(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134107
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】コネクタ、コネクタ製造装置、及びコネクタ製造方法
(51)【国際特許分類】
H01R 13/42 20060101AFI20240926BHJP
H01R 43/20 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
H01R13/42 F
H01R43/20
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044220
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 雅幸
(72)【発明者】
【氏名】久保田 浩正
【テーマコード(参考)】
5E063
5E087
【Fターム(参考)】
5E063HA05
5E063HA08
5E063HB13
5E063HB17
5E063HB19
5E063XA01
5E087EE11
5E087FF06
5E087FF12
5E087GG15
5E087GG26
5E087GG31
5E087GG32
5E087MM05
5E087QQ04
5E087RR26
5E087RR47
(57)【要約】
【課題】端子をハウジングに正確に挿入できる状態を、安定して維持することが可能なコネクタ、コネクタ製造装置、及びコネクタ製造方法を得ることを目的とする。
【解決手段】コネクタ1は、収容部61と、位置決めリブ63と、を備える治具2の収容部61に嵌合するハウジング20を備える。ハウジング20には、本係止位置と、仮係止位置と、に変位可能なサイドリテーナ50が設けられる。サイドリテーナ50には、本係止位置にある状態で位置決めリブ63に摺接可能なガイド面56が設けられる。ガイド面56は、サイドリテーナ50が前側X2に位置するほど、位置決めリブ63に対して下側Z2に位置する。ハウジング20の嵌合が完了した状態では、サイドリテーナ50は、仮係止位置に位置し、かつ位置決めリブ63と収容部61の内壁面とで高さ方向Zに挟まれて高さ方向Zへの変位を規制される。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向の一方側に開口する収容部と、前記収容部の内部で前記所定方向に交差する幅方向の内側に突出し前記所定方向に延びる位置決めリブと、を備えるコネクタ製造装置の前記収容部に嵌合するハウジング、を備えるコネクタであって、
前記ハウジングには、前記所定方向及び前記幅方向に交差する高さ方向の一方側の本係止位置と、前記高さ方向の他方側の仮係止位置と、に変位可能な係止部材が設けられ、
前記係止部材には、前記本係止位置にある状態で前記位置決めリブに摺接可能なガイド面が設けられ、
前記位置決めリブに摺接している前記ガイド面は、前記係止部材が前記所定方向の他方側に位置するほど、前記位置決めリブに対して前記高さ方向の他方側に位置し、
前記収容部への前記ハウジングの嵌合が完了した状態では、前記係止部材は、前記仮係止位置に位置し、かつ前記位置決めリブと前記収容部の内壁面とで前記高さ方向に挟まれて前記高さ方向への変位を規制されていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記係止部材は、前記ハウジングに着脱可能に設けられるとともに、前記ハウジングの前記幅方向の外側に位置するアーム部を備え、
前記ガイド面は、前記アーム部に設けられた前記高さ方向の一方側に向かうほど前記所定方向の一方側に位置する傾斜面であることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記位置決めリブは、前記収容部内で前記幅方向の両側に設けられ、
前記アーム部は、前記ハウジングの前記幅方向の両側に設けられていることを特徴とする請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記仮係止位置にある前記係止部材の、前記アーム部における前記高さ方向の一方側の端部から前記高さ方向の他方側の端部までの距離は、前記位置決めリブの前記高さ方向の他方側の端部である下面から前記収容部の前記高さ方向の他方側の内壁面までの距離以下であることを特徴とする請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
高さ方向の一方側の本係止位置と、前記高さ方向の他方側の仮係止位置と、に変位可能な係止部材が設けられたハウジングを嵌合させるように、前記高さ方向に交差する所定方向の一方側に開口する収容部、を備えるコネクタ製造装置であって、
前記収容部には、前記所定方向に交差する幅方向の内側に突出し、前記所定方向に延びる位置決めリブが設けられ、
前記位置決めリブは、前記係止部材が前記本係止位置にある場合に、前記係止部材に設けられたガイド面に摺接可能となり、
前記ガイド面に摺接している前記位置決めリブは、前記係止部材が前記所定方向の他方側に位置するほど、前記ガイド面に対して前記高さ方向の一方側に位置し、
前記収容部への前記ハウジングの嵌合が完了した状態では、前記位置決めリブは、前記収容部の内壁面との間で前記仮係止位置に位置する前記係止部材を前記高さ方向に挟み、前記係止部材が前記高さ方向の一方側へ変位することを規制していることを特徴とするコネクタ製造装置。
【請求項6】
請求項1に記載のコネクタ製造装置を用いてコネクタを製造するコネクタ製造方法であって、
前記ハウジングを前記収容部に対して前記所定方向に対向させる準備工程と、
前記準備工程の後に、前記ハウジングを前記収容部に嵌合させて、前記係止部材を前記仮係止位置に位置させるとともに前記位置決めリブと前記収容部の内壁面とで前記高さ方向に挟んで前記高さ方向への変位を規制する嵌合工程と、
前記嵌合工程の後に、前記ハウジングに端子を挿入する挿入工程と、
を備え、
前記準備工程において前記係止部材が前記本係止位置に位置していた場合、前記嵌合工程では、前記係止部材は、前記所定方向の他方側に変位するにしたがって、前記ガイド面を前記位置決めリブに摺接させながら前記仮係止位置に変位することを特徴とするコネクタ製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタ、コネクタ製造装置、及びコネクタ製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、治具によって係止部材としてのリテーナの位置を変更可能なコネクタが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のコネクタでは、前後方向に端子を挿入するハウジングの内部に、上下方向から箱状のリテーナが挿入されている。リテーナは、端子を挿入可能な仮係止位置と、挿入された端子を係止する本係止位置と、で上下方向に変位可能となっている。ハウジングの中央部には、前後方向に延びる係止用治具挿入孔が形成されている。係止用治具挿入孔には、先端に治具側テーパ部を有する棒状のリテーナ操作治具が挿入される。係止用治具挿入孔に挿入されたリテーナ操作治具の治具側テーパ部は、リテーナに形成されたリテーナ側テーパ部に摺接することで、本係止位置にあるリテーナを仮係止位置に変位させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したリテーナ操作治具は、端子の挿入方向に延びる棒状の工具である。そして、リテーナの変位の際には、この工具を係止用治具挿入孔の内部に挿入し、治具側テーパ部とリテーナ側テーパ部とを目視し難い状態で正確に摺接させる必要がある。このため、リテーナの変位を行う作業者の熟練度によっては、作業の精度がばらつき、リテーナを正確に仮係止位置に変位させることが難しい。また、箱状のリテーナを棒状の工具で変位させる構成上、リテーナに加わる力が偏って変位途中のリテーナの姿勢が不安定になる可能性がある。このため、リテーナを、正確に仮係止位置に変位させることが難しい。また、リテーナを仮係止位置に変位させた状態で、工具を係止用治具挿入孔から引き抜いた場合、コネクタを運搬する際などに仮係止位置に位置するリテーナが意図せず本係止位置に変位することがある。このため、ハウジングにおける端子が正確に挿入できる状態を維持することが困難となる。
【0005】
本発明の目的は、端子をハウジングに正確に挿入できる状態を、安定して維持することが可能なコネクタ、コネクタ製造装置、及びコネクタ製造方法を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決し目的を達成するために、コネクタは、所定方向の一方側に開口する収容部と、前記収容部の内部で前記所定方向に交差する幅方向の内側に突出し前記所定方向に延びる位置決めリブと、を備えるコネクタ製造装置の前記収容部に嵌合するハウジング、を備えるコネクタであって、前記ハウジングには、前記所定方向及び前記幅方向に交差する高さ方向の一方側の本係止位置と、前記高さ方向の他方側の仮係止位置と、に変位可能な係止部材が設けられ、前記係止部材には、前記本係止位置にある状態で前記位置決めリブに摺接可能なガイド面が設けられ、前記位置決めリブに摺接している前記ガイド面は、前記係止部材が前記所定方向の他方側に位置するほど、前記位置決めリブに対して前記高さ方向の他方側に位置し、前記収容部への前記ハウジングの嵌合が完了した状態では、前記係止部材は、前記仮係止位置に位置し、かつ前記位置決めリブと前記収容部の内壁面とで前記高さ方向に挟まれて前記高さ方向への変位を規制されていることを特徴とする。
【0007】
また、コネクタ製造装置は、高さ方向の一方側の本係止位置と、前記高さ方向の他方側の仮係止位置と、に変位可能な係止部材が設けられたハウジングを嵌合させるように、前記高さ方向に交差する所定方向の一方側に開口する収容部、を備えるコネクタ製造装置であって、前記収容部には、前記所定方向に交差する幅方向の内側に突出し、前記所定方向に延びる位置決めリブが設けられ、前記位置決めリブは、前記係止部材が前記本係止位置にある場合に、前記係止部材に設けられたガイド面に摺接可能となり、前記ガイド面に摺接している前記位置決めリブは、前記係止部材が前記所定方向の他方側に位置するほど、前記ガイド面に対して前記高さ方向の一方側に位置し、前記収容部への前記ハウジングの嵌合が完了した状態では、前記位置決めリブは、前記収容部の内壁面との間で前記仮係止位置に位置する前記係止部材を前記高さ方向に挟み、前記係止部材が前記高さ方向の一方側へ変位することを規制していることを特徴とする。
【0008】
また、コネクタ製造方法は、上述のコネクタ製造装置を用いてコネクタを製造するコネクタ製造方法であって、前記ハウジングを前記収容部に対して前記所定方向に対向させる準備工程と、前記準備工程の後に、前記ハウジングを前記収容部に嵌合させて、前記係止部材を前記仮係止位置に位置させるとともに前記位置決めリブと前記収容部の内壁面とで前記高さ方向に挟んで前記高さ方向への変位を規制する嵌合工程と、前記嵌合工程の後に、前記ハウジングに端子を挿入する挿入工程と、を備え、前記準備工程において前記係止部材が前記本係止位置に位置していた場合、前記嵌合工程では、前記係止部材は、前記所定方向の他方側に変位するにしたがって、前記ガイド面を前記位置決めリブに摺接させながら前記仮係止位置に変位することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、端子をハウジング内に正確に挿入できる状態を、安定して維持することが可能なコネクタ、コネクタ製造装置、及びコネクタ製造方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るコネクタの斜視図。
【
図2】ハウジングと、ハウジングの一部を構成するフロントリテーナの分解斜視図。
【
図3】ハウジングと、ハウジングの一部を構成するサイドリテーナの分解斜視図。
【
図5】治具に収容された状態のハウジングを後側から見た背面図。
【
図6】サイドリテーナを本係止位置に位置させて治具に嵌合している途中のハウジングを
図5のA-A線の位置で切断した断面図
【
図7】治具への挿入が完了した状態のハウジングを
図5のA-A線の位置で切断した断面図。
【
図8】(A)は、サイドリテーナを本係止位置に位置させて治具に嵌合している途中のハウジングを
図5のB-B線の位置で切断した断面図であり、(B)は、治具への挿入が完了した状態のハウジングを
図5のB-B線の位置で切断した断面図。
【
図10】(A)は、サイドリテーナを仮係止位置に位置させて治具に嵌合している途中のハウジングを
図5のA-A線の位置で切断した断面図であり、(B)は、治具への挿入が完了した状態のハウジングを
図5のA-A線の位置で切断した断面図。
【
図11】(A)は、サイドリテーナを仮係止位置に位置させて治具に嵌合している途中のハウジングを
図5のB-B線の位置で切断した断面図であり、(B)は、治具への挿入が完了した状態のハウジングを
図5のB-B線の位置で切断した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、コネクタ1、コネクタ製造装置としての治具2、及びコネクタ製造方法の一実施の形態を、
図1~
図11に基づいて説明する。なお、本実施の形態では、図面において、矢印X、矢印Y、矢印Zは、互いに直交する方向である。矢印Xは、コネクタ1と治具2が対向する所定方向を示す。本実施形態では、この所定方向を「前後方向X」と記し、前後方向Xの一方側を「後側X1」、他方側を「前側X2」と記す。矢印Yは、コネクタ1及び治具2の幅方向を示す。幅方向は、「幅方向Y」と記し、幅方向Yの一方側を「左側Y1」、他方側を「右側Y2」と記す。矢印Zは、コネクタ1及び治具2の高さ方向を示す。高さ方向は、「高さ方向Z」と記し、高さ方向Zの一方側を「上側Z1」、他方側を「下側Z2」と記す。なお、これら方向の定義は、あくまでも説明の便宜のためのものであり、実際の使用状態におけるコネクタ1及び治具2の方向を限定するものではない。
【0012】
図1は、コネクタ1の斜視図を示す。コネクタ1は、例えば、ハイブリッド車両に搭載されるインバータ等の装置と電源とを接続するワイヤハーネスの一部を構成するメスコネクタである。コネクタ1は、端子付き電線10(
図5参照)と、端子付き電線10のメス端子11(端子)を収容するハウジング20と、を備えている。端子付き電線10は、例えば、不図示の電線と、電線に接続されるメス端子11と、で構成されたシールド電線であり、本実施形態では、
図5に示すように、幅方向Yに3個並び、高さ方向Zに4個並ぶようにして、合計12個用意されている。
図1に示すように、ハウジング20は、箱状の本体部30と、本体部30の前端部に取り付けられるフロントリテーナ40と、本体部30の幅方向Y両側壁及び下壁を覆うように本体部30に取り付けられるサイドリテーナ50(係止部材)と、を備えている。
【0013】
図2に示すように、本体部30は、樹脂製の材料を用いて、略矩形箱状に形成されている。本体部30の内部には、前後方向Xに貫通する端子収容室31が形成されている。端子収容室31は、後側X1から前側X2に向かって挿入されるメス端子11を収容する部分であり、本実施形態のメス端子11の数に合わせて幅方向Yに三個並び、高さ方向Zに四個並んで、合計12個形成されている。端子収容室31の内部には、下側Z2の壁部から前側X2に向かって斜めに立ち上がるランス32(
図8(A)等参照)が形成されており、ランス32がメス端子11を係止することでメス端子11の前後方向Xへの抜けが防止されている。
図2に示すように、本体部30の内部において、上側Z1二段の端子収容室31が形成される部分と、下側Z2二段の端子収容室31が形成される部分との間には、前後方向Xに貫通する位置決め孔33が形成されている。位置決め孔33は、後述する治具2の規制突起62が挿入される部分であり、規制突起62とともに、治具2の内部におけるハウジング20の、幅方向Y及び高さ方向Zの位置を決定している。
【0014】
本体部30の左側Y1及び右側Y2の側壁の前側X2部分には、幅方向Y内側に凹み、高さ方向Zに延びるガイド溝34がそれぞれ形成されている。このガイド溝34は、フロントリテーナ40を取り付ける際に、フロントリテーナ40がその取付方向である高さ方向Zに沿って移動するようにフロントリテーナ40を案内する部分であり、下側Z2に開口している。本体部30の下側Z2部分には、下側Z2及び幅方向Yに開口するように、矩形状に切り欠かれた取付部35が形成されている。取付部35は、
図3に示すサイドリテーナ50を取り付ける部分であり、本体部30の内部に連通している。本体部30の幅方向Y両側壁において、取付部35の上側Z1部分には、サイドリテーナ50を係止する係止突起36が形成されている。
【0015】
係止突起36は、サイドリテーナ50を本体部30に係止するための突起であり、サイドリテーナ50の不図示の被係止部を係止するように構成されている。係止突起36の上側Z1には、幅方向Y内側に凹む嵌合凹部37が形成されている。嵌合凹部37は、後述する治具2の収容部61内で、後述する位置決めリブ63を受け入れる凹部である。嵌合凹部37は、本体部30の上壁と側壁との境を上端とし、高さ方向Zに所定の幅を備えて構成されている。所定の幅とは、位置決めリブ63の高さ方向Zの幅よりも大きな幅のことをいう。
【0016】
フロントリテーナ40は、本体部30の前端部に取り付けられてメス端子11の抜け止め等を行う部材である。フロントリテーナ40は、本体部30の前端部に取り付けられてハウジング20の前壁を構成している。
図2に示すように、フロントリテーナ40は、幅方向Y及び高さ方向Zに延在する矩形板状の前壁41と、前壁41の幅方向Y両端部から後側X1に突出する側壁42と、を備えている。前壁41には、本体部30の端子収容室31が形成される位置と前後方向Xに対向する位置に、前後方向Xに貫通する端子挿入孔43が形成されている。すなわち、前壁41には、合計12個の端子挿入孔43が形成されている。端子挿入孔43は、外部から端子収容室31に連通する部分であり、端子収容室31内に配置されたメス端子11の接続対象である不図示のオス端子が、前側X2から後側X1に向かって挿入可能となっている。
【0017】
フロントリテーナ40の前壁41において、上側Z1二段の端子収容室31が形成される部分と、下側Z2二段の端子収容室31が形成される部分との間には、前後方向Xに貫通する位置決め孔44が形成されている。この位置決め孔44は、上述した本体部30の位置決め孔33と同様に治具2の規制突起62が挿入される部分である。位置決め孔44は、位置決め孔33及び規制突起62とともに、治具2の内部における、ハウジング20の、幅方向Y及び高さ方向Zの位置を決定している。フロントリテーナ40の側壁42の後側X1の端部には、幅方向Y内側に向かって突出する爪状のガイド突起45が形成されている。
【0018】
ガイド突起45は、上述したガイド溝34の下側Z2の開口から上側Z1に向かって挿入され、高さ方向Zにスライド移動可能となっている。これにより、フロントリテーナ40は、上側Z1にスライド移動しながら本体部30に取り付けられ、下側Z2にスライド移動しながら本体部30から取り外される。このように、フロントリテーナ40は、本体部30に対し、高さ方向Zに沿って着脱可能となっている。フロントリテーナ40の両側壁42には、幅方向Y内側に凹む嵌合溝46がそれぞれ形成されている。嵌合溝46は、本体部30が治具2に嵌合する際に、嵌合凹部37の幅内で位置決めリブ63と嵌合する部分である。この嵌合溝46は、位置決めリブ63に対応するように、位置決めリブ63の突出方向に凹み、嵌合凹部37の幅内(すなわち、嵌合凹部37の上端と下端との間の範囲内)のいずれかの位置に形成されている。
【0019】
サイドリテーナ50は、端子収容室31に挿入されたメス端子11の抜け止め等を行う係止部材であり、本体部30の取付部35に着脱可能に取り付けられている。サイドリテーナ50は、取付部35内に位置し、本体部30に対して、上側Z1の本係止位置と、下側Z2の仮係止位置と、に変位可能(すなわち、高さ方向Zに変位可能)に接続されている。
図3に示すように、サイドリテーナ50は、矩形箱状の本体51と、本体51の幅方向Y両側に設けられるサイドアーム52(アーム部)と、を備えている。本体51には、サイドリテーナ50が取付部35に取り付けられた状態で端子収容室31に連通する仮収容室53が形成されている。仮収容室53は、
図8(A)に示すように、サイドリテーナ50が本係止位置にある状態では、前後方向Xに延びる中心軸が同方向に延びる端子収容室31の中心軸よりも上側Z1にずれている。
【0020】
この状態では、端子収容室31内にメス端子11を挿入しても、サイドリテーナ50の位置する部分でメス端子11がサイドリテーナ50の外壁面等に当接し、その挿入が完了しないようになっている。また、既に端子収容室31及び仮収容室53内にメス端子11が挿入された状態では、サイドリテーナ50の下壁がメス端子11を上向きに押圧することで、抜け止めとして機能するようになっている。すなわち、サイドリテーナ50が本係止位置に位置する状態では、端子収容室31へのメス端子11の挿脱が規制される。一方、
図8(B)及び
図9に示すように、サイドリテーナ50が仮係止位置にある状態では、仮収容室53の前後方向Xに延びる中心軸が、同方向に延びる端子収容室31の中心軸と略同軸となっている。これによれば、メス端子11を端子収容室31に挿入しても、メス端子11がサイドリテーナ50の外壁面等に当接することがないため、メス端子11を端子収容室31に対して前後方向Xに抜き差しできるようになっている。すなわち、サイドリテーナ50が仮係止位置に位置する状態では、端子収容室31へのメス端子11の挿脱が可能となる。
【0021】
サイドアーム52は、
図3に示すように、本体51の幅方向Y両側にそれぞれ設けられている。すなわち、サイドアーム52は、ハウジング20における幅方向Yの外側に配置される。サイドアーム52は、本体51の幅方向Y両側壁から幅方向Y外側に突出する接続部54と、接続部54に連続し前後方向X及び高さ方向Zに延在する板状のカバー部55と、を備えている。接続部54は、幅方向Yに延びて本体51とカバー部55とを接続している。カバー部55は、サイドリテーナ50が取付部35に取り付けられた際に、本体部30の幅方向Y両側壁における下側Z2部分を覆うように、平板状に形成されている。
【0022】
カバー部55の幅方向Y内側の壁面には、不図示の被係止部が形成されており、この被係止部は、サイドリテーナ50が取付部35に取り付けられた際に、本体部30の係止突起36に係止される。この係止により、サイドリテーナ50は、本体部30に対して本係止位置と仮係止位置とに変位可能に接続される。カバー部55の前縁及び上縁を接続する部分には、ガイド面56が形成されている。ガイド面56は、
図6に示すように、サイドリテーナ50が、本係止位置にある状態で後述する位置決めリブ63の後端部に摺接可能となる面である。ガイド面56は、上側Z1に向かうほど後側X1に位置するように傾斜した傾斜面で構成されている。
【0023】
次に、コネクタ1の治具2について説明する。治具2は、コネクタ1を製造する際に使用されるコネクタ製造装置である。具体的には、治具2は、サイドリテーナ50の位置を決めるために用いられる。
図4に示すように、治具2は、樹脂製の材料を用いて矩形箱状に形成された治具本体60を備えている。治具本体60の内部には、収容部61が形成されている。収容部61は、対向する位置に配置したコネクタ1のハウジング20を前後方向Xに嵌合させる部分であり、本実施形態では、後側X1に向かって開口している。収容部61の前壁における高さ方向Z中央部には、後側X1に向かって突出する規制突起62が形成されている。規制突起62は、幅方向Yに延びる矩形板状の部材で構成されており、上述したハウジング20の本体部30に形成された位置決め孔33と、フロントリテーナ40に形成された位置決め孔44と、に挿入可能となっている。
【0024】
収容部61の左側Y1及び右側Y2の内壁面には、収容部61の内側に向かってそれぞれ幅方向Yに突出し、前後方向Xに延びる位置決めリブ63が形成されている。位置決めリブ63は、ハウジング20が収容部61に嵌合する際に、上述したフロントリテーナ40の嵌合溝46に嵌合する部分である。また、位置決めリブ63は、仮係止位置に位置するサイドリテーナ50を、後述する第二下面65(内壁面)との間で高さ方向Zに挟んで、サイドリテーナ50の高さ方向Zへの変位を規制する部分である。位置決めリブ63は、突出端部が平坦な断面矩形状に形成されており、この突出端部は、本係止位置にあるサイドリテーナ50のガイド面56に摺接可能となっている。また、位置決めリブ63の突出端部は、
図7に示すように、ハウジング20が収容部61に嵌合する際に、本体部30の嵌合凹部37に受け入れられている。
【0025】
収容部61の下壁は、前側X2部分を構成する第一下面64と、後側X1部分を構成する第二下面65と、で構成されている。
図7に示すように、第一下面64は、収容部61に嵌合したハウジング20におけるフロントリテーナ40の下面に当接し、この部分を支持している。第二下面65は、第一下面64よりも下側Z2に位置するように段状に形成され、
図7に示すように、仮係止位置にあるサイドリテーナ50の下面に当接し、この部分を支持している。そして、
図10(B)に示すように、位置決めリブ63の下面から第二下面65までの距離である規制距離D1は、仮係止位置にあるサイドリテーナ50の、サイドアーム52における上端から下端までの距離D2以上となるように調整されている。換言すると、仮係止位置にあるサイドリテーナ50の、サイドアーム52における上端から下端までの距離D2は、規制距離D1以下となっている。
【0026】
次に、治具2を用いたコネクタ製造方法について説明する。コネクタ製造方法では、治具2を用いてサイドリテーナ50を仮係止位置に位置させ、この状態で、メス端子11を端子収容室31に内に設置して挿脱不能とし、コネクタ1を製造する方法である。コネクタ製造方法は、準備工程と、準備工程の後に行われる嵌合工程と、嵌合工程の後に行われる挿入工程と、を備える。準備工程では、収容部61が後側X1に開口する姿勢で治具2を配置し、収容部61に対してフロントリテーナ40が前後方向Xに対向するようにハウジング20を配置する。なお、この際、フロントリテーナ40は、
図6に示すように、本係止位置に位置していてもよいし、
図10(A)に示すように仮係止位置に位置していてもよい。そして、次に嵌合工程を行う。
【0027】
嵌合工程では、ハウジング20を前側X2に移動させて収容部61に嵌合させる。この際、ハウジング20が収容部61内で前側X2に移動するにしたがって、ハウジング20の外側では、治具2の位置決めリブ63が、フロントリテーナ40の嵌合溝46に嵌合していく。なお、この際、嵌合溝46を有しないハウジング等、治具2に対応しないハウジングを収容部61に嵌合させようとした場合、位置決めリブ63がフロントリテーナ40の前壁に衝突等することで、その嵌合が規制される。すなわち、位置決めリブ63及び嵌合溝46は、ハウジング20と治具2の誤嵌合防止にも寄与している。また、位置決めリブ63が嵌合溝46に嵌合すると、フロントリテーナ40の着脱方向である高さ方向Zに交差して位置決めリブ63が延びることとなる。このため、位置決めリブ63は、治具2内でフロントリテーナ40が高さ方向Zに変位することを規制することにも寄与している。
【0028】
一方、ハウジング20の内側では、ハウジング20が前側X2に移動するにしたがって、
図8(A)に示すように、治具2の規制突起62が、フロントリテーナ40の位置決め孔44及び本体部30の位置決め孔33に挿入される。これにより、治具2の内部におけるハウジング20の、幅方向Y及び高さ方向Zの位置が決定し、より安定した状態でハウジング20の嵌合が行われる。そして、さらにハウジング20を前側X2に移動させる。ここで、上述した準備工程でフロントリテーナ40が本係止位置に位置していると、
図6に示すように位置決めリブ63の後端部(突出端部)がサイドアーム52におけるガイド面56に当接する。ここから、さらにハウジング20を前側X2に移動すると、サイドアーム52は、ガイド面56を位置決めリブ63の後端部に摺接させながら、徐々に下側Z2に変位する。
【0029】
すなわち、位置決めリブ63に摺接しているガイド面56は、サイドリテーナ50が前側X2に位置するほど、位置決めリブ63対して下側Z2に位置する。そして、サイドアーム52の変位に伴ってサイドリテーナ50自体が下側Z2に変位する。ハウジング20の前壁が、収容部61の前壁に当接するまでハウジング20を前側X2に移動すると、収容部61へのハウジング20の嵌合工程が完了する。嵌合工程が完了した状態では、
図7に示すように、サイドリテーナ50が仮係止位置に位置している。また、サイドリテーナ50のサイドアーム52が、収容部61の第二下面65と位置決めリブ63との間に挟まれて、高さ方向Zへの変位を規制されている。すなわち、サイドリテーナ50は、位置決めリブ63と収容部61の第二下面65とで高さ方向Zに挟まれて高さ方向Zへの変位を規制されている。なお、嵌合工程の前に、準備工程でサイドリテーナ50が仮係止位置に位置している場合には、
図10(A)及び(B)に示すように、サイドアーム52が、位置決めリブ63に当接しないまま、ハウジング20が前側X2に移動する。
【0030】
そして、ハウジング20の前壁が、収容部61の前壁に当接するまでハウジング20を前側X2に移動すると、収容部61へのハウジング20の嵌合工程が完了する。そして、この状態では、
図10(B)に示すように、サイドリテーナ50のサイドアーム52が、収容部61の第二下面65と位置決めリブ63との間に挟まれて、高さ方向Zへの変位を規制されている。このように、本実施形態によれば、サイドリテーナ50の位置が本係止位置にある場合と仮係止位置にある場合のいずれの場合も、ハウジング20を治具2に嵌合させることで、サイドリテーナ50の位置は、仮係止位置に位置することとなる。
【0031】
嵌合工程が完了した状態では、上述のとおり、サイドリテーナ50が位置決めリブ63と第二下面65とで高さ方向Zに挟まれて高さ方向Zへの変位を規制される。このため、
図9に示すように、ハウジング20の内側では、端子収容室31と、仮収容室53と、が連通し、かつ互いの中心軸が略同軸となり、前後方向Xに向かってメス端子11を挿入することが可能となる。この状態で挿入工程を行う。挿入工程では、メス端子11を端子収容室31の後側X1の開口端縁から前側X2に向かって挿入する。メス端子11は、仮収容室53を通過し、次いでランス32を下側Z2に弾性変形させながら前側X2に向かって挿入されていく。そして、メス端子11の挿入が完了すると、ランス32が弾性変形前の状態に復元し、メス端子11を係止する。これによって、メス端子11の前後方向Xへの抜けが防止される。
【0032】
さらに、この状態で、治具2からハウジング20を抜き出し、仮係止位置にあるサイドリテーナ50を本係止位置に変位させる。これにより、メス端子11は、仮収容室53の下面によって上向きに押圧され、これによって、さらに前後方向Xへの抜けが防止される。すなわち、メス端子11は、ランス32と、サイドリテーナ50と、で二重係止される。これにより、挿入工程が完了する。
【0033】
以上、上述した一実施形態によれば、治具2の収容部61にコネクタ1のハウジング20を嵌合させることで、本係止位置及び仮係止位置のいずれに位置するサイドリテーナ50も、仮係止位置に位置させることができる。そして、この際、サイドリテーナ50は、位置決めリブ63と第二下面65とで高さ方向Zに挟まれて高さ方向Zへの変位を規制されるので、仮係止位置に位置するサイドリテーナ50が意図せず変位し、本係止位置に位置することを防ぐことができる。このため、例えば、仮係止位置にサイドリテーナ50を位置させた状態でコネクタ1を出荷した際に、サイドリテーナ50が意図せず本係止位置に変位してしまい、メス端子11をハウジング20に挿入できない状態となっても、作業者は、サイドリテーナ50に直接手を当てて手直しをする必要がない。すなわち、治具2にハウジング20を嵌合させるだけで、サイドリテーナ50の位置を本係止位置から仮係止位置に変位させることができる。そして、サイドリテーナ50の本係止位置への変位を規制した状態で、ハウジング20に対してメス端子11(端子)を挿入することができる。また、ハウジング20を治具2に嵌合させるというシンプルな作業でサイドリテーナ50を仮係止位置に位置させることができるため、作業者の熟練度による作業の精度のばらつきや、サイドリテーナ50の姿勢の不安定化を抑制することができる。したがって、メス端子11をハウジング20に正確に挿入できる状態を、安定して維持することが可能なコネクタ1を得ることができる。
【0034】
また、ガイド面56は、サイドリテーナ50のサイドアーム52に形成することができるため、サイドリテーナ50に、改めてガイド面56に相当する面を有した部材等を設置する必要がなく、サイドリテーナ50の構造をシンプルにすることができる。
【0035】
また、本構成によれば、サイドアーム52及び位置決めリブ63は、幅方向Yの両側に設けられている。このため、ハウジング20の幅方向Yの両側に設けられたサイドアーム52を収容部61の幅方向Yの両側に設けられた位置決めリブ63に当接させ、サイドリテーナ50を仮係止位置に変位させることができる。また、幅方向Yの両側の位置決めリブ63により、仮係止位置に位置するサイドリテーナ50の変位を規制することができる。したがって、サイドリテーナ50に加わる力が幅方向Yの一方側に偏ることを防ぎ、これにより、変位途中のサイドリテーナ50の姿勢が不安定になることや、仮係止位置に位置するサイドリテーナ50が意図せず傾くこと等を防止することができる。
【0036】
また、本構成によれば、仮係止位置にあるサイドリテーナ50の、サイドアーム52における上端から下端までの距離D2は、位置決めリブ63の下面から第二下面65までの規制距離D1以下とした。このため、嵌合工程を行った際に、サイドリテーナ50を仮係止位置に位置させた状態で、確実に位置決めリブ63と第二下面65との間に配置することができる。これにより、治具2の操作性を向上することができる。
【0037】
そして、ハウジング製造方法によれば、準備工程、嵌合工程、挿入工程、というシンプルな工程を行うことで、サイドリテーナ50を仮係止位置に位置させ、かつその高さ方向Zへの変位を規制し、この状態でハウジング20にメス端子11を挿入することができる。
【0038】
以上、本発明の一実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構造はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。例えば、上述の一実施形態では、コネクタ1をメスコネクタとし、ハウジング20に挿入される端子をメス端子11としたが、これはあくまでも例示であり、コネクタ1は、オスコネクタであってもよく、端子はオス端子であってもよい。
【符号の説明】
【0039】
X 前後方向(所定方向)
X1 後側(所定方向の一方側)
X2 前側(所定方向の他方側)
Y 幅方向
Z 高さ方向
Z1 上側(高さ方向の一方側)
Z2 下側(高さ方向の他方側)
1 コネクタ
2 治具(コネクタ製造装置)
20 ハウジング
50 サイドリテーナ(係止部材)
56 ガイド面
61 収容部
63 位置決めリブ
65 第二下面(内壁面)