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特開2024-134142液晶配向剤、液晶配向膜及びその製造方法、並びに液晶素子及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134142
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】液晶配向剤、液晶配向膜及びその製造方法、並びに液晶素子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1337 20060101AFI20240926BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
G02F1/1337 525
C08G73/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044278
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100122390
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 美穂
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一聖
(72)【発明者】
【氏名】安池 伸夫
【テーマコード(参考)】
2H290
4J043
【Fターム(参考)】
2H290AA15
2H290AA33
2H290AA72
2H290BD01
2H290BF13
2H290BF24
2H290BF25
2H290BF62
2H290DA01
2H290DA03
4J043PA06
4J043PA08
4J043QB26
4J043QB31
4J043RA07
4J043SA06
4J043SA07
4J043SB05
4J043TA22
4J043TB03
4J043UA051
4J043UA121
4J043UA221
4J043UA222
4J043UA231
4J043UA232
4J043UA361
4J043UB011
4J043UB162
4J043UB221
4J043VA021
4J043VA022
4J043XA16
4J043ZB23
(57)【要約】
【課題】不純物耐性及びシール密着性に優れた液晶配向膜を得ることができるとともに、透過率が良好な液晶素子を得ることができる液晶配向剤を提供すること。
【解決手段】式(1)で表される部分構造(a1)と、特定の窒素含有構造である部分構造(a2)とを同一分子内又は異なる分子内に有する重合体(P1)を含有する液晶配向剤とする。式(1)中、R及びRは1価の置換基である。n1及びn2は0又は1である。m1は0~(n1×2+4)の整数である。m2は0~(n2×2+4)の整数である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】
(式(1)中、R及びRは、互いに独立して1価の置換基である。n1及びn2は、互いに独立して0又は1である。m1は0~(n1×2+4)の整数である。m2は0~(n2×2+4)の整数である。Rが複数存在する場合、複数のRは同一又は異なり、Rが複数存在する場合、複数のRは同一又は異なる。「*」は、炭素原子との結合手を表す。)
で表される部分構造(a1)と、下記に示す部分構造(a2)とを同一分子内又は異なる分子内に有する重合体(P1)を含有する、液晶配向剤。
部分構造(a2):含窒素複素環構造、下記式(2)で表される部分構造及び下記式(3)で表される部分構造よりなる群から選択される少なくとも1種
【化2】
(式(2)中、Yは、水素原子又は加熱により脱離して水素原子に置き換わる1価の基である。Aは、アルカンジイル基、置換若しくは無置換の2価の脂環基又は置換若しくは無置換の2価の芳香環基である。Aはアルカンジイル基である。「*」は結合手を表す。)
【化3】
(式(3)中、Yは、加熱により脱離して水素原子に置き換わる1価の基である。Xは、単結合又はアルカンジイル基である。R及びRは、互いに独立して、水素原子又は1価の炭化水素基である。「*」は結合手を表す。)
【請求項2】
更に、-OEで表される基(ただし、Eは水素原子、炭素数1~3のアルキル基又は1価の脱離性基である。)、メルカプト基、保護されたメルカプト基、アミノ基、保護されたアミノ基、オキシラニル基、オキセタニル基、-Si(OR11(R123-rで表される基(ただし、R11及びR12は、互いに独立して炭素数1~10の1価の炭化水素基であり、rは1~3の整数であり、rが2又は3の場合、複数のR11は同一又は異なり、rが1の場合、複数のR12は同一又は異なる。)及び重合性炭素-炭素二重結合基よりなる群から選択される少なくとも1種を有する化合物(A)を含有する、請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項3】
下記式(1)
【化4】
(式(1)中、R及びRは、互いに独立して1価の置換基である。n1及びn2は、互いに独立して0又は1である。m1は0~(n1×2+4)の整数である。m2は0~(n2×2+4)の整数である。Rが複数存在する場合、複数のRは同一又は異なり、Rが複数存在する場合、複数のRは同一又は異なる。「*」は結合手を表す。)
で表される部分構造(a1)を有する重合体と、
-OEで表される基(ただし、Eは水素原子、炭素数1~3のアルキル基又は1価の脱離性基である。)、メルカプト基、保護されたメルカプト基、アミノ基、保護されたアミノ基、オキセタニル基、-Si(OR11(R123-rで表される基(ただし、R11及びR12は、互いに独立して炭素数1~10の1価の炭化水素基であり、rは1~3の整数であり、rが2又は3の場合、複数のR11は同一又は異なり、rが1の場合、複数のR12は同一又は異なる。)及び重合性炭素-炭素二重結合基よりなる群から選択される少なくとも1種を1分子内に合計2個以上有する化合物と、
を含有する、液晶配向剤。
【請求項4】
前記重合体(P1)は、前記部分構造(a1)を含む部分構造として、下記式(1-1)で表される部分構造及び下記式(1-2)で表される部分構造よりなる群から選択される少なくとも1種を有する、請求項1に記載の液晶配向剤。
【化5】
(式(1-1)及び式(1-2)中、Ar及びArは、互いに独立して2価の芳香環基である。X及びXは、互いに独立して、単結合、-O-、-S-、-CO-、-NR-、-COO-、-CONR-、-NRCONR-、-SO-、-SO-O-、炭素数1~10のアルカンジイル基、又は炭素数2~10のアルカンジイル基における任意のメチレン基が-O-、-S-、-CO-、-NR-、-COO-、-OCO-、-CONR-、-NRCO-若しくは-NRCONR-に置き換えられた基である。R及びRは、互いに独立して、水素原子又は1価の有機基である。Ar及びArは、互いに独立して3価の芳香環基である。R、R、n1、n2、m1及びm2は、上記式(1)と同義である。「*」は結合手を表す。)
【請求項5】
前記重合体(P1)は、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項6】
前記重合体(P1)は、前記部分構造(a1)を有するテトラカルボン酸誘導体及び前記部分構造(a1)を有するジアミンよりなる群から選択される少なくとも1種に由来する構造単位と、前記部分構造(a2)を有するジアミンに由来する構造単位とを、同一分子内又は異なる分子内に含む、請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項7】
前記部分構造(a1)及び前記部分構造(a2)をいずれも有しない重合体を更に含む、請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜。
【請求項9】
請求項8に記載の液晶配向膜を備える液晶素子。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか一項に記載の液晶配向剤を用いて塗膜を形成する工程と、
前記塗膜に光を照射して液晶配向能を付与する工程と、
を含む、液晶配向膜の製造方法。
【請求項11】
導電膜を有する一対の基板のそれぞれの導電膜上に、請求項1~7のいずれか一項に記載の液晶配向剤を用いて塗膜を形成する工程と、
前記塗膜を形成した一対の基板を、光重合性化合物を含む液晶層を介して前記塗膜が対向するように配置して液晶セルを構築する工程と、
導電膜間に電圧を印加した状態で前記液晶セルに光照射する工程と、
を含む、液晶素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶配向剤、液晶配向膜及びその製造方法、並びに液晶素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶素子としては、電極構造や使用する液晶分子の物性等が異なる種々の駆動方式が開発されており、例えばTN型やSTN型、VA型、MVA型、面内スイッチング型(IPS型)、FFS型、光学補償ベンド型(OCB型)、PSA型等の各種液晶素子が知られている。これら液晶素子は、液晶分子を配向させるための液晶配向膜を有する。液晶配向膜は一般に、重合体成分が有機溶媒に溶解又は分散されてなる液晶配向剤を基板表面に塗布し、好ましくは加熱することによって基板上に形成される。
【0003】
近年、大画面で高精細な液晶テレビが主体となり、またスマートフォンやタブレットPC等といった小型の表示端末の普及が進み、液晶素子に対する高品質化の要求は更に高まっている。このような高品質化の要求に応えるべく、種々の液晶配向剤が提案されている(例えば、特許文献1や特許文献2参照)。特許文献1には、フルオレン構造を有するジアミンを含むジアミン化合物とテトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られる重合体を用いて液晶配向膜を形成することが開示されている。また、特許文献2には、ポリイミド又はポリイミド前駆体と共に、液晶配向膜の硬度を向上させる低分子化合物として架橋性化合物を液晶配向剤に含有させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-155138号公報
【特許文献2】国際公開第2020/171128号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液晶素子の高精細化に伴い、品質に対する要求は更に厳しくなっている。例えば、4Kや8Kといった高精細な液晶パネルには絶縁膜が設けられることが多いが、絶縁膜が設けられた液晶パネルでは、絶縁膜からのイオン性不純物が液晶配向膜を介して液晶中に溶出することがある。イオン性不純物が液晶中に溶出した場合、電圧保持率が低下するなど、液晶素子の品質が低下することが懸念される。そのため、液晶配向膜には、素子内に生じた不純物が液晶中に侵入することを抑制し、不純物に起因する電圧保持率の低下を抑止する性能(以下、「不純物耐性」ともいう)が求められる。また、高精細な液晶パネルでは、ブラックマトリクス(BM)や薄膜トランジスタ(TFT)等の占有率が大きくなる。そのため、パネルの開口部における透過率向上の重要性が高まっている。
【0006】
高精細な液晶素子には、不純物耐性や透過率の更なる改善だけでなく、液晶配向膜の力学特性や基板への密着性に優れていることが求められる。例えば、スマートフォンやタブレットPC等に代表されるモバイル用途に加え、大型テレビやPC用モニターにおいても、デザイン性の観点や表示装置の小型化の観点から狭額縁化を図ることが行われている。狭額縁化を図る方法の1つとしては、基板面全体に液晶配向膜を形成した後、シール剤を液晶配向膜上に塗布して基板同士を貼り合わせる方法が知られている。その一方で、液晶配向膜上にシール剤を配置すると、シール剤を配置した部分に力がかかりやすくなる。このため、液晶配向膜の力学的強度や基板への密着性が十分でない場合には基板間の密着性(以下、「シール密着性」ともいう)の低下を招き、外力の作用等により基板同士の剥がれが生じやすくなることが懸念される。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、不純物耐性及びシール密着性に優れた液晶配向膜を得ることができるとともに、透過率が良好な液晶素子を得ることができる液晶配向剤を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
液晶素子の更なる高品質化を図るべく本発明者らは検討し、液晶配向剤の成分を改良することで上記課題を解決できることを見出した。具体的には、本発明によれば以下の手段が提供される。
【0009】
〔1〕 下記式(1)
【化1】
(式(1)中、R及びRは、互いに独立して1価の置換基である。n1及びn2は、互いに独立して0又は1である。m1は0~(n1×2+4)の整数である。m2は0~(n2×2+4)の整数である。Rが複数存在する場合、複数のRは同一又は異なり、Rが複数存在する場合、複数のRは同一又は異なる。「*」は、炭素原子との結合手を表す。)
で表される部分構造(a1)と、下記に示す部分構造(a2)とを同一分子内又は異なる分子内に有する重合体(P1)を含有する、液晶配向剤。
部分構造(a2):含窒素複素環構造、下記式(2)で表される部分構造及び下記式(3)で表される部分構造よりなる群から選択される少なくとも1種
【化2】
(式(2)中、Yは、水素原子又は加熱により脱離して水素原子に置き換わる1価の基である。Aは、アルカンジイル基、置換若しくは無置換の2価の脂環基又は置換若しくは無置換の2価の芳香環基である。Aはアルカンジイル基である。「*」は結合手を表す。)
【化3】
(式(3)中、Yは、加熱により脱離して水素原子に置き換わる1価の基である。Xは、単結合又はアルカンジイル基である。R及びRは、互いに独立して、水素原子又は1価の炭化水素基である。「*」は結合手を表す。)
【0010】
〔2〕 上記式(1)で表される部分構造(a1)を有する重合体と、-OEで表される基(ただし、Eは水素原子、炭素数1~3のアルキル基又は1価の脱離性基である。)、メルカプト基、保護されたメルカプト基、アミノ基、保護されたアミノ基、オキセタニル基、-Si(OR11(R123-rで表される基(ただし、R11及びR12は、互いに独立して炭素数1~10の1価の炭化水素基であり、rは1~3の整数であり、rが2又は3の場合、複数のR11は同一又は異なり、rが1の場合、複数のR12は同一又は異なる。)及び重合性炭素-炭素二重結合基よりなる群から選択される少なくとも1種を1分子内に合計2個以上有する化合物と、を含有する、液晶配向剤。
【0011】
〔3〕 上記〔1〕又は〔2〕に記載の液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜。
〔4〕 上記〔3〕に記載の液晶配向膜を備える液晶素子。
〔5〕 上記〔1〕又は〔2〕に記載の液晶配向剤を用いて塗膜を形成する工程と、前記塗膜に光を照射して液晶配向能を付与する工程と、を含む、液晶配向膜の製造方法。
〔6〕 導電膜を有する一対の基板のそれぞれの導電膜上に、上記〔1〕又は〔2〕に記載の液晶配向剤を用いて塗膜を形成する工程と、前記塗膜を形成した一対の基板を、光重合性化合物を含む液晶層を介して前記塗膜が対向するように配置して液晶セルを構築する工程と、導電膜間に電圧を印加した状態で前記液晶セルに光照射する工程と、
を含む、液晶素子の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の液晶配向剤によれば、不純物耐性及びシール密着性に優れた液晶配向膜を得ることができる。また、本発明の液晶配向剤により液晶配向膜を形成することにより、透過率が良好な液晶素子を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
《液晶配向剤》
本開示の液晶配向剤は、下記式(1)で表される部分構造(a1)を有する重合体を含有する。
【化4】
(式(1)中、R及びRは、互いに独立して1価の置換基である。n1及びn2は、互いに独立して0又は1である。m1は0~(n1×2+4)の整数である。m2は0~(n2×2+4)の整数である。Rが複数存在する場合、複数のRは同一又は異なり、Rが複数存在する場合、複数のRは同一又は異なる。「*」は、炭素原子との結合手を表す。)
【0014】
本開示において、上記部分構造(a1)を有する重合体を含有する液晶配向剤の具体的態様としては、以下の第1の液晶配向剤及び第2の液晶配向剤が挙げられる。
第1の液晶配向剤:上記式(1)で表される部分構造(a1)と、下記に示す部分構造(a2)とを同一分子内又は異なる分子内に有する重合体(以下、「重合体(P1)」ともいう)を含有する液晶配向剤。
部分構造(a2):含窒素複素環構造、下記式(2)で表される部分構造及び下記式(3)で表される部分構造よりなる群から選択される少なくとも1種
【化5】
(式(2)中、Yは、水素原子又は加熱により脱離して水素原子に置き換わる1価の基である。Aは、アルカンジイル基、置換若しくは無置換の2価の脂環基又は置換若しくは無置換の2価の芳香環基である。Aはアルカンジイル基である。「*」は結合手を表す。)
【化6】
(式(3)中、Yは、加熱により脱離して水素原子に置き換わる1価の基である。Xは、単結合又はアルカンジイル基である。R及びRは、互いに独立して、水素原子又は1価の炭化水素基である。「*」は結合手を表す。)
【0015】
第2の液晶配向剤:上記式(1)で表される部分構造(a1)を有する重合体(以下、「重合体(P2)」ともいう)と、-OEで表される基(ただし、Eは水素原子、炭素数1~3のアルキル基又は1価の脱離性基である。)、メルカプト基、保護されたメルカプト基、アミノ基、保護されたアミノ基、オキセタニル基、-Si(OR11(R123-rで表される基(ただし、R11及びR12は、互いに独立して炭素数1~10の1価の炭化水素基であり、rは1~3の整数であり、rが2又は3の場合、複数のR11は同一又は異なり、rが1の場合、複数のR12は同一又は異なる。)及び重合性炭素-炭素二重結合基よりなる群から選択される少なくとも1種を1分子内に合計2個以上有する化合物(以下、「化合物(A1)」ともいう)と、を含有する液晶配向剤。
【0016】
上記の第1の液晶配向剤及び第2の液晶配向剤によれば、不純物耐性及びシール密着性に優れた液晶配向膜を得ることができ、かつ、透過率が良好な液晶素子を得ることができる。以下、第1の液晶配向剤及び第2の液晶配向剤に含まれる各成分、及び必要に応じて任意に配合されるその他の成分について説明する。なお、各成分については特に言及しない限り、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
ここで、本明細書において、「炭化水素基」とは、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基を含む意味である。「鎖状炭化水素基」とは、主鎖に環状構造を含まず、鎖状構造のみで構成された直鎖状炭化水素基及び分岐状炭化水素基を意味する。ただし、鎖状炭化水素基は飽和でも不飽和でもよい。「脂環式炭化水素基」とは、環構造としては脂環式炭化水素の構造のみを含み、芳香環構造を含まない炭化水素基を意味する。ただし、脂環式炭化水素基は脂環式炭化水素の構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造を有するものも含む。「芳香族炭化水素基」とは、環構造として芳香環構造を含む炭化水素基を意味する。ただし、芳香族炭化水素基は芳香環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造や脂環式炭化水素の構造を含んでいてもよい。「芳香環」は、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環を含む意味である。「有機基」とは、炭素を含む化合物(すなわち有機化合物)から任意の水素原子を取り除いてなる原子団をいう。
【0018】
重合体の「主鎖」とは、重合体のうち最も長い原子の連鎖からなる「幹」の部分をいう。この「幹」の部分が環構造を含むことは許容される。例えば、「特定構造を主鎖に有する」とは、その特定構造が主鎖の一部分を構成することをいう。「側鎖」とは、重合体の「幹」の部分から分岐した部分をいう。「(メタ)アクリロ」は、アクリロ及びメタクリロを包含する用語であり、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートを包含する用語である。加熱により脱離して水素原子に置き換わる基を「熱脱離性基」ともいう。
【0019】
〔第1の液晶配向剤〕
<重合体(P1)>
・部分構造(a1)
上記式(1)において、R又はRで表される1価の置換基としては、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、炭素数1~12のハロゲン化アルキル基、炭素数1~12のハロゲン化アルコキシ基、水酸基等が挙げられる。上記式(1)中の2個の結合手(*)は、重合体(P1)の主鎖を構成する炭素原子に結合していてもよく、側鎖を構成する炭素原子に結合していてもよい。
【0020】
シール密着性がより高い液晶配向膜を得る観点及び不純物耐性の高い膜を形成する観点から、上記式(1)中の2個の結合手(*)はそれぞれ、芳香環(好ましくは、異なる芳香環)に結合していることが好ましい。具体的には、重合体(P1)は、上記式(1)で表される部分構造(a1)を有する構造として、下記式(1-1)で表される部分構造及び下記式(1-2)で表される部分構造よりなる群から選択される少なくとも1種の部分構造を含むことが好ましい。
【化7】
(式(1-1)及び式(1-2)中、Ar及びArは、互いに独立して2価の芳香環基である。X及びXは、互いに独立して、単結合、-O-、-S-、-CO-、-NR-、-COO-、-CONR-、-NRCONR-、-SO-、-SO-O-、炭素数1~10のアルカンジイル基、又は炭素数2~10のアルカンジイル基における任意のメチレン基が-O-、-S-、-CO-、-NR-、-COO-、-OCO-、-CONR-、-NRCO-若しくは-NRCONR-に置き換えられた基である。R及びRは、互いに独立して、単結合又は2価の芳香環基である。R及びRは、互いに独立して、水素原子又は1価の有機基である。Ar及びArは、互いに独立して3価の芳香環基である。R、R、n1、n2、m1及びm2は、上記式(1)と同義である。「*」は結合手を表す。)
【0021】
上記式(1-1)及び式(1-2)において、Ar又はArで表される2価の芳香環基は、置換又は無置換の芳香環の環部分から2個の水素原子を取り除いた基である。当該芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環及びアントラセン環等の芳香族炭化水素環;ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環及びイミダゾール環等の窒素含有芳香族複素環;チオフェン環等の硫黄含有芳香族複素環等が挙げられる。芳香環が置換基を有する場合、置換基としては、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基、炭素数1~5のハロゲン化アルキル基、炭素数1~5のハロゲン化アルコキシ基、炭素数1~5のアルコキシアルキル基、炭素数1~5のアルコキシアルコキシアルキル基、ハロゲン原子、水酸基等が挙げられる。
【0022】
Ar及びArは、シール密着性の改善効果を高くする観点や、不純物耐性の高い膜を形成する観点、モノマーの入手容易性の観点から、これらのうち、置換又は無置換の芳香族炭化水素環の環部分から2個の水素原子を取り除いた基であることが好ましく、置換又は無置換のベンゼン環の環部分から2個の水素原子を取り除いた基であることがより好ましい。
【0023】
又はXが-NR-、-CONR-又は-NRCONR-を有する場合、R又はRで表される1価の有機基としては、炭素数1~10の1価の炭化水素基、1価の熱脱離性基等が挙げられる。R又はRが炭素数1~10の1価の炭化水素基である場合、当該炭化水素基としては、炭素数1~10のアルキル基、炭素数3~10の1価の脂環式炭化水素基、炭素数5~10の1価の芳香族炭化水素基等が挙げられる。これらのうち、炭素数1~5のアルキル基、シクロヘキシル基又はフェニル基が好ましく、炭素数1~3のアルキル基がより好ましい。1価の熱脱離性基は、熱付与により脱離して水素原子に置き換わる基である。熱による脱離性が高い点で、R又はRで表される熱脱離性基は、tert-ブトキシカルボニル基(Boc基)が好ましい。
【0024】
及びXは、シール密着性をより優れたものとする観点から、上記のうち、単結合、-O-又は-CONR-が好ましく、-O-又は-CONR-がより好ましい。XにおけるArとは反対側の結合手及びXにおけるArとは反対側の結合手は、不純物耐性及び力学的強度により優れた液晶配向膜を得る観点から、芳香環に結合していることが好ましい。当該芳香環の具体例及び好ましい例としては、Ar及びArの説明において例示した芳香環と同様のものが挙げられる。
【0025】
Ar又はArで表される3価の芳香環基は、置換又は無置換の芳香環の環部分から3個の水素原子を取り除いた基である。当該芳香環の具体例及び好ましい例としては、Ar及びArにおける2価の芳香環基と同様のものが挙げられる。Ar及びArは、シール密着性の改善効果を高くする観点や、モノマーの入手容易性の観点から、これらのうち、置換又は無置換の芳香族炭化水素環の環部分から3個の水素原子を取り除いた基であることが好ましく、置換又は無置換のベンゼン環の環部分から3個の水素原子を取り除いた基であることがより好ましい。
【0026】
重合体(P1)が有する、部分構造(a1)を含む部分構造の具体例としては、下記式(1-1)~式(1-11)のそれぞれで表される部分構造が挙げられる。
【化8】
(式(1-1)~式(1-11)中、「*」は結合手を表す。)
【0027】
部分構造(a1)への導入しやすさの観点から、重合体(P1)は、部分構造(a1)を有する単量体に由来する構造単位を含むことが好ましい。重合体(P1)における、部分構造(a1)を有する単量体に由来する構造単位の含有割合は、重合体(P1)を構成する構造単位の全量に対して、0.5モル%以上であることが好ましく、1モル%以上であることがより好ましく、2モル%以上であることが更に好ましい。また、部分構造(a1)を有する単量体に由来する構造単位の含有割合は、重合体(P1)を構成する構造単位の全量に対して、40モル%以下であることが好ましく、30モル%以下であることがより好ましく、25モル%以下であることが更に好ましい。
【0028】
・部分構造(a2)
(含窒素複素環構造)
部分構造(a2)は、特定の窒素含有構造を有する。重合体(P1)が特定の窒素含有構造を有することにより、第1の液晶配向剤により形成された液晶配向膜を有する液晶素子では、絶縁膜等に由来する不純物を液晶配向膜で吸着し膜中に留めることによって不純物の液晶層への侵入を抑制する効果が高まり、これにより不純物の発生に起因する電圧保持率の低下をより抑制できると考えられる。
【0029】
重合体(P1)が部分構造(a2)として含窒素複素環構造を有する場合、含窒素複素環構造中の含窒素複素環は、芳香族複素環であってもよく、非芳香族複素環であってもよい。また、当該含窒素複素環は、単環であってもよく縮合環であってもよい。これらの具体例としては、含窒素芳香族複素環として、例えば、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、キノリン環、ベンゾイミダゾール環、カルバゾール環及びピラジン環、並びにこれらの環に置換基(例えば、メチル基、エチル基等)を有する複素環が挙げられる。含窒素非芳香族複素環としては、例えば、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環及びヘキサメチレンイミン環、並びにこれらの環に置換基(例えば、メチル基、エチル基等)が導入された複素環が挙げられる。ピリジン環、ベンゾイミダゾール環、カルバゾール環、ピペリジン環又はピペラジン環であることが好ましい。
【0030】
部分構造(a2)が有する含窒素複素環は、これらのうち、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、キノリン環及びベンゾイミダゾール環よりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。含窒素複素環は、強い塩基性を示すことから、これらのうちピリジン環が好ましい。
【0031】
重合体(P1)が部分構造(a2)として含窒素複素環構造を有する場合、重合体(P1)は、含窒素複素環構造を主鎖に有していてもよく、側鎖に有していてもよく、主鎖及び側鎖の両方に有していてもよい。
【0032】
含窒素複素環構造の具体例としては、下記式(2a-1)~式(2a-10)のそれぞれで表される部分構造が挙げられる。なお、式中の「Boc」はtert-ブトキシカルボニル基を表す(以下同じ)。
【化9】
(式(2a-1)~式(2a-10)中、「*」は結合手を表す。)
【0033】
(上記式(2)で表される部分構造)
上記式(2)において、Yは水素原子又は熱脱離性基である。熱脱離性基としては、例えば、カルバメート系脱離性基、アミド系脱離性基、イミド系脱離性基、スルホンアミド系脱離性基等が挙げられる。これらのうち、熱による脱離性が高い点で、カルバメート系脱離性基が好ましい。その具体例としては、tert-ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、1,1-ジメチル-2-ハロエチルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基(F-moc基)等が挙げられる。熱による脱離性に優れ、かつ脱保護した部分の膜中の残存量を少なくできる点で、これらの中でも特に、tert-ブトキシカルボニル基(Boc基)が好ましい。
【0034】
又はAで表されるアルカンジイル基は、直鎖状でも分岐状でもよい。シール密着性により優れた液晶配向膜を得る観点から、A又はAで表されるアルカンジイル基は直鎖状であることが好ましい。A又はAで表されるアルカンジイル基の炭素数は、例えば1~10である。液晶配向膜のシール密着性を良好にする観点から、A又はAで表されるアルカンジイル基は、炭素数1~6であることが好ましく、炭素数1~4であることがより好ましく、炭素数1又は2であることが更に好ましい。
【0035】
が置換又は無置換の2価の脂環基である場合、当該脂環基としては、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基、及びこれらの基に置換基が導入された基等が挙げられる。Aが置換又は無置換の2価の芳香環基である場合、当該芳香環基は、フェニレン基、ピリジンジイル基、又はこれらの基に置換基が導入された基が好ましい。Aが置換された2価の脂環基又は芳香環基である場合、置換基としては、Ar又はArで表される2価の芳香環基が有していてもよい置換基として例示した基と同様の基が挙げられる。
【0036】
重合体(P1)が部分構造(a2)として上記式(2)で表される部分構造を有する場合、重合体(P1)は、上記式(2)で表される部分構造を主鎖に有していてもよく、側鎖に有していてもよく、主鎖及び側鎖の両方に有していてもよい。不純物耐性により優れた液晶配向膜を得ることができる点で、上記式(2)で表される部分構造は重合体(P1)の主鎖に導入されることが好ましい。
【0037】
重合体(P1)が上記式(2)で表される部分構造を有する場合、重合体(P1)が有する部分構造の具体例としては、下記式(2b-1)~式(2b-7)のそれぞれで表される部分構造が挙げられる。なお、式中の「F-moc」は9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基を表す(以下同じ)。
【化10】
(式(2b-1)~式(2b-7)中、「*」は結合手を表す。)
【0038】
なお、上記式(2b-7)で表される部分構造を重合体(P1)が有する場合、その重合体(P1)は、部分構造(a2)として含窒素複素環構造と上記式(2)で表される部分構造とを有する重合体に相当する。
【0039】
(上記式(3)で表される部分構造)
上記式(3)において、Yは熱脱離性基である。上記式(2)中のYの説明において具体例として例示した基と同様の基が挙げられる。熱による脱離性に優れ、かつ脱保護した部分の膜中の残存量を少なくできる点で、tert-ブトキシカルボニル基(Boc基)が好ましい。
【0040】
で表されるアルカンジイル基は、炭素数1~6が好ましく、炭素数1~4がより好ましく、炭素数1又は2が更に好ましい。Xで表されるアルカンジイル基は直鎖状でも分岐状でもよいが、直鎖状であることが好ましい。Xは、中でも、単結合又は炭素数1~4のアルカンジイル基が好ましく、単結合、メチレン基又はエチレン基がより好ましい。
【0041】
又はRで表される1価の炭化水素基としては、炭素数1~10の鎖状炭化水素基、炭素数3~12の脂環式炭化水素基、炭素数6~12の芳香族炭化水素基が挙げられる。R及びRは、水素原子又は炭素数1~10のアルキル基が好ましく、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基がより好ましい。
【0042】
重合体(P1)が上記式(3)で表される部分構造を有する場合、重合体(P1)が有する部分構造の具体例としては、下記式(2c-1)~式(2c-8)のそれぞれで表される部分構造が挙げられる。
【化11】
(式(2c-1)~式(2c-8)中、「*」は結合手を表す。)
【0043】
部分構造(a2)の主鎖への導入しやすさの観点から、重合体(P1)は、部分構造(a2)を有する単量体に由来する構造単位を含むことが好ましい。重合体(P1)における、部分構造(a2)を有する単量体に由来する構造単位の含有割合は、重合体(P1)を構成する構造単位の全量に対して、0.5モル%以上であることが好ましく、1モル%以上であることがより好ましく、2モル%以上であることが更に好ましい。また、部分構造(a2)を有する単量体に由来する構造単位の含有割合は、重合体(P1)を構成する構造単位の全量に対して、50モル%以下であることが好ましく、45モル%以下であることがより好ましく、40モル%以下であることが更に好ましい。
【0044】
重合体(P1)は、部分構造(a1)と部分構造(a2)とを同一分子内又は異なる分子内に含む。重合体(P1)を含む第1の液晶配向剤の具体的態様としては、以下の態様1及び態様2が挙げられる。
〔態様1〕重合体(P1)として、部分構造(a1)と部分構造(a2)とを同一分子内に有する重合体(以下、「第1重合体(P11)」ともいう)を含む態様。
〔態様2〕重合体(P1)として、部分構造(a1)を有する重合体(以下、「第2重合体(P12)」ともいう)と、部分構造(a2)を有する重合体であって第2重合体とは異なる重合体(以下、「第3重合体(P13)」ともいう)とを含む態様。
これらのうち、できるだけ少ない成分によって、不純物耐性及びシール密着性に優れた液晶配向膜を得ることができるとともに、透過性が良好な液晶素子を得ることができる点で、態様1が好ましい。
【0045】
なお、重合体(P1)が複数種の重合体により構成されている場合、重合体(P1)における部分構造(a1)を有する単量体に由来する構造単位の割合及び部分構造(a2)を有する単量体に由来する構造単位の割合は、複数種の重合体の合計の割合を表す。例えば、第1の液晶配向剤が、重合体(P1)として第2重合体(P12)と第2重合体(P13)とを含む場合、第2重合体(P12)における、部分構造(a1)を有する単量体に由来する構造単位の割合と、第3重合体(P13)における、部分構造(a1)を有する単量体に由来する構造単位の割合との合計が、重合体(P1)における部分構造(a1)を有する単量体に由来する構造単位の割合となる。
【0046】
重合体(P1)の主骨格は特に限定されない。重合体(P1)の主骨格としては、例えば、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミド、ポリアミン、ポリエナミン、ポリウレア、ポリオルガノシロキサン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリベンゾオキサゾール前駆体、ポリベンゾオキサゾール、セルロース誘導体、ポリアセタール、付加重合体等が挙げられる。付加重合体は、重合性不飽和炭素-炭素結合を有する単量体を重合(付加重合)することにより得られる重合体であり、例えば、(メタ)アクリル系重合体、スチレン系重合体、マレイミド系重合体、スチレン-マレイミド系共重合体等が挙げられる。ポリエナミンとは、ポリアミンのアミノ基の隣接位に炭素-炭素二重結合を有する重合体であり、例えば、ポリエナミノケトン、ポリエナミノエステル、ポリエナミノニトリル、ポリエナミノスルホニル等が挙げられる。
【0047】
液晶分子との親和性や機械的強度、液晶配向性、部分構造(a1)及び部分構造(a2)の導入しやすさの観点から、重合体(P1)は、ジアミン化合物に由来する構造単位を含む重合体であることが好ましい。このような重合体(P1)の具体例としては、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリエナミン、ポリアミドイミド等が挙げられる。中でも、重合体(P1)は、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0048】
重合体(P1)としてのポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドの製造方法は特に限定されず、有機化学の定法を適宜組み合わせることにより製造することができる。重合体(P1)の製造方法の具体例としては、〔I〕テトラカルボン酸二無水物と、部分構造(a1)を有するジアミン(以下、「第1の特定ジアミン」ともいう)及び部分構造(a2)を有するジアミン(以下、「第2の特定ジアミン」ともいう)を含むジアミン化合物とを反応させる方法;〔II〕部分構造(a1)を有するテトラカルボン酸二無水物(以下、「特定酸二無水物」ともいう)と、第2の特定ジアミンとを含むジアミン化合物とを反応させる方法;方法〔I〕と方法〔II〕とを組み合わせる方法等が挙げられる。以下、重合体(P1)としてのポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドの詳細について説明する。
【0049】
(ポリアミック酸)
テトラカルボン酸二無水物
重合体(P1)としてのポリアミック酸(以下、「ポリアミック酸(P1)」ともいう)の合成に際し使用することができる特定酸二無水物としては、上記式(1-1)で表される部分構造を有するテトラカルボン酸二無水物及び上記式(1-2)で表される部分構造を有するテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。特定酸二無水物の具体例としては、下記式(t1-1)~式(t1-4)のそれぞれで表される化合物等が挙げられる。
【化12】
【0050】
ポリアミック酸(P1)の合成に際しては、部分構造(a1)を有しないテトラカルボン酸二無水物(以下、「その他の酸二無水物」ともいう)を単独で又は特定酸二無水物と共に使用してもよい。その他の酸二無水物としては、脂肪族テトラカルボン酸二無水物及び芳香族テトラカルボン酸二無水物を挙げることができる。脂肪族テトラカルボン酸二無水物は、鎖状テトラカルボン酸二無水物及び脂環式テトラカルボン酸二無水物を含む。
【0051】
鎖状テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、例えばブタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。脂環式テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、例えば1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-3a,4,5,9b-テトラヒドロナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-8-メチル-3a,4,5,9b-テトラヒドロナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、3-オキサビシクロ[3.2.1]オクタン-2,4-ジオン-6-スピロ-3’-(テトラヒドロフラン-2’,5’-ジオン)、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、3,5,6-トリカルボキシ-2-カルボキシメチルノルボルナン-2:3,5:6-二無水物、ビシクロ[3.3.0]オクタン-2,4,6,8-テトラカルボン酸2:4,6:8-二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸2:3,5:6-二無水物、4,9-ジオキサトリシクロ[5.3.1.02,6]ウンデカン-3,5,8,10-テトラオン、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、エチレンジアミン四酢酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0052】
芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えばピロメリット酸二無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、p-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、1,3-プロピレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-ビフタル酸二無水物等が挙げられる。また、ポリアミック酸(P1)の合成に使用するテトラカルボン酸二無水物としては、上記の他、特開2010-97188号公報に記載のテトラカルボン酸二無水物等を用いることができる。
【0053】
第1の液晶配向剤により形成された有機膜に対し、光配向処理により液晶配向能を付与する場合、有機膜の光反応性をより高くできる点で、重合体(P1)の合成に際し置換シクロブタンテトラカルボン酸二無水物を用いることが好ましい。置換シクロブタンテトラカルボン酸二無水物の具体例としては、例えば下記式(t2-1)~式(t2-6)のそれぞれで表される化合物が挙げられる。
【化13】
【0054】
ポリアミック酸(P1)の合成に際し、特定酸二無水物を使用する場合、特定酸二無水物の使用割合は、ポリアミック酸(P1)の合成に使用するテトラカルボン酸二無水物の全量に対して、1モル%以上とすることが好ましく、2モル%以上とすることがより好ましく、5モル%以上とすることが更に好ましい。また、特定酸二無水物の使用割合は、ポリアミック酸(P1)の合成に使用するテトラカルボン酸二無水物の全量に対して、50モル%以下とすることが好ましく、40モル%以下とすることがより好ましく、30モル%以下とすることが更に好ましい。なお、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドにつき、重合体の合成に使用するモノマーの配合比と、得られる重合体を構成するモノマー単位の比率とは同等である。
【0055】
ポリアミック酸(P1)の合成に際し、置換シクロブタンテトラカルボン酸二無水物を用いる場合、その使用割合は、塗膜の光反応性を十分に高くする観点から、ポリアミック酸(P1)の合成に使用するテトラカルボン酸二無水物の合計量に対して、10モル%以上とすることが好ましい。より好ましくは30モル%以上であり、更に好ましくは50モル%以上である。
【0056】
ジアミン化合物
ポリアミック酸(P1)の合成に際し使用することができる第1の特定ジアミンとしては、上記式(1-1)で表される部分構造を有するジアミンを好ましく使用することができる。第1の特定ジアミンの好ましい具体例としては、下記式(D1)で表される化合物が挙げられる。
【化14】
(式(D1)中、R、R、n1、n2、m1及びm2は、上記式(1)と同義である。Ar、Ar、X及びXは、上記式(1-1)と同義である。R及びRは、互いに独立して、単結合又は2価の芳香環基である。ただし、Rが単結合の場合、Xは単結合又は炭素数1~10のアルカンジイル基であり、Rが単結合の場合、Xは単結合又は炭素数1~10のアルカンジイル基である。)
【0057】
第1の特定ジアミンの更なる具体例としては、下記式(d1-1)~式(d1-20)のそれぞれで表される化合物等が挙げられる。
【化15】
【化16】
【0058】
ポリアミック酸(P1)の合成に際し使用することができる第2の特定ジアミンは、含窒素複素環構造、上記式(2)で表される部分構造及び上記式(3)で表される部分構造よりなる群から選択される少なくとも1種と、2個の1級ジアミンとを有する化合物を好ましく使用することができる。第2の特定ジアミンの具体例としては、下記式(d2-1)~式(d2-31)のそれぞれで表される化合物等が挙げられる。
【化17】
【化18】
【0059】
ポリアミック酸(P1)の合成に際しては、部分構造(a1)及び部分構造(a2)をいずれも有しないジアミン(以下、「その他のジアミン」ともいう)を使用してもよい。その他のジアミンとしては公知のジアミンを使用でき、例えば、脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン、ジアミノオルガノシロキサン等が挙げられる。脂肪族ジアミンは、鎖状ジアミン及び脂環式ジアミンを含む。
【0060】
その他のジアミンの具体例としては、鎖状ジアミンとして、例えばm-キシリレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等を;脂環式ジアミンとして、例えば1,4-ジアミノシクロヘキサン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等を;
芳香族ジアミンとして、例えばドデカノキシジアミノベンゼン、テトラデカノキシジアミノベンゼン、ペンタデカノキシジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシジアミノベンゼン、オクタデカノキシジアミノベンゼン、コレスタニルオキシジアミノベンゼン、コレステリルオキシジアミノベンゼン、ジアミノ安息香酸コレスタニル、ジアミノ安息香酸コレステリル、ジアミノ安息香酸ラノスタニル、3,6-ビス(4-アミノベンゾイルオキシ)コレスタン、3,6-ビス(4-アミノフェノキシ)コレスタン、1,1-ビス(4-((アミノフェニル)メチル)フェニル)-4-ブチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-((アミノフェニル)メチル)フェニル)-4-ヘプチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-((アミノフェノキシ)メチル)フェニル)-4-ヘプチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-((アミノフェニル)メチル)フェニル)-4-(4-ヘプチルシクロヘキシル)シクロヘキサン、N-(2,4-ジアミノフェニル)-4-(4-ヘプチルシクロヘキシル)ベンズアミド、下記式(E-1)
【化19】
(式(E-1)中、XI及びXIIは、それぞれ独立して、単結合、-O-、*-COO-又は*-OCO-(ただし、「*」はジアミノフェニル基側との結合手を表す)である。Rは、炭素数1~3のアルカンジイル基である。RIIは、単結合又は炭素数1~3のアルカンジイル基である。RIIIは、炭素数1~20のアルキル基、アルコキシ基、フルオロアルキル基又はフルオロアルコキシ基である。aは0又は1である。bは0~3の整数である。cは0~2の整数である。dは0又は1である。ただし、1≦a+b+c≦3である。)
で表される化合物などの配向性基含有ジアミン:
パラフェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルアミン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4-アミノフェニル-4’-アミノベンゾエート、4,4’-ジアミノアゾベンゼン、1,2-ビス(4-アミノフェノキシ)エタン、1,2-ビス(4-アミノフェノキシ)エタン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)プロパン、1,5-ビス(4-アミノフェノキシ)ペンタン、1,6-ビス(4-アミノフェノキシ)ヘキサン、1,7-ビス(4-アミノフェノキシ)ヘプタン、ビス[2-(4-アミノフェニル)エチル]ヘキサン二酸、N,N-ビス(4-アミノフェニル)メチルアミン、4,4’-(2,2’-オキシビス(エタン-2,1-ジイル)ビス(オキシ))ジアニリン、1,5-ジアミノナフタレン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’-(p-フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、N,N’-ビス(4-アミノフェニル)-ベンジジン、N,N’-ビス(4-アミノフェニル)-N,N’-ジメチルベンジジン、3,5-ジアミノ安息香酸、1-(4-アミノフェノキシ)-2-(4-(4’-アミノフェニル)フェノキシ)エタン等を;
ジアミノオルガノシロキサンとして、例えば、1,3-ビス(3-アミノプロピル)-テトラメチルジシロキサン等を;それぞれ挙げることができるほか、特開2010-97188号公報に記載のジアミンを用いることができる。
【0061】
上記式(E-1)における「-X-(R-XII-」で表される2価の基としては、炭素数1~3のアルカンジイル基、*-O-、*-COO-又は*-O-C-O-(ただし、「*」を付した結合手がジアミノフェニル基と結合する。)であることが好ましい。RIIIで表される基は直鎖状であることが好ましい。ジアミノフェニル基における2つのアミノ基は、他の基に対して2,4-位又は3,5-位にあることが好ましい。
【0062】
上記式(E-1)で表される化合物の具体例としては、例えば下記式(E-1-1)~式(E-1-4)のそれぞれで表される化合物を挙げることができる。
【化20】
【0063】
ポリアミック酸(P1)の合成に際し、第1の特定ジアミンを使用する場合、第1の特定ジアミンの使用割合は、ポリアミック酸(P1)の合成に使用するジアミン化合物の合計量に対し、1モル%以上であることが好ましく、2モル%以上であることがより好ましく、5モル%以上であることが更に好ましい。第1の特定ジアミンの使用割合を上記範囲とすることにより、不純物耐性、力学的強度及び透過性のバランスに優れた液晶配向膜とすることができる点で好適である。また、第1の特定ジアミンの使用割合は、第2の特定ジアミンの使用により不純物耐性により優れた液晶配向膜を得る観点及び重合体の溶解性の観点から、ポリアミック酸(P1)の合成に使用するジアミン化合物の合計量に対して、50モル%以下であることが好ましく、40モル%以下であることがより好ましい。
【0064】
ポリアミック酸(P1)の合成に際し、第2の特定ジアミンを使用する場合、第2の特定ジアミンの使用割合は、ポリアミック酸(P1)の合成に使用するジアミン化合物の合計量に対し、1モル%以上であることが好ましく、2モル%以上であることがより好ましく、5モル%以上であることが更に好ましい。第2の特定ジアミンの使用割合を上記範囲とすることにより、不純物耐性に優れた液晶配向膜を得ることができる点で好適である。また、第2の特定ジアミンの使用割合は、ポリアミック酸(P1)の合成に使用するジアミン化合物の合計量に対して、90モル%以下であることが好ましく、85モル%以下であることがより好ましい。
【0065】
・ポリアミック酸の合成
ポリアミック酸(P1)は、上記のようなテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを、必要に応じて分子量調整剤とともに反応させることによって得ることができる。ポリアミック酸(P1)の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との使用割合は、ジアミン化合物のアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2~2当量となる割合が好ましく、0.3~1.2当量となる割合がより好ましい。
【0066】
分子量調整剤としては、例えば無水マレイン酸、無水フタル酸及び無水イタコン酸等の酸一無水物;アニリン、シクロヘキシルアミン及びn-ブチルアミン等のモノアミン化合物;フェニルイソシアネート及びナフチルイソシアネート等のモノイソシアネート化合物等を挙げることができる。分子量調整剤の使用割合は、使用するテトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物の合計100質量部に対して、20質量部以下とすることが好ましく、10質量部以下とすることがより好ましい。
【0067】
ポリアミック酸(P1)の合成反応は、好ましくは有機溶媒中において行われる。このときの反応温度は、-20℃~150℃が好ましく、0~100℃がより好ましい。また、反応時間は、0.1~24時間が好ましく、0.5~12時間がより好ましい。
【0068】
反応に使用する有機溶媒としては、例えば非プロトン性極性溶媒、フェノール系溶媒、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素、炭化水素等を挙げることができる。これらの有機溶媒のうち、非プロトン性極性溶媒及びフェノール系溶媒よりなる群(第1群の有機溶媒)から選択される1種以上、又は、第1群の有機溶媒から選択される1種以上と、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素及び炭化水素よりなる群(第2群の有機溶媒)から選択される1種以上との混合物を使用することが好ましい。後者の場合、第2群の有機溶媒の使用割合は、第1群の有機溶媒及び第2群の有機溶媒の合計量に対して、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは40質量%以下であり、更に好ましくは30質量%以下である。
【0069】
特に好ましい有機溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミド、m-クレゾール、キシレノール及びハロゲン化フェノールよりなる群から選択される1種以上を溶媒として使用するか、あるいはこれらの1種以上と他の有機溶媒との混合物を、上記割合の範囲で使用することが好ましい。有機溶媒の使用量(x)は、テトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物の合計量(y)が、反応溶液の全量(x+y)に対して、0.1~50質量%になる量とすることが好ましい。
【0070】
以上のようにして、ポリアミック酸(P1)を溶解してなる反応溶液が得られる。この反応溶液はそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸(P1)を単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、又は単離したポリアミック酸(P1)を精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。ポリアミック酸(P)を脱水閉環してポリイミドとする場合には、上記反応溶液をそのまま脱水閉環反応に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸(P)を単離したうえで脱水閉環反応に供してもよく、又は単離したポリアミック酸(P)を精製したうえで脱水閉環反応に供してもよい。ポリアミック酸(P)の単離及び精製は公知の方法に従って行うことができる。
【0071】
(ポリアミック酸エステル)
重合体(P1)としてのポリアミック酸エステルは、例えば、〔I〕上記合成反応により得られたポリアミック酸(P1)とエステル化剤とを反応させる方法、〔II〕テトラカルボン酸ジエステルとジアミン化合物とを反応させる方法、〔III〕テトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物とジアミン化合物とを反応させる方法、等によって得ることができる。
【0072】
なお、本明細書において「テトラカルボン酸ジエステル」とは、テトラカルボン酸が有する4個のカルボキシ基のうち2個がエステル化され、残りの2個がカルボキシ基である化合物を意味する。「テトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物」とは、テトラカルボン酸が有する4個のカルボキシ基のうち2個がエステル化され、残りの2個がハロゲン化された化合物を意味する。
【0073】
方法〔I〕で使用するエステル化剤としては、水酸基含有化合物、アセタール系化合物、ハロゲン化物、エポキシ基含有化合物等が挙げられる。これらの具体例としては、水酸基含有化合物として、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、フェノール、クレゾール等のフェノール類等を;アセタール系化合物として、N,N-ジメチルホルムアミドジエチルアセタール、N,N-ジエチルホルムアミドジエチルアセタール等を;ハロゲン化物として、臭化メチル、臭化エチル、臭化ステアリル、塩化メチル、塩化ステアリル、1,1,1-トリフルオロ-2-ヨードエタン等を;エポキシ基含有化合物として、プロピレンオキシド等を、それぞれ挙げることができる。
【0074】
方法〔II〕で使用するテトラカルボン酸ジエステルは、例えばポリアミック酸(P1)の合成の説明において例示したテトラカルボン酸二無水物を、メタノールやエタノール等のアルコール類を用いて開環することにより得ることができる。なお、方法[II]で使用するテトラカルボン酸誘導体はテトラカルボン酸ジエステルのみであってもよいが、テトラカルボン酸二無水物を併用してもよい。
【0075】
方法〔III〕の反応は、有機溶媒中、適当な脱水触媒の存在下で行うことが好ましい。有機溶媒としては、ポリアミック酸(P1)の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。脱水触媒としては、例えば4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムハライド、カルボニルイミダゾール、リン系縮合剤等が挙げられる。このときの反応温度は、-20~150℃が好ましく、0~100℃がより好ましい。反応時間は、0.1~24時間が好ましく、0.5~12時間がより好ましい。
【0076】
方法〔III〕で使用するテトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物は、例えば、上記の如くして得たテトラカルボン酸ジエステルを、塩化チオニル等の適当な塩素化剤と反応させることにより得ることができる。なお、方法〔III〕で使用するテトラカルボン酸誘導体はテトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物のみであってもよいが、テトラカルボン酸二無水物を併用してもよい。
【0077】
方法〔III〕の反応は、有機溶媒中、適当な塩基の存在下で行うことが好ましい。有機溶媒としては、ポリアミック酸(P1)の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。塩基としては、例えばピリジン、トリエチルアミン等の3級アミン;水素化ナトリウム、水素化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属類等を好ましく使用することができる。このときの反応温度は、-20~150℃が好ましく、0~100℃がより好ましい。反応時間は、0.1~24時間が好ましく、0.5~12時間がより好ましい。
【0078】
液晶配向剤に含有させるポリアミック酸エステルは、アミック酸エステル構造のみを有していてもよく、アミック酸構造とアミック酸エステル構造とが併存する部分エステル化物であってもよい。なお、ポリアミック酸エステルを溶解してなる反応溶液は、そのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸エステルを単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、又は単離したポリアミック酸エステルを精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。ポリアミック酸エステルの単離及び精製は公知の方法に従って行うことができる。
【0079】
(ポリイミド)
重合体(P1)としてのポリイミドは、例えば、上記の如くして合成されたポリアミック酸(P1)を脱水閉環してイミド化することにより得ることができる。
【0080】
ポリイミドは、その前駆体であるポリアミック酸が有していたアミック酸構造のすべてを脱水閉環した完全イミド化物であってもよく、アミック酸構造の一部のみを脱水閉環し、アミック酸構造とイミド環構造とが併存する部分イミド化物であってもよい。反応に使用するポリイミドは、そのイミド化率が20%以上であることが好ましく、30~99%であることがより好ましい。このイミド化率は、ポリイミドのアミック酸構造の数とイミド環構造の数との合計に対するイミド環構造の数の占める割合を百分率で表したものである。ここで、イミド環の一部がイソイミド環であってもよい。
【0081】
ポリアミック酸の脱水閉環は、好ましくはポリアミック酸を加熱する方法により、又はポリアミック酸を有機溶媒に溶解し、この溶液中に脱水剤及び脱水閉環触媒を添加し必要に応じて加熱する方法により行われる。
【0082】
ポリアミック酸の溶液中に脱水剤及び脱水閉環触媒を添加する方法において、脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸等の酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用量は、ポリアミック酸のアミック酸構造の1モルに対して0.01~20モルとすることが好ましい。脱水閉環触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミン、1-メチルピペリジン等の3級アミンを用いることができる。脱水閉環触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.01~10モルとすることが好ましい。脱水閉環反応に用いられる有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。脱水閉環反応の反応温度は、好ましくは0~180℃であり、より好ましくは10~150℃である。反応時間は、好ましくは1.0~120時間であり、より好ましくは2.0~30時間である。
【0083】
このようにしてポリイミドを含有する反応溶液が得られる。この反応溶液は、そのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液から脱水剤及び脱水閉環触媒を除いたうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、ポリイミドを単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、又は単離したポリイミドを精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。これらの精製操作は公知の方法に従って行うことができる。その他、ポリイミドは、ポリアミック酸エステルのイミド化によって得ることもできる。
【0084】
以上のようにして得られる重合体(P1)としてのポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドは、これを濃度15質量%の溶液としたときに、20~1,800mPa・sの溶液粘度を持つものであることが好ましく、50~1,500mPa・sの溶液粘度を持つものであることがより好ましい。なお、重合体の溶液粘度(mPa・s)は、重合体の良溶媒(例えばγ-ブチロラクトン、N-メチル-2-ピロリドン等)を用いて調製した濃度15質量%の重合体溶液につき、E型回転粘度計を用いて25℃において測定した値である。
【0085】
重合体(P1)としてのポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000~500,000であり、より好ましくは2,000~300,000である。また、重合体(P1)としてのポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドにつき、Mwと、GPCにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは8以下であり、より好ましくは7以下である。重合体(P1)としてのポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドのMw及びMw/Mnが上記範囲にあることで、液晶素子の良好な液晶配向性を確保することができる。
【0086】
第1の液晶配向剤における重合体(P1)の含有割合は、液晶配向剤に含まれる固形分の全量(すなわち、液晶配向剤の溶剤以外の成分の合計質量)に対して、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、60質量%以上が更に好ましい。
【0087】
<その他の成分>
第1の液晶配向剤は、重合体(P1)以外の成分(以下、「その他の成分」ともいう)を更に含有してもよい。その他の成分としては、重合体(P)とは異なる重合体(以下、「重合体(Q)」ともいう)、架橋剤、溶剤等が挙げられる。
【0088】
・重合体(Q)
重合体(Q)は、部分構造(a1)及び部分構造(a2)をいずれも有しない重合体である。重合体(Q)の主骨格は特に限定されない。重合体(Q)としては、例えば、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミド、ポリオルガノシロキサン、ポリエステル、ポリエナミン、ポリウレア、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリベンゾオキサゾール前駆体、ポリベンゾオキサゾール、セルロース誘導体、ポリアセタール、付加重合体等が挙げられる。重合体(P1)と併用した場合に良好な液晶配向性を示す点で、重合体(Q)はこれらの中でも、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミド、ポリオルガノシロキサン及び付加重合体よりなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0089】
重合体(Q)を液晶配向剤に含有させる場合、重合体(Q)の含有割合は、重合体(P1)と重合体(Q)との合計量に対して、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、5質量%以上が更に好ましい。また、重合体(Q)の含有割合は、重合体(P1)と重合体(Q)との合計量に対して、95質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましい。
【0090】
・架橋剤
第1の液晶配向剤は、架橋剤成分として、-OEで表される基(ただし、Eは水素原子、炭素数1~3のアルキル基又は1価の脱離性基である。)、メルカプト基、保護されたメルカプト基、アミノ基、保護されたアミノ基、オキシラニル基、オキセタニル基、-Si(OR11(R123-rで表される基(ただし、R11及びR12は、互いに独立して炭素数1~10の1価の炭化水素基であり、rは1~3の整数であり、rが2又は3の場合、複数のR11は同一又は異なり、rが1の場合、複数のR12は同一又は異なる。)及び重合性炭素-炭素二重結合基よりなる群から選択される少なくとも1種の基(以下、「架橋性基F1」ともいう)を有する化合物(以下、「化合物(A)」ともいう)を含有することが好ましい。重合体(P1)と化合物(A)とを併用することにより、液晶配向膜の膜密度をより高くできると考えられる。これにより、パネル構成部材等に由来する不純物に対する耐性が更に良好となり、また液晶配向膜の力学的強度が向上することによりシール密着性により優れた液晶配向膜を得ることができる。
【0091】
-OEで表される基において、Eで表される1価の脱離性基としては、熱又は光により脱離して水素原子に置き換わる基であることが好ましい。Eで表される脱離性基の具体例としては、炭素数7以下のアルキル基、ベンジル基、p-メトキシベンジル基等のエーテル系脱離性基;メトキシメチル基、エトキシエチル基、2-テトラヒドロピラニル基等のアセタール系脱離性基;アセチル基、ベンゾイル基等のアシル系脱離性基;アリル基、メタリル基等のアリル系脱離性基;トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基等のシリルエーテル系脱離性基が挙げられる。脱離しやすさと保存安定性との両立を図る観点から、Eで表される脱離性基は、これらのうち、エーテル系脱離性基、アセタール系脱離性基及びアセチル基が好ましく、炭素数4~7のアルキル基、2-テトラヒドロピラニル基、メトキシメチル基、1-エトキシエチル又はアセチル基がより好ましく、2-テトラヒドロピラニル基、メトキシメチル基、1-エトキシエチル又はアセチル基がより好ましい。
【0092】
は、シール密着性を良好にする観点から、上記のうち、水素原子、炭素数7以下のアルキル基、アセチル基、2-テトラヒドロピラニル基、メトキシメチル基又は1-エトキシエチル基が特に好ましい。また、重合体(P)(特に、部分構造(a1)中のフルオレン環部位)との反応性が高い点で、-OEで表される基は、炭素原子に結合していることが好ましく、アルカンジイル基に結合していることがより好ましく、メチロール基又はヒドロキシアルキルアミド基の一部を構成する基であることが更に好ましい。
【0093】
保護されたアミノ基において、窒素原子に結合する脱離性基としては、上記式(2)においてYが熱脱離性基である場合の具体例及び好ましい例と同様の基が挙げられる。また、保護されたメルカプト基において、硫黄原子に結合する脱離性基としては、Eとして例示した基と同様の基が挙げられる。
【0094】
化合物(A)が有する架橋性基F1がアミノ基又は保護されたアミノ基である場合、化合物(A)は鎖状化合物であることが好ましい。なお、化合物(A)が、保護されたアミノ基として1級アミノ基が保護された基を有する場合、当該保護されたアミノ基は、1級アミノ基における2個の水素原子のうち一方のみが脱離性基に置き換えられた基であってもよく、2個の水素原子が共に脱離性基に置き換えられた基であってもよい。すなわち、1級アミノ基における2個の水素原子の少なくとも一方が脱離性基に置き換えられている場合、その基は「保護された1級アミノ基」に相当する。
【0095】
-Si(OR11(R123-rで表される基について、R11又はR12で表される炭素数1~10の1価の炭化水素基としては、炭素数1~10の1価の鎖状炭化水素基、炭素数3~10の1価の脂環式炭化水素基、炭素数6~10の1価の芳香族炭化水素基が挙げられる。光反応性の観点から、R11は、炭素数1~10のアルキル基が好ましく、炭素数1~3のアルキル基がより好ましく、メチル基又はエチル基が更に好ましい。R12は、炭素数1~10のアルキル基又は置換若しくは無置換のフェニル基が好ましく、メチル基、エチル基又はフェニル基がより好ましい。
rは、架橋反応性を高くする観点から、2又は3が好ましく、3がより好ましい。
【0096】
化合物(A)が重合性炭素-炭素二重結合基を有する場合、重合性炭素-炭素二重結合基は、架橋反応性が高く、電気特性及びシール密着性により優れた液晶配向膜を得ることができる点で、下記式(g1-1)~式(g1-10)のいずれかで表される基の一部を構成していることが好ましい。
【化21】
(式(g1-1)~式(g1-10)中、「*」は結合手を表す。)
【0097】
化合物(A)が重合性炭素-炭素二重結合基を有する場合、化合物(A)は、上記式(g1-1)~式(g1-7)のいずれかで表される基を有することが好ましく、架橋反応性が高い点及び官能基の導入しやすさの点で、上記式(g1-1)~式(g1-4)のいずれかで表される基を有することがより好ましい。
【0098】
化合物(A)が有する架橋性基F1の数は特に限定されない。重合体(P1)と化合物(A)との架橋反応性を高め、膜密度がより高い液晶配向膜を得る観点から、化合物(A)が1分子内に有する架橋性基の数は、2個以上が好ましく、2~10個がより好ましい。化合物(A)は、重合体とは異なる化合物(すなわち、低分子化合物)であることが好ましい。化合物(A)の分子量は、例えば1,200以下であり、好ましくは1,000以下、より好ましくは800以下である。
【0099】
化合物(A)の具体例としては、-OEで表される基を有する化合物として、下記式(5A-1)~(5A-36)のそれぞれで表される化合物等を;
メルカプト基又は保護されたメルカプト基を有する化合物として、下記式(5B-1)~(5B-6)のそれぞれで表される化合物等を;
アミノ基又は保護されたアミノ基を有する化合物として、下記式(5C-1)~(5C-13)のそれぞれで表される化合物等を;
オキシラニル基又はオキセタニル基を有する化合物として、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、2,2-ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、N,N-ジグリシジル-ベンジルアミン、N,N-ジグリシジル-アミノメチルシクロヘキサン、N,N-ジグリシジル-シクロヘキシルアミン、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテルの過酸化水素によるエポキシ化反応生成物等を;
-Si(OR11(R123-rで表される基を有する化合物として、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(タ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等を;
重合性炭素-炭素二重結合基を有する化合物として、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、下記式(5D-1)~(5D-7)のそれぞれで表される化合物等を;挙げることができる。
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【0100】
化合物(A)は、重合体(P1)との架橋反応性の観点から、上記の中でも、-OEで表される基を有する化合物、メルカプト基又は保護されたメルカプト基を有する化合物、アミノ基又は保護されたアミノ基を有する化合物、及び重合性炭素-炭素二重結合基を有する化合物よりなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、-OEで表される基を有する化合物、アミノ基を有する化合物、及び保護されたアミノ基を有する化合物よりなる群から選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0101】
第1の液晶配向剤に化合物(A)を含有させる場合、その含有割合は、液晶配向膜の膜密度を高める観点から、液晶配向剤に含まれる重合体成分の全量(すなわち、重合体(P1)と重合体(Q)との合計量)100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましい。化合物(A)の含有割合は、重合体成分の全量100質量部に対して、1質量部以上がより好ましく、5質量部以上が更に好ましい。また、液晶配向性及び電気特性が良好な液晶素子を得る観点、並びに液晶配向剤の保存安定性を良好にする観点から、化合物(A)の含有割合は、重合体成分の全量100質量部に対して、30質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましい。
【0102】
第1の液晶配向剤には、化合物(A)とは異なる架橋剤を配合させてもよい。さらに、第1の液晶配向剤に配合させる溶剤以外の成分としては上記のほか、例えば酸化防止剤、金属キレート化合物、硬化促進剤、界面活性剤、充填剤、分散剤、光増感剤、酸発生剤、塩基発生剤及びラジカル発生剤等が挙げられる。これらの配合割合は、本開示の効果を損なわない範囲で、各化合物に応じて適宜選択することができる。
【0103】
・溶剤
第1の液晶配向剤は、重合体(P1)及び必要に応じて使用される成分が、好ましくは適当な溶媒中に分散又は溶解してなる液状の組成物として調製される。
【0104】
使用する有機溶媒としては、例えばN-メチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、γ-ブチロラクタム、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、乳酸ブチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ-ト、エチルエトキシプロピオネ-ト、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール-n-プロピルエーテル、エチレングリコール-i-プロピルエーテル、エチレングリコール-n-ブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジイソブチルケトン、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、ジイソペンチルエーテル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等を挙げることができる。これらは、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0105】
液晶配向剤における固形分濃度(液晶配向剤の溶媒以外の成分の合計質量が液晶配向剤の全質量に占める割合)は、粘性、揮発性等を考慮して適宜に選択されるが、好ましくは1~10質量%の範囲である。すなわち、液晶配向剤は、後述するように基板表面に塗布され、好ましくは加熱されることにより、液晶配向膜である塗膜又は液晶配向膜となる塗膜が形成される。このとき、固形分濃度が1質量%以上である場合には、塗膜の膜厚を十分に確保でき、良好な液晶配向膜が得られやすい傾向がある。固形分濃度が10質量%以下である場合には、塗膜の膜厚が過大となりすぎず、また液晶配向剤の粘性の増大を抑制でき、塗布性を良好にできる傾向がある。
【0106】
特に好ましい固形分濃度の範囲は、液晶配向剤の用途や、基板に液晶配向剤を塗布する際に用いる方法によって異なる。例えば液晶表示素子用の液晶配向剤について、スピンナー法により基板に塗布する場合には、固形分濃度(液晶配向剤中の溶媒以外の全成分の合計質量が液晶配向剤の全質量に占める割合)が1.5~4.5質量%の範囲であることが特に好ましい。印刷法による場合には、固形分濃度を3~9質量%の範囲とし、それにより溶液粘度を12~50mPa・sの範囲とすることが特に好ましい。インクジェット法による場合には、固形分濃度を1~5質量%の範囲とし、それにより、溶液粘度を3~15mPa・sの範囲とすることが特に好ましい。液晶配向剤を調製する際の温度は、好ましくは10~50℃であり、より好ましくは20~30℃である。また、位相差フィルム用の液晶配向剤については、液晶配向剤の塗布性及び形成される塗膜の膜厚を適度にする観点から、液晶配向剤の固形分濃度が0.2~10質量%の範囲であることが好ましく、3~10質量%の範囲であることがより好ましい。
【0107】
〔第2の液晶配向剤〕
次に、第2の液晶配向剤について説明する。なお、第2の液晶配向剤のうち第1の液晶配向剤と同様の構成についてはその説明を省略する。第2の液晶配向剤は、重合体(P2)と化合物(A1)とを含有する。
【0108】
<重合体(P2)>
重合体(P2)は、上記式(1)で表される部分構造(a1)を有する重合体である。すなわち、重合体(P2)は、第1の液晶配向剤に含有されていてもよい第2重合体(P12)に相当する。重合体(P2)が有する部分構造(a1)の具体例や好ましい例、重合体中の含有割合のほか、重合体(P2)が有していてもよいその他の構造単位、合成方法等については、重合体(P1)の説明を援用することができる。
【0109】
<化合物(A1)>
化合物(A1)は、-OEで表される基(ただし、Eは水素原子、炭素数1~3のアルキル基又は1価の脱離性基である。)、メルカプト基、保護されたメルカプト基、アミノ基、保護されたアミノ基、オキセタニル基、-Si(OR11(R123-rで表される基及び重合性炭素-炭素二重結合基よりなる群から選択される少なくとも1種の基(以下、「架橋性基F2」ともいう)を1分子内に合計2個以上有する化合物である。-OEで表される基、保護されたメルカプト基、保護されたアミノ基、-Si(OR11(R123-rで表される基及び重合性炭素-炭素二重結合基の具体例及び好ましい例については、化合物(A)が有する架橋性基F1の説明を援用することができる。
【0110】
化合物(A1)が有する架橋性基F2の数は、重合体(P2)と化合物(A1)との架橋反応性を高め、膜密度がより高い液晶配向膜を得る観点から、2個以上であり、2~10個がより好ましい。化合物(A1)は、重合体とは異なる化合物(すなわち、低分子化合物)であることが好ましい。化合物(A1)の分子量は、例えば1,200以下であり、好ましくは1,000以下、より好ましくは800以下である。
【0111】
化合物(A1)の具体例としては、第1の液晶配向剤に配合されてもよい化合物(A)として示した化合物のうち、対応する架橋性基を有する化合物を挙げることができる。
【0112】
化合物(A1)は、重合体(P2)との架橋反応性の観点から、上記の中でも、-OEで表される基を有する化合物、アミノ基又は保護されたアミノ基を有する化合物、及び重合性炭素-炭素二重結合基を有する化合物よりなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、-OEで表される基を有する化合物、アミノ基を有する化合物、及び保護されたアミノ基を有する化合物よりなる群から選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0113】
第2の液晶配向剤における化合物(A1)の含有割合は、液晶配向膜の膜密度を高める観点から、液晶配向剤に含まれる重合体成分の全量(すなわち、重合体(P2)と、任意に配合される重合体(Q)との合計量)100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましい。化合物(A1)の含有割合は、重合体成分の全量100質量部に対して、1質量部以上がより好ましく、5質量部以上が更に好ましい。また、液晶配向性及び電気特性が良好な液晶素子を得る観点、並びに液晶配向剤の保存安定性を良好にする観点から、化合物(A1)の含有割合は、重合体成分の全量100質量部に対して、30質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましい。
【0114】
第2の液晶配向剤は、重合体(P2)及び化合物(A1)とは異なる成分を更に含有していてもよい。第2の液晶配向剤に配合してもよいその他の成分としては、第1の液晶配向剤の説明においてその他の成分として例示したものと同様の成分が挙げられる。また、第2の液晶配向剤の調製方法や粘度等については、第1の液晶配向剤の説明が援用される。
【0115】
《液晶配向膜及び液晶素子》
本開示の液晶配向膜は、上記のように調製された液晶配向剤により形成される。また、本開示の液晶素子は、上記で説明した液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜を具備する。液晶素子における液晶の動作モードは特に限定されず、例えばTN(Twisted Nematic)型、STN(Super Twisted Nematic)型、VA(Vertical Alignment)型(VA-MVA型、VA-PVA型等を含む)、IPS(In-Plane Switching)型、FFS(Fringe Field Switching)型、OCB(Optically Compensated Bend)型、PSA(Polymer Sustained Alignment)型といった種々のモードに適用することができる。液晶素子は、例えば以下の工程1~工程3を含む方法により製造することができる。工程1は、所望の動作モードによって使用基板が異なる。工程2及び工程3は各動作モード共通である。
【0116】
(工程1:塗膜の形成)
先ず、基板上に液晶配向剤を塗布し、好ましくは塗布面を加熱することにより基板上に塗膜を形成する。基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラス等のガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリ(脂環式オレフィン)等のプラスチックからなる透明基板を用いることができる。基板の一方の面に設けられる透明導電膜としては、酸化スズ(SnO)からなるNESA膜(米国PPG社登録商標 、酸化インジウム-酸化スズ(In-SnO)からなるITO膜などを用いることができる。TN型、STN型、VA型又はPSA型の液晶素子を製造する場合には、パターニングされた透明導電膜が設けられている基板二枚を用いる。一方、IPS型又はFFS型の液晶素子を製造する場合には、櫛歯型にパターニングされた透明導電膜又は金属膜からなる電極が設けられている基板と、電極が設けられていない対向基板とを用いる。金属膜としては、例えばクロムなどの金属からなる膜を使用することができる。基板への液晶配向剤の塗布は、電極形成面上に、オフセット印刷法、スピンコート法、ロールコーター法又はインクジェット印刷法により行うことが好ましい。
【0117】
液晶配向剤を塗布した後、塗布した液晶配向剤の液垂れ防止などの目的で、好ましくは予備加熱(プレベーク)が実施される。プレベーク温度は、好ましくは30~200℃であり、プレベーク時間は、好ましくは0.25~10分である。その後、必要に応じて、溶剤を完全に除去したり重合体に存在するアミック酸構造を熱イミド化したりすることを目的として焼成(ポストベーク)工程が実施される。このときの焼成温度(ポストベーク温度)は、好ましくは80~300℃であり、ポストベーク時間は、好ましくは5~200分である。このようにして形成される膜の膜厚は、好ましくは0.001~1μmである。基板上に液晶配向剤を塗布した後、有機溶媒を除去することによって、液晶配向膜、又は液晶配向膜となる塗膜が形成される。
【0118】
(工程2:配向処理)
TN型、STN型、IPS型又はFFS型の液晶素子を製造する場合、工程1で形成した塗膜に液晶配向能を付与する処理(配向処理)を実施する。これにより、液晶分子の配向能が塗膜に付与されて液晶配向膜となる。配向処理としては、配向処理としては、基板上に形成した塗膜の表面をコットン等で擦るラビング処理、及び塗膜に光照射を行って液晶配向能を付与する光配向処理が挙げられる。一方、垂直配向型(VA型)の液晶素子を製造する場合には、工程1で形成した塗膜をそのまま液晶配向膜として使用することができるが、該塗膜に対し配向処理を施してもよい。垂直配向型の液晶素子に好適な液晶配向膜はPSA型の液晶素子にも好ましく用いることができる。
【0119】
光配向処理における光照射は、ポストベーク工程後の塗膜に対して照射する方法、プレベーク工程後であってポストベーク工程前の塗膜に対して照射する方法、プレベーク工程及びポストベーク工程の少なくともいずれかにおいて塗膜の加熱中に塗膜に対して照射する方法、等により行うことができる。光配向処理において、塗膜に照射する放射線としては、例えば150~800nmの波長の光を含む紫外線及び可視光線を用いることができる。好ましくは、200~400nmの波長の光を含む紫外線である。放射線が偏光である場合、直線偏光であっても部分偏光であってもよい。また、用いる放射線が直線偏光又は部分偏光である場合には、照射は基板面に垂直の方向から行ってもよく、斜め方向から行ってもよく、又はこれらを組み合わせて行ってもよい。非偏光の放射線を照射する場合には、照射の方向は斜め方向とする。
【0120】
使用する光源としては、例えば低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、重水素ランプ、メタ
ルハライドランプ、アルゴン共鳴ランプ、キセノンランプ、エキシマレーザー等を使用することができる。放射線の照射量は、好ましくは400~20,000J/mであり、より好ましくは1,000~5,000J/mである。塗膜に対する光照射は、反応性を高めるために塗膜を加温しながら行ってもよい。
【0121】
液晶配向膜の製造に際しては、光照射処理が施された塗膜を120℃以上280℃以下の温度範囲内で加熱することにより、液晶配向性を更に改善するようにしてもよい(加熱再配列)。この加熱は、ポストベークであってもよく、ポストベークとは別にポストベーク後に行う加熱処理であってもよい。光照射処理が施された塗膜に対する加熱処理に際し、加熱温度は、加熱による分子鎖の再配向を促進させる観点から、140℃以上とすることが好ましく、150℃~250℃とすることがより好ましい。加熱時間は、好ましくは5分~200分、より好ましくは10分~60分である。
【0122】
液晶配向膜の製造に際し、光照射処理が施された塗膜を、水、水溶性有機溶媒、又は水と水溶性有機溶媒との混合溶媒に接触させる工程を更に含んでいてもよい。ここで、水溶性有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、1-メトキシ-2-プロパノールアセテート、ブチルセロソルブ、乳酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、及びシクロペンタノンが挙げられる。本工程で用いる溶媒は、これらのうち、水、イソプロパノール及びこれらの混合物が好ましい。塗膜と溶媒との接触方法としては、例えば噴霧(スプレー)処理、シャワー処理、浸漬処理、液盛り処理等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。塗膜と溶媒との接触時間は特に限定されないが、例えば5秒~15分である。溶媒との接触後には塗膜の加熱処理を行ってもよい。
【0123】
(工程3:液晶セルの構築)
上記のようにして液晶配向膜が形成された基板を2枚準備し、対向配置した2枚の基板間に液晶を配置することにより液晶セルを製造する。液晶セルを製造するには、例えば、(1)液晶配向膜が対向するように間隙(スペーサー)を介して2枚の基板を対向配置し、2枚の基板の周辺部をシール剤により貼り合わせ、基板表面及びシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶を注入充填した後、注入孔を封止する方法、(2)液晶配向膜を形成した一方の基板上の所定の場所にシール剤を塗布し、更に液晶配向膜面上の所定の数箇所に液晶を滴下した後、液晶配向膜が対向するように他方の基板を貼り合わせるとともに液晶を基板の全面に押し広げる方法(ODF方式)等が挙げられる。製造した液晶セルにつき更に、用いた液晶が等方相をとる温度まで加熱した後、室温まで徐冷することにより、液晶充填時の流動配向を除去することが望ましい。
【0124】
シール剤としては、例えば、硬化剤及びスペーサーとしての酸化アルミニウム球を含有するエポキシ樹脂等を用いることができる。スペーサーとしては、フォトスペーサー、ビーズスペーサー等を用いることができる。液晶としては、ネマチック液晶及びスメクチック液晶を挙げることができる。これらの中でもネマチック液晶が好ましく、例えばシッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶、エステル系液晶、ターフェニル系液晶、ビフェニルシクロヘキサン系液晶、ピリミジン系液晶、ジオキサン系液晶、ビシクロオクタン系液晶、キュバン系液晶等を用いることができる。また、これらの液晶に、コレステリック液晶、カイラル剤、強誘電性液晶等を添加して使用してもよい。
【0125】
PSAモードの液晶素子を製造する場合には、液晶とともに光重合性化合物をセルギャップ内に充填するとともに、液晶セルを構築した後、一対の基板の有する導電膜間に電圧を印加した状態で液晶セルに光照射する処理を行う。すなわち、以下の工程を含む方法により液晶素子を製造することが好ましい。
〔1〕 導電膜を有する一対の基板のそれぞれの導電膜上に液晶配向剤を用いて塗膜を形成する工程(上記の工程1に相当)
〔2〕 塗膜を形成した一対の基板を、光重合性化合物を含む液晶層を介して塗膜が対向するように配置して液晶セルを構築する工程(上記の工程3に相当)
〔3〕 導電膜間に電圧を印加した状態で液晶セルに光照射する工程
【0126】
光重合性化合物としては、アクリロイル基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等といったラジカル重合が可能な官能基を2個以上有する多官能性化合物を好ましく用いることができる。反応性の観点からすると、光重合性化合物は、中でも、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能(メタ)アクリル化合物が好ましい。また、液晶分子の配向性を安定に維持する観点から、光重合性化合物としては、液晶骨格として、シクロヘキサン環及びベンゼン環のうちの少なくともいずれか一種の環を合計2つ以上有する化合物を好ましく用いることができる。なお、このような光重合性化合物としては、従来公知のものを使用することができる。PSA型の液晶素子の製造に際し、光重合性化合物の使用割合は、液晶の合計100質量部に対して、例えば0.01~3質量部、好ましくは0.05~1質量部である。
【0127】
印加する電圧は、例えば5~50Vの直流又は交流とすることができる。照射する光としては、例えば150~800nmの波長の光を含む紫外線及び可視光線を用いることができ、300~400nmの波長の光を含む紫外線が好ましい。照射光の光源としては、例えば低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、重水素ランプ、メタルハライドランプ、アルゴン共鳴ランプ、キセノンランプ、エキシマレーザーなどを使用することができる。光の照射量としては、好ましくは1,000J/m以上200,000J/m以下であり、より好ましくは1,000~100,000J/mである。
【0128】
続いて、必要に応じて液晶セルの外側表面に偏光板を貼り合わせる。偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながらヨウ素を吸収させた「H膜」と称される偏光フィルムを酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板又はH膜そのものからなる偏光板が挙げられる。これにより液晶素子が得られる。
【0129】
本開示の液晶素子は種々の用途に有効に適用することができ、例えば、時計、携帯型ゲーム機、ワープロ、ノート型パソコン、カーナビゲーションシステム、カムコーダー、PDA 、デジタルカメラ、携帯電話機、スマートフォン、各種モニター、液晶テレビ、インフォメーションディスプレイ等の各種表示装置や、調光フィルム等に用いることができる。また、本開示の液晶配向剤を用いて形成された液晶素子は位相差フィルムに適用することもできる。
【0130】
以上説明した本開示によれば、以下の手段が提供される。
〔手段1〕 上記式(1)で表される部分構造(a1)と、下記に示す部分構造(a2)とを同一分子内又は異なる分子内に有する重合体(P1)を含有する、液晶配向剤。
部分構造(a2):含窒素複素環構造、上記式(2)で表される部分構造及び上記式(3)で表される部分構造よりなる群から選択される少なくとも1種
〔手段2〕 更に、-OEで表される基(ただし、Eは水素原子、炭素数1~3のアルキル基又は1価の脱離性基である。)、メルカプト基、保護されたメルカプト基、アミノ基、保護されたアミノ基、オキシラニル基、オキセタニル基、-Si(OR11(R123-rで表される基(ただし、R11及びR12は、互いに独立して炭素数1~10の1価の炭化水素基であり、rは1~3の整数であり、rが2又は3の場合、複数のR11は同一又は異なり、rが1の場合、複数のR12は同一又は異なる。)及び重合性炭素-炭素二重結合基よりなる群から選択される少なくとも1種を有する化合物(A)を含有する、〔手段1〕に記載の液晶配向剤。
〔手段3〕 前記重合体(P1)は、前記部分構造(a1)を含む部分構造として、上記式(1-1)で表される部分構造及び上記式(1-2)で表される部分構造よりなる群から選択される少なくとも1種を有する、〔手段1〕又は〔手段2〕に記載の液晶配向剤。
〔手段4〕 前記重合体(P1)は、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種である、〔手段1〕~〔手段3〕のいずれかに記載の液晶配向剤。
〔手段5〕
前記重合体(P1)は、前記部分構造(a1)を有するテトラカルボン酸誘導体及び前記部分構造(a1)を有するジアミンよりなる群から選択される少なくとも1種に由来する構造単位と、前記部分構造(a2)を有するジアミンに由来する構造単位とを、同一分子内又は異なる分子内に含む、〔手段1〕~〔手段4〕のいずれかに記載の液晶配向剤。
〔手段6〕 前記部分構造(a1)及び前記部分構造(a2)をいずれも有しない重合体を更に含む、〔手段1〕~〔手段5〕のいずれかに記載の液晶配向剤。
〔手段7〕 上記式(1)で表される部分構造(a1)を有する重合体(P2)と、-OEで表される基(ただし、Eは水素原子、炭素数1~3のアルキル基又は1価の脱離性基である。)、メルカプト基、保護されたメルカプト基、アミノ基、保護されたアミノ基、オキセタニル基、-Si(OR11(R123-rで表される基(ただし、R11及びR12は、互いに独立して炭素数1~10の1価の炭化水素基であり、rは1~3の整数であり、rが2又は3の場合、複数のR11は同一又は異なり、rが1の場合、複数のR12は同一又は異なる。)及び重合性炭素-炭素二重結合基よりなる群から選択される少なくとも1種を1分子内に合計2個以上有する化合物と、を含有する、液晶配向剤。
〔手段8〕 前記重合体(P2)は、前記部分構造(a1)を含む部分構造として、上記式(1-1)で表される部分構造及び上記式(1-2)で表される部分構造よりなる群から選択される少なくとも1種を有する、〔手段7〕に記載の液晶配向剤。
〔手段9〕 前記重合体(P2)は、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種である、〔手段7〕又は〔手段8〕に記載の液晶配向剤。
〔手段10〕
前記重合体(P2)は、前記部分構造(a1)を有するテトラカルボン酸誘導体及び前記部分構造(a1)を有するジアミンよりなる群から選択される少なくとも1種に由来する構造単位を有する、〔手段7〕~〔手段9〕のいずれかに記載の液晶配向剤。
〔手段11〕 前記部分構造(a1)を有しない重合体を更に含む、〔手段7〕~〔手段10〕のいずれかに記載の液晶配向剤。
〔手段12〕 〔手段1〕~〔手段11〕のいずれかに記載の液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜。
〔手段13〕 〔手段12〕に記載の液晶配向膜を備える液晶素子。
〔手段14〕 〔手段1〕~〔手段11〕のいずれかに記載の液晶配向剤を用いて塗膜を形成する工程と、前記塗膜に光を照射して液晶配向能を付与する工程と、を含む、液晶配向膜の製造方法。
〔手段15〕 導電膜を有する一対の基板のそれぞれの導電膜上に、〔手段1〕~〔手段11〕のいずれかに記載の液晶配向剤を用いて塗膜を形成する工程と、前記塗膜を形成した一対の基板を、光重合性化合物を含む液晶層を介して前記塗膜が対向するように配置して液晶セルを構築する工程と、導電膜間に電圧を印加した状態で前記液晶セルに光照射する工程と、を含む、液晶素子の製造方法。
【実施例0131】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、以下の実施例によって本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0132】
以下の例では、重合体溶液中のポリイミドのイミド化率、並びに重合体の重量平均分子量(M)、数平均分子量(M)及びエポキシ当量は以下の方法により測定した。
[ポリイミドのイミド化率]
ポリイミドの溶液を純水に投入し、得られた沈殿を室温で十分に減圧乾燥した後、重水素化ジメチルスルホキシドに溶解し、テトラメチルシランを基準物質として室温でH-NMR測定を行った。得られたH-NMRスペクトルから、下記数式(1)によりイミド化率[%]を求めた。
イミド化率[%]=(1-(A/(A×α)))×100 …(1)
(数式(1)中、Aは化学シフト10ppm付近に現れるNH基のプロトン由来のピーク面積である。Aはその他のプロトン由来のピーク面積である。αは重合体の前駆体(ポリアミック酸)におけるNH基のプロトン1個に対するその他のプロトンの個数割合である。)
【0133】
[重合体の重量平均分子量(M)及び数平均分子量(M)]
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、下記条件でM及びMを測定した。分子量分布(M/M)は、得られたM及びMより算出した。
装置:昭和電工(株)の「GPC-101」
GPCカラム:(株)島津ジーエルシー製の「GPC-KF-801」、「GPC-KF-802」、「GPC-KF-803」及び「GPC-KF-804」を結合
移動相:テトラヒドロフラン(THF)
カラム温度:40℃
流速:1.0mL/分
試料濃度:1.0質量%
試料注入量:100μL
検出器:示差屈折計
標準物質:単分散ポリスチレン
【0134】
[エポキシ当量]
JIS C 2105に記載の塩酸-メチルエチルケトン法により測定した。
【0135】
以下の例で用いた原料化合物及び重合体の必要量は、下記の合成例に示す合成スケールでの合成を必要に応じて繰り返すことにより確保した。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0136】
化合物の略号は以下のとおりである。なお、以下では、式(X)で表される化合物を単に「化合物(X)」と示すことがある。
(テトラカルボン酸二無水物)
【化28】
【化29】
【0137】
(ジアミン化合物)
【化30】
【化31】
【化32】
【0138】
(その他の化合物)
【化33】
【化34】
【化35】
【0139】
<重合体の合成>
1.ポリアミック酸の合成
[合成例1]
テトラカルボン酸二無水物として化合物(CA-2)10モル部、及び化合物(CA-3)90モル部、並びにジアミン化合物として化合物(DA-1)10モル部、化合物(DB-2)20モル部、化合物(DC-15)10モル部、化合物(DC-2)35モル部、及び化合物(DC-17)25モル部をN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に溶解し、60℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸(これを重合体(PAA-1)とする)を20質量%含有する溶液を得た。
【0140】
[合成例2~20]
使用するテトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物の種類及び量を表1に記載のとおり変更した以外は合成例1と同様の操作を行い、ポリアミック酸(重合体(PAA-2)~重合体(PAA-20))を得た。なお、表1中、テトラカルボン酸二無水物(酸二無水物1~酸二無水物3)の数値は、ポリアミック酸の合成に使用したテトラカルボン酸二無水物の全量100モル部に対する各化合物の割合(モル比)を表す。ジアミン化合物(ジアミン1~ジアミン6)の数値は、ポリアミック酸の合成に使用したジアミン化合物の全量100モル部に対する各化合物の割合(モル比)を表す。
【0141】
2.ポリイミドの合成
[合成例21]
テトラカルボン酸二無水物として化合物(CB-3)80モル部、及び化合物(CB-4)20モル部、並びにジアミン化合物として化合物(DA-1)20モル部、化合物(DB-1)20モル部、化合物(DC-14)10モル部、化合物(DC-11)25モル部、及び化合物(DC-18)25モル部をNMPに溶解し、60℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸を20質量%含有する溶液を得た。次いで、得られたポリアミック酸溶液にNMPを追加してポリアミック酸濃度10質量%の溶液とし、ピリジン及び無水酢酸を添加して80℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶媒置換することにより、イミド化率約69%のポリイミド(これを重合体(PI-1)とする)を15質量%含有する溶液を得た。
【0142】
[合成例22~33]
使用するテトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物の種類及び量を表1に記載のとおり変更した以外は合成例21と同様の操作を行い、ポリイミド(重合体(PI-2)~重合体(PI-13))を得た。なお、表1中、テトラカルボン酸二無水物(酸二無水物1,酸無水物2)の数値は、ポリイミドの合成に使用したテトラカルボン酸二無水物の全量100モル部に対する各化合物の割合(モル比)を表す。ジアミン化合物(ジアミン1~ジアミン6)の数値は、ポリイミドの合成に使用したジアミン化合物の全量100モル部に対する各化合物の割合(モル比)を表す。
【0143】
【表1】
【0144】
3.ポリオルガノシロキサンの合成
[合成例34]
撹拌機、温度計、滴下漏斗及び還流冷却管を備えた反応容器に、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(上記式(S-1)で表される化合物)100.0g、メチルイソブチルケトン500g及びトリエチルアミン10.0gを仕込み、室温で混合した。次いで、脱イオン水100gを滴下漏斗より30分かけて滴下した後、還流下で撹拌しつつ、80℃で6時間反応を行った。反応終了後、有機層を取り出し、0.2質量%硝酸アンモニウム水溶液により、洗浄後の水が中性になるまで洗浄した後、減圧下で溶媒及び水を留去することにより、エポキシ基を含有するポリオルガノシロキサン(ESSQ-1)を粘稠な透明液体として得た。得られたポリオルガノシロキサン(ESSQ-1)の重量平均分子量Mwは3,500、エポキシ当量は180g/モルであった。
200mLの三口フラスコに、ポリオルガノシロキサン(ESSQ-1)を10.0g、溶媒としてメチルイソブチルケトン30.28g、変性成分(カルボン酸)として化合物(S-2)及び化合物(S-3)を、ポリオルガノシロキサン(ESSQ-1)が有するエポキシ基の全量に対して、それぞれ20モル%及び10モル%に相当する量、並びに触媒としてUCAT 18X(商品名、サンアプロ社製)0.10gを仕込み、100℃で48時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、反応混合物に酢酸エチルを加えて得た溶液を3回水洗し、硫酸マグネシウムを用いて有機層を乾燥した後、溶剤を留去することにより、液晶配向性基を有するポリオルガノシロキサン(PSQ-1)を得た。得られた重合体の重量平均分子量(Mw)は8000であった。
【0145】
4.スチレン-マレイミド系共重合体の合成
[合成例35]
窒素下、100mL二口フラスコに、重合モノマーとして、化合物(MA-2)18.7ミリモル、化合物(MA-4)18.7ミリモル、化合物(MA-6)10.6ミリモル、及び化合物(MA-7)5.3ミリモル、ラジカル重合開始剤として2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.98g、並びに溶媒としてN-メチル-2-ピロリドン(NMP)50mLを加え、70℃で6時間重合した。メタノールに再沈殿した後、沈殿物を濾過し、室温で8時間真空乾燥することにより付加重合体(これを重合体(MI-1)とする)を得た。GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量(Mw)は35000、分子量分布(Mw/Mn)は2であった。
【0146】
[合成例36]
使用する重合モノマーの種類及び量を表2に記載のとおり変更した以外は合成例35と同様の操作を行い、付加重合体(重合体(MI-2))を得た。
【0147】
【表2】
【0148】
<液晶配向剤の調製及び評価>
[実施例1:PSA型液晶表示素子]
1.液晶配向剤の調製
合成例1で得た重合体(PAA-1)を含む溶液をNMP及びBCにより希釈して、溶剤組成がNMP/BC=80/20(質量比)、固形分濃度が3.5質量%の溶液とした。この溶液を孔径0.2μmのフィルターで濾過することにより液晶配向剤(AL-1)を調製した。
【0149】
2.液晶組成物の調製
ネマチック液晶(メルク社製、MLC-6608)10gに対し、下記式(L1-1)で表される液晶性化合物を5質量%、及び下記式(L2-1)で表される光重合性化合物を0.3質量%添加して混合し、液晶組成物LC1を得た。
【化36】
【0150】
3.絶縁膜形成用組成物の調製
冷却管と攪拌機を備えたフラスコに2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)7質量部及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート200質量部、メタクリル酸15質量部、グリシジルメタクリレート30質量部、スチレン20質量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート5質量部、及びイソボルニルアクリルレート30質量部を仕込み、窒素置換した後、緩やかに撹拌を始めた。反応溶液を62℃まで上昇させた後、この温度を5時間の間維持してアクリル系共重合体(R-1)を含む重合体溶液を得た。得られた重合体溶液をヘキサン900質量部に滴下してアクリル系共重合体(R-1)を沈殿させた。沈殿したアクリル系共重合体(R-1)を分離し、プロピレングリコールモノメチルエチルアセテート150質量部を入れ、40℃まで加熱、減圧蒸留して、アクリル系共重合体(R-1)を含む重合体溶液を得た。得られたアクリル系共重合体(R-1)を含む重合体溶液の固形分濃度は30質量%であり、GPC分析の結果、未反応モノマーと重合開始剤の面積が2.3%であり、重量平均分子量(Mw)は12800であった。
アクリル系共重合体(R-1)100質量部(固形分)に相当する量に対して、感光剤として4,4’-[1-[4-[1-[4-ヒドロキシフェニル]-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール(1.0モル)と1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸クロリド(2.0モル)との縮合物25質量部、重合性化合物としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートとの混合物(日本化薬社製の「KAYARAD DPHA」)5質量部、造膜助剤として2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート(協和発酵キリン社製の「キョーワノールM」)10質量部、レベリング剤としてSH28PA(東レダウコーニング社製)を混合し、固形分濃度が18質量%となるようにジエチレングリコールエチルメチルエーテルを混合したものに溶解させた後、孔径0.2μmのメンブランフィルタで濾過して、絶縁膜形成用組成物(RD-1)を調製した。
【0151】
4.絶縁膜を備える基板の作製
絶縁膜形成用組成物(RD-1)をガラス基板上にスピンコータで塗布した後、ホットプレート上で90℃にて2分間プレベークした。次いで、プロキシミティ露光機(キヤノン社の「MA-1200」(ghi線混合))を用いて300mJ/cmの光を基板全面に照射した後、オーブンにて230℃で30分間加熱(ポストベーク)して硬化させ、ガラス基板上に膜厚3μmの絶縁膜を形成した。
【0152】
5.不純物耐性評価用の液晶セルの製造
櫛歯型にパターニングされたITO電極が設けられている基板における電極形成面と、絶縁膜を備える基板における絶縁膜形成面のそれぞれに、液晶配向剤(AL-1)をスピンナーにより塗布し、80℃のホットプレートで1分間プレベークを行った。その後、庫内を窒素置換したオーブン中、230℃で1時間加熱して、膜厚0.1μmの液晶配向膜を有する基板を一対(2枚)作成した。
絶縁膜を備える基板における液晶配向膜を有する面の外周に、直径3.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤をスクリーン印刷により塗布した後、一対の基板の液晶配向膜面を対向させて圧着し、150℃で1時間かけて接着剤を熱硬化させた。次いで、液晶注入口より基板間の間隙に液晶組成物LC1を充填した後、エポキシ系接着剤で液晶注入口を封止した。さらに、液晶注入時の流動配向を除くために、これを130℃で加熱してから室温まで徐冷し、液晶セルを製造した。なお、基板の作製が簡便であることから、不純物耐性評価用の液晶セルについてはIPS型液晶セル用の電極基板を用いて作製した。
【0153】
6.セル透過率評価用の液晶セルの製造
上記で調製した液晶配向剤(AL-1)を、ITO膜からなる透明電極付きガラス基板の透明電極面上にスピンナーを用いて塗布し、80℃のホットプレートで1分間プレベークを行った後、窒素に置換したオーブン中、230℃で1時間加熱して溶媒を除去することにより、膜厚0.1μmの塗膜(液晶配向膜)を形成した。この塗膜に対し、レーヨン布を巻き付けたロールを有するラビングマシーンにより、ロール回転数400rpm、ステージ移動速度3cm/秒、毛足押し込み長さ0.1mmでラビング処理を行った。その後、超純水中で1分間超音波洗浄を行い、次いで、100℃クリーンオーブン中で10分間乾燥することにより、液晶配向膜を有する基板を得た。この操作を繰り返し、液晶配向膜を有する基板を一対(2枚)得た。なお、このラビング処理は、液晶の倒れ込みを制御し、配向分割を簡易な方法で行う目的で行った弱いラビング処理である。
上記基板のうちの1枚の液晶配向膜を有する面の外周に、直径3.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤をスクリーン印刷により塗布した後、一対の基板の液晶配向膜面を対向させ、重ね合わせて圧着し、150℃で1時間加熱して接着剤を熱硬化した。次いで、液晶注入口より基板の間隙に液晶組成物LC1を充填した後、エポキシ系接着剤で液晶注入口を封止し、更に液晶注入時の流動配向を除くために、これを150℃で10分間加熱した後に室温まで徐冷した。
次いで、得られた液晶セルに対し、電極間に周波数60Hzの交流10Vを印加し、液晶が駆動している状態で、光源にメタルハライドランプを使用した紫外線照射装置を用いて、紫外線を50,000J/mの照射量にて照射した。なお、この照射量は、波長365nm基準で計測される光量計を用いて計測した値である。これにより、PSA型液晶セルを製造した。
【0154】
7.評価
(1)不純物耐性の評価
上記5.で製造した液晶セルを60℃のオーブンに静置した後、東陽テクニカ社製VHR測定装置「VHR-1」を用いて、1V、1670ミリ秒の条件で電圧保持率(VHR)を測定した。VHRが60%よりも高い場合に「良好(○)」、60%以下45%以上の場合に「可(△)」、45%未満の場合に「不良(×)」とした。その結果、この実施例の電気特性は「良好(○)」の評価であった。
【0155】
(2)シール密着性の評価
液晶配向剤(AL-1)を、ガラス基板上にスピンナーを用いて塗布し、80℃のホットプレートで2分間プレベークを行った後、庫内を窒素置換した230℃のオーブンで30分加熱(ポストベーク)することにより、平均膜厚0.10μmの塗膜(液晶配向膜)を形成した。これと同様の操作を繰り返すことにより、塗膜が形成されたガラス基板を2枚作製した。塗膜を形成した1枚のガラス基板の塗膜上に、ODFシール剤(積水化学社製、S-WB42)を幅が0.5mmになるように塗布し、もう一枚のガラス基板の塗膜とODFシール剤とが接触するように貼り合わせた。その後、メタルハライドランプを用いて30,000J/m(365nm換算)の光を照射した後、120℃のオーブンで1時間加熱した。その後、今田製作所の引張圧縮試験機(型番:SDWS-0201-100SL)を用いて密着力を測定することによりシール密着性を評価した。
評価は、密着力が180N/cm以上であった場合を「特に良好(◎)」、170N/cm以上180N/cm未満であった場合を「良好(○)」、150N/cm以上170N/cm未満であった場合を「可(△)」、150N/cm未満であった場合を「不良(×)」とした。その結果、この実施例のシール密着性は「良好(○)」の評価であった。
【0156】
(3)セル透過率の測定
上記6.で製造した液晶セルについて、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光社製、品名「V-670」)を用いて、紫外・可視光領域の吸収スペクトルを測定した。なお、液晶セルへの入射角は0°とした。波長380~800nmにおける透過率の平均値が87%以上であった場合を「良好(○)」、85%以上87%未満であった場合を「可(△)」、85%未満であった場合を「不良(×)」とした。その結果、この実施例のセル透過率は「良好(○)」の評価であった。
【0157】
[実施例2~19及び比較例1~5]
液晶配向剤の組成を表3のとおりに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、液晶配向剤(AL-2)~(AL-19)、(AR-1)~(AR-5)をそれぞれ調製した。また、得られた液晶配向剤を用いて、実施例1と同様にして液晶セルを製造し、各種評価を行った。それらの結果を表3に示す。表3中、質量比欄の数値は、液晶配向剤の調製に使用した重合体成分の全量100質量部に対する、各化合物(重合体、添加剤)の固形分での配合割合(質量部)を表す。
【0158】
[実施例20:光FFS型液晶表示素子]
1.液晶配向剤の調製、並びに不純物耐性及びシール密着性の評価
液晶配向剤の組成を表3のとおりに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、液晶配向剤(AL-20)を調製した。また、得られた液晶配向剤(AL-20)を用いた点及び液晶組成物としてネガ型液晶(メルク社製、MLC-6608)を使用した以外は実施例1と同様にして不純物耐性評価用の液晶セルを製造して不純物耐性の評価を行うとともに、液晶配向剤(AL-20)を用いてシール密着性の評価を行った。それらの結果を表3に示す。
【0159】
2.セル透過率の測定
上記で調製した液晶配向剤(AL-20)を、ITO膜からなる透明電極付きガラス基板の透明電極面上にスピンナーを用いて塗布し、80℃のホットプレートで1分間プレベークを行った後、窒素に置換したオーブン中、200℃で1時間加熱して溶媒を除去することにより、膜厚0.1μmの塗膜(液晶配向膜)を形成した。この操作を繰り返し、液晶配向膜を有する基板を一対(2枚)得た。得られた塗膜に対し、Hg-Xeランプを用いて、直線偏光された254nmの輝線を含む紫外線1,000J/mを基板法線方向から照射して光配向処理を施した。なお、この照射量は、波長254nm基準で計測される光量計を用いて計測した値である。次いで、光配向処理が施された塗膜を、200℃のクリーンオーブンで30分加熱して熱処理を行い、液晶配向膜を形成した。
上記基板のうちの1枚の液晶配向膜を有する面の外周に、直径3.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤をスクリーン印刷により塗布した後、一対の基板の液晶配向膜面を対向させ、重ね合わせて圧着し、150℃で1時間加熱して接着剤を熱硬化した。次いで、液晶注入口より基板の間隙にネガ型液晶(メルク社製、MLC-6608)を充填した後、エポキシ系接着剤で液晶注入口を封止し、更に液晶注入時の流動配向を除くために、これを150℃で10分間加熱した後に室温まで徐冷した。
作製した液晶セルについて、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光社製、品名「V-670」)を用いて、紫外・可視光領域の吸収スペクトルを測定した。評価結果を表3に示す。
【0160】
[実施例21]
液晶配向剤の組成を表3のとおりに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、液晶配向剤(AL-21)を調製した。また、得られた液晶配向剤(AL-21)を用いて、実施例20と同様に各種評価を行った。それらの結果を表3に示す。
【0161】
[実施例22:ラビングFFS型液晶表示素子]
1.液晶配向剤の調製、並びに不純物耐性及びシール密着性の評価
液晶配向剤の組成を表3のとおりに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、液晶配向剤(AL-22)を調製した。また、得られた液晶配向剤(AL-22)を用いて、液晶組成物としてネガ型液晶(メルク社製、MLC-6608)を使用した以外は実施例1と同様にして不純物耐性評価用の液晶セルを製造して不純物耐性の評価を行うとともに、液晶配向剤(AL-22)を用いてシール密着性の評価を行った。それらの結果を表3に示す。
【0162】
2.セル透過率の測定
上記で調製した液晶配向剤(AL-22)を、ITO膜からなる透明電極付きガラス基板の透明電極面上にスピンナーを用いて塗布し、80℃のホットプレートで1分間プレベークを行った後、窒素に置換したオーブン中、200℃で1時間加熱して溶媒を除去することにより、膜厚0.1μmの塗膜(液晶配向膜)を形成した。次いで、塗膜表面に対し、レーヨン布を巻き付けたロールを有するラビングマシーンにより、ロール回転数1000rpm、ステージ移動速度3cm/秒、毛足押し込み長さ0.3mmでラビング処理を行った。その後、超純水中で1分間超音波洗浄を行い、次いで100℃クリーンオーブン中で10分間乾燥させた。この操作を繰り返し、液晶配向膜を有する基板を一対(2枚)得た。
上記基板のうちの1枚の液晶配向膜を有する面の外周に、直径3.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤をスクリーン印刷により塗布した後、一対の基板の液晶配向膜面を対向させ、重ね合わせて圧着し、150℃で1時間加熱して接着剤を熱硬化した。次いで、液晶注入口より基板の間隙にネガ型液晶(メルク社製、MLC-6608)を充填した後、エポキシ系接着剤で液晶注入口を封止し、更に液晶注入時の流動配向を除くために、これを150℃で10分間加熱した後に室温まで徐冷した。
作製した液晶セルについて、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光社製、品名「V-670」)を用いて、紫外・可視光領域の吸収スペクトルを測定した。評価結果を表3に示す。
【0163】
[実施例23]
液晶配向剤の組成を表3のとおりに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、液晶配向剤(AL-23)を調製した。また、得られた液晶配向剤(AL-23)を用いて、実施例22と同様に各種評価を行った。それらの結果を表3に示す。
【0164】
[実施例24:光VA型液晶表示素子]
1.液晶配向剤の調製、並びに不純物耐性及びシール密着性の評価
液晶配向剤の組成を表3のとおりに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、液晶配向剤(AL-24)を調製した。また、得られた液晶配向剤(AL-24)を用いた点、及び液晶組成物としてネガ型液晶(メルク社製、MLC-6608)を使用した以外は実施例1と同様にして不純物耐性評価用の液晶セルを製造して不純物耐性の評価を行うとともに、液晶配向剤(AL-24)を用いてシール密着性の評価を行った。それらの結果を表3に示す。
【0165】
2.セル透過率の測定
上記で調製した液晶配向剤(AL-24)を、ITO膜からなる透明電極付きガラス基板の透明電極面上にスピンナーを用いて塗布し、80℃のホットプレートで1分間プレベークを行った後、窒素に置換したオーブン中、200℃で1時間加熱して溶媒を除去することにより、膜厚0.1μmの塗膜(液晶配向膜)を形成した。次いで、この塗膜表面に、Hg-Xeランプ及びグランテーラープリズムを用いて313nmの輝線を含む偏光紫外線1,000J/mを、基板法線から40°傾いた方向から照射して液晶配向能を付与した。この操作を繰り返し、液晶配向膜を有する基板を一対(2枚)得た。
上記基板のうちの1枚の液晶配向膜を有する面の外周に、直径3.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤をスクリーン印刷により塗布した後、一対の基板の液晶配向膜面を対向させ、重ね合わせて圧着し、150℃で1時間加熱して接着剤を熱硬化した。次いで、液晶注入口より基板の間隙にネガ型液晶(メルク社製、MLC-6608)を充填した後、エポキシ系接着剤で液晶注入口を封止し、更に液晶注入時の流動配向を除くために、これを150℃で10分間加熱した後に室温まで徐冷した。
作製した液晶セルについて、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光社製、品名「V-670」)を用いて、紫外・可視光領域の吸収スペクトルを測定した。評価結果を表3に示す。
【0166】
[実施例25]
液晶配向剤の組成を表3のとおりに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、液晶配向剤(AL-25)を調製した。また、得られた液晶配向剤(AL-25)を用いて、実施例24と同様にして各種評価を行った。それらの結果を表3に示す。
【0167】
【表3】
【0168】
表3に示すように、実施例1~25は、不純物耐性、シール密着性及びセル透過率がいずれも、「特に良好(◎)」、「良好(○)」又は「可(△)」の評価であり、各種特性のバランスが良好であった。これらの中でも、化合物(A)又は化合物(A1)を配合した実施例1~13、17~20及び22~25は、シール密着性の評価が「特に良好(◎)」又は「良好(○)」であり、特に優れていた。
これに対し、比較例1~5は、不純物耐性、シール密着性及びセル透過率のうち1つ以上で「不良(×)」の評価であり、実施例1~25に比べて劣っていた。