IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ナニワ研磨工業株式会社の特許一覧

特開2024-134141彫刻ブラスト用マスキングシート及びその製造方法
<>
  • 特開-彫刻ブラスト用マスキングシート及びその製造方法 図1
  • 特開-彫刻ブラスト用マスキングシート及びその製造方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134141
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】彫刻ブラスト用マスキングシート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B24C 1/04 20060101AFI20240926BHJP
   B23K 26/361 20140101ALI20240926BHJP
【FI】
B24C1/04 B
B23K26/361
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044276
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000110620
【氏名又は名称】ナニワ研磨工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107593
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 太郎
(72)【発明者】
【氏名】小向 愛一郎
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AD03
4E168DA23
4E168JA27
(57)【要約】
【課題】微細な転写部分を容易かつ正確に加工でき、石材等の表面への貼り付け作業も容易かつ迅速に行える彫刻ブラスト用マスキングシートを提供する。
【解決手段】レーザーの照射により蒸発する素材からなるとともにブラスト加工時に加工対象Sの表面を保護するマスキング層1の裏面に、レーザーを反射するとともにブラスト加工により突き破られる素材からなる保持層2を積層する。マスキング層1の表面側からレーザーを照射することにより、加工対象の表面に彫刻する文字や模様等の転写部分を蒸発させるが、保持層2はレーザー照射によって切り離されないので、保持層2はレーザー加工後のマスキング層1をすべて保持する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザーの照射により蒸発する素材からなるとともにブラスト加工時に加工対象の表面を保護するマスキング層の裏面に、前記レーザーを反射するとともに前記ブラスト加工により突き破られる素材からなる保持層が積層されてなる、彫刻ブラスト用マスキングシート。
【請求項2】
請求項1に記載の彫刻ブラスト用マスキングシートにおいて、前記レーザーはCO2レーザーであり、前記マスキング層はゴムシートからなる、彫刻ブラスト用マスキングシート。
【請求項3】
請求項1に記載の彫刻ブラスト用マスキングシートにおいて、前記レーザーはCO2レーザーであり、前記保持層は金属フィルムからなる、彫刻ブラスト用マスキングシート。
【請求項4】
請求項1に記載の彫刻ブラスト用マスキングシートにおいて、前記保持層の裏面に、前記加工対象の表面に貼り付けるための粘着層が積層されている、彫刻ブラスト用マスキングシート。
【請求項5】
レーザーの照射により蒸発する素材からなるとともにブラスト加工時に加工対象の表面を保護するマスキング層の裏面に、前記レーザーを反射するとともに前記ブラスト加工により突き破られる素材からなる保持層を積層する工程と、
前記マスキング層の表面側から前記レーザーを照射することにより、前記加工対象の表面に彫刻する文字や模様等の転写部分を蒸発させる工程と、
を有する、彫刻ブラスト用マスキングシートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石材等の表面に文字や模様をブラスト加工によって刻印する際に用いられる彫刻ブラスト用マスキングシートを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特開2006-62005号公報(特許文献1)に開示されるように、墓標や記念碑などは、御影石のような石材にサンドブラストにより彫刻を施すことにより加工される。サンドブラストを行うには、石材に彫刻を施す際にマスキングシートを石材に貼付する。マスキングシートは、粘着材層及び剥離ライナが積層されてなり、剥離ライナを剥離して粘着材層を露出させ、その粘着力によってマスキングシートを石材表面に貼り付けることが可能である。その後、彫刻する文字や模様の形状に沿ってマスキングシートをカッティングし、カッティングされた転写部分を剥がして石材の彫刻すべき部分を露出させる。この状態で、石材の彫刻すべき露出部分をサンドブラスト法により彫り込みを行なう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-62005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の方法では、石材にマスキングシートを貼り付けた後に刃物を用いて転写部分を手作業によりカッティングしているため、微細な加工が難しい。
【0005】
近年、レーザー加工機を用いて石材への貼り付け前にマスキングシートを微細かつ正確な形状に転写部分の孔開け加工をすることも行なわれているが、いわゆる「島」となる部分が存在する「田」や「A」などの文字の場合、「島」となる部分が切り離されてしまい、石材の表面に当該部分を正確に貼り付けることが困難かつ煩雑となる。
【0006】
本発明は、微細な転写部分(石材露出用の開口部分)を容易かつ正確に加工でき、石材等の表面への貼り付け作業も容易かつ迅速に行える彫刻ブラスト用マスキングシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る彫刻ブラスト用マスキングシートは、レーザーの照射により蒸発する素材からなるとともにブラスト加工時に加工対象の表面を保護するマスキング層の裏面に、前記レーザーを反射するとともに前記ブラスト加工により突き破られる素材からなる保持層が積層されてなる。
【0008】
これによれば、マスキング層に対してレーザー照射することによって、石材等の加工対象の表面をブラスト加工によって彫刻するための転写部分を蒸発させ、転写部分を開口させることができる。一方、マスキング層の裏面に積層されている保持層はレーザーを反射するため、保持層には開口が形成されず、いわゆる「島」部分がカットされることがない。そして、転写部分を形成するための全てのマスキング層の構成部位を保持層に保持させたまま、保持層の裏面側若しくはマスキング層の表面側を石材等の加工対象の表面に貼り付けてブラスト加工することにより、保持層はブラスト加工によって容易に突き破られるため、加工対象の表面に転写部分の形状に沿った彫刻を行なうことができる。
【0009】
本発明の彫刻ブラスト用マスキングシートにおいて、好ましくは前記レーザーはCO2レーザーである。これによれば、設備コストを抑えつつ、高出力の彫刻を行なうことができる。
【0010】
好ましくは、前記マスキング層はゴムシートからなる。これによれば、コスト増を抑えつつ、可撓性にも優れるため加工対象への貼り付け作業の容易化が図られる。
【0011】
好ましくは、前記レーザーはCO2レーザーであり、前記保持層は金属フィルムからなる。より好ましくは、前記保持層はアルミニウムフィルムからなる。これによれば、薄い保持層であってもマスキング層の保持に十分な強度を持たせることができ、ブラスト加工によって容易に突き破られる構成を得ることができる。
【0012】
好ましくは、前記保持層の裏面に、前記加工対象の表面に貼り付けるための粘着層が積層されている。これによれば、現場で容易かつ迅速に保持層の裏面を石材等の表面に貼り付けることができる。
【0013】
さらに好ましくは、粘着層の裏面に、容易に剥離可能な剥離シートを貼り付けておくことができる。これによれば、石材等の表面に貼り付ける前の段階で粘着層を保護することができる。
【0014】
本発明に係る彫刻ブラスト用マスキングシートの製造方法は、レーザーの照射により蒸発する素材からなるとともにブラスト加工時に加工対象の表面を保護するマスキング層の裏面に、前記レーザーを反射するとともに前記ブラスト加工により突き破られる素材からなる保持層を積層する工程と、前記マスキング層の表面側から前記レーザーを照射することにより、前記加工対象の表面に彫刻する文字や模様等の転写部分を蒸発させる工程と、 を有する。
【0015】
かかる本発明の製造方法によれば、「島」が脱落してしまうことなく、マスキング層に転写部分を開口形成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、微細な転写部分(石材露出用の開口部分)を容易かつ正確に加工でき、石材等の表面への貼り付け作業も容易かつ迅速に行える彫刻ブラスト用マスキングシートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る彫刻ブラスト用マスキングシートの斜視図である。
図2】(a)はマスキング層、保持層、粘着層及び剥離シートを積層させた転写部分形成前のマスキングシートの断面図であり、(b)はレーザー加工によりマスキング層の転写部分を蒸発させた状態のマスキングシートの断面図であり、(c)は剥離シートを剥がして粘着層の粘着力によって加工対象の表面にマスキングシートを貼り付けた状態の断面図であり、(d)はブラスト加工によって加工対象を彫刻した状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る彫刻ブラスト用マスキングシートを示している。図2(a)(b)は、本実施形態に係るマスキングシートの製造工程を示し、図2(c)(d)はブラスト加工工程を示している。
【0019】
このマスキングシートは、図2(a)に示すように、CO2レーザーの照射により蒸発する素材からなるとともにブラスト加工時に加工対象の表面を保護するマスキング層1の裏面に、CO2レーザーを反射するとともにブラスト加工により突き破られる素材からなる保持層2が積層されている。さらに、保持層2の裏面には、全面にわたって粘着層3が積層されており、この粘着層3の粘着力によって石材等の加工対象Sの表面にマスキングシートを貼り付けることができるようになっている。
【0020】
マスキング層1の素材は、レーザー加工に適した素材であればどのようなものでもよいが、例えば天然ゴムや合成樹脂材などを利用することができる。マスキング層1は、加工対象に彫刻する文字や模様等の形状に合わせて、転写部分がレーザー照射によって部分的に蒸発させることで開口形成されている。図示例では、「釋田」の文字形状の転写部分が形成されている。
【0021】
保持層2は、例えばアルミニウムフィルムからなり、フィルム表面の金属光沢によってCO2レーザーを反射するため、図2(b)に示すように、マスキング層1のレーザー加工時に保持層2が切断されたり穴が開けられることがない。保持層2はレーザー加工後のマスキング層1をすべて保持する。一方、保持層2は、ブラスト加工による大きな物理的外力が作用すると容易に突き破られる程度の肉厚、例えば200ミクロン以下、とされている。保持層2は、転写部分を形成する前のマスキング層1の裏面全面にわたって設けられている。
【0022】
粘着層3は、適宜の接着剤やのりなどを保持層2の裏面に塗布することによって形成することができる。好ましくは、石材等への貼り付け前の段階では粘着層3を保護するため、粘着層3の裏面に剥離シート4を貼り付けておくことが好ましい。剥離シート4は、粘着層3の粘着力が弱い素材からなるものを用いるのがよい。
【0023】
ブラスト加工により石材等の加工対象Sの彫刻を行なうには、マスキング層1の転写部分を開口形成したマスキングシートを彫刻作業の現場に持ち込み、剥離シート4を剥離して、図2(c)に示すようにマスキングシートを加工対象Sの表面に貼り付ける。この状態で加工対象Sの表面にブラスト加工を行なうと、図2(d)に示すように、開口された転写部分のみにおいて加工対象Sの表面が彫り込まれる。このとき、保持層3は、ブラスト加工の物理的外力によって容易に突き破られている。
【0024】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、適宜設計変更できる。
【符号の説明】
【0025】
1 マスキング層
2 保持層
3 粘着層
4 剥離シート
図1
図2