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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134118
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20240926BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240926BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
H01L29/78 652K
H01L29/78 653C
H01L29/78 652Q
H01L29/78 658J
H01L29/78 652B
H01L29/78 652F
H01L29/78 652S
H01L29/78 652C
H01L29/78 652M
H01L29/78 658F
H01L29/78 655A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044234
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】合田 健太
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 伸
(57)【要約】
【課題】半導体内への外部イオンの侵入を抑制しつつ、コンタクト不良を抑制できる半導体スイッチング素子を備えた半導体装置を提供する。
【解決手段】層間絶縁膜11を、p型ボディ領域3およびn型不純物領域4の上に配置された第1層間膜11aと、第1層間膜11aの上に配置された第2層間膜11bとを含む構造とする。そして、第1層間膜11aを第2絶縁膜11bよりもガラス転移点が高い絶縁材料で構成し、第2層間膜11bをPSG単層膜もしくはシリコン窒化膜によって構成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレンチゲート構造を有する半導体スイッチング素子を備えた半導体装置であって、
前記半導体スイッチング素子は、
第1導電型のドリフト層(2)と、
前記ドリフト層上に形成された第2導電型のボディ領域(3)と、
前記ボディ領域内における該ボディ領域の表層部に形成され、前記ドリフト層より高不純物濃度とされた第1導電型の第1不純物領域(4)と、
一方向を長手方向とすると共に前記第1不純物領域から前記ボディ領域を貫通して前記ドリフト層に達するストライプ状に配置された複数のゲートトレンチ(5)内それぞれに、絶縁膜(6)を介してゲート電極層(8)が形成された複数のトレンチゲート構造と、
前記ドリフト層を挟んで前記ボディ領域と反対側に形成され、前記ドリフト層よりも高不純物濃度とされた第1または第2導電型の高濃度層(1)と、
前記トレンチゲート構造と前記ボディ領域および前記第1不純物領域の上に配置され、前記ボディ領域や前記第1不純物領域に繋がるコンタクトホール(11d)が形成された層間絶縁膜(11)と、
前記コンタクトホール内に配置された接続部(10)と、
前記接続部を通じて前記第1不純物領域および前記ボディ領域と電気的に接続される上部電極(12)と、
前記高濃度層と電気的に接続された下部電極(15)と、を有し、
前記層間絶縁膜は、前記ボディ領域および前記第1不純物領域の上に配置された第1層間膜(11a)と、前記第1層間膜の上に配置された第2層間膜(11b)とを含み、
前記第1層間膜は、前記第2絶縁膜よりもガラス転移点が高い絶縁材料で構成され、
前記第2層間膜は、PSG単層膜もしくはシリコン窒化膜によって構成されている、半導体装置。
【請求項2】
前記層間絶縁膜は、前記第1層間膜および前記第2層間膜に加えて、前記第2層間膜の上に形成された第3層間膜を有し、前記第2層間膜が前記第1層間膜と前記第3層間膜によって挟まれたサンドイッチ構造とされている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2層間膜はPSG単層膜によって構成されており、
前記第2層間膜中のPの濃度であるP濃度と前記第2層間膜の膜厚とを積算した値で表されるP総量が、1700[wt%・nm]以上である請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記P総量が、4000[wt%・nm]以下である、請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
トレンチゲート構造を有する半導体スイッチング素子を備えた半導体装置の製造方法であって、
第1導電型または第2導電型の高濃度層(1)および該高濃度層の一面側に形成され、該高濃度層よりも低不純物濃度とされた第1導電型のドリフト層(2)とを有する基板(1、2)を用意することと、
前記ドリフト層に対して、一方向を長手方向としてストライプ状に配置される複数のトレンチ(5)を形成したのち、該複数のトレンチ内それぞれに、絶縁膜(6)を介して、ゲート電極層(8)を備えることで複数のトレンチゲート構造を形成することと、
前記複数のトレンチの間に位置する前記ドリフト層上に、第2導電型のボディ領域(3)を形成することと、
前記ボディ領域内における該ボディ領域の一部の表面部に、前記ドリフト層より高不純物濃度とされた第1導電型の第1不純物領域(4)を形成することと、
前記トレンチゲート構造と前記ボディ領域および前記第1不純物領域の上に層間絶縁膜(11)を形成することと、
前記層間絶縁膜に対して前記ボディ領域や前記第1不純物領域に繋がるコンタクトホール(11d)を形成することと、
前記コンタクトホールを通じて前記第1不純物領域および前記ボディ領域と電気的に接続される接続部(10)を形成することと、
前記接続部を通じて前記第1不純物領域および前記ボディ領域と電気的に接続される上部電極(12)を形成することと、
前記コンタクトホールを形成することの後に、前記ボディ領域に含まれる第2導電型不純物および前記第1不純物領域に含まれる第1導電型不純物を活性化する熱処理を行うことと、
前記高濃度層と電気的に接続される下部電極(15)を形成することと、を含み、
前記層間絶縁膜を形成することでは、前記層間絶縁膜として、前記ボディ領域および前記第1不純物領域の上に第1層間膜(11a)を形成したのち、前記第1層間膜の上に第2層間膜(11b)を形成することを含み、
前記第1層間膜として、前記第2層間膜よりもガラス転移点が高い絶縁材料を用い、
前記第2層間膜として、PSG単層膜もしくはシリコン窒化膜を用いる、半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記コンタクトホールを形成することは、前記第1不純物領域に繋がる第1コンタクトホールを形成することと、前記ボディ領域のうち前記第1不純物領域が形成されていない部分に繋がる第2コンタクトホールを形成することとを含み、
前記第1コンタクトホールを形成することを行ったのち、前記層間絶縁膜をマスクとした第1導電型不純物のイオン注入を行うことで、前記第1不純物領域に第1導電型コンタクト領域(4a)を形成することと、
前記層間絶縁膜をマスクとして、前記第1コンタクトホールを通じて前記第1導電型コンタクト領域を含む前記第1不純物領域をエッチングしてコンタクトトレンチ(4b)を形成し、該コンタクトトレンチの側面に前記第1導電型コンタクト領域を露出させると共に底面に前記ボディ領域を露出させることと、
前記コンタクトトレンチを形成した後、前記第2コンタクトホールを形成することを行ってから、前記層間絶縁膜をマスクとした第2導電型不純物のイオン注入を行うことで、前記ボディ領域に第2導電型コンタクト領域(3a)を形成することと、
前記熱処理により、前記第1導電型コンタクト領域に導入された前記第1導電型不純物および前記第2導電型コンタクト領域に導入された前記第2導電型不純物を活性化させることと、を行う請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレンチゲート構造を有する半導体スイッチング素子を備えた半導体装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体素子を備えた半導体装置では、半導体素子などと外部との電気的な接続を行う上面電極との間に層間絶縁膜を備え、層間絶縁膜にコンタクトホールを形成すると共に、コンタクトホール内に金属による接続部を埋め込んでいる。そして、接続部を通じて半導体素子と上面電極とを電気的に接続している。また、上面電極の外縁や層間絶縁膜の露出部分を覆うように保護膜を形成することで半導体素子が形成された半導体基板の表面保護を行っている。
【0003】
このような半導体装置では、上面電極を形成する際のメッキ時のイオンや保護膜を構成するPIQ(登録商標:(Polyimideisoindoloquinazolinedione))等のポリイミド膜に含まれるイオンが外部イオンとして半導体基板に侵入すると素子特性に影響を与える。このため、特許文献1では、層間絶縁膜として窒化膜、BPSG(Boro-Phospho. Silicate Glass)、PSG(Phosphorous Silicate Glass)を用い、窒化膜、BPSG、PSGによってイオンの拡散防止を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第8928066号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように層間膜としてBPSGを含む膜とする場合、コンタクトホールの形状が安定しないために、コンタクトホール内への接続部の埋込みが的確に行えず、半導体素子と上面電極との電気的接続が行えなくなることが確認された。特に、半導体スイッチング素子において、オン抵抗低減を目的としてゲートピッチ微細化を実現しようとしてコンタクトホールを高アスペクト比で形成する場合に、その現象が顕著であった。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、半導体内への外部イオンの侵入を抑制しつつ、コンタクト不良を抑制できる半導体スイッチング素子を備えた半導体装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、トレンチゲート構造を有する半導体スイッチング素子を備えた半導体装置であって、半導体スイッチング素子は、第1導電型のドリフト層(2)と、ドリフト層上に形成された第2導電型のボディ領域(3)と、ボディ領域内における該ボディ領域の表層部に形成され、ドリフト層より高不純物濃度とされた第1導電型の第1不純物領域(4)と、一方向を長手方向とすると共に第1不純物領域からボディ領域を貫通してドリフト層に達するストライプ状に配置された複数のゲートトレンチ(5)内それぞれに、絶縁膜(6)を介してゲート電極層(8)が形成された複数のトレンチゲート構造と、ドリフト層を挟んでボディ領域と反対側に形成され、ドリフト層よりも高不純物濃度とされた第1または第2導電型の高濃度層(1)と、トレンチゲート構造とボディ領域および第1不純物領域の上に配置され、ボディ領域や第1不純物領域に繋がるコンタクトホール(11d)が形成された層間絶縁膜(11)と、コンタクトホール内に配置された接続部(10)と、接続部を通じて第1不純物領域およびボディ領域と電気的に接続される上部電極(12)と、高濃度層と電気的に接続された下部電極(15)と、を有している。
【0008】
そして、層間絶縁膜は、トレンチゲート構造やボディ領域および第1不純物領域の上に配置された第1層間膜(11a)と、第1層間膜の上に配置された第2層間膜(11b)とを含み、第1層間膜は、第2絶縁膜よりもガラス転移点が高い絶縁材料で構成され、第2層間膜は、PSG単層膜もしくはシリコン窒化膜によって構成されている。
【0009】
このように、第2層間膜をPSG単層膜もしくはシリコン窒化膜で構成し、侵入抑制膜として機能するようにしている。第2層間膜をPSG単層膜で構成すれば、PSG単層膜中のPがゲッタリングサイトとして機能し、侵入してきた外部イオンを捕獲できて、半導体側に外部イオンが侵入することを抑制できる。また、第2層間膜を外部イオンの移動度が低い材料であるシリコン窒化膜で構成しても、外部イオンが半導体側に侵入すること抑制することができる。これにより、外部イオンの侵入による半導体スイッチング素子の素子特性の変動を抑制することが可能となる。
【0010】
また、PSG単層膜やシリコン窒化膜はいずれも高温でも形状を維持することができるリフロー温度の高い材料であるため、高温な熱処理を行っても、コンタクトホール内に第2層間膜の一部が流動することが抑制される。このため、コンタクトホールの形状を維持することが可能となり、コンタクト不良を抑制できる。
【0011】
また、請求項5に記載の発明は、トレンチゲート構造を有する半導体スイッチング素子を備えた半導体装置の製造方法であって、第1導電型または第2導電型の高濃度層(1)および該高濃度層の一面側に形成され、該高濃度層よりも低不純物濃度とされた第1導電型のドリフト層(2)とを有する基板(1、2)を用意することと、ドリフト層に対して、一方向を長手方向とする複数のトレンチ(5)を形成したのち、該複数のトレンチ内それぞれに、絶縁膜(6)を介して、ゲート電極層(8)を備えることで複数のトレンチゲート構造を形成することと、複数のトレンチの間に位置するドリフト層上に、第2導電型のボディ領域(3)を形成することと、ボディ領域内における該ボディ領域の一部の表面部に、ドリフト層より高不純物濃度とされた第1導電型の第1不純物領域(4)を形成することと、トレンチゲート構造とボディ領域および第1不純物領域の上に層間絶縁膜(11)を形成することと、層間絶縁膜に対してボディ領域や第1不純物領域に繋がるコンタクトホール(11d)を形成することと、コンタクトホールを形成することの後に、ボディ領域に含まれる第2導電型不純物および第1不純物領域に含まれる第1導電型不純物を活性化する熱処理を行うことと、コンタクトホールを通じて第1不純物領域およびボディ領域と電気的に接続される接続部(10)を形成することと、接続部を通じて第1不純物領域およびボディ領域と電気的に接続される上部電極(12)を形成することと、高濃度層と電気的に接続される下部電極(15)を形成することと、を含んでいる。
【0012】
そして、層間絶縁膜を形成することでは、層間絶縁膜として、トレンチゲート構造やボディ領域および第1不純物領域の上に第1層間膜(11a)を形成したのち、第1層間膜の上に第2層間膜(11b)を形成することを含み、第1層間膜として、第2層間膜よりもガラス転移点が高い絶縁材料を用い、第2層間膜として、PSG単層膜もしくはシリコン窒化膜を用いる。
【0013】
このように、第2層間膜をPSG単層膜もしくはシリコン窒化膜で構成し、侵入抑制膜として機能するようにしている。第2層間膜をPSG単層膜で構成すれば、PSG単層膜中のPがゲッタリングサイトとして機能し、侵入してきた外部イオンを捕獲できて、半導体側に外部イオンが侵入することを抑制できる。また、第2層間膜を外部イオンの移動度が低い材料であるシリコン窒化膜で構成しても、外部イオンが半導体側に侵入すること抑制することができる。これにより、外部イオンの侵入による半導体スイッチング素子の素子特性の変動を抑制することが可能となる。
【0014】
また、PSG単層膜やシリコン窒化膜はいずれも高温でも形状を維持することができるリフロー温度の高い材料である。したがって、コンタクトホール形成後にボディ領域に含まれる第2導電型不純物および第1不純物領域に含まれる第1導電型不純物を活性化するために高温な熱処理を行っても、コンタクトホール内に第2層間膜の一部が流動することが抑制される。このため、コンタクトホールの形状を維持することが可能となり、コンタクト不良を抑制できる。
【0015】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態にかかる縦型MOSFETを備えた半導体装置のセル部の断面図である。
図2図1に示す縦型MOSFETの一部を抽出した断面斜視図である。
図3A図2中のIIIA-IIIA断面図である。
図3B図2中のIIIB-IIIB断面図である。
図4A】第1実施形態にかかる半導体装置の製造工程中の断面図である。
図4B図4Aに続く半導体装置の製造工程中の断面図である。
図4C図4Bに続く半導体装置の製造工程中の断面図である。
図4D図4Cに続く半導体装置の製造工程中の断面図である。
図4E図4Dに続く半導体装置の製造工程中の断面図である。
図4F図4Eに続く半導体装置の製造工程中の断面図である。
図4G図4Fに続く半導体装置の製造工程中の断面図である。
図4H図4Gに続く半導体装置の製造工程中の断面図である。
図4I図4Hに続く半導体装置の製造工程中の断面図である。
図4J図4Iに続く半導体装置の製造工程中の断面図である。
図4K図4Jに続く半導体装置の製造工程中の断面図である。
図5】第1実施形態にかかる半導体装置の製造工程中における外部イオンの侵入の様子を示した断面図である。
図6】第2層間膜中のP総量と閾値電圧Vthの変動量ΔVthとの関係を示した図である。
図7】ゲート-ソース間電圧[V]とドレイン-ソース間電流Idsの関係と閾値電圧Vthの変動量ΔVthを説明した図である。
図8】第1実施形態にかかる半導体装置と参考試料それぞれでのPCB試験の時間経過と閾値電圧Vthの変動量ΔVthとの関係を示した図である。
図9A】第2実施形態にかかる半導体装置の製造工程中の断面図である。
図9B図9Aに続く半導体装置の製造工程中の断面図である。
図10】第2層間膜をシリコン窒化膜(SiN)で構成した場合の半導体装置と参考試料それぞれでのPCB試験の時間経過と閾値電圧Vthの変動量ΔVthとの関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0018】
(第1実施形態)
第1実施形態について説明する。本実施形態では、半導体スイッチング素子として二層構造のトレンチゲート構造を有するnチャネルタイプのMOSFETが備えられた半導体装置を例に挙げて説明する。以下、図1図2図3Aおよび図3Bに基づいて本実施形態にかかる半導体装置の構造について説明する。
【0019】
なお、これらの図に示すMOSFETは、半導体装置のうちのセル領域に形成されている。実際には、半導体装置は、図1に示した部分を含むセル領域の外周を囲むように外周領域も設けられるが、ここではMOSFETのみ図示してある。以下では、図1図2中に示すように、MOSFETの幅方向をx方向、x方向に対して交差するMOSFETの奥行方向をy方向、MOSFETの厚み方向もしくは深さ方向、つまりxy平面に対する法線方向をz方向として説明する。
【0020】
図1図2図3Aおよび図3Bに示すように、本実施形態にかかる半導体装置は、不純物濃度が高濃度とされたシリコン等の半導体材料によって構成されたn型の半導体基板1を用いて形成されている。半導体基板1の表面上には、半導体基板1よりも不純物濃度が低濃度とされたn型ドリフト層2が形成されている。
【0021】
また、n型ドリフト層2の表層部の所望位置には、比較的不純物濃度が低く設定されたp型ボディ領域3が形成されている。p型ボディ領域3は、例えばn型ドリフト層2に対してp型不純物をイオン注入することなどによって形成され、チャネル領域を形成するチャネル層としても機能する。p型ボディ領域3は、後述する複数のトレンチゲート構造の間において、y方向を長手方向として形成されている。
【0022】
p型ボディ領域3の表層部には、n型ドリフト層2よりも不純物濃度が高濃度とされたソース領域として機能するn型不純物領域4が備えられている。本実施形態では、このn型不純物領域4が第1不純物領域に相当する。n型不純物領域4は、図2に示すように、y方向おいて分離されて複数個が並べられた構成とされている。本実施形態では、y方向に並べられたそれぞれのn型不純物領域4は、同じ大きさで、上面形状が長方形とされ、等間隔に配置されている。また、各n型不純物領域4の間において、p型ボディ領域3が露出した状態となっている。そして、p型ボディ領域3にはボディコンタクトとなるp型コンタクト領域3aが形成され、n型不純物領域4にはソースコンタクトとなるn型コンタクト領域4aが形成されている。
【0023】
より詳しくは、n型不純物領域4が形成されていない部分においては、各n型不純物領域4の間に位置する各p型ボディ領域3の表面は平面形状となっており、その平面におけるx方向の中央位置にp型コンタクト領域3aが形成されている。つまり、各n型不純物領域4の間に位置する各p型ボディ領域3の表面とp型コンタクト領域3aの表面とが同一平面となっている。そして、この部分については、後述するn型コンタクト領域4aが形成されていないコンタクト構造とされている。
【0024】
一方、各n型不純物領域4は、x方向の中央部においてコンタクトトレンチ4bが形成されており、このコンタクトトレンチ4b内において露出するようにn型コンタクト領域4aが形成されている。さらに、本実施形態の場合は、コンタクトトレンチ4bがp型ボディ領域3を露出させる深さまで形成されており、この露出させられたp型ボディ領域3の表面部にもp型コンタクト領域3aが形成されている。
【0025】
本実施形態の場合、p型コンタクト領域3aは、p型ボディ領域3のうちn型不純物領域4の間に位置している部分の中央位置に形成されており、表面形状が長方形とされている。また、n型コンタクト領域4aは、各n型不純物領域4の中央位置に形成されており、表面形状が長方形とされている。
【0026】
また、n型ドリフト層2の表層部のうち各p型ボディ領域3や各n型不純物領域4の間には、一方向を長手方向とする複数本のゲートトレンチ5が形成されている。このゲートトレンチ5はトレンチゲート構造を形成するためのトレンチであり、本実施形態では、各ゲートトレンチ5が等間隔に平行に並べられることでストライプ状のレイアウトとされている。
【0027】
ゲートトレンチ5は、p型ボディ領域3よりも深い位置まで、つまり半導体基板1の表面側においてn型不純物領域4およびp型ボディ領域3を貫通してn型ドリフト層2まで達する深さとされている。また、本実施形態では、ゲートトレンチ5は、底部に向かうほど徐々に幅が狭くなり、底部が丸まった形状とされている。
【0028】
ゲートトレンチ5の内壁面は、絶縁膜6によって覆われている。絶縁膜6については、単独の膜で構成されていても良いが、本実施形態の場合は、ゲートトレンチ5のうちの下方部分を覆っているシールド絶縁膜6aと上方部分を覆っているゲート絶縁膜6bとによって構成している。シールド絶縁膜6aは、ゲートトレンチ5の底部から下方部分の側面を覆い、ゲート絶縁膜6bは、ゲートトレンチ5の上方部分の側面を覆っている。本実施形態では、シールド絶縁膜6aをゲート絶縁膜6bよりも厚く形成してある。
【0029】
また、ゲートトレンチ5内には、絶縁膜6を介してドープトPoly-Siによって構成されたシールド電極7およびゲート電極層8が積層されて二層構造となっている。シールド電極7は、ソース電位に固定されることで、ゲート-ドレイン間の容量を小さくし、縦型MOSFETの電気特性の向上を図るために形成されている。ゲート電極層8は、縦型MOSFETのスイッチング動作を行うもので、ゲート電圧印加時にゲートトレンチ5の側面のp型ボディ領域3にチャネル領域を形成する。
【0030】
シールド電極7とゲート電極層8との間には中間絶縁膜9が形成されており、中間絶縁膜9によってシールド電極7とゲート電極層8とが絶縁されている。これらゲートトレンチ5、絶縁膜6、シールド電極7、ゲート電極層8および中間絶縁膜9によってトレンチゲート構造が構成されている。このトレンチゲート構造は、Y方向を長手方向として、図1図2A図2Bの紙面左右方向に複数本が並べられることでストライプ状のレイアウトとされている。
【0031】
また、図示していないが、ゲートトレンチ5の長手方向の両端部、すなわち図2の紙面手前側および紙面向こう側の端部において、シールド電極7は、ゲート電極層8よりも外側まで延設されている。そして、ゲート電極層8の長手方向両先端位置および複数のゲートトレンチ5の配列方向における最も外側に位置する部分において、シールド電極7がn型ドリフト層2の上まで引き上げられている。この部分がシールドライナー7aとして半導体の上、具体的にはn型ドリフト層2やp型ボディ領域3およびn型不純物領域4の表面側から露出させられている。なお、各ゲートトレンチ5の長手方向の両端部において、シールド電極7のうちゲート電極層8よりも外側に延設された部分とゲート電極層8の先端との間も中間絶縁膜9によって絶縁されている。
【0032】
また、ゲート電極層8を覆うように酸化膜などで構成された層間絶縁膜11が形成されている。本実施形態では、層間絶縁膜11は、第1層間膜11aと第2層間膜11bおよび第3層間膜11cの3種類の積層膜によって構成されている。
【0033】
第1層間膜11aは、絶縁性の確保と所望の膜厚を得るために備えられ、第2層間膜11bの構成材料よりもガラス転移点が高く、後述する注入されたイオンの活性化のための熱処理温度よりもガラス転移点が高い絶縁材料で構成される。例えば、TEOS(テトラエトキシシラン)膜などの酸化膜によって第1層間膜11aを構成している。第1層間膜11aを酸化膜で構成する場合、第1層間膜11aのガラス転移点は1200℃以上となる。第1層間膜11aは、例えば600±150nmの膜厚とされ、本実施形態では、表面が平坦化された膜とされている。
【0034】
第2層間膜11bは、外部イオンの半導体への侵入を防ぐ侵入抑制膜である。本実施形態では、第2層間膜11bをPSG単層膜で構成している。第2層間膜11bの構成材料をPSGとする場合、第2層間膜11bはゲッタリング膜となり、導入されたP(リン)が外部イオンを捕獲するゲッタリングサイトとして機能することで、外部イオンの半導体への侵入を抑制する。また、第2層間膜11bの構成材料をPSGとすると、比較的高温の熱処理が行われても第2層間膜11bは膜形状が安定化した状態を保つ。具体的には、第2層間膜11bの構成材料をPSGとする場合、第2層間膜11bのガラス転移点が600~1000℃となる。したがって、後述するコンタクトホール11dの形状が安定し、コンタクトホール11d内への接続部10の埋込みが良好に行われるようにできる。
【0035】
また、本実施形態では、半導体スイッチング素子がより安定的な素子特性となるように、本実施形態では、第2層間膜11bの膜厚およびP濃度を設定している。つまり、第2層間膜11bの構成材料をPSGとしつつ、PSG中のP濃度を後述する所定範囲に規定している。このため、Pのゲッタリングサイトとしての機能によって的確に外部イオンを捕獲でき、外部イオンの侵入による半導体スイッチング素子の素子特性の変動が抑制される。
【0036】
具体的には、第2層間膜11bの膜厚を例えば370±100nmとしている。また、第2層間膜11b中におけるP濃度を7.0~8.0[wt%]としている。そして、次式で表される第2層間膜11b中におけるP総量、つまりP濃度と膜厚との積算値が1700[wt%・nm]以上となるようにしている。このP総量については、半導体スイッチング素子がより安定的な素子特性となるようにした値であり、必ずしもこの値である必要はなく、1700[wt%・nm]未満とされていても、ある程度安定した素子特性を得ることは可能である。より安定的な素子特性となるようにするために、P総量を1700[wt%・nm]以上としている。また、P濃度や第2層間膜11bの膜厚の製造限界を考慮しなければ、P総量に上限値は無く、少なくともP総量が4000[wt%・nm]までは、後述するように、半導体スイッチング素子が安定的な素子特性となるようにできる。
【0037】
[数1] P総量=P濃度×第2層間膜の厚み
なお、P総量は、正確には、第2層間膜11bの厚みではなく、第2層間膜11bの体積をP濃度に積算した値となるが、第2層間膜11bの平面方向についてはP濃度が均一であると見做せる。このため、第2層間膜11bの平面方向については除外しても、半導体スイッチング素子が安定的な素子特性となるために満たすべきP総量の値は変わりない。
【0038】
また、第3層間膜11cは、キャップ膜となるものであり、第2層間膜11bの構成材料よりもガラス転移点が高く、後述する注入されたイオンの活性化のための熱処理温度よりもガラス転移点が高い絶縁材料で構成される。第3層間膜11cは、後述する上部電極12などをエッチングによってパターニングする際における第2層間膜11bの保護や、第2層間膜11bのエッチング量の制御の容易化などのために備えられている。また、第3層間膜11cを備えることで第2層間膜11bを第1層間膜11aおよび第3層間膜11cで挟み込んだサンドイッチ構造にできるため、第2層間膜11bの形状がより安定化する構造にできる。例えば、第3層間膜11cは、70±30nmの厚みとされ、シリコン酸化膜(SiO)等の絶縁膜によって構成されている。第3層間膜11cをシリコン酸化膜で構成する場合には、第3層間膜11cのガラス転移点が600~1000℃となる。
【0039】
なお、第3層間膜11cは、必ずしも備えられていなくても良い。その場合、第1層間膜11aおよび第2層間膜11bによって層間絶縁膜11が構成され、第2層間膜11bの表面が層間絶縁膜11の表面となる。
【0040】
さらに、層間絶縁膜11の表面上にソース電極に相当する上部電極12や図示していないがゲート配線およびシールド配線が形成されている。上部電極12は、配線電極12aと外部との電気的接続を行うためのめっき層12bとによって構成されている。配線電極12aは、アルミニウム-銅(AlCu)などの配線材料で構成されており、外部との電気的接続を行う部分は後述する保護膜13から露出している。めっき層12bは、配線電極12aのうちの露出表面にニッケル(Ni)めっきなどを行うことで形成されている。上部電極12は、層間絶縁膜11に形成されたコンタクトホール11d内に埋め込まれたタングステン(W)プラグなどの接続部10を通じてp型ボディ領域3やn型不純物領域4と接触させられている。これにより、上部電極12がn型不純物領域4およびp型ボディ領域3に電気的に接続されている。
【0041】
また、図示していないが、ゲート配線およびシールド配線も、AlCuなどで構成され、これらのうちの外部との電気的接続が行われる部分は露出していてその露出表面にNメッキなどが形成された構成とされる。ゲート配線も、層間絶縁膜11に形成されたコンタクトホール内のWプラグなどの接続部を通じて、ゲート電極層8に電気的に接続されている。また、図示しないが、シールド配線も、層間絶縁膜11に形成されたコンタクトホール内のWプラグなどの接続部を通じて、シールド電極7に電気的に接続されている。
【0042】
さらに、上部電極12の外縁部やゲート配線およびシールド配線を覆うように保護膜13が形成されている。本実施形態では、保護膜13をPIQ膜13aと樹脂膜13bの二層構造としているが、層数は任意である。保護膜13は、上部電極12のうちの内側に位置するパッド部となる部分を露出させつつ、ゲート配線やシールド配線のうちのそれぞれのパット部となる部分を露出させるように形成されている。このため、各パッド部にワイヤボンディングされたり、ターミナル接続されたりすることで、上部電極12やゲート電極層8およびシールド電極7がそれぞれ外部回路に接続され、所望の電位に制御可能とされている。
【0043】
また、半導体基板1のうちn型ドリフト層2とは反対側の面にドレイン電極に相当する下部電極15が形成されている。このような構成により、縦型MOSFETの基本構造が構成されている。そして、縦型MOSFETが複数セル集まって形成されることで、セル領域が構成されている。以上のようにして、縦型MOSFETを有する半導体装置が構成されている。
【0044】
次に、本実施形態にかかる半導体装置の製造方法について図4A図4Kを参照して説明する。
【0045】
図4Aに示す工程〕
まず、半導体基板1を用意し、半導体基板1の表面上にn型ドリフト層2をエピタキシャル成長させることで、高濃度層に相当する半導体基板1の一面側にn型ドリフト層2が形成された基板を用意する。次に、ゲートトレンチ5の形成予定領域が開口部20aとされたハードマスク20を配置する。その後、ハードマスク20をマスクとして用いたエッチングによりゲートトレンチ5を形成する。
【0046】
図4Bに示す工程〕
続いて、ハードマスク20を除去した後、熱酸化などによってゲートトレンチ5の内壁面を含めてn型ドリフト層2の表面にシールド絶縁膜6aを形成する。そして、シールド絶縁膜6aの上にドープトポリシリコン21を積む。これにより、ゲートトレンチ5内がドープトポリシリコン21によって埋め込まれる。
【0047】
さらに、ドープトポリシリコン21の上に、シールドライナー7aとなる予定の領域以外の部分が開口部22aとされたハードマスク22を配置する。そして、ハードマスク22をマスクとしてドープトポリシリコン21をエッチングし、ゲートトレンチ5の底部やゲートトレンチ5の端部などにドープトポリシリコン21を残すことでシールド電極7やシールドライナー7aを形成する。また、最も外側に位置するゲートトレンチ5については、ドープトポリシリコンで埋込まれたままとし、この部分もシールドライナー7aとして使用する。
【0048】
図4Cに示す工程〕
シールド絶縁膜6aのうちゲートトレンチ5の上部の側面上やn型ドリフト層2の表面上に形成された部分をエッチングして除去する。ただし、ゲートトレンチ5の先端部においては、シールド絶縁膜6aが基板表面に至るまで残される。
【0049】
そして、プラズマCVD(chemical vapor deposition)などで絶縁膜30をデポジションすることでシールドライナー7aを含めたシールド電極7の上やゲートトレンチ5の上部の側面を覆う。その後、マスクを用いてシールド電極7やシールドライナー7aの上に形成された部分が残るように絶縁膜30をエッチングする。これにより、中間絶縁膜9が形成される。
【0050】
図4Dに示す工程〕
熱酸化などによってゲートトレンチ5の上部の側面上などに絶縁膜を形成することで、ゲート絶縁膜6bが形成される。なお、熱酸化を行う場合、ゲートトレンチ5の長手方向の両先端に位置する部分を含めて中間絶縁膜9の膜厚が増加するが、熱酸化量は膜厚に応じて決まるため、中間絶縁膜9の膜厚増加量はゲート絶縁膜6bの厚みよりも小さくなる。
【0051】
その後、再びドープトポリシリコンを積んでから、エッチバックすることでゲートトレンチ5内にゲート電極層8を形成する。これにより、トレンチゲート構造が形成される。ゲート電極層8のうちの一部については、ゲート配線に接続されるため、部分的に上方に突出した状態で残される。
【0052】
図4Eに示す工程〕
p型不純物をイオン注入することにより、p型ボディ領域3を形成する。そして、n型不純物領域4の形成予定領域が開口する図示しないマスクを配置したのち、n型不純物をイオン注入することでn型不純物領域4を形成する。
【0053】
図4Fに示す工程〕
TEOSなどの絶縁膜をデポジションすることにより、第1層間膜11aを形成する。このときに第1層間膜11aの形成のために用いる材料については、絶縁性を確保しつつ、所望の膜厚を得ることができる材料で、かつ、後工程で行われる熱処理によって流動化しにくい材料を用いている。ここでは、第1層間膜11aをTEOSで構成している例を示しているが、この条件を満たす材料であれば勿論TEOS以外の材料であっても良い。
【0054】
図4Gに示す工程〕
第1層間膜11aの平坦化工程を行う。例えば、CMP(chemical mechanical polishing)を行うことにより、第1層間膜11aの表面を平坦化する。
【0055】
図4Hに示す工程〕
気相成長装置のチャンバー内に試料を配置したのち、平坦化後の第1層間膜11aの表面にPSG単層膜を気相成長させることにより、第2層間膜11bを形成する。このとき、第2層間膜11bを形成するチャンバー内にPを含有するガスを導入することで、第2層間膜11bが所定のP濃度となるようにする。具体的には、Pを含有するガスの導入量を調整すると共に成膜時間を調整することで、第2層間膜11bの膜厚およびP濃度が所望値となるようにする。ここでは、第2層間膜11bの膜厚を例えば370±100nmとし、第2層間膜11b中におけるP濃度を7.0~8.0[wt%]としている。
【0056】
図4Iに示す工程〕
シリコン酸化膜などをデポジションすることにより、第3層間膜11cを形成する。例えば、第3層間膜11cを70±30nmの厚みで形成している。
【0057】
図4Jに示す工程〕
図示しないハードマスクを配置したのち、ハードマスクで覆った状態で層間絶縁膜11をエッチングすることで、層間絶縁膜11に対してコンタクトホール11dを形成する。これにより、n型不純物領域4の表面の一部等が露出させられる。
【0058】
このとき、まずはn型不純物領域4に繋がるコンタクトホール11dが形成されるようにする。すなわち、層間絶縁膜11をハードマスクで覆い、ホトエッチングによってハードマスクのうち、n型不純物領域4におけるx方向の中央位置と対応する部分を開口させる。そして、ハードマスクをマスクとして用いたエッチングによって層間絶縁膜11にコンタクトホール11dを形成する。これにより、n型不純物領域4の表面の一部については露出させられ、p型ボディ領域3の表面については層間絶縁膜11で覆われたままの状態となる。なお、このときに形成しているn型不純物領域4に繋がるコンタクトホール11dが第1コンタクトホールに相当する。
【0059】
さらに、ハードマスクを除去したのち、層間絶縁膜11をマスクとしてn型不純物をイオン注入することで、n型不純物領域4の表面部に、図3Aに示したようなn型コンタクト領域4aを形成する。そして、層間絶縁膜11をマスクとしてシリコンエッチングを行い、コンタクトホール11dと対応する位置、つまりn型不純物領域4におけるx方向の中央位置に、図2図3Aに示したようなコンタクトトレンチ4bを形成する。これにより、コンタクトトレンチ4bの側面においてn型コンタクト領域4aが露出させられると共に、コンタクトトレンチ4bの底面においてp型ボディ領域3が露出させられる。
【0060】
次に、再び層間絶縁膜11をハードマスクで覆い、ホトエッチングによってハードマスクのうち、p型ボディ領域3におけるx方向の中央位置と対応する部分を開口させる。これにより、p型ボディ領域3の表面の一部については露出させられ、n型不純物領域4の表面についてはハードマスクによって覆われたままの状態となる。そして、ハードマスクをマスクとして用いたエッチングによって層間絶縁膜11に残りのコンタクトホール11dを形成する。このときに形成しているp型ボディ領域3に繋がるコンタクトホール11dが第2コンタクトホールに相当する。これにより、p型ボディ領域3の表面が露出させられる。そして、ハードマスクを除去することで、層間絶縁膜11やn型不純物領域4の表面と対応する位置に形成されたコンタクトホール11dも露出させ、この状態で層間絶縁膜11をマスクとしてp型不純物のイオン注入を行う。これにより、各n型不純物領域4の間に位置する各p型ボディ領域3の表面、つまり平面形状となった部分と、コンタクトトレンチ4bの底部に位置する部分におけるp型ボディ領域3の表面に、p型コンタクト領域3aが形成される。
【0061】
さらに、注入されたイオンの活性化処理のための熱処理を行う。例えば、950℃で活性化アニールを行う。これにより、n型コンタクト領域4aに注入されたn型不純物やp型コンタクト領域3aに注入されたp型不純物が活性化される。このとき、活性化処理を高温で行っているが、本実施形態では侵入抑制膜となる第2層間膜11bをPSG単層膜によって構成している。PSG単層膜は、高温でも形状を維持することができるリフロー温度の高い材料であるため、高温な活性化処理を行っても、コンタクトホール11d内に第2層間膜11bの一部が流動することが抑制される。このため、コンタクトホール11dの形状を維持することが可能となる。
【0062】
このようにして、コンタクトホール11dの形成工程、n型コンタクト領域4aの形成工程、コンタクトトレンチ4bの形成工程、p型コンタクト領域3aの形成工程が完了する。
【0063】
ここで、本実施形態では、y方向においてコンタクトホール11dを離して破線状に構成している。つまり、n型不純物領域4が備えられた位置のコンタクトホール11dと、n型不純物領域4が備えられずにp型ボディ領域3が半導体最表面まで形成された位置のコンタクトホール11dとが分離されるようにしている。
【0064】
また、層間絶縁膜11の最上部でのコンタクトホール11dの寸法について、例えばx方向では100~400nm、y方向では1~10μmとしている。そして、第1層間膜11aの厚みを600±150nm、第2層間膜11bの膜厚を370±100nm、第3層間膜11cの膜厚を70±30nmとしているため、コンタクトホール11dの幅に対する深さの比であるアスペクト比は1.9~13.2となる。
【0065】
第2層間膜11bが形状の安定しない材料で構成されている場合には、コンタクトホール11dの幅寸法が小さくなるほど、また、アスペクト比が大きいほど、コンタクトホール11dの形状を維持できないと接続部10の形成時に埋込み不良が発生し易くなる。コンタクトホール11dの幅寸法については、x方向やy方向の寸法のずれか一方が大きければ接続部10の埋込み不良が発生し難くなるが、小さい方が100nm以下になると接続部10の埋込み不良が発生し易くなる。
【0066】
なお、コンタクトトレンチ4bを形成することなく、p型ボディ領域3やn型不純物領域4の表面からp型不純物をイオン注入してp型コンタクト領域3aを形成するような場合、コンタクトホール11dをy方向に伸びる直線状にすることもできる。つまり、隣合うn型不純物領域4と半導体最表面から露出したp型ボディ領域3を繋ぐようにコンタクトホール11dを形成することもできる。この場合には、コンタクトホール11dのy方向の寸法が大きくなるため、本実施形態と比較すると接続部10の埋込み不良は発生し難くなる。
【0067】
図4Kに示す工程〕
接続部10の形成工程として、W膜を成膜したのち、CMPなどによる表面平坦化を行う。これにより、コンタクトホール11d内にWが埋め込まれ、Wプラグによる接続部10が形成される。このとき、上記したように、第2層間膜11bをPSG単層膜によって構成していてコンタクトホール11dの形状が維持されているため、コンタクトホール11d内に的確にWが入り込むようにでき、接続部10の埋込み不良を抑制することが可能となる。
【0068】
なお、本実施形態では、コンタクトホール11d内に配置された接続部10だけでなく、層間絶縁膜11の表面にもW膜の一部が残るようにしているが、この部分については残っていてもいなくても良い。
【0069】
この後は、図示しないが、上部電極12およびゲートライナーの形成工程、下部電極15の形成工程、PIQ膜13aと樹脂膜13bの成膜およびパターニングによる保護膜13の形成工程を行う。このようにして、本実施形態にかかる縦型MOSFETを有する半導体装置が完成する。
【0070】
以上説明した本実施形態の半導体装置によれば、以下に示す効果を得ることができる。
【0071】
まず、n型不純物領域4について、コンタクトトレンチ4bを通じてn型コンタクト領域4aと上部電極12とが電気的に接続させられるようにしている。このため、アバランシェ動作に入ったときに、アバランシェブレークダウンによって発生した正孔が上部電極12に引き抜かれるときに、コンタクトトレンチ4bを通じた経路で引き抜かれる。したがって、p型ボディ領域3での電圧の上昇を抑制でき、アバランシェ耐量の低下を抑制することが可能となる。
【0072】
また、p型ボディ領域3について、n型コンタクト領域4aが無い平面形状のp型ボディ領域3の表面にp型コンタクト領域3aを形成し、このp型コンタクト領域3aを通じて上部電極12と電気的に接続させられるようにしている。このため、負荷短絡時には、n型不純物領域4の間に位置しているp型ボディ領域3には電子の注入源となるn型コンタクト領域4aが存在しておらず、飽和電流密度を抑制することが可能となる。したがって、短絡耐量の低下を抑制することも可能となる。
【0073】
また、本実施形態の半導体装置では、侵入抑制膜となる第2層間膜11bをPSG単層膜で構成している。このため、PSG中のPがゲッタリングサイトとして機能し、侵入してきた外部イオンを捕獲できて、半導体側に外部イオンが侵入することを抑制できる。具体的には、図5に示すように、配線電極12aをパターニングする際に層間絶縁膜11が露出した状態になる。この状態で保護膜13が形成され、さらにめっき層12bが形成されることになり、図5中の矢印で示したように、保護膜13やめっき層12b中に含まれるNaなどの外部イオンが配線電極12aより露出した部分から侵入しようとする。しかしながら、第2層間膜11bとしてPSG単層膜を用いていることから、PSG中のPがゲッタリングサイトとして機能して外部イオンの侵入が抑制される。このため、外部イオンの侵入による縦型MOSFETの素子特性の変動を抑制することが可能となる。
【0074】
そして、第2層間膜11bとしてPSG単層膜を用いているため、膜形状が安定化し、コンタクトホール11dの形状が安定して、コンタクトホール11d内への接続部10の埋込みを良好にできる。このため、接続部10を通じて、上部電極12とp型ボディ領域3やn型不純物領域4との電気的接続を良好に行うことができ、コンタクト不良を抑制することが可能となる。
【0075】
具体的に、縦型MOSFETにおける素子特性の変動と第2層間膜11b中のP総量との関係について調べた。その結果について、図6図8を参照して説明する。
【0076】
まず、第2層間膜11bのP濃度と膜厚を変化させてP総量を調整した試料を作成した。そして、その試料に対して耐久試験としてPCB(Pressure Cooker Bias)試験を行い、そのPCB試験前後において、縦型MOSFETの閾値電圧Vthの変動量[V]を測定した。図6は、その結果を示している。
【0077】
この測定では、ドレイン側に所定電圧、例えば0.1[V]を印加すると共に、ソース側を接地電位、つまり0[V]とし、ゲート電圧を徐々に上昇させてゲート-ソース間電圧Vgsを変化させ、ドレイン-ソース間電流Idsの変化から閾値電圧Vthを調べた。そして、図7に示すように、PCB試験前の初期時の半導体装置の閾値電圧Vthと、PCB試験を所定時間、ここでは192時間行った後の閾値電圧Vthを測定し、その差を閾値電圧Vthの変動量ΔVth[V]として表した。なお、図7は、閾値電圧Vthの変動量ΔVthを分かりやすく示すために、第2層間膜11bを形成していない状態でゲート-ソース間電圧Vgsを変化させたときのドレイン-ソース間電流Idsの変化を示してある。
【0078】
図6に示すように、P総量の増加に伴って閾値電圧Vthの変動量が0に近づき、P総量が1700[wt%・nm]以上になるとその変動量ΔVthがほぼ0になった。第2層間膜11bのP濃度と膜厚を異ならせてP総量を変化させているが、P濃度や膜厚をどのように変化させたかには関係無く、P総量に基づいて閾値電圧Vthの変動量ΔVthが規定されていた。
【0079】
図6の測定結果から判るように、本実施形態の構成の半導体装置では、閾値電圧Vthの変動量ΔVthを小さくできている。この結果から、第2層間膜11bをPSG単層膜で構成しつつ、Pを導入することでPをゲッタリングサイトとして機能させられるため、縦型MOSFETの素子特性の変動を抑制できることが判る。特に、第2層間膜11bのP総量が1700[wt%・nm]以上となるようにすることで、より安定的な素子特性とすることが可能となる。このため、第2層間膜11bのP総量が1700[wt%・nm]以上となるように製造工程を管理し、第2層間膜11bのP濃度および膜厚を調整することで、素子特性の安定した半導体装置にできる。
【0080】
なお、P濃度や第2層間膜11bの膜厚の現状での製造限界を考慮しなければ、P総量に上限値は無く、図6に示すように、少なくとも4000[wt%・nm]までは半導体スイッチング素子が安定的な素子特性が確認できている。このため、少なくとも第2層間膜11bのP総量が1700~4000[wt%・nm]となるように工程管理を行えば、素子特性の安定した半導体装置にできる。具体的には、P総量が1700~4000[wt%・nm]の中間の任意の値、例えば2800[wt%・nm]を工程中心、つまり狙い値として設定して工程管理を行う。このようにすれば、第2層間膜11bのP総量が1700~4000[wt%・nm]となるようにでき、半導体装置の素子特性の安定化を図ることができる。
【0081】
また、図6の実験の際に、試料の1つについて、PCB試験を長時間行い、途中で複数回試料を取り出してその都度、閾値電圧Vthの変動量ΔVthを測定した。また、参考として、層間絶縁膜11として第2層間膜11bを形成せずに第1層間膜11aのみを形成した試料も作成し、閾値電圧Vthの変動量ΔVthを測定した。図8は、その結果を示している。
【0082】
この図に示すように、第2層間膜11bを形成していない試料については、図中Refのプロットで示したように、閾値電圧Vthの変動量ΔVthが1[V]以上と大きく、PCB試験の時間が長くなると更に変動量ΔVthが大幅に増加していた。これに対して、本実施形態のように、P総量を1700[wt%・nm]以上にしたPSG単層膜で構成される第2層間膜11bを備えた場合、図中PSGのプロットで示したように、閾値電圧Vthの変動量ΔVthが0.1[V]程度と小さくなった。つまり、PCB試験の時間が長くなっても変動量ΔVthの増加は少なかった。
【0083】
この結果から判るように、本実施形態の構成の半導体装置では、縦型MOSFETの素子特性の変動をより抑制できている。このように、P総量を1700[wt%・nm]以上にしたPSG単層膜で構成される第2層間膜11bを備えることで、より外部イオンの侵入を抑制でき、より安定的な素子特性の半導体装置とすることが可能となる。
【0084】
(第2実施形態)
第2実施形態と異なる部分についてのみ説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して層間絶縁膜11の形成工程を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0085】
まず、第1実施形態と同様、図4A図4Fに示す工程まで行って、第1層間膜11aまで形成する。その後、第1実施形態で説明した図4Gに示す工程、つまり第1層間膜11aの表面の平坦化を行うことなく、図9Aに示す工程として、第1層間膜11aの表面に第2層間膜11bを形成する。この工程は、第1実施形態の図4Hに示す工程と同様の工程として行われる。そして、図9Bに示す工程として、第2層間膜11bを平坦化する。その後は、第1実施形態で説明した図4Iに示す工程以降の各工程を行う。
【0086】
このように、第1層間膜11aを平坦化するのではなく、第2層間膜11bを平坦化するようにしても良い。この場合、第1層間膜11aの表面の凹凸高さを加味して第2層間膜11bの膜厚を制御し、平坦化後にも第2層間膜11bの厚みが残るようにすることで、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0087】
(他の実施形態)
本開示は、上記した実施形態に準拠して記述されたが、当該実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0088】
(1)例えば、上記各実施形態では、トレンチゲート構造として、シールド電極7およびゲート電極層8が積層されて二層構造となっているものを例に挙げたが、ゲート電極層8だけの単層構造とされていても良い。
【0089】
(2)また、上記各実施形態では、y方向においてコンタクトホール11dを離して破線状に構成しているが、これも一例を挙げたに過ぎず、y方向においてコンタクトホール11dを直線状に伸ばした形状にしても良い。
【0090】
ただし、上記実施形態のように、y方向においてコンタクトホール11dを離して破線状に構成する場合、コンタクトホール11dの開口面積が小さくなり、接続部10の埋込み不良が発生し易い。このため、y方向においてコンタクトホール11dを離して破線状に構成する場合に、第2層間膜11bをPSG単層膜によって構成すると、特に接続部10の埋込み不良を抑制するのに有効である。
【0091】
(3)また、上記各実施形態では、侵入抑制膜を構成する第2層間膜11bをPSG単層膜によって構成しているが、これも一例を挙げたに過ぎず、他の材料で第2層間膜11bを構成しても良い。例えば、第2層間膜11bをシリコン窒化膜(SiN)の単層膜によって構成することもできる。SiNは、外部イオンの移動度が低い材料であるため、第2層間膜11bをSiNで構成することで外部イオンが半導体側に侵入すること抑制することができる。
【0092】
第2層間膜11bをSiNで構成した場合について、第1実施形態で説明した図6と同様の実験を行った。図10は、その結果を示している。この図に示されるように、第2層間膜11bをSiNで構成した場合も、図中SiNのプロットで示したように、閾値電圧Vthの変動量を小さくできている。この結果から、第2層間膜11bをSiNで構成することで外部イオンの移動度を低下させられるため、外部イオンの侵入が抑制され、縦型MOSFETの素子特性の変動を抑制できることが判る。そして、SiNも高温でも形状を維持することができるリフロー温度の高い材料であるため、高温な活性化処理を行っても、コンタクトホール11d内に第2層間膜11bの一部が流動することが抑制される。このため、コンタクトホール11dの形状を維持することが可能となり、コンタクト不良が抑制できる。
【0093】
(4)また、上記各実施形態では、半導体基板1によって高濃度の不純物領域を形成し、その上にn型ドリフト層2をエピタキシャル成長させることで、高濃度層とn型ドリフト層2とが形成された基板を構成している。これは、ドリフト層を挟んでp型ボディ領域3と反対側に高濃度層を構成する場合の一例を示したに過ぎず、ドリフト層を半導体基板によって構成し、その一面側にイオン注入等を行うことで高濃度層を形成するようにしても良い。
【0094】
(5)また、上記各実施形態では、トレンチゲート構造を形成してから、p型ボディ領域3やn型不純物領域4を形成したが、これらの形成順を逆にしても良い。すなわち、p型ボディ領域3やn型不純物領域4が最終的にトレンチゲート構造の間に位置する部分に形成されていれば良い。
【0095】
(6)また、上記各実施形態では、第1導電型をn型、第2導電型をp型としたnチャネルタイプのトレンチゲート構造のMOSFETを半導体スイッチング素子の一例として説明した。しかしながら、これは一例を示したに過ぎず、他の構造の半導体スイッチング素子、例えばnチャネルタイプに対して各構成要素の導電型を反転させたpチャネルタイプのトレンチゲート構造のMOSFETとしても良い。さらに、MOSFET以外に、同様の構造のIGBTに対しても本発明を適用することができる。IGBTの場合、半導体基板1の導電型をn型からp型に変更する以外は、上記実施形態で説明した縦型MOSFETと同様である。
【符号の説明】
【0096】
3 p型ボディ領域
4 n型不純物領域
7 シールド電極
8 ゲート電極層
10 接続部
11 層間絶縁膜
11a~11c 第1~第3層間膜
11d コンタクトホール
12 上部電極
13 保護膜
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4H
図4I
図4J
図4K
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10