(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134121
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】連結治具および構造建築物の構築方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/41 20060101AFI20240926BHJP
E04G 21/12 20060101ALI20240926BHJP
E04G 21/02 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
E04B1/41 502N
E04G21/12 105Z
E04G21/02 103Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044241
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】田中 初太郎
(72)【発明者】
【氏名】小倉 大季
(72)【発明者】
【氏名】菊地 竜
(72)【発明者】
【氏名】山本 伸也
(72)【発明者】
【氏名】菅野 光寿
(72)【発明者】
【氏名】中島 忠大
(72)【発明者】
【氏名】山下 美帆
(72)【発明者】
【氏名】杉山 友也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 翔二
【テーマコード(参考)】
2E125
2E172
【Fターム(参考)】
2E125AF01
2E125AF03
2E125BA02
2E125BB01
2E125BD01
2E125BE01
2E125BF01
2E125CA05
2E125CA82
2E172AA05
2E172DC00
(57)【要約】
【課題】作業効率よく構造建築物を施工することができる連結治具および構造建築物の構築方法を提供する。
【解決手段】板状の本体部21と、本体部の一端に接続される第1保持部22と、本体部の他端に接続される第2保持部23と、を備え、第1保持部は、構造物に埋設される板状に形成され、第2保持部は、構造物と連結される構造体に接続可能な板状に形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の本体部と、
前記本体部の一端に接続される第1保持部と、
前記本体部の他端に接続される第2保持部と、を備え、
前記第1保持部は、構造物に埋設される板状に形成され、
前記第2保持部は、前記構造物と連結される構造体に接続可能な板状に形成されていることを特徴とする連結治具。
【請求項2】
前記本体部、前記第1保持部、および前記第2保持部は、鋼板で一体形成されている請求項1に記載の連結治具。
【請求項3】
前記第1保持部は、前記本体部に対して幅方向両側に延びる一対の延設片と、前記一対の延設片のそれぞれの先端から前記本体部が配された側に屈曲して突出する一対の突出片と、を備えている請求項1に記載の連結治具。
【請求項4】
前記第2保持部は、前記本体部の他端から二股に分かれて前記本体部の延設方向と同じ方向に延びる一対の連結片を備えている請求項1に記載の連結治具。
【請求項5】
前記一対の連結片の間には、連結板の一端が固定され、
前記連結板の他端には、前記構造体が連結される請求項4に記載の連結治具。
【請求項6】
付加製造装置を用いてモルタルを積層する工程と、
積層されるモルタルに、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の連結治具を所定位置に配置する工程と、
前記連結治具が配置された後に、前記付加製造装置を用いてさらにモルタルを積層して前記構造物を施工する工程と、
前記第2保持部の一対の連結片の間に、連結板を固定する工程と、
前記連結板の他端に前記構造体を連結する工程と、を備えていることを特徴とする構造建築物の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連結治具および構造建築物の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建築用の付加製造装置(所謂、3Dプリンタ)の開発が進んでいる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
付加製造装置を用いて建築物を構築する場合、材料を積層して部材を製作することから、部材に鉄骨などを取り付けるためのアンカーボルトなどを部材製作中に設置することが困難である。アンカーボルトを材料積層中に設置した場合、付加製造装置のノズルがアンカーボルトに干渉してしまい、積層作業に支障が出てしまう。そのため、現状では部材製作後にドリルなどで部材に孔をあけてアンカーボルトを取り付けており、作業が煩雑であった。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、作業効率よく構造建築物を施工することができる連結治具および構造建築物の構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る連結治具は、板状の本体部と、前記本体部の一端に接続される第1保持部と、前記本体部の他端に接続される第2保持部と、を備え、前記第1保持部は、構造物に埋設される板状に形成され、前記第2保持部は、前記構造物と連結される構造体に接続可能な板状に形成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明による連結治具は、板状に形成されているため、例えば、付加製造装置で施工中の構造物の所定位置に配置した後も当該連結治具が支障になることなく構造物の施工を継続することができる。つまり、当該連結治具を用いることで作業効率よく構造建築物を施工することができる。
【0008】
また、本発明の連結治具は、前記本体部、前記第1保持部、および前記第2保持部は、鋼板で一体形成されていてもよい。
このように連結治具が一体形成されていることで、連結治具の製造も容易に行うことができる。
【0009】
また、本発明の連結治具は、前記第1保持部は、前記本体部に対して幅方向両側に延びる一対の延設片と、前記一対の延設片のそれぞれの先端から前記本体部が配された側に屈曲して突出する一対の突出片と、を備えていてもよい。
このように第1保持部に一対の延設片と一対の突出片とを形成することで、構造物に連結治具を配置した際に、構造物に対して確実に保持させることができる。
【0010】
また、本発明の連結治具は、前記第2保持部は、前記本体部の他端から二股に分かれて前記本体部の延設方向と同じ方向に延びる一対の連結片を備えていてもよい。
このように第2保持部に一対の連結片を形成することで、簡易な構造で構造物と、鉄骨などの構造体と、を連結させることができる。
【0011】
また、本発明の連結治具は、前記一対の連結片の間には、連結板の一端が固定され、前記連結板の他端には、前記構造体が連結されていてもよい。
このように構造体が直接連結される連結板を一対の連結片に固定することにより、鉄骨などの構造体に余計な加工などを施すことなく連結させることができる。
【0012】
本発明に係る構造建築物の構築方法は、付加製造装置を用いてモルタルを積層する工程と、積層されるモルタルに、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の連結治具を所定位置に配置する工程と、前記連結治具が配置された後に、前記付加製造装置を用いてさらにモルタルを積層して前記構造物を施工する工程と、前記第2保持部の前記一対の連結片の間に、前記連結板を固定する工程と、前記連結板の他端に前記構造体を連結する工程と、を備えていることを特徴とする。
【0013】
本発明による構造建築物の構築方法は、板状に形成された連結治具を用いているため、付加製造装置で施工中の構造物となる積層モルタルの所定位置に配置した後も当該連結治具が支障になることなくモルタルを継続して積層することができる。つまり、当該連結治具を用いることで作業効率よく構造建築物を施工することができる。また、連結治具の第2保持部に連結板を固定した後、連結板に鉄骨などの構造体を容易に連結し、構造物と構造体とを一体化した構造建築物を効率よく施工することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の連結治具および構造建築物の構築方法によれば、作業効率よく構造建築物を施工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態においてモルタル層を積層して形成した構造物を示す斜視図である。
【
図3】本実施形態における構造建築物の構築方法を説明する図であって、構造物に連結治具を配置する直前の状態を示す図である。
【
図4】本実施形態における構造建築物の構築方法を説明する図であって、構造物に連結治具を配置した状態を示す図である。
【
図5】本実施形態における構造建築物の構築方法を説明する図であって、連結治具配置後にさらに構造物を施工している状態を示す図である。
【
図6】本実施形態における構造建築物の構築方法を説明する図であって、連結治具に連結板を取り付けた状態を示す図である。
【
図7】本実施形態における構造建築物の構築方法を説明する図であって、連結板に構造体を連結した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態による連結治具および構造建築物の構築方法について、図面に基づいて説明する。
【0017】
本実施形態の連結治具が装着される対象について説明する。本実施形態の連結治具の保持対象は、モルタル材料からなる未硬化状態の構造物である。モルタル材料とは、モルタル、コンクリート等のセメント系の未硬化状態の材料である。未硬化状態とは十分な強度が得られる程度に硬化が進行していない状態であり、半硬化状態も含まれる。
【0018】
本実施形態の未硬化状態の構造物10は、例えば
図1に示すように、付加製造装置11を所定位置で繰り返し移動させつつモルタル層12を押出すことで形成される。この未硬化状態の構造物10は未硬化状態のモルタル層12が多数積層されて所定の造形形状に形成された積層体である。
【0019】
連結治具20は、モルタル層12の層間の所定位置に配置されている。本実施形態では、上下に隣り合うモルタル層12の層間に2個の連結治具20が取り付けられている。連結治具20を介して、構造物10と、鉄骨などの構造体30(
図7参照)と、が連結される。
【0020】
図2に示すように、連結治具20は、板状の本体部21と、本体部21の一端に接続される第1保持部22と、本体部21の他端に接続される第2保持部23と、を備えている。本体部21と、第1保持部22と、第2保持部23と、は一体形成された板材である。連結治具20は、例えば、ステンレス製の板状の鋼板である。連結治具20は、厚さ12mm以下の板材である。
【0021】
第1保持部22は、本体部21に対して幅方向両側に延びる一対の延設片24,24と、一対の延設片24,24のそれぞれの先端から本体部21が配された側に屈曲して突出する一対の突出片25,25と、を備えている。第1保持部22は、本体部21と同じ厚さの板材で構成されている。
【0022】
第2保持部23は、本体部21の他端から二股に分かれて本体部21の延設方向と同じ方向に延びる一対の連結片26,26を備えている。一対の連結片26,26の隙間には、鉄骨などの構造体30と連結するための連結板40が取り付け可能に構成されている。第2保持部23と、連結板40と、は例えば溶接により連結する。第2保持部23は、本体部21と同じ厚さの板材で構成されている。
【0023】
連結板40は、板状の部材である(
図6参照)。連結板40は、第2保持部23の一対の連結片26,26の隙間と略同一の板厚を有する板材である。連結板40は、一対の連結片26,26の隙間に嵌め込んだ状態で溶接などにより連結治具20に固定される。連結板40における連結治具20とは反対側の端部近傍にはボルト孔41が形成されている。ボルト孔41を介して構造体30として例えば鉄骨31が連結される。
【0024】
本実施形態の構造建築物1の構築方法について説明する。
図3に示すように、付加製造装置11を用いてモルタル層12を積層して構造物10の施工を行う。
【0025】
図4に示すように、連結治具20を取り付ける高さまでモルタル層12が施工された後、所定位置に連結治具20を配置する。本実施形態では、下側の連結治具20を取り付けた後、付加製造装置11にてモルタル層12を一層施工する。その後、下側の連結治具20と平面視で略同じ位置に上側の連結治具20を配置する。
【0026】
図5に示すように、連結治具20の配置が完了した後、引き続き付加製造装置11を用いてモルタル層12を積層し、所定サイズの構造物10を施工する。
【0027】
図6に示すように、構造物10のモルタル層12が硬化して所定の強度が得られる状態になったら連結治具20に連結板40を取り付ける。連結板40は、連結治具20の一対の連結片26,26の隙間に嵌め込んだ状態で溶接により固定する。
【0028】
図7に示すように、連結板40に構造体30である鉄骨31を連結する。鉄骨31の端部には連結板40と接合するための連結部32が設けられている。連結部32には連結板40のボルト孔41と略同一形状のボルト孔33が形成されている。連結板40のボルト孔41と、連結部32のボルト孔33と、の位置を合わせた後、ボルト・ナット(不図示)を用いて締結することで、連結板40に鉄骨31が連結される。なお、ボルト孔は1箇所ではなく複数箇所形成してボルト固定できるようにしてもよい。この工程を経ることで、構造物10と鉄骨31とを連結した構造建築物1を施工することができる。
【0029】
本実施形態の連結治具20は、板状の本体部21と、本体部21の一端に接続される第1保持部22と、本体部21の他端に接続される第2保持部23と、を備え、第1保持部22は、構造物10に埋設される板状に形成され、第2保持部23は、構造物10と連結される構造体30に接続可能な板状に形成されている。このように連結治具20は、板状に形成されているため、例えば、付加製造装置11で施工中の構造物10の所定位置に配置した後も当該連結治具20が支障になることなく構造物10の施工を継続することができる。つまり、連結治具20を用いることで作業効率よく構造建築物1を施工することができる。
【0030】
また、本実施形態の連結治具20は、本体部21、第1保持部22、および第2保持部23が、ステンレス鋼板で一体形成されているため、連結治具20の製造も容易に行うことができる。
【0031】
また、本実施形態の連結治具20は、第1保持部22が本体部21に対して幅方向両側に延びる一対の延設片24,24と、一対の延設片24,24のそれぞれの先端から本体部21が配された側に屈曲して突出する一対の突出片25,25と、を備えているため、構造物10に連結治具20を配置した際に、構造物10に対して確実に保持させることができる。
【0032】
また、本実施形態の連結治具20は、第2保持部23が本体部21の他端から二股に分かれて本体部21の延設方向と同じ方向に延びる一対の連結片26,26を備えているため、簡易な構造で構造物10と、鉄骨31などの構造体30と、を連結させることができる。
【0033】
また、本実施形態の連結治具20は、一対の連結片26,26の間に連結板40の一端が固定され、連結板40の他端には、構造体30が連結される。このように、構造体30が直接連結される連結板40を一対の連結片26,26に固定することにより、鉄骨31などの構造体30に余計な加工などを施すことなく連結させることができる。
【0034】
本実施形態の構造建築物1の構築方法は、付加製造装置11を用いてモルタル層12を積層する工程と、積層されるモルタル層12に連結治具20を所定位置に配置する工程と、連結治具20が配置された後に、付加製造装置11を用いてさらにモルタル層12を積層して構造物10を施工する工程と、第2保持部23の一対の連結片26,26の間に、連結板40を固定する工程と、連結板40の他端に構造体30を連結する工程と、を備えている。
【0035】
本実施形態の構造建築物1の構築方法によれば、板状に形成された連結治具20を用いているため、付加製造装置11で施工中の構造物10となるモルタル層12の所定位置に連結治具20を配置した後も連結治具20が支障になることなくモルタル層12を継続して積層することができる。つまり、連結治具20を用いることで作業効率よく構造建築物1を施工することができる。また、連結治具20の第2保持部23に連結板40を固定した後、連結板40に鉄骨31などの構造体30を容易に連結し、構造物10と構造体30とを一体化した構造建築物1を効率よく施工することができる。
【0036】
以上、本発明による連結治具および構造建築物の構築方法の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0037】
例えば、本実施形態では連結治具20の本体部21、第1保持部22、第2保持部23をステンレス鋼板で一体形成した場合の説明をしたが、一部を別体としてもよく、また、別の材質で形成してもよい。
【0038】
また、第1保持部22は、構造物10のモルタル層12内に支持固定できれば形状は問わない。また、第2保持部23は、構造体30(鉄骨31)が連結できれば形状は問わない。さらに、連結板40は、連結治具20と構造体30が直接連結できる構造になっていれば無くてもよい。また、連結板40は、連結治具20と構造体30とが連結できれば形状は問わない。
【符号の説明】
【0039】
1…構造建築物
10…構造物
11…付加製造装置
12…モルタル層(モルタル)
20…連結治具
21…本体部
22…第1保持部
23…第2保持部
24…延設片
25…突出片
26…連結片
30…構造体
40…連結板