(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134159
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】環境配慮型建物
(51)【国際特許分類】
E04H 1/02 20060101AFI20240926BHJP
E04D 13/18 20180101ALI20240926BHJP
E04F 10/08 20060101ALI20240926BHJP
H02S 20/30 20140101ALI20240926BHJP
H02S 20/32 20140101ALI20240926BHJP
B01J 35/39 20240101ALI20240926BHJP
【FI】
E04H1/02
E04D13/18 ETD
E04F10/08
H02S20/30 A
H02S20/32
B01J35/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044308
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】松原 悟志
【テーマコード(参考)】
2E025
2E105
2E108
4G169
【Fターム(参考)】
2E025AA01
2E025AA15
2E105BB01
2E105FF13
2E108KK01
2E108LL01
2E108MM00
2E108NN07
4G169AA03
4G169BA48A
4G169CC33
4G169DA05
4G169EA11
4G169HA01
4G169HE09
4G169HF02
(57)【要約】
【課題】屋根勾配に左右されることなく、狭小敷地においても自然エネルギーを有効利用することのできる、環境配慮型建物を提供すること。
【解決手段】建物の屋根10のうち、軒先とならない部位13,15にパラペット20が設けられており、屋根面11に環境対応型の第1パネル30が設置され、パラペット20の天端面22に環境対応型の第2パネル60が設置されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の屋根のうち、軒先とならない部位にパラペットが設けられており、
屋根面に、環境対応型の第1パネルが設置され、
前記パラペットの天端面に、環境対応型の第2パネルが設置されていることを特徴とする、環境配慮型建物。
【請求項2】
前記パラペットの天端面に、該天端面に対する傾斜角が0度の前記第2パネルが設置されていることを特徴とする、請求項1に記載の環境配慮型建物。
【請求項3】
前記パラペットの天端面に、湾曲面を有する前記第2パネルが設置されていることを特徴とする、請求項1に記載の環境配慮型建物。
【請求項4】
前記湾曲面の立ち上がり角度が35度乃至45度の範囲に設定されていることを特徴とする、請求項3に記載の環境配慮型建物。
【請求項5】
前記パラペットの側面に、環境対応型の第3パネルが設置されていることを特徴とする、請求項1に記載の環境配慮型建物。
【請求項6】
前記建物の外壁の壁面に、環境対応型の第4パネルが設置されていることを特徴とする、請求項1に記載の環境配慮型建物。
【請求項7】
前記第1パネルが、太陽光パネル、光触媒パネル、日射遮蔽用ルーバーのいずれか一種もしくは複数であり、
前記第2パネルが、太陽光パネル、光触媒パネルのいずれか一種もしくは複数であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の環境配慮型建物。
【請求項8】
少なくとも前記第3パネルと前記第4パネルが、設置面に対して角度調整治具を介して設置されていることを特徴とする、請求項5又は6に記載の環境配慮型建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境配慮型建物に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、大気汚染や地球温暖化等の環境間題が提起されており、建築分野においても、環境を配慮した、持続可能な自然エネルギー共存型の建物、すなわち、環境配慮型建物の設計や施工が模索されている。環境配慮型建物では、熱や日射を上手くコントロールし、太陽光をはじめとする自然エネルギーを利用することにより、化石エネルギーの使用量を低減しながら快適な室内環境を維持することが可能になる。
【0003】
一般に普及している環境配慮型建物としては、屋根面に太陽光パネルが設置されている建物が挙げられるが、例えば都市部の狭小地にある建物では、太陽光パネルの設置角度が屋根面の勾配(屋根勾配)に左右されることと相俟って、敷地条件や日射条件によっては太陽光パネルの搭載面を確保できない場合が往々にして生じ得る。
【0004】
以上のことから、屋根勾配に左右されることなく、狭小敷地においても自然エネルギーを有効利用することのできる、環境配慮型建物が望まれる。
【0005】
ここで、特許文献1には、屋根面に設置された太陽光パネルから電力を得るとともに、冷暖房による電力消費が抑制されている環境に配慮した建物が提案されている。具体的には、主屋根が、屋根棟を挟んで南側に配置される南側屋根面と、北側に配置される北側屋根面とを有し、主屋根を平面視した際に屋根棟が北側にずれており、南側屋根面の屋根勾配が北側屋根面の屋根勾配よりも小さく、北側屋根面よりも面積の大きな南側屋根面に太陽光パネルが設置されている。南側屋根面の下方の最上階部分には、最上階部分の床部が下階部分の床部よりも南側にはね出したはね出し部があり、南側屋根面は、はね出し部に支持されて最上階部分から南側に軒を張り出させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の環境に配慮した建物は、屋根棟を挟んだ南側と北側の屋根面の勾配を変化させて南側の屋根面の面積を相対的に広くすることのみならず、南側屋根面の下方の最上階部分の床部を下階部分の床部よりも南側にはね出させることから、建物の外壁構造の変化を必須としており、建物全体として特殊な構造が余儀なくされる。また、この構造を適用した場合でも、上記する課題、すなわち、屋根勾配に左右されることなく、狭小敷地においても自然エネルギーを有効利用することを保証するものではない。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、屋根勾配に左右されることなく、狭小敷地においても自然エネルギーを有効利用することのできる、環境配慮型建物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成すべく、本発明による環境配慮型建物の一態様は、
建物の屋根のうち、軒先とならない部位にパラペットが設けられており、
屋根面に、環境対応型の第1パネルが設置され、
前記パラペットの天端面に、環境対応型の第2パネルが設置されていることを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、建物の屋根の屋根面に環境対応型の第1パネルが設置されていることに加えて、屋根の軒先とならない部位に設けられているパラペットの天端面に、環境対応型の第2パネルが設置されていることから、屋根面の勾配に左右されない第2パネルが第1パネルに付加されることにより、狭小敷地においても自然エネルギーを有効利用することが可能になる。屋根の軒先は、雨水等を屋外へ導く部位となることから、ここにパラペットを設けないことにより雨水の排水性は阻害されない。
【0011】
ここで、「環境対応型のパネル」には、太陽光パネルや光触媒パネル等、自然エネルギーを取り込んでエネルギーを創出できる様々な形態のパネルが含まれる。
【0012】
本態様を適用することにより、狭小敷地にある建物であっても、PPA(Power Purchase Agreement(電力販売契約))を適用するのに有利となり、環境配慮型建物のより広範な普及に寄与できる。
【0013】
また、本発明による環境配慮型建物の他の態様は、
前記パラペットの天端面に、該天端面に対する傾斜角が0度の前記第2パネルが設置されていることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、パラペットの天端面に傾斜角が0度(天端面と平行)の第2パネルが設置されていることにより、パラペットの天端面から第2パネルが大きく張り出すことなく、自然エネルギーを取り込むことができる。
【0015】
また、本発明による環境配慮型建物の他の態様は、
前記パラペットの天端面に、湾曲面を有する前記第2パネルが設置されていることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、パラペットの天端面に湾曲面を有する第2パネルが設置されていることにより、太陽の1日の動きによる方向や高度(仰角)の変化、季節に応じた太陽のこれらの変化に対応して、太陽光を効率的に取り込むことができる。
【0017】
また、本発明による環境配慮型建物の他の態様は、
前記湾曲面の立ち上がり角度が35度乃至45度の範囲に設定されていることを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、第2パネルの湾曲面の立ち上がり角度が35度乃至45度の範囲に設定されていることにより、年間を通して最大の日射量を取り込むことができる。本発明者等によれば、季節によって最大日射量を取り込むことができる最適傾斜角度が変化することが特定されている。そこで、季節ごとの最適傾斜角度を特定し、その年平均を求めた結果、40度程度の立ち上がり角度が望ましいことが特定されており、この特定結果を踏まえ、立ち上がり角度の最適範囲を35度乃至45度の範囲としている。
【0019】
また、本発明による環境配慮型建物の他の態様は、
前記パラペットの側面に、環境対応型の第3パネルが設置されていることを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、建物の屋根の屋根面に環境対応型の第1パネルが設置されていることに加えて、屋根の軒先とならない部位に設けられているパラペット天端面に環境対応型の第2パネルが設置され、さらに、パラペットの側面に環境対応型の第3パネルが設置されていることから、屋根面の勾配に左右されない第2パネルと第3パネルが第1パネルに付加されることにより、狭小敷地においても自然エネルギーを有効利用することが可能になる。
【0021】
また、本発明による環境配慮型建物の他の態様は、
前記建物の外壁の壁面に、環境対応型の第4パネルが設置されていることを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、建物の屋根の屋根面に環境対応型の第1パネルが設置されていることに加えて、屋根の軒先とならない部位に設けられているパラペット天端面に環境対応型の第2パネルが設置され、さらに、建物の外壁の壁面に環境対応型の第4パネルが設置されていることから、屋根面の勾配に左右されない第2パネルと第4パネルが第1パネルに付加されることにより、狭小敷地においても自然エネルギーを有効利用することが可能になる。
【0023】
また、本発明による環境配慮型建物の他の態様は、
前記第1パネルが、太陽光パネル、光触媒パネル、日射遮蔽用ルーバーのいずれか一種もしくは複数であり、
前記第2パネルが、太陽光パネル、光触媒パネルのいずれか一種もしくは複数であることを特徴とする。
【0024】
本態様によれば、第1パネルが、太陽光パネル、光触媒パネル、日射遮蔽用ルーバーのいずれか一種もしくは複数であり、第2パネルが、太陽光パネル、光触媒パネルのいずれか一種もしくは複数であることにより、既に普及している各種パネルを用いて、可及的安価に自然エネルギーの有効利用が可能な建物を実現できる。
【0025】
ここで、「太陽光パネル、光触媒パネル、日射遮蔽用ルーバーのいずれか一種もしくは複数」とは、太陽光パネルのみが設置されている形態、光触媒パネルのみが設置されている形態、日射遮蔽用ルーバーのみが設置されている形態の他、太陽光パネル、光触媒パネル、日射遮蔽用ルーバーのうちの2種もしくは全種が併設されている形態を含んでいる。
【0026】
また、本発明による環境配慮型建物の他の態様は、
少なくとも前記第3パネルと前記第4パネルが、設置面に対して角度調整治具を介して設置されていることを特徴とする。
【0027】
本態様によれば、少なくとも第3パネルと第4パネルが設置面に対して角度調整治具を介して設置されていることにより、縦方向に立設するパラペットや外壁の設置面に対して、第3パネルと第4パネルを所望の傾斜角度をもって設置することができる。角度調整治具には、パネルの角度を手動調整する形態と、自動調整する形態が含まれる。ここで、「少なくとも第3パネルと第4パネル」とは、第3パネルと第4パネルが角度調整治具を介して設置面に設置されている形態の他に、第1パネルと第3パネルと第4パネルが角度調整治具を介して設置面に設置されている形態が含まれる。第1パネルが角度調整治具を介して屋根面に設置されることにより、第1パネルを屋根勾配に左右されることなく所望の角度で設置することが可能になる。
【0028】
ここで、各パネルが設置される屋根には、片流れ屋根や切妻屋根、陸屋根等が含まれる。例えば、平面視矩形の片流れ屋根においては、軒先となる1辺以外の3辺が棟とケラバに対応することから、この3辺にパラペットが設けられ、各パラペットの天端面と内側(屋根面側)の側面にそれぞれ、複数の第2パネルと第3パネルが設置される。一方、例えば、平面視矩形の切妻屋根においては、軒先となる2辺以外の2辺がケラバに対応することから、この2辺にパラペットが設けられ、各パラペットの天端面と内側(屋根面側)の側面にそれぞれ、複数の第2パネルと第3パネルが設置される。さらに、例えば、平面視矩形の陸屋根においては、全周の4辺にパラペットが設けられ、各パラペットの天端面と内側(屋根面側)の側面にそれぞれ、複数の第2パネルと第3パネルが設置される。
【発明の効果】
【0029】
以上の説明から理解できるように、本発明の環境配慮型建物によれば、屋根勾配に左右されることなく、狭小敷地においても自然エネルギーを有効利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】実施形態に係る環境配慮型建物の一例の斜視図である。
【
図2】屋根面に設置されている第1パネルの一例の側面図である。
【
図3】屋根面に設置されている第1パネルの他の例の側面図である。
【
図4】パラペットの天端面に設置されている第2パネルの一例を示す図である。
【
図5】パラペットの天端面に設置されている第2パネルの他の例を示す図である。
【
図6】パラペットの側面に設置されている第3パネルの一例を示す図である。
【
図8】実施形態に係る環境配慮型建物の他の例の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、実施形態に係る環境配慮型建物の一例について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0032】
[実施形態に係る環境配慮型建物]
図1乃至
図9を参照して、実施形態に係る環境配慮型建物の一例について説明する。ここで、
図1は、実施形態に係る環境配慮型建物の一例の斜視図であり、
図2と
図3はいずれも、屋根面に設置されている第1パネルの一例の側面図である。また、
図4と
図5はいずれも、パラペットの天端面に設置されている第2パネルの一例を示す図である。また、
図6は、ラペットの側面に設置されている第3パネルの一例を示す図であり、
図7は、
図6のVII部の拡大図である。さらに、
図8は、実施形態に係る環境配慮型建物の他の例の縦断面図であり、
図9は、
図8のIX部の拡大図である。
【0033】
環境配慮型建物100は、平面視矩形の片流れ屋根10を備えている2階建ての建物(戸建て住宅)である。図示例は、建物のファサードが北側に面しており、北側の棟15から南側の軒先12に向かって下り勾配の屋根面11を備えている。
【0034】
平面視における片流れ屋根10の4つの端辺のうち、軒先12に対応する端辺以外の3つの端辺は、棟15に対応する端辺と、2つのケラバ13に対応する端辺であり、これら3つの端辺はいずれも「軒先とならない部位」である。
【0035】
そして、3つの軒先とならない部位13,15には、鉛直方向に延びるパラペット20が設けられている。ここで、
図1において、屋根面11やパラペット20の側面に設置されている各種パネルの図示は省略している。
【0036】
図2に示すように、屋根面11には、固定治具40を介して環境対応型の第1パネル30が設置されており、複数の第1パネル30が併設されている。また、図示例は、太陽光パネル30の角度調整が行われない形態であり、従って太陽光パネル30の角度は屋根面11の勾配に依存している。
【0037】
図示例の第1パネル30は太陽光パネルである。太陽光パネル30はソーラーパネルとも称され、例えばアルミ枠に嵌め込まれた2枚のガラスの間に結晶シリコンモジュールや薄膜モジュール等が挟み込まれており、光エネルギー(光子)を用いて光起電力効果にて電気を発生させる。
【0038】
ここで、環境対応型の第1パネル30は、太陽光パネルの他にも、光触媒パネルや日射遮蔽用ルーバー等であってもよい。
【0039】
光触媒パネルは、例えば水分解光触媒シートを備えた光触媒パネル反応器であり、水素・酸素ガス分離モジュールが連結されることにより、ソーラー水素製造システムが形成され、太陽光下において水を水素と酸素に分解し、生成した水素と酸素の混合気体から高純度のソーラー水素が分離される。
【0040】
一方、日射遮蔽用ルーバーは、複数本の細長板状のルーバーを例えば角度調整自在に備え、屋根面への太陽光の直射を抑制しながら外気を屋根面に提供することにより、屋根面の温度上昇とこれに起因する屋内の温度上昇を抑制し、空調の省エネ化を図るものである。
【0041】
図2に示す例に対して、
図3に示す例は、屋根面11に角度調整治具50が設置され、角度調整治具50に対して太陽光パネル30が設置されている形態である。
【0042】
角度調整治具50は、屋根面11に固定される固定部材51と、固定部材51に対して回動軸53を中心にX方向に回動する可動部材52とを有し、可動部材52に対して太陽光パネル30が載置されるようになっている。
【0043】
図示例の角度調整治具50は、可動部材52の角度が手動調整される形態であってもよいし、自動調整される形態であってもよい。
【0044】
角度調整治具50を介して太陽光パネル30が角度調整自在に屋根面11に設置されることにより、屋根面11の勾配に左右されることなく太陽光パネル30を所望の角度に調整することができる。例えば、角度調整治具50が自動調整される形態では、環境配慮型建物100の立設する場所の経度や緯度を勘案し、また、季節に応じた太陽の回転軌跡や南中高度等を勘案して、受光量が可及的に最大となるように角度を随時変更させることにより、より多くの電気を創出することが可能になる。
【0045】
また、図示例は、屋根面11に設置される複数の第1パネル30がいずれも太陽光パネルである形態を示しているが、太陽光パネルと光触媒パネルと日射遮蔽用ルーバーの2種以上が併設されていてもよい。例えば、下方に居室等がある屋根面11の部位には第1パネル30として日射遮蔽用ルーバーを適用し、屋根面11のその他の部位に太陽光パネル等を適用することにより、居室における温度上昇を抑制して空調の省エネ化を図りながら、太陽光を利用したエネルギー創出を図ることが可能になる。
【0046】
一方、
図4に示すように、パラペット20の笠木21の天端面22には、水平方向に延びる天端面22に対して傾斜角が0度(水平)の環境対応型の第2パネル60Aが設置されている。
【0047】
図示例の第2パネル60Aは第1パネル30と同様に太陽光パネルであるが、太陽光パネルの他にも、光触媒パネル等であってもよい。
【0048】
図4に示すように、笠木21の天端面22に対して、屋内側と屋外側の取付治具62にて第2パネル60Aを僅かに浮かせた状態で設置し、第2パネル60Aの下方の空間に端子ボックス61が配設されるスペースを確保している。
【0049】
このように、従来はエネルギー創出に全く利用されていなかったパラペット20の天端面22に第2パネル60Aを設置することにより、自然エネルギーのより一層の有効利用が可能になる。
【0050】
対して、
図5に示すように、パラペット20の笠木21の天端面22には、湾曲面を有する環境対応型の第2パネル60Bが設置されてもよい。
【0051】
図示例の第2パネル60Bは第2パネル60Aと同様に太陽光パネルであるが、太陽光パネルの他にも、光触媒パネル等であってもよい。
【0052】
ここで、湾曲面の立ち上がり角度θ1は、35度乃至45度の範囲に設定される。これは、本発明者等が札幌市において、季節ごとに日射量が最大となる立ち上がり角度の最適傾斜角を検証した結果に基づいている。この検証では、冬、春、夏、秋の最適傾斜角がそれぞれ、69度、33度、17度、49度と特定され、最適傾斜角の年平均が42度と算定されている。
【0053】
湾曲面を有する第2パネル60Bを適用することにより、太陽の1日の動きによる方向や高度(仰角)の変化、季節に応じた太陽のこれらの変化に対応して、太陽光を効率的に取り込むことが可能になる。
【0054】
一方、
図6及び
図7に示すように、パラペット20の内側(屋根面側)の側面24には、角度調整治具50を介して環境対応型の第3パネル70が設置されている。ここで、図示例の第3パネル70も太陽光パネルであるが、第3パネル70は光触媒パネルであってもよい。
【0055】
パラペット20は縦方向に立設しているが、この縦方向の設置面である側面24に対して、角度調整治具50を介して太陽光パネル70を設置することにより、太陽光パネル70を所望の傾斜角度をもって設置することができる。
【0056】
環境配慮型建物100によれば、建物の屋根10の屋根面11に環境対応型の第1パネル30が設置されていることに加えて、屋根10の軒先とならない部位13,15に設けられているパラペット20の天端面22に、環境対応型の第2パネル60が設置され、さらに、パラペット20の側面24に、環境対応型の第3パネル70が設置さていることから、屋根面11の勾配に左右されない第2パネル60と第3パネル70が第1パネル30に付加されることにより、狭小敷地においても自然エネルギーを有効利用することが可能になる。また、屋根面11に対して角度調整治具50を介して第1パネル30が設置されている形態では、第1パネル30と第3パネル70の双方を屋根面11の勾配に左右されない態様で設置することが可能になる。
【0057】
また、
図8と
図9に示す環境配慮型建物100Aは、相互に勾配の異なる屋根面11A、11Bを有する片流れ屋根10Bを備えている建物である。
【0058】
各屋根面11A,11Bには、固定治具40を介して複数の第1パネル30が設置されている。ここで、図示例の第1パネル30は太陽光パネルであるが、光触媒パネルや日射遮蔽用ルーバー等であってもよい。また、固定治具40に代わり、パラペット20に設置されている角度調整治具50が屋根面11にも設置され、角度調整治具50に対して第1パネル30が設置されてもよい。
【0059】
環境配慮型建物100Aは、屋根における軒先とならない部位にパラペット20を設けて第2パネル60を設置することに加えて、外壁80の壁面に対して、角度調整治具50を介して第4パネル90が設置されている。尚、
図8等においては、パラペット20と第2パネル60の図示を省略している。また、図示例では、建物の南側に面している外壁80の壁面に対して、太陽光パネル90が設置されている。ここで、図示例の第4パネル90は太陽光パネルであるが、光触媒パネルであってもよい。
【0060】
環境配慮型建物100Aによれば、建物の屋根10Bの屋根面11A,11Bに環境対応型の第1パネル30が設置されていることに加えて、パラペット20の天端面22に環境対応型の第2パネル60が設置され、さらに、外壁80の壁面に、環境対応型の第4パネル90が設置さていることから、屋根面11A,11Bの勾配に左右されない第2パネル60と第4パネル90が第1パネル30に付加されることにより、狭小敷地においても自然エネルギーを有効利用することが可能になる。
【0061】
また、図示を省略するが、中央の棟から左右端の軒先に向かって下り勾配の切妻屋根を備えている建物に対して、第1パネル等が設置されてもよい。この形態では、上下端のケラバに対応する端辺が「軒先とならない部位」となり、双方のケラバに対応する位置にパラペットが設けられる。そして、左右の屋根面には、固定治具を介して複数の第1パネルが設置され、パラペットの天端面には第2パネルが設置され、パラペットの側面には第3パネルが設置される。この形態においても、外壁の壁面に第4パネルが設置されてもよい。
【0062】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【0063】
例えば、図示例の環境配慮型建物100,100Aは、片流れ屋根を備えた建物であるが、その他、寄棟屋根や陸屋根等を備えた建物であってもよい。例えば平面視矩形の陸屋根を備えている建物では、陸屋根の4つの端辺にパラペットが設けられ、各パラペットの天端面に環境対応型の第2パネルが設置され、各パラペットの内側の側面に環境対応型の第3パネルが設置される。
【符号の説明】
【0064】
10,10A:屋根(片流れ屋根)
11,11A,11B:屋根面
12:軒先
13:ケラバ(軒先とならない部位)
15:棟(軒先とならない部位)
20:パラペット
21:笠木
22:天端面
24:側面
30:第1パネル(太陽光パネル)
40:固定治具
50:角度調整治具
51:固定部材
52:可動部材
53:回動軸
60,60A,60B:第2パネル(太陽光パネル)
61:端子ボックス
62:取付治具
70:第3パネル(太陽光パネル)
80:外壁
90:第4パネル(太陽光パネル)
100,100A:環境配慮型建物