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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134167
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】嵌合構造
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/56 20060101AFI20240926BHJP
   F16B 5/07 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
B29C65/56
F16B5/07 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044316
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187193
【弁理士】
【氏名又は名称】林 司
(74)【代理人】
【識別番号】100181766
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 均
(72)【発明者】
【氏名】石川 幸司
【テーマコード(参考)】
3J001
4F211
【Fターム(参考)】
3J001FA02
3J001GA13
3J001GB01
3J001HA02
3J001HA07
3J001JC02
3J001JD02
3J001KA07
3J001KA21
4F211AR07
4F211TA06
4F211TC09
4F211TD01
4F211TN78
4F211TN79
(57)【要約】
【課題】係止体を嵌合孔に強固に嵌合させることが可能で、また、係止体の嵌合に起因する白化や割れ等の不具合を発生させ難くすることが可能な嵌合構造を提供する。
【解決手段】本発明の嵌合構造(1)は、係止体(10)と、係止体(10)を嵌合させる嵌合孔(22)を備えた第1部材(20)と、第1部材(20)に取り付けられる第2部材(30)とを有し、第1部材(20)は、嵌合孔(22)の周囲部分の少なくとも一部が弾性変形可能に形成され、第1部材(20)及び第2部材(30)には、第1部材(20)の弾性変形を規制する規制構造が設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
係止体と、前記係止体の少なくとも一部を収容して前記係止体を嵌合させる嵌合孔を備えた第1部材と、前記第1部材に取り付けられる第2部材とを有し、
前記第1部材は、前記嵌合孔の周囲部分の少なくとも一部が弾性変形可能に形成され、
前記第1部材及び前記第2部材には、前記第1部材の弾性変形を規制する規制構造が設けられている
ことを特徴とする嵌合構造。
【請求項2】
前記第2部材は、前記第1部材の一部に接触して前記第1部材の弾性変形を規制する凸形状を備えた規制凸部を有し、
前記第1部材は、前記第2部材の前記規制凸部を受け入れて収容する収容部を有し、
前記収容部は、前記第1部材の弾性変形が生じる部分に配され、
前記規制構造は、前記第1部材の前記収容部と、前記第2部材の前記規制凸部とにより形成され、
前記係止体は、前記規制構造によって前記第1部材の弾性変形が規制されることにより、前記嵌合孔に固定される
請求項1記載の嵌合構造。
【請求項3】
前記第1部材は、前記第1部材を弾性変形し易くする変形容易部を有し、
前記変形容易部は、前記嵌合孔から延びるスリット状の少なくとも1つの切り欠き形状、及び/又は前記嵌合孔に隣接して設けられる少なくとも1つの薄肉形状により形成される
請求項1記載の嵌合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、係止体を嵌合孔に嵌合させる嵌合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
実開昭61-138531号公報(特許文献1)には、樹脂成形品の貫通孔に、カラー部材等の係止体(圧入部品)を圧入して係合させる技術が記載されている。特許文献1では、貫通孔の両端面の周囲に面取り溝が形成されている。これにより、係止体を貫通孔に圧入するときにバリが発生する場合でも、発生したバリを面取り溝に収容できる。このため、樹脂成形品の表面にバリが露出することを防いで、樹脂成形品の組み付け時にバリの噛み込みを防止できる。また、例えば樹脂成形品の表面が外部に露出する場合等では、バリを面取り溝に収容して目立ち難くすることが可能となるため、製品の外観不良を防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭61-138531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カラー部材等の係止体を樹脂成形品の嵌合孔(貫通孔)に圧入して嵌合させる特許文献1のような従来の嵌合構造では、嵌合孔の内径を係止体の外径よりも小さくすることにより、係止体を貫通孔に強固に嵌合させることができるものの、嵌合孔の内径が小さくなり過ぎると、係止体を貫通孔に圧入するときに、係止体を強く押圧することにより、係止体で嵌合孔の内壁を押し広げながら係止体を圧入する必要がある。
【0005】
しかしながら、例えば樹脂成形品の成形時に、合成樹脂の合流等により嵌合孔の周囲にウエルド部(ウエルドライン)が形成されている場合等では、係止体を上述のような強い押圧で嵌合孔の内壁を押し広げて貫通孔に圧入するときに、係止体の押圧力によって、樹脂成形品のウエルド部に白化や割れ等を発生させることがある。このような白化や割れ等の発生は、製品の外観不良となり、歩留まりの低下を招いていた。従って、従来の嵌合構造では、係止体をより強固に嵌合孔に嵌合させることと、白化や割れ等の不具合を防止して製品の良好な外観品質を得ることの両立は、困難であった。
【0006】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、係止体を嵌合孔に強固に嵌合させることが可能で、また、係止体の嵌合に起因する白化や割れ等の不具合を発生させ難くすることが可能な嵌合構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明により提供される嵌合構造は、係止体と、前記係止体の少なくとも一部を収容して前記係止体を嵌合させる嵌合孔を備えた第1部材と、前記第1部材に取り付けられる第2部材とを有し、前記第1部材は、前記嵌合孔の周囲部分の少なくとも一部が弾性変形可能に形成され、前記第1部材及び前記第2部材には、前記第1部材の弾性変形を規制する規制構造が設けられている嵌合構造である。
【0008】
本発明の嵌合構造において、前記第2部材は、前記第1部材の一部に接触して前記第1部材の弾性変形を規制する凸形状を備えた規制凸部を有し、前記第1部材は、前記第2部材の前記規制凸部を受け入れて収容する収容部を有し、前記収容部は、前記第1部材の弾性変形が生じる部分に配され、前記規制構造は、前記第1部材の前記収容部と、前記第2部材の前記規制凸部とにより形成され、前記係止体は、前記規制構造によって前記第1部材の弾性変形が規制されることにより、前記嵌合孔に固定されることが好ましい。
【0009】
また、前記第1部材は、前記第1部材を弾性変形し易くする変形容易部を有し、前記変形容易部は、前記嵌合孔から延びるスリット状の少なくとも1つの切り欠き形状、及び/又は前記嵌合孔に隣接して設けられる少なくとも1つの薄肉形状により形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の嵌合構造によれば、係止体を嵌合孔に強固に嵌合させることができ、また、係止体の嵌合に起因する白化や割れ等の不具合を発生させ難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例に係る嵌合構造において、係止体を嵌合孔に嵌合させた状態を模式的に示す斜視図である。
図2】係止体を嵌合孔に嵌合させる前の状態を模式的に示す斜視図である。
図3図1に示すIII-III線における断面を模式的に示す断面図である。
図4】スリット部の中央位置と嵌合孔の中心位置とを通る断面を模式的に示す断面図である。
図5】変形容易部の変形例を模式的に示す第1部材の平面図である。
図6】変形容易部の別の変形例を模式的に示す第1部材の平面図である。
図7】収容孔部の変形例を模式的に示す第1部材の平面図である。
図8】収容孔部の別の変形例を模式的に示す第1部材の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施の形態について、実施例を挙げて図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施例に係る嵌合構造において、係止体を嵌合孔に嵌合させた状態を模式的に示す斜視図であり、図2は、係止体を嵌合孔に嵌合させる前の係止体、第1部材、及び第2部材が分離した状態を模式的に示す斜視図である。図3は、図1に示すIII-III線における断面を模式的に示す断面図であり、図4は、スリット部の中央位置と嵌合孔の中心位置とを通る断面を模式的に示す断面図である。
【0013】
以下の説明において、上下方向は、係止体を嵌合孔に挿入する方向に沿った方向を言う。この場合、上下方向において、係止体が嵌合孔に近付く向きを下方とし、係止体が嵌合孔から離れる向きを上方とする。前後方向は、上下方向に直交する方向のうちの1つであり、本実施例の場合、便宜上、細長く形成される第1部材の長さ方向に沿った方向を言う。左右方向は、上下方向と前後方向とに直交する方向であり、本実施例の場合、第1部材の幅方向に沿った方向を言う。
【0014】
図1図4に示す本実施例の嵌合構造1は、金属製の係止体10と、係止体10の少なくとも一部を収容して係止体10を嵌合させる嵌合孔22を備えた第1部材20と、第1部材20に取り付けられる第2部材30とにより形成されている。なお、係止体10は、カラー部材やカラー部品等と呼ばれることがある。
【0015】
係止体10は、円筒状の係止本体部11と、係止本体部11の上端部に一体的に配されるフランジ部12とを有しており、係止本体部11内には、上下方向に沿った円柱状の空間部が設けられている。係止本体部11は、係止本体部11の外径が、係止本体部11の上端部から下端部まで一定の大きさとなるように形成されている。フランジ部12は、係止本体部11の上端部から、円筒状の係止本体部11における半径方向の外側に向けて張り出すように形成されている。なお本発明において、係止体は、フランジ部を設けずに形成されていてもよい。また、係止体の材質も特に限定されない。
【0016】
第1部材20は、細長い薄板状の第1ベース部21と、第1ベース部21に設けられた嵌合孔22、スリット部23、左右一対の収容孔部(収容部)24とを有する。
【0017】
第1ベース部21は、合成樹脂により形成されており、また、第1ベース部21の全体が弾性変形可能に形成されている。例えば本実施例の場合、第1ベース部21は、第1部材20の嵌合孔22に係止体10が挿入されたときに、嵌合孔22の左右両側に配される側縁部分が左右方向の外側に向けて撓むことによって、嵌合孔22の開口面積を拡大させるように弾性変形可能に形成されている。なお本発明において、第1ベース部は、嵌合孔の周囲部分の少なくとも一部が嵌合孔を拡大させるように(好ましくは、拡大・縮小させるように)弾性変形可能に形成されていればよい。
【0018】
本実施例の第1ベース部21は、互いに反対向きに配される上面(第1面)及び下面(第2面)を有しており、第1ベース部21の上面と下面は、平坦に、且つ互いに平行に配されている。また、第1ベース部21は、係止体10を嵌合して固定できる適切な強度が得られる厚さ(上面及び下面間の寸法)を有する。なお本発明において、第1ベース部の形状、大きさ、材質等は特に限定されない。
【0019】
第1部材20の嵌合孔22は、第1ベース部21を上から見た平面視において円形に形成されており、また、第1ベース部21を第1ベース部21の上面から下面まで上下方向に沿って貫通している。本実施例において、嵌合孔22は、係止体10の係止本体部11の外径と同じ(略同じを含む)大きさの内径、又は、係止本体部11の外径よりも少し小さい内径を有する。
【0020】
第1部材20のスリット部23は、嵌合孔22から前後方向に沿って延びる切り欠き形状に形成されている。このスリット部23は、第1ベース部21の上面から下面まで上下方向に沿って貫通している。
【0021】
本実施例のスリット部23は、第1部材20を弾性変形させ易くする変形容易部として形成されている。すなわち、スリット部23は、嵌合孔22に係止体10を挿入したときに、第1ベース部21の嵌合孔22の周囲部分が弾性変形して、嵌合孔22の左右両側に配される第1ベース部21の側縁部分が左右方向の外側に向けて撓み易くなるような長さで、第1ベース部21の嵌合孔22から前後方向の一方に向けて直線状に形成されている。例えば本実施例の場合、スリット部23は、嵌合孔22の半径の大きさ以上の長さで嵌合孔22から延びている。ここで、スリット部23の長さは、スリット部23の嵌合孔から延びる長さ、すなわち、スリット部23の嵌合孔に連結する基端部から、スリット部23の基端部とは反対側に配される先端部までの前後方向における寸法を意味する。また、スリット部23の先端部は、第1ベース部21の平面視において、丸みを帯びるように又は円弧状に形成されている。
【0022】
なお本発明において、第1部材のスリット部は、第1ベース部の嵌合孔の周囲部分を弾性変形させ易くすることが可能であれば、スリット部の長さ、幅、形状、設置数等は特に限定されるものではなく、例えば2つ以上のスリット部が、嵌合孔から互いに異なる方向に延びるように形成されていてもよい。また本発明において、第1部材は、スリット部等の変形容易部を設けずに形成されていてもよい。
【0023】
第1部材20における左右の収容孔部24は、スリット部23を間に挟むように配されており、また、スリット部23から左右方向に離れた位置に設けられている。左右の収容孔部24は、第2部材30の後述する左右の規制突出部33をそれぞれ受け入れて収容可能に形成されている。また、左右の収容孔部24は、スリット部23を基準にして、左右対称的な位置に、左右対称的な形状で形成されている。
【0024】
左右の各収容孔部24は、第1ベース部21を第1ベース部21の上面から下面まで上下方向に沿って貫通している。各収容孔部24は、第1ベース部21の平面視において、左右方向に長い長円形(略長円形を含む)又は長方形(略長方形を含む)に形成されている。左右の収容孔部24の下端部には、第2部材30の規制突出部33を挿入させ易くするために、収容孔部24の左右方向における開口幅を下方に向けて漸増させるように収容孔部24の内壁面が傾斜する傾斜部25が設けられている。
【0025】
第2部材30は、第2ベース部31と、第2ベース部31に設けられた挿通孔32と、第2ベース部31から突出する左右一対の規制突出部(規制凸部)33とを有する。
第2ベース部31は、合成樹脂により、細長い薄板状に形成されている。第2ベース部31は、互いに反対向きに配される上面(第1面)及び下面(第2面)を有しており、第2ベース部31の上面と下面は、平坦に、且つ互いに平行に配されている。なお本発明において、第2ベース部の形状、大きさ、材質等は特に限定されない。
【0026】
第2部材30の挿通孔32は、第2ベース部31を上から見た平面視において円形に形成されており、また、第2ベース部31を第2ベース部31の上面から下面まで上下方向に沿って貫通している。この挿通孔32は、第1部材20の嵌合孔22の内径よりも大きな内径を有する(例えば図4を参照)。このような挿通孔32が形成されていることにより、第2部材30を第1部材20に取り付けるときに、第1部材20の嵌合孔22に保持されている係止体10を第2部材30の挿通孔32に挿入できるため、係止体10と第2部材30とが干渉することを防止できる。なお本発明において、第2部材の挿通孔は、第2部材と第1部材の嵌合孔に保持される係止体とが干渉しないように形成されていれば、挿通孔の大きさ及び形状等は特に限定されない。
【0027】
第2部材30における左右の規制突出部33は、それぞれ、第2ベース部31の上面から上方に突出する凸形状を有しており、また、左右方向に細長く形成されている。左右の規制突出部33は、第1部材20に設けた左右の収容孔部24に対し、それぞれ下側から挿入されて保持されることが可能な形状及び大きさで形成されている。言い換えると、本実施例の場合、左右の凸状の規制突出部33は、第1部材20の左右の収容孔部24に対して圧入されて嵌着可能な形状及び大きさで形成されている。これにより、第2部材30の規制突出部33を第1部材20の収容孔部24に嵌着させたときに、第2部材30を第1部材20に取り付けることができる。
【0028】
左右の規制突出部33は、互いに左右方向に離れて配されており、左右の規制突出部33の間には、第1部材20の一部が挿入される中央間隙34が設けられている(図2を参照)。本実施例の第2部材30において、中央間隙34の左右方向における大きさは、第1部材20の嵌合孔22に係止体10が挿入されていない状態における第1部材20の左右の収容孔部24間の間隔と同じ大きさに、又は左右の収容孔部24間の間隔よりも少し小さく設定されている。
【0029】
このため、第2部材30に設けられている左右の規制突出部33を、第1部材20の嵌合孔22に係止体10が挿入された状態で、第1部材20の左右の収容孔部24に下側から圧入することにより、左右の規制突出部33が、左右の収容孔部24におけるスリット部23側の内壁面を左右方向の中央部に向けて押圧できる。これによって、第1部材20の嵌合孔22の周囲部分における弾性変形が規制されて、左右の収容孔部24が互いに近付くように(言い換えると、左右の収容孔部24間の間隔が狭くなるように)、第1部材20の左右の収容孔部24に挟まれている部分を締め付けることができる。
【0030】
なお、本実施例の嵌合構造1では、第2部材30の規制突出部33を第1部材20の収容孔部24に嵌着させることにより、上述したように、第2部材30を第1部材20に取り付けることができるが、本実施例では、第1部材20の収容孔部24及び第2部材30の規制突出部33以外に、第2部材30を第1部材20に取り付けることが可能な構造や手段が設けられていてもよい。
【0031】
本実施例の第1部材20及び第2部材30には、第1部材20の弾性変形を規制する規制構造が設けられており、この規制構造による第1部材20の弾性変形の規制によって、係止体10は、第1部材20の嵌合孔22に固定される。この場合、規制構造は、第1部材20の収容孔部24と、第2部材30の規制突出部33とにより形成されている。
【0032】
このような本実施例の規制構造によれば、後述するように、係止体10が第1部材20に組み付けられることによって左右の収容孔部24間の間隔が拡大している場合において、第2部材30の左右の規制突出部33が第1部材20の収容孔部24にそれぞれ圧入されることにより、第1部材20の弾性変形を規制し、第1部材20の左右の収容孔部24間の間隔を小さくして嵌合孔22を縮小させることができるため、嵌合孔22で係止体10の係止本体部11を締め付けて、係止体10を嵌合孔22にしっかりと固定することができる。
【0033】
次に、上述のような規制構造を備える本実施例の嵌合構造1によって、係止体10を第1部材20の嵌合孔22に挿入して嵌合させる方法について説明する。
なお、以下では、図示を省略するが、第1部材20の成形時に形成されるウエルド部(ウエルドライン)が、第1ベース部21に、スリット部23の先端部から嵌合孔22側とは反対の側に向けて延びるように生じている場合を想定して説明を行う。
【0034】
係止体10を第1部材20の嵌合孔22に嵌合させるために、先ず、第1部材20と第2部材30が互いに分離している状態で、第1部材20の嵌合孔22に係止体10を挿入して保持する(仮嵌合させる)。このとき、第1部材20の第1ベース部21には、変形容易部として、嵌合孔22から直線状に延びるスリット部23が設けられている。
【0035】
このため、第1部材20の嵌合孔22の内径が、係止体10の係止本体部11の外径と同じであっても、又は、係止本体部11の外径よりも少し小さくても、係止体10を嵌合孔22に挿入したときに、嵌合孔22の内壁面が係止体10から押圧されることによって、第1ベース部21のスリット部23のスリット幅が拡大する(言い換えると、第1部材20の左右の収容孔部24間の間隔が拡がる)とともに、嵌合孔22の左右両側に配される側縁部分が左右方向の外側に向けて撓むように第1ベース部21を弾性変形させることができる。それによって、嵌合孔22の開口面積を容易に拡大させることができるため、係止体10を嵌合孔22に円滑に挿入して組み付ける(仮嵌合させる)ことができる。また、係止体10を嵌合孔22に挿入するときに、嵌合孔22の内壁面が係止体10により削られるという不具合の発生を防止又は抑制できる。
【0036】
更にこの場合、第1部材20のスリット部23の先端部からウエルド部が延びていても、スリット部(変形容易部)23が設置されていることによって、ウエルド部に第1ベース部21の弾性変形の影響を与え難くすることができる。したがって、第1ベース部21の弾性変形に起因してウエルド部の白化や割れ等が発生することを防止又は抑制することができる。
【0037】
なお、本実施例では、ウエルド部が上述したようにスリット部23の先端部から延びている場合を想定しているが、例えばウエルド部が、第1部材20の嵌合孔22から直接延びるように生じている場合であっても、第1部材20がスリット部23によって弾性変形し易く形成されているため、ウエルド部の白化や割れ等の発生を防止又は抑制できる。
【0038】
続いて、本実施例の嵌合構造1では、第1部材20及び第2部材30に設けた規制構造を用いることにより、第1部材20の弾性変形を規制して係止体10を第1部材20の嵌合孔22に固定する。
具体的に説明すると、第2部材30を、係止体10が組み付けられた第1部材20に対して下側から近付けて、第2部材30の左右の規制突出部33を、第1部材20の左右の収容孔部24にそれぞれ圧入して嵌着させる。このとき、第1部材20の収容孔部24の下端部には傾斜部25が設けられているため、第2部材30の各規制突出部33を第1部材20の対応する収容孔部24に円滑に挿し込んで圧入できる。
【0039】
また本実施例では、第2部材30における中央間隙34の左右方向の大きさが、第1部材20の嵌合孔22に係止体10が挿入されていない状態における第1部材20の左右の収容孔部24間の間隔と同じ大きさ、又は当該間隔よりも少し小さい大きさに設定されている。
【0040】
このため、第1部材20において係止体10の仮嵌合によって左右の収容孔部24間の間隔が拡大していても、第2部材30の左右の規制突出部33が第1部材20の収容孔部24にそれぞれ圧入されることにより、左右の規制突出部33が第1部材20の左右の収容孔部24の内壁面を左右方向の中央部に向けて押圧し、左右の収容孔部24間の間隔を縮小することができる。これにより、第1ベース部21のスリット部23の拡大したスリット幅を小さくして、嵌合孔22の開口面積を小さくすることができるため、嵌合孔22で係止体10の係止本体部11を締め付けて、係止体10を嵌合孔22に強固に固定できる。
【0041】
以上のように、本実施例の嵌合構造1によれば、第1部材20にスリット部(変形容易部)23が設けられているため、第1部材20の嵌合孔22に係止体10を挿入して保持するときに、第1部材20を容易に弾性変形させて、第1部材20に白化や割れ等の不具合や、金属製の係止体10が嵌合孔22の内壁面を削るといった不具合が生じることを防止又は抑制できる。
【0042】
更に、第1部材20の収容孔部24と第2部材30の規制突出部33とにより形成される本実施例の規制構造を利用することによって、嵌合孔22に保持されている係止体10を、嵌合孔22の内周面で締め付けて、係止体10を嵌合孔22に簡単な作業で強固に固定できる。
【0043】
また本実施例では、例えば第2部材30を作製するときに、第2部材30における上述した中央間隙34の左右方向における大きさを、第1部材20の左右の収容孔部24間の間隔の大きさに対して変更することにより、本実施例の嵌合構造1で係止体10を嵌合孔22に嵌合させたときの第1部材20による係止体10の締付具合や締付強度、また、係止体10を嵌合孔22から抜去するときの抜去荷重等を調整することも可能である。
【0044】
更に、本実施例では、第1ベース部21における嵌合孔22の周囲部分を弾性変形し易くするために、例えば第1ベース部21における嵌合孔22の左右両側の部分26(図2に二点鎖線で示す部分)に、弾性変形調整部が、変形容易部23とは別に、また、嵌合孔22から離れた位置に設けられていてもよい。
【0045】
このような弾性変形調整部は、例えば第1ベース部21の上面から下面まで貫通する1つ又は複数の孔部又は切り欠き部によって形成されていてもよく、また、第1ベース部21の上面及び/又は下面に凹部を設けることにより第1ベース部21の厚さが部分的に薄くされた薄肉部により形成されていてもよい。この場合、薄肉部は、第1ベース部21の薄肉部以外の一定の厚さを備える主体部(一般部)よりも厚さが薄くなっている部分である。
【0046】
上述した弾性変形調整部が、変形容易部(スリット部)23とともに第1ベース部21に設けられていることにより、第1部材20の嵌合孔22に係止体10を挿入して仮嵌合させるときに、第1ベース部21における嵌合孔22の周囲部分をより容易に弾性変形させて、第1部材20に白化や割れ等の不具合をより発生させ難くすることができる。
【0047】
なお上述した実施例では、第1部材20の弾性変形を規制する規制構造が、第1部材20に設けた一対の収容孔部24と、第2部材30の一対の規制突出部33とにより形成されている。しかし本発明において、規制構造は、例えば第1ベース部の下面側に凹設される第1部材の一対の収容凹部と、その収容凹部に圧入されて保持される第2部材の一対の規制突出部(規制凸部)とにより形成されていてもよい。また本発明では、例えば第1部材に、第1ベース部の下面から下方に突出する一対の突出部(凸部)を設けるとともに、その一対の突出部を圧入して保持する一対の規制孔部又は規制凹部を第2部材に設けることによって、規制構造が形成されていてもよい。これらの規制構造が設けられる場合でも、上述した実施例の規制構造と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0048】
また、上述した実施例において、第1部材20で第1ベース部21の弾性変形を生じさせ易くする変形容易部は、図1及び図2に示したように、嵌合孔22から延びる直線状のスリット部23により形成されている。しかし本発明では、例えば図5及び図6に変形容易部の変形例を示すように、変形容易部は、第1ベース部の弾性変形を生じさせ易くすることができれば、実施例の直線状のスリット部23以外の形状で形成されていてもよい。
【0049】
例えば図5の変形例に係る第1部材20aの変形容易部は、嵌合孔22から延びるとともに第1部材20aの平面視において略T字状に形成される切り欠き形状のスリット部23aによって形成されている。図6に示す別の変形例に係る第1部材20bの変形容易部は、嵌合孔22から延びるとともに第1部材20bの平面視において略Y字状に形成される切り欠き形状のスリット部23bによって形成されている。図5及び図6に示す形状に形成されたスリット部23a,23bによっても、第1部材20a,20bの嵌合孔22に係止体10を仮嵌合させるときに、第1部材20a,20bを容易に弾性変形させて、第1部材20a,20bに白化や割れ等の不具合を生じさせ難くすることができる。
【0050】
また本発明において、第1部材の変形容易部は、第1ベース部の上面から下面に貫通する切り欠き形状のスリット部ではなく、第1ベース部の上面及び/又は下面に凹部を設けることにより第1ベース部の厚さを部分的に薄くした薄肉形状(薄肉部)によって形成されていてもよい。このような薄肉形状の変形容易部が、スリット部の代わりに又はスリット部に加えて、第1部材の嵌合孔に接するように隣接して設けられていることにより、第1ベース部を弾性変形させ易くすることができる。なお、ここで説明する第1ベース部の薄肉形状(薄肉部)は、第1ベース部の薄肉形状以外の一定の厚さを備える主体部(一般部)よりも厚さが薄くなっている部分の形状を意味する。
【0051】
更に、上述した実施例において、規制構造を形成する第1部材20の収容孔部24は、上述したように、左右方向に長い長円形又は長方形に形成されており、第2部材30の規制突出部33は、左右方向に細長く形成されている。しかし本発明では、例えば図7及び図8に収容孔部の変形例を示すように、第1部材の収容孔部及び第2部材の規制突出部(規制凸部)は、係止体を嵌合孔で締め付けて嵌合孔に固定することができれば、上述した実施例の形状以外の形状で形成されていてもよい。
【0052】
例えば図7の変形例に係る第1部材20cの各収容孔部24cは、第1部材20cの平面視において略T字状の形状を有する。この場合、第2部材に設ける各規制突出部(不図示)は、略T字状の収容孔部24cの内壁面を押圧することが可能なような、第2部材の平面視において略T字状の形状に形成されていてもよく、また、上述した実施例のような左右方向に細長い形状に形成されていてもよい。更に、第2部材に設ける各規制突出部は、ピン等のような円柱状の形状に形成されていてもよい。
【0053】
また、図8に示す別の変形例に係る第1部材20dの各収容孔部24dは、第1部材20dの平面視において略三角形に形成されている。この場合、第2部材に設ける各規制突出部(不図示)は、略三角形の収容孔部24dの内壁面を押圧することが可能なような、第2部材の平面視において略三角形を呈する角柱状に形成されていてもよく、また、ピン等のような円柱状の形状に形成されていてもよい。
【0054】
図7及び図8に示すような一対の収容孔部24c,24dが第1部材20c,20dに設けられており、且つ、当該一対の収容孔部24c,24dの内壁面を押圧可能な一対の規制突出部が第2部材に設けられていることによっても、第1ベース部21の弾性変形を規制することが可能となり、それによって、係止体を嵌合孔22の内周面で締め付けて嵌合孔22に固定することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 嵌合構造
10 係止体
11 係止本体部
12 フランジ部
20 第1部材
20a,20b 第1部材
20c,20d 第1部材
21 第1ベース部
22 嵌合孔
23 スリット部(変形容易部)
23a,23b スリット部
24 収容孔部(収容部)
24c,24d 収容孔部
25 傾斜部
26 第1ベース部における嵌合孔の左右両側の部分
30 第2部材
31 第2ベース部
32 挿通孔
33 規制突出部(規制凸部)
34 中央間隙
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8