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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134140
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】包装材
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/42 20060101AFI20240926BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240926BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20240926BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240926BHJP
   B32B 27/10 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
B65D65/42 C
B65D65/40 D
B32B7/12
B32B27/00 H
B32B27/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044272
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】399054321
【氏名又は名称】東洋アルミニウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105821
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 淳
(72)【発明者】
【氏名】関口 朋伸
(72)【発明者】
【氏名】菅野 圭一
(72)【発明者】
【氏名】麻植 啓司
(72)【発明者】
【氏名】古田 遼
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AB02
3E086AC07
3E086AD01
3E086AD03
3E086AD05
3E086AD08
3E086BA04
3E086BA13
3E086BA14
3E086BA15
3E086BA24
3E086BA35
3E086BA44
3E086BB01
3E086BB02
3E086BB05
3E086BB51
3E086BB52
3E086CA01
3E086CA28
3E086DA08
4F100AB10D
4F100AK01C
4F100AK04C
4F100AK15A
4F100AK22A
4F100AK25A
4F100AK41A
4F100AL01A
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100DG10B
4F100EJ65A
4F100GB15
4F100GB16
4F100JA04C
4F100JL12C
4F100YY00B
(57)【要約】      (修正有)
【課題】紙基材とシーラント層との間にポリエチレン系樹脂による接着用樹脂層がなくても、紙基材の破れが低減され、かつ、高い接着強度を備える包装材を提供する。
【解決手段】紙基材11とシーラント層12とを含む積層体であって、(1)前記紙は、目付量が40~120g/mであり、(2)前記シーラント層12は、シーラント性を有する樹脂成分を含み、かつ、軟化点が69~75℃であり、(3)紙基材11とシーラント層12との間にポリエチレン樹脂含有層が介在していない、ことを特徴とする包装材に係る。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙を含む紙基材とシーラント層とを含む積層体であって、
(1)前記紙は、目付量が40~120g/mであり、
(2)前記シーラント層は、シーラント性を有する樹脂成分を含み、かつ、軟化点が69~75℃であり、
(3)紙基材とシーラント層との間にポリエチレン樹脂含有層が介在していない、
ことを特徴とする包装材。
【請求項2】
紙基材とシーラント層との間に、アクリル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂及びポリエステル系樹脂の少なくとも1種を含むプライマー層をさらに含む、請求項1に記載の包装材。
【請求項3】
前記紙は、密度0.8~1.0g/cmの高密度紙である、請求項1に記載の包装材。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の包装材を含む包装体又は容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な包装材に関する。より具体的には、本発明は、シール性を有する包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品、医薬品等に用いられる包装材には環境への配慮が求められており、樹脂量を減らし、その代わりに紙を使用する工夫等がなされている。ところが、ヒートシールによって包装材から立体の包装体(包装袋、容器等)を成形する場合、樹脂量を減らすと、ピンホール等が生じやすくなる結果、包装材として求められる密封性等の性能が低下するという問題がある。
【0003】
そこで、樹脂量を低減しつつも、ピンホールも低減し、包装材として環境負荷の低減を試みる検討がなされている。例えば、紙基材層、アンカーコート層、ポリオレフィン系樹脂から成る接着用樹脂層、ポリオレフィン系樹脂から成るシーラント層を順に備える紙積層シートであって、 前記紙基材層の重量をXg/m、紙積層シート全体の重量をYg/mとするとき、Y/2<X<120であることを特徴とする紙積層シートが提案されている(特許文献1)。
【0004】
従来技術のような包装材では、紙基材とシーラント層との間に接着用樹脂層が形成されているところ、接着用樹脂層としては、ポリエチレン系樹脂等が用いられるのが一般的である。このような接着用樹脂層がなければ、紙基材に強度を付与できずに、意図しないときに紙基材が破れて内容物が露出してしまったり、開封する際に紙基材が不規則な裂け方をしてうまく開封できなかったりする等の問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-069297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように、ポリエチレン系樹脂の接着用樹脂層上にシーラント層が形成されている層構成では、包装材の開封時にシーラント層での凝集剥離により開封されるように設計されているものの、ヒートシール時にポリエチレン樹脂接着層が容器側まで到達してしまうと、ポリエチレンと容器とが融着し、手指で包装材を開封することが困難になる
【0007】
他方、ポリエチレン系樹脂の接着用樹脂層をなくすという方法も考えられるが、単にポリエチレン系樹脂の接着用樹脂層をなくすだけでは、包装材全体の強度が低下し、開封等に際して紙基材が破れてしまい、また意図しない開き方になってしまうおそれがある。別の方法として、紙基材の破れを抑制するために紙基材とシーラント層とが剥離しやすいように剥離層等を設ける方法もあるが、その場合には紙基材とシーラント層間の接着強度が低下する結果、意図しないときに開封されてしまうおそれがある。
【0008】
従って、本発明の主な目的は、紙基材とシーラント層との間にポリエチレン系樹脂による接着用樹脂層がなくても、紙基材の破れが低減され、かつ、高い接着強度を備える包装材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の組成・構造を有する積層体が上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、下記の包装材に係る。
1. 紙を含む紙基材とシーラント層とを含む積層体であって、
(1)前記紙は、目付量が40~120g/mであり、
(2)前記シーラント層は、シーラント性を有する樹脂成分を含み、かつ、軟化点が69~75℃であり、
(3)紙基材とシーラント層との間にポリエチレン樹脂含有層が介在していない、
ことを特徴とする包装材。
2. 紙基材とシーラント層との間に、アクリル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂及びポリエステル系樹脂の少なくとも1種を含むプライマー層をさらに含む、前記項1に記載の包装材。
3. 前記紙は、密度が0.8~1.0g/cmの高密度紙である、前記項1に記載の包装材。
4. 前記項1~3のいずれか1項に記載の包装材を含む包装体又は容器。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、紙基材とシーラント層との間にポリエチレン系樹脂による接着用樹脂層がなくても、紙基材の破れが低減され、かつ、高い接着強度を備える包装材を提供することができる。
【0012】
このため、本発明の包装材を用いた包装体又は容器においては、開封前においては、紙基材が破れにくいうえ、高い接着強度を維持できることから、意図しないときに包装体又は容器が裂けるような現象を低減させることができる。また、開封時においては、紙基材自体が破れにくいので、意図しない開き方又は不規則な開封となる現象を回避することできる。
【0013】
特に、本発明において、紙基材とシーラント層との間に特定のプライマー層を形成する場合には、開封時において剥離界面がプライマー層とシーラント層の層間となった状態で剥離することができる。これにより、開封時(包装材の剥離時)において、紙破れが発生しにくくなり、予期しない破れ方となるような事態を未然に回避できる結果、設計した通りに手指で包装材を開封又は剥離することができる。また、金属箔を含む紙基材以外の紙基材(例えば紙/PETフィルム等)の構成になっても、プライマーの種類を選定することによって、同等の良好な接着性、剥離性等を得ることが可能となる。
【0014】
さらに、本発明の包装材では、基材層とシーラント層との間にポリエチレン系樹脂の接着用樹脂層を形成しなくても良いので、リエチレン系樹脂の使用量の低減化を図ることができる結果、それだけ高品質の環境対応製品を提供することが可能となる。また、従来は必要とされていたポリエチレン樹脂の押出工程等を省略できるので、生産性、経済性等の点でも有利である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の包装材の層構成例を示す図である。
図2】本発明の包装材の別の層構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.包装材
本発明の包装材は、紙を含む紙基材とシーラント層とを含む積層体であって、
(1)前記紙は、目付量が40~120g/mであり、
(2)前記シーラント層は、シーラント性を有する樹脂成分を含み、かつ、軟化点が69~75℃であり、
(3)紙基材とシーラント層との間にポリエチレン樹脂含有層が介在していない、
ことを特徴とする。
【0017】
本発明の包装材の基本的な層構成例を図1に示す。本発明の包装材10は、紙を含む紙基材11にシーラント層12が積層された構成を有する。通常は、シーラント層12は、例えば図1に示すように、容器20と当接した状態でヒートシール(HS)等によって接合される層となる。従って、本発明では、シーラント層は、通常は本発明の包装材の最外層として配置されることが好ましい。シーラント層は、紙基材の全面に形成しても良いし、一部であっても良い。
【0018】
また、図1に示すように、本発明の包装材の紙基材11とシーラント層12との間には、従来の包装材で用いられているポリエチレン樹脂含有層は設けられていない。これによって、従来の包装材で問題となる剥離の異常を効果的に回避することができる。
【0019】
図1では、紙基材11とシーラント層12とが互いに直に接するように積層されているが、他の層を介在させた状態で積層されていても良い。ただし、紙基材とシーラント層との間にポリエチレン樹脂含有層は含まれない。例えば、図2Aに示す包装材10’では、紙基材11とシーラント層12との間にプライマー層PRが形成されている。この場合、シーラント層12は、プライマー層PR材の全面に形成しても良いし、その一部に形成されていても良い。さらに、図2Bに示す包装材10”のように、紙基材11がプライマー層PRと接する側とは反対側の面上に他の層(例えば、印刷層、オーバーコート層、表面保護層等)が積層されていても良い。特に、本発明では、包装材10’又は包装材10”に示すように、少なくとも紙基材/プライマー層/シーラント層という構成を含む積層体であることが好ましい。これらの層は、互いに直に接触した状態で積層されていることが好ましい。これによって、高い接着強度とともに、良好な剥離性を得ることができる。従って、例えば、図1に示すように、容器に包装材が接合された後、所望の密封性を維持しつつ、包装材を容器等から剥がす際には包装材が途中で破れるような支障を伴うことなく、包装材をきれいに剥離することができる。以下においては、本発明の包装材体を構成し得る各層等について説明する。
【0020】
a)紙基材
紙基材は、本発明の包装材の支持層として機能するものであり、積層体に剛性等を与える役割を果たす。紙基材は、少なくとも1層が紙を含むものであれば良く、単層又は複層のいずれであっても良い。
【0021】
紙基材が複層である場合、紙以外の材料としては、特に限定されず、例えば金属箔、金属蒸着膜(金属成分が蒸着された樹脂フィルム等)、樹脂フィルム等の少なくとも1種から構成される層の1層又は2層以上を積層することができる。金属箔又は金属蒸着膜の当該金属成分としては、例えばアルミニウム、鉄、銅等及びそれらを含む合金が挙げられる。また、樹脂フィルム等の樹脂成分としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル樹脂フィルム、ポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン樹脂フィルム等が挙げられる。
【0022】
特に、本発明では、紙にアルミニウム箔又はアルミニウム蒸着膜が1層又は2層以上積層された紙基材を用いることが好ましい。これによって、例えば光、酸素、湿気等に対してより高いバリア性を得ることができる。また、紙基材が、複数の材料が積層されたものである場合には、その材料間に接着剤層を備えていても良い。従って、複層の紙基材として、例えば「紙/接着剤層/アルミニウム箔」、「紙/接着剤層/金属蒸着フィルム」、「アルミニウム箔/接着剤層/紙/接着剤層/アルミニウム箔」、「金属蒸着フィルム/接着剤層/紙/接着剤層/金属蒸着フィルム」等を好適に採用することができる。
【0023】
なお、紙基材のシーラント層とは反対の面にOP層(オーバープリント層、印刷保護層、表面保護層)、印刷層等の任意の層が積層されたものを用いることもできる。
【0024】
紙基材は、少なくともシーラント層側の表面にプラズマ処理等の表面処理が施されていても良い。これにより、基材とシーラント層との密着性(接着性)をより高めることができる。また、紙基材又はシーラント層表面に、添加剤(好ましくは充填粒子)による凹凸処理、エンボス加工による凹凸処理等の処理が施されていても良い。こうした凹凸の高さは、限定的ではないが、特に5~60μm程度とすることが好ましく、その中でも20~50μmとすることがより好ましい。これにより、包装材として使用する際に、内容物との付着を抑制することができる。
【0025】
紙基材に含まれる紙の目付量は、通常は40~120g/m程度とし、特に45~90g/mとすることが好ましく、さらには50~70g/mとすることがより好ましい。このような目付量とすることによって、包装体としての強度を有しつつも、シーラント層を介してシーラント層どうし、紙基材又は他の包装材と接着されたときに必要な接着強度を得ることができる。
【0026】
また、紙の密度は、特に限定されないが、通常0.6~1.0g/cm程度であることが好ましく、特に0.8~1.0g/cmとすることがより好ましい。このようないわゆる高密度紙は、紙破れ防止の点で特に好ましい。
【0027】
紙基材にアルミニウム箔を含む場合には、アルミニウム箔は厚さ6~20μmの範囲が好ましい。また、アルミニウム箔の組成も、特に限定されず、包装材として使用されるアルミニウム箔であれば好適に用いることができる。アルミニウム箔の調質具合も、特に限定されないが、軟質箔であることが好ましい。
【0028】
紙基材にアルミニウム蒸着膜を含む場合には、アルミニウム蒸着膜の厚さは、通常は10nm以上1μm以下の範囲が好ましい。
【0029】
紙基材の厚み(総厚み)は、限定的ではないが、紙基材を構成する層の材質、本発明積層体の用途等に応じて適宜設定することができる。一般的には9~80μm程度の範囲内で適宜設定することができるが、これに限定されない。
【0030】
b)プライマー層
本発明の積層体では、プライマー層は必須ではないものの、紙基材とシーラント層との間にプライマー層を備えることが好ましい。本発明においてプライマー層は、主として、紙基材にシーラント層をより接着しやくする働きを有する。また、より良好な剥離性にも寄与することができる。
【0031】
プライマー層の種類は、特に限定されず、公知又は市販のプライマー成分を用いることができる。例えば、アクリル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂及びポリエステル系樹脂の少なくとも1種の樹脂成分を含むプライマーを好適に用いることができる。これらは、基材の材質等に応じて適宜選択することができる。例えば、紙基材が紙単体である場合には、特にアクリル系樹脂をプライマーとして用いることが好ましい。また例えば、紙基材がアルミニウム箔等の金属箔を備える場合には、特に塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂をプライマーとして用いることが好ましい。このような樹脂成分をそれぞれ選択することによって、紙基材の紙の破れを低減し、かつ、高い接着強度を得ることができる。
【0032】
プライマー層の形成量は、特に限定されないが、乾燥重量で0.1~3.0g/m程度とすることが接着強度の観点から好ましい。従って、例えば0.3~0.8g/m程度とすることもできる。
【0033】
プライマー層の形成方法は、上記のような構成を有する層を形成できれば限定されないが、通常はプライマー層形成用塗工液を基材表面に塗布する工程を含む方法を好適に採用することができる。
【0034】
プライマー層形成用塗工液は、例えば上記のような樹脂成分(接着性樹脂)が溶媒に溶解した溶液又は溶媒に分散した分散液を好適に用いることができる。
【0035】
溶媒としては、限定的でなく、樹脂成分の種類等に応じて適宜選択することができる。例えば、水のほか、エタノール、メタノール、シクロヘキサン、トルエン、アセトン、イソプロピルアルコール(IPA)、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ブチルジグリコール、ペンタメチレングリコール、ノルマルペンタン、ノルマルヘキサン、ヘキシルアルコール、メチルエチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソペンチル、酢酸ノルマル-ブチル、酢酸ノルマル-プロピル、酢酸ノルマル-ペンチル(別名:酢酸ノルマル-アミル)、シクロヘキサン、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、イソペンチルアルコール、エチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、オルト-ジクロルベンゼン、キシレン、クレゾール、クロルベンゼン、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、1,1,1-トリクロルエタン、トルエン等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上で使用することができる。
【0036】
プライマー層形成用塗工液の固形分濃度等は、例えば塗工性等に鑑みて適宜設定することが可能であり、例えば5~60質量%程度の範囲とすることができるが、これに限定されない。
【0037】
プライマー層形成用塗工液の調製方法は、特に限定されず、樹脂成分等を溶媒に添加し、混合することによって得ることができる。また、各成分の添加順序も、特に限定されない。
【0038】
プライマー層形成用塗工液による塗布方法は、特に制限されず、例えばロールコーティング、各種グラビアコーティング、バーコーター、ドクターブレードコーティング、コンマコーター、スプレーコート、刷毛塗り等の公知の方法により基材層上に塗布することができる。
【0039】
次いで、形成された塗膜を必要に応じて乾燥することもできる。乾燥により、溶媒を蒸発させ、基材層上にプライマー層を形成することができる。乾燥条件としては、例えば溶媒の種類、塗布量等に応じて適宜設定することができる。温度は、例えば50~250℃の範囲に設定できるが、これに限定されない。また、乾燥時間は、例えば5秒~60分の範囲で行うことができるが、これに限定されない。
【0040】
c)シーラント層
本発明においてシーラント層とは、主としてヒートシール性を備える層である。包装材として成形する際に、加熱によって溶融してシーラント層どうし、あるいは紙基材又は他の包装材(容器)と接着されて所望の形状に成形することができる。
【0041】
シーラント層は、シーラント性を有する樹脂成分を含む組成物(シーラント成分)により構成されている。本発明では、シーラント層(シーラント成分)の軟化点は69~75℃の範囲とする。このような範囲に設定することによって、包装材としての実際の使用に際し、高い接着強度のシール性を有しつつも、常温で一定の柔軟性も備え、紙基材の紙の破れも低減することができる。軟化点が69℃未満の樹脂成分を用いる場合は、ヒートシールが困難であるためにそもそも包装材として用いることが困難となる。また、軟化点が75℃を超える場合は、ヒートシール時の高温によりシーラント層以外の層がダメージを受けやすくなるという問題が起こる。
【0042】
なお、上記の軟化点は、樹脂成分の主成分のみならず、添加剤により設計することもできる。具体的には、シーラント成分を構成する樹脂の主成分は、限定的でなく、例えばエチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリオレフィン、合成ゴム、ポリウレタン、ポリアミド等の少なくとも1種を挙げることができる。従って、例えばエチレン-酢酸ビニル共重合体系ホットメルト剤等を好適に用いることができる。また例えば、ポリオレフィン樹脂(ポリエチレン等)を含み、添加剤としてワックス、粘着付与剤、エチレン-酢酸ビニル共重合体等を含むシーラント成分を採用することができる。この場合、特に粘着付与剤(テルペン樹脂)の組成及び/又は添加量により好適に調整することができる。これらは市販品も使用することができる。
【0043】
また、シーラント成分の粘度も、特に限定されないが、160℃溶融粘度が3~6Pa・s程度(特に3.5~5.5Pa・s)とすることが、紙基材との適度な接着性が得られるという観点から好ましい。
【0044】
シーラント層の形成量は、特に限定されないが、乾燥重量で5~25g/m程度とすることが接着強度の観点から好ましい。従って、例えば15~20g/m程度とすることもできる。
【0045】
シーラント層の形成方法は、上記のような構成を有する層を形成できれば限定されないが、通常はシーラント液を紙基材又はシーラント層の表面に塗布する工程を含む方法を好適に採用することができる。
【0046】
シーラント液としては、例えばシーラント性を有する樹脂成分が溶媒に溶解した溶液又は溶媒に分散した分散液を好適に用いることができる。また、市販のシーラント剤(ホットメルト剤等)を使用することもできる。
【0047】
溶媒を用いる場合、その種類は限定的でなく、シーラント性を有する樹脂成分の種類等に応じて適宜選択することができる。例えば、水のほか、エタノール、メタノール、シクロヘキサン、トルエン、アセトン、イソプロピルアルコール(IPA)、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ブチルジグリコール、ペンタメチレングリコール、ノルマルペンタン、ノルマルヘキサン、ヘキシルアルコール、メチルエチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソペンチル、酢酸ノルマル-ブチル、酢酸ノルマル-プロピル、酢酸ノルマル-ペンチル(別名:酢酸ノルマル-アミル)、シクロヘキサン、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、イソペンチルアルコール、エチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、オルト-ジクロルベンゼン、キシレン、クレゾール、クロルベンゼン、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、1,1,1-トリクロルエタン、トルエン等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上で使用することができる。
【0048】
シーラント液の固形分濃度等は、例えば塗工性等に鑑みて適宜設定することができ、例えば5~60質量%程度の範囲とすることができるが、これに限定されない。
【0049】
シーラント液の調製方法は、特に限定されず、樹脂成分を溶媒に添加し、混合することによって得ることができる。また、各成分の添加順序も、特に限定されない。
【0050】
シーラント液による塗布方法は、特に制限されず、例えばロールコーティング、各種グラビアコーティング、バーコーター、ドクターブレードコーティング、コンマコーター、スプレーコート、刷毛塗り等の公知の方法により紙基材層上に塗布することができる。
【0051】
次いで、形成された塗膜を必要に応じて乾燥することができる。乾燥により、溶媒を蒸発させ、紙基材層又はプライマー層の表面上にシーラント層を形成することができる。乾燥条件としては、例えば溶媒の種類、塗布量等に応じて適宜設定することができる。温度は、例えば50~250℃の範囲に設定できるが、これに限定されない。また、乾燥時間は、例えば5秒~60分の範囲で行うことができるが、これに限定されない。
【0052】
d)ポリエチレン樹脂含有層
本発明の包装材では、従来の包装材における基材層とシーラント層(ヒートシール層)との間に形成されているポリエチレン樹脂含有層を含まない点も特徴の一つである。これにより、ポリエチレン樹脂の使用量を低減させることができる一方、その低減によるデメリット(剥離性、接着性等の問題)を本発明の積層体の構成によって解決することができる。
【0053】
3.本発明の包装材の使用
本発明の包装材は、各種の製品を包装又は収容するための包装体を構成するための材料として好適に用いることができる。また、包装体として、容器のような成形体を構成するための材料としても、本発明の包装材を好適に用いることができる。すなわち、本発明は、本発明の包装材を含む包装体又は容器を包含する。より具体的には、包装材におけるシーラント層の少なくとも一部又は全部でヒートシールがなされており、被包装物を取り出す際に包装材がヒートシール部で開封される包装体又は容器を挙げることができる。
【0054】
本発明の包装材の実施形態としては、少なくとも紙基材、プライマー層及びシーラント層の3層を含む層構成とすることが好ましい。この3層を含む実施形態としては、例えば「OP層(オーバープリント層)/印刷層/プライマー層/紙基材/アルミニウム箔/プライマー層/シーラント層」、「OP層/印刷層/プライマー層/紙基材/プライマー層/シーラント層」等を挙げることができる。このように、上記3層を含みつつ、シーラント層が最外層となるように配置された包装材を採用することによって、シーラント層どうし、シーラント層と他の包装材料、シーラント層と他の容器等の接合(特にヒートシール)にいてより高い接着性を得ることができるとともに、当該包装材を剥がす際(開封時)において紙基材が途中で破れることなく、良好な剥離性を得ることが可能となる。
【0055】
このように、本発明の包装材は、最外層としてシーラント層が露出しているので、当該シーラント層どうし又は他の包装材のシーラント層とのヒートシールによって所望の包装体を形成することもできる。さらに、本発明の包装材は、包装体の構成部材となる蓋材としても好適に用いることができるので、シーラント層と容器(開口部)とをヒートシールすることによって内容物を密閉することができる。
【0056】
包装体としての形状は、特に限定されず、例えば成形包装体、帯状サイドカバー、包み紙、トレー、チューブ、並びに各種の袋体に好適に適用することができる。袋体としても、特にその形態に制限はなく、例えばボトムシール袋、サイドシール袋、ピロー袋、ガゼット袋、パウチ(スタンディングパウチ)等のいずれのタイプにも好適に用いることができる。また、上記のような容器としては、例えばボトル形状、カップ形状等のいずれの形状も適用することができる。
【実施例0057】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
【0058】
[実施例1]
市販の竜王コート紙(目付量80g/m、A4版)に同サイズの厚さ7μmのアルミニウム箔(東洋アルミニウム株式会社製、1N30)を市販のエステル系接着剤によって貼り合わせて乾燥することによって紙基材を作製した。次いで、紙基材のアルミニウム箔側にプライマーとして市販の塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂(水性)を乾燥重量で0.5g/m塗布して乾燥することにより、プライマー層を形成した。さらに、ここにシーラント層として市販のエチレン・酢酸ビニル共重合体系ホットメルト剤(軟化点72℃、160℃溶融粘度4.5Pa・s)20g/mを塗布して包装材を得た。
【0059】
[実施例2]
紙を市販の上質紙(目付量40g/m)とした以外は、実施例1と同様にして包装材を得た。
【0060】
[実施例3]
紙を市販の竜王コート紙(目付量120g/m)とした以外は、実施例1と同様にして包装材を得た。
【0061】
[実施例4]
紙を市販の高密度紙(目付量60g/m、密度0.80g/cm)とした以外は、実施例1と同様にして包装材を得た。
【0062】
[実施例5]
ホットメルト剤を軟化点69℃、160℃溶融粘度4.0のものとした以外は、実施例1と同様にして包装材を得た。
【0063】
[実施例6]
ホットメルト剤を軟化点75℃、160℃溶融粘度5.0のものとした以外は、実施例1と同様にして包装材を得た。
【0064】
[実施例7]
プライマーとして市販のアクリル系樹脂(溶剤としてアセトンを含む)を乾燥重量0.5g/mとなるように塗布して乾燥することによってプライマー層を形成したほかは、実施例1と同様にして包装材を得た。
【0065】
[実施例8]
紙基材として、市販の竜王コート紙(目付量80g/m、A4版)を用意した。その一方の面にプライマーとして市販の塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂(水性)を乾燥重量で0.5g/m塗布して乾燥した後、形成されたプライマー層上に市販のエチレン・酢酸ビニル共重合体系ホットメルト剤(軟化点72℃、160℃溶融粘度4.5)20g/mを塗布してシーラント層を形成することによって包装材を得た。
【0066】
[実施例9]
紙基材として、市販の竜王コート紙(目付量80g/m、A4版)を用意した。その一方の面にプライマーとして市販のアクリル系樹脂を乾燥重量で0.5g/m塗布して乾燥した。形成されたプライマー層上に市販のエチレン・酢酸ビニル共重合体系ホットメルト剤(軟化点72℃、160℃溶融粘度4.5)20g/m塗布してシーラント層を形成することによって包装材を得た。
【0067】
[比較例1]
ホットメルト剤を軟化点76℃、160℃溶融粘度7.0のものとした以外は、実施例1と同様にして包装材を得た。
【0068】
[比較例2]
紙を市販の半紙(目付量37g/m)とした以外は、実施例1と同様にして包装材を得た。
【0069】
[比較例3]
紙を市販のOSコート紙(目付量127g/m)とした以外は、実施例1と同様にして包装材を得た。
【0070】
[参考例1]
紙基材とシーラント層との間に、厚さ20μmのポリエチレン系樹脂層を形成した以外は、実施例1と同様にして包装材を得た。
【0071】
[試験例1]
上記の各実施例及び比較例で得られた包装材(蓋材)をそれぞれ71口径の紙/PE容器に150℃、1kg/cm×1秒の条件でヒートシールしてシールサンプルを作成した。
その後、包装材の端部をつまんで手による開封を行い、紙基材が裂けて大きく破れたものを「×」とし、紙基材は裂けなかったものの紙の一部が剥がれたものを「△」とし、紙基材が全く破れず、紙の剥離もなかったものを「〇」として評価した。その結果を表1に示す。
【0072】
[試験例2]
紙基材とシーラント層との接着強度を測定した。具体的には各包装材を15mm幅にカットし、PE容器に見立てた市販の20μm厚さポリエチレンシートに150℃、1kg/cm×1秒の条件でヒートシールしてシールサンプルを作成し、室温(20℃)中で引張試験機(株式会社島津製作所EZ-LX 100N)を用い 、シートサンプルの端から紙基材を少し剥がし、紙基材を180°曲げ、ポリエチレンシートは曲げずに、紙基材とポリエチレンシートとの界面が180°で剥がれる状態で、剥離速度200mm/分、試料幅7mm、チャック間距離100mmにて行った。
なお、本明細書で意味するところの剥離強度(N/15mm)は、上記の試料幅7mmの短冊状の試料で剥離強度を測定し、その値を試料幅15mmとした時の剥離強度に換算(15/7倍)したものである。必要十分な接着強度を有し、かつ、引き剥がしも可能な目安として、剥離強度が0.5N/15mm以上2.5N/15mm未満のものを「○」、剥離強度が0.5N/15mm未満及び2.5N/15mmを超えるものを「×」として評価した。その結果を表1に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
以上の結果からも明らかなように、本発明の包装材は、紙基材とシーラント層との間にポリエチレン系樹脂による接着用樹脂層がなくても、ポリエチレン樹脂層を含む参考例1と同様、高い接着強度が得られるとともに、開封時又は剥離時においては、紙基材の破れが低減され、設計通りに手指でも容易に剥離できることがわかる。同時に、ポリエチレン系樹脂の接着用樹脂層が介在しないので、ヒートシール時に当該接着用樹脂層と容器等との融着の問題も未然に回避することができる。

図1
図2