(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134153
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】非接触電力伝送システム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/80 20160101AFI20240926BHJP
H02J 50/12 20160101ALI20240926BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240926BHJP
B60M 7/00 20060101ALI20240926BHJP
B60L 5/00 20060101ALI20240926BHJP
B60L 53/12 20190101ALI20240926BHJP
B60L 53/66 20190101ALI20240926BHJP
【FI】
H02J50/80
H02J50/12
H02J7/00 301D
B60M7/00 X
B60L5/00 B
B60L53/12
B60L53/66
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044296
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】勝谷 仁
【テーマコード(参考)】
5G503
5H105
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503AA05
5G503AA07
5G503BA01
5G503BB02
5G503CA01
5G503CA11
5G503DA07
5G503FA06
5G503GB06
5G503GB08
5G503GD04
5G503GD06
5H105BA09
5H105BB05
5H105CC04
5H105DD10
5H105EE15
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC27
5H125BC21
5H125CC06
5H125DD02
5H125EE55
(57)【要約】
【課題】受電側の独立的な通信制御及び電力制御によって適切な電力伝送を行うことができる非接触電力伝送システムを提供する。
【解決手段】非接触電力伝送システム1は、受電装置4と、制御装置17とを備える。受電装置4は、送電装置2との間にて非接触で伝送される電力を授受する。制御装置17は、送電装置2の一次側コイルと受電装置4の二次側コイルとの結合度合いが所定以上である結合区間において、結合度合いが相対的に小さい通信区間と、結合度合いが相対的に大きい電力伝送区間とを設定する。制御装置17は、二次側コイルが結合区間の最初の通信区間に存在する場合に送電装置2と受電装置4との通信により、電力伝送区間での電力伝送に関する情報を受電装置4から送電装置2に送る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電装置の送電側コイルとの間にて非接触で伝送される電力を授受する受電側コイルを有する受電装置と、
前記受電装置を制御する制御装置と
を備え、
前記制御装置は、
前記送電側コイルと前記受電側コイルとの結合度合いが所定以上である結合区間において、前記結合度合いが相対的に小さい通信区間と、前記結合度合いが相対的に大きい電力伝送区間とを設定して、
前記受電側コイルが前記結合区間の最初の前記通信区間に存在する場合に前記送電装置と前記受電装置との通信により、前記電力伝送区間での電力伝送に関する情報を前記受電装置から前記送電装置に送る
非接触電力伝送システム。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記受電側コイルの移動状態に応じて、前記通信区間での前記送電装置と前記受電装置との通信のタイミングを設定する
請求項1に記載の非接触電力伝送システム。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記電力伝送に関する前記情報が、少なくとも鍵情報及び前記電力伝送の要求周波数の情報を有するように設定し、
前記最初の前記通信区間で前記電力伝送に関する前記情報を前記受電装置から前記送電装置に送ることによって、前記送電装置に前記鍵情報の照合に応じた前記要求周波数での前記電力伝送を前記電力伝送区間で実行させる
請求項1又は請求項2に記載の非接触電力伝送システム。
【請求項4】
外部に配置される通信機との通信が前記制御装置によって制御される通信装置を備え、
前記制御装置は、
前記受電側コイルが前記結合区間に到達するより前に前記通信機と前記通信装置との通信によって前記鍵情報を取得することによって、前記送電装置を停止状態から前記電力伝送に関する前記情報の受信待機状態へと移行させるとともに、前記鍵情報の照合が完了するまでの期間に亘って前記受信待機状態を維持させる
請求項3に記載の非接触電力伝送システム。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記受信待機状態を、前記送電側コイルの短絡状態とし、
前記送電装置と前記受電装置との前記通信では、
前記受電装置の通電切替動作で前記受電側コイルに発生する磁界によって前記送電側コイルに誘起される電圧により通信する
請求項4に記載の非接触電力伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触電力伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能かつ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献する二次電池を搭載する車両での充給電に関する研究開発が行われている。
従来、非接触での電力伝送により車両の外部から車両に電力を供給する非接触電力伝送システムでは、送電側から受電側に伝送される給電信号に通信信号を重畳することによって送電側と受電側との間で通信を行うシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、二次電池を搭載する車両での充給電に関する技術においては、走行中の車両に対する非接触での電力伝送を行う場合、車両が走行路に設置された送電側コイルの通過に要する時間は0.01秒程度の極短時間である。これにより、例えば、上記従来技術等の非接触電力伝送システムでは、送電側と受電側との間の通信が確立する前に車両が送電側コイルを通り過ぎてしまう、送電側と受電側との間の通信が安定せずに電力伝送が成立しない、又は、過剰な給電が行われる等の異常が生じるおそれがある。
【0005】
本発明は、受電側の独立的な通信制御及び電力制御によって適切な電力伝送を行うことができる非接触電力伝送システムを提供することを目的とする。そして、延いてはエネルギーの効率化に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明は以下の態様を採用した。
(1):本発明の一態様に係る非接触電力伝送システム(例えば、実施形態での非接触電力伝送システム1)は、送電装置(例えば、実施形態での送電装置2)の送電側コイル(例えば、実施形態での一次側コイル8a)との間にて非接触で伝送される電力を授受する受電側コイル(例えば、実施形態での二次側コイル15a)を有する受電装置(例えば、実施形態での受電装置4)と、前記受電装置を制御する制御装置(例えば、実施形態での制御装置17)とを備え、前記制御装置は、前記送電側コイルと前記受電側コイルとの結合度合いが所定以上である結合区間において、前記結合度合いが相対的に小さい通信区間(例えば、実施形態での通信区間CS、第1通信区間CS1、第2通信区間CS2)と、前記結合度合いが相対的に大きい電力伝送区間(例えば、実施形態での電力伝送区間TS)とを設定して、前記受電側コイルが前記結合区間の最初の前記通信区間に存在する場合に前記送電装置と前記受電装置との通信により、前記電力伝送区間での電力伝送に関する情報を前記受電装置から前記送電装置に送る。
【0007】
(2):上記(1)に記載の非接触電力伝送システムでは、前記制御装置は、前記受電側コイルの移動状態に応じて、前記通信区間での前記送電装置と前記受電装置との通信のタイミングを設定してもよい。
【0008】
(3)上記(1)又は(2)に記載の非接触電力伝送システムでは、前記制御装置は、
前記電力伝送に関する前記情報が、少なくとも鍵情報及び前記電力伝送の要求周波数の情報を有するように設定し、前記最初の前記通信区間で前記電力伝送に関する前記情報を前記受電装置から前記送電装置に送ることによって、前記送電装置に前記鍵情報の照合に応じた前記要求周波数での前記電力伝送を前記電力伝送区間で実行させてもよい。
【0009】
(4):上記(3)に記載の非接触電力伝送システムは、外部に配置される通信機(例えば、実施形態での路側通信機Ma)との通信が前記制御装置によって制御される通信装置(例えば、実施形態での車載通信装置18)を備え、前記制御装置は、前記受電側コイルが前記結合区間に到達するより前に前記通信機と前記通信装置との通信によって前記鍵情報を取得することによって、前記送電装置を停止状態から前記電力伝送に関する前記情報の受信待機状態へと移行させるとともに、前記鍵情報の照合が完了するまでの期間に亘って前記受信待機状態を維持させもよい。
【0010】
(5):上記(4)に記載の非接触電力伝送システムでは、前記制御装置は、前記受信待機状態を、前記送電側コイルの短絡状態とし、前記送電装置と前記受電装置との前記通信では、前記受電装置の通電切替動作で前記受電側コイルに発生する磁界によって前記送電側コイルに誘起される電圧により通信してもよい。
【発明の効果】
【0011】
上記(1)によれば、電力伝送区間への到達に先立って電力伝送に関する情報を通信区間で受電装置から送電装置に送る制御装置を備えることにより、所望の電力及び伝送効率を確保することができる。例えば受電装置を搭載する移動体の速度が高いことで電力伝送区間を通過する時間が短くなる場合であっても、制御装置は、電力伝送区間に到達するより前に電力伝送に関する情報を送ることで、電力伝送区間での電力伝送を迅速に開始させることができる。
【0012】
上記(2)の場合、制御装置は受電装置を搭載する移動体の速度等の移動状態に応じて通信区間での通信のタイミング(周期及び回数等)を設定するので、通信区間にて適正に通信を完了させることができるとともに、過剰な回数の通信が実行されることを防ぐことで電力消費の増大を抑制することができる。
【0013】
上記(3)の場合、電力伝送の要求周波数の情報を送電装置に送る制御装置を備えることにより、所望の電力及び伝送効率を確保することができる。例えば、送電側コイルと受電側コイルとの距離に関連する車両の最低地上高及び受電装置の搭載レイアウト等に起因して結合係数が低下する場合であっても、相互インダクタンスの変動を相殺するような要求周波数によって、電力及び伝送効率の低下を抑制することができる。
【0014】
上記(4)の場合、結合区間への到達に先立って送電装置を受信待機状態に移行させる制御装置を備えることにより、通信区間での鍵情報の受信及び照合を迅速に実行させることができる。送電装置は制御装置が鍵情報を取得するより前に停止状態であることにより、待機電力の増大を抑制することができる。
【0015】
上記(5)の場合、受電装置から送電装置への電力伝送による情報の通信を送電側コイルの電圧及び電流によって検出することができる。受電側コイル及び送電側コイルによる通信を行うことにより、例えば互いに追加的な通信装置を備える場合等に比べて、システムの構成が複雑になることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態での非接触電力伝送システムの構成を示す図。
【
図2】本発明の実施形態の非接触電力伝送システムの構成の詳細を示す図。
【
図3】本発明の実施形態での非接触電力伝送システムの送電部及び受電部の構成を示す図。
【
図4】本発明の実施形態での送電装置の一次側コイルと受電装置の二次側コイルとの間の相対的な移動量と各電圧での電力伝送の出力との対応関係の例を示す図。
【
図5】本発明の実施形態での送電装置の一次側コイルと受電装置の二次側コイルとの間の相対的な移動量と電力伝送の効率との対応関係の例を示す図。
【
図6】本発明の実施形態での移動体(車両)の移動に伴う通信及び電力伝送の動作の例を示す図。
【
図7】本発明の実施形態での非接触電力伝送システムの受電側処理を示すフローチャート。
【
図8】本発明の実施形態での非接触電力伝送システムの送電側処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係る非接触電力伝送システムについて、添付図面を参照しながら説明する。
図1及び
図2は、実施形態の非接触電力伝送システム1の構成を示す図である。
図3は、実施形態での非接触電力伝送システム1の送電部8及び受電部15の構成を示す図である。
実施形態の非接触電力伝送システム1は、例えば、非接触での電力伝送により車両等の移動体の外部から移動体に電力を供給する。車両は、例えば、電気自動車、ハイブリッド車両及び燃料電池車両等の電動車両である。
【0018】
(非接触電力伝送システム)
図1及び
図2に示すように、実施形態の非接触電力伝送システム1は、例えば、車両の走行路等に設置される送電装置2と、車両等の移動体に搭載される駆動制御装置3及び受電装置4と、通信システムMとを備える。なお、実施形態の非接触電力伝送システム1は、少なくとも、移動体に搭載される構成要素(例えば、駆動制御装置3及び受電装置4)のみを備えてもよく、移動体の外部の構成要素(例えば、送電装置2及び通信システムM)と移動体に搭載される非接触電力伝送システム1との組み合わせによって非接触での電力伝送が実行されてもよい。
【0019】
通信システムMは、例えば、少なくとも1つの路側通信機Maと、通信制御装置Mbとを備える。通信システム1は、例えば有料道路でのETC(Electronic Toll Collection System)等のような電子的に料金収受を行うシステムの少なくとも一部を構成する。
【0020】
路側通信機Maは、例えば、車両の走行路等での後述する結合区間(通信区間及び電力伝送区間)の上流側に所定距離だけ離れて配置されている。路側通信機Maは、無線通信用のアンテナ等を備え、車両等の移動体に搭載される後述の車載通信装置18と無線で通信を行う。路側通信機Maは、例えば、送電装置2から車両等の移動体への電力伝送に対する課金及び決済に必要な情報を車載通信装置18から取得すると、電力伝送の開始に必要な鍵情報及び送電装置2の設置に関する情報を車載通信装置18に送信する。課金及び決済に必要な情報は、例えば、料金収受用のICカード又は車載トランスポンダ等の有無及び識別子のように、車両等の移動体に固有の情報である。鍵情報は、例えば、所定の電力伝送区間を通過する認可済みの移動体(つまり、電力伝送の実行が許可された車両等)毎に異なるように所定周期で更新されつつ生成される情報である。鍵情報は、送電装置2が車両等の移動体の後述の受電装置4を認証するために必要な情報である。送電装置2の設置に関する情報は、例えば、後述する複数の送電部8の設置間隔等の情報である。
【0021】
通信制御装置Mbは、予め対応付けられている全ての路側通信機Maの動作を制御する。通信制御装置Mbは、例えばCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサによって所定のプログラムが実行されることにより機能するソフトウェア機能部である。ソフトウェア機能部は、CPUなどのプロセッサ、プログラムを格納するROM(Read Only Memory)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)及びタイマーなどの電子回路を備えるECUである。なお、通信制御装置Mbの少なくとも一部は、LSI(Large Scale Integration)などの集積回路であってもよい。
例えば、通信制御装置Mbは、所定周期等での路側通信機Maと周辺の車両等の移動体の車載通信装置18との通信によって課金及び決済に必要な情報の取得を試みる。通信制御装置Mbは、課金及び決済に必要な情報を車載通信装置18から取得して、電子決済が可能であることを確認すると、電子決済が可能であることを示す許可情報及び電力伝送の開始に必要な鍵情報を車載通信装置18に送信する。通信制御装置Mbは、路側通信機Maから車載通信装置18に鍵情報を送信した場合には、同一の鍵情報を後述の送電側制御装置9に送信する。
【0022】
送電装置2は、例えば、電源部6と、送電電力変換部7と、送電部8と、送電側制御装置9とを備える。なお、送電装置2は、例えば、車両の走行路等での所定の結合区間に複数の少なくとも送電部8を備えてもよい。
電源部6は、例えば、商用電源等の交流電源と、交流電力を直流電力に変換するAC-DCコンバータと、電力平滑用のキャパシタとを備える。電源部6は、交流電源から供給される交流電力をAC-DCコンバータによって直流電力に変換する。
【0023】
送電電力変換部7は、例えば、直流電力を交流電力に変換するインバータを備える。送電電力変換部7のインバータは、例えば2相でブリッジ接続される複数のスイッチング素子及び整流素子によって形成されるブリッジ回路と、電圧平滑用のキャパシタとを備える。各スイッチング素子は、例えば、SiC(Silicon Carbide)のMOSFET(Metal Oxide Semi-conductor Field Effect Transistor)等のトランジスタである。複数のスイッチング素子は、各相で対を成すハイサイドアーム及びローサイドアームのトランジスタ7a,7bである。整流素子は、例えば、各トランジスタ7a,7bに並列に接続される還流ダイオードである。電圧平滑用のキャパシタ7cは、ブリッジ回路に並列に接続される。
【0024】
送電部8は、例えば、磁界共鳴又は電磁誘導等の磁界結合により、高周波の磁界の変化によって電力を送る。
図3に示すように、送電部8は、例えば、直列に接続される一次側コイル8a、一次側抵抗8b及び一次側キャパシタ8cによって形成される共振回路を備える。送電部8は、例えば、共振回路に流れる電流Itを検出する電流センサ等のセンサを備える。
【0025】
送電制御装置9は、送電装置2を統合的に制御する。送電制御装置9は、例えばCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサによって所定のプログラムが実行されることにより機能するソフトウェア機能部である。ソフトウェア機能部は、CPUなどのプロセッサ、プログラムを格納するROM(Read Only Memory)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)及びタイマーなどの電子回路を備えるECUである。なお、送電制御装置9の少なくとも一部は、LSI(Large Scale Integration)などの集積回路であってもよい。
【0026】
例えば、送電側制御装置9は、予め設定される駆動周波数又は受電装置4から受け取る要求周波数の情報に応じて、送電電力変換部7の各スイッチング素子のオン(導通)及びオフ(遮断)のスイッチングを制御することによって、車両の受電装置4への電力伝送を行う。
例えば、送電側制御装置9は、通信制御装置Mbから鍵情報を受け取ると、同一の鍵情報が路側通信機Maから移動体の車載通信装置18に送信されたことを把握して、送電装置2を停止状態から受信待機状態に移行させる。送電装置2の停止状態は、例えば、送電電力変換部7の各スイッチング素子をオフ(遮断)に維持する等のように、送電電力変換部7でのスイッチング動作を停止させる状態である。送電装置2の受信待機状態は、車両等の移動体の受電装置4からの情報送信を検出する状態である。送電装置2の受信待機状態は、例えば、送電電力変換部7の短絡状態である。
【0027】
送電側制御装置9は、送電電力変換部7の短絡状態では、各相のローサイドアームのトランジスタ7bをオンに設定することで一次側コイル8aを短絡する。これにより、二次側の受電装置4から一次側の送電装置2を見ると、一次側のインピーダンスは非常に大きな値となるが、後述するPING送信時に受電装置4の二次側コイル15aによって磁界が発生すると、送電装置2の一次側コイル8aに誘起される電圧によって受電装置4からの通信が検出される。
【0028】
例えば、送電側制御装置9は、鍵情報及び電力伝送の要求周波数等の情報を受電装置4から受け取ると、通信制御装置Mbから受け取った鍵情報と受電装置4から受け取った鍵情報との照合を行う。送電側制御装置9は、鍵情報が一致した場合、送電装置2を受信待機状態から電力伝送状態に移行させる。送電装置2の電力伝送状態は、例えば、受電装置4の要求周波数での電力伝送を行う状態である。
【0029】
図1及び
図2に示すように、車両等の移動体の駆動制御装置3は、例えば、蓄電装置11と、蓄電電圧変換部12と、電力変換部13と、回転電機14とを備える。移動体の受電装置4は、例えば、受電部15と、受電電力変換部16とを備える。駆動制御装置3及び受電装置4は、例えば、共通の制御装置17を備える。制御装置17は、例えば、車載通信装置18を備える。
なお、例えば蓄電装置11を動力源として駆動する電気自動車等の場合、駆動制御装置3は蓄電電圧変換部12を備えていなくてもよい。例えば蓄電装置11及び内燃機関を動力源として駆動するハイブリッド車両等の場合、駆動制御装置3は蓄電電圧変換部12を備えていてもよい。
【0030】
蓄電装置11は、蓄電電圧変換部12に接続される。蓄電装置11は、車両の外部の送電装置2から非接触で伝送される電力によって充電される。蓄電装置11は、蓄電電圧変換部12及び電力変換部13を介して回転電機14との間で電力を授受する。
蓄電装置11は、例えば、リチウムイオンバッテリ等のバッテリと、バッテリの電流を検出する電流センサ及びバッテリの電圧を検出する電圧センサとを備える。
なお、例えば電気自動車等において蓄電電圧変換部12を備えていない場合、蓄電装置11は、後述する電力変換部13及び受電電力変換部16に接続される。
【0031】
蓄電電圧変換部12は、電力変換部13及び受電電力変換部16に接続される。蓄電電圧変換部12は、例えば、昇圧及び降圧の双方向の電圧変換を行う電圧制御器を備える。電圧制御器は、双方向の電圧変換によって蓄電装置11の充電及び放電時に入力電力及び出力電力を変換する。蓄電電圧変換部12の電圧制御器は、例えば、1対の第1リアクトルと、第1素子モジュールと、電圧平滑用のキャパシタとを備える。
【0032】
1対の第1リアクトル12a,12aは、相互に逆極性に磁気結合されることによって複合型リアクトルを形成する。1対の第1リアクトル12a,12aは、第1素子モジュールの各相のハイサイドアームとローサイドアームとの接続点に接続される。
第1素子モジュールは、例えば2相でブリッジ接続される複数のスイッチング素子及び整流素子によって形成される第1ブリッジ回路を備える。各スイッチング素子は、例えば、SiCのMOSFET等のトランジスタである。複数のスイッチング素子は、各相で対を成すハイサイドアーム及びローサイドアームのトランジスタ12b,12cである。整流素子は、例えば、各トランジスタ12b,12cに並列に接続される還流ダイオードである。電圧平滑用のキャパシタ12dは、蓄電装置11に並列に接続される。
蓄電電圧変換部12は、直列に接続される抵抗12e及びトランジスタ12fを備える。抵抗12e及びトランジスタ12fは、第1ブリッジ回路に並列に接続される。
【0033】
電圧制御器の1対の第1リアクトル12a,12a及び第1素子モジュールは、いわゆる2相のインターリーブによって電圧変換を行う。2相のインターリーブでは、1対の第1リアクトル12a,12aに接続される2相のトランジスタ12b,12cのうちで第1の相のトランジスタ12b,12cのスイッチング制御の1周期と、第2の相のトランジスタ12b,12cのスイッチング制御の1周期とは、相互に半周期だけずらされる。
【0034】
電力変換部13は、回転電機14に接続される。電力変換部13は、例えば、直流電力と交流電力との変換を行う電力変換器を備える。電力変換器は、例えば、第2素子モジュールと、電圧平滑用のキャパシタとを備える。
第2素子モジュールは、例えば、3相でブリッジ接続される複数のスイッチング素子及び整流素子によって形成される第2ブリッジ回路を備える。各スイッチング素子は、例えば、SiCのMOSFET等のトランジスタである。複数のスイッチング素子は、各相で対を成すハイサイドアーム及びローサイドアームのトランジスタ13a,13bである。整流素子は、例えば、各トランジスタ13a,13bに並列に接続される還流ダイオードである。電圧平滑用のキャパシタ13cは、第2ブリッジ回路に並列に接続される。
【0035】
第2素子モジュールは、電力の授受によって回転電機14の動作を制御する。第2素子モジュールは、例えば回転電機14の力行時には、正極及び負極の直流端子13p,13nから入力される直流電力を3相交流電力に変換して、3相交流電力を3相の交流端子13dから回転電機14に供給する。第2素子モジュールは、回転電機14の3相のステータ巻線への通電を順次転流させることによって回転駆動力を発生させる。
第2素子モジュールは、例えば回転電機14の回生時には、回転電機14の回転に同期がとられた各相のスイッチング素子のオン(導通)及びオフ(遮断)の駆動によって、3相のステータ巻線から入力される3相交流電力を直流電力に変換する。第2素子モジュールは、3相交流電力から変換された直流電力を、蓄電電圧変換部12を介して蓄電装置11に供給することが可能である。
【0036】
回転電機14は、例えば、車両の走行駆動用に設けられる3相交流のブラシレスDCモータである。回転電機14は、界磁用の永久磁石を有する回転子と、回転子を回転させる回転磁界を発生させる3相のステータ巻線を有する固定子とを備える。3相のステータ巻線は、電力変換部13の3相の交流端子13dに接続される。
回転電機14は、電力変換部13から供給される電力により力行動作することによって回転駆動力を発生させる。回転電機14は、例えば、車両の車輪に連結可能である場合、電力変換部13から供給される電力により力行動作することによって走行駆動力を発生させる。回転電機14は、車両の車輪側から入力される回転動力により回生動作することによって発電電力を発生させてもよい。回転電機14は、車両の内燃機関に連結可能である場合、内燃機関の動力によって発電してもよい。
【0037】
受電部15は、受電電力変換部16に接続される。受電部15は、例えば、磁界共鳴又は電磁誘導などの磁界結合により、送電部8から伝えられる高周波の磁界の変化によって電力を受け取る。
図3に示すように、受電部15は、例えば、直列に接続される二次側コイル15a、二次側抵抗15b及び二次側キャパシタ15cによって形成される共振回路を備える。受電部15は、例えば、共振回路に流れる電流Irを検出する電流センサ等のセンサを備える。
【0038】
図1及び
図2に示す受電電力変換部16は、電力変換部13に接続される。受電電力変換部16は、交流電力を直流電力に変換する、いわゆるフルブリッジレス型(又はブリッジレス及びトーテムポール型)の力率改善(PFC:Power Factor Correction)回路を備える。いわゆるブリッジレスPFCは、ブリッジ接続される複数のダイオードによるブリッジ整流器を備えていないPFCであって、いわゆるトーテムポールPFCは、同方向に直列に接続(トーテムポール接続)される同一導電型の一対のスイッチング素子を備えるPFCである。
【0039】
受電電力変換部16は、例えば、2相でブリッジ接続される複数のスイッチング素子及び整流素子によって形成される第3ブリッジ回路と、電圧平滑用のキャパシタとを備える。各スイッチング素子は、例えば、SiCのMOSFET等のトランジスタである。複数のスイッチング素子は、各相で対を成すハイサイドアーム及びローサイドアームのトランジスタ16a,16bである。整流素子は、例えば、各トランジスタ16a,16bに並列に接続される還流ダイオードである。電圧平滑用のキャパシタ16cは、第3ブリッジ回路に並列に接続される。
【0040】
例えば、受電部15及び受電電力変換部16を備える受電装置4は、送電装置2による電力伝送の周波数の情報に応じて、受電電力変換部16の各スイッチング素子のオン(導通)及びオフ(遮断)のスイッチングを制御することによって、送電装置2から伝送される電力を受け取る。
【0041】
制御装置17は、例えば、車両等の移動体の駆動制御装置3、受電装置4及び車載通信装置18を統合的に制御する。制御装置17は、例えばCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサによって所定のプログラムが実行されることにより機能するソフトウェア機能部である。ソフトウェア機能部は、CPUなどのプロセッサ、プログラムを格納するROM(Read Only Memory)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)及びタイマーなどの電子回路を備えるECUである。なお、制御装置17の少なくとも一部は、LSI(Large Scale Integration)などの集積回路であってもよい。
【0042】
制御装置17は、例えば、各スイッチング素子をオン(導通)及びオフ(遮断)に駆動するタイミングを示す制御信号を生成するとともに、制御信号に基づいて各スイッチング素子を実際にオン及びオフに駆動するためのゲート信号を生成する。
例えば、制御装置17は、受電装置4の各スイッチング素子のスイッチングを制御することによって、送電装置2から受け取る交流電力を直流電力に整流しつつ、入力電圧及び入力電流の力率改善を行う。
【0043】
例えば、制御装置17は、受電装置4の複数のスイッチング素子を同期的にオン及びオフに駆動する同期整流動作と、二次側コイル15aを短絡する短絡動作とによって、目標出力に応じた出力を制御する。
例えば、制御装置17は、送電装置2から送られる電力によって受電部15に発生する電流、つまり二次側コイル15aに流れる電流Irの大きさ及び位相に応じて同期整流動作を制御する。制御装置17は、受電電力変換部16の複数のスイッチング素子を、いわゆるゼロ電圧スイッチング(ZVS:Zero Voltage Switching)のソフトスイッチングで制御する。ゼロ電圧スイッチング(ZVS)では、各スイッチング素子は、各相のデッドタイム期間のオフ状態での出力容量(寄生容量)の放電によって両端電圧がゼロにされてからターンオン(オフ状態からオン状態への切り換え)が実行される。
例えば、制御装置17は、受電電力変換部16の各相のハイサイドアームでゼロ電圧スイッチング(ZVS)の同期整流動作を継続させつつ、各相のローサイドアームのみオンにすることで短絡動作を制御する。
【0044】
例えば、制御装置17は、送電装置2の付近で送電装置2の一次側コイル8aと受電装置4の二次側コイル15aとの結合度合いが所定以上である結合区間において、通信のための通信区間と電力伝送のための電力伝送区間とを設定する。制御装置17は、例えば、結合区間に到達するより前に路側通信機Maと車載通信装置18との通信によって鍵情報を受け取ると、電力伝送区間での送電装置2による電力伝送の開始に先立って、電力伝送区間での電力伝送に関する情報を通信区間にて受電装置4から送電装置2に送る。
図4は、実施形態での送電装置2の一次側コイル8aと受電装置4の二次側コイル15aとの間の相対的な移動量と各電圧V1,V2,V3での電力伝送の出力との対応関係の例を示す図である。
図5は、実施形態での送電装置2の一次側コイル8aと受電装置4の二次側コイル15aとの間の相対的な移動量と電力伝送の効率との対応関係の例を示す図である。
図6は、実施形態での移動体(例えば、車両V)の移動に伴う通信及び電力伝送の動作の例を示す図である。
【0045】
図4及び
図5に示すように、一次側コイル8aと二次側コイル15aとの相対的な移動量がゼロから増大することに伴い、電力伝送の出力及び効率は低下傾向に変化する。なお、移動量がゼロの状態は、例えば、一次側コイル8a及び二次側コイル15aの互いの中心軸線が同一となる状態等である。制御装置17は、例えば、一次側コイル8aと二次側コイル15aとの結合度合いが所定以上である結合区間を、電力伝送の効率が所定値(ゼロ等)以上である区間とする。制御装置17は、結合区間において、電力伝送の効率が第1所定値Ea(例えば、80%等)以上であって、一次側コイル8aと二次側コイル15aとの相対的な移動量が第1所定値Eaに対応する第1移動量Xa以下である区間を、一次側コイル8aと二次側コイル15aとの結合度合いが相対的に大きい電力伝送区間TSとする。制御装置17は、結合区間において、電力伝送の効率が第1所定値Ea未満及び第2所定値Eb(例えば、0%等)以上であって、一次側コイル8aと二次側コイル15aとの相対的な移動量が、第1移動量Xaよりも大きく、第2所定値Ebに対応する第2移動量Xb以下である区間を、一次側コイル8aと二次側コイル15aとの結合度合いが相対的に小さい通信区間CSとする。
【0046】
制御装置17は、例えば、一次側コイル8aが結合区間の最初の通信区間CSに存在する場合に送電装置2と受電装置4との通信により、電力伝送区間TSでの電力伝送に関する情報を受電装置4から送電装置2に送る。
例えば
図6に示すように、制御装置17は、移動体(例えば、車両V)の移動方向に沿って、電力伝送区間TSの前後に第1通信区間CS1及び第2通信区間CS2を設定する場合、最初の通信区間CSである第1通信区間CS1において電力伝送に関する情報を受電装置4から送電装置2に送る。電力伝送に関する情報は、例えば、路側通信機Maから取得した鍵情報、電力伝送の要求周波数、フェイルセーフのための目標出力(消費電力)及び各種異常に関する情報等である。
電力伝送の要求周波数は、例えば、一次側コイル8aと二次側コイル15aとの間の距離に関連する移動体の最低地上高及び移動体での受電装置4の搭載レイアウト等に基づいて、電力伝送の効率及び出力(電力)の低下を抑制するように設定される。制御装置17は、送電装置2と受電装置4との間の電力伝送の状態に応じて要求周波数を設定してもよい。
なお、制御装置17は、例えば、一次側コイル8aが結合区間の最後の通信区間CS(例えば、
図6に示す第2通信区間CS2等)に存在する場合に送電装置2と受電装置4との通信により、電力伝送区間TSでの電力伝送及び通信区間CSでの通信の各々の停止を示す情報を受電装置4から送電装置2に送ってもよい。
【0047】
例えば、制御装置17は、路側通信機Maと車載通信装置18との通信によって鍵情報を受け取った場合、結合区間の通信区間CSにて、いわゆるピング(PING)信号の送信として、受信待機状態の送電装置2に対して受電装置4から電力伝送を行うことによって情報を送信する。受電装置4は、受電電力変換部16でのスイッチングによる通電切替動作で二次側コイル15aに発生する磁界によって、送電装置2の一次側コイル8aに誘起される電圧により通信する。制御装置17は、例えば、受電装置4から送電装置2に非接触で電力を伝送するための搬送波を所定のデューティー比でスイッチングすることで、いわゆるドミナント(優性)及びレセッシブ(劣性)の2レベルのデジタル信号を生成することによってPING送信を実行する。所定のデューティー比は、例えば、所定の最小から50%程度である。なお、制御装置17は、例えば、スイッチングのデューティー比を変更することによる搬送波の振幅変調によって情報を送信してもよい。
【0048】
制御装置17は、例えば数十μsから数ms程度等の所定周期でPING送信を行い、送電装置2からPING送信に対する応答信号を受信すると、電力伝送区間TSでの送電装置2からの電力伝送に対する受電制御を開始する。
制御装置17は、通信区間CSでの送電装置2と受電装置4との間の通信(つまり互いの送受信)が適正に完了するように、例えば、路側通信機Maから受け取った送電装置2の設置に関する情報と、移動体(例えば、車両V)の移動状態(つまり、受電装置4の移動状態)とに応じて、PING送信のタイミングを設定する。例えば、制御装置17は、通信区間CSにおいて少なくとも所定回(1回等)のPING送信が完了するように、複数の送電部8の設置間隔等の情報と、移動体の速度(例えば、車両Vの車速等)とに応じて、送信周期を設定する。
なお、制御装置17は、例えば、通信区間CSでのPING送信の実行を許可した場合であっても、通信区間CS以外においてはPING送信の実行を停止する待機状態に移行する。制御装置17は、例えば、PING送信の待機状態では、移動体の移動に伴って、次の結合区間の最初の通信区間CSに到達する直前からPING送信の実行を開始してもよい。
【0049】
以下、非接触電力伝送システム1の動作として、送電側制御装置9及び制御装置17が実行する処理について説明する。
図7は、実施形態での非接触電力伝送システム1の制御装置17が実行する受電側処理を示すフローチャートである。
先ず、
図7に示すステップS01にて制御装置17は、路側通信機Maと車載通信装置18との無線通信による情報の送受信(課金通信)によって、送電装置2から移動体への電力伝送に対する電子決済が可能であるか否かを判定する。この判定結果が「NO」の場合、制御装置17はステップS01の処理を繰り返す。一方、この判定結果が「YES」の場合、制御装置17は処理をステップS02に進める。
【0050】
そして、ステップS02にて制御装置17は、路側通信機Maから電力伝送の開始に必要な鍵情報を取得する。
次に、ステップS03にて制御装置17は、受電装置4から送電装置2への電力伝送によるPING送信のための信号を生成する。
次に、ステップS04にて制御装置17は、結合区間の最初の通信区間CSにて所定周期でPING送信を実行する。
次に、ステップS05にて制御装置17は、PING送信に対する送電装置2からの応答信号を受信したか否かを判定する。この判定結果が「NO」の場合、制御装置17はステップS05の処理を繰り返す。一方、この判定結果が「YES」の場合、制御装置17は処理をステップS06に進める。
そして、ステップS06にて制御装置17は、電力伝送区間TSでの送電装置2からの電力伝送に対する受電制御を開始する。そして、制御装置17は、処理をエンドに進める。
【0051】
図8は、実施形態での非接触電力伝送システム1の送電側制御装置9が実行する送電側処理を示すフローチャートである。
先ず、
図8に示すステップS11にて送電側制御装置9は、路側通信機Maから受電装置4に鍵情報が送信されたか否かを判定する。この判定結果が「NO」の場合、送電側制御装置9は処理をステップS12に進める。一方、この判定結果が「YES」の場合、送電側制御装置9は処理をステップS13に進める。
そして、ステップS12にて送電側制御装置9は、送電装置2の停止状態を維持し、処理をステップS11に戻す。
そして、ステップS13にて送電側制御装置9は、送電装置2を停止状態から受信待機状態に移行させる。
【0052】
次に、ステップS14にて送電側制御装置9は、結合区間の最初の通信区間CSにて受電装置4から送電装置2への電力伝送によるPING信号を受信したか否かを判定する。この判定結果が「NO」の場合、送電側制御装置9はステップS14の処理を繰り返す。一方、この判定結果が「YES」の場合、送電側制御装置9は処理をステップS15に進める。
次に、ステップS15にて送電側制御装置9は、通信制御装置Mbから受け取った鍵情報と受電装置4から受け取った鍵情報との照合を行う。
【0053】
次に、ステップS16にて送電側制御装置9は、通信制御装置Mbから受け取った鍵情報と受電装置4から受け取った鍵情報とが一致したか否かを判定する。この判定結果が「NO」の場合、送電側制御装置9は処理をエンドに進める。一方、この判定結果が「YES」の場合、送電側制御装置9は処理をステップS17に進める。
次に、ステップS17にて送電側制御装置9は、通信区間CSでの送電装置2から受電装置4への電力伝送によってPING送信に対する応答信号を受電装置4に送信する。
次に、ステップS18にて送電側制御装置9は、受電装置4から受け取った要求周波数での受電装置4への電力伝送に対する送電制御を電力伝送区間TSにて開始する。そして、制御装置17は、処理をエンドに進める。
【0054】
上述したように、実施形態の非接触電力伝送システム1によれば、電力伝送区間TSへの到達に先立って電力伝送に関する情報を通信区間CSで受電装置4から送電装置2に送る制御装置17を備えることにより、所望の電力及び伝送効率を確保することができる。例えば受電装置4を搭載する移動体の速度が高いことで電力伝送区間TSを通過する時間が短くなる場合であっても、制御装置17は、電力伝送区間TSに到達するより前に電力伝送に関する情報を送ることで、電力伝送区間TSでの電力伝送を迅速に開始させることができる。
制御装置17は受電装置4を搭載する移動体の速度等の移動状態に応じて通信区間CSでの通信のタイミング(例えば、周期及び回数等)を設定するので、通信区間CSにて適正に通信を完了させることができるとともに、過剰な回数の通信が実行されることを防ぐことで電力消費の増大を抑制することができる。
【0055】
電力伝送の要求周波数の情報を送電装置2に送る制御装置17を備えることにより、所望の電力及び伝送効率を確保することができる。例えば、送電装置2の一次側コイル8aと受電装置4の二次側コイル15aとの距離に関連する車両の最低地上高及び受電装置4の搭載レイアウト等に起因して結合係数が低下する場合であっても、相互インダクタンスの変動を相殺するような要求周波数によって、伝送電力及び伝送効率の低下を抑制することができる。
【0056】
結合区間への到達に先立って送電装置2を受信待機状態に移行させる制御装置17及び送信側制御装置9を備えることにより、通信区間CSでの鍵情報の受信及び照合を迅速に実行させることができる。送電装置2は制御装置17が鍵情報を取得するより前に停止状態であることにより、待機電力の増大を抑制することができる。
送電装置2の受信待機状態は、送電電力変換部7により一次側コイル8aを短絡させる状態であるので、受電装置4から送電装置2への磁界を介した情報の通信を一次側コイル8aに誘起される電圧によって容易に検出することができる。
【0057】
(変形例)
以下、実施形態の変形例について説明する。なお、上述した実施形態と同一部分については、同一符号を付して説明を省略又は簡略化する。
上述した実施形態では、制御装置17は、通信区間CSにおいて少なくとも1回のPING送信が完了するように送信周期を設定するとしたが、これに限定されない。例えば、制御装置17は、所定の上限回数以下のPING送信が完了するように、複数の送電部8の設置間隔等の情報と、移動体の速度(例えば、車両Vの車速等)とに応じて、送信周期を設定してもよい。制御装置17は、通信区間CSでのPING送信の回数を規制することによって、電力消費の増大を抑制することができる。
【0058】
上述した実施形態では、通信システムMは、電子的な料金収受システムを構成するとしたが、これに限定されない。例えば、通信システムMは、単に、所定の結合区間での通信及び電力伝送に先立って、車載通信装置18と通信を行うシステムであってもよい。
【0059】
上述した実施形態では、送電装置2と受電装置4との間の電力伝送によって鍵情報及び要求周波数等の情報の送受信を行うとしたが、これに限定されない。例えば、送電装置2及び受電装置4の各々は相互に無線通信を行う通信機を備え、相互の通信機を介して鍵情報及び要求周波数等の情報の送受信を行ってもよい。
【0060】
上述した実施形態では、非接触電力伝送システム1は、蓄電装置11の入出力電力を変換する蓄電電圧変換部12を備えるとしたが、これに限定されず、蓄電電圧変換部12は省略されてもよい。
例えば、蓄電装置11及び内燃機関を動力源として駆動するハイブリッド車両等の場合、駆動制御装置3は蓄電電圧変換部12を備え、蓄電装置11を動力源として駆動する電気自動車等の場合、駆動制御装置3は蓄電電圧変換部12を備えていなくてもよい。
【0061】
本発明の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0062】
1…非接触電力伝送システム、2…送電装置、3…駆動制御装置、4…受電装置、6…電源部、7…送電電力変換部、8…送電部、8a…一次側コイル(送電側コイル)、9…送電側制御装置、11…蓄電装置、12…蓄電電圧変換部、13…電力変換部、14…回転電機、15…受電部、15a…二次側コイル(受電側コイル)、16…受電電力変換部(電力変換部)、17…制御装置、18…車載通信装置、CS…通信区間、CS1…第1通信区間、CS2…第2通信区間、TS…電力伝送区間、M…通信システム、Ma…路側通信機(通信機)、Mb…通信制御装置。