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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134145
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】筐体装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 19/00 20060101AFI20240926BHJP
   F16H 25/12 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
E05B19/00 E
F16H25/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044283
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】大屋 佳之
(72)【発明者】
【氏名】森山 真旭
【テーマコード(参考)】
3J062
【Fターム(参考)】
3J062AA01
3J062AB31
3J062AC07
3J062CC13
(57)【要約】
【課題】複数種の被制御装置の使用に関連付けられた携帯装置が格納される空間を区画する筐体を備えた筐体装置の利便性を高める。
【解決手段】筐体131は、可動部121が操作されることにより車両の施解錠装置を遠隔制御する電子キー12が格納される空間を区画する。トレイ132が開放されることにより、筐体131から取り出された電子キー12で当該車両の始動装置の使用が可能になる。ユーザにより携帯可能なモバイル装置から解錠指示を受け付けると、第二アクチュエータ138にトレイ132の開放を不能にさせつつ、第一アクチュエータ133に可動部121を操作させる。ユーザが始動装置の使用条件を満足していることを示すデータが受け付けられると、第二アクチュエータ138にトレイ132の開放を可能にさせる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動部が操作されることにより第一被制御装置を遠隔制御する携帯装置が格納される空間を区画する筐体と、
開放されることにより前記空間から取り出された前記携帯装置に第二被制御装置の使用を可能にする開閉体と、
前記筐体内に配置されており、前記空間に格納された前記携帯装置の前記可動部を操作可能である第一アクチュエータと、
前記筐体内に配置されており、前記開閉体の開放を可能または不能にする第二アクチュエータと、
ユーザにより携帯可能なモバイル装置から送信される指示、および当該ユーザが前記第二被制御装置の使用条件を満足しているかを示すデータを、無線通信を通じて受け付けるインタフェースと、
前記指示と前記データの少なくとも一方に基づいて前記第一アクチュエータと前記第二アクチュエータの動作を制御するプロセッサと、
を備えており、
前記プロセッサは、
前記インタフェースが前記指示を受け付けた場合、前記第二アクチュエータに前記開閉体の開放を不能にさせつつ、前記第一アクチュエータに前記可動部を操作させ、
前記ユーザが前記使用条件を満足していることを前記データが示している場合、前記第二アクチュエータに前記開閉体の開放を可能にさせる、
筐体装置。
【請求項2】
前記第二アクチュエータは、前記第一アクチュエータに前記可動部を操作させるカム機構の一部である、
請求項1に記載の筐体装置。
【請求項3】
前記カム機構は、軸を中心として回転可能な回転軸を備えており、
前記第二アクチュエータは、前記回転軸とともに回転することにより
前記指示を受け付けていない状態で前記開閉体の開放を不能にする第一角度位置と、
前記指示を受け付けた状態で前記開閉体の開放を不能にする第二角度位置と、
前記開閉体の開放を可能にする第三角度位置と、
をとりうるように構成されており、
前記第二角度位置から前記第三角度位置に至る角度は、前記第一角度位置から前記第二角度位置に至る角度よりも小さい、
請求項2に記載の筐体装置。
【請求項4】
前記第一角度位置、前記第二角度位置、および前記第三角度位置を検出する磁気センサを備えている、
請求項3に記載の筐体装置。
【請求項5】
前記第一被制御装置は、前記筐体装置が配置される空間を開閉する開閉体の施解錠装置である、
請求項1に記載の筐体装置。
【請求項6】
前記開閉体は、移動体に搭載されており、
前記第二被制御装置は、前記移動体の駆動源を始動させる装置である、
請求項5に記載の筐体装置。
【請求項7】
前記使用条件は、酒気帯びしていないことを含んでいる、
請求項1に記載の筐体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数種の被制御装置の使用に関連付けられた携帯装置が格納される空間を区画する筐体を備えた筐体装置に関連する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、車両のドアにより開閉される車室内に配置される筐体装置を開示している。筐体装置は、筐体、通信部、およびアクチュエータを備えている。筐体は、携帯装置の一例としての電子キーが格納される空間を区画している。電子キーは、特定の操作がなされることにより、無線通信を通じて当該車両に搭載された施解錠装置にドアの施錠を解除させる装置である。ユーザによる携帯が可能であるモバイル装置から通信部が解錠指示を受信すると、アクチュエータは、電子キーに対して上記特定の操作を行なう。これにより、車室内に電子キーを残した状態で、例えば車室外からモバイル装置を通じて施解錠装置の動作を遠隔制御できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許出願公開第3418985号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数種の被制御装置の使用に関連付けられた携帯装置が格納される空間を区画する筐体を備えた筐体装置の利便性を高める。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示により提供される態様例の一つは、筐体装置であって、
可動部が操作されることにより第一被制御装置を遠隔制御する携帯装置が格納される空間を区画する筐体と、
開放されることにより前記空間から取り出された前記携帯装置に第二被制御装置の使用を可能にする開閉体と、
前記筐体内に配置されており、前記空間に格納された前記携帯装置の前記可動部を操作可能である第一アクチュエータと、
前記筐体内に配置されており、前記開閉体の開放を可能または不能にする第二アクチュエータと、
ユーザにより携帯可能なモバイル装置から送信される指示、および当該ユーザが前記第二被制御装置の使用条件を満足しているかを示すデータを、無線通信を通じて受け付けるインタフェースと、
前記指示と前記データの少なくとも一方に基づいて前記第一アクチュエータと前記第二アクチュエータの動作を制御するプロセッサと、
を備えており、
前記プロセッサは、
前記インタフェースが前記指示を受け付けた場合、前記第二アクチュエータに前記開閉体の開放を不能にさせつつ、前記第一アクチュエータに前記可動部を操作させ、
前記ユーザが前記使用条件を満足していることを前記データが示している場合、前記第二アクチュエータに前記開閉体の開放を可能にさせる。
【0006】
上記の態様例に係る構成によれば、ユーザが使用条件を満足していない場合は開閉体の開放が不能とされるので、筐体から携帯装置を取り出すことができず、当該ユーザによる第二被制御装置の使用を制限できる。一方、開閉体の開放が不能とされた状態でも第一アクチュエータによる携帯装置の可動部の操作はなされうるので、ユーザが使用条件を満足しているか否かに依らず、第一被制御装置の使用は許容される。これにより、複数種の被制御装置の使用に関連付けられた携帯装置の使用態様に係る制限を緩和でき、当該携帯装置が格納される空間を区画する筐体を備えた筐体装置の利便性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態に係る遠隔制御システムの構成を例示している。
図2図1の筐体装置の構成の一例を示している。
図3図2の筐体装置の動作の一例を示している。
図4図1の筐体装置の構成の一例を示している。
図5図2の制御部の構成を例示している。
図6図4の筐体装置の動作の一例を示している。
図7図4の筐体装置の動作の一例を示している。
図8図4の筐体装置の動作の一例を示している。
図9図5のプロセッサにより実行される処理の流れの一例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0008】
添付の図面を参照しつつ、実施形態の例について以下詳細に説明する。図1は、一実施形態に係る遠隔制御システム10の構成を例示している。各図においては、例示される各要素を認識可能な大きさとするために、縮尺を適宜に変更している。
【0009】
遠隔制御システム10は、モバイル装置11を含んでいる。モバイル装置11は、ユーザ20により携帯可能な装置である。モバイル装置11の例としては、スマートフォンなどの汎用携帯情報端末が挙げられる。
【0010】
遠隔制御システム10は、電子キー12を含んでいる。電子キー12もまた、ユーザ20による携帯が可能な装置である。電子キー12は、第一無線通信に基づいて車両30に搭載された制御装置31に施解錠装置32の動作制御を行なわせることが可能な無線通信装置である。施解錠装置32は、車両30の車室33を開閉するドア34を施解錠する装置である。車両30は、移動体の一例である。施解錠装置32は、第一被制御装置の一例である。
【0011】
第一無線通信は、第一周波数帯を用いる第一信号S1と第二周波数帯を用いる第二信号S2の送受信を含んでいる。第一周波数帯と第二周波数帯は相違している。第一周波数帯の例としては、長波(LF)帯が挙げられる。第二周波数帯の例としては、極超短波(UHF)帯が挙げられる。換言すると、電子キー12は、施解錠装置32の制御に必要な情報を出力する。
【0012】
具体的には、車両30における適宜の箇所に配置された通信装置を通じて第一信号S1が送信される。第一信号S1の送信は、連続的になされてもよいし、断続的になされてもよい。電子キー12は、第一信号S1の受信と第二信号S2の送信が可能なアンテナを含む通信装置を備えている。電子キー12は、第一信号S1を受信すると第二信号S2を送信するように構成されている。第二信号S2は、電子キー12の認証に必要な認証情報を含むように構成されている。認証情報は、電子キー12とユーザ20の少なくとも一方を特定可能な情報である。
【0013】
制御装置31は、車両30における適宜の箇所に配置された通信装置を通じて第二信号S2を受信すると、認証処理を実行するように構成されている。具体的には、制御装置31は、第二信号S2に含まれる認証情報を、不図示の記憶装置に予め格納されている電子キー12の認証情報と照合するように構成されている。両情報の一致度が閾値を上回る場合、制御装置31は、電子キー12の認証が成立したと判断する。
【0014】
制御装置31は、電子キー12の認証が成立したと判断されると、施解錠装置32に施解錠動作を実行させる制御信号CSを出力するように構成されている。施解錠装置32は、例えば、電子キー12の認証が成立した状態でユーザ20がドアハンドルに設けられたタッチセンサに触れるとドア34の施解錠を行なうように構成されうる。
【0015】
すなわち、電子キー12を携帯したユーザ20が第一信号S1を受信可能な領域に進入すると、第一無線通信を通じて電子キー12の認証がなされる。認証が成立すると、ユーザ20は、キーをキーシリンダに挿入して回すといった動作を行なうことなく、ドア34を施解錠できる。
【0016】
遠隔制御システム10は、筐体装置13を含んでいる。筐体装置13は、車両30の車室33内における適宜の場所に設置されるように構成されている。当該場所には、車室33内に設置されたグローブボックスやアクセサリボックスなどの収容空間が含まれうる。筐体装置13は、電子キー12を格納できるように構成されている。すなわち、電子キー12は、車室33内に配置されうる。車室33は、筐体装置13が配置される空間の一例である。ドア34は、筐体装置13が配置される空間を開閉する開閉体の一例である。
【0017】
図2に例示されるように、筐体装置13は、筐体131を備えている。筐体131は、少なくとも第二信号S2が透過可能な材料により形成されている。筐体131は、電子キー12が格納される空間を区画している。
【0018】
具体的には、筐体装置13は、トレイ132を備えている。電子キー12は、トレイ132内に配置されうる。トレイ132の構成については詳しく後述する。
【0019】
筐体装置13は、第一アクチュエータ133を備えている。第一アクチュエータ133は、トレイ132に格納された電子キー12の可動部121を操作可能に構成されている。電子キー12は、可動部121に対して所定の操作がなされると、第一信号S1の受信状態に依らず第二信号S2を送信するように構成されている。可動部121は、ボタンやレバーなどにより実現されうる。電子キー12に第二信号S2を送信させるための可動部121の操作の例としては、所定時間を超える長押し操作などが挙げられる。
【0020】
筐体装置13は、通信部134を備えている。通信部134は、モバイル装置11と第二無線通信を行なうためのアンテナを備えている。本例においては、第二無線通信は、短距離無線通信である。
【0021】
本明細書において用いられる「短距離無線通信」という語は、標準規格であるIEEE802.15またはIEEE802.11に準拠して行なわれる無線通信を意味する。そのような無線通信を実行可能な技術としては、Bluetooth(登録商標)、Bluetooth Low Energy(登録商標)、ZigBee(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)、UWB(Ultra Wide Band)などが挙げられる。本明細書における「短距離無線通信」は、読取装置から送信される電波から微小な電力を得てモバイル装置が情報の送信を行なう非接触通信技術を用いる「近接無線通信」とは区別される。近接無線通信を実行可能な技術としては、RF-IDやNFCなどが挙げられる。
【0022】
筐体装置13に電子キー12が格納された状態で車両30のドア34の解錠を希望するユーザ20は、モバイル装置11に対して所定の操作を入力する。操作入力は、スイッチまたはスイッチ画像の操作、音声指示入力、ジェスチャ入力などによりなされうる。図1に例示されるように、モバイル装置11は、当該所定の操作に基づいて解錠信号ULを送信するように構成されている。
【0023】
図2に例示されるように、筐体装置13は、制御部135を備えている。制御部135は、第一アクチュエータ133の動作を制御可能に構成されている。具体的には、図3に例示されるように、制御部135は、通信部134により解錠信号ULが受信されると、電子キー12に第二信号S2を送信させるための可動部121の操作を第一アクチュエータ133に行なわせるように構成されている。すなわち、通信部134により解錠信号ULが受信されると、電子キー12から第二信号S2が送信される。
【0024】
電子キー12から送信された第二信号S2は、車両30に搭載された制御装置31により受信される。前述の通り、制御装置31は、第二信号S2を受信すると、電子キー12の認証処理を行なう。認証処理が成立すると、制御装置31は、施解錠装置32にドア34を解錠させる制御信号CSを出力する。
【0025】
よって、車室33内に設置された筐体装置13に電子キー12が格納された状態でユーザ20がモバイル装置11から解錠信号ULを送信すると、ドア34を解錠できる。換言すると、ユーザ20は、電子キー12を携帯せずとも、車室33の外からモバイル装置11に対する所定の操作を通じてドア34を解錠できる。
【0026】
図4に例示されるように、筐体装置13は、モータ136とカム機構137を備えている。カム機構137は、回転軸137aとカム137bを備えている。回転軸137aは、軸Aを中心として回転可能にモータ136と結合されている。カム137bは、第一アクチュエータ133と機械的に結合されている。これにより、第一アクチュエータ133は、カムフォロワとして動作しうる。
【0027】
図5に例示されるように、制御部135は、入力インタフェース135aを備えている。入力インタフェース135aは、通信部134から解錠信号ULを受け付けるハードウェアインタフェースとして構成されている。解錠信号ULは、アナログ信号であってもよいし、デジタル信号であってもよい。解錠信号ULがアナログ信号である場合、入力インタフェース135aは、A/Dコンバータを含む適宜の変換回路を備える。この説明は、入力インタフェース135aが受け付けうる他の信号やデータについても同様に適用される。
【0028】
制御部135は、プロセッサ135bと出力インタフェース135cを備えている。プロセッサ135bは、入力インタフェース135aが解錠信号ULを受け付けると、出力インタフェース135cからモータ136を駆動する駆動信号DSを出力するように構成されている。モータ136は、駆動信号DSに基づいて、電子キー12に第二信号S2を送信させるための可動部121の操作を第一アクチュエータ133に行なわせるようにカム機構137を動作させる。
【0029】
すなわち、出力インタフェース135cは、駆動信号DSを出力可能なハードウェアインタフェースとして構成されている。駆動信号DSは、モータ136の仕様に応じてアナログ信号であってもよいし、デジタル信号であってもよい。駆動信号DSがアナログ信号である場合、出力インタフェース135cは、D/Aコンバータを含む適宜の変換回路を備える。
【0030】
図4に例示されるように、筐体装置13のトレイ132は、電子キー12が筐体131内に収容される閉塞位置と、電子キー12が筐体131の外に露出する開放位置との間で変位可能に構成されている。図4においては、閉塞位置が実線で示され、開放位置が二点鎖線で示されている。トレイ132が開放位置にあるとき、ユーザ20は、電子キー12をトレイ132から取り出すことができる。
【0031】
図1に例示されるように、車両30には始動装置35が搭載されている。始動装置35は、車両30の駆動源を始動させる装置である。駆動源は、内燃機関と電動モータの少なくとも一方を含みうる。電子キー12は、トレイ132から取り出されることにより、始動装置35の動作制御を制御装置31に行なわせることができる。換言すると、トレイ132は、開放されることにより筐体131から取り出された電子キー12に始動装置35の使用を可能にする。トレイ132は、開閉体の一例である。始動装置35は、第二被制御装置の一例である。
【0032】
図4に例示されるように、筐体装置13は、第二アクチュエータ138を備えている。第二アクチュエータ138は、筐体131内に配置されている。第二アクチュエータ138は、トレイ132の開放を可能または不能にするように構成されている。
【0033】
具体的には、第二アクチュエータ138は、閉塞位置にあるトレイ132に設けられた凹部132aに係合した状態と係合していない状態との間で変位可能に構成されている。
【0034】
例えば、筐体装置13は、トレイ132を閉塞状態に係止する不図示の係止機構と、トレイ132を常に開放位置へ向けて付勢する不図示の付勢機構とを備えうる。第二アクチュエータ138が凹部132aに係合していない状態においては、筐体装置13に対して所定の操作がなされると、係止機構による係止が解除され、付勢機構の付勢力によりトレイ132が開放位置へ変位する。
【0035】
他方、第二アクチュエータ138が凹部132aと係合している状態においては、係止機構による係止が解除されても、トレイ132の開放位置への変位が阻止される。
【0036】
図6は、図4における線VI-VIに沿って矢印方向から見た筐体装置13の一部の断面を例示している。本実施形態例においては、第二アクチュエータ138は、カム機構137の回転軸137aに結合されている。したがって、第二アクチュエータ138は、モータ136によるカム機構137の駆動に伴い、軸Aを中心として回転する。
【0037】
軸Aに沿う方向から見た第二アクチュエータ138の形状は、軸Aを中心とする回転に伴い、その一部がトレイ132の凹部132a内に進入する状態と、いずれの部分も凹部132a内に位置していない状態とをとりうるように定められている。
【0038】
図6図7に例示される第二アクチュエータ138の一部が凹部132a内に進入した状態においては、トレイ132の開放位置への変位が阻止される。図8に例示される第二アクチュエータ138のいずれの部分も凹部132a内に位置していない状態においては、トレイ132の開放位置への変位が許容される。
【0039】
図1に例示されるように、遠隔制御システム10は、アルコール検知器14を含んでいる。アルコール検知器14は、ユーザ20の呼気中に含まれるアルコール濃度を検出する装置である。アルコール検知器14は、車両30から遠隔した場所に配置されてもよいし、車両30に搭載されてもよい。
【0040】
アルコール検知器14は、検出されたアルコール濃度に基づき、当該ユーザ20が酒気帯びしているかを示す検査データCKを出力するように構成されている。検査データCKは、アナログデータの形態であってもよいし、デジタルデータの形態であってもよい。ユーザ20の呼気中に含まれるアルコール濃度が閾値以上である場合、当該ユーザ20は酒気帯びしているとみなされる。検査データCKは、検出されたアルコール濃度自体を情報として含んでもよいし、酒気帯びしているか否かを示す情報を含んでもよい。
【0041】
制御部135の入力インタフェース135aは、アルコール検知器14から検査データCKを受け付けるように構成されている。
【0042】
アルコール検知器14が車両30から遠隔した場所に配置されている場合、モバイル装置11は、無線通信ネットワーク40を介してアルコール検知器14から検査データCKを受信しうる。無線通信ネットワーク40は、LTE(Long Term Evolution)、4G、5G、Wi-Fi(登録商標)などの規格に準じた無線通信を可能にするネットワークである。この場合、入力インタフェース135aは、モバイル装置11を介して検査データCKを受け付けうる。
【0043】
あるいは、車両30に搭載された通信装置36が無線通信ネットワーク40を介してアルコール検知器14から検査データCKを受信しうる。この場合、入力インタフェース135aは、通信装置36との短距離無線通信または有線通信を介して検査データCKを受け付けうる。アルコール検知器14が車両30に搭載されている場合、入力インタフェース135aは、アルコール検知器14との短距離無線通信または有線通信を介して検査データCKを受け付けうる。
【0044】
制御部135のプロセッサ135bは、ユーザ20が酒気帯びしていないことを入力インタフェース135aにより受け付けられた検査データCKが示している場合、第二アクチュエータ138にトレイ132の開放位置への変位を許容させる動作を行なわせるようにモータ136を駆動する駆動信号DSを、出力インタフェース135cから出力する。ユーザ20が酒気帯びしていないことは、電子キー12の使用条件を満足していることの一例である。
【0045】
換言すると、ユーザ20が酒気帯びしていることを検査データCKが示している場合、プロセッサ135bは、第二アクチュエータ138によりトレイ132の開放位置への変位が阻止されている状態を維持する。ユーザ20は、電子キー12を筐体131から取り出すことができず、車両30を始動させることができない。
【0046】
図6に例示されるように、筐体装置13は、磁気センサ139を備えている。他方、第二アクチュエータ138には、第一磁石138a、第二磁石138b、および第三磁石138cが装着されている。
【0047】
第一磁石138aの位置は、第二アクチュエータ138が図6に例示された回転角度位置にあるときに、磁気センサ139が第一磁石138aの磁気を検出するように定められている。
【0048】
第二磁石138bの位置は、第二アクチュエータ138が図7に例示された回転角度位置にあるときに、磁気センサ139が第二磁石138bの磁気を検出するように定められている。
【0049】
第三磁石138cの位置は、第二アクチュエータ138が図8に例示された回転角度位置にあるときに、磁気センサ139が第三磁石138cの磁気を検出するように定められている。
【0050】
磁気センサ139は、第一磁石138a、第二磁石138b、および第三磁石138cのいずれかの磁気を検出すると、制御部135へ検出信号を出力するように構成されている。プロセッサ135bは、当該検出信号が入力インタフェース135aにより受け付けられるとモータ136の駆動を停止させるように構成されている。これにより、所望の位置に第二アクチュエータ138を静止させることができる。
【0051】
図9を参照しつつ、上記のように構成されたプロセッサ135bにより実行される処理の一例を説明する。本処理は、電子キー12が収容されたトレイ132が閉塞位置に配置されることにより起動される。
【0052】
まず、プロセッサ135bは、第二アクチュエータ138にトレイ132の開放位置への変位を不能にさせるようにモータ136を駆動する駆動信号DSを、出力インタフェース135cから出力する(STEP1)。
【0053】
具体的には、第二アクチュエータ138が図6に例示される回転角度位置をとるようにカム機構137の回転軸137aが回転される。第二アクチュエータ138に装着された第一磁石138aの磁気が磁気センサ139により検出されると、プロセッサ135bは、モータ136の駆動を停止させる。
【0054】
続いて、プロセッサ135bは、入力インタフェース135aにより解錠信号ULが受け付けられたかを判断する(STEP2)。解錠信号ULが受け付けられたと判断されるまで、当該処理が繰り返される(STEP2においてNO)。
【0055】
入力インタフェース135aにより解錠信号ULが受け付けられたと判断されると(STEP2においてYES)、プロセッサ135bは、第一アクチュエータ133に電子キー12の可動部121を操作させるようにモータ136を駆動する駆動信号DSを、出力インタフェース135cから出力する(STEP3)。
【0056】
本実施形態例においては、第二アクチュエータ138を図6に例示される回転角度位置から図7に例示される回転角度位置まで変位させる回転軸137aの回転が、第一アクチュエータ133に電子キー12の可動部121に対する所定の操作を行なわせるカム137bの動きに対応するように構成されている。
【0057】
したがって、第二アクチュエータ138が図7に例示される回転角度位置をとるようにカム機構137の回転軸137aが回転される。第二アクチュエータ138に装着された第二磁石138bの磁気が磁気センサ139により検出されると、プロセッサ135bは、モータ136の駆動を停止させる。
【0058】
これにより、電子キー12から第二信号S2が送信される。車両30の制御装置31は、第二信号S2に基づいて施解錠装置32にドア34を解錠させる。すなわち、トレイ132の開放位置への変位は不能とされたまま、ドア34の解錠がなされる。ユーザ20は車室33内に進入できるが、電子キー12を筐体131から取り出すことはできない。
【0059】
続いて、プロセッサ135bは、入力インタフェース135aにより検査データCKが受け付けられたかを判断する(STEP4)。検査データCKが受け付けられたと判断されるまで、当該処理が繰り返される(STEP4においてNO)。すなわち、ユーザ20がアルコール検査を受けていない状態では、電子キー12を筐体131から取り出すことができない。
【0060】
入力インタフェース135aにより検査データCKが受け付けられたと判断されると(STEP4においてYES)、プロセッサ135bは、検査データCKに基づいて、ユーザ20が酒気帯びしているかを判断する(STEP5)。検査データCKが検出されたアルコール濃度の値を示している場合、当該判断は、当該値が所定の閾値以上であるかに基づいてなされる。検査データCKが、酒気帯びの有無についての情報を既に含んでいる場合、当該判断は、当該情報を参照することによりなされる。
【0061】
ユーザ20が酒気帯びしていないと判断されると(STEP5においてNO)、プロセッサ135bは、第二アクチュエータ138にトレイ132の開放位置への変位を可能にさせるようにモータ136を駆動する駆動信号DSを、出力インタフェース135cから出力する(STEP6)。
【0062】
具体的には、第二アクチュエータ138が図8に例示される回転角度位置をとるようにカム機構137の回転軸137aが回転される。第二アクチュエータ138に装着された第三磁石138cの磁気が磁気センサ139により検出されると、プロセッサ135bは、モータ136の駆動を停止させる。
【0063】
これにより、ユーザ20は、筐体131から電子キー12を取り出し、始動装置35に車両30を始動させることができる。
【0064】
ユーザ20が酒気帯びしていると判断されると(STEP5においてYES)、プロセッサ135bは、処理を終了する。すなわち、トレイ132の開放位置への変位が不能とされた状態が維持される。ユーザ20は、筐体131から電子キー12を取り出すことができず、車両30を始動させることもできない。
【0065】
上記の態様例に係る構成によれば、ユーザ20が酒気帯びしている場合はトレイ132の開放が不能とされるので、筐体131から電子キー12を取り出すことができず、ユーザ20による始動装置35の使用を制限できる。一方、トレイ132の開放が不能とされた状態でも第一アクチュエータ133による電子キー12の可動部121の操作はなされうるので、ユーザ20が酒気帯びしているか否かに依らず、施解錠装置32によるドア34の解錠はなされ、車室33への進入は許容される。これにより、施解錠装置32と始動装置35の使用に関連付けられた電子キー12の使用態様に係る制限を緩和できる。例えば、悪天候からの避難などを理由に車室33内への進入を希望するユーザ20が酒気帯びを理由にドア34の解錠を許可されないといった事態の発生を回避できる。
【0066】
加えて、アルコール検知器14を車室33内に設置し、アルコール濃度検査を車室33内で行なうことができる。これにより、アルコール検知器14の設置場所に係る自由度を高めることができるだけでなく、車両30の使用を希望するユーザ20の現状により即した検査結果を得ることができる。
【0067】
したがって、車両30における施解錠装置32と始動装置35の使用に関連付けられた電子キー12が格納される空間を区画する筐体131を備えた筐体装置13の利便性を高めることができる。
【0068】
図7に例示されるように、解錠信号ULを受け付けていない状態でトレイ132の開放位置への変位を不能にする第二アクチュエータ138の回転角度位置から、解錠信号ULを受け付けた状態でトレイ132の開放位置への変位を不能にする第二アクチュエータ138の回転角度位置に至る回転軸137aの回転角度は、θ1である。図8に例示されるように、解錠信号ULを受け付けた状態でトレイ132の開放位置への変位を不能にする第二アクチュエータ138の回転角度位置から、トレイ132の開放位置への変位を可能にする第二アクチュエータ138の回転角度位置に至る回転軸137aの回転角度は、θ2である。角度θ2は、角度θ1よりも小さい。
【0069】
図7に例示される状態は、ドア34の解錠が許可された状態でアルコール濃度検査の結果を待機している状態に対応している。この待機期間に角度θ1の回転を済ませておくことにより、ユーザ20が酒気帯びしていないとの判断がなされた後にトレイ132の開放を可能にするために必要とされる第二アクチュエータ138の変位量を小さくできる。これにより、電子キー12の使用が可能になるまでの時間を短縮でき、ユーザ20に与えうる不快感を抑制できる。
【0070】
これまで説明した各種の機能を有するプロセッサ135bは、マイクロコントローラ、ASIC、FPGAなどの集積回路素子により実現されうる。
【0071】
これまで説明した各構成は、本開示の理解を容易にするための例示にすぎない。各構成例は、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜の変更や別構成例との組み合わせがなされうる。
【0072】
上記の実施形態例においては、第二アクチュエータ138は、第一アクチュエータ133に電子キー12の可動部121を操作させるカム機構137の一部を構成している。このような構成によれば、部品点数の増加を抑制できる。
【0073】
しかしながら、図5を参照して説明した処理を実行可能であれば、第二アクチュエータ138の動作は、カム機構137とは独立した機構を通じて制御部135により制御されうる。第一アクチュエータ133と第二アクチュエータ138の各々は、ソレノイドやラックピニオン機構により構成されてもよい。
【0074】
上記の実施形態例においては、第二アクチュエータ138に係る所望の回転角度位置が磁気センサ139により検出されている。このような構成によれば、比較的簡易かつ安価な構成で所望の回転角度位置を検出できる。
【0075】
しかしながら、ロータリエンコーダを用いて回転軸137aの回転角度を検出してもよい。あるいは、回転に応じて遮光状態が切り替わる構成を第二アクチュエータ138に適用し、フォトインタラプタを用いて回転角度位置を検出してもよい。
【0076】
上記の実施形態においては、制御装置31と電子キー12との間で行なわれる第一無線通信は、異なる周波数帯を使用している。しかしながら、第一無線通信は、同一の周波数帯を用いる適宜の無線通信規格に基づいて行なわれうる。
【0077】
上記の実施形態においては、モバイル装置11と筐体装置13の通信部134との間で行なわれる第二無線通信は、短距離無線通信である。この場合、車室33内に設置される筐体装置13の配置自由度を高めることができる。しかしながら、第二無線通信は、近接無線通信であってもよい。
【0078】
上記の実施形態においては、施解錠装置32により施解錠される開閉体として車室33を開閉するドア34が例示されている。ドア34の形態は、図1に例示されるようなヒンジドアであってもよいし、スライドドアであってもよい。車両30に搭載される開閉体は、トランクやボンネットを含みうる。この場合、トランクやボンネットにより開閉される空間に筐体装置13が配置されてもよい。
【0079】
本開示に係る遠隔制御システム10は、酒気帯びでの使用制限が必要とされる他の移動体にも適用されうる。その他の移動体の例としては、鉄道、航空機、船舶などが挙げられる。筐体装置13に格納される携帯装置を介しての使用が制限される被制御装置の種別は、移動体の仕様に応じて適宜に定められる。
【0080】
筐体装置13に格納される携帯装置を介しての被制御装置の使用が制限される条件は、酒気帯びに限られない。ユーザ20について眠気、意識障害、挙動異常などが検出されることもまた、当該条件の一例となりうる。この場合、アルコール検知器14に加えてあるいは代えて、当該異常を検出するための設備が適宜の場所に設置される。
【0081】
施解錠装置により施解錠される開閉体は、必ずしも移動体に搭載されることを要しない。酒気帯びでの使用制限が必要とされる施設における扉や窓もまた開閉体の一例になりうる。筐体装置13に格納される携帯装置を介しての使用が制限される他の被制御装置の種別や条件は、施設の仕様に応じて適宜に定められる。
【0082】
以下に列挙される構成もまた、本開示の一部を構成する。

項目1:
可動部が操作されることにより第一被制御装置を遠隔制御する携帯装置が格納される空間を区画する筐体と、
開放されることにより前記空間から取り出された前記携帯装置に第二被制御装置の使用を可能にする開閉体と、
前記筐体内に配置されており、前記空間に格納された前記携帯装置の前記可動部を操作可能である第一アクチュエータと、
前記筐体内に配置されており、前記開閉体の開放を可能または不能にする第二アクチュエータと、
ユーザにより携帯可能なモバイル装置から送信される指示、および当該ユーザが前記第二被制御装置の使用条件を満足しているかを示すデータを、無線通信を通じて受け付けるインタフェースと、
前記指示と前記データの少なくとも一方に基づいて前記第一アクチュエータと前記第二アクチュエータの動作を制御するプロセッサと、
を備えており、
前記プロセッサは、
前記インタフェースが前記指示を受け付けた場合、前記第二アクチュエータに前記開閉体の開放を不能にさせつつ、前記第一アクチュエータに前記可動部を操作させ、
前記ユーザが前記使用条件を満足していることを前記データが示している場合、前記第二アクチュエータに前記開閉体の開放を可能にさせる、
筐体装置。

項目2:
前記第二アクチュエータは、前記第一アクチュエータに前記可動部を操作させるカム機構の一部である、
項目1に記載の筐体装置。

項目3:
前記カム機構は、軸を中心として回転可能な回転軸を備えており、
前記第二アクチュエータは、前記回転軸とともに回転することにより
前記指示を受け付けていない状態で前記開閉体の開放を不能にする第一角度位置と、
前記指示を受け付けた状態で前記開閉体の開放を不能にする第二角度位置と、
前記開閉体の開放を可能にする第三角度位置と、
をとりうるように構成されており、
前記第二角度位置から前記第三角度位置に至る角度は、前記第一角度位置から前記第二角度位置に至る角度よりも小さい、
項目2に記載の筐体装置。

項目4:
前記第一角度位置、前記第二角度位置、および前記第三角度位置を検出する磁気センサを備えている、
項目3に記載の筐体装置。

項目5:
前記第一被制御装置は、前記筐体装置が配置される空間を開閉する開閉体の施解錠装置である、
項目1から4のいずれか一項に記載の筐体装置。

項目6:
前記開閉体は、移動体に搭載されており、
前記第二被制御装置は、前記移動体の駆動源を始動させる装置である、
項目5に記載の筐体装置。

項目7:
前記使用条件は、酒気帯びしていないことを含んでいる、
項目1から6のいずれか一項に記載の筐体装置。
【符号の説明】
【0083】
11:モバイル装置、12:電子キー、121:可動部、13:筐体装置、131:筐体、132:トレイ(開閉体)、133:第一アクチュエータ、135a:入力インタフェース、135b:プロセッサ、137:カム機構、137a:回転軸、138:第二アクチュエータ、139:磁気センサ、20:ユーザ、30:車両、32:施解錠装置、33:車室、34:ドア、35:始動装置、A:軸、CK:検査データ、UL:解錠信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9