(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134130
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】ぶどう果汁含有飲料
(51)【国際特許分類】
A23L 2/00 20060101AFI20240926BHJP
A23L 2/02 20060101ALI20240926BHJP
A23L 2/56 20060101ALI20240926BHJP
A23L 2/68 20060101ALI20240926BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
A23L2/00 B
A23L2/02 A
A23L2/56
A23L2/00 D
A23L2/52 101
A23L2/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044252
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】廣岡 健太朗
(72)【発明者】
【氏名】高岸 知輝
【テーマコード(参考)】
4B117
【Fターム(参考)】
4B117LC02
4B117LC03
4B117LE04
4B117LE10
4B117LG01
4B117LG02
4B117LG05
4B117LK08
4B117LK12
4B117LK13
4B117LP01
4B117LP03
4B117LP14
4B117LP17
4B117LP20
(57)【要約】
【課題】デカナールを含むぶどう果汁含有飲料において、飲んだときに感じられる、おいしさとすっきり感とを改善できるとともに、酸味の強さを抑制できる新規な技術を提供する。
【解決手段】 その含有量が50ppb以上であるデカナールを含むぶどう果汁含有飲料であって、果実由来の不溶性固形分を乾燥重量で0.6~2.4g/L含む、ぶどう果汁含有飲料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
その含有量が50ppb以上であるデカナールを含むぶどう果汁含有飲料であって、
果実由来の不溶性固形分を乾燥重量で0.6~2.4g/L含む、ぶどう果汁含有飲料。
【請求項2】
前記不溶性固形分が、その90重量%以上が目開き4.75mmのメッシュを通過し、且つその50重量%以上が目開き1.7mmのメッシュを通過しない不溶性固形分である、請求項1に記載のぶどう果汁含有飲料。
【請求項3】
前記不溶性固形分が柑橘類の果実に由来する、請求項1または2に記載のぶどう果汁含有飲料。
【請求項4】
前記ぶどう果汁含有飲料の果汁含有率が1~30%である、請求項1または2に記載のぶどう果汁含有飲料。
【請求項5】
前記ぶどう果汁含有飲料の果汁含有率が1~30%である、請求項3に記載のぶどう果汁含有飲料。
【請求項6】
その含有量が50ppb以上であるデカナールを含むぶどう果汁含有飲料において、果実由来の不溶性固形分を乾燥重量で0.6~2.4g/L含有させることを含む、おいしさの改善、すっきり感の改善、および酸味の強さの抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はぶどう果汁を含む飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
果汁含有飲料は果実に由来する独特の風味を手軽に楽しむことができることなどから、市場において常にシェアを維持し続けている。
また、消費者の飲んだときの趣味、嗜好性に合わせるため、果汁含有飲料においても様々な開発がされており、例えば、柑橘果汁含有飲料においてデカナールを配合した飲料が提案されている(例えば特許文献1や特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-135990号公報
【特許文献2】特開2022-143397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、デカナールを含むぶどう果汁含有飲料において、飲んだときに感じられる、おいしさとすっきり感とを改善できるとともに、酸味の強さを抑制できる新規な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者がぶどう果汁含有飲料にデカナールを含有させたところ、50ppb以上含有させたものについて飲料の飲みごたえが増した一方で、おいしさ、すっきり感が低下し、酸味もより強く感じられるようになった。
なお、本明細書において、飲みごたえとは、ボディ感ともいい、飲んだときにコクや重さのある風味があり、飲み込むときに喉に抵抗を感じられるような感覚をいう。
すっきり感とは、飲用後の後味がスッとなくなるような感覚であり、甘味、苦味、酸味、うまみ、塩味等を含む呈味が飲用後に後引きなく消失されていく感覚をいう。すっきり感が改善する(向上する)と、後味がよりはやくなくなり、口中内に違和感がより残らないようになる。
【0006】
本発明者は鋭意研究の結果、飲料中に果実由来の不溶性固形分を所定の含有量で含有させることで、デカナールを50ppb以上含有するぶどう果汁含有飲料においておいしさ、すっきり感を高めることができ、感じられる酸味の強さも抑えることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]
その含有量が50ppb以上であるデカナールを含むぶどう果汁含有飲料であって、
果実由来の不溶性固形分を乾燥重量で0.6~2.4g/L含む、ぶどう果汁含有飲料。
[2]
前記不溶性固形分が、その90重量%以上が目開き4.75mmのメッシュを通過し、且つその50重量%以上が目開き1.7mmのメッシュを通過しない不溶性固形分である、[1]に記載のぶどう果汁含有飲料。
[3]
前記不溶性固形分が柑橘類の果実に由来する、[1]または[2]に記載のぶどう果汁含有飲料。
[4]
前記ぶどう果汁含有飲料の果汁含有率が1~30%である、[1]から[3]のいずれか一つに記載のぶどう果汁含有飲料。
[5]
その含有量が50ppb以上であるデカナールを含むぶどう果汁含有飲料において、果実由来の不溶性固形分を乾燥重量で0.6~2.4g/L含有させることを含む、おいしさの改善、すっきり感の改善、および酸味の強さの抑制方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、デカナールを含むぶどう果汁含有飲料において、飲んだときに感じられる、おいしさとすっきり感とを改善できるとともに、酸味の強さを抑制できる新規な技術を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の1つの実施形態について、詳細に説明する。
本実施形態は、ぶどう果汁含有飲料に関し、その含有量が50ppb以上であるデカナールを含む。さらに本実施形態のぶどう果汁含有飲料は、果実由来の不溶性固形分を乾燥重量で0.6~2.4g/L含む。
【0010】
ぶどう果汁含有飲料はぶどうの果実由来の果汁を原料として配合した飲料を意味する。ぶどう(Vitis spp.)は、ぶどう科ぶどう属に分類される蔓性植物である。ぶどうについて果皮の色味で黄緑系の白ぶどうと、赤系・黒系の赤ぶどうとに分類した場合も、白ぶどうと赤ぶどうのいずれに由来する果汁が本実施形態の飲料に含まれてもよく、また、両方の果汁が本実施形態の飲料に含まれているようにしてもよい。
黄緑系の白ぶどうとしては、例えば、ナイアガラ、ロザリオビアンコ、マスカット、シャルドネ等の品種が挙げられる。赤系・黒系の赤ぶどうとしては、たとえば、コンコード、巨峰、甲州、赤嶺、藤稔、キャンベル・アーリー、デラウェア、ピオーネ、スチューベン、ゴルビー、ルビーレッド、カルベネソーヴィニヨン等の品種が挙げられる。これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。
ぶどう果汁の調製に用いることのできるぶどうについては、その産地、熟度、大きさなどは特に限定されず、適宜設定することができる。
【0011】
また、ぶどうの果汁とは、ぶどうの果実を破砕して搾汁したり、あるいは裏ごししたりするなどして得られる液体成分をいう。本明細書のぶどうの果汁には、当該液体成分を濃縮したものや、これらの希釈還元物も含まれる概念である。さらに、本実施形態に係るぶどうの果汁は、パルプ分を含むもの、または、ろ過や遠心分離等の処理によりパルプ分を除去したもののいずれであってもよい。
また、ぶどう果汁として市販のジュースや濃縮ジュース、ペーストなどを用い、本実施形態のぶどう果汁含有飲料を調製するようにしてもよい。具体的には、JAS規格(果実飲料の日本農林規格)で指定されたジュースや濃縮ジュースを挙げることができ、例えばこれらのうち1種または2種以上を本実施形態のぶどう果汁含有飲料調製のために用いることができる。
【0012】
本実施形態の果汁含有飲料における果汁率は特に限定されず、当業者が適宜設定できるが、おいしさおよびすっきり感の向上と酸味の強さの抑制の観点から、ぶどうの果汁率が1%以上、30%以下である飲料が好ましい。
ここで、果汁率とは、果実を搾汁して得られ、濃縮等の処理を行っていない搾汁(ストレート果汁)のBrix値(Bx)または酸度を100%としたときの、相対濃度である。また、本明細書においてBrix値は、JAS規格に基づき、試料の温度(液温度)20℃における糖用屈折計の示度をいう。Brix値の測定は、公知の方法、装置を用いて行うことができる。また、酸度は、100g中に含まれる有機酸量をクエン酸に換算した場合のグラム数(無水クエン酸g/100g)で表すことができる。酸度もまた、JAS規格の酸度測定法で定められた方法、具体的には0.1mol/L水酸化ナトリウム標準液をアルカリ溶液として使用した中和滴定法(定量式)により測定できる。
果汁率をBrix値または酸度のいずれに基づいて算出するかはJAS規格に基づき果汁の種類ごとに定められている。ぶどうについてはBrix値に基づいて算出する。果汁の果汁率をJAS規格のBrix値に基づいて換算する場合、果汁に加えられた糖類、はちみつ等のBrix値は除いて算出される。
例えば、ぶどうについてはJAS規格のBrix値が11であるため、Brix値が33のぶどうジュースを飲料中10質量%配合した場合、30質量%の果汁率の飲料となる。
【0013】
本実施形態に係るデカナールとは、アルデヒドの一種で、鎖状の構造を有する有機化合物である。本実施形態のぶどう果汁含有飲料において、デカナールの含有量は50ppb以上であり、より飲みごたえが上がる観点から、50ppb以上100ppb以下が好ましく、50ppb以上75ppb以下がより好ましい。
【0014】
飲料中のデカナールの含有量は、飲料の原料に基づき算出することができるほか、例えばSPME―GC/MS測定に供し、測定することもできる。SPME―GC/MS測定は、例えば以下に示す条件で行うことができる。
装置:GC:Agilent Technologies社製 7890A
MS:Agilent Technologies社製 5975C
SPMEファイバー:DVB/CAR/PDMS
カラム:HP-INNNOWAX 0.25mm×60m×0.25μm
定量イオン: デカナール m/z=57
内標:シクロヘキサノール m/z=82
温度条件:40℃(5分)→5℃/分→240℃(10min)
キャリアガス流量:He 1.6ml/分
注入法:スプリットレス
イオン源温度:230℃
【0015】
本実施形態に係る果実由来の不溶性固形分とは、果物の果肉や果皮などに由来する水に不溶である成分をいい、特にその形状等は限定されない。果実由来の不溶性固形分は、例えば、果皮(柑橘類果実の場合、アルベドやフラベドなど)や果肉(柑橘類果実の場合、さのう、じょうのう、じょうのう膜など)等に由来する。
好ましい果実由来の不溶性固形分としては、パルプを挙げることができる。パルプとは果実から破砕処理を経て得られる固形分をいう。パルプとして、例えば、果実を破砕し、果汁等の液状成分を篩別及び/又は遠心分離により分離して得られる果汁中に含まれる水に不溶の固形分や、果実から果汁を搾汁した後に得られる果汁残渣を細砕して得られる水に不溶の固形分等を挙げることができる。具体的なパルプの例としては、果実が柑橘類果実の場合には、上述のアルベド、フラベド、さのう、じょうのう、じょうのう膜等を破砕したものなどが挙げられる。
【0016】
本実施形態に係る果実由来の不溶性固形分としては、おいしさおよびすっきり感の向上と酸味の強さの抑制の観点から、その90重量%以上が目開き4.75mmのメッシュを通過し、且つその50重量%以上が目開き1.7mmのメッシュを通過しない果実由来の不溶性固形分が好ましい。
【0017】
本明細書において、目開きとは、メッシュ(金属製網ふるい)に係るJIS Z8801-1:2019に基づく公称目開きを意味する。
【0018】
本明細書において、90重量%以上が目開き4.75mmのメッシュを通過する、とは、飲料に含まれる果実由来の不溶性固形分を目開き4.75mm、Φ150mmのメッシュに均等に広げ、シャワー状の流水をパルプに均等に当たるよう70ml/秒の流量で60秒間流した際に、乾燥重量換算で90重量%以上の不溶性固形分が通過することをいう。
また、本明細書において、50重量%以上が目開き1.7mmのメッシュを通過しない、とは、同様に、飲料に含まれる果実由来の不溶性固形分を目開き1.7mm、Φ150mmのメッシュに均等に広げ、シャワー状の流水をパルプに均等に当たるよう70ml/秒の流量で60秒間流した際に、乾燥重量換算で50重量%以上(好ましくは70重量%以上)の不溶性固形分が通過せずメッシュ上に残っていることをいう。
なお、上記測定に行うにあたっては、まず、十分に網目の細かいメッシュ(例えば、目開き425μm、Φ150mmのメッシュ)を用いて果実由来の不溶性固形分を飲料の液体分と分離した後に流水で洗いこんで、残付着している糖分などを完全に洗い流してから測定に供する。
【0019】
その90重量%以上が目開き4.75mmのメッシュを通過し、且つその50重量%以上が目開き1.7mmのメッシュを通過しない果実由来の不溶性固形分は公知の方法により調製することができる。
【0020】
本実施形態のぶどう果汁含有飲料に含まれる果実由来の不溶性固形分の含有量は、乾燥重量で0.6g/L以上2.4g/L以下であることが好ましく、より好ましくは1.2g/L以上2.4g/L以下である。
なお、飲料に含まれる果実由来の不溶性固形分の含有量は、上述の方法で得ることができる。すなわち、果実由来の不溶性固形分を十分に網目の細かいメッシュ(例えば、目開き425μm、Φ150mmのメッシュ)を用いて飲料の液体分と分離した後に流水で洗いこみ、次いで乾燥させ、この重量を測定して得ることができる。
また、本明細書において、不溶性固形分の乾燥とは、不溶性固形分から水分を100%除去した状態にすることをいい、例えば、不溶性固形分を60℃4日間静置する方法が挙げられる。
【0021】
また、本実施形態のぶどう果汁含有飲料に含まれる果実由来の不溶性固形分は柑橘類の果実に由来することが好ましい。
本明細書において柑橘類とは、ミカン科ミカン亜科に属する植物の果実を意味する。具体的な柑橘類としては、オレンジ(ネーブルオレンジ、バレンシアオレンジ、ブラッドオレンジなど)、うんしゅうみかん、マンダリンオレンジ、ぽんかん、紀州みかん、アンコール、ダンゼリン、コウジ、シークワーサー、タチバナ、不知火などのみかん類、ナツダイダイ、はっさく、ヒュウガナツ、サンボウカン、河内晩柑、キヌカワ、ナルトなどの雑柑類、タンカン、いよかん、マーコット、清見、オーランド、ミネオラ、セミノール等のタンゴール・タンゼロ類、メキシカンライム、タヒチライム等のライム類、リスボンレモン、ユーレカレモン、ディアマンテ、エトローグ等のレモン類、バンペイユ、土佐ブンタン等のブンタン、ダンカン、マーシュ、トムソン、ルビーレッド等のグレープフルーツ類、ゆず、カボス、スダチ、ハナユ、キズ等のユズ類、キンカン、カラタチが挙げられる。
【0022】
本実施形態に係るぶどう果汁含有飲料は、本発明の目的を達成できる範囲で他の成分を含有してもよく、特に限定されない。他の成分としては、ぶどう以外の果物に由来する果汁、野菜汁、糖類および高甘味度甘味料といった甘味料、食塩、抗酸化剤、酸味料、pH調整剤、香料、色素、エキス、ビタミン類、アミノ酸、食物繊維、消泡剤などが挙げられる。
また、本実施形態のぶどう果汁含有飲料はエタノールなどのアルコールを含有する飲料であってもよく、また、アルコールを実質的に含有しない飲料(具体的には、アルコールの含有量が1.0体積/体積%未満の飲料)であってもよい。
また、本実施形態のぶどう果汁含有飲料は炭酸ガスを含有する炭酸飲料であってもよい。炭酸ガスのガスボリュームは特に限定されず、当業者が適宜設定することができる。
また、本実施形態に係る飲料においてpHは特に限定されず、例えばpH3.0以上4.0以下とすることができ、好ましくは3.0以上3.4以下とすることができる。
【0023】
本実施形態に係るぶどう果汁含有飲料は、例えば、原料水に、デカナール(含有量:50ppb以上)、果実由来の不溶性固形分(含有量;乾燥重量で0.6~2.4g/L)、必要に応じて加えられるその他の成分を添加することで製造することができる。不溶性固形分その他必要に応じて添加される成分を添加する方法や順序などは特に限定されず、当行者が適宜設定できる。上記の原料水は、水自体のほか、含有されるその他の成分の溶液等であってもよい。
また、デカナールおよび不溶性固形分は、それぞれが単独で配合されても、また、他の含有成分と共に配合されるようにしてもよく、特に限定されない。
【0024】
本実施形態に係る飲料は、容器に封入された容器詰飲料とすることができる。
容器への封入方法などは特に限定されず、例えば常法に従って行うことができる。
容器も炭酸飲料に用いられる公知のものを適宜選択して用いることができ、素材や形状など特に限定されない。容器の具体例としては、例えば、ビン、ペットボトル等のプラスチック容器、スチール缶やアルミニウム缶等の金属缶などが挙げられる。
【0025】
以上、本実施形態によれば、ぶどう果汁含有飲料であってデカナールを50ppb以上含む飲料の、おいしさを改善(おいしさが向上する)、すっきり感を改善(すっきり感が向上する)および感じられる酸味の強さを抑えることができる。そのため、飲料の商品価値の向上に寄与することが可能である。
【実施例0026】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0027】
[試験1(参考)]
ベース:30%ブドウ果汁飲料、特性値: Bx:12、酸度:0.25、pH:3.6になるように調製した。
具体的には、水にブドウ透明濃縮果汁51g/L(ストレート換算:315.2g/L)、果糖ぶどう糖液糖118g/L、無水クエン酸1.5g/L、クエン酸三Na1.0g/Lを添加し、調合した。得られた調合液を95℃瞬間殺菌にて殺菌し、ペットボトルに入れ、容器詰飲料を得た。
得られた飲料に、デカナールを表1に示す含有量となるように添加し、パネリスト5名に対照例1を4点とした分量評定法を用いて評価させた。
その評点の平均値を表1に示す。なお、各パネリストは、各評価項目の良さまたは強さを7段階で評価した。数字が大きいほど評価が良い、または強いことを表す。
なお、グリーン臭とは、青草を刈った時に感じる香りをいう。
評価基準:
7点・・・基準と比較して、非常に良く(強く)感じる。
6点・・・基準と比較して、良く(強く)感じる
5点・・・基準と比較して、やや良く(強く)感じる。
4点・・・基準
3点・・・基準と比較して、やや悪く(弱く)感じる。
2点・・・基準と比較して、悪く(弱く)感じる。
1点・・・基準と比較して、非常に悪く(弱く)感じる。
【0028】
【0029】
デカナールを50ppb以上添加することで、おいしさ、すっきり感が低下し、酸味が強くなることが分かった。今後、デカナール濃度が50ppbを含んだ比較例3の調整液を対照例2として、評価を行った。
【0030】
[試験2]
ベース:30%ブドウ果汁飲料、特性値: Bx:12、酸度:0.25、pH:3.6になるように調製した。
具体的には、水に、ブドウ透明濃縮果汁51g/L(ストレート換算:315.2g/L)を処方し、表2記載のように、オレンジパルプ(含有量は乾燥重量)、果糖ぶどう糖液糖、無水クエン酸、クエン酸三Naを添加し、調合した。得られた調合液を95℃瞬間殺菌にて殺菌し、容器詰飲料を得た。得られた飲料に、デカナールを表2記載のように添加した。
【0031】
なお、各飲料に含まれるパルプについては、その90重量%以上が目開き4.75mmのメッシュを通過し、その50重量%以上が目開き1.7mmのメッシュを通過しないパルプであることを確認した(同様の確認を試験3および4でも行った)。
具体的には、まず、目開き425μm、Φ(内径)150mmのメッシュ(東京スクリーン株式会社製 線径0.28mm)を用いてパルプを飲料の液体分と分離した後に流水で洗いこみ、残付着している糖分などを洗い流した。次いで該パルプを乾燥させ、各飲料に含まれるパルプの乾燥重量を得た。
同じ飲料を用意し、目開き425μm、Φ(内径)150mmのメッシュ(東京スクリーン株式会社製 線径0.28mm)を用いてパルプを飲料の液体分と分離した後に流水で洗いこみ、残付着している糖分などを洗い流した。分離されたパルプを目開き4.75mm、Φ(内径)150mmのメッシュ(東京スクリーン株式会社製 線径1.6mm)に均等に広げ、シャワー状(339穴のシャワーヘッドを使用)の流水をパルプに均等に当たるよう70ml/秒の流量で60秒間流した後、乾燥させた。乾燥重量換算で各飲料に含まれるパルプの乾燥重量に対して、90重量%以上のパルプが通過したことを確認した。
また、同様に、同じ飲料を用意し、目開き425μm、Φ(内径)150mmのメッシュ(東京スクリーン株式会社製 線径0.28mm)を用いてパルプを飲料の液体分と分離した後に流水で洗いこみ、残付着している糖分などを洗い流した。分離されたパルプを目開き1.7mm、Φ(内径)150mmのメッシュ(東京スクリーン株式会社製 線径0.8mm)に均等に広げ、シャワー状(339穴のシャワーヘッドを使用)の流水をパルプに均等に当たるよう70ml/秒の流量で60秒間流した後、乾燥させた。乾燥重量換算で各飲料に含まれるパルプの乾燥重量に対して、80重量%以上のパルプが通過せずメッシュ上に残っていたことを確認した。
なお、上記確認においては3回測定した平均値に基づき確認を行った。また、乾燥は60℃、4日間の条件下に得られたパルプを置くことによって行った。
表中における乾燥重量(g/L)とは、飲料から上述の目開き425μm、Φ(内径)150mmのメッシュを用いた分離処理、洗いこみ処理および乾燥処理を経て得られた、乾燥している状態にある不溶性固形分の重量を意味する。この値を上記確認において乾燥重量換算での100重量%とした。
【0032】
パネリスト5名に対照例2を4点として、官能評価させた。評価基準・評価方法については試験1と同様とした。
【0033】
【0034】
表2から理解できるように、実施例の飲料は、対照の飲料と比較して、おいしさ、すっきり感が改善され、酸味の強さも抑制されていた。
【0035】
[試験3]
ベース:ブドウ果汁飲料、特性値: Bx:12、酸度:0.25、pH:3.6になるように調製した。
具体的には、水に、ブドウ透明濃縮果汁、オレンジパルプ、果糖ぶどう糖液糖、無水クエン酸、クエン酸三Naをそれぞれ表1に記載のあるように添加し、調合した。得られた調合液を95℃瞬間殺菌にて殺菌し、容器詰飲料を得た。得られた飲料に、表1記載の濃度になるようにデカナールを添加した。
パネリスト5名に対照例を4点として、官能評価させた。評価基準・評価方法については試験1と同様である。
【0036】
【0037】
表3から理解できるとおり、実施例の飲料は、対照の飲料と比較して、おいしさ、すっきり感が改善され、酸味の強さも抑制されていた。
【0038】
[試験4]
ベース:30%ブドウ果汁飲料、特性値: Bx:12、酸度:0.25、pH:3.6になるように調製した。
具体的には、水に、ブドウ透明濃縮果汁51g/L(ストレート換算:315.2g/L)を添加し、さらに表4に記載のあるように果糖ぶどう糖液糖、無水クエン酸、クエン酸三Naをそれぞれ添加した。次に、グレープフルーツパルプ(GFパルプ)を1.2g/L添加し、調合した。得られた調合液を95℃瞬間殺菌にて殺菌し、ペットボトルに入れ、容器詰飲料を得た。得られた飲料に、表4に記載の濃度になるようにデカナールを添加した。
パネリスト5名に対照例を4点として、官能評価させた。
評価基準・評価方法については試験1と同様である。
【0039】
【0040】
表4から理解できるとおり、実施例の飲料は、対照の飲料と比較して、おいしさ、すっきり感が改善され、酸味の強さも抑制されていた。