(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134131
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】アルカリ土類金属のリン酸塩化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 25/34 20060101AFI20240926BHJP
【FI】
C01B25/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044253
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000190024
【氏名又は名称】日揮触媒化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】田川 和成
(72)【発明者】
【氏名】下村 和義
(72)【発明者】
【氏名】三津井 知宏
(57)【要約】
【課題】廃液に含まれる未反応のリンが少ないアルカリ土類金属のリン酸塩化合物の製造方法を提供すること。
【解決手段】水にアルカリ土類金属を含む塩が分散したアルカリ土類金属含有懸濁液を準備するアルカリ土類金属含有懸濁液調製工程、リンを含む化合物が溶解したリン水溶液を準備するリン水溶液調製工程、前記アルカリ土類金属含有懸濁液と前記リン水溶液とを混合して、pHが5.0以下の混合液を調製する反応工程、前記pHが5.0以下の混合液に前記アルカリ土類金属を含む塩を添加して、pHを5.5以上、7.0以下の範囲に調整するpH調整工程を含む、アルカリ土類金属のリン酸塩化合物の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水にアルカリ土類金属を含む塩が分散したアルカリ土類金属含有懸濁液を準備するアルカリ土類金属含有懸濁液調製工程、
リンを含む化合物が溶解したリン水溶液を準備するリン水溶液調製工程、
前記アルカリ土類金属含有懸濁液と前記リン水溶液とを混合して、pHが5.0以下の混合液を調製する反応工程、
前記pHが5.0以下の混合液に前記アルカリ土類金属を含む塩を添加して、pHを5.5以上、7.0以下の範囲に調整するpH調整工程を含む、
アルカリ土類金属のリン酸塩化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ土類金属のリン酸塩化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リン酸マグネシウムやリン酸カルシウムに代表されるアルカリ土類金属のリン酸塩化合物は、肥料、耐火物用バインダー、難燃剤、飲食品の添加剤および触媒の材料として、広く使用されている。例えば、特許文献1には、飲食品に使用されるリン酸マグネシウムが開示されている。また、特許文献2には、リン酸マグネシウムを含む触媒が開示されている。
【0003】
アルカリ土類金属のリン酸塩化合物の製造方法も広く知られている。例えば、特許文献3には、リン酸水素マグネシウムと酸化マグネシウムあるいは炭酸マグネシウムを秤量し水を適当量加え、ポットミル中室温で撹拌し、得られたスラリーを乾燥し、多水和物のリン酸三マグネシウム粉末を得て、さらに仮焼することにより無水のリン酸三マグネシウムを得ることを特徴とする、リン酸三マグネシウム化合物セラミックスの製造方法が開示されている。また、特許文献4には、リン酸に水酸化マグネシウムを水に分散させたスラリーを加える方法で、リン酸水素マグネシウムを調製したことも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-184864号公報
【特許文献2】特開平7-100384号公報
【特許文献3】特開平3-279205号公報
【特許文献4】特公昭47-41824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のアルカリ土類金属のリン酸塩化合物の製造方法では、アルカリ土類金属のリン酸塩化合物を合成する際に廃液が生じ、この廃液に未反応のリンが多く含まれるという課題があった。
【0006】
そこで、本発明は、廃液に含まれる未反応のリンが少ないアルカリ土類金属のリン酸塩化合物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、アルカリ土類金属を含む塩とリンを含む化合物とを、2回に分けて異なるpHで反応させることで、反応後の廃液に含まれるリンの含有量を低下させる製造方法を見出し、本発明を完成させた。
【0008】
より具体的には、水にアルカリ土類金属を含む塩が分散したアルカリ土類金属含有懸濁液を準備するアルカリ土類金属含有懸濁液調製工程、
リンを含む化合物が溶解したリン水溶液を準備するリン水溶液調製工程、
前記アルカリ土類金属含有懸濁液と前記リン水溶液とを混合して、pHが5.0以下の混合液を調製する反応工程、
前記pHが5.0以下の混合液に前記アルカリ土類金属を含む塩を添加して、pHを5.5以上、7.0以下の範囲に調整するpH調整工程を含む、
アルカリ土類金属のリン酸塩化合物の製造方法を用いることで、反応後の廃液に含まれるリンの含有量を低下させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、廃液に含まれるリンが少ないアルカリ土類金属のリン酸塩化合物の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1の製造方法と比較例1の製造方法とを対比した図である。
【
図2】実施例1~実施例3の製造方法を対比した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、アルカリ土類金属のリン酸塩化合物の製造方法に関する発明(以下、「本発明の製造方法」ともいう。)を含む。以下、本発明の製造方法について詳述する。
【0012】
[本発明の製造方法]
本発明の製造方法は、水にアルカリ土類金属を含む塩が分散したアルカリ土類金属含有懸濁液を準備するアルカリ土類金属含有懸濁液調製工程、リンを含む化合物が溶解したリン水溶液を準備するリン水溶液調製工程、前記アルカリ土類金属含有懸濁液と前記リン水溶液とを混合して、pHが5.0以下の混合液を調製する反応工程、前記pHが5.0以下の混合液に前記アルカリ土類金属を含む塩を添加して、pHを5.5以上、7.0以下の範囲に調整するpH調整工程、を含む。
【0013】
[アルカリ土類金属含有懸濁液調製工程]
この工程では、アルカリ土類金属を含む塩が分散したアルカリ土類金属含有懸濁液を準備する。本発明において「懸濁液」とは、水中に固体が分散している液を指すものとする。したがって、この工程では、水への溶解度の低いアルカリ土類金属を含む塩を用いることが好ましい。具体的には、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ土類金属水酸化物およびこれらの混合物(塩基性炭酸アルカリ土類金属塩)の何れかを用いることが好ましく、特に水への溶解度の低いアルカリ土類金属水酸化物を用いることが好ましい。また、この塩に含まれるアルカリ土類金属は、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、およびRaから選ばれる少なくとも1種であり、Mg、CaおよびBaから選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、Mgであることがより好ましい。
【0014】
この工程では、前述のアルカリ土類金属を含む塩を水に添加し、撹拌することでアルカリ土類金属含有懸濁液を調製することができる。また、アルカリ土類金属含有懸濁液を調製する方法は、撹拌に限定されるものではなく、例えば、アルカリ土類金属を含む塩を水に添加した後で、超音波分散、振とうによって水にアルカリ土類金属を含む塩を分散することもできる。この工程で得られるアルカリ土類金属含有懸濁液に含まれるアルカリ土類金属を含む塩の含有量は、塩の式量換算(但し、結晶水を除く。)で、1質量%以上25質量%以下の範囲にあることが好ましく、3質量%以上20質量%以下の範囲にあることがより好ましく、5質量%以上15質量%以下の範囲にあることが特に好ましい。アルカリ土類金属を含む塩の含有量が前述の範囲にあるアルカリ土類金属含有懸濁液を用いると、より成形性が良い(例えば、アルカリ土類金属塩をタブレット状に成形する際、低い圧力でも成形できる。)アルカリ土類金属のリン酸塩化合物を得ることができる。
【0015】
この工程では、本発明の製造方法で使用するアルカリ土類金属を含む塩の質量に対するこの工程で使用するアルカリ土類金属を含む塩の質量の割合が、85%以上99%以下の範囲にあることが好ましく、90%以上99%以下の範囲にあることがより好ましく、95%以上99%以下の範囲にあることが特に好ましい。本発明の製造方法は、アルカリ土類金属を含む塩を添加する工程を二つ含んでいる(
図1参照)。この工程で使用するアルカリ土類金属を含む塩の重量を前述の範囲に調整すると、最終的に得られるアルカリ土類金属のリン酸塩化合物の収率が高くなる。
【0016】
アルカリ土類金属含有懸濁液の温度は、常温であってもよいが、50℃以上95℃以下の範囲にあることが好ましく、75℃以上95℃以下の範囲にあることがより好ましく、75℃以上85℃以下の範囲にあることが特に好ましい。アルカリ土類金属含有懸濁液の温度を調整するには、例えば、前述の工程で得られたアルカリ土類金属含有懸濁液をヒーターで加熱すればよい。アルカリ土類金属含有懸濁液の温度が前述の範囲にあると、より成形性が良いアルカリ土類金属のリン酸塩化合物を得ることができる。
【0017】
[リン水溶液調製工程]
この工程では、リンを含むリン水溶液を準備する。本発明において「水溶液」とは、固体を含まず、水以外の成分が水に全て溶解した状態の液を指すものとする。したがって、この工程では、水への溶解度の高いリンを含む化合物を水に溶解してリン水溶液を調製することができる。例えば、リン酸塩化合物または五酸化二リンを水に溶解して調製することができる。また、リン酸をそのまま使用したり、水と混合して使用したりしてもよい。この工程で得られるリン水溶液のリンの含有量は、H3PO4換算で、20質量%以上85質量%未満の範囲にあることが好ましく、25質量%以上80質量%以下の範囲にあることがより好ましく、30質量%以上75質量%以下の範囲にあることが特に好ましい。リンの含有量が前述の範囲にあるリン水溶液を用いると、より成形性が良いアルカリ土類金属のリン酸塩化合物を得ることができる。
【0018】
[反応工程]
この工程では、前述のアルカリ土類金属含有懸濁液調製工程で得られたアルカリ土類金属含有懸濁液と前述のリン水溶液調製工程で得られたリン水溶液とを混合して、pHが5.0以下の混合液を調製する。混合液のpHが5.0以下にならない場合は、硫酸、塩酸、酢酸、およびリン酸等の従来公知の酸を加えてpHを調整する。このとき、混合して得られた混合液にアルカリ土類金属のリン酸塩が固形分として析出する。この工程では、混合液のpHを3.0以上5.0以下の範囲に調整することが好ましく、4.0以上5.0以下の範囲に調整することがより好ましい。混合液のpHが前述の範囲にあると、廃液中のリン濃度がより低下しやすくなる。pHの調整には、前述の酸や、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、およびアンモニア等の塩基を用いることができる。
【0019】
この工程では、アルカリ土類金属とリンのモル比(アルカリ土類金属/リン)を調整することで、種々のアルカリ土類金属のリン酸塩化合物を合成することができる。例えば、マグネシウムリン酸塩化合物を合成する場合、1/2付近に調整すれば第一リン酸マグネシウム(Mg(H2PO4)2・4H2O)を合成することができ、1/1付近に調整すれば第二リン酸マグネシウム(MgHPO4・3H2O)を合成することができ、3/2付近に調整すれば、第三リン酸マグネシウム(Mg3(PO4)2・8H2O)を合成することができる。このとき、アルカリ土類金属とリンのモル比は、目標のモル比の±20%の範囲に調整することが好ましく、目標のモル比の±10%の範囲に調整することがより好ましい。例えば、第二リン酸マグネシウムを合成する場合は、前述のモル比を0.8以上1.2以下の範囲に調整することが好ましく、0.9以上1.1以下の範囲に調整することがより好ましい。
【0020】
この工程では、アルカリ土類金属含有懸濁液にリン水溶液を添加する方法、リン水溶液にアルカリ土類金属含有懸濁液を添加する方法、アルカリ土類金属含有懸濁液とリン水溶液とを同時に添加する方法を用いることができる。この工程では、アルカリ土類金属含有懸濁液に、リン水溶液を添加する方法を用いることが好ましい。この方法を用いると、より成形性が良いアルカリ土類金属のリン酸塩化合物を得ることができる。このとき、リン水溶液の全量を5分間以上120分間以下の間にアルカリ土類金属含有懸濁液に添加することが好ましく、リン水溶液の全量を15分間以上90分間以下の間にアルカリ土類金属含有懸濁液に添加することがより好ましい。例えば、前述の時間の範囲に前述の水溶液の全量を添加できるよう、ポンプ等を用いて添加速度を調整するとよい。このような添加速度で前述の水溶液を添加すると、更に成形性が良いアルカリ土類金属のリン酸塩化合物を得ることができる。この時間を短くするとアルカリ土類リン酸塩化合物の粒子径が大きくなりやすく、嵩密度も高くなりやすい。
【0021】
この工程では、アルカリ土類金属含有懸濁液とリン水溶液とを混合した際の反応熱によって、混合液の温度が上昇する。この温度の上昇幅を15℃以下に抑えることが好ましく、10℃以下に抑えることがより好ましい。例えば、温度の上昇が激しい時は前述の添加速度を抑えて混合液の温度が低下するのを待つ方法、あるいは、ヒーターの温度を調整する方法等で反応熱を抑えることができる。このような方法で温度の上昇幅を前述の範囲に抑制すると、より成形性が良いアルカリ土類金属のリン酸塩化合物を得ることができる。
【0022】
この工程では、前述の混合液を50℃以上95℃以下の範囲で15分間以上保持して熟成することが好ましい。このとき、混合液の温度を75℃以上95℃以下の範囲に調整することが好ましく、75℃以上85℃以下の範囲に調整することがより好ましい。また、保持する時間は、30分間以上180分間以下の範囲にあることが好ましく、45分間以上90分間以下の範囲にあることがより好ましい。このような条件で熟成して得られたアルカリ土類金属のリン酸塩化合物は、成形性が特に良い。
【0023】
[pH調整工程]
この工程では、前記pHが5.0以下の混合液に前記アルカリ土類金属を含む塩を添加して、混合液のpHを5.5以上、7.0以下の範囲に調整する。本発明の製造方法は、この工程を備えることで、廃液中に含まれるリンの濃度を低減することができる。
【0024】
この工程で使用するアルカリ土類金属を含む塩は、前述のアルカリ土類金属含有懸濁液調製工程で用いた塩を使用することができる。この工程では、本発明の製造方法で使用するアルカリ土類金属を含む塩の質量に対するこの工程で使用するアルカリ土類金属を含む塩の質量の割合が、1%以上15%以下の範囲にあることが好ましく、1%以上10%以下の範囲にあることがより好ましく、1%以上5%以下の範囲にあることが特に好ましい。
【0025】
この工程で得られた混合液にはアルカリ土類金属のリン酸塩化合物が含まれており、必要によって混合液から水を除去し、アルカリ土類金属のリン酸塩化合物を分離することができる。例えば、濾過、遠心分離、またはデカンテーション等の従来公知の方法を用いて水を除去し、アルカリ土類金属のリン酸塩化合物を分離することができる。加熱や減圧等の方法で蒸発乾固して分離することも可能である。本発明においては、廃液が出ない方法によって分離したとしても、本発明の効果を享受することができる。廃液に含まれるリン、すなわち未反応のリンが少なくなれば、最終的に得られるアルカリ土類金属のリン酸塩の収率が高くなるからである。また、分離したアルカリ土類金属のリン酸塩を、水または温水を用いて洗浄してもよい。更に、分離したアルカリ土類金属のリン酸塩を乾燥してもよく、80℃以上150℃以下の温度で乾燥するとよい。このときの乾燥時間は、例えば、1時間以上24時間以下の範囲であればよい。温度をかけない方法で分離することもでき、例えば、減圧乾燥を用いることもできる。
【0026】
この工程で得られた混合液から発生したリンを含む廃液は、前述のアルカリ土類金属含有懸濁液調製工程において再利用することができる(
図2参照)。このようにリンを含む廃液を再利用することで、リンを含む廃液の排出を実質的になくすことができる。また、本発明の製造方法で得られた廃液はリンの含有量が少ないので、そのまま前述のアルカリ土類金属含有懸濁液調製工程において再利用しても、安定した収率でアルカリ土類金属のリン酸塩を製造することができる。リンの含有量が多い廃液をそのまま再利用すると、収率にばらつきが生じやすくなってしまう。本発明の製造方法において廃液を再利用する場合は、リンの含有量が100ppm以下の廃液を用いることが好ましい。
【実施例0027】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[測定方法ないし評価方法]
各種測定ないし評価は以下のように行った。
【0028】
[1]リン含有量測定
10mLメスフラスコに試料2.0gを精秤し、水を加え体積を10mLとし、これを試験溶液とする。この試験溶液について誘導結合プラズマ発光分光分析装置(島津製作所(株)製、ICPS-8100、解析ソフトウェアICPS-8000)を使用し、試料中のリン濃度を求めた。
【0029】
[2]pH測定
各工程におけるpHの測定には、pH1.68、6.86および9.18の標準液で校正が完了した株式会社堀場製作所製のpHメータ、製品名「D-74」およびガラス電極、製品名「9625-10D」を用いた。このガラス電極を各測定対象に接触させ、pHを測定した。
【0030】
[3]X線回折測定
各実施例で得られた粉末について、以下の条件で粉末X線回折測定を行った。
X線回折装置:MiniFlex600(株式会社リガク製)
線源:Cu-Kα線
加速電圧、電流:40kV、15mA
受光スリット:13mm
スキャン速度:5.0°/min
ステップ幅:0.01°
測定範囲(2θ):10~80°
【0031】
[実施例1]
(アルカリ土類金属含有懸濁液調製工程)
純水300gを1000mLガラスビーカーに入れた。このビーカーに、水酸化マグネシウム(製品名:UD-650、宇部マテリアルズ社製)30.41g(水酸化マグネシウムの全重量に対して97%)を添加して、撹拌し、水酸化マグネシウム懸濁液を得た。また、水酸化マグネシウム懸濁液をヒーターで80℃に昇温した。
【0032】
(リン水溶液調製工程)
40質量%のリン酸水溶液122.5gを準備した。
【0033】
(反応工程)
前述の工程で得られた80℃の水酸化マグネシウム懸濁液にリン酸水溶液を添加した。このとき、リン酸水溶液の全量が60分間で添加されるよう添加速度を調整した。リン酸水溶液を全量添加して得られた混合液を、撹拌しながら80℃で1時間保持して混合液を得た。この混合液について前述の[2]の測定を行ったところ、pHは、4.3であった。
【0034】
(pH調整工程)
前述の混合液に水酸化マグネシウム0.97g(水酸化マグネシウムの全重量に対して3%)を添加し、30分撹拌した。得られた混合液について前述の[2]の測定を行ったところ、pHは、6.0であった。その後、得られた混合液に含まれる固形分を濾過して固形分とろ液とに分離した。得られた固形分を100℃で12時間乾燥して、粉末を得た。この粉末について、前述の[3]の測定を行ったところ、第二リン酸マグネシウム・三水和物に帰属される回折ピークが確認された。また、このろ液に含まれるリンの含有量を前述の[1]の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0035】
[実施例2:実施例1のろ液を再利用]
アルカリ土類金属含有懸濁液調製工程において、純水300gに変えて、実施例1の方法で得られたろ液290g(リン濃度:65ppm)と純水10gとを混合した水を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で粉末とろ液とを得た。これらについて、実施例1と同様の方法で各種測定を行った。結果を表1に示す。
【0036】
[実施例3:実施例2のろ液を再利用]
アルカリ土類金属含有懸濁液調製工程において、純水300gに変えて、実施例2の方法で得られたろ液279g(リン濃度:77ppm)と純水21gとを混合した水を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で粉末とろ液とを得た。これらについて、実施例1と同様の方法で各種測定を行った。結果を表1に示す。
【0037】
[比較例1]
アルカリ金属含有懸濁液調製工程において、水酸化マグネシウム30.41g(水酸化マグネシウムの全重量に対して97%)を、31.38g(水酸化マグネシウムの全重量に対して100%)に変更したこと、pH調整工程において水酸化マグネシウムを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法で粉末とろ液とを得た。これらについて、実施例1と同様の方法で各種測定を行った。結果を表1に示す。
【0038】