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特開2024-134127アンテナ装置及びこれを備えるICカード
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134127
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】アンテナ装置及びこれを備えるICカード
(51)【国際特許分類】
   H01Q 7/00 20060101AFI20240926BHJP
   G06K 19/077 20060101ALI20240926BHJP
   B42D 25/305 20140101ALI20240926BHJP
   H01Q 19/02 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
H01Q7/00
G06K19/077 144
G06K19/077 196
G06K19/077 216
G06K19/077 244
G06K19/077 272
G06K19/077 296
B42D25/305 100
H01Q19/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044248
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】梶木屋 翔磨
(72)【発明者】
【氏名】森木 朋大
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 由智
【テーマコード(参考)】
2C005
5J020
【Fターム(参考)】
2C005MA40
2C005NA08
5J020BC10
5J020DA02
(57)【要約】
【課題】メタルプレートが両面に配置されたICカードに適したアンテナ装置を提供する。
【解決手段】アンテナ装置1は、ボトムメタルプレート10と、ボトムメタルプレート10の外縁11~14に沿って周回する第1コイル110と、第1コイル110の開口110a内に配置され、第1コイル110に接続される第2コイル120とを備える。ボトムメタルプレート10は、Y方向に延在するスリット70を有する。スリット70は、第2コイル120と重なる第1区間S1と、第1区間S1とスリット70の第1端部71の間に位置する第2区間S2と、第1区間S1とスリット70の第2端部72の間に位置する第3区間S3とを含む。第2端部72は、ボトムメタルプレート10の外縁12に達することなく外縁12から第1距離D1離れた位置で終端する。第1距離D1は、第2及び第3区間S2,S3のいずれか長い方よりも短い。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1メタルプレートと、
平面視で前記第1メタルプレートと重なるよう配置され、前記第1メタルプレートの外縁に沿って周回する第1コイルと、
前記第1コイルの開口内に配置され、前記第1コイルに接続される第2コイルと、
を備え、
前記第1メタルプレートは、前記第1メタルプレートの長手方向に延在するスリットを有し、
前記スリットは、前記長手方向における両端に位置する第1及び第2端部を有し、
前記スリットの前記第1端部は、前記第1メタルプレートの前記外縁を分断するよう開放され、
前記スリットの前記第2端部は、前記第1メタルプレートの前記外縁に達することなく、前記外縁から第1距離離れた位置で終端し、
前記スリットは、前記第2コイルと重なる第1区間と、前記第1区間と前記第1端部の間に位置する第2区間と、前記第1区間と前記第2端部の間に位置する第3区間とを含み、
前記第1距離は、前記第2及び第3区間のいずれか長い方よりも短い、
アンテナ装置。
【請求項2】
前記第3区間は、前記第2区間より長い、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記スリットの幅は一定である、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記スリットの前記第2端部は、前記第1コイルの最内周ターンより内側に位置する、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記スリットの前記第2端部は、前記第1コイルの最内周ターンの内縁と第2距離離れており、
前記第1コイルの最外周ターンの外縁は、前記第1メタルプレートの前記外縁と第3距離離れており、
前記第2距離は、前記第3距離よりも大きい、
請求項4に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記第2距離は、前記第1コイルのパターン幅よりも大きい、
請求項5に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記スリットの幅は、前記第1コイルのターン間におけるスペース幅よりも大きく、前記第1コイルのパターン幅よりも小さい、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記第1及び第2コイルに対して直列に接続されるキャパシタをさらに備える、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項9】
前記第1及び第2コイルに対して並列に接続されるキャパシタをさらに備え、
前記第1コイルの線路長は、前記第2コイルの線路長より短い、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載のアンテナ装置と、
貫通孔を有する第2メタルプレートと、
前記第2メタルプレートの貫通孔内に配置されたICモジュールと、
を備え、
前記第1及び第2コイルは、前記ICモジュールと前記第2コイルが重なるよう、前記第1メタルプレートと前記第2メタルプレートの間に挟まれる、ICカード。
【請求項11】
前記第1メタルプレートは、前記スリットと重ならない位置に署名欄を有する、
請求項10に記載のICカード。
【請求項12】
前記署名欄は、前記第1メタルプレートの前記長手方向に沿った第1エッジと、前記第1エッジとは異なる方向に延在する第2エッジとを有し、
前記スリットの前記第2及び第3区間の一方は、前記第1エッジに沿う部分と、前記第2エッジに沿う部分を有する、
請求項11に記載のICカード。
【請求項13】
第1メタルプレートと、
前記第1メタルプレートと重なる第2メタルプレートと、
を備え、
前記第1メタルプレートは、前記第1メタルプレートの長手方向に延在する第1スリットを有し、
前記第1スリットは、前記長手方向における両端に位置する第1及び第2端部を有し、
前記第1スリットの前記第1端部は、前記第1メタルプレートの外縁を分断するよう開放され、
前記第1スリットの前記第2端部は、前記第1メタルプレートの前記外縁に達することなく、前記外縁から第1距離離れた位置で終端し、
前記第2メタルプレートは、貫通孔と、前記第2メタルプレートの外縁と前記貫通孔を繋ぐ第2スリットとを有し、
前記第1スリットは、前記貫通孔と重なる第1区間と、前記第1区間と前記第1端部の間に位置する第2区間と、前記第1区間と前記第2端部の間に位置する第3区間とを含み、
前記第1距離は、前記第2及び第3区間のいずれか長い方よりも短い、
アンテナ装置。
【請求項14】
前記第2スリットの幅は、前記第1スリットの幅より狭い、
請求項13に記載のアンテナ装置。
【請求項15】
請求項13又は14に記載のアンテナ装置と、
前記貫通孔内に配置されたICモジュールと、
を備えるICカード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アンテナ装置及びこれを備えるICカードに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、メタルプレートが両面に配置されたICカードが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許公開第2021/0350198号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、メタルプレートが両面に配置されたICカードに適したアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施態様によるアンテナ装置は、第1メタルプレートと、平面視で第1メタルプレートと重なるよう配置され、第1メタルプレートの外縁に沿って周回する第1コイルと、第1コイルの開口内に配置され、第1コイルに接続される第2コイルとを備え、第1メタルプレートは、第1メタルプレートの長手方向に延在するスリットを有し、スリットは、長手方向における両端に位置する第1及び第2端部を有し、スリットの第1端部は、第1メタルプレートの外縁を分断するよう開放され、スリットの第2端部は、第1メタルプレートの外縁に達することなく、外縁から第1距離離れた位置で終端し、スリットは、第2コイルと重なる第1区間と、第1区間と第1端部の間に位置する第2区間と、第1区間と第2端部の間に位置する第3区間とを含み、第1距離は、第2及び第3区間のいずれか長い方よりも短い。
【0006】
本開示の他の実施態様によるアンテナ装置は、第1メタルプレートと、第1メタルプレートと重なる第2メタルプレートとを備え、第1メタルプレートは、第1メタルプレートの長手方向に延在する第1スリットを有し、第1スリットは、長手方向における両端に位置する第1及び第2端部を有し、第1スリットの第1端部は、第1メタルプレートの外縁を分断するよう開放され、第1スリットの第2端部は、第1メタルプレートの外縁に達することなく、外縁から第1距離離れた位置で終端し、第2メタルプレートは、貫通孔と、第2メタルプレートの外縁と貫通孔を繋ぐ第2スリットとを有し、第1スリットは、貫通孔と重なる第1区間と、第1区間と第1端部の間に位置する第2区間と、第1区間と第2端部の間に位置する第3区間とを含み、第1距離は、第2及び第3区間のいずれか長い方よりも短い。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、メタルプレートが両面に配置されたICカードに適したアンテナ装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の一実施形態によるアンテナ装置を備えるICカード3の外観を示す略斜視図である。
図2図2は、ICカード3の構造を説明するための略分解斜視図である。
図3図3は、ICカード3の構造を説明するための略断面図である。
図4図4は、アンテナ装置1に用いるボトムメタルプレート10の略平面図である。
図5図5は、基材20の第1主面21に形成された導体パターンの略平面図である。
図6図6は、基材20の第2主面22に形成された導体パターンの略平面図である。
図7図7は、アンテナ装置1の等価回路図である。
図8図8は、変形例によるアンテナ装置の等価回路図である。
図9図9は、ボトムメタルプレート10と基材20を重ねた状態を示す略平面図である。
図10図10は、ICモジュール50を裏面側から見た略斜視図である。
図11図11は、ICカード3とカードリーダー6が通信を行う状態を示す模式図である。
図12図12は、変形例によるボトムメタルプレート10の略平面図である。
図13図13は、本開示の他の実施形態によるアンテナ装置2を備えるICカード4の構造を説明するための略分解斜視図である。
図14図14は、アンテナ装置2に用いるボトムメタルプレート10の略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について詳細に説明する。
【0010】
図1は、本開示の一実施形態によるアンテナ装置を備えるICカード3の外観を示す略斜視図である。
【0011】
図1に示すように、本実施形態によるICカード3は、Y方向を長手方向、X方向を短手方向、Z方向を厚み方向とする板状体であり、XY面を構成する上面3aと裏面3bを有している。ICカード3には後述するICモジュールが内蔵されており、ICモジュールの端子電極EがICカード3の上面3aに露出している。
【0012】
図2及び図3は、それぞれ本開示の一実施形態によるアンテナ装置1を備えるICカード3の構造を説明するための略分解斜視図及び略断面図である。
【0013】
図2及び図3に示すICカード3は、裏面3b側から上面3a側に向かって、ボトムメタルプレート10、基材20、磁性体30及びトップメタルプレート40がこの順に積層された構造を有している。ボトムメタルプレート10は第1のメタルプレートを構成し、その表面はICカード3の裏面3bを構成する。トップメタルプレート40は第2のメタルプレートを構成し、その表面はICカード3の上面3aを構成する。トップメタルプレート40及びボトムメタルプレート10は、ステンレスやチタンなどの金属材料からなる。トップメタルプレート40には貫通孔41が設けられており、貫通孔41の内部にはICモジュール50が配置されている。このように、ICカード3は、本体の両面にメタルプレートが用いられたカードである。
【0014】
基材20は、絶縁性樹脂材料からなるフィルムであり、互いに反対側に位置する第1及び第2主面21,22に導体パターンが形成されている。基材20に設けられた導体パターンは、第1コイル110及び第2コイル120を含む。本実施形態によるアンテナ装置1は、少なくとも、ボトムメタルプレート10、第1コイル110及び第2コイル120によって構成される。ボトムメタルプレート10は主に電磁界結合を利用して外部と通信するアンテナとして機能し、第1コイル110は主にボトムメタルプレート10と電磁界結合する共振回路として機能し、第2コイル120は主にICモジュール50と電磁界結合するカップリングコイルとして機能する。本実施形態においては、第1及び第2コイル110,120がボトムメタルプレート10とトップメタルプレート40の間に挟まれる。
【0015】
導体パターンを構成する導電材料としては、例えば、銅、アルミニウム、又はこれらの合金などが挙げられる。フィルム状の基材20を構成する絶縁性樹脂材料の例としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)やPI(ポリイミド)などが挙げられる。基材20の第1主面21はボトムメタルプレート10と向かい合い、基材20の第2主面22は磁性体30を介してトップメタルプレート40と向かい合う。ボトムメタルプレート10と基材20は、接着層61を介して接着される。
【0016】
基材20の第2主面22は、磁性体30で覆われる。磁性体30は、シート状部材であっても構わないし、基材20の第2主面22に塗布されたものであっても構わない。磁性体30がシート状部材である場合、磁性体30と基材20は、図3に示すように接着層62を介して互いに接着される。磁性体30が基材20の第2主面22に塗布されたものである場合、磁性体30と基材20は、接着層を介することなく直接接触する。磁性体30は、接着層63を介してトップメタルプレート40に接着される。磁性体30には、トップメタルプレート40の貫通孔41と重なる位置に貫通孔31が設けられている。
【0017】
図4は、アンテナ装置1に用いるボトムメタルプレート10の略平面図である。図4に示すA-A線は、図3に示す断面位置を示している。この点は、図5図6及び図9においても同様である。
【0018】
図4に示すように、ボトムメタルプレート10は、短手方向であるX方向に延在し、長手方向であるY方向に対向する外縁11,12と、長手方向であるY方向に延在し、短手方向であるX方向に対向する外縁13,14とを有している。ボトムメタルプレート10のX方向における長さはX1であり、ボトムメタルプレート10のY方向における長さはY1である。さらに、ボトムメタルプレート10は、Y方向に延在するスリット70を有している。スリット70のX方向における幅W1は一定である。つまり、スリット70は、X方向における幅が局所的に拡大されるような拡幅部を有していない。また、スリット70の位置は、X方向における中心ではなく、外縁13側にオフセットしている。なお、「一定」には製造ばらつきにより生じる誤差は含まれるものとする。
【0019】
スリット70は、Y方向における両端に位置する第1及び第2端部71,72を有している。スリット70の第1端部71は、外縁11を分断するよう開放されている一方、スリット70の第2端部72は、外縁12に達することなく外縁12から第1距離D1だけ離れた位置で終端している。第1距離D1は、ボトムメタルプレート10のY方向における長さY1よりも十分に短く、少なくとも長さY1の半分以下である。つまり、スリット70のY方向における長さY0は十分に長く、少なくともボトムメタルプレート10のY方向における長さY1の半分以上である。スリット70のY方向における長さは、長さY1の2/3以上であっても構わないし、長さY1の3/4以上であっても構わないし、長さY1の4/5以上であっても構わない。図4に示す例では、スリット70のY方向における長さY0は、長さY1の約9/10である。
【0020】
図5は、基材20の第1主面21に形成された導体パターンの略平面図である。
【0021】
図5に示すように、基材20の第1主面21には、第1コイル110、第2コイル120及びキャパシタパターン131,133が設けられている。第1コイル110は、基材20の外縁に沿って約3ターン周回するパターンであり、その開口110a内に第2コイル120及びキャパシタパターン131,133が配置されている。第1コイル110は、ボトムメタルプレート10のそれぞれ外縁11,12に沿ってX方向に延在する区間111,112と、ボトムメタルプレート10のそれぞれ外縁13,14に沿ってY方向に延在する区間113,114とを有している。第2コイル120は、磁性体30の貫通孔31と重なる位置に配置されている。図5に示す例では、第2コイル120のターン数も約3ターンである。
【0022】
キャパシタパターン131は、第1コイル110の最内周ターンからX方向に分岐したパターンである。図5に示す例では、第1コイル110の最内周ターンから7本のキャパシタパターン131が分岐しているが、キャパシタパターン131の数については特に限定されない。また、1本のキャパシタパターン131からは、複数のキャパシタパターン133が分岐している。キャパシタパターン133はいずれもY方向に延在する。図5に示す例では、1本のキャパシタパターン131から12本のキャパシタパターン133が分岐しているが、キャパシタパターン133の数については特に限定されない。
【0023】
図6は、基材20の第2主面22に形成された導体パターンの略平面図である。
【0024】
図6に示すように、基材20の第2主面22には、キャパシタパターン132,134及び接続パターン141,142が配置されている。キャパシタパターン132,134の平面位置は、それぞれキャパシタパターン131,133と一致している。つまり、キャパシタパターン131,132は基材20を介して互いに対向し、キャパシタパターン133,134は基材20を介して互いに対向する。これにより、基材20の第1主面21に設けられたキャパシタパターン131,133と、基材20の第2主面22に設けられたキャパシタパターン132,134と、これらの間に位置する基材20によって、キャパシタCが構成される。このようなパターン形状を有するキャパシタCのキャパシタンスは、トリミングによっていくつかのキャパシタパターン133を除去することによって微調整することができる。
【0025】
図5及び図6に示すように、第1コイル110の外周端は、基材20を貫通して設けられたビア導体151を介してキャパシタパターン132,134に接続される。また、第1コイル110を構成するターンのうち、最外周ターンから数えて2番目のターン(最内周ターンから数えて2番目のターン)の一部が分断されている。分断された一方及び他方の端部は、基材20を貫通して設けられたビア導体152,153にそれぞれ接続される。ビア導体152は接続パターン141の一端に接続され、ビア導体153は接続パターン142の一端に接続される。接続パターン141,142の他端は、基材20を貫通して設けられたビア導体154,155にそれぞれ接続される。ビア導体154,155は、第2コイル120の内周端及び外周端にそれぞれ接続される。
【0026】
かかる構成により、第1コイル110と第2コイル120が直列に接続されるとともに、図7に示すように、第1及び第2コイル110,120に対してキャパシタCが直列に接続されることになる。第1及び第2コイル110,120並びにキャパシタCからなる共振回路は、外部回路に接続されない閉回路を構成する。キャパシタCは、共振周波数を調整することにより通信特性を高める役割を果たす。そして、この閉回路の共振周波数を13.56MHz又は13.56MHz近傍の周波数帯に設定することで、近距離無線通信(NFC)が可能となる。或いは、図8に示すように、第1及び第2コイル110,120に対してキャパシタCを並列に接続しても構わない。この場合、第1コイル110の線路長が第2コイル120の線路長より短くなるよう設計することにより、第1及び第2コイル110,120に対してキャパシタCを直列に接続した場合と同様の共振特性を得ることが可能となる。
【0027】
図9は、ボトムメタルプレート10と基材20を重ねた状態を示す略平面図である。
【0028】
図9に示すように、ボトムメタルプレート10と基材20は、Z方向から見た平面視で、貫通孔41に囲まれた領域に第2コイル120が配置されるよう重ねられる。このようにしてボトムメタルプレート10と基材20を重ねると、第1コイル110は、Z方向から見た平面視でボトムメタルプレート10と重なるよう、ボトムメタルプレート10の外縁11~14に沿って周回する。第1コイル110を構成する導体パターンのうち、外縁11に沿ってX方向に延在する区間111の一部は、スリット70と重なりを有している。これに対し、第1コイル110を構成する導体パターンのうち、外縁12に沿ってX方向に延在する区間112はスリット70と重なりを有していない。つまり、スリット70の第2端部72は、第1コイル110の最内周ターンより内側に位置する。
【0029】
ここで、スリット70の第2端部72は、第1コイル110の最内周ターンの内縁115と第2距離D2だけ離れている。第2距離D2は、第1コイル110のパターン幅W2よりも大きくても構わない。また、第1コイル110の最外周ターンの外縁116は、ボトムメタルプレート10の外縁12と第3距離D3だけ離れている。第2距離D2は、第3距離D3よりも大きくても構わない。これは、第1コイル110の開口110aのうち第1コイル110の最内周ターン近傍は磁束密度が最も高くなることから、第2距離D2をある程度確保することにより、アンテナとして機能するボトムメタルプレート10により多くの磁束を印加することができるからである。
【0030】
図9に示すように、第2コイル120は、スリット70が横断する位置に配置される。これによりスリット70は、第2コイル120と重なる第1区間S1と、第1区間S1と第1端部71の間に位置する第2区間S2と、第1区間S1と第2端部72の間に位置する第3区間S3とに区画される。第1区間S1は、第2コイル120のY方向における一方側に位置する最外周ターンの外周エッジと重なる部分と、第2コイル120のY方向における他方側に位置する最外周ターンの外周エッジと重なる部分の間の区間である。本実施形態においては、第2コイル120がY方向における一方側にオフセットして配置されていることから、第2区間S2よりも第3区間S3の方が長い。第3区間S3の長さは十分に長く、少なくとも第1距離D1よりも長い。上述の通り、第1距離D1は、スリット70の第2端部72とボトムメタルプレート10の外縁12の間のY方向における距離である。
【0031】
第2コイル120は、Y方向における他方側にオフセットして配置しても構わない。例えば、図9に示す符号B1で示す位置に第2コイル120を配置しても構わない。この場合、第2区間S2よりも第3区間S3の方が短くなる。このような場合には、第2区間S2の長さを第1距離D1よりも長くすればよい。さらに、第2コイル120は、スリット70のY方向における中間位置に配置しても構わない。例えば、図9に示す符号B2で示す位置に第2コイル120を配置しても構わない。この場合、第2区間S2と第3区間S3が等しくなる。このような場合には、第2及び第3区間S2,S3の長さを第1距離D1よりも長くすればよい。つまり、第1距離D1は、第2及び第3区間S2,S3のいずれか長い方よりも短くなるよう設計しても構わない。但し、第3区間S3を第2区間S2より長くする方が通信距離をより拡大することができる。
【0032】
スリット70のX方向における幅W1は、第1コイル110のターン間におけるスペース幅W3より大きくても構わない。これによれば、第1コイル110の開口110aの面積を十分に確保しつつ、ボトムメタルプレート10の放射特性を高めることが可能となる。
【0033】
図10は、ICモジュール50を裏面側から見た略斜視図である。
【0034】
図10に示すように、ICモジュール50は、モジュール基板51と、モジュール基板51に搭載又は内蔵されたICチップ52と、カップリングコイル53とを備えている。ICチップ52は、ドーム状の保護樹脂54で覆われることにより保護されている。保護樹脂54は絶縁部材からなり、図3に示すように、その一部が貫通孔31内に配置されても構わない。モジュール基板51の裏面側には、図1に示す端子電極Eが設けられる。このような構成を有するICモジュール50は、トップメタルプレート40に設けられた貫通孔41に収容される。ICモジュール50が貫通孔41に収容されると、カップリングコイル53と基材20に設けられた第2コイル120が電磁界結合する。第2コイル120は第1コイル110に直列接続されていることから、第2コイル120に電流が流れると第1コイル110にも電流が流れ、第1コイル110から磁界が生じる。第1コイル110によって生じる磁界は、ボトムメタルプレート10に渦電流を生じさせる。ボトムメタルプレート10に生じる渦電流には、図4に示すように、ボトムメタルプレート10の外周に沿って周回する成分Pと、スリット70に沿って周回する成分Qが含まれる。成分Pと成分Qの周回方向は互いに逆である。このうち、時計回りに周回する成分Qが通信に寄与し、反時計回りに周回する成分Pがアンテナの磁束を打ち消す。このように、ボトムメタルプレート10には、スリット70に沿って周回する成分Qが生じることから、ボトムメタルプレート10自体がアンテナとして機能する。
【0035】
これにより、図11に示すように、ICカード3の裏面3bをカードリーダー6と向かい合わせれば、カードリーダー6とICチップ52との間で通信を行うことができる。つまり、カードリーダー6は、ボトムメタルプレート10、第1コイル110及び第2コイル120からなるアンテナ装置1を経由して、ICモジュール50のカップリングコイル53と結合し、これによりICチップ52との通信が実現される。
【0036】
このように、本実施形態によるICカード3は、第1及び第2コイル110,120と、スリット70を有するボトムメタルプレート10とを有するアンテナ装置1を含んでいることから、上面3a及び裏面3bの両方が金属部材からなるにも関わらず、ICカード3の裏面3bをカードリーダー6と向かい合わることにより通信を行うことが可能となる。しかも、スリット70の長さが十分に確保されていることから、ボトムメタルプレート10の外縁11~14に沿って渦電流を大きく周回させることができ、これにより通信距離を拡大することが可能となる。また、第1コイル110がボトムメタルプレート10の外縁11~14に沿って周回していることから、通信距離をより拡大することが可能となる。
【0037】
図12は、変形例によるボトムメタルプレート10の略平面図である。
【0038】
図12に示すボトムメタルプレート10は、スリット70の第3区間S3が第4~第6区間S4~S6を含んでいる点において、図4に示したボトムメタルプレート10と相違している。その他の基本的な構成は、図4に示したボトムメタルプレート10と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。第2コイル120は、図12に示す符号B3で示す位置に配置される。
【0039】
第4区間S4はY方向に延在し、その一端が第1区間S1に接続されている。第5区間S5はY方向に延在し、その一端が第2端部72を構成する。第4区間S4と第5区画S5は、X方向における位置が互いに異なっている。第6区間S6はX方向に延在し、第4区間S4の他端と第5区間S5の他端を接続する。このように、ボトムメタルプレート10に形成するスリット70はY方向に直線的である必要はなく、図12に示す変形例のように、クランク状に折れ曲がっていても構わない。また、第6区間S6の延在方向が厳密にX方向である必要はなく、X方向に対して所定の傾きを有していても構わない。
【0040】
図12に示す例では、ICカード3の裏面3bを構成するボトムメタルプレート10の表面に署名欄15が設けられている。署名欄15には、ICカード3の使用者の署名が書き込まれる。スリット70は、署名欄15と重ならないようクランク状に折れ曲がっている。ここで、署名欄15は、Y方向に沿った第1エッジ16と、X方向に延在する第2エッジ17とを有している。そして、第5区画S5は署名欄15の第1エッジ16に沿って延在し、第6区画S6は署名欄15の第2エッジ17に沿って延在する。図12に示す例のように、署名欄15のX方向における位置と第2コイル120のX方向における位置が重なっている場合、仮に、スリット70の第3区間S3をY方向に直線的に配置すると、署名欄15とスリット70が重なってしまう。しかしながら、図12に示す例では、スリット70の第3区間S3を署名欄15の第1及び第2エッジ16,17に沿ってクランク状に折り曲げていることから、スリット70が署名欄15と重なることがない。
【0041】
図13は、本開示の他の実施形態によるアンテナ装置2を備えるICカード4の構造を説明するための略分解斜視図である。
【0042】
図13に示すICカード4は、裏面4b側から上面4a側に向かって、ボトムメタルプレート10及びトップメタルプレート40がこの順に積層された構造を有している。つまり、上述したICカード3とは異なり、ボトムメタルプレート10とトップメタルプレート40の間に基材20や磁性体30が設けられていない。その代わりに、トップメタルプレート40にスリット42が設けられている。本実施形態によるアンテナ装置2は、このような構成を有するボトムメタルプレート10とトップメタルプレート40によって構成される。ボトムメタルプレート10とトップメタルプレート40は、図示しない絶縁性の接着剤などを介して接着される。これにより、ボトムメタルプレート10とトップメタルプレート40は互いに絶縁される。その他の基本的な構成は、上述したICカード3と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0043】
図14は、アンテナ装置2に用いるボトムメタルプレート10の略平面図である。
【0044】
図14に示すように、トップメタルプレート40に設けられたスリット42は、トップメタルプレート40のX方向に延在する外縁43と貫通孔41を繋ぐように設けられている。第2スリットであるスリット42の幅は、第1スリットであるスリット70の幅よりも狭い。これにより、ICカード4の上面4a側における美観が保たれている。貫通孔41の内部にはICモジュール50が配置される。上述の通り、ICモジュール50にはカップリングコイル53が設けられており、カップリングコイル53によって生じる磁界は、ボトムメタルプレート10に渦電流を生じさせる。そして、ボトムメタルプレート10にはスリット70が設けられていることから、ボトムメタルプレート10自体がアンテナとして機能する。本実施形態においては、ボトムメタルプレート10とトップメタルプレート40の間にコイルパターンや磁性体が設けられていないが、トップメタルプレート40にスリット42が設けられていることから、トップメタルプレート40によって通信が阻害されることがない。
【0045】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記の実施形態に限定されることなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本開示の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0046】
例えば、基材20の第1及び第2主面21,22に設けられる導体パターンは、間に導電性樹脂などの他の材料層を介して基材20の第1及び第2主面21,22に設けられていても構わない。
【0047】
本開示に係る技術には、以下の構成例が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0048】
本開示の一実施態様によるアンテナ装置は、第1メタルプレートと、平面視で第1メタルプレートと重なるよう配置され、第1メタルプレートの外縁に沿って周回する第1コイルと、第1コイルの開口内に配置され、第1コイルに接続される第2コイルとを備え、第1メタルプレートは、第1メタルプレートの長手方向に延在するスリットを有し、スリットは、長手方向における両端に位置する第1及び第2端部を有し、スリットの第1端部は、第1メタルプレートの外縁を分断するよう開放され、スリットの第2端部は、第1メタルプレートの外縁に達することなく、外縁から第1距離離れた位置で終端し、スリットは、第2コイルと重なる第1区間と、第1区間と第1端部の間に位置する第2区間と、第1区間と第2端部の間に位置する第3区間とを含み、第1距離は、第2及び第3区間のいずれか長い方よりも短い。これによれば、通信距離を拡大することが可能となる。
【0049】
上記のアンテナ装置において、第3区間は第2区間より長くても構わない。これによれば、通信距離をより拡大することが可能となる。
【0050】
上記いずれかのアンテナ装置において、スリットの幅は一定であっても構わない。これによれば、第1メタルプレートをICカードのボトムメタルプレートとして用いた場合であっても美観を保つことができる。
【0051】
上記いずれかのアンテナ装置において、スリットの第2端部は、第1コイルの最内周ターンより内側に位置しても構わない。これによれば、通信距離をより拡大することが可能となる。
【0052】
上記のアンテナ装置において、スリットの第2端部は、第1コイルの最内周ターンの内縁と第2距離離れており、第1コイルの最外周ターンの外縁は、第1メタルプレートの外縁と第3距離離れており、第2距離は第3距離よりも大きくても構わない。これによれば、アンテナとして機能する第1メタルプレートに多くの磁束を印加することが可能となる。
【0053】
上記のアンテナ装置において、第2距離は第1コイルのパターン幅よりも大きくても構わない。これによれば、アンテナとして機能する第1メタルプレートにより多くの磁束を印加することが可能となる。
【0054】
上記いずれかのアンテナ装置において、スリットの幅は、第1コイルのターン間におけるスペース幅よりも大きく、第1コイルのパターン幅よりも小さくても構わない。これによれば、第1コイルの開口面積を十分に確保しつつ、第1メタルプレートの放射特性を高めることが可能となる。
【0055】
上記いずれかのアンテナ装置は、第1及び第2コイルに対して直列に接続されるキャパシタをさらに備えていても構わない。或いは、上記いずれかのアンテナ装置は、第1及び第2コイルに対して並列に接続されるキャパシタをさらに備え、第1コイルの線路長は第2コイルの線路長より短くても構わない。これらによれば、キャパシタのキャパシタンスによって共振周波数を調整することが可能となるとともに、第1コイルに電流が流れやすくなり、通信距離をより拡大することが可能となる。
【0056】
本開示の一実施態様によるICカードは、上記いずれかのアンテナ装置と、貫通孔を有する第2メタルプレートと、第2メタルプレートの貫通孔内に配置されたICモジュールとを備え、第1及び第2コイルは、ICモジュールと第2コイルが重なるよう、第1メタルプレートと第2メタルプレートの間に挟まれる。これによれば、本体の両面にメタルプレートが用いられたICカードを提供することが可能となる。
【0057】
上記のICカードにおいて、第1メタルプレートは、スリットと重ならない位置に署名欄を有していても構わない。これによれば、スリットが署名の妨げになることがない。
【0058】
上記のICカードにおいて、署名欄は、第1メタルプレートの長手方向に沿った第1エッジと、第1エッジとは異なる方向に延在する第2エッジとを有し、スリットの第2及び第3区間の一方は、第1エッジに沿う部分と、第2エッジに沿う部分を有していても構わない。これによれば、直線的なスリットでは署名欄と重なる場合であっても、このような重なりを避けることが可能となる。
【0059】
本開示の他の実施態様によるアンテナ装置は、第1メタルプレートと、第1メタルプレートと重なる第2メタルプレートとを備え、第1メタルプレートは、第1メタルプレートの長手方向に延在する第1スリットを有し、第1スリットは、長手方向における両端に位置する第1及び第2端部を有し、第1スリットの第1端部は、第1メタルプレートの外縁を分断するよう開放され、第1スリットの第2端部は、第1メタルプレートの外縁に達することなく、外縁から第1距離離れた位置で終端し、第2メタルプレートは、貫通孔と、第2メタルプレートの外縁と貫通孔を繋ぐ第2スリットとを有し、第1スリットは、貫通孔と重なる第1区間と、第1区間と第1端部の間に位置する第2区間と、第1区間と第2端部の間に位置する第3区間とを含み、第1距離は、第2及び第3区間のいずれか長い方よりも短い。これによれば、部品点数を削減しつつ、外部との通信が可能となる。
【0060】
上記のアンテナ装置において、第2スリットの幅は第1スリットの幅より狭くても構わない。これによれば、第2メタルプレートをICカードのトップメタルプレートとして用いた場合であっても美観を保つことができる。
【0061】
本開示の他の実施態様によるICカードは、上記のアンテナ装置と、貫通孔内に配置されたICモジュールとを備える。これによれば、本体の両面にメタルプレートが用いられたICカードを提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0062】
1,2 アンテナ装置
3,4 ICカード
3a,4a ICカードの上面
3b,4b ICカードの裏面
6 カードリーダー
10 ボトムメタルプレート
11~14 外縁
15 署名欄
16,17 エッジ
20 基材
21 第1主面
22 第2主面
30 磁性体
31 貫通孔
40 トップメタルプレート
41 貫通孔
42 スリット
43 外縁
50 ICモジュール
51 モジュール基板
52 ICチップ
53 カップリングコイル
54 保護樹脂
61~63 接着層
70 スリット
71,72 端部
110 第1コイル
110a 開口
111~114 区間
115 内縁
116 外縁
120 第2コイル
131~134 キャパシタパターン
141,142 接続パターン
151~155 ビア導体
C キャパシタ
E 端子電極
P,Q 渦電流
S1~S6 区間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14