領域に含まれる地物の中から1つの地物を選択する。そして、地物マスク補正部22は、選択した地物と、地物マスク36のうち選択した地物に対応するマスクとの重複度を基に、選択した地物が存在するか否かを判定する。地物マスク補正部22は、上記の処理を、地物領域情報33の参照領域に含まれる他の地物についても繰り返して、補正済みマスク情報37を作成する。
【0037】
地物マスク補正部22は、選択した地物が存在するか否かの判定に用いる重複度として、例えば、選択した地物(地物領域情報33に含まれる地物)の領域と、地物マスク36のうち選択した地物に対応するマスクとの重複面積を使用することができる。また、地物マスク補正部22は、重複度として、選択した地物の領域の面積に対する、上記の重複面積の割合を使用してもよい。これらの面積は、例えば、画像上で領域を構成するピクセルの数などで表してもよい。
【0038】
地物マスク補正部22は、地物領域情報33に登録されている単一の地物を複数の地物に分割して形成した地物を、新たな地物として再定義してもよく、複数の地物を単一の地物に統合して形成した地物を、新たな地物として再定義してもよい。例えば、地物が建物である場合には、1つの建物を4つに分割し、これら4つの地物のそれぞれを新たな地物として登録してもよい。このようにすると、単一の建物のうち一部のみが災害などで消失した場合に、建物の一部の消失を検知することができる。
【0039】
さらに、地物マスク補正部22は、地物のうち特定の領域を指定して、この領域での地物の有無の判定方法を、他の領域での判定方法と変えてもよい。例えば、地物が貯水ダムであるとすると、貯水ダムの輪郭の頂点部分は、多くの場合には認識できるが、その他の部分は、認識される領域が例えば貯水湖の貯水量によって動的に変化する。このような場合には、貯水ダムの輪郭の頂点部分以外の部分を特定の領域として指定し、この特定の領域では、判定に用いる重複度の閾値を、貯水ダムの頂点部分よりも低くしたり、後述する図2に示す入力部12から受け取った貯水ダムの貯水量に従って動的に変化させたりしてもよい。
【0040】
地物変化検知部23は、過去画像31の撮像時点と比較対象画像35の撮像時点との間での、地物の時間変化を検知する。地物変化検知部23は、過去画像31の地物マスク36aを用いて得られた補正済みマスク情報37aと、比較対象画像35の地物マスク36bを用いて得られた補正済みマスク情報37bとの差分を求める。地物変化検知部23が求めた差分(補正済みマスク情報37aと補正済みマスク情報37bとの相違点)は、比較対象画像35の撮像時点での、過去画像31の撮像時点から変化した地物を表す。
【0041】
地物変化検知部23は、このようにして、互いに異なる時点で撮像された画像から作成された、少なくとも2つ以上の補正済みマスク情報37の間の差分を抽出する。この差分は、地物変化検知部23が検知した地物の時間変化である。地物変化検知部23は、求めた差分を、地物変化情報34として出力する。
【0042】
地物変化情報34は、地物変化検知部23が検知した地物の時間変化についての情報である。地物変化情報34は、比較対象画像35に含まれる地物について、変化の有無を記録した情報を含むことができる。
【0043】
図2は、本実施例による地物変化検知装置10のハードウェア構成の例を示す図である。地物変化検知装置10は、図1に示したカメラ11の他に、入力部12、出力部13、CPU(Central Processing Unit)14、主記憶装置15、及び補助記憶装置16を備える。
【0044】
入力部12は、例えばキーボードやマウスなどで構成することができ、地物変化検知装置10の操作者による入力を受け付ける。また、入力部12は、カメラ11が撮像した比較対象画像35など、地物変化検知装置10が必要とする画像や情報を入力する。
【0045】
出力部13は、例えば液晶ディスプレイなどの画面を有し、操作者に対して各種情報を表示するのに用いられる。また、出力部13は、例えばハードディスクドライブなどの記憶装置を備えることができ、例えば、地物変化検知装置10の出力を画像データなどの形式で保存してもよい。
【0046】
CPU14は、地物変化検知装置10の制御やデータの演算などを行う。CPU14は、各種のプログラムやデータを主記憶装置15に展開し、これらのプログラムを実行することで、地物変化検知装置10が備える機能(例えば、地物マスク推定部21、地物マスク補正部22、及び地物変化検知部23)を実現する。
【0047】
主記憶装置15は、例えばRAM(Random Access Memory)などで構成することができる。主記憶装置15には、例えば、地物マスク推定部21、地物マスク補正部22、及び地物変化検知部23などの機能を実現するプログラムが展開される。
【0048】
補助記憶装置16は、例えばハードディスクドライブなどで構成することができる。補助記憶装置16は、例えば、過去画像31、地物マスク推定モデル32、及び地物領域情報33などの各種データを記憶する。
【0049】
図3は、実施例1において、地物変化検知装置10が実行する処理の内容を説明する図である。図3には、過去画像31と、比較対象画像35と、過去画像31から生成された地物マスク36aと、比較対象画像35から生成された地物マスク36bと、地物マスク36aを補正して得られた補正済みマスク情報37aと、地物マスク36bを補正して得られた補正済みマスク情報37bを示している。
【0050】
図3には、一例として、地物が建物であり、地物変化検知装置10が、撮像した建物の変化を検知する例を示す。地物マスク36には、建物マスクが含まれる。補正済みマスク情報37には、補正した建物マスクである補正済み建物マスクが含まれる。
【0051】
過去画像31には、地物として、建物T1、建物T2、建物T3、建物T4、及び建物T5が含まれている。
【0052】
比較対象画像35は、過去画像31が撮像された時点よりも後に撮像された画像である。過去画像31が撮像された時点と、比較対象画像35が撮像された時点の間に、土砂崩れが発生したとする。比較対象画像35には、建物T1、建物T2、建物T4、及び建物T5が、土砂の流出によって押し流されて消失した後の様子が示されている。比較対象画像35では、建物T3が現存している。
【0053】
地物マスク推定部21は、過去画像31と比較対象画像35を入力し、過去画像31に対して地物マスク36aを生成し、比較対象画像35に対して地物マスク36bを生成する。
【0054】
図3に示す例では、地物マスク推定部21が、地物マスク推定モデル32として、画像のピクセルごとに、当該ピクセルが認識対象に含まれるか否かを判定する機械学習アルゴリズムの一種であるセマンティック・セグメンテーション(Semantic segmentation)を用いた場合を示している。地物マスク推定部21は、例えば、画像中で、建物が含まれる領域を1で表し、その他の領域を0で表した地物マスク36を推定する。図3には、この地物マスク36を画像で表示したものを、地物マスク36aと地物マスク36bとして示している。
【0055】
一般的に、セマンティック・セグメンテーションを始めとする機械学習アルゴリズムの推定結果には、誤差が含まれる。例えば、図3に示す例では、建物T4は、過去画像31に示すように実際は南北方向(図3の上下方向)に長い長方形であるが、地物マスク36aでは、建物T4に対応するマスクの形状が楕円形になっており、建物T4の本来の輪郭にズレなく沿ったマスクが得られていない。機械学習アルゴリズムでは、このような誤差が発生することが一般的である。
【0056】
このため、従来の技術のように、地物マスク36aと地物マスク36bとの差分を計算して地物の変化を求めると、上記の誤差(実際の地物と地物マスク36でこの地物を表すマスクとの間の誤差)が、差分として検知されてしまうことがある。このように、従来の技術には、上記の誤差を、本来検知するべき建物の変化と混同するという課題がある。
【0057】
本実施例では、この課題を解決するために、地物マスク補正部22は、地物領域情報33に含まれる地物の領域を用いて、地物マスク36を補正する。具体的には、地物マスク補正部22は、地物マスク36aと地物領域情報33に登録されている地物との重複度を求め、この地物と地物マスク36aとが重複度を用いた所定の判定条件を満たす場合には、この地物が存在すると判定する。そして、地物マスク補正部22は、地物マスク36bと地物領域情報33に登録されている地物との重複度を求め、この地物と地物マスク36bとが重複度を用いた所定の判定条件を満たす場合には、この地物が存在すると判定する。
【0058】
地物マスク補正部22は、このような判定を行い、存在する地物に対応する地物マスク36a、36bを求めることで地物マスク36a、36bを補正して、地物マスク36aを補正して得られた補正済みマスク情報37aと、地物マスク36bを補正して得られた補正済みマスク情報37bを求める。
【0059】
地物マスク補正部22は、地物領域情報33に登録されている地物のそれぞれに対して上記の処理を実施することで、補正済みマスク情報37aと補正済みマスク情報37bを作成して出力する。
【0060】
地物変化検知部23は、補正済みマスク情報37aと補正済みマスク情報37bとの差分を抽出して求め、求めた差分を地物変化情報34として出力する。
【0061】
以下では、地物マスク補正部22の処理の詳細を説明する。
【0062】
図4は、地物マスク補正部22の処理の内容の例を説明する図である。図4には、一例として、検知対象の地物が建物であり、地物領域情報33が地物の輪郭を表すポリゴン情報である例を示している。
【0063】
図4には、地物マスク36aと地物マスク36bを代表する地物マスク36として、地物マスク36cを示している。地物マスク36cは、地物(建物)として4つのマスクM、すなわちマスクM1、マスクM2、マスクM3、及びマスクM4を含む。
【0064】
また、図4には、地物領域情報33の参照領域(地物マスク36に含まれる地物が存在する領域)として、地物領域情報33cを示している。地物領域情報33cには、4つの地物領域R、すなわち地物領域R1、地物領域R2、地物領域R3、及び地物領域R4が登録されている。
【0065】
また、図4には、地物マスク36cと地物領域情報33cとを重畳した図である重畳図41を示している。
【0066】
さらに、図4には、重畳図41を利用して地物マスク36cと地物領域情報33cとから得られた補正済みマスク情報37cを示す図を示している。
【0067】
図4に示す例では、地物マスク補正部22は、地物マスク36cを入力し、地物マスク36cに含まれるマスクMと地物領域情報33cに登録されている地物(地物領域R)との重複度を求め、補正済みマスク情報37cを作成する。地物領域Rは、建物の輪郭を表すポリゴンで表されているとする。マスクM1~M4は、それぞれ地物領域R1~R4に対応する。
【0068】
また、図4に示す例では、地物マスク補正部22は、各建物が存在するか否かの判定基準である重複度として、重複割合を用いる。重複割合とは、地物領域Rの面積に対する、重複面積の割合のことである。重複面積とは、地物領域Rと、地物マスク36cのうち地物領域Rに対応する領域(マスクM)とが重複する面積のことである。そして、重複割合の閾値として50%を用いることとする。すなわち、地物マスク補正部22は、重複割合が50%以上であると、建物が存在すると判定する。なお、この閾値は、50%に限らず、任意の値に定めることができる。
【0069】
以下の説明では、地物マスク補正部22が行う、重複度を用いた、地物が存在するか否かの判定の条件を、所定の判定条件と呼ぶ。上記の例では、所定の判定条件は、重複度が閾値以上(重複割合が50%以上)であると建物が存在すると判定する、という条件である。
【0070】
なお、建物(地物)が存在するか否かの判定基準には、重複割合に限らず、任意の基準を用いることができ、例えば、重複面積の絶対値を用いてもよい。判定基準の閾値には、上述したように、任意の値を用いることができる。これらの判定基準と閾値は、予め補助記憶装置16が記憶していてもよく、入力部12を介して地物変化検知装置10の操作者が設定してもよい。
【0071】
図4に示す例では、地物マスク36cと地物領域情報33cとを重畳すると、重畳図41に示すように、地物領域R1の面積に対する、地物領域R1とマスクM1との重複面積の割合(重複割合)は、50%以上である。重複割合が閾値(50%)以上であるので、マスクM1は、地物領域R1に対応する建物の認識に成功している。
【0072】
地物マスク補正部22は、地物領域R1について重複割合が閾値以上であるので、地物領域R1に対応する建物が存在すると判定する。そして、地物マスク補正部22は、補正済みマスク情報37cにおいて、地物領域R1に対応する領域を建物が存在する領域とする。すなわち、地物マスク補正部22は、マスクM1が示す地物領域R1を、存在する建物として補正済みマスク情報37cに記録する。
【0073】
地物マスク補正部22は、地物領域R2に対しても、マスクM2についての重複割合が閾値以上であるので(重畳図41)、地物領域R2に対応する建物が存在すると判定し、補正済みマスク情報37cにおいて、地物領域R2に対応する領域を建物が存在する領域とする。すなわち、地物マスク補正部22は、マスクM2が示す地物領域R2を、存在する建物として補正済みマスク情報37cに記録する。
【0074】
また、地物領域R4は、地物マスク36cに含まれるいずれのマスクM1~M4とも重複せず、重複面積と重複割合がゼロである(重畳図41)。地物マスク補正部22は、地物領域R4について重複割合が閾値未満であるので、地物領域R4に対応する建物が存在しないと判定する。
【0075】
また、図4に示す例では、重畳図41に示すように、マスクM3は、地物領域情報33cに登録された地物領域Rのいずれとも領域が重複しない。このため、マスクM3は、地物マスク推定部21が建物を誤認識したために出現したマスクであることが推測できる。
【0076】
さらに、重畳図41に示すように、マスクM4は、地物領域R3と領域が重複しているものの、重複割合が閾値(50%)未満である。このため、マスクM4は、地物マスク推定部21が建物を誤認識したために出現したマスクであることが推測できる。そして、地物マスク補正部22は、地物領域R3に対応する建物が存在しないと判定する。
【0077】
地物マスク補正部22は、以上のような処理を地物領域R1~R4のそれぞれに対して実施して、補正済みマスク情報37cを作成する。補正済みマスク情報37cでは、地物マスク36cが地物領域情報33cを用いて補正され、マスクM1、M2にそれぞれ対応する補正済み建物マスクM11、M22が示されている。また、補正済みマスク情報37cでは、補正済み建物マスクM11、M22の輪郭の形状は、地物領域情報33cによって補正され、それぞれ地物領域R1、R2と一致するようにマスクM1、M2から変化している。
【0078】
なお、図4では、一例として、補正済みマスク情報37cが、補正された地物の領域情報をビットマップ画像として出力した形式の情報である例を示している。補正済みマスク情報37は、例えば、地物の輪郭を表すポリゴンの情報でもよく、任意のデータ形式で表現することができる。
【0079】
上述したように、一般的な機械学習アルゴリズムでは、データを潤沢に学習したモデルを利用した場合でも、地物マスク36の生成に微小な誤差が生じることがある。このため、従来の技術において、過去画像31と比較対象画像35のそれぞれに対して生成した地物マスク36aと地物マスク36bとの差分を計算して地物の変化を検知すると、地物の実際の変化による差分だけでなく、地物マスク36に生じた微小な誤差の影響などによる差分もノイズとして現れてしまう。このため、従来の技術では、このようなノイズのために、誤報や失報が発生することがある。
【0080】
本実施例では、地物領域情報33を用いて地物マスク36を補正した情報である補正済みマスク情報37を用い、過去画像31から得られた補正済みマスク情報37aと比較対象画像35から得られた補正済みマスク情報37bとを比較する。補正済みマスク情報37a、37bでは、地物領域情報33に予め登録されている地物の位置情報に基づいて、地物の位置情報が得られている(すなわち、地物マスク36が補正されている)。このため、本実施例では、地物マスク36の生成で生じた誤差などの影響を受けることなく、時間の経過とともに生じた地物の変化を検知することができる。
【0081】
図5は、本実施例による地物変化検知装置10が実行する処理を示すフローチャートの例である。
【0082】
ステップS101で、地物マスク推定部21は、過去画像31と、少なくとも1つ以上の比較対象画像35を入力し、過去画像31と比較対象画像35のそれぞれに対して地物マスク36を生成する。以下では、説明を分かり易くするために、比較対象画像35が1つである場合を考え、過去画像31に対応する地物マスク36を地物マスク36aと称し、比較対象画像35に対応する地物マスク36を地物マスク36bと称する。
【0083】
ステップS102で、地物マスク補正部22は、地物マスク36(36a、36b)を入力し、地物領域情報33のうち、取得した地物マスク36に含まれる地物が存在する領域(すなわち、過去画像31と比較対象画像35の撮像領域に対応する領域)を抽出する。この抽出は、例えば、過去画像31と比較対象画像35が持っている位置情報(座標値)を用いて行うことができる。
【0084】
ステップS103で、地物マスク補正部22は、後述の補正処理で補正されていない地物マスク36を1つ選択する。地物マスク補正部22は、複数の地物マスク36を入力した場合には、全ての地物マスク36に対して補正処理を実施する。本実施例では、地物マスク補正部22が、初めに地物マスク36aを選択し、次に地物マスク36bを選択する場合を説明する。
【0085】
ステップS104からステップS108が、地物マスク36に対する補正処理である。
【0086】
ステップS104で、地物マスク補正部22は、ステップS102で抽出した地物領域情報33に登録されている地物の領域(地物領域情報33の参照領域)のうち、地物が存在するか否かの判定(地物の存在判定)が実施されていない領域を1つ選択する。
【0087】
ステップS105で、地物マスク補正部22は、ステップS104で選択した地物領域と、地物マスク36との重複度を計算する。重複度は、既に説明したように、選択した地物が存在するか否かの判定に用いる値(所定の判定条件で使用される値)である。本実施例では、重複度として、既に説明した重複割合を用いる。重複割合は、ステップS104で選択した地物領域の面積に対する、重複面積の割合であり、重複面積は、この地物領域と、地物マスク36のうちこの地物領域に対応する領域とが重複する面積である。
【0088】
ステップS106で、地物マスク補正部22は、所定の判定条件に従い、ステップS105で計算して求めた重複度が、予め設定された閾値以上であるか否かを判定する。重複度が閾値以上である場合には、地物マスク補正部22は、ステップS104で選択した地物領域に対応する地物が存在すると判定し、ステップS107の処理を実施する。一方、重複度が閾値未満である場合には、地物マスク補正部22は、ステップS104で選択した地物領域に対応する地物が存在しないと判定し、ステップS108の処理を実施する。
【0089】
ステップS107で、地物マスク補正部22は、ステップS104で選択した地物領域に対応する地物が存在するので、補正済みマスク情報37において、この地物領域に対応する領域を地物が存在する領域とする。すなわち、地物マスク補正部22は、地物マスク36が示す地物領域を、存在する地物として補正済みマスク情報37に記録する。
【0090】
補正済みマスク情報37は、1つの地物マスク36に対して少なくとも1つ作成される。本実施例では、地物マスク補正部22は、地物マスク36aに対応する補正済みマスク情報37aと、地物マスク36bに対応する補正済みマスク情報37bの2つを作成する。
【0091】
ステップS108で、地物マスク補正部22は、ステップS102で抽出した地物領域情報33に登録されている全ての地物の領域に対して、地物が存在するか否かの判定(地物の存在判定)が実施されたか否かを判定する。地物の存在判定が実施されていない地物領域がある場合には、地物マスク補正部22は、ステップS104の処理を実施し、地物の存在判定が実施されていない地物領域を新たに1つ選択する。全ての地物領域に対して地物の存在判定が実施された場合には、地物マスク補正部22は、ステップS109の処理を実施する。
【0092】
ステップS109で、地物マスク補正部22は、ステップS101で生成された全ての地物マスク36に対して、上述の補正処理(ステップS104からステップS108)が実施されたか否かを判定する。全ての地物マスク36に対して補正処理が実施された場合には、地物変化検知部23がステップS110の処理を実施する。全ての地物マスク36に対して補正処理が実施されていない場合には、地物マスク補正部22がステップS103の処理を実施する。本実施例では、地物マスク補正部22が、初めに地物マスク36aを選択し、次に地物マスク36bを選択する。地物マスク36bに対して補正処理が実施されていない場合には、地物マスク補正部22は、ステップS103の処理を実施し、地物マスク36bを選択する。
【0093】
ステップS110で、地物変化検知部23は、ステップS107で作成された、複数の補正済みマスク情報37を比較し、その差分を記録する。具体的には、地物変化検知部23は、過去画像31の地物マスク36aを補正して得られた補正済みマスク情報37aと、比較対象画像35の地物マスク36bを補正して得られた補正済みマスク情報37bとの差分を求め、求めた差分を地物変化情報34として出力する。地物変化検知部23は、このようにして、過去画像31の撮像時点と比較対象画像35の撮像時点との間での、地物の変化を検知する。
【0094】
例えば、過去画像31の撮像時点と比較対象画像35の撮像時点との間に消失した地物を検知することが目的の場合には、地物変化検知部23は、補正済みマスク情報37aから補正済みマスク情報37bを差し引いた結果を求め、得られた結果を地物変化情報34として記録する。
【0095】
また、例えば、地物が建物であり、過去画像31の撮像時点と比較対象画像35の撮像時点との間に新たに建築された建物を検知することが目的の場合には、補正済みマスク情報37bから補正済みマスク情報37aを差し引いた結果を求め、得られた結果を地物変化情報34として記録する。
【0096】
なお、本実施例では、1つの地物マスク36には、1つの種類の地物を表すマスクだけが存在する例を説明した(例えば、図4の地物マスク36cには、建物を表すマスクM1~M4だけが存在する)。1つの地物マスク36には、複数の種類の地物(例えば、建物と道路)を表すマスクを含めることができる。
【0097】
また、地物の種類ごとに地物マスク36を生成することができる。例えば、地物が建物と道路であるとすると、建物を表すマスクを含む地物マスク36と道路を表すマスクを含む地物マスク36という、2種類の地物マスク36を生成してもよい。この場合には、ステップS102では、地物領域情報33のうち、地物マスク36が表す種類の地物が存在する領域を抽出する。
【0098】
図6は、本実施例による地物変化検知装置10が出力する表示画面60の例を示す図である。出力部13(図2)は、例えば液晶ディスプレイなどの画面に表示画面60を表示する。
【0099】
図6に示す表示画面60は、過去画像31の表示領域61と、比較対象画像35の表示領域65と、地物変化検知部23が検知した地物の変化を示す画像(検知結果画像)の表示領域63を備える。過去画像31の表示領域61は、比較対象画像35に対応する領域の過去画像31を表示する。比較対象画像35の表示領域65は、例えば、カメラ11が撮像した比較対象画像35を表示する。
【0100】
検知結果画像の表示領域63は、例えば、過去画像31に対する補正済みマスク情報37aと、比較対象画像35に対する補正済みマスク情報37bとの差分から得られる画像を、検知結果画像として表示する。すなわち、検知結果画像には、過去画像31の地物マスク36aを用いて得られた補正済みマスク情報37aと、比較対象画像35の地物マスク36bを用いて得られた補正済みマスク情報37bとで変化があった地物が表示されている。
【0101】
図6の検知結果画像の表示領域63には、一例として、倒壊して消失した建物、すなわち、過去画像31には存在するが比較対象画像35には存在しない建物が表示されている。この建物は、過去画像31に対する補正済みマスク情報37aと、比較対象画像35に対する補正済みマスク情報37bとで変化があった地物である。
【0102】
また、表示画面60は、設定領域67を備えることができる。設定領域67は、地物変化検知装置10の操作者が表示画面60に表示する画像を設定するための領域である。
【0103】
操作者は、入力部12(図2)を用いて設定領域67を操作して、検知結果画像の表示領域63に表示する情報を変更することができる。例えば、操作者は、設定領域67のチェックボックスやラジオボタンにより、表示領域63に表示する地物(建物)を選ぶことができる。図6に示す例では、操作者は、倒壊した建物または現存する建物を表示することができる。また、例えば、操作者は、設定領域67のスライダーにより、地物マスク補正部22が地物の存在判定を実施するときに使用する重複度の閾値を変更することができる。
【0104】
また、表示画面60は、操作者が設定領域67を操作することにより、地物領域情報33や、地物マスク推定部21が生成した地物マスク36を、過去画像31と比較対象画像35とに重ねて表示してもよい。
【0105】
さらに、表示画面60は、例えば、操作者が入力部12のマウスを操作し、マウスカーソルを過去画像31の地物上に移動させた際に、この地物の情報をポップアップなどの追加のウィンドウなどで表示してもよい。このような情報の例には、地物を管理するための通し番号である地物IDや、地物の存在判定の結果(例えば、建物の消失と現存)が含まれる。
【0106】
本実施例による地物変化検知装置10は、地物として登録されていない物体の位置情報を、地物領域情報33に含めることができる。すなわち、地物領域情報33には、地物として登録されていない物体の位置情報も登録されていてもよい。以下では、地物として登録されていないが、位置情報が既知の物体を、非地物物体と呼ぶ。地物領域情報33は、地図情報などとして、非地物物体の位置情報を持つことができる。
【0107】
非地物物体には、過去画像31や比較対象画像35に映らない物体が含まれ、例えば、地中に埋設された水道管、光ファイバーケーブル、及び送電線などが含まれる。地上の送電線も、過去画像31や比較対象画像35に映らなければ、非地物物体に含めることができる。
【0108】
地物変化検知部23は、地物領域情報33を用いて非地物物体の位置情報を参照し、非地物物体と同じ位置または非地物物体の近傍の位置にある地物の変化を検知した結果から、非地物物体の変化を推定して求めることができる。例えば、地物変化検知部23は、変化を検知した地物と同じ位置または近傍の位置にある非地物物体が、過去画像31の撮像時点と比較対象画像35の撮像時点との間で、地物と同様に変化したと推定する。
【0109】
例えば、地物が道路であり、非地物物体がこの道路の下の地中に埋まっている水道管であるとする。そして、地物変化検知部23は、地物の変化として、この道路の破断や陥没などの事象を検知したとする。このとき、地物変化検知部23は、この道路と同じ位置またはこの道路の近傍の位置に水道管がある場合には、この水道管も道路と同様に破損していると推定する。具体的には、地物変化検知部23は、道路の破断を検知した際に、この破断の位置と同一またはこの破断の位置から一定の半径内に水道管が設置されている場合には、この水道管が破損している可能性が高いため、この水道管が破損している、またはこの水道管を要検証な物体として記録する。
【0110】
以上の処理により、本実施例による地物変化検知装置10は、地物として登録されていない物体や画像に映らない物体の変化を推定することができる。
【0111】
本実施例による地物変化検知装置10は、以上説明したように、過去画像31から生成された地物マスク36aと比較対象画像35から生成された地物マスク36bのそれぞれに対して、地物領域情報33に登録されている地物との重複度を求めて補正済みマスク情報37を作成することで、画像から得られた地物の位置と実際の地物の位置との差異を低減して、地物の変化に関する情報を提供することができる。
【実施例0112】
本発明の実施例2による、地物変化検知装置と地物変化検知方法を説明する。以下では、本実施例による地物変化検知装置と地物変化検知方法について、実施例1と異なる点を主に説明する。
【0113】
実施例1では、地物変化検知装置10が、互いに異なる時点で撮像された画像(過去画像31と比較対象画像35)から地物マスク36を生成し、地物マスク36を用いて作成された補正済みマスク情報37(37a、37b)の間の差分から、地物の変化を検知する。
【0114】
本実施例では、比較対象画像35と過去画像31のそれぞれに対して、地物マスク36に加えて地上属性マスクを推定して生成することで、地物の変化が曖昧である場合でも、地物の変化に関する情報を提供することができる。
【0115】
地上属性とは、地物とカメラ11の間に存在し、カメラ11による地物の撮像を遮る物体のことである。すなわち、カメラ11が撮像した画像において、地物は、地上属性と重なって地上属性に隠れており、一部または全てが映っていない。
【0116】
地物・地上属性マスクとは、地物マスクと地上属性マスクの総称である。地上属性マスクは、画像から得られた地上属性の位置情報、すなわち、画像から得られた地上属性の位置と領域を表す情報である。従って、地物・地上属性マスクは、画像から得られた地物と地上属性の位置情報、すなわち、画像から得られた地物と地上属性の位置と領域を表す情報である。地物・地上属性マスクは、地物マスクと地上属性マスクの両方を含むので、地物・地上属性マスクには、1つまたは複数の地物と地上属性についてのマスクが含まれる。
【0117】
図7は、本実施例による地物変化検知装置10の機能構成図である。本実施例による地物変化検知装置10は、地物マスク推定部21と地物マスク補正部22の構成が実施例1と異なるとともに、地物マスク推定モデル32の代わりに地物・地上属性マスク推定モデル32aを備える点が実施例1と異なる。
【0118】
地物・地上属性マスク推定モデル32aは、比較対象画像35と過去画像31から地物・地上属性マスク38(すなわち、地物マスクと地上属性マスクの両方)を生成するためのモデルである。地物・地上属性マスク推定モデル32aは、例えば機械学習により予め作成することができ、地物変化検知装置10に保存されている。
【0119】
地物マスク推定部21は、地物・地上属性マスク推定モデル32aを用いて、比較対象画像35と過去画像31のそれぞれに対して地物・地上属性マスク38を推定して生成する。地物マスク推定部21は、生成した地物・地上属性マスク38を地物マスク補正部22に出力する。
【0120】
地物マスク補正部22は、過去画像31から生成された地物・地上属性マスク38aと比較対象画像35から生成された地物・地上属性マスク38bのそれぞれに対して、地物領域情報33に登録されている地物との重複度を求め、補正済みマスク情報37を作成して出力する。本実施例では、補正済みマスク情報37とは、過去画像31と比較対象画像35のそれぞれから生成された地物・地上属性マスク38を、地物領域情報33を用いて補正した情報である。補正済みマスク情報37には、地物・地上属性マスク38で表された地物のうち地物領域情報33により存在が確認された地物について、この地物に対応する領域が補正済みの地物マスクとして登録されているとともに、地物・地上属性マスク38と地物領域情報33により要検証とされた地物(要検証地物)についての情報が含まれる。
【0121】
地物マスク補正部22は、地物領域情報33に登録されている地物が地物マスクと所定の判定条件(実施例1で説明した、重複度を用いた所定の判定条件)を満たす場合には、この地物が存在すると判定する。そして、地物マスク補正部22は、地物領域情報33に登録されている地物が地上属性マスクと所定の判定条件を満たす場合には、この地物が地上属性付加地物であると判定する。地上属性付加地物とは、地物のうち、カメラ11が撮像した画像において、地上属性と重なって地上属性の陰になり、一部または全てが映っていない地物のことである。なお、本実施例では、実施例1での所定の判定条件において、地物マスク補正部22は、地物・地上属性マスク38(地物マスクと地上属性マスク)と地物領域情報33に登録されている地物との重複度を求める。
【0122】
地物マスク補正部22は、上記の処理を実施することで、過去画像31から生成された地物・地上属性マスク38aを用いて、補正済みマスク情報37aを作成し、比較対象画像35から生成された地物・地上属性マスク38bを用いて、補正済みマスク情報37bを作成する。また、地物マスク補正部22は、地上属性付加地物が存在する場合には、地上属性付加地物である地物についての情報を、地物変化検知部23に出力する。
【0123】
地物変化検知部23は、補正済みマスク情報37aと補正済みマスク情報37bとの差分を抽出して求め、求めた差分を地物変化情報34として出力する。また、地物変化検知部23は、地上属性付加地物が存在する場合には、地上属性付加地物である地物を要検証地物とし、この地物についての情報を出力する。地上属性付加地物は、画像において地上属性と重なっている地物であり、地上属性のために実際に存在するか否かが不明なことがある。このため、地上属性付加地物である地物を、実際に存在するか否かの検証が必要な要検証地物とする。
【0124】
出力部13(図2)は、例えば液晶ディスプレイなどの画面に、地上属性付加地物である地物を、要検証地物として表示することができる。
【0125】
図8は、実施例2において、地物変化検知装置10が実行する処理の内容を説明する図である。図8には、過去画像31と、比較対象画像35と、過去画像31から生成された地物・地上属性マスク38aと、比較対象画像35から生成された地物・地上属性マスク38bと、地物・地上属性マスク38aを補正して得られた補正済みマスク情報37aと、地物・地上属性マスク38bを補正して得られた補正済みマスク情報37bを示している。
【0126】
図8には、一例として、地物が建物であり、地上属性が植生であり、地物変化検知装置10が、撮像した建物の変化を検知する例を示す。なお、地上属性は、植生に限らず、例えば、雲、送電線、及び飛行物などでもよい。地物・地上属性マスク38には、地物マスクである建物マスクと、地上属性マスクである植生マスクが含まれる。補正済みマスク情報37には、補正した建物マスクである補正済み建物マスクと、地上属性付加地物39が含まれる。
【0127】
過去画像31には、地物として、建物T1、建物T2、建物T3、建物T4、及び建物T5が含まれているとともに、地上属性として、植生Pが含まれている。過去画像31において、建物T3と建物T4は、植生Pと重なって植生Pに隠れており、一部が映っていない。
【0128】
比較対象画像35は、過去画像31が撮像された時点よりも後に撮像された画像である。過去画像31が撮像された時点と、比較対象画像35が撮像された時点の間に、土砂崩れが発生したとする。比較対象画像35には、建物T1、建物T2、建物T4、及び建物T5が、土砂の流出によって押し流されて消失した後の様子が示されている。比較対象画像35では、建物T3が現存している。
【0129】
地物マスク推定部21は、過去画像31と比較対象画像35を入力し、過去画像31に対して地物・地上属性マスク38aを生成し、比較対象画像35に対して地物・地上属性マスク38bを生成する。地物・地上属性マスク38aには、建物T1~T5に対応する地物マスク(建物マスク)と、植生Pに対応する地上属性マスク(植生マスク)が含まれる。地物・地上属性マスク38bには、植生マスクのみが含まれる。
【0130】
図8に示す例では、地物マスク推定部21が、地物・地上属性マスク推定モデル32aとして、画像のピクセルごとに、当該ピクセルが認識対象に含まれるか否かを判定する機械学習アルゴリズムの一種であるセマンティック・セグメンテーション(Semantic segmentation)を用いた場合を示している。地物マスク推定部21は、例えば、画像中で、建物が含まれる領域を1で表し、植生が含まれる領域を2で表し、その他の領域を0で表した地物・地上属性マスク38を推定する。図8には、この地物・地上属性マスク38を画像で表示したものを、地物・地上属性マスク38aと地物・地上属性マスク38bとして示している。
【0131】
なお、地物マスク推定部21は、地物・地上属性マスク38として、複数の種類のマスクを生成してもよい。例えば、地物マスク推定部21は、画像中で、建物が含まれる領域を1で表し、その他の領域を0で表した地物・地上属性マスク38と、植生が含まれる領域を1で表し、その他の領域を0で表した地物・地上属性マスク38という、2種類の地物・地上属性マスク38を生成してもよい。地物マスク推定部21は、このように、任意の方法で表した地物・地上属性マスク38を生成することができる。
【0132】
地物マスク補正部22は、地物・地上属性マスク38aに対して、地物領域情報33に登録されている地物との重複度を求め、この地物と地物マスクとが所定の判定条件を満たす場合には、この地物が存在すると判定し、この地物と地上属性マスクとが所定の判定条件を満たす場合には、この地物を地上属性付加地物39であると判定する。そして、地物マスク補正部22は、地物・地上属性マスク38bに対して、地物領域情報33に登録されている地物との重複度を求め、この地物と地物マスクとが所定の判定条件を満たす場合には、この地物が存在すると判定し、この地物と地上属性マスクとが所定の判定条件を満たす場合には、この地物を地上属性付加地物39であると判定する。なお、地物と地物マスクとの間の判定条件と、地物と地上属性マスクとの間の判定条件は、例えば重複度の定義や重複度の閾値などが、互いに異なっていてもよい。
【0133】
地物マスク補正部22は、地物・地上属性マスク38aと地物・地上属性マスク38bに含まれる地物のそれぞれに対して上記の処理を実施することで、地物・地上属性マスク38aを補正して得られた補正済みマスク情報37aと、地物・地上属性マスク38bを補正して得られた補正済みマスク情報37bを作成して出力する。
【0134】
図8に示す例で、補正済みマスク情報37a、37bに地上属性付加地物39である建物T3が存在するのは、建物T3は、地物領域情報33に登録されており、地物・地上属性マスク38a、38bの地上属性マスク(植生マスク)と重複している地物だからである。地上属性付加地物39である建物T3は、要検証地物である。
【0135】
地物変化検知部23は、補正済みマスク情報37aと補正済みマスク情報37bとの差分を抽出して求め、求めた差分を地物変化情報34として出力する。
【0136】
図8に示す例では、過去画像31と比較対象画像35のどちらでも、前景に植生Pが含まれている。このため、過去画像31と比較対象画像35では、地上属性である植生Pのために、建物T3の一部が撮像されておらず、建物T3の変化を正確に把握することが難しい。
【0137】
本実施例による地物変化検知装置10では、地上属性の影響で全体が撮像されてなく検知できない地物を地上属性付加地物39とすることにより、この地物が地上属性のために検知できない旨を地物変化検知装置10の操作者に提示することができる。例えば、図8に示した例では、地物変化検知装置10は、地上属性付加地物39である建物T3を、要検証地物として記録し、表示画面60に表示してもよい。建物T3は、要検証地物であり、地上属性(植生P)のために地物・地上属性マスク38bでは検知されなかったが、実際には存在する地物である可能性がある。そこで、操作者は、建物T3が要検証地物であると表示画面60に表示されたのを受けて、例えば、建物T3を消失した建物と同様に扱い、救助隊を派遣するなどのオペレーションの策定に役立てることができる。
【0138】
比較対象画像を図示していないが、次のような例も考えられる。例えば、植生Pと建物T3は、過去画像31(図8)の撮像時には存在したが、比較対象画像の撮像時には存在していないとする。そして、比較対象画像では、植生Pと建物T3が撮像されておらず、建物T3の位置にある地面が撮像されているとする。
【0139】
この場合には、建物T3に対応する地物は、補正済みマスク情報37aには地上属性付加地物39として登録され、補正済みマスク情報37bには存在していない地物として登録される。建物T3は、過去画像31を撮像した時点では地上属性付加地物39として登録され、要検証地物であるので、存在するか否かが不明である。しかし、建物T3は、比較対象画像を撮像した時点では存在しないことが確定しているため、消失した地物として登録される。なお、地物変化検知部23が差分を抽出する条件は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な例が含まれる。
【0140】
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記の実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備える態様に限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能である。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、削除したり、他の構成を追加・置換したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0141】
10…地物変化検知装置、11…カメラ、12…入力部、13…出力部、14…CPU、15…主記憶装置、16…補助記憶装置、21…地物マスク推定部、22…地物マスク補正部、23…地物変化検知部、31…過去画像、32…地物マスク推定モデル、32a…地物・地上属性マスク推定モデル、33、33c…地物領域情報、34…地物変化情報、35…比較対象画像、36、36a、36b、36c…地物マスク、37、37a、37b、37c…補正済みマスク情報、38、38a、38b…地物・地上属性マスク、39…地上属性付加地物、41…重畳図、60…表示画面、61…過去画像の表示領域、63…検出結果画像の表示領域、65…比較対象画像の表示領域、67…設定領域、M、M1~M4…マスク、M11、M22…補正済み建物マスク、P…植生、R、R1~R4…地物領域、T1~T5…建物。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8