(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134108
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/533 20060101AFI20240926BHJP
【FI】
H01R13/533 A
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044221
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】山口 康弘
(72)【発明者】
【氏名】水野 英樹
(72)【発明者】
【氏名】青島 信輔
【テーマコード(参考)】
5E087
【Fターム(参考)】
5E087EE07
5E087EE10
5E087FF07
5E087MM05
5E087MM12
5E087PP03
5E087QQ04
5E087RR07
(57)【要約】
【課題】端子の温度上昇を抑制できるコネクタを提供する。
【解決手段】コネクタ1は、電気自動車等の車体に取り付けられ、充電スタンドなどに備わった充電プラグと嵌合されて車載バッテリを充電するためのものである。コネクタ1は、一端側に雌ねじ部32が形成され、他端側に雌型の嵌合部31が形成された端子3と、電線2の端末に接続され、端子3の一端に重ねられた丸形端子6と、丸形端子6に重ねられた蓄熱材7と、蓄熱材7のボルト挿通孔71及び丸形端子6のボルト挿通孔61aを通された状態で雌ねじ部32に螺合して、端子3、丸形端子6、及び蓄熱材7を共締めしたボルト9と、これらを収容したハウジング4と、を備えている。コネクタ1に充電プラグが嵌合されて充電が開始されると、嵌合部31等から発熱が生じるが、この熱が丸形端子6を介して蓄熱材7に蓄熱されることで端子3の温度上昇が抑制される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側に雌ねじ部が形成された端子と、
電線の端末に接続され、前記端子の一端に重ねられた丸形端子と、
前記丸形端子に重ねられた蓄熱材と、
前記蓄熱材に形成されたボルト挿通孔及び前記丸形端子に形成されたボルト挿通孔を通された状態で前記雌ねじ部に螺合して、前記端子、前記丸形端子、及び前記蓄熱材を共締めしたボルトと、
これらを収容したハウジングと、を備えている
ことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
一端側に雌ねじ部が形成された第2の端子と、
電線の端末に接続された第2の丸形端子と、
前記第2の丸形端子に接続され、前記第2の端子の一端に重ねられたバスバと、
前記バスバに重ねられた第2の蓄熱材と、
前記第2の蓄熱材に形成されたボルト挿通孔及び前記バスバに形成されたボルト挿通孔を通された状態で前記雌ねじ部に螺合して、前記第2の端子、前記バスバ、及び前記第2の蓄熱材を共締めした第2のボルトと、を備えている
ことを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記蓄熱材は、前記第2の蓄熱材よりも体積が小さく、前記第2の蓄熱材よりも単位体積あたりの熱容量が大きな材質で構成されている
ことを特徴とする請求項2に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気自動車、ハイブリッド自動車等の車体には、当該車体に搭載されたバッテリを充電するためのコネクタが取り付けられている(例えば特許文献1参照)。このコネクタは、充電スタンドなどに備わった充電プラグと嵌合されるものであり、電線の端末に接続された端子と、端子を収容したハウジングと、を備えている。このようなコネクタは、「充電インレット」と呼称されることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記コネクタにおいては、バッテリの大容量化や充電時間短縮のニーズにより大電流化が進んでおり、充電を行う際、充電プラグとの接点部や電線との接続部などの抵抗が高い部位からの発熱により端子の温度が急激に上昇してしまうという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、端子の温度上昇を抑制できるコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、一端側に雌ねじ部が形成された端子と、電線の端末に接続され、前記端子の一端に重ねられた丸形端子と、前記丸形端子に重ねられた蓄熱材と、前記蓄熱材に形成されたボルト挿通孔及び前記丸形端子に形成されたボルト挿通孔を通された状態で前記雌ねじ部に螺合して、前記端子、前記丸形端子、及び前記蓄熱材を共締めしたボルトと、これらを収容したハウジングと、を備えていることを特徴とするコネクタである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、端子の温度上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態にかかるコネクタを示す斜視図である。
【
図4】本発明の第2実施形態にかかるコネクタを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1実施形態にかかる「コネクタ」について、
図1~3を参照して説明する。
【0010】
図1~3に示すコネクタ1は、電気自動車、ハイブリッド自動車等の車体に取り付けられるものであり、充電スタンドなどに備わった充電プラグと嵌合されて車載バッテリを充電するためのものである。本コネクタ1は、「充電インレット」と呼称されることもある。
【0011】
コネクタ1は、端子3と、電線2の端末に接続された丸形端子6と、丸形端子6に重ねられた蓄熱材7と、ボルト9と、これらを収容したハウジング4と、ゴム栓51と、ホルダ52,53と、を備えている。
【0012】
また、本例のコネクタ1は、2本の電線2と接続されている。このため、コネクタ1は、端子3、丸形端子6、蓄熱材7、ボルト9を2つずつ備えている。これら2つの端子3、2つの丸形端子6、2つの蓄熱材7、2つのボルト9は同一部品である。
【0013】
ゴム栓51は、電線2の外周に装着されてハウジング4の内面と電線2の外面との間をシールするためのものである。ホルダ53は、ゴム栓51のハウジング4からの脱落を防止するためのものである。このように、ゴム栓51によってシールされたコネクタ1は、ハウジング4内に熱が籠りやすい構造となっている。
【0014】
電線2は、芯線21と絶縁被覆22を備えた丸形電線である。電線2の端末においては、絶縁被覆22が除去されて芯線21が露出している。この芯線21の露出部には、丸形端子6の電線接続部62が電気接続されている。
【0015】
端子3は、一端側に雌ねじ部32が形成され、他端側に雌型の嵌合部31が形成されている。雌ねじ部32は、端子3の一端から凹に形成された穴33と、穴33の内周面に螺旋状に切られたねじと、を備えている。この雌ねじ部32にはボルト9が螺合する。嵌合部31は、充電プラグに備わった相手端子と嵌合される。
【0016】
丸形端子6は、板状に形成され、中央にボルト挿通孔61aが形成された接続部61と、電線接続部62と、を備えている。接続部61は、端子3の一端に重ねられて端子3に電気接続されている。丸形端子6は、「LA端子」と呼称されることもある。
【0017】
蓄熱材7は、
図3に示すように、ブロック状に形成されており、丸形端子6の接続部61に重ねられる平坦面を備えている。また、蓄熱材7には、ボルト挿通孔71が形成されている。蓄熱材7は、端子3との間に接続部61を挟んでいる。
【0018】
ボルト9は、蓄熱材7のボルト挿通孔71及び丸形端子6のボルト挿通孔61aを通された状態で端子3の雌ねじ部32に螺合して、端子3、丸形端子6、及び蓄熱材7を共締めしている。
【0019】
ハウジング4は、合成樹脂で構成されており、第1収容部41と、第2収容部42と、第3収容部43と、フランジ部44と、を備えている。
【0020】
第1収容部41は、端子3の嵌合部31を収容している。第1収容部41は、充電プラグを受け入れる。
【0021】
第2収容部42は、第1収容部41に隣接しており、端子3の雌ねじ部32と、丸形端子6の接続部61と、蓄熱材7と、ボルト9と、を収容している。第2収容部42は、第1収容部41と反対側に開口しており、ホルダ52がこの開口を塞いでいる。
【0022】
第3収容部43は、第2収容部42に隣接しており、丸形端子6の電線接続部62と、電線2の端末と、ゴム栓51と、を収容している。第3収容部43は、第2収容部42と反対側に開口しており、ゴム栓51及びホルダ53がこの開口を塞いでいる。
図3に示すように、第1収容部41と第2収容部42と第3収容部43は、L字型に繋がっている。
【0023】
フランジ部44は、第1収容部41の外周面から外方に延びている。フランジ部44は、車体にボルト固定される。
【0024】
このようなコネクタ1に充電プラグが嵌合されて充電が開始されると、抵抗が高い部位である端子3の嵌合部31等から発熱が生じるが、この熱が丸形端子6を介して蓄熱材7に蓄熱されることで端子3の温度上昇が抑制され、端子3の温度上昇の速度が遅くなる。このように蓄熱材7によって端子3の温度上昇を抑制できるので、冷却構造の追加や電線2の大径化を回避でき、コネクタ1のコストアップや重量アップを回避できる。また、ボルト9で端子3、丸形端子6、及び蓄熱材7を共締めしているので、ボルト9の軸力により各部品間の面圧を確保することができる。これにより、界面熱抵抗が下がり、端子3から蓄熱材7への伝熱性を向上させることができる。
【0025】
本発明の第2実施形態にかかる「コネクタ」について、
図4~6を参照して説明する。
図4~6において、第1実施形態と同一構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0026】
図4~6に示すコネクタ101は、第1実施形態と同じく、電気自動車、ハイブリッド自動車等の車体に取り付けられるものであり、充電スタンドなどに備わった充電プラグと嵌合されて車載バッテリを充電するためのものである。
【0027】
コネクタ101は、2つの端子103と、2つの丸形端子6と、2つの蓄熱材7,107と、3つのボルト9,19,109と、ナット18と、1つのバスバ8と、これらを収容したハウジング104と、ゴム栓151と、ホルダ152,153と、を備えている。
【0028】
本例のコネクタ101も、2本の電線2と接続されており、各電線2の外周にゴム栓151が装着されている。ゴム栓151は、ハウジング104の内面と電線2の外面との間をシールしている。ホルダ153は、ゴム栓151のハウジング104からの脱落を防止している。
【0029】
端子103は、一端側に雌ねじ部132が形成され、他端側に雄型の嵌合部131が形成されている。雌ねじ部132は、端子103の一端から凹に形成された穴133と、穴133の内周面に螺旋状に切られたねじと、を備えている。一方の端子103の雌ねじ部132にはボルト9が螺合する。他方の端子103(「第2の端子」に相当)の雌ねじ部132にはボルト109(「第2のボルト」に相当)が螺合する。嵌合部131は、充電プラグに備わった相手端子と嵌合される。
【0030】
丸形端子6は、電線2の端末に接続されている。一方の丸形端子6の接続部61は、一方の端子103の一端に重ねられて端子103に電気接続されている。また、この接続部61に蓄熱材7が重ねられており、ボルト9で端子103、丸形端子6、及び蓄熱材7を共締めしている。他方の丸形端子6(「第2の丸形端子」に相当)の接続部61には、バスバ8が接続されている。
【0031】
バスバ8は、金属板がクランク形状に曲げられて構成されており、上記他方の丸形端子6の接続部61に重ねられた第1接続部81と、上記他方の端子103の一端に重ねられた第2接続部82と、を備えている。
【0032】
第1接続部81にはボルト挿通孔81aが形成されている。接続部61のボルト挿通孔61a及び第1接続部81の挿通孔81aにボルト19が通され、ボルト19にナット18が螺合されて接続部61と第1接続部81が共締めされている。
【0033】
第2接続部82にはボルト挿通孔82aが形成されている。この第2接続部82に蓄熱材107(「第2の蓄熱材」に相当)が重ねられている。
【0034】
蓄熱材107は、
図6に示すように、ブロック状に形成されており、バスバ8の第2接続部82に重ねられる平坦面を備えている。また、蓄熱材107には、ボルト挿通孔171が形成されている。蓄熱材107は、他方の端子103との間に第2接続部82を挟んでいる。
【0035】
ボルト109は、蓄熱材107のボルト挿通孔171及び第2接続部82のボルト挿通孔82aを通された状態で他方の端子103の雌ねじ部132に螺合して、端子103、バスバ8、及び蓄熱材107を共締めしている。
【0036】
ハウジング104は、合成樹脂で構成されており、第1収容部141と、第2収容部142と、第3収容部143と、フランジ部144と、5極端子収容部145と、を備えている。5極端子収容部145は、本例とは仕様が異なる充電プラグが嵌合される部位であり、本例では利用されない。
【0037】
第1収容部141は、端子103の嵌合部131を収容している。第1収容部141は、充電プラグを受け入れる。
【0038】
第2収容部142は、第1収容部141に隣接しており、端子103の雌ねじ部132と、丸形端子6の接続部61と、蓄熱材7,107と、ボルト9、109と、バスバ8等を収容している。第2収容部142は、第1収容部141と反対側に開口しており、ホルダ152がこの開口を塞いでいる。
【0039】
第3収容部143は、第2収容部142に隣接しており、丸形端子6の電線接続部62と、電線2の端末と、ゴム栓151と、を収容している。第3収容部143は、第2収容部142と反対側に開口しており、ゴム栓151及びホルダ153がこの開口を塞いでいる。
図6に示すように、第1収容部141と第2収容部142と第3収容部143は、L字型に繋がっている。
【0040】
フランジ部144は、第1収容部141及び5極端子収容部145の外周面から外方に延びている。フランジ部144は、車体にボルト固定される。
【0041】
上述した2つの端子103同士は、平行に配置されている。2つの丸形端子6同士も平行に配置されており、2つのボルト9,109同士も平行に配置されている。これら2つの端子103、2つの丸形端子6、2つのボルト9,109は、同一平面上に配置されている。
図6に示すように、内側の端子103と丸形端子6は直接電気接続されているが、外側の端子103と丸形端子6は直接電気接続できないので、バスバ8を介して電気接続されている。
【0042】
バスバ8の外側(蓄熱材7と反対側)には広いスペースがあるため、このスペースに配置される蓄熱材107は、蓄熱材7よりも体積を大きくしている。このような理由で、蓄熱材7は、蓄熱材107よりも体積が小さいが、蓄熱材107よりも単位体積あたりの熱容量が大きな材質で構成されている。このため、蓄熱材7は、蓄熱材107と同等の熱容量を確保することができる。
【0043】
このようなコネクタ101に充電プラグが嵌合されて充電が開始されると、抵抗が高い部位である端子103の嵌合部131等から発熱が生じる。一方の端子103においては、この熱が丸形端子6を介して蓄熱材7に蓄熱されることで端子103の温度上昇が抑制され、端子103の温度上昇の速度が遅くなる。他方の端子103においては、この熱がバスバ8を介して蓄熱材107に蓄熱されることで端子103の温度上昇が抑制され、端子103の温度上昇の速度が遅くなる。
【0044】
このように蓄熱材7,107によって端子103の温度上昇を抑制できるので、冷却構造の追加や電線2の大径化を回避でき、コネクタ101のコストアップや重量アップを回避できる。また、ボルト9で端子103、丸形端子6、及び蓄熱材7を共締めしているので、ボルト9の軸力により各部品間の面圧を確保することができる。これにより、界面熱抵抗が下がり、端子103から蓄熱材7への伝熱性を向上させることができる。同様に、ボルト109で端子103、バスバ8、及び蓄熱材107を共締めしているので、ボルト109の軸力により各部品間の面圧を確保することができる。これにより、界面熱抵抗が下がり、端子103から蓄熱材107への伝熱性を向上させることができる。
【0045】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0046】
1,101 コネクタ
2 電線
3,103 端子
4,104 ハウジング
6 丸形端子
7,107 蓄熱材
9,109 ボルト