(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134106
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】嵌合構造
(51)【国際特許分類】
H01R 13/64 20060101AFI20240926BHJP
H01R 13/42 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
H01R13/64
H01R13/42 F
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044219
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 雅幸
(72)【発明者】
【氏名】久保田 浩正
【テーマコード(参考)】
5E021
5E087
【Fターム(参考)】
5E021FA05
5E021FA09
5E021FA14
5E021FA16
5E021FC38
5E021FC40
5E021JA05
5E021JA12
5E021KA06
5E087EE02
5E087EE11
5E087FF03
5E087FF06
5E087GG24
5E087GG26
5E087GG31
5E087GG32
5E087RR26
5E087RR29
(57)【要約】
【課題】ハウジングの作製コストを低減しつつ、誤嵌合を防止するハウジングの嵌合構造を得ることを目的とする。
【解決手段】嵌合構造1を構成する第一ハウジング10には、前後方向Xに開口し第二ハウジング20を収容する収容部11と、収容部11の内側に向かって突出し嵌合方向に延びる誤嵌合防止リブ16と、が設けられている。第一ハウジング10に嵌合する第二ハウジング20には、誤嵌合防止リブ16の突出方向に凹む嵌合凹部29が設けられるとともに、突出方向に凹む嵌合溝37を備えたフロントリテーナ30が取り付けられている。嵌合凹部29は、上下方向Zに所定の幅を備え、収容部11内で誤嵌合防止リブ16を受け入れ、嵌合溝37は、嵌合凹部29の幅内で誤嵌合防止リブ16と嵌合する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一コネクタの第一ハウジングと、前記第一コネクタに接続される第二コネクタの第二ハウジングとを、嵌合方向に沿って嵌合する嵌合構造であって、
前記第一ハウジングには、前記嵌合方向に開口し前記第二ハウジングを収容する収容部と、前記収容部の内側に向かって突出し前記嵌合方向に延びる誤嵌合防止リブと、が設けられ、
前記第二ハウジングには、前記誤嵌合防止リブの突出方向に凹む嵌合凹部が設けられるとともに、前記突出方向に凹む嵌合溝を備えた誤嵌合防止部材が取り付けられ、
前記嵌合凹部は、前記嵌合方向に交差する交差方向に所定の幅を備え、前記収容部内で前記誤嵌合防止リブを受け入れ、
前記嵌合溝は、前記嵌合凹部の前記幅内で前記誤嵌合防止リブと嵌合することを特徴とする嵌合構造。
【請求項2】
前記誤嵌合防止部材は、前記第二ハウジングの前記嵌合方向の一方側の端部に取り付けられるフロントリテーナである請求項1に記載の嵌合構造。
【請求項3】
前記嵌合凹部は、前記第二ハウジングの側部に設けられ、
前記フロントリテーナは、前記第二ハウジングに対して前記交差方向に沿って着脱されることを特徴とする請求項2に記載の嵌合構造。
【請求項4】
前記第二ハウジングには、端子が前記嵌合方向に挿入されて収容される端子収容室が設けられ、
前記フロントリテーナには、外部から前記端子収容室に連通する端子挿入孔が設けられ、
前記端子挿入孔の開口縁部には、前記端子に接続される相手端子を前記端子挿入孔内に案内する傾斜面が設けられている請求項3に記載の嵌合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嵌合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
第1のハウジングと、第1のハウジングが連結方向に沿って挿入される筒状の第2のハウジングと、を備えた嵌合構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のコネクタでは、第1のハウジングに誤嵌合防止リブが設けられ、第2のハウジングに誤嵌合防止リブを嵌合させる凹溝が設けられている。第1のハウジングと第2のハウジングとの接続時には、誤嵌合防止リブと凹溝とが嵌合することで、第2のハウジングに対する第1のハウジングの誤嵌合が防止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の電気コネクタでは、誤嵌合防止リブと、凹溝と、を一対一で嵌合させることで第1のハウジングと第2のハウジングの誤嵌合防止を図ることとなる。このため、第1のハウジングの種類が変わって誤嵌合防止リブの形状や配置が異なることとなった場合、凹溝の形状や配置を変更した第2のハウジングを新たに作製する必要があり、金型の新規起工など、様々なコストが増大することとなる。
【0005】
本発明の目的は、ハウジングの作製コストを低減しつつ、誤嵌合を防止するハウジングの嵌合構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決し目的を達成するために、接続構造は、第一コネクタの第一ハウジングと、前記第一コネクタに接続される第二コネクタの第二ハウジングとを、嵌合方向に沿って嵌合する嵌合構造であって、前記第一ハウジングには、前記嵌合方向に開口し前記第二ハウジングを収容する収容部と、前記収容部の内側に向かって突出し前記嵌合方向に延びる誤嵌合防止リブと、が設けられ、前記第二ハウジングには、前記誤嵌合防止リブの突出方向に凹む嵌合凹部が設けられるとともに、前記突出方向に凹む嵌合溝を備えた誤嵌合防止部材が取り付けられ、前記嵌合凹部は、前記嵌合方向に交差する交差方向に所定の幅を備え、前記収容部内で前記誤嵌合防止リブを受け入れ、前記嵌合溝は、前記嵌合凹部の前記幅内で前記誤嵌合防止リブと嵌合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ハウジングの作製コストを低減しつつ、誤嵌合を防止するハウジングの嵌合構造を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る嵌合構造を構成する第一ハウジングの斜視図。
【
図2】第一ハウジングに対応する第二ハウジングの斜視図。
【
図3】第二ハウジングとフロントリテーナの分解斜視図。
【
図4】第二ハウジングとサイドリテーナの分解斜視図。
【
図5】
図2の第二ハウジングを前側から見た正面図。
【
図6】(A)は、
図2の第二ハウジングを右方向から見た側面図であり、(B)は、
図2の第二ハウジングを左方向から見た側面図。
【
図7】嵌合した状態にある第一ハウジング及び第二ハウジングを後側から見た背面図。
【
図8】(A)は、接続開始時のハウジングを
図7のA-A線の位置で切断した場合の矢視断面図であり、(B)は、接続開始時のハウジングを
図7のB-B線の位置で切断した場合の矢視断面図。
【
図10】(A)は、接続途中のハウジングを
図7のA-A線の位置で切断した場合の矢視断面図であり、(B)は、接続途中のハウジングを
図7のB-B線の位置で切断した場合の矢視断面図。
【
図12】(A)は、接続途中のハウジングを
図7のA-A線の位置で切断した場合の矢視断面図であり、(B)は、接続途中のハウジングを
図7のB-B線の位置で切断した場合の矢視断面図。
【
図13】(A)は、接続が完了した状態のハウジングを
図7のA-A線の位置で切断した場合の矢視断面図であり、(B)は、接続が完了した状態のハウジングを
図7のB-B線の位置で切断した場合の矢視断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、接続構造の一実施の形態を
図1~
図13に基づいて説明する。なお、本実施の形態では、図面において、矢印X、矢印Y、矢印Zは、互いに直交する方向である。矢印Xは、嵌合構造1を構成する第一コネクタの第一ハウジング10と、第一コネクタに接続される第二コネクタの第二ハウジング20と、の嵌合方向を示す。本明細書では、この嵌合方向を「前後方向X」と記し、前後方向Xの一方を「前側X1」、他方を「後側X2」とする。矢印Yは、第一ハウジング10及び第二ハウジング20の幅方向を示す。幅方向は「左右方向Y」と記し、左右方向Yの一方を「左側Y1」、他方を「右側Y2」とする。矢印Zは、第一ハウジング10及び第二ハウジング20の高さ方向を示す。この高さ方向は、前後方向Xに交差する交差方向である。交差方向は「上下方向Z」と記し、上下方向Zの一方を「上側Z1」、他方を「下側Z2」とする。なお、これら方向の定義は、あくまでも説明の便宜のためのものであり、実際の使用状態における第一ハウジング10及び第二ハウジング20の方向を限定するものではない。
【0010】
嵌合構造1は、第一ハウジング10と第二ハウジング20とを、前後方向Xに沿って嵌合するための構造である。
図1は、本発明の一実施形態に係る第一ハウジング10の斜視図である。第一ハウジング10は、第一コネクタとしてのオスコネクタを構成する。第一ハウジング10は、樹脂製の材料等を用いて矩形箱状に形成されている。第一ハウジング10の内部には、前後方向Xに延びて後側X2に開口する収容部11が形成されている。収容部11は、第二ハウジング20を収容する部分であり、略直方体状の空間で構成されている。第一ハウジング10の上側Z1の壁面には、下側Z2に向かって突出する第一位置決め突起12が形成されている。第一位置決め突起12は、左右方向Yに間隔をあけて2個形成されている。第一位置決め突起12は、第二ハウジング20の後述する位置決め溝21に嵌合する突起であり、この嵌合によって第一ハウジング10に対する第二ハウジング20の、左右方向Yの位置が決まることとなる。
【0011】
第一ハウジング10の前側X1の壁面には、前後方向Xに貫通するタブ挿入孔14が形成されている。このタブ挿入孔14には、オス端子13(相手端子)の先端部を構成するタブが、後側X2に向かって挿入されている(
図12(B)参照)。オス端子13のタブは、収容部11内で後側X2に延びている。本実施形態では、オス端子13は、左右方向Yに三個並び、上下方向Zに四個並んで配置されており、合計12個のオス端子13が収容部11に収容されることから、タブ挿入孔14もそれに対応して12個形成されている。収容部11の前側X1の壁面において、上側Z1二段のタブ挿入孔14が形成される部分と、下側Z2二段のタブ挿入孔14が形成される部分との間には、後側X2に向かって突出する第二位置決め突起15が形成されている。
【0012】
第二位置決め突起15は、左右方向Yに延びる矩形板状の部材で構成されており、第二ハウジング20の後述する位置決め孔25と、後述するフロントリテーナ30の位置決め孔35に挿入可能となっている。そして、第二位置決め突起15が位置決め孔25と位置決め孔35に挿入されることで、第一ハウジング10に対する第二ハウジング20の、左右方向Y及び上下方向Zの位置が決まる。収容部11の左側Y1及び右側Y2の壁面には、収容部11の内側に向かってそれぞれ左右方向Y(突出方向)に突出し、前後方向Xに延びる誤嵌合防止リブ16が形成されている。誤嵌合防止リブ16は、後述する嵌合溝37に嵌合する部分であり、第一ハウジング10に対応しない他のハウジング(例えば、嵌合溝37の位置が本実施形態とは異なるハウジング等)が第一ハウジング10に嵌合することを防止している。
【0013】
誤嵌合防止リブ16は、収容部11の左側Y1の壁面から右側Y2に向かって突出する第一リブ17と、収容部11の右側Y2の壁面から左側Y1に向かって突出する第二リブ18と、を備えている。第一リブ17は、突出端部が平坦な断面矩形状に形成され、収容部11の左側Y1の壁面における前側X1の端部から後側X2の端部まで前後方向Xに延びている。第二リブ18は、第一リブ17と同形状に形成され、収容部11の右側Y2の壁面における前側X1の端部から後側X2の端部まで前後方向Xに延びている。第二リブ18は、第一リブ17と比べて、上側Z1に位置している。
【0014】
第二ハウジング20は、上述したオスコネクタに接続される第二コネクタとしてのメスコネクタを構成するハウジングである。第二ハウジング20は、樹脂製の材料等を用いて第一ハウジング10の収容部11に収容可能な矩形箱状に形成されている。第二ハウジング20は、
図2に示すように、前側X1の端部を覆うフロントリテーナ30(誤嵌合防止部材)と、下側Z2及び左右方向Y両側を覆うサイドリテーナ40と、が着脱可能に取り付けできるように構成されている。
図3に示すように、第二ハウジング20の上側Z1の壁面には、下側Z2に凹む位置決め溝21が形成されている。位置決め溝21は、上述した第一位置決め突起12が嵌合する部分であり、第一位置決め突起12に対応するように、左右方向Yに間隔をあけて2個形成されている。第二ハウジング20の内部には、前後方向Xに貫通する端子収容室22が形成されている。端子収容室22は、後側X2から前側X1に向かって挿入されるメス端子23(端子)を収容する部分であり(
図7参照)、上述したオス端子13に対応するように、左右方向Yに三個、上下方向Zに四個並んで、合計12個形成されている。
【0015】
図12(B)に示すように、端子収容室22の内部には、下側Z2の壁部から前側X1に向かって斜めに立ち上がるランス24が形成されており、ランス24がメス端子23を係止することでメス端子23の前後方向Xへの抜けを防止している。
図3に示すように、第二ハウジング20の前側X1の壁面において、上側Z1二段の端子収容室22が形成される部分と、下側Z2二段の端子収容室22が形成される部分との間には、前後方向Xに貫通する位置決め孔25が形成されている。この位置決め孔25は、上述した第一ハウジング10の第二位置決め突起15が挿入される部分であり、第二位置決め突起15とともに、第一ハウジング10に対する第二ハウジング20の、左右方向Y及び上下方向Zの位置を決定している。
【0016】
第二ハウジング20の左側Y1及び右側Y2の側壁(側部)の前側X1部分には、左右方向Y内方に凹み、上下方向Zに延びるガイド溝26が形成されている。このガイド溝26は、フロントリテーナ30を取り付ける際に、フロントリテーナ30がその取付方向である上下方向Zに沿って移動するようにフロントリテーナ30を案内する部分であり、下側Z2に開口している。第二ハウジング20の下側Z2部分には、下側Z2及び左右方向Yに開口するように、矩形状に切り欠かれた取付部27が形成されている。取付部27は、
図4に示すように、サイドリテーナ40を取り付ける部分である。第二ハウジング20の左右方向Y両側壁において、取付部27の上側Z1部分には、サイドリテーナ40を係止する係止突起28が形成されている。係止突起28は、サイドリテーナ40を第二ハウジング20に係止するための突起であり、サイドリテーナ40の不図示の被係止部を係止している。これにより、サイドリテーナ40が第二ハウジング20に接続された状態が維持される。
【0017】
第二ハウジング20の左右方向Y両側壁には、左右方向Y内方に凹む嵌合凹部29が形成されている。嵌合凹部29は、収容部11内で、上述した第一ハウジング10の誤嵌合防止リブ16を受け入れる凹部である。嵌合凹部29は、第二ハウジング20の上側Z1の壁部と側壁との境を上端とし、上下方向Zに所定の幅を備えて構成されている。所定の幅とは、誤嵌合防止リブ16の上下方向Zの幅よりも大きな幅のことをいう。嵌合凹部29は、第二ハウジング20の左側Y1の側壁に形成される第一凹部29aと、第二ハウジング20の右側Y2の側壁に形成される第二凹部29bと、で構成されている。第一凹部29aは、収容部11内で、誤嵌合防止リブ16のうちの第一リブ17を受け入れる。第二凹部29bは、収容部11内で、誤嵌合防止リブ16のうちの第二リブ18を受け入れる。
【0018】
フロントリテーナ30(誤嵌合防止部材)は、第二ハウジング20の前側X1の端部(嵌合方向の一方側の端部)に取り付けられてメス端子23の抜け止めをする部材である。
図3に示すように、フロントリテーナ30は、左右方向Y及び上下方向Zに延在する矩形板状の前壁31と、前壁31の左右方向Y両端部から後側X2に突出する側壁32と、を備えている。前壁31には、第二ハウジング20の端子収容室22が形成される位置と前後方向Xに対向する位置に、前後方向Xに貫通する端子挿入孔33が形成されている。すなわち、前壁31には、合計12個の端子挿入孔33が形成されている。端子挿入孔33は、外部から端子収容室22に連通する部分であり、第一ハウジング10と第二ハウジング20を嵌合させる際に、第一ハウジング10のオス端子13が外側から内側に向かって挿通することとなっている。
【0019】
端子挿入孔33の前側X1の開口縁部には、端子挿入孔33の中心部に向かって傾斜する傾斜面34が形成されている。傾斜面34は、オス端子13を端子収容室22に挿入する際に、オス端子13のタブの先端部に摺接することでオス端子13を端子挿入孔33内に案内する部分である。傾斜面34が形成されていることで、相手端子は、端子挿入孔33の外部に衝突することなく、端子収容室22内に正確に案内される。前壁31において、上側Z1二段の端子収容室22が形成される部分と、下側Z2二段の端子収容室22が形成される部分との間には、前後方向Xに貫通する位置決め孔35が形成されている。この位置決め孔35は、上述した第二ハウジング20の位置決め孔25と同様に第一ハウジング10の第二位置決め突起15が挿入される部分である。位置決め孔35は、位置決め孔25及び第二位置決め突起15とともに、第一ハウジング10に対する第二ハウジング20の、左右方向Y及び上下方向Zの位置を決定している。
【0020】
フロントリテーナ30の側壁32の後側X2の端部には、左右方向Y内方に向かって突出する爪状のガイド突起36が形成されている。ガイド突起36は、第一ハウジング10のガイド溝26の下側Z2の開口から上側Z1に向かって挿入され、上下方向Zにスライド移動可能となっている。これにより、フロントリテーナ30は、上側Z1にスライド移動しながら、第二ハウジング20に取り付けられ、下側Z2にスライド移動しながら第二ハウジング20から取り外される。すなわち、フロントリテーナ30は、第二ハウジング20に対して上下方向Zに沿って着脱される。
【0021】
フロントリテーナ30の側壁32には、左右方向Y内方に凹む嵌合溝37が形成されている。嵌合溝37は、第二ハウジング20が第一ハウジング10に嵌合した際に、嵌合凹部29の幅内で誤嵌合防止リブ16と嵌合する部分である。この嵌合溝37は、誤嵌合防止リブ16に対応するように、
図5及び
図6にそれぞれ網掛けで示した嵌合凹部29の幅内(すなわち、嵌合凹部29の上端と下端との間の範囲内)のいずれかの位置に形成されている。具体的には、嵌合溝37は、誤嵌合防止リブ16のうち第一リブ17に対応する第一嵌合溝38と、誤嵌合防止リブ16のうち第二リブ18に対応する第二嵌合溝39と、を備えている。第一嵌合溝38は、
図6(B)に示すように、左側Y1の側壁32に形成され前後方向Xに開口している。第二嵌合溝39は、
図6(A)に示すように、右側Y2の側壁32に形成され、第一嵌合溝38よりも上側Z1に位置し、前後方向Xに開口している。
【0022】
サイドリテーナ40は、第二ハウジング20の取付部27に取り付けられる部材である。このサイドリテーナ40は、端子収容室22に挿入されたメス端子23の抜け止めを行う部分であり、取付部27内で、仮係止位置と、本係止位置と、に変位可能に固定されている。サイドリテーナ40は、矩形箱状の本体41と、本体41の左右方向Y両端に設けられる板状のサイドアーム42と、を備えている。本体41には、端子収容室22に連通する仮収容室43が形成されている。仮収容室43は、サイドリテーナ40が仮係止位置にある状態で、その中心軸が端子収容室22の中心軸と同軸となり、メス端子23を前後方向Xに挿通させる。
【0023】
一方、サイドリテーナ40が本係止位置にある状態では、その中心軸が端子収容室22の中心軸と異なることで、メス端子23を挿脱不能にするようになっている。これによれば、サイドリテーナ40を本係止位置に移動させることで、誤ってメス端子23を挿入することが防止されるとともに、既に仮収容室43内にあるメス端子23が前後方向Xに抜けることが防止される。サイドアーム42は、前後方向X及び上下方向Zに延在する板状に形成されている。サイドアーム42は、第二ハウジング20の係止突起28に係止される部分であり、サイドリテーナ40を取付部27に取り付けた状態で、係止突起28に係止され、第二ハウジング20の側壁における下側Z2の部分を覆っている。
【0024】
次に、第一ハウジング10と第二ハウジング20の嵌合について説明する。まず、オス端子13を収容した第一ハウジング10とメス端子23を収容した第二ハウジング20とを前後方向Xに対向させ、
図8に示すように収容部11の開口に第二ハウジング20を前側X1の端部から前側X1に向かって嵌合させていく。この際、
図9に示すように、第一ハウジング10の第一リブ17の後側X2の端部がフロントリテーナ30の第一嵌合溝38に嵌合していく。また、図示はしないが、第二リブ18の後側X2の端部がフロントリテーナ30の第二嵌合溝39に嵌合していく。なお、ここで、第一ハウジング10に対応しないハウジング、すなわち第一嵌合溝38及び第二嵌合溝39を有しないハウジングや、第一嵌合溝38及び第二嵌合溝39の形状や配置の異なるハウジングを第一ハウジング10に嵌合させることはできない。第一リブ17及び第二リブ18がその対応しないハウジングに引っかかることで、それ以上、そのハウジングを第一ハウジング10側に移動させることができないからである。
【0025】
さらに、第二ハウジング20を第一ハウジング10に挿入していくと、
図10(B)に示すように、第一ハウジング10の第二位置決め突起15の後側X2の端部が、フロントリテーナ30の位置決め孔35に挿入され始める。これにより、第一ハウジング10に対する第二ハウジング20の、左右方向Y及び上下方向Zの位置が決まる。そして、
図11に示すように、オス端子13の後側X2の端部が、前側X1から後側X2に向かって端子挿入孔33に挿入され始める。この際、端子挿入孔33の傾斜面34にオス端子13のタブの先端部が摺接し、これによってオス端子13が傾斜面34に案内されながら、端子挿入孔33に挿入されていく。そして、第二ハウジング20の前側X1の端部が、収容部11の前側X1の内壁面に当接すると、第一ハウジング10と第二ハウジング20の嵌合が完了する。
【0026】
以上、上述した一実施の形態によれば、嵌合構造1は、第一コネクタの第一ハウジング10と、第一コネクタに接続される第二コネクタの第二ハウジング20とを、前後方向X(嵌合方向)に沿って嵌合する構造である。第一ハウジング10には、後側X2に開口し第二ハウジング20を収容する収容部11と、収容部11の内側に向かって突出し前後方向Xに延びる誤嵌合防止リブ16と、が設けられる。第二ハウジング20には、誤嵌合防止リブ16の突出方向に凹む嵌合凹部29が設けられるとともに、突出方向に凹む嵌合溝37を備えたフロントリテーナ30(誤嵌合防止部材)が取り付けられている。嵌合凹部29は、上下方向Zに所定の幅を備え、収容部11内で誤嵌合防止リブ16を受け入れている。嵌合溝37は、嵌合凹部29の幅内で誤嵌合防止リブ16と嵌合する。
【0027】
このような一実施の形態によれば、フロントリテーナ30の嵌合溝37と誤嵌合防止リブ16とを嵌合させながら、第一ハウジング10と第二ハウジング20とを前後方向Xに嵌合させることができる。これにより、第一ハウジング10と第二ハウジング20の誤嵌合を防止することができる。また、嵌合溝37は、第二ハウジング20の嵌合凹部29における幅内のいずれかの位置で誤嵌合防止リブ16に嵌合することができる。このため、嵌合凹部29の幅内で、誤嵌合防止リブ16と嵌合溝37の嵌合する位置や形状のパターンを複数用意することができる。これによれば、例えば、第一ハウジング10の種類が変わって誤嵌合防止リブ16の配置や形状が異なることとなった場合、嵌合溝37の配置や形状を変更したフロントリテーナ30を第二ハウジング20に取り付けることで、種類が変わった第一ハウジング10に対応する第二ハウジング20を用意することができる。このように、第二ハウジング20を新たに作製する必要がなくなり、金型の新規起工等の様々なコストが増大することを抑制することができる。したがって、第二ハウジング20(ハウジング)の作製コストを低減しつつ、誤嵌合を防止する嵌合構造を得ることができる。
【0028】
なお、予め、嵌合溝37の配置や形状のバリエーションを多様化した複数のフロントリテーナ30をセットで用意しておき、嵌合対象の第一ハウジング10の種類が変わる毎に、フロントリテーナ30を付け替えるようにしてもよい。これによれば、取り付けるフロントリテーナ30の種類を変更するだけで、第二ハウジング20を新たに作製することなく、第二ハウジング20を様々な種類の第一ハウジング10に取付可能とすることができる。なお、上述した一実施の形態では、誤嵌合防止部材としてフロントリテーナ30を用いたが、フロントリテーナ30以外の部材を誤嵌合防止部材とすることもできる。例えば、本実施形態のサイドリテーナ40のサイドアーム42等に、嵌合溝37を形成し、これを誤嵌合防止部材としてもよい。
【0029】
また、一実施の形態では、フロントリテーナ30を、上下方向Zに沿って着脱可能に設けた。このため、第一ハウジング10の収容部11に第二ハウジング20を収容する際に、嵌合溝37に誤嵌合防止リブ16が嵌合することで、上下方向Z、すなわちフロントリテーナ30の着脱方向に交差して誤嵌合防止リブ16が前後方向Xに延びることとなる。このため、フロントリテーナ30が上下方向Zに変位しようとしても、嵌合溝37の内壁が誤嵌合防止リブ16に当接することでその変位が規制される。このように、第一ハウジング10と第二ハウジング20との誤嵌合を防止する誤嵌合防止リブ16によって、フロントリテーナ30の変位を規制することができる。
【0030】
また、フロントリテーナ30に形成された端子挿入孔33の傾斜面34で相手端子を案内することで、オス端子13(相手端子)を端子挿入孔33の外部に衝突させることなく、端子収容室22内に正確に案内することができる。また、この際、上述のように嵌合溝37と誤嵌合防止リブ16との嵌合によってフロントリテーナ30の上下方向Zへの変位が規制される。このため、傾斜面34のオス端子13に対する位置が変位し難く、傾斜面34によるオス端子13の案内精度である、端子拾い性を向上させることができる。以上、本発明の一実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構造はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0031】
1 嵌合構造
10 第一ハウジング
11 収容部
16 誤嵌合防止リブ
20 第二ハウジング
29 嵌合凹部
30 フロントリテーナ(誤嵌合防止部材)
37 嵌合溝