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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134148
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20240926BHJP
【FI】
H01L21/304 648G
H01L21/304 643A
H01L21/304 648L
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044286
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】時末 尚悟
(72)【発明者】
【氏名】岡本 悟史
(72)【発明者】
【氏名】猿渡 健
(72)【発明者】
【氏名】北村 藤和
(72)【発明者】
【氏名】久保 友輔
(72)【発明者】
【氏名】吉田 幸史
【テーマコード(参考)】
5F157
【Fターム(参考)】
5F157AB02
5F157AB14
5F157AB33
5F157AB45
5F157AB49
5F157AB51
5F157AB64
5F157AB90
5F157BB23
5F157BB45
5F157CD11
5F157CD29
5F157CE28
5F157CF04
5F157CF14
5F157CF22
5F157CF40
5F157CF42
5F157CF44
5F157CF50
5F157CF60
5F157CF62
5F157CF70
5F157CF74
5F157CF99
5F157DB37
5F157DC21
5F157DC90
(57)【要約】
【課題】チャンバ内におけるパーティクルの発生を抑えつつ、基板の周縁部における処理の状況を撮影でき、かつ、基板の上面の広い範囲に焦点を合わせた撮影を行うことができる基板処理装置および基板処理方法を提供する。
【解決手段】回転する基板Wの上面に処理液を供給しつつ、基板Wの周縁部をカメラ84により撮影する。これにより、基板Wの周縁部における処理の状態を撮影できる。カメラ84は、チャンバ30の外部に配置される。したがって、チャンバ30内の処理空間31において、カメラ84に起因するパーティクルが発生することを抑制できる。また、第1ミラー81を使用することにより、基板Wの周縁部を真上から撮影できる。これにより、基板Wの上面の広い範囲に焦点を合わせた撮影を行うことができる。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理液により処理する基板処理装置であって、
前記基板を処理する処理空間を区画する隔壁および前記隔壁の一部に設けられた窓部を有するチャンバと、
前記チャンバ内において前記基板を水平姿勢で保持する保持部と、
前記保持部を、鉛直方向に延びる回転軸を中心として回転させる回転機構と、
前記保持部に保持された前記基板の上面に処理液を供給することにより、前記基板の上面に液膜を形成する処理液供給部と、
前記チャンバの内部の、前記保持部に保持された前記基板の周縁部の上方に位置する第1ミラーと、
前記チャンバの外部に位置し、前記窓部および前記第1ミラーを介して前記基板の周縁部を撮影するカメラと、
前記回転機構、前記処理液供給部、および前記カメラを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記回転機構および前記処理液供給部を動作させつつ、前記カメラによる撮影を実行させる、基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記チャンバの外部に位置し、前記窓部および前記第1ミラーを介して前記基板の周縁部へ光を照射する照明部
をさらに備える、基板処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の基板処理装置であって、
前記チャンバの外部に位置するハーフミラー
をさらに備え、
前記ハーフミラーにより分岐される2つの光路の一方に、前記照明部が配置され、
前記ハーフミラーにより分岐される2つの光路の他方に、前記カメラが配置される、基板処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記基板はシリコンウェハであり、
前記第1ミラーもシリコンウェハである、基板処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の基板処理装置であって、
前記チャンバの外部に位置し、反射面が銀またはアルミニウムである第2ミラー
をさらに備え、
前記カメラは、前記第2ミラー、前記窓部、および前記第1ミラーを介して前記基板の周縁部を撮影する、基板処理装置。
【請求項6】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記カメラは、イベントベースカメラである、基板処理装置。
【請求項7】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記チャンバの上部に設けられたファンフィルタユニット
をさらに備える、基板処理装置。
【請求項8】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記チャンバの内部において、前記保持部に保持された前記基板を包囲するカップ
をさらに備える、基板処理装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の基板処理装置であって、
前記制御部は、前記カメラから得られる撮影データに基づいて、前記基板の上面におけるカバレッジブレイクの発生状況を検査する、基板処理装置。
【請求項10】
基板を処理液により処理する基板処理方法であって、
(a)前記基板を処理する処理空間を区画する隔壁を有するチャンバ内において、水平姿勢で保持された前記基板を、鉛直方向に延びる回転軸を中心として回転させつつ、前記基板の上面に処理液を供給することにより、前記基板の上面に液膜を形成する処理と、
(b)前記処理(a)を実行しつつ、前記基板の周縁部を撮影する処理と、
を行い、
前記処理(b)では、前記チャンバの外部に位置するカメラが、前記隔壁に設けられた窓部と、前記チャンバの内部の前記基板の周縁部の上方に位置する第1ミラーとを介して、前記基板の周縁部を撮影する、基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を処理液により処理する基板処理装置および基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハ等の基板の製造工程では、チャンバ内において基板を水平な姿勢で回転させつつ、基板の上面に処理液を供給する処理が行われる。このような処理を行う従来の基板処理装置については、例えば、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-140340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の基板処理装置では、基板の上面の中央部へ吐出された処理液が、基板の回転によって、基板の周縁部へ広がる。このとき、基板の上面に形成される液膜は、基板の中央部から周縁部へ広がるにつれて、徐々に薄くなる。このため、基板の上面の周縁部において、液膜が途切れて基板の上面が露出する「カバレッジブレイク」と呼ばれる現象が発生する場合がある。カバレッジブレイクが発生すると、基板の上面において、処理液による処理が不均一となる。
【0005】
カバレッジブレイクの発生の有無を監視するためには、例えば、基板に対して処理液を供給しつつ、基板の周縁部をカメラにより撮影することが考えられる。しかしながら、チャンバの内部にカメラを配置すると、カメラから発生するパーティクルにより、基板が汚染されるおそれがある。また、基板を斜め上方から撮影すると、基板の上面において焦点を合わせることができる範囲が狭くなるという問題がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、チャンバ内におけるパーティクルの発生を抑えつつ、基板の周縁部における処理の状況を撮影でき、かつ、基板の上面の広い範囲に焦点を合わせた撮影を行うことができる基板処理装置および基板処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本願の第1発明は、基板を処理液により処理する基板処理装置であって、前記基板を処理する処理空間を区画する隔壁および前記隔壁の一部に設けられた窓部を有するチャンバと、前記チャンバ内において前記基板を水平姿勢で保持する保持部と、前記保持部を、鉛直方向に延びる回転軸を中心として回転させる回転機構と、前記保持部に保持された前記基板の上面に処理液を供給することにより、前記基板の上面に液膜を形成する処理液供給部と、前記チャンバの内部の、前記保持部に保持された前記基板の周縁部の上方に位置する第1ミラーと、前記チャンバの外部に位置し、前記窓部および前記第1ミラーを介して前記基板の周縁部を撮影するカメラと、前記回転機構、前記処理液供給部、および前記カメラを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記回転機構および前記処理液供給部を動作させつつ、前記カメラによる撮影を実行させる。
【0008】
本願の第2発明は、第1発明の基板処理装置であって、前記チャンバの外部に位置し、前記窓部および前記第1ミラーを介して前記基板の周縁部へ光を照射する照明部をさらに備える。
【0009】
本願の第3発明は、第2発明の基板処理装置であって、前記チャンバの外部に位置するハーフミラーをさらに備え、前記ハーフミラーにより分岐される2つの光路の一方に、前記照明部が配置され、前記ハーフミラーにより分岐される2つの光路の他方に、前記カメラが配置される。
【0010】
本願の第4発明は、第1発明から第3発明までのいずれか1発明の基板処理装置であって、前記基板はシリコンウェハであり、前記第1ミラーもシリコンウェハである。
【0011】
本願の第5発明は、第4発明の基板処理装置であって、前記チャンバの外部に位置し、反射面が銀またはアルミニウムである第2ミラーをさらに備え、前記カメラは、前記第2ミラー、前記窓部、および前記第1ミラーを介して前記基板の周縁部を撮影する。
【0012】
本願の第6発明は、第1発明から第5発明までのいずれか1発明の基板処理装置であって、前記カメラは、イベントベースカメラである。
【0013】
本願の第7発明は、第1発明から第6発明までのいずれか1発明の基板処理装置であって、前記チャンバの上部に設けられたファンフィルタユニットをさらに備える。
【0014】
本願の第8発明は、第1発明から第7発明までのいずれか1発明の基板処理装置であって、前記チャンバの内部において、前記保持部に保持された前記基板を包囲するカップをさらに備える。
【0015】
本願の第9発明は、第1発明から第8発明までのいずれか1発明の基板処理装置であって、前記制御部は、前記カメラから得られる撮影データに基づいて、前記基板の上面におけるカバレッジブレイクの発生状況を検査する。
【0016】
本願の第10発明は、基板を処理液により処理する基板処理方法であって、(a)前記基板を処理する処理空間を区画する隔壁を有するチャンバ内において、水平姿勢で保持された前記基板を、鉛直方向に延びる回転軸を中心として回転させつつ、前記基板の上面に処理液を供給することにより、前記基板の上面に液膜を形成する処理と、(b)前記処理(a)を実行しつつ、前記基板の周縁部を撮影する処理と、を行い、前記処理(b)では、前記チャンバの外部に位置するカメラが、前記隔壁に設けられた窓部と、前記チャンバの内部の前記基板の周縁部の上方に位置する第1ミラーとを介して、前記基板の周縁部を撮影する。
【発明の効果】
【0017】
本願の第1発明~第10発明によれば、回転する基板の上面に処理液を供給しつつ、基板の周縁部をカメラにより撮影する。これにより、基板の周縁部における処理の状態を撮影できる。カメラは、チャンバの外部に配置される。したがって、チャンバ内の処理空間において、カメラに起因するパーティクルが発生することを抑制できる。また、第1ミラーを使用することにより、基板の周縁部を真上から撮影できる。これにより、基板の上面の広い範囲に焦点を合わせた撮影を行うことができる。
【0018】
特に、本願の第2発明によれば、基板の周縁部に真上から光を照射できる。これにより、基板の周縁部をより明瞭に撮影できる。また、照明部は、チャンバの外部に配置される。したがって、チャンバ内の処理空間において、カメラに起因するパーティクルの発生を抑制できる。
【0019】
特に、本願の第3発明によれば、カメラの光軸と照明部の光軸を一致させることができる。
【0020】
特に、本願の第4発明によれば、第1ミラーに起因するパーティクル発生を抑制できる。
【0021】
特に、本願の第5発明によれば、チャンバ内に配置される第1ミラーには、パーティクルが発生しにくいシリコンウェハを使用する一方、チャンバ外に配置される第2ミラーには、反射率が高い銀またはアルミニウムのミラーを使用する。これにより、基板の汚染を抑制しつつ、基板の周縁部を明瞭に撮影できる。
【0022】
特に、本願の第6発明によれば、イベントベースカメラを使用することにより、基板の周縁部の高速な動きを撮影でき、かつ、撮影データの情報量を抑えることができる。
【0023】
特に、本願の第7発明によれば、チャンバ内の処理空間に、清浄な空気のダウンフローを形成できる。ただし、チャンバの上部にファンフィルタユニットを設けると、チャンバの上部にカメラを設けることが困難となる。しかしながら、本発明によれば、カメラをチャンバの側方に配置し、第1ミラーを介して基板を上方から撮影できる。
【0024】
特に、本願の第8発明によれば、基板から飛散する処理液を、カップで受けることにより回収できる。ただし、基板の周囲にカップを配置すると、基板の周縁部を斜め上方から撮影することが困難となる。しかしながら、本発明によれば、第1ミラーを使用することにより、基板の周縁部を真上から撮影できる。
【0025】
特に、本願の第9発明によれば、基板の周縁部において発生しやすいカバレッジブレイクの状況を検査できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】基板処理装置の平面図である。
図2】処理ユニットの平面図である。
図3】処理ユニットの縦断面図である。
図4】ノズルヘッドに接続される給液部を模式的に示した図である。
図5】処理ユニットの制御ブロック図である。
図6】基板の処理手順を示すフローチャートである。
図7】カバレッジブレイクの監視処理の流れを示すフローチャートである。
図8】第1変形例に係る処理ユニットの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0028】
<1.基板処理装置の全体構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置1の平面図である。この基板処理装置1は、半導体ウェハの製造工程において、円板状の基板W(シリコンウェハ)の表面に処理液を供給して、基板Wの表面を処理する装置である。図1に示すように、基板処理装置1は、インデクサブロック10と処理ブロック20とを有する。インデクサブロック10と処理ブロック20とは、水平な床面上に隣接して配置される。
【0029】
以下では、インデクサブロック10と処理ブロック20とが並ぶ方向と「前後方向」と称する。また、前後方向に直交する水平方向を「左右方向」と称する。
【0030】
インデクサブロック10は、処理前の基板Wを外部から搬入するとともに、処理後の基板Wを外部へ搬出するための部位である。図1に示すように、インデクサブロック10は、複数(例えば4つ)のキャリア載置部11と、第1搬送部12とを有する。複数のキャリア載置部11は、左右方向に配列されている。各キャリア載置部11には、複数の基板Wを収容するキャリアCをセットすることが可能である。キャリアCには、例えばFOUP(front opening unified pod)が使用される。
【0031】
第1搬送部12は、複数のキャリア載置部11と、処理ブロック20との間に位置する。第1搬送部12は、左右方向に延びる第1搬送路121と、第1搬送路121に設けられた第1搬送ロボット122とを有する。第1搬送ロボット122は、第1搬送路121に沿って、左右方向に移動可能である。
【0032】
第1搬送ロボット122は、基板Wを保持するハンドと、ハンドを移動させるアームとを有する。第1搬送ロボット122は、キャリアCと、後述するバッファ21との間で、基板Wを搬送する。すなわち、第1搬送ロボット122は、キャリアCから処理前の基板Wを取り出して、バッファ21へ搬送する。また、第1搬送ロボット122は、バッファ21から処理後の基板Wを取り出して、キャリアCへ搬送する。
【0033】
処理ブロック20は、インデクサブロック10から供給される複数の基板Wに対して、処理を行うための部位である。図1に示すように、処理ブロック20は、バッファ21と、第2搬送部22と、複数の処理ユニット23とを有する。バッファ21は、第1搬送部12と第2搬送部22との間で、基板Wを一時的に保管するユニットである。バッファ21には、複数の基板Wを同時に収容することが可能である。
【0034】
第2搬送部22は、前後方向に延びる第2搬送路221と、第2搬送路221に設けられた第2搬送ロボット222とを有する。第2搬送ロボット222は、第2搬送路221に沿って、前後方向に移動可能である。第2搬送ロボット222は、バッファ21と、複数の処理ユニット23との間で、基板Wを搬送する。すなわち、第2搬送ロボット222は、バッファ21から処理前の基板Wを取り出して、処理ユニット23へ搬送する。また、第2搬送ロボット222は、処理ユニット23から処理後の基板Wを取り出して、バッファ21へ搬送する。
【0035】
なお、処理ブロック20は、2つ以上の第2搬送部22を有していてもよい。例えば、第2搬送路221が、上下方向に多段に設けられ、各第2搬送路221に第2搬送ロボット222が設けられていてもよい。
【0036】
処理ユニット23は、基板Wを1枚ずつ処理する、いわゆる枚様式の処理部である。複数の処理ユニット23は、第2搬送路221の左右両側に配置されている。図1の例では、第2搬送路221の左側に、2つの処理ユニット23が配置され、第2搬送路221の右側に、2つの処理ユニット23が配置されている。ただし、これらの複数の処理ユニット23が、高さ方向に多段に設けられていてもよい。複数の基板Wは、各処理ユニット23において、同時に処理される。
【0037】
<2.処理ユニットの構成>
続いて、処理ユニット23の詳細な構成について説明する。以下では、基板処理装置1が有する複数の処理ユニット23のうちの1つについて説明するが、他の処理ユニット23も同等の構成を有する。
【0038】
図2は、処理ユニット23の平面図である。図3は、処理ユニット23の縦断面図である。処理ユニット23は、シリコンウェハである基板Wに対して、処理液による処理を行うユニットである。図2および図3に示すように、処理ユニット23は、チャンバ30、保持部40、回転機構50、処理液供給部60、カップ70、撮像部80、および制御部90を備えている。
【0039】
チャンバ30は、基板Wを処理するための単一の閉空間である処理空間31を形成する筐体である。チャンバ30は、処理空間31と外部空間とを区画する隔壁32を有する。隔壁32は、処理空間31の側部を取り囲む側壁321と、処理空間31の上部を覆う天板部322と、処理空間31の下部を覆う底板部323と、を有する。保持部40、回転機構50、処理液供給部60、カップ70、および後述する第1ミラー81は、チャンバ30の内部に収容される。
【0040】
側壁321のうち、第2搬送路221に面する部分には、チャンバ30内への基板Wの搬入およびチャンバ30から基板Wの搬出を行うための搬入出口と、搬入出口を開閉するシャッタとが、設けられている(図示省略)。また、チャンバ30は、側壁321の一部分に窓部33を有する。窓部33は、ポリ塩化ビニル等の透明な樹脂またはガラスにより形成される。側壁321と窓部33との境界は、隙間なく封止されている。
【0041】
また、図3に示すように、チャンバ30は、ファンフィルタユニット(FFU)34を有する。ファンフィルタユニット34は、天板部322に設けられている。ファンフィルタユニット34は、HEPAフィルタ等の集塵フィルタと、気流を発生させるファンとを有する。ファンフィルタユニット34を動作させると、基板処理装置1が設置されるクリーンルーム内の空気が、ファンフィルタユニット34に取り込まれ、集塵フィルタにより清浄化されて、チャンバ30内の処理空間31へ供給される。これにより、チャンバ30内の処理空間31に、清浄な空気のダウンフローが形成される。
【0042】
また、側壁321の下部の一部には、排気ダクト35が接続されている。ファンフィルタユニット34から供給された空気は、チャンバ30の内部においてダウンフローを形成した後、排気ダクト35を通ってチャンバ30の外部へ排出される。
【0043】
保持部40は、チャンバ30の内部において、基板Wを水平姿勢(法線が鉛直方向を向く姿勢)で保持する機構である。図2および図3に示すように、保持部40は、円板状のスピンベース41と、複数のチャックピン42とを有する。複数のチャックピン42は、スピンベース41の上面の外周部に、等角度間隔で設けられている。基板Wは、パターンが形成される被処理面を上側に向けた状態で、複数のチャックピン42に保持される。各チャックピン42は、基板Wの周縁部の下面および外周端面に接触し、スピンベース41の上面から僅かな空隙を介して上方の位置に、基板Wを支持する。
【0044】
スピンベース41の内部には、複数のチャックピン42の位置を切り替えるためのチャックピン切替機構43が設けられている。チャックピン切替機構43は、複数のチャックピン42を、基板Wを保持する保持位置と、基板Wの保持を解除する解除位置と、の間で切り替える。
【0045】
回転機構50は、保持部40を回転させるための機構である。回転機構50は、スピンベース41の下方に設けられたモータカバー51の内部に収容されている。図3中に破線で示したように、回転機構50は、スピンモータ52と支持軸53とを有する。支持軸53は、鉛直方向に延び、その下端部がスピンモータ52に接続されるとともに、上端部がスピンベース41の下面の中央に固定される。スピンモータ52を駆動させると、支持軸53がその軸芯を通る回転軸530を中心として回転する。そして、支持軸53とともに、保持部40および保持部40に保持された基板Wも、回転軸530を中心として回転する。
【0046】
処理液供給部60は、保持部40に保持された基板Wの上面に、処理液を供給する機構である。処理液供給部60は、吐出ノズル61を有する。図2および図3に示すように、吐出ノズル61は、ノズルアーム611と、ノズルアーム611の先端に設けられたノズルヘッド612と、ノズルモータ613とを有する。ノズルアーム611は、ノズルモータ613の駆動により、ノズルアーム611の基端部を中心として、水平方向に回動する。これにより、ノズルヘッド612を、保持部40に保持された基板Wの上方の処理位置(図2中の二点鎖線の位置)と、カップ70よりも外側の退避位置(図2中の実線の位置)との間で、移動させることができる。
【0047】
図4は、ノズルヘッド612に接続される給液部を模式的に示した図である。ノズルヘッド612は、処理液が貯留された給液源614と、配管615を介して接続されている。配管615の経路上には、ポンプ616およびバルブ617が設けられている。ノズルヘッド612を処理位置に配置した状態で、バルブ617を開放するとともに、ポンプ616を動作させると、給液源614から配管615を通ってノズルヘッド612に、処理液が供給される。そして、ノズルヘッド612から基板Wの上面に向けて、処理液が吐出される。
【0048】
処理ユニット23は、回転機構50により基板Wを回転させた状態で、ノズルヘッド612から基板Wの上面の中央に、処理液を吐出する。処理液は、基板Wの回転による遠心力で、基板Wの中央から周縁部へ広がる。これにより、基板Wの上面に、処理液の液膜が形成される。
【0049】
処理液には、例えば、DHF洗浄液(希フッ酸)、SPM洗浄液(硫酸と過酸化水素水との混合液)、SC-1洗浄液(アンモニア水、過酸化水素水、純水の混合液)、SC-2洗浄液(塩酸、過酸化水素水、純水の混合液)、純水(脱イオン水)などが使用される。ただし、処理液の種類は限定されるものではなく、上記以外の処理液を使用してもよい。
【0050】
なお、1つの処理ユニット23に、複数本の吐出ノズル61が設けられていてもよい。また、処理ユニット23は、基板Wの下面へ向けて処理液を供給するノズルを、さらに備えていてもよい。
【0051】
カップ70は、使用後の処理液を捕集する機構である。図3に示すように、カップ70は、内カップ71、中カップ72、および外カップ73を有する。内カップ71は、保持部40を取り囲む円環状の第1案内板710を有する。中カップ72は、第1案内板710の外側かつ上側に位置する円環状の第2案内板720を有する。外カップ73は、第2案内板720の外側かつ上側に位置する円環状の第3案内板730を有する。
【0052】
内カップ71、中カップ72、および外カップ73は、図示を省略した昇降機構により、互いに独立して昇降移動することが可能である。処理液供給部60が基板Wに対して処理液を供給するときには、第1案内板710、第2案内板720、および第3案内板730のうちの少なくともいずれか1つが、保持部40に保持された基板Wを包囲する。
【0053】
内カップ71の底部は、中カップ72および外カップ73の下方まで広がっている。そして、当該底部の上面には、内側から順に、第1排液溝711、第2排液溝712、および第3排液溝713が設けられている。
【0054】
処理液供給部60のノズルヘッド612から吐出された処理液は、基板Wの上面に液膜を形成した後、基板Wの回転による遠心力で、外側へ飛散する。そして、基板Wから飛散した処理液は、第1案内板710、第2案内板720、および第3案内板730のいずれかに捕集される。第1案内板710に捕集された処理液は、第1排液溝711を通って、処理ユニット23の外部へ排出される。第2案内板720に捕集された処理液は、第2排液溝712を通って、処理ユニット23の外部へ排出される。第3案内板730に捕集された処理液は、第3排液溝713を通って、処理ユニット23の外部へ排出される。
【0055】
このように、この処理ユニット23は、処理液の排出経路を複数有する。このため、基板Wに供給された処理液を、種類毎に分別して回収できる。したがって、回収された処理液の廃棄や再生処理も、各処理液の性質に応じて別々に行うことができる。
【0056】
撮像部80は、処理液による処理中の基板Wの周縁部を撮影する機構である。図2および図3に示すように、撮像部80は、第1ミラー81、ハーフミラー82、照明部83、およびカメラ84を有する。
【0057】
第1ミラー81は、チャンバ30の内部に位置する。第1ミラー81は、保持部40に保持された基板Wの周縁部の鉛直上方に配置される。また、第1ミラー81は、窓部33と同じ高さに配置される。第1ミラー81は、基板Wの周縁部から鉛直上方へ進む光を、窓部33へ向けて水平方向に反射するように、鉛直方向および水平方向に対して略45°の角度で配置されている。
【0058】
第1ミラー81は、チャンバ30内の処理空間31に配置される。このため、反射面に銀、アルミニウム、鉄、胴などの金属を用いたミラーを第1ミラー81として使用すると、金属のパーティクルにより基板Wが汚染されるおそれがある。そこで、第1ミラー81には、例えばシリコンウェハを使用するとよい。シリコンウェハは、鏡面を有するため、反射鏡として使用できる。また、第1ミラー81にシリコンウェハを使用すれば、第1ミラー81に起因するパーティクルの発生を抑制できる。
【0059】
ハーフミラー82は、チャンバ30の外部に位置する。ハーフミラー82は、窓部33の外側に近接した位置に配置される。第1ミラー81、窓部33、およびハーフミラー82は、水平方向に沿って一直線に並ぶ。ハーフミラー82は、第1ミラー81とハーフミラー82とを結ぶ光路L0を、2つの光路L1,L2に分岐する。
【0060】
照明部83は、チャンバ30の外部に位置する。照明部83は、ハーフミラー82により分岐される2つの光路L1,L2のうちの一方の光路L1に配置される。照明部83は、基板Wの周縁部に撮影のための照明光を照射する装置である。照明部83は、LED等の光源を有する。カメラ84による撮影時には、照明部83の光源が発光する。これにより、照明部83から、ハーフミラー82へ向けて、照明光が照射される。照明光は、ハーフミラー82により反射し、窓部33を透過して、チャンバ30の内部へ入射する。また、チャンバ30の内部において、照明光は、第1ミラー81により反射されて、保持部40に保持された基板Wの周縁部に照射される。
【0061】
カメラ84は、チャンバ30の外部に位置する。カメラ84は、ハーフミラー82により分岐される2つの光路L1,L2のうちの他方の光路L2に配置される。カメラ84は、CCDやCMOS等の撮像素子を有する。ノズルヘッド612から基板Wの表面に処理液を吐出する動作を行うときには、照明部83から照明光を照射しつつ、カメラ84による撮影を行う。基板Wの上面の周縁部において反射した照明光は、第1ミラー81において反射し、窓部33およびハーフミラー82を透過して、カメラ84へ入射する。これにより、カメラ84は、基板Wの周縁部の画像を、撮影データDとして取得できる。取得された撮影データDは、カメラ84から制御部90へ出力される。
【0062】
カメラ84には、例えば、イベントベースカメラが使用される。一般的な動画撮影用のカメラ(フレームベースカメラ)は、多数の画素の輝度値の情報をもつフレーム画像が、時系列に配列された撮影データを出力する。これに対し、イベントベースカメラは、輝度値が変化した画素のみの情報で構成される撮影データD(イベントデータ)を出力する。このため、イベントベースカメラから出力される撮影データDの情報量は、フレームベースカメラから出力される撮影データの情報量よりも、小さい。このため、イベントベースカメラを使用すれば、フレームベースカメラを使用する場合よりも、撮影データDの取得および転送を、高速に行うことができる。また、イベントベースカメラは、フレームベースカメラにおけるフレーム画像の間隔よりも短い時間間隔で(例えば、数μ秒毎に)、撮影データDを取得することができる。それゆえ、イベントベースカメラを使用すれば、基板Wの周縁部の高速な動きを撮影できる。
【0063】
上記の通り、ハーフミラー82、照明部83、およびカメラ84は、チャンバ30の外側に配置される。すなわち、ハーフミラー82、照明部83,およびカメラ84は、基板Wが配置される単一の閉空間である処理空間31の外側に配置される。このようにすれば、ハーフミラー82、照明部83,およびカメラ84が、処理液の影響により腐食することを防止できる。また、ハーフミラー82、照明部83、およびカメラ84から生じるパーティクルが、処理空間31内の基板Wに付着することを防止できる。
【0064】
ハーフミラー82、照明部83,およびカメラ84は、第2搬送路221に配置してもよいし、処理ブロック20の外側に配置してもよい。ただし、ハーフミラー82、照明部83,およびカメラ84を、第2搬送路221に配置すれば、処理ブロック20の外壁の内側に撮像部80を全て収納できる。したがって、基板処理装置1のフットプリントを低減できる。
【0065】
制御部90は、処理ユニット23の上記各部を制御する情報処理装置である。図5は、処理ユニット23の制御ブロック図である。図5中に概念的に示したように、制御部90は、CPU等のプロセッサ91、RAM等のメモリ92、およびハードディスクドライブ等の記憶部93を有するコンピュータにより構成される。
【0066】
記憶部93内には、制御プログラムP1と、検査プログラムP2とが、記憶されている。制御プログラムP1は、処理ユニット23における基板Wの処理を実行するために、処理ユニット23の各部を動作制御するためのコンピュータプログラムである。検査プログラムP2は、カメラ84から得られる撮影データDに基づいて、基板Wの処理状態を監視するためのコンピュータプログラムである。
【0067】
図5に示すように、制御部90は、上述したファンフィルタユニット34、チャックピン切替機構43、スピンモータ52、ノズルモータ613、ポンプ616、バルブ617、カップ70の昇降機構、照明部83、およびカメラ84と、それぞれ有線または無線により通信可能に接続されている。また、制御部90は、液晶ディスプレイ等の表示部94とも、電気的に接続されている。制御部90は、記憶部93に記憶された制御プログラムP1および検査プログラムP2に従って、上記の各部を動作制御する。これにより、後述するステップS1~S6およびS31~S35の処理が進行する。
【0068】
<3.基板処理装置の動作>
次に、上記の処理ユニット23における基板Wの処理について、説明する。図6は、基板Wの処理手順を示すフローチャートである。
【0069】
処理ユニット23において基板Wを処理するときには、まず、第2搬送ロボット222が、処理対象となる基板Wを、チャンバ30内に搬入する(ステップS1)。チャンバ30内に搬入された基板Wは、保持部40の複数のチャックピン42により、水平に保持される。その後、回転機構50がスピンモータ52を駆動させることにより、基板Wの回転が開始される(ステップS2)。具体的には、支持軸53、スピンベース41、複数のチャックピン42、およびチャックピン42に保持された基板Wが、回転軸530を中心として回転する。
【0070】
続いて、処理液供給部60が、基板Wへの処理液の供給を行う(ステップS3)。ステップS3では、ノズルモータ613の駆動により、ノズルヘッド612が、基板Wの上面に対向する処理位置へ移動する。そして、処理位置に配置されたノズルヘッド612から、回転する基板Wの上面へ向けて、処理液が吐出される。処理液は、基板Wの上面の中央部から周縁部へ向けて広がり、基板Wの上面を覆う液膜を形成する。
【0071】
なお、ステップS3では、吐出ノズル61から処理液を吐出しつつ、吐出ノズル61を、処理位置において水平方向に揺動させてもよい。
【0072】
所定時間の処理液の供給が完了すると、処理液供給部60は、ノズルヘッド612からの処理液の吐出を停止する。そして、ノズルモータ613の駆動により、ノズルヘッド612が、処理位置から退避位置へ移動する。その後、回転機構50は、スピンモータ52の回転数を上げて、基板Wの回転を高速化する。そうすると、基板Wの上面において液膜を形成する処理液が、基板Wの外側へ振り切られる。これにより、基板Wが乾燥する(ステップS4)。
【0073】
基板Wの乾燥処理が終了すると、回転機構50は、スピンモータ52を停止させて、基板Wの回転を止める(ステップS5)。そして、保持部40が、複数のチャックピン42による基板Wの保持を解除する。その後、第2搬送ロボット222が、処理後の基板Wを、保持部40から取り出して、チャンバ30の外部へ搬出する(ステップS6)。
【0074】
各処理ユニット23は、順次に搬送される複数の基板Wに対して、上述のステップS1~S6の処理を、それぞれ実行する。
【0075】
<4.カバレッジブレイクの監視について>
上述したステップS3の処理では、ノズルヘッド612から基板Wの上面の中央部へ吐出された処理液が、基板Wの回転により周縁部へ広がる。このとき、基板Wの上面に形成される液膜は、基板Wの中央部から周縁部へ広がるにつれて、徐々に薄くなる。このため、ステップS3の処理の間に、基板Wの上面の周縁部において、液膜が途切れて基板Wの上面が部分的に露出する場合がある。この現象は「カバレッジブレイク」と呼ばれる。カバレッジブレイクが発生すると、基板Wの上面において、処理液による処理が不均一となる。
【0076】
そこで、制御部90は、処理液供給部60から基板Wの上面に処理液を供給しつつ、カメラ84から得られる撮影データDに基づいて、カバレッジブレイクの発生状況を監視する機能を有する。以下では、当該監視処理について、図7のフローチャートを参照しつつ、説明する。
【0077】
ステップS3において、制御部90は、まず、ノズルヘッド612からの処理液の吐出が開始されたか否かを判定する(ステップS31)。処理液の吐出が開始されていない場合には(ステップS31:No)、引き続き、ノズルヘッド612からの処理液の吐出が開始されるのを待つ。そして、処理液の供給が開始されると(ステップS31:Yes)、制御部90は、カメラ84による撮影を開始する(ステップS32)。
【0078】
カメラ84は、ハーフミラー82、窓部33、および第1ミラー81を介して、保持部40に保持された基板Wの周縁部を、撮影する。このとき、カメラ84の視野に、例えば、基板Wの外端部から半径方向において30mmの範囲が含まれるようにするとよい。カメラ84は、撮影により得られる撮影データDを、制御部90へ出力する。制御部90は、カメラ84から逐次に出力される撮影データDを取得する(ステップS33)。
【0079】
基板Wの周縁部は、高速で回転する。このため、基板Wの周縁部にカバレッジブレイクが発生した場合、その発生箇所も高速で移動する。また、カバレッジブレイクは、発生する時間自体が非常に短い場合もある。カバレッジブレイクの発生時間は、例えば、数msオーダーの短い時間である。しかしながら、カメラ84としてイベントベースカメラを使用すれば、短い時間間隔で撮影データDを取得できる。したがって、基板Wの周縁部に発生するカバレッジブレイクを適切に撮影できる。また、イベントベースカメラから出力される撮影データDは、輝度値が変化した画素のみの情報で構成される。このため、制御部90は、基板Wの処理を行いつつ、撮影データDを高速で処理することができる。
【0080】
制御部90は、カメラ84から取得した撮影データDに基づいて、カバレッジブレイクの発生状況を検査する(ステップS34)。具体的には、撮影データD中に輝度値が変化した部分がない場合、または、撮影データD中の輝度値が変化した部分が、所定の条件を満たさない場合、制御部90は、カバレッジブレイクが発生していないと判定する。また、撮影データD中に輝度値が変化した部分があり、当該部分が所定の条件を満たす場合、制御部90は、カバレッジブレイクが発生したと判定する。
【0081】
制御部90は、カバレッジブレイクが発生していないと判定した場合(ステップS34:No)、引き続き、ノズルヘッド612からの処理液の吐出を継続しつつ、ステップS33~S34の検査処理を繰り返す。
【0082】
一方、制御部90は、カバレッジブレイクが発生していると判定した場合(ステップS34:Yes)、アラームを出力する(ステップS35)。アラームの出力は、例えば、表示部94へのメッセージの表示であってもよく、あるいは、ブザーの鳴動や、ランプの点灯などであってもよい。また、制御部90は、カバレッジブレイクが発生していると判定した場合、その基板Wに対する処理を停止してもよい。
【0083】
以上のように、この基板処理装置1では、制御部90が、回転機構50および処理液供給部60を動作させて、回転する基板Wの上面に処理液を供給しつつ、基板Wの周縁部をカメラ84により撮影する。これにより、基板Wの周縁部におけるカバレッジブレイクの発生状況を撮影できる。
【0084】
カメラ84は、チャンバ30の外部に配置される。これにより、チャンバ30内の処理空間31において、カメラ84に起因するパーティクルが発生することを抑制できる。また、第1ミラー81を使用することにより、基板Wの周縁部を真上から撮影できる。このため、基板Wを斜め上方から撮影する場合よりも、基板Wの上面の広い範囲に焦点を合わせた撮影を行うことができる。また、基板Wの周縁部を真上から撮影することにより、基板Wの周縁部における複数の位置それぞれとカメラ84との距離を、均一に近づけることができる。また、照明部83から照射される照明光も、第1ミラー81を介して、基板Wの真上から照射できる。これにより、基板Wの周縁部をより明瞭に撮影できる。
【0085】
特に、本実施形態の処理ユニット23のように、チャンバ30の上部にファンフィルタユニット34が設けられている場合、チャンバ30の上部にカメラ84および照明部83を設けることは困難である。しかしながら、チャンバ30の内部に第1ミラー81を配置すれば、カメラ84および照明部83をチャンバ30の側方に配置し、第1ミラー81を介して基板Wの上面に照明光を照射しつつ、基板Wを上方から撮影できる。
【0086】
また、本実施形態の処理ユニット23のように、基板Wの周囲にカップ70が配置されている場合、基板Wの周縁部を斜め上方から撮影することは困難である。しかしながら、チャンバ30の内部に第1ミラー81を配置すれば、カメラ84および照明部83をチャンバ30の側方に配置し、第1ミラー81を介して基板Wの上面に照明光を照射しつつ、基板Wを上方から撮影できる。
【0087】
なお、カバレッジブレイクは、処理液供給部60から基板Wの上面に供給される処理液の量を増加させることにより、解消することは可能である。しかしながら、処理液を多量に使用すると、処理液にかかるコストが増加するとともに、排液による環境への負荷が大きくなる。このため、処理液供給部60からの処理液の供給量は、カバレッジブレイクが発生しない最小限の量とすることが望ましい。この点において、本実施形態の処理ユニット23は、カバレッジブレイクの発生状況を監視しつつ、処理液の供給を行う。制御部90は、カバレッジブレイクの発生状況に応じて、処理液供給部60から基板Wへの処理液の供給量を調節してもよい。これにより、基板Wの上面に適切な量の処理液を供給できる。
【0088】
<5.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。以下では、種々の変形例について、上記の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0089】
<5-1.第1変形例>
図8は、第1変形例に係る処理ユニット23の縦断面図である。図8の例では、撮像部80が第2ミラー85を有する。第2ミラー85は、チャンバ30の外部に位置する。第2ミラー85は、ハーフミラー82により分岐される2つの光路L1,L2のうちのカメラ84側の光路L2に配置される。カメラ84は、第2ミラー85、ハーフミラー82、窓部33、および第1ミラー81を介して、基板Wの周縁部を撮影する。
【0090】
このように、第2ミラー85を使用すれば、カメラ84の配置の自由度を向上させることができる。また、第2ミラー85は、チャンバ30の外部に配置されるため、反射面に銀またはアルミニウムを使用した反射率の高いミラーを使用できる。すなわち、チャンバ30の内部に配置される第1ミラー81には、パーティクルが発生しにくいシリコンウェハを使用する一方、チャンバ30の外部に配置される第2ミラー85には、反射率が高い銀またはアルミニウムのミラーを使用する。これにより、基板Wの汚染を抑制しつつ、基板Wの周縁部を明瞭に撮影できる。
【0091】
<5-2.他の変形例>
上記の実施形態では、撮像部80がハーフミラー82を有していた。ハーフミラー82を使用すれば、照明部83の光軸とカメラ84の光軸とを、一致させることができる。しかしながら、撮像部80は、必ずしもハーフミラー82を有していなくてもよい。照明部83は、カメラ84と第1ミラー81との間の光路L0から僅かにずれた位置から、照明光を照射してもよい。
【0092】
また、上記の実施形態では、第1ミラー81としてシリコンウェハを使用していた。しかしながら、第1ミラー81は、必ずしもシリコンウェハには限られない。例えば、第1ミラー81は、反射面に銀またはアルミニウムを使用した一般的な反射鏡を、透明な樹脂でモールドしたものであってもよい。
【0093】
また、上記の実施形態では、チャンバ30内に配置される第1ミラー81の数は1つであった。しかしながら、チャンバ30内に配置される第1ミラー81の数は、2つ以上であってもよい。そして、カメラ84は、複数の第1ミラー81を介して、基板Wの上面の周縁部を撮影してもよい。
【0094】
また、上記の実施形態では、カメラ84としてイベントベースカメラを使用していた。しかしながら、イベントベースカメラに代えて、フレームベースの高速度カメラを使用してもよい。
【0095】
また、上記の実施形態では、制御部90が、基板Wの周縁部において発生しやすいカバレッジブレイクを検査する例について説明した。しかしながら、制御部90は、カメラ84から出力される撮影データDに基づいて、カバレッジブレイク以外の事象を検査してもよい。
【0096】
また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、任意に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0097】
1 基板処理装置
10 インデクサブロック
20 処理ブロック
23 処理ユニット
30 チャンバ
31 処理空間
32 隔壁
33 窓部
34 ファンフィルタユニット
40 保持部
41 スピンベース
42 チャックピン
50 回転機構
60 処理液供給部
61 吐出ノズル
70 カップ
80 撮像部
81 第1ミラー
82 ハーフミラー
83 照明部
84 カメラ
85 第2ミラー
90 制御部
D 撮影データ
L0 光路
L1 光路
L2 光路
P1 制御プログラム
P2 検査プログラム
W 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8