(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134126
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】電圧制御発振器、クロック生成回路、送受信装置
(51)【国際特許分類】
H03B 5/12 20060101AFI20240926BHJP
H03L 7/099 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
H03B5/12 B
H03B5/12 G
H03L7/099
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044247
(22)【出願日】2023-03-20
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/ポスト5G情報通信システムの開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】浦川 剛
【テーマコード(参考)】
5J081
5J106
【Fターム(参考)】
5J081AA02
5J081BB01
5J081BB10
5J081CC05
5J081DD04
5J081DD11
5J081DD24
5J081EE02
5J081EE03
5J081FF25
5J081GG05
5J106AA04
5J106BB01
5J106CC01
5J106CC21
5J106CC52
5J106DD05
5J106DD08
5J106GG01
5J106HH01
5J106JJ01
5J106KK02
5J106LL01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高周波数の信号を生成できる電圧制御発振器、クロック生成回路及び送受信装置を提供する。
【解決手段】電圧制御発振器112において、第1インダクタL1は、第1端N1、第2端N2及びセンタータップCTを有する。第1可変容量CCは、第1端N1と第2端N2との間に接続されている。第2可変容量VC1は、第1端N1と可変の第1電圧を印加される第1ノードNVとの間に接続されている。第3可変容量VC2は、第2端N2と第1ノードNVとの間に接続されている。第2インダクタL2は、第1インダクタL1と磁気結合するように設けられ、第3端N3及び第4端N4を有する。第1バッファBF1は、第3端N3と電気的に接続された第1入力IN1及び第4端N4と電気的に接続された第2入力II1を有する。第2バッファBF2は、第3端N3と電気的に接続された第3入力IN2及び第4端N4と電気的に接続された第4入力II2を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端及び第2端を有する第1インダクタと、
前記第1端と前記第2端との間に接続された第1可変容量と、
前記第1端と可変の第1電圧を印加される第1ノードとの間に接続され、前記第1電圧に基づく可変の容量を有する第2可変容量と、
前記第2端と前記第1ノードとの間に接続され、前記第1電圧に基づく可変の容量を有する第3可変容量と、
前記第1端と、第2電圧を印加される第2ノードとの間に接続された第1トランジスタと、
前記第2端と、前記第2ノードとの間に接続された第2トランジスタと、
前記第1インダクタと磁気結合するように設けられ、第3端及び第4端を有する第2インダクタと、
前記第3端と電気的に接続された第1入力及び前記第4端と電気的に接続された第2入力を有する第1バッファと、
前記第3端と電気的に接続された第3入力及び前記第4端と電気的に接続された第4入力を有する第2バッファと、
を備える電圧制御発振器。
【請求項2】
前記第1インダクタは、第1軸及び第2軸に沿って延びる線状の形状を有する第1導電体を備え、
前記第2インダクタは、前記第1インダクタと交わることなく、前記第1軸及び前記第2軸に沿って延びる線状の形状を有する第2導電体を備える、
請求項1に記載の電圧制御発振器。
【請求項3】
第1導電体の前記第1軸及び前記第2軸に沿った形状は、前記第1軸及び前記第2軸それぞれと直交する第3軸に沿って見た場合に、第2導電体の前記第1軸及び前記第2軸に沿った形状と重なる、
請求項2に記載の電圧制御発振器。
【請求項4】
前記第1導電体は、突出部を含み、
前記突出部は、前記第1導電体の一端と他端との間に位置し、前記第1導電体の線から突出する、
請求項3に記載の電圧制御発振器。
【請求項5】
前記突出部は、電流を供給される、
請求項4に記載の電圧制御発振器。
【請求項6】
前記第2導電体は、一端と他端とを有し、
前記第2導電体は、前記第2導電体の前記一端と前記他端との間で電圧を供給されない、
請求項5に記載の電圧制御発振器。
【請求項7】
前記第1入力、前記第2入力、前記第3入力、及び前記第4入力は、前記第1端及び前記第2端と直接に又は容量を介して接続されていない、
請求項1に記載の電圧制御発振器。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の電圧制御発振器と、
前記第3端上の第1信号又は前記第4端上の第2信号の第1周波数を分周した第2周波数を有する第3信号を出力する第1回路と、
前記第3信号を受け取り、前記第1ノードに前記第1電圧を供給する第2回路と、
を備えるクロック生成回路。
【請求項9】
前記第2回路は、第1クロック信号を受け取り、前記第1クロック信号の第3周波数と、前記第2周波数との違いに基づいて、前記第1電圧を生成する、
請求項8に記載のクロック生成回路。
【請求項10】
送受信装置であって、
請求項8に記載のクロック生成回路と、
前記第1バッファから出力される第4信号を受け取り、前記第4信号を使用して第5信号を出力する第3回路と、
前記送受信装置の外部から第6信号を受け取り、前記第2バッファから出力される第7信号を受け取る第4回路と、
を備える送受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、概して、電圧制御発振器、クロック生成回路、送受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
メモリと、メモリを制御するコントローラとを含んだシステムが知られている。このようなシステムの高速な動作に対する要求が高まっている。このようなシステムにおいて、100Gbpsを超える高速なデータレートを実現するために、非常に高い周波数のクロック信号の使用が考えられる。このような非常に高い周波数の信号を生成できる技術が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高周波数の信号を生成できる電圧制御発振器、クロック生成回路、送受信装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態による電圧制御発振器は、第1インダクタと、第1可変容量と、第2可変容量と、第3可変容量と、第1トランジスタと、第2トランジスタと、第2インダクタと、第1バッファと、第2バッファと、を備える。
【0006】
上記第1インダクタは、第1端及び第2端を有する。上記第1可変容量は、上記第1端と上記第2端との間に接続されている。上記第2可変容量は、上記第1端と可変の第1電圧を印加される第1ノードとの間に接続されており、上記第1電圧に基づく可変の容量を有する。上記第3可変容量は、上記第2端と上記第1ノードとの間に接続されており、上記第1電圧に基づく可変の容量を有する。上記第1トランジスタは、上記第1端と、第2電圧を印加される第2ノードとの間に接続されている。上記第2トランジスタは、上記第2端と、上記第2ノードとの間に接続されている。上記第2インダクタは、上記第1インダクタと磁気結合するように設けられ、第3端及び第4端を有する。上記第1バッファは、上記第3端と電気的に接続された第1入力及び上記第4端と電気的に接続された第2入力を有する。上記第2バッファは、上記第3端と電気的に接続された第3入力及び上記第4端と電気的に接続された第4入力を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1実施形態の電圧制御発振器を含んだ送受信装置を含んだシステムの機能ブロックを示す。
【
図2】
図2は、第1実施形態の電圧制御発振器を含んだ送受信装置の機能ブロックを示す。
【
図3】
図3は、第1実施形態の電圧制御発振器を含んだクロック生成回路の機能ブロックを示す。
【
図4】
図4は、第1実施形態の電圧制御発振器の構成要素及び構成要素の接続を示す。
【
図5】
図5は、第1実施形態の電圧制御発振器のインダクタの構造の例を示す。
【
図6】
図6は、第1実施形態の電圧制御発振器のインダクタの構造の例を示す。
【
図7】
図7は、第1実施形態の電圧制御発振器の幾つかのノードの電位を時間に沿って示す。
【
図8】
図8は、第1実施形態の電圧制御発振器の幾つかのノードの電位を時間に沿って示す。
【
図9】
図9は、第1実施形態の電圧制御発振器の幾つかのノードの電位を時間に沿って示す。
【
図10】
図10は、第1実施形態及び比較例の電圧制御発振器の動作のシミュレーションの結果を示す。
【
図11】
図11は、第1実施形態及び比較例の電圧制御発振器による特性を示す。
【
図12】
図12は、第1実施形態及び比較例の電圧制御発振器による特性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に実施形態が図面を参照して記述される。或る実施形態又は相違する実施形態での略同一の機能及び構成を有する複数の構成要素は、互いに区別されるために、参照符号の末尾にさらなる数字又は文字が付加される場合がある。
【0009】
本明細書及び特許請求の範囲において、或る第1要素が別の第2要素に「接続されている」とは、第1要素が直接的又は常時或いは選択的に導電性となる要素を介して第2要素に電気的に接続されていることを含む。
【0010】
1.第1実施形態
1.1.構成(構造)
図1は、第1実施形態の電圧制御発振器を含んだ送受信装置を含んだシステムの機能ブロックを示す。
図1に示されるように、システム100は、送受信装置1、データ送受信装置2、及びデータ送受信装置2を含む。
【0011】
データ送受信装置2及び3は、データを送信及び受信する機能を含んだ装置である。データ送受信装置2は、データ送受信装置3との間でデータを含んだ信号を送信及び受信する。データは、データ送受信装置2とデータ送受信装置3との間で授受されるあらゆる情報を含む。データ送受信装置2及び3の例は、メモリ及びホスト装置を含む。一例において、データ送受信装置2は、ホスト装置であり、データ送受信装置3は、メモリである。この例に基づくと、データの例は、コマンド、制御信号、メモリに書き込まれるデータ、メモリから読み出されたデータ、メモリに対して書き込まれるデータ及び読み出されるデータを特定するアドレスを含んだ情報、メモリの状態を示すステータス情報を含む。
【0012】
送受信装置1は、データ送受信装置2及びデータ送受信装置3と通信する装置である。送受信装置1は、通信路を使用してデータ送受信装置2と通信できるとともに、他の通信路を使用してデータ送受信装置3と通信できる。何れの通信路も、有線の形態を有していてもよいし、無線の形態を有していてもよい。送受信装置1は、中継装置又はブリッジ装置として機能し、データ送受信装置2とデータ送受信装置3との間の通信を中継する。すなわち、送受信装置1は、データ送受信装置2から送信された信号を受け取り、受け取られた信号に含まれるデータを含んだ信号をデータ送受信装置3に送信する。送受信装置1はまた、データ送受信装置3から送信された信号を受け取り、受け取られた信号に含まれるデータを含んだ信号をデータ送受信装置2に送信する。一例において、送受信装置1は、半導体を含んだチップの形態を有する。
【0013】
システム100は、直列に接続された2以上の送受信装置1を含んでいてもよい。
【0014】
図2は、第1実施形態の電圧制御発振器を含んだ送受信装置の機能ブロックを示す。
図2に示されるように、送受信装置1は、クロック生成回路11、受信回路12、送信回路13、及びデータ処理回路14を含む。
【0015】
クロック生成回路11は、データの送信及び受信に使用されるクロック信号CLKを生成する。クロック信号CLKは、或る周波数を有する周期信号である。クロック信号CLKは、一般的に差動信号からなる。
【0016】
受信回路12は、受信信号を受け取る。受信信号は、データ送受信装置2からデータ送受信装置3に信号が送信される場合は、データ送受信装置2から送信される信号である。受信信号は、データ送受信装置3からデータ送受信装置2に信号が送信される場合は、データ送受信装置3から送信される信号である。受信回路12は、クロック生成回路11からクロック信号CLKを受け取る。受信回路12は、クロック信号CLKに基づくタイミングで動作する。すなわち、受信回路12は、クロック信号CLKを使用して、受信信号を受け取る。加えて又は代替的に、受信回路12は、クロック信号CLKを使用して、受け取られた受信信号を復調して、受信信号に含まれるデータ、すなわち、受信データを取得する。受信回路12は、取得した受信データを14に出力する。
【0017】
送信回路13は、送信信号を出力する。送信信号は、データ送受信装置2からデータ送受信装置3に信号が送信される場合は、データ送受信装置3に送信される信号であり、データ送受信装置2から受け取った受信信号に含まれるデータを含む。送信信号は、データ送受信装置3からデータ送受信装置2に信号が送信される場合は、データ送受信装置2に送信される信号であり、データ送受信装置3から受け取った受信信号に含まれるデータを含む。送信回路13は、送信データ及びクロック信号CLKを受け取る。送信回路13は、クロック信号CLKに基づくタイミングで動作する。すなわち、送信回路13は、クロック信号CLKを使用して、送信データを処理し、処理した信号を送信信号として出力する。加えて又は代替的に、送信回路13は、クロック信号CLKを使用して送信データを変調し、変調によって得られる送信信号を生成及び出力する。
【0018】
データ処理回路14は、受信回路12で復調したデータを含む受信データを受け取る。また、データ処理回路14は、受け取った受信データ又は他のデータに基づいて、送信データを生成し、生成した送信データを出力する。データ処理回路14が出力した送信データは、送信回路13に送信される。
【0019】
図3は、第1実施形態の電圧制御発振器を含んだクロック生成回路11の機能ブロックを示す。クロック生成回路11は、基準クロック生成回路111、電圧制御発振器112、分周器113、及び位相比較器114を含む。
【0020】
基準クロック生成回路111は、基準クロック信号Frを生成する。基準クロック信号Frは、周期信号であり、或る固定の周波数を有する。基準クロック生成回路111の例は、水晶振動子を含む。
【0021】
電圧制御発振器112は、制御信号CNに基づいて、クロック信号CLKを生成する。制御信号CNは、クロック信号CLKの周波数を一定にするように機能する大きさの電圧を有する。
【0022】
分周器113は、クロック信号CLKを受け取り、内部クロック信号Fdを出力する。内部クロック信号Fdは、クロック信号CLKに基づく。内部クロック信号Fdは、周期信号であり、クロック信号CLKの周波数を分周した周波数を有する。
【0023】
位相比較器114は、基準クロック信号Frの位相と内部クロック信号Fdの位相差に基づく制御信号CNを出力する。位相比較器114は、内部クロック信号Fdと基準クロック信号Frとに基づく誤差信号を生成し、誤差信号を位相比較器114に含まれるループフィルタに供給する。ループフィルタの出力は、制御信号CNとして機能する。電圧制御発振器112は、制御信号CNの電圧に基づいてクロック信号CLKの周波数を調節することによって、原理上、実質的に一定の周波数のクロック信号CLKを出力する。本明細書及び請求の範囲において、「実質的に」は、「実質的に」が形容する文言が、文言が表現する内容の程度に文言通りの厳密さを要求せずに、不可避的な要因による誤差を含むことを表す。
【0024】
図4は、第1実施形態の電圧制御発振器112の構成要素及び構成要素の接続を示す。
図4はまた、電圧制御発振器112に関連する構成要素を示す。
【0025】
図4に示されるように、電圧制御発振器112は、インダクタL1並びにL2、可変容量CC、可変容量素子VC1並びにVC2、容量C3、トランジスタM1並びにM2、バッファBF1並びにBF2、及び容量素子C11、C12、C13、C14、C15、並びにC16を含む。
【0026】
インダクタL1は、ノードN1とノードN2との間に接続されている。インダクタL1は、センタータップCTを有する。センタータップCTは、電流源I1から電流を供給される。
【0027】
可変容量CCは、ノードN1とノードN2との間に接続されている。可変容量CCは、制御信号CN2を受け取り、制御信号CN2に基づいて変化する容量を有する。制御信号CN2は、制御信号CNに基づいていてもよいし、制御信号CNとは無関係に生成される信号であってもよい。可変容量CCは、ノードN1及びN2の間の容量を粗く調整し、いわゆる粗調整容量として機能する。一例において、可変容量は、容量素子C1及びC2並びにスイッチSW1の複数の組を有する。以下、1つの容量素子C1、1つの容量素子C2、及び1つのスイッチSW1の組は容量・スイッチセットと称される場合がある。各容量・スイッチセットは、ノードN1とノードN2との間に接続されている。各容量・スイッチセットにおいて、容量素子C1、スイッチSW1、及び容量素子C2は、この順で、直列に接続されている。各スイッチSW1は、制御信号CN2の一部を受け取る。各スイッチSW1は、自身が受け取る制御信号CN2に基づいてオン又はオフする。複数の容量・スイッチセットの幾つかのスイッチSW1がオンされることにより、可変容量CCは、相違する容量を有する。
【0028】
可変容量素子VC1及びVC2は、ノードN1とノードN2との間に直列に接続されており、ノードNVにおいて互いに接続されている。可変容量素子VC1は、可変容量素子VC1の両端の電圧に基づいて変化する容量を有する。可変容量素子VC2は、可変容量素子VC2の両端の電圧に基づいて変化する容量を有する。ノードNVは、制御信号CN1を受け取る。制御信号CN1は、制御信号CNに基づく大きさの電圧を有する。制御信号CN1の電圧の大きさに基づいて、可変容量素子VC1及びVC2のそれぞれの容量は変化する。可変容量素子VC1及びVC2の容量の変化により、ノードN1とノードN2との間の容量が変化する。可変容量素子VC1及びVC2の例は、バリキャップダイオード(又は、バラクタダイオード、可変容量ダイオード、或いは可変リアクタンスダイオードとも称される)を含む。
【0029】
容量C3は、固定の大きさの容量である。容量C3は、ノードN1とノードN2との間に存在し、ノードN1とノードN2との間の寄生容量を含む。
【0030】
トランジスタM1は、例えば、n型のMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である。トランジスタM1は、ノードN1と、接地電圧を受けるノードとの間に接続されている。トランジスタM1は、ゲートにおいて、ノードN2と接続されている。
【0031】
トランジスタM2は、例えば、n型のMOSFETである。トランジスタM2は、ノードN2と、接地電圧を受けるノードとの間に接続されている。トランジスタM2は、ゲートにおいて、ノードN1と接続されている。すなわち、トランジスタM1とトランジスタM2とはクロス接続されている。
【0032】
ノードN1上の信号とノードN2上の信号とは、差動信号を構成する。ノードN1上の信号及びノードN2上の信号の組は、発振信号と称される場合がある。或る差動信号を構成する2つの単相信号のうちの一方は反転信号と称され、2つの単相信号のうちの他方は非反転信号と称される場合がある。
【0033】
インダクタL2は、インダクタL1と磁気結合している。すなわち、インダクタL1及びインダクタL2は、トランスを構成する。インダクタL2は、ノードN3とノードN4との間に接続されている。ノードN3及びN4は、ノードN1ともノードN2とも接続されていない。ノードN3上の信号及びノードN4上の信号は、トランスの二次側の信号に相当する。ノードN3上の信号と及びノードN4上の信号とは、差動信号を構成する。トランスの一次側の信号は、発振信号である。
【0034】
バッファBF1は、差動バッファであり、差動信号を受け取り、受け取られた差動信号、又は受け取られた差動信号の波形が整えられた波形を有する差動信号を出力する。バッファBF1は、ノードN3上の信号及びノードN4上の信号を受け取り、受け取られた信号に基づくクロック信号CLKを出力する。すなわち、バッファBF1は、非反転信号の入力IN1において、容量素子C11を介して、ノードN3と接続されている。バッファBF1は、反転信号の入力II1において、容量素子C12を介して、ノードN4と接続されている。バッファBF1は、非反転信号の入力IN1で受け取られた信号を、非反転信号の出力ON1から出力する。バッファBF1は、反転信号の入力II1で受け取られた信号を、反転信号の出力OI1から出力する。非反転信号の出力ON1の信号及び反転信号の出力OI1の信号は、電圧制御発振器112から出力されるクロック信号CLKとして機能し、例えば、送信回路13に供給される。
【0035】
バッファBF2は、差動バッファであり、差動信号を受け取り、受け取られた差動信号、又は受け取られた差動信号の波形が整えられた波形を有する差動信号を出力する。バッファBF2は、ノードN3上の信号及びノードN4上の信号を受け取り、受け取られた信号に基づくクロック信号CLKを出力する。すなわち、バッファBF2は、非反転信号の入力IN2において、容量素子C13を介して、ノードN3と接続されている。バッファBF2は、反転信号の入力II2において、容量素子C14を介して、ノードN4と接続されている。バッファBF2は、非反転信号の入力IN2で受け取られた信号を、非反転信号の出力ON2から出力する。バッファBF2は、反転信号の入力II2で受け取られた信号を、反転信号の出力OI2から出力する。非反転信号の出力ON2の信号及び反転信号の出力OI2の信号は、電圧制御発振器112から出力されるクロック信号CLKとして機能し、例えば、受信回路12に供給される。
【0036】
容量素子C15は、ノードN3と分周器113の第1入力との間に接続されている。
【0037】
容量素子C16は、ノードN4と分周器113の第2入力との間に接続されている。
【0038】
図5及び
図6は、第1実施形態の電圧制御発振器112のインダクタL1及びL2の構造の例を示す。
図5は、z軸に沿って見られた場合の構造を示す。
図6は、斜視図である。
【0039】
インダクタL2は導電体21を含むか、導電体からなる。インダクタL1は導電体22を含むか、導電体からなる。
【0040】
一例において、
図5及び
図6に示されるように、導電体21は、x軸及びy軸からなるxy面に沿って線状の形状を有し、一端及び他端を有する。一端及び他端は、xy面に沿って並ぶ。導電体21は、一端及び他端の間の部分において、屈折又は湾曲している。すなわち、一例において、導電体21は、一端及び他端の間の部分において、弧を構成するか、多角形の輪郭の一部を構成する。
図5及び
図6は、導電体21が一端及び他端の間の部分において多角形の輪郭の一部を構成する例を示す。導電体21は、一端及び他端の間の部分において、弧と多角形の輪郭の一部の組合せからなる形状を有していてもよい。
【0041】
導電体22は、突出部22Bをさらに含むことを除いて、xy面に沿って導電体21の形状に沿った形状を有する。導電体22の突出部22B以外の部分は、基本部と称される場合がある。すなわち、導電体22は、突出部22Bと基本部とからなる。一例において、導電体22の基本部のxy面に沿った構造は、導電体21のxy面に沿った構造と重なる。一例において、導電体22の基本部のxy面に沿った構造は、導電体21のxy面に沿った構造と実質的に同じである。
【0042】
導電体22は、より具体的には、以下の形状を有する。導電体22の基本部は、xy面に沿って線状の形状を有し、一端及び他端を有する。一端及び他端は、xy面に沿って並ぶ。導電体22の基本部は、一端及び他端の間の部分において、屈折又は湾曲している。すなわち、一例において、導電体22の基本部は、一端及び他端の間の部分において、弧を構成するか、多角形の輪郭の一部を構成する。
図5及び
図6は、導電体22の基本部が一端及び他端の間の部分において多角形の輪郭の一部を構成する例を示す。導電体22の基本部は、一端及び他端の間の部分において、弧と多角形の輪郭の一部の組合せからなる形状を有していてもよい。
【0043】
突出部22Bは、導電体22の基本部の一端と他端とを結ぶ経路の実質的に中央において、基本部と接続されている。突出部22Bは、一例において、xy面に沿って四角形状を有する。突出部22Bは、センタータップCTとして機能する。
【0044】
導電体21及び22は、z軸に沿って並ぶ。
【0045】
1.2.動作
図7、
図8、及び
図9は、第1実施形態の電圧制御発振器の幾つかのノードの電位を時間に沿って示す。具体的には、
図7は、ノードN1及びN2の電位を示し、すなわち、インダクタL1及びL2のトランスの一次側の電位を示す。
図8は、ノードN3及びN4の電位を示し、すなわち、インダクタL1及びL2のトランスの二次側の電位を示す。
図9は、バッファBF1の非反転信号の出力ON1の電位及び反転信号の出力OI1の電位を示し、すなわち、電圧制御発振器112から出力されるクロック信号CLKの電位を示す。バッファBF2の非反転信号の出力ON2の電位及び反転信号の出力OI2の電位は、それぞれ、バッファBF1の非反転信号の出力ON1の電位及び反転信号の出力OI1の電位と同じであり、すなわち、
図9に示される通りである。
図7、
図8、及び
図9は、横軸の時刻と縦軸の電位を線形スケールの任意単位によって示す。
【0046】
図7に示されるように、電圧制御発振器112での発振により、2つの単相信号がノードN1及びN2上で現れる。2つの単相信号は、180°の位相の差を有し、差動信号を構成し、各々、電圧制御発振器112の容量及びインダクタンスに基づく周波数を有する周期信号である。
【0047】
図8に示されるように、電圧制御発振器112によって、二次側において、一次側の2つの単相信号に基づく2つの単相信号が得られる。2つの単相信号は、180°の位相の差を有し、差動信号を構成する。二次側の2つの単相信号の各々の振幅は、一次側の対応する単相信号の振幅の90%程度である。すなわち、二次側において、損失の少ない差動信号が生成されている。
【0048】
図9に示されるように、バッファBF1からの2つの単相信号、すなわち、出力ON1の電位及び出力OI1の電位の形状は、二次側の2つの単相信号がバッファBF1を介することにより成形されている。これにより、バッファBF1から出力される差動信号は、二次側の差動信号よりも高いスルーレートを有する。
【0049】
インダクタL2において、ノードN3及びN4の電位の直流成分は、電圧制御発振器112の外部から設定されない。しかしながら、ノードN3及びN4の電位は、バッファBF1(又は、バッファBF2)によって、バッファBF1(又は、BF2)において定められた電位を中心として振幅する電位となる。バッファBF1及びBF2は、第1実施形態の電圧制御発振器112に限らず電圧制御発振器において、通常、必要である。このため、ノードN3及びN4の電位の直流成分が外部から設定されていなくても、電圧制御発振器において必要とされるバッファBF1及びBF2により直流成分が設定される。すなわち、ノードN3及びN4の電位の直流成分が設定されていないことは、電圧制御発振器112の動作に影響しない。むしろ、インダクタL2への電流の供給による電力消費が回避される。
【0050】
1.3.利点(効果)
第1実施形態の電圧制御発振器は、以下に記述されるように、非常に高い周波数であっても広い周波数範囲に亘って好適な信号を生成できる。
【0051】
比較のために、比較例としての電圧制御発振器が記述される。一般に、電圧制御発振器は、電圧制御発振器の動作の原理に基づいて、電圧制御発振器112が可変容量CC、並びに可変容量素子VC1及びVC2を含むのと同じく、多くの容量を本質的に含む。さらに、一般に、電圧制御発振器は、電圧制御発振器112がバッファBF1及びBF2を含むのと同じく、バッファを不可避的に含み、さらに、電圧制御発振器112が分周器113と接続されているのと同じく、分周器と接続されている。比較例の電圧制御発振器は、電圧制御発振器112と異なり、ノードN1及びN2において、バッファBF1及びBF2並びに分周器113と直接的に接続される。このため、比較例の電圧制御発振器は、第1実施形態の電圧制御発振器112に比べて多くの容量を含む。
【0052】
電圧制御発振器における発振周波数は、電圧制御発振器のインダクタンス及び容量に依存し、インダクタンス及び容量の積の1/2乗に比例する。このため、求められる発振周波数がより高いと、インダクタンス及び容量は、より小さい必要がある。求められる発振周波数が低い場合、比較例の電圧制御発振器での大きさの容量であっても、発振が可能である。しかしながら、比較例の電圧制御発振器は、求められるような非常に高い周波数での発振を起こせない場合がある。
図10は、比較例の電圧制御発振器と電圧制御発振器112を同じ条件で動作させた場合のシミュレーション結果を示す。
図10は、横軸の容量及び縦軸の振幅を線形スケールの任意単位で示す。ここで振幅は、発振により得られる信号の振幅である。
図10に示されるように、比較例の電圧制御発振器では、条件によっては、十分な振幅を得られない。例えば、或る第2条件では、設置可能な最大の容量に近づくにつれ、振幅が急激に低下し、このようなワースト条件では実用に足る振幅が得られない。設置可能な最大の容量は、粗調整用の容量(すなわち、電圧制御発振器112での可変容量CC)が設置可能な最大の容量を有する場合に相当する。
【0053】
インダクタに供給される電流、すなわち、電圧制御発振器112でのインダクタL1にセンタータップCTから供給される電流に相当する電流を大きくすることによって、振幅を上げることが可能である。しかしながら、電流が大きいことにより、電圧制御発振器の消費電力が大きい。また、ノードN1及びN2に1つの共用のバッファを接続し、このバッファの出力に、送信回路及び受信回路の各々に接続されるバッファ並びに分周器を接続することが考えられる。これにより、電圧制御発振器の寄生容量は、共用のバッファによる容量へと低下する。しかしながら、共用のバッファ分だけバッファの数が増えることになるため、電圧制御発振器の消費電力が大きい。求められる発振周波数が高いほど、消費電力は大きく、非常に高い周波数の範囲では、インダクタへの供給電流の増加及び(又は)共用バッファの追加による消費電力の増加は非常に大きい。
【0054】
第1実施形態によれば、バッファBF1及びBF2並びに分周器113は、ノードN1及びN2と、トランスを介して接続されている。すなわち、ノードN1及びN2と接続されているインダクタL1はインダクタL2と磁気結合しており、インダクタL2の両端がバッファBF1及びBF2並びに分周器113の入力に接続されている。よって、バッファBF1及びBF2並びに分周器113は、ノードN1及びN2と、直接接続されておらず、容量素子を介して接続もされていない。このため、電圧制御発振器112は、バッファBF1及びBF2並びに分周器113との直接的な接続に起因する寄生容量を含まない。よって、電圧制御発振器112は、少ない容量しか含まない。このため、電圧制御発振器112は、非常に高い周波数で発振できる。
図10に示されるように、電圧制御発振器112は、比較例の電圧制御発振器より高い周波数の信号を生成できる。電圧制御発振器112は、代表的な第1、第2、及び第3条件の全てにおいて、いずれの容量においても比較例の電圧制御発振器による振幅より大きい振幅の信号を生成できる。特に、第2条件における容量が3Hの近傍といったワースト条件であっても、大きい振幅が得られる。
【0055】
図11は、第1実施形態の電圧制御発振器112及び比較例の電圧制御発振器による特性の一部を示す。具体的には、
図11は、
図10の領域AAに示される条件での電流と振幅の関係を示し、横軸の電流及び縦軸の振幅を線形スケールの任意単位で示す。比較例の電圧制御発振器では、求められる振幅を得るために、より多くの電流がインダクタに供給されている。一方、電圧制御発振器112によれば、比較例の電圧制御発振器による振幅と同じ振幅の発振を行うために、より少ない電流しか必要としない。例えば、電圧制御発振器112は、比較例の電圧制御発振器よりも25%少ない消費電流でK程度の振幅を実現できる。概して、電圧制御発振器112は、比較例の電圧制御発振器よりも25%以上少ない消費電流で同じ振幅を実現できる。
【0056】
又は、同じ消費電流である場合に、電圧制御発振器112は、比較例の電圧制御発振器よりも高い振幅を実現できる。例えば、4J程度の電流の場合に、電圧制御発振器112は、比較例の電圧制御発振器によって得られる振幅の2.5倍ほどの振幅を実現できる。
【0057】
図12は、第1実施形態の電圧制御発振器112及び比較例の電圧制御発振器による位相雑音特性を示す。具体的には、
図12(a)は、第1実施形態の電圧制御発振器による周波数ごとの位相ノイズを示し、
図12(b)は、比較例の電圧制御発振器による周波数ごとの位相ノイズを示す。
図12(a)及び
図12(b)は、横軸の周波数を対数スケールの任意単位で示し、縦軸の位相ノイズを線形スケールの任意単位で示す。
図12(a)及び
図12(b)に示されるように、第1実施形態及び比較例の電圧制御発振器は、同じ位相雑音特性を示す。すなわち、電圧制御発振器112による、比較例の電圧制御発振器からの位相ノイズ特性の劣化はない。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0059】
100…システム、
1…送受信装置、
2…データ送受信装置、
3…データ送受信装置、
11…クロック生成回路、
12…受信回路、
13…送信回路、
14…データ処理回路、
111…基準クロック生成回路、
112…電圧制御発振器、
113…分周器、
114…位相比較器、
CLK…クロック信号
Fr…基準クロック信号、
CN…制御信号、
BF1…バッファ、
BF2…バッファ、
CC…可変容量、
C1…容量素子、
C2…容量素子、
C3…容量、
M1…トランジスタ、
M2…トランジスタ、
C11…容量素子、
C12…容量素子、
C13…容量素子、
C14…容量素子、
C15…容量素子、
C16…容量素子、
L1…インダクタ、
L2…インダクタ、
21…導電体、
22…導電体、
VC1…可変容量素子、
VC2…可変容量素子