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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134170
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】プラグ圧入器具
(51)【国際特許分類】
   B23P 19/02 20060101AFI20240926BHJP
   B23P 21/00 20060101ALN20240926BHJP
【FI】
B23P19/02 B
B23P21/00 303C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044319
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100196346
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 貴士
(72)【発明者】
【氏名】松崎 慎
(72)【発明者】
【氏名】ノラウィト ソムジット
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 雅人
【テーマコード(参考)】
3C030
【Fターム(参考)】
3C030BC19
3C030BC34
3C030CC08
(57)【要約】
【課題】装置の大型化を避けてプラグの圧入及びリークテストを実施可能とし、これにより作業性の向上を図る。
【解決手段】このプラグ圧入器具10は、一端を開口した形状のハウジング11と、ハウジング11に対して摺動可能に収容され、プラグ1を先端部12aに保持した状態でハウジング11の一端側に向けて摺動することでプラグ1を被圧入部材2に圧入可能なパンチ12と、ハウジング11とパンチ12との間に設けられたリークテスト用の流体通路13と、ハウジング11に設けられ、ハウジング11を被圧入部材2に固定可能な固定部材14と、ハウジング11とパンチ12との間、及び、ハウジング11と固定部材14との間をそれぞれシール可能な第一シール部材15及び第二シール部材16とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被圧入部材にプラグを圧入し、かつ前記プラグを圧入した箇所のリークテストを実施可能なプラグ圧入器具において、
一端を開口した形状のハウジングと、
前記ハウジングに対して摺動可能に収容され、前記プラグを先端部に保持した状態で前記ハウジングの一端側に向けて摺動することで前記プラグを前記被圧入部材に圧入可能なパンチと、
前記ハウジングと前記パンチとの間に設けられた前記リークテスト用の流体通路と、
前記ハウジングに設けられ、前記ハウジングを前記被圧入部材に固定可能な固定部材と、
前記ハウジングと前記パンチとの間、及び、前記ハウジングと前記固定部材との間をそれぞれシール可能な第一シール部材及び第二シール部材とを備えることを特徴とするプラグ圧入器具。
【請求項2】
前記プラグが圧入された状態で、前記流体通路が形成されると共に、前記第一シール部材により前記ハウジングと前記パンチとの間がシールされる請求項1に記載のプラグ圧入器具。
【請求項3】
前記パンチは、前記先端部よりも基端側で径方向外側に突出する鍔部と、先端部から基端側に向けて延びる溝部とを有し、
前記鍔部の前記先端部側の端面に前記第一シール部材が設けられ、前記ハウジングを径方向に貫く貫通穴と、前記溝部とが連通することにより前記流体通路が形成される請求項2に記載のプラグ圧入器具。
【請求項4】
前記ハウジングに収容され前記パンチの後端側と連結される連結軸と、前記ハウジングの他端に開口したボルト穴とをさらに備え、
前記ボルト穴に押込み用ボルトをねじ込み、前記連結軸を前記ハウジングの一端側に押込むことで、前記パンチを前記ハウジングの一端側に向けて摺動可能に構成される請求項1~3の何れか一項に記載のプラグ圧入器具。
【請求項5】
前記固定部材は、前記被圧入部材に対して連結要素を用いて連結されると共に、前記ハウジングに対して交換可能に連結されている請求項1に記載のプラグ圧入器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラグ圧入器具に関し、特にプラグの圧入と共にリークテストを実施するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用エンジンのシリンダヘッドを構成するカムハウジングにプラグを圧入するための技術として、例えば特許文献1に記載の如き圧入装置が提案されている。すなわち、この装置は、先端にプラグ保持部を設けた圧入ヘッドを油圧シリンダのピストンロッドに連結し、油圧シリンダの駆動力で圧入ヘッドを駆動して、プラグ保持部に保持した状態のプラグをワークに圧入した後、と、圧入ヘッドのプラグ保持部近傍に終端が開口したエア通路を介してエアを供給することによりリークテストを実施可能な構造をなしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭62-15428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の圧入装置によれば、圧入装置に隣接する位置でプラグの圧入とリークテストが実施できるので、圧入工程とリークテスト工程とを別個に設けずに済む。また、作業者も一人で済む。しかしながら、上記構成の圧入装置のように、油圧シリンダのピストンロッドに圧入ヘッドを連結して圧入ヘッドをワーク(被圧入部材)に押込む構造をとる場合、ワークへの圧入荷重を後方から受けるための巨大な受けが必要となるため、圧入装置が大型化するといった問題があった。また、このように装置が大型化することで、プラグの圧入位置や圧入姿勢が限定され、作業効率の低下を招くおそれもあった。
【0005】
以上の事情に鑑み、本明細書では、装置の大型化を避けてプラグの圧入及びリークテストを実施可能とし、これにより作業性の向上を図ることを、解決すべき技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題の解決は、本発明に係るプラグ圧入器具によって達成される。すなわち、この圧入器具は、被圧入部材にプラグを圧入し、かつプラグを圧入した箇所のリークテストを実施可能なプラグ圧入器具において、一端を開口した形状のハウジングと、ハウジングに対して摺動可能に収容され、プラグを先端部に保持した状態でハウジングの一端側に向けて摺動することでプラグを被圧入部材に圧入可能なパンチと、ハウジングとパンチとの間に設けられたリークテスト用の流体通路と、ハウジングに設けられ、ハウジングを被圧入部材に固定可能な固定部材と、ハウジングとパンチとの間、及び、ハウジングと固定部材との間をそれぞれシール可能な第一シール部材及び第二シール部材とを備える点をもって特徴付けられる。
【0007】
このように、本発明に係るプラグ圧入器具では、固定部材を介してハウジングを被圧入部材に固定した状態で、ハウジングに対して摺動可能に収容されたパンチを、その先端部にプラグを保持した状態でハウジングの一端側に摺動させることで、プラグを被圧入部材に圧入可能としたので、パンチからの圧入荷重を被圧入部材と固定部材との固定部で受けることができる。これにより、従来の如く被圧入部材を圧入方向後方側から巨大な受け部材で受けずに済むので、プラグの圧入に必要な機器全体の小型化を図ることができる。また、小型化できれば、作業者が器具として手作業で取り扱うことも可能になるので、被圧入部材を例えば作業台の上に置いた状態で簡易に圧入作業を実施することが可能となり、作業性の向上を図ることが可能となる。
【0008】
また、本発明に係るプラグ圧入器具において、プラグが圧入された状態で、流体通路が形成されると共に、第一シール部材によりハウジングとパンチとの間がシールされるようにしてもよい。
【0009】
このようにプラグ圧入器具を構成することにより、プラグ圧入器具を作業者が操作してプラグを圧入した後、すぐにエアなどのテスト用流体を流体通路に供給してリークテストを実施することができる。よって、作業性のさらなる向上が可能となる。
【0010】
また、本発明に係るプラグ圧入器具において、パンチは、先端部よりも基端側で径方向外側に突出する鍔部と、先端部から基端側に向けて延びる溝部とを有し、鍔部の先端部側の端面に第一シール部材が設けられ、ハウジングを径方向に貫く貫通穴と、溝部とが連通することにより流体通路が形成されてもよい。
【0011】
このようにパンチを構成することにより、パンチをハウジングの一端側に摺動させてプラグを圧入した状態では、鍔部の先端部側の端面がハウジングに押し付けられた状態となる。よって、この端面に第一シール部材を設けることで、パンチ(鍔部)とハウジングとの間のシール性を高めることが可能となる。また、パンチの先端部から基端側に向けて延びる溝部に、ハウジングを径方向に貫通する貫通穴を連通させて流体通路を形成することにより、流体通路の端部となる溝部の基端を鍔部に設けた第一シール部材で確実にシールすることができるので、これによってもシール性を高めることが可能となる。
【0012】
また、本発明に係るプラグ圧入器具において、ハウジングに収容されパンチの後端側と連結される連結軸と、ハウジングの他端に開口したボルト穴とをさらに備え、ボルト穴に押込み用ボルトをねじ込み、連結軸をハウジングの一端側に押込むことで、パンチをハウジングの一端側に向けて摺動可能に構成されてもよい。
【0013】
このようにパンチの後端を連結軸で延長し、ハウジングの他端に設けたボルト穴に押込み用ボルトをねじ込むことによって、容易にパンチを押込むことが可能となる。また、押込み用ボルトで連結軸を押込む構造とすることで、押込み用ボルトと連結軸とを縁切りした状態にできる。これにより、圧入及びリークテスト完了後、押込み用ボルトを逆方向にねじり戻すことで容易に押込み用ボルトを連結軸から遠ざけることができる。また、この際、例えば連結軸の外周にスプリングを配設することにより、押込み用ボルトを連結軸から遠ざけた際、スプリングの弾性復元力が発現し、パンチ及び連結軸が押込み前の位置に復帰する。よって、リークテスト後、容易にパンチを圧入前の位置、言い換えるとパンチをプラグ取付け位置に戻すことができ、次の作業に容易に移ることが可能となる。
【0014】
また、本発明に係るプラグ圧入器具において、固定部材は、被圧入部材に対して連結要素を用いて連結されると共に、ハウジングに対して交換可能に連結されてもよい。
【0015】
このように構成した場合、固定部材の形状、特に被圧入部材と当接する面の形状は、被圧入部材に応じて適宜変更されることが望ましい。ここで仮に固定部材がハウジングと一体に形成されている場合、被圧入部材の変更に伴い被圧入部材との当接面形状を変更するためにハウジング全体を交換する必要が生じ、交換コストの高騰を招く。また、交換することで、パンチなど他の部品の取外し及び取付け作業も必要となる。これに対して、本発明に係る圧入器具であれば、被圧入部材の変更に伴い、固定部材のみをハウジングから取外して交換すれば足りるので、交換コストを低く抑えることができる。また、固定部材の交換だけなら、ハウジングに収容された他の部品(パンチなど)を取外したり取付けたりする必要もないので、品種変更に迅速に対応することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、装置の大型化を避けてプラグの圧入及びリークテストを実施可能とし、これにより作業性の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係るプラグ圧入器具の全体構成を示す斜視図である。
図2図1に示すプラグ圧入器具のA-A断面図である。
図3図1に示すプラグ圧入器具のB矢視図である。
図4図1に示すプラグ圧入器具の使用態様の一例を示す図で、プラグ圧入器具にプラグを取付けた状態を示すA-A断面図である。
図5図1に示すプラグ圧入器具の使用態様の一例を示す図で、プラグ圧入器具を被圧入部材に固定する直前の状態を示す斜視図である。
図6図1に示すプラグ圧入器具の使用態様の一例を示す図で、プラグ圧入器具を被圧入部材に固定した状態を示すA-A断面図である。
図7図1に示すプラグ圧入器具の使用態様の一例を示す図で、プラグを被圧入部材に圧入した状態を示すA-A断面図である。
図8図1に示すプラグ圧入器具の使用態様の一例を示す図で、リークテストを行っている状態を示すA-A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るプラグ圧入器具、及びこの圧入器具を用いたプラグの圧入方法及びリークテストの一実施形態を図面に基づき説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係るプラグ圧入器具10の斜視図、図2は、図1に示すプラグ圧入器具10のA-A断面図をそれぞれ示している。図1に示すように、このプラグ圧入器具10は、主にハウジング11と、パンチ12と、流体通路13と、固定部材14と、第一シール部材15、及び第二シール部材16とを備える。本実施形態では、プラグ圧入器具10は、連結軸17と、押込み用ボルト18と、スプリング19と、マグネット20と、流体供給管21とをさらに備える(図2を参照)。以下、各要素の詳細を説明する。
【0020】
ハウジング11は、プラグ圧入器具10の外郭を構成し、軸方向一端側を開口した形状をなす。本実施形態では、ハウジング11は概ね筒状をなし、主にパンチ12が収容される第一筒状部22と、主に連結軸17が収容される第二筒状部23と、軸方向他端側を閉塞する蓋部24とを有する。
【0021】
ここで、第一筒状部22は、図2に示すように、相対的に小径な内周面を有する小径部22aと、相対的に大径な内周面を有する大径部22bとで構成される。小径部22aはその内周に、後述するパンチ12の先端部12aを収容可能としている。大径部22bはその内周に、後述するパンチ12の鍔部12bを収容可能としている。また、小径部22aの軸方向一端側には固定部材14を嵌合可能な嵌合部22cが設けられている。
【0022】
小径部22aの円周方向所定位置には、小径部22aを径方向に貫通する貫通穴22dが設けられている。本実施形態では、貫通穴22dは、小径部22aの内周面22a1に開口する小径穴部22d1と、小径穴部22d1と径方向外側で連通し、流体供給管21を小径部22aの径方向外側から取付け可能な大径穴部22d2とで構成されている(図2を参照)。
【0023】
第二筒状部23はその内周に、連結軸17を収容可能に構成される。本実施形態では、スプリング19が連結軸17の外周に配設され、連結軸17を挿通可能な挿通穴23aが形成された第二筒状部23の一端部23bと、連結軸17の鍔部17aとの間に収容されている。これにより、連結軸17が後述する押込み用ボルト18のねじ込みに伴いハウジング11の一端開口側に移動することで、スプリング19が圧縮され、弾性復元力が蓄積可能とされている。上記構成の第二筒状部23は、例えば複数のボルト25により第一筒状部22の他端側に連結されている(図1を参照)。
【0024】
蓋部24は、第二筒状部23の他端開口側を閉塞可能とするもので、本実施形態では、押込み用ボルト18をねじ込み可能なボルト穴24aを有している(図2を参照)。この蓋部24は、例えば複数のボルト26により第二筒状部23の他端側に連結されている(図1を参照)。
【0025】
パンチ12は、図2に示すように、概ね柱状をなすもので、その先端部12aにプラグ1(図4を参照)を保持可能としている。ここで、先端部12aは保持対象となるプラグ1の内面形状に準じた形状をなしている。本実施形態では、先端部12aにマグネット20が取付けられており、磁性体であるプラグ1を磁力で吸引保持可能としている。
【0026】
パンチ12の基端側には、径方向外側に突出する鍔部12bが設けられている。この鍔部12bの先端部12a側の端面12b1には第一シール部材15が設けられている。この第一シール部材15は、鍔部12bの端面12b1が第一筒状部22の小径部22aと軸方向に離れている状態(図2に示す状態)では、端面12b1よりも小径部22a側に盛り上がった形態をなし、後述するように、パンチ12の摺動に伴い鍔部12bが第一筒状部22の小径部22aと当接した状態(後述する図7を参照)では、小径部22aの端面22a2に密着変形した形態をなす。
【0027】
また、パンチ12の基端面12cには、連結軸17を連結するための連結穴12c1が設けられている。よって、この連結穴12c1に連結軸17の一端部を連結した状態では、パンチ12と連結軸17とは一体に移動可能とされる。
【0028】
また、パンチ12の先端部12aと鍔部12bとの間の外周面12dには、軸方向に延びる溝部12eが形成されている。この溝部12eは、少なくともパンチ12をハウジング11の一端開口側に向けて摺動させて、先端部12aに取付けたプラグ1が被圧入部材2の圧入穴2aに圧入された状態で、小径部22aの貫通穴22d(小径穴部22d1)と連通し、かつ圧入穴2aとプラグ1との境界に流体を供給可能な位置及び範囲に形成されている(図7及び図8を参照)。
【0029】
流体通路13は、流体供給管21から供給されたエアなどのテスト用流体を、圧入穴2aとプラグ1との境界(圧入部分)にまで到達させるためにハウジング11とパンチ12との間に形成される。本実施形態では、上述したように、小径部22aに形成される貫通穴22dとパンチ12の溝部12eとが連通している状態において、貫通穴22dと溝部12eとにより流体通路13が構成される。
【0030】
固定部材14は、ハウジング11を被圧入部材2に固定するために用いられる。本実施形態では、固定部材14は板状をなし、中央に設けた嵌合穴14aに第一筒状部22の嵌合部22cを嵌合した状態で複数のボルト27(図1を参照)を締結することにより第一筒状部22の小径部22aに連結固定される。また、固定部材14は上述の如くハウジング11の小径部22aに連結固定された状態で、複数のボルト28(図3を参照)をボルト穴2bに締結することで被圧入部材2に連結固定可能なように構成されている。
【0031】
また、固定部材14の被圧入部材2と対向する側の端面14bには、第二シール部材16が設けられている(図2を参照)。この第二シール部材16は、例えば矩形状をなし、複数のボルト29(図3を参照)により固定部材14に連結固定される。この第二シール部材16は、被圧入部材2に固定部材14を連結していない状態(図2に示す状態)では、固定部材14の端面14bよりもハウジング11の一端開口側に突出した形態をなし、固定部材14が被圧入部材2に固定された状態(後述する図6を参照)では、被圧入部材2のボルト穴2bが設けられた表面2cに密着変形した形態をなす。
【0032】
次に、上記構成のプラグ圧入器具10を用いたプラグ1の圧入方法の一例を主に図4図8に基づいて説明する。なお、本実施形態では、自動車用エンジンのシリンダヘッドを構成するカムハウジングを被圧入部材2とし、被圧入部材2に設けられた加工穴もしくは汎用穴としての圧入穴2aにプラグ1を圧入して閉塞する場合を例にとって説明する。
【0033】
本実施形態に係るプラグ圧入方法は、プラグ取付け工程S1と、圧入器具固定工程S2と、プラグ圧入工程S3と、リークテスト工程S4とを備える。
【0034】
(S1)プラグ取付け工程
本工程S1では、図4に示すように、上記構成のプラグ圧入器具10のパンチ12にプラグ1を取付ける。この際、パンチ12の先端部12aは、固定部材14の端面14bよりもハウジング11の他端側に後退した位置にある。よって、次工程S2においてプラグ圧入器具10を被圧入部材2に固定する際、パンチ12又はプラグ1が被圧入部材2と干渉するおそれはない。
【0035】
(S2)圧入器具固定工程
本工程S2では、図5に示すように、圧入穴2aを上方に向けた状態で載置された被圧入部材2に対して、プラグ1を取付けた状態のプラグ圧入器具10を上方からアプローチして、固定部材14を被圧入部材2のボルト穴2bが設けられた表面2cに当接させる。この際、第一筒状部22の一端開口側には固定部材14の嵌合部22cが設けられており、かつこの嵌合部22cは固定部材14の端面14bから突出している。そのため、この嵌合部22cの先端が最初に被圧入部材2と嵌合した状態で固定部材14が被圧入部材2に当接することで、位置決めを伴って固定部材14を被圧入部材2の表面2cに当接させることができる。また、プラグ1はマグネット20の磁力によりパンチ12の先端部12aに保持されているため、上記姿勢でプラグ圧入器具10を移動させる間に、プラグ1が下方に脱落するおそれはない。
【0036】
上述のようにして固定部材14の端面14bを被圧入部材2の表面2cに当接させた後、複数のボルト28(図3を参照)により固定部材14をボルト穴2bに締結することで、固定部材14に連結固定されたプラグ圧入器具10の本体(ハウジング11、パンチ12等)を被圧入部材2に連結固定する。
【0037】
ここで、固定部材14の端面14bには第二シール部材16が設けられているため、図6に示すように、固定部材14を被圧入部材2の表面2cに連結固定した状態では、第二シール部材16が被圧入部材2の表面2cに倣って変形した状態で密着する。これにより、被圧入領域となるプラグ1と圧入穴2aとの間よりも径方向外側に位置し、かつ被圧入部材2と固定部材14との間が第二シール部材16によりシールされた状態となる。
【0038】
(S3)プラグ圧入工程
本工程S3では、プラグ圧入器具10に保持された状態のプラグ1を被圧入部材2の圧入穴2aに圧入する。具体的には、被圧入部材2の所定位置にプラグ圧入器具10を固定した状態で、押込み用ボルト18をねじ込んで連結軸17及び連結軸17に連結されたパンチ12を一体に下方に押込む。この際、プラグ圧入器具10は、嵌合部22cの位置決め機能により予めパンチ12の下方への摺動によりプラグ1を圧入穴2aに圧入し得る位置及び姿勢で被圧入部材2に固定されているので(図6を参照)、上述のようにパンチ12を下方に摺動させて先端部12aに保持した状態のプラグ1を圧入穴2aに押込むことで、プラグ1を圧入穴2aに対して適正に圧入することが可能となる(図7を参照)。
【0039】
また、プラグ1を圧入穴2aの軸方向所定位置に圧入した状態では、パンチ12の鍔部12bが小径部22aの端面22a2に当接している。鍔部12bの先端部12a側の端面12b1には第一シール部材15が設けられているため、上述のようにプラグ1を圧入穴2aの軸方向所定位置に圧入した状態では、鍔部12bの端面12b1が小径部22aの端面22a2と当接すると共に、第一シール部材15は小径部22aの端面22a2に密着変形する(図7を参照)。これにより、鍔部12bと第一筒状部22の小径部22aとの間がシールされた状態となる。
【0040】
(S4)リークテスト工程
本工程S4では、圧入穴2aにプラグ1が圧入された状態でハウジング11の内部にエアを供給してリークテストを行う。パンチ12の下方への摺動によりプラグ1が圧入穴2aの軸方向所定位置に圧入された状態では、小径部22aの貫通穴22dとパンチ12の溝部12eとが連通した状態となる。これにより、流体供給管21から供給されたエアなどのテスト用流体を、圧入穴2aとプラグ1との境界(圧入部分)にまで到達可能な流体通路13がハウジング11とパンチ12との間に形成される(図7を参照)。また、プラグ1が圧入される位置までパンチ12が下降した状態では、鍔部12bと第一筒状部22の小径部22aとの間がシールされると共に、被圧入部材2と固定部材14との間が第二シール部材16によりシールされた状態となる(ともに図7を参照)。
【0041】
よって、この状態で、流体供給管21からハウジング11の内部に向けてエアを供給することで、エアがプラグ圧入器具10の内部に生じた隙間を通じて、あるいはプラグ圧入器具10と被圧入部材2との隙間を通じて外部に漏れる事態を防止しつつ、リークテストを実施し得る(図8を参照)。
【0042】
以上のようにして圧入及びリークテストを行った後、プラグ圧入器具10を被圧入部材2から取り外す。具体的には、まず押込み用ボルト18を押込み時と反対方向にねじり、押込み用ボルト18を上方に移動させることで連結軸17から遠ざける。これにより、連結軸17の外周に配置されたスプリング19が圧入時に蓄積された弾性復元力を開放して連結軸17を上方に押し上げるので、連結軸17に連結されたパンチ12が上昇し、プラグ1からパンチ12が外れる。然る後、ボルト28を外して固定部材14と被圧入部材2との連結状態を解消することで、プラグ圧入器具10が被圧入部材2から取り外される。
【0043】
以上述べたように、本実施形態に係るプラグ圧入器具10では、固定部材14を介してハウジング11を被圧入部材2に固定した状態で、ハウジング11に対して摺動可能に収容されたパンチ12を、その先端部12aにプラグ1を保持した状態でハウジング11の一端開口側に摺動させることで、プラグ1を被圧入部材2に圧入可能とした。このようにすることで、パンチ12からの圧入荷重を被圧入部材2と固定部材14との固定部で受けることができる。これにより、従来の如く被圧入部材2を圧入方向後方側から巨大な受け部材で受けずに済むので、プラグ1の圧入に必要な機器全体の小型化を図ることができる。また、小型化できれば、作業者が器具として手作業で取り扱うことも可能になるので、被圧入部材2を例えば作業台の上に置いた状態で簡易に圧入作業を実施することが可能となり、作業性の向上を図ることが可能となる。
【0044】
また、本実施形態では、パンチ12に、先端部12aよりも基端側で径方向外側に突出する鍔部12bと、先端部12aから基端側に向けて延びる溝部12eとを設けると共に、鍔部12bの先端部12a側の端面12b1に第一シール部材15を設けて、ハウジング11の第一筒状部22を径方向に貫く貫通穴22dと、溝部12eとが連通することにより流体通路13が形成されるようにした。このようにパンチ12を構成することにより、パンチ12をハウジングの一端開口側に摺動させてプラグ1を圧入した状態では、鍔部12bの先端部12a側の端面12b1が第一筒状部22の小径部22aの端面22a2に押し付けられた状態となる。よって、この鍔部12bの端面12b1に第一シール部材15を設けることで、パンチ12とハウジング11との間のシール性を高めることが可能となる。また、パンチ12の先端部12aから基端側に向けて延びる溝部12eに、第一筒状部22の小径部22aを径方向に貫通する貫通穴22dを連通させて流体通路13を形成することにより、流体通路13の端部となる溝部12eの基端を鍔部12bに設けた第一シール部材15で確実にシールすることができる。これによってもシール性を高めることが可能となる。
【0045】
また、本実施形態では、ハウジング11に収容されパンチ12の後端側と連結される連結軸17と、連結軸17に外挿されるスプリング19と、ハウジング11の他端に開口したボルト穴24aとをさらに設けて、ボルト穴24aに押込み用ボルト18をねじ込み、連結軸17をハウジング11の一端開口側に押込むことで、パンチ12をハウジング11の一端開口側に向けて摺動可能に構成した。このようにパンチ12の後端を連結軸17で延長し、ハウジング11の蓋部24の他端に設けたボルト穴24aに押込み用ボルト18をねじ込むことによって、容易にパンチ12を圧入穴2aに向けて押込むことが可能となる。また、押込み用ボルト18で連結軸17を押込む構造とすることで、押込み用ボルト18と連結軸17とを縁切りした状態にできる。これにより、圧入及びリークテスト完了後、押込み用ボルト18を逆方向にねじり戻すことで容易に押込み用ボルト18を連結軸17から遠ざけることができる。また、この際、連結軸17の外周にスプリング19を配設することにより、押込み用ボルト18を連結軸17から遠ざけた際、スプリング19の弾性復元力が発現し、パンチ12及び連結軸17が押込み前の位置に復帰する。よって、リークテスト後、容易にパンチ12を圧入前の位置であるプラグ1の取付け位置に戻すことができ、次の作業に容易に移ることが可能となる。
【0046】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明に係るプラグ圧入器具は、上記例示の構成に限られることなく、本発明の範囲内において種々の変更が可能なことはもちろんである。
【符号の説明】
【0047】
1 プラグ
2 被圧入部材
2a 圧入穴
2b ボルト穴
2c 表面
10 プラグ圧入器具
11 ハウジング
12 パンチ
12a 先端部
12b 鍔部
12e 溝部
13 流体通路
14 固定部材
15 第一シール部材
16 第二シール部材
17 連結軸
18 押込み用ボルト
19 スプリング
20 マグネット
21 流体供給管
22 第一筒状部
22a 小径部
22b 大径部
22c 嵌合部
22d 貫通穴
23 第二筒状部
24 蓋部
24a ボルト穴
25,26,27,28,29 ボルト
S1 プラグ取付け工程
S2 圧入器具固定工程
S3 プラグ圧入工程
S4 リークテスト工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8