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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134172
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 12/78 20110101AFI20240926BHJP
【FI】
H01R12/78
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044321
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】390033318
【氏名又は名称】日本圧着端子製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 一登
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 大将
【テーマコード(参考)】
5E223
【Fターム(参考)】
5E223AB32
5E223AC19
5E223AC21
5E223AC25
5E223BA04
5E223BA08
5E223BB01
5E223BB12
5E223CB22
5E223CB31
5E223CB39
5E223CC15
5E223CD02
5E223DA34
5E223DB04
5E223DB08
5E223DB23
5E223EA27
(57)【要約】
【課題】簡単な構造で接続部材の嵌合不良の発生を抑制でき、且つ接続部材を抜脱するときの作業が簡単であるコネクタを提供する。
【解決手段】挿入抵抗付与部材RAは、コンタクト3の接触部Cよりも挿入方向X1の反対方向X2に離間した位置で、接触部Cとは反対側から挿入凹部SS内に突出する突起28を含む。接続部材4が挿入凹部SSに挿入されるときに、突起28が接続部材4の一端4eにおける補強板43の外面43aに乗り上げてから、接続部材4の一端4eが、コンタクト3の傾斜部36の途中部に当接するまでに、接続部材4が挿入方向X1に所定距離移動する。接続部材4が挿入開始から挿入終了までに受ける挿入抵抗は、乗上動作のときに最大値を発生する。
【選択図】図12A-12F
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に延びる絶縁部と、前記絶縁部の一方の面に前記長手方向の一端から所定の範囲で露出し前記長手方向に延び且つ短手方向に並列配置された複数の導体部と、前記絶縁部の他方の面に前記長手方向の前記一端から所定の範囲で固定され外面の全域が平坦面である補強板と、を含むフレキシブルな接続部材が接続されるコネクタであって、
前記接続部材が前記一端から前記長手方向に沿う挿入方向に挿入される挿入凹部を含む樹脂製のハウジングであって、前記挿入凹部は前記接続部材の挿入完了位置で前記一端が突き当てられる突き当て部を含むハウジングと、
前記ハウジングに保持された弾性片部をそれぞれ含む複数のコンタクトであって、前記弾性片部は、前記挿入方向に対して傾斜する傾斜部と、前記傾斜部の挿入側端にある頂部に配置され、対応する前記導体部に接触する接触部と、を含む複数のコンタクトと、
前記接触部よりも前記挿入方向の反対方向に離間した位置で、前記接触部とは反対側から前記挿入凹部内に突出する突起を含み、該突起を介して前記接続部材に挿入抵抗を付与する弾性変形可能な挿入抵抗付与部材と、を備え、
前記接続部材が挿入されるときに、前記突起が前記接続部材の前記一端における前記補強板の前記外面に乗り上げてから、前記接続部材の前記一端が前記コンタクトの前記傾斜部の途中部に当接するまでに、前記接続部材が前記挿入方向に所定距離移動するように、前記突起の位置が設定されており、
前記接続部材が挿入開始から挿入終了までに受ける前記挿入抵抗は、前記乗上動作のときに最大値を発生する、コネクタ。
【請求項2】
前記接続部材が前記挿入開始から前記挿入終了までに移動する区間は、挿入開始位置から前記補強板の一端が前記突起に当接する第1当接位置まで移動する初期挿入区間と、前記第1当接位置から前記突起が前記補強板の前記一端における前記外面に乗り上げる動作を完了する乗上動作完了位置まで移動する乗上動作区間と、前記乗上動作完了位置から前記接続部材の前記一端が前記コンタクトの前記傾斜部の前記途中部に当接する第2当接位置まで移動する中期挿入区間と、前記第2当接位置から前記一端が前記接触部を乗り越える動作を完了する乗越動作完了位置まで移動する乗越動作区間と、前記乗越動作完了位置から挿入完了位置まで移動する後期挿入区間と、を含み、
前記接続部材が前記挿入開始から前記挿入終了までに受ける前記挿入抵抗は、前記乗上動作区間で前記最大値である第1ピーク値を発生し、前記乗越動作区間で前記第1ピーク値よりも低い第2ピーク値を発生し、且つ、前記中期挿入区間での前記挿入抵抗は、前記第2ピーク値よりも低くされている、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記初期挿入区間の区間長は、前記乗上動作区間の区間長よりも長い、請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記乗上動作区間の区間長、前記中期挿入区間の区間長、および前記乗越動作区間の区間長の和が、前記後期挿入区間の区間長と同等または同等以下である、請求項2に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記初期挿入区間の区間長は、前記接続部材が前記挿入開始から前記挿入終了までに移動する全区間の合計の区間長の20%以上60%以下である、請求項2に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記挿入抵抗付与部材は、前記ハウジングと単一の部材で一体に形成された片持ち状の樹脂弾性アームであって、前記突起を先端に有する樹脂弾性アームを含む、請求項1から5の何れか一項に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記樹脂弾性アームは、前記挿入凹部に挿入されるときの前記接続部材の前記短手方向の幅中心の位置に位置が一致する幅中心を有しており、
前記樹脂弾性アームの幅は、前記接続部材の前記短手方向の幅の50%以上70%以下である、請求項6に記載のコネクタ。
【請求項8】
前記挿入抵抗付与部材は、前記ハウジングに保持された金属弾性アームを含む、請求項1から5の何れか一項に記載のコネクタ。
【請求項9】
前記金属弾性アームは、前記複数のコンタクトとは別体で設けられた金属弾性アームを含む、請求項8に記載のコネクタ。
【請求項10】
前記複数のコンタクトは、前記金属弾性アームと単一の部材で一体に形成されたコンタクトを含む、請求項8に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
FPC,FFC等の信号伝送媒体(接続部材)が接続される電気コネクタとして、特許文献1に記載の電気コネクタは、絶縁ハウジングに取り付けられたロック部材を含む。信号伝達媒体を絶縁ハウジング内に挿入するときに、前記ロック部材の係止爪部が、信号伝送媒体(接続部材)の補強部材の切り欠き状の凹部(係合位置決め部)に係止することにより、信号伝達媒体が正規位置に保持される。
【0003】
また、信号伝達媒体を絶縁ハウジングから抜脱するときには、作業者が、ロック部材に一体に設けられた解除操作部を操作して、切欠き状の凹部に対する係止爪部の係止を解除する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第621935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、補強部材に切欠き状の凹部を設けるため、構造が複雑になる。また、絶縁ハウジングから信号伝達媒体(接続部材)を抜脱する前に、解除操作部を操作する作業が必要であり、作業が煩雑である。
【0006】
そこで、本発明の一実施形態は、簡単な構造で接続部材の嵌合不良の発生を抑制することができ、且つ接続部材を抜脱するときの作業が簡単であるコネクタを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態は、長手方向(L)に延びる絶縁部(41)と、前記絶縁部の一方の面(41a)に前記長手方向の一端から所定の範囲で露出し前記長手方向に延び且つ短手方向(S)に並列配置された複数の導体部(42)と、前記絶縁部の他方の面(41b)に前記長手方向の前記一端から所定の範囲で固定され外面(43a)の全域が平坦面である補強板(43)と、を含むフレキシブルな接続部材(4)が接続されるコネクタ(1)を提供する。前記コネクタは、樹脂製のハウジング(2)と、複数のコンタクト(3)と、弾性変形可能な挿入抵抗付与部材(RA;26;6;37)と、を備える。前記ハウジングは、前記接続部材が前記一端から前記長手方向に沿う挿入方向(X1)に挿入される挿入凹部(SS)を含む。前記挿入凹部は前記接続部材の挿入完了位置で前記一端が突き当てられる突き当て部(25a)を含む。前記複数のコンタクトは、前記ハウジングに保持された弾性片部(34)をそれぞれ含む。前記弾性片部は、前記挿入方向に対して傾斜する傾斜部(36)と、前記傾斜部の挿入側端にある頂部(36a)に配置され、対応する前記導体部に接触する接触部(C)と、を含む。前記挿入抵抗付与部材は、前記接触部よりも前記挿入方向の反対方向(X2)に離間した位置で、前記接触部とは反対側から前記挿入凹部内に突出する突起(28;65;38)を含む。前記挿入抵抗付与部材は、前記突起を介して前記接続部材に挿入抵抗を付与する。前記接続部材が挿入されるときに、前記突起が前記接続部材の前記一端における前記補強板の前記外面に乗り上げてから、前記接続部材の前記一端が前記コンタクトの前記傾斜部の途中部に当接するまでに、前記接続部材が前記挿入方向に所定距離移動するように、前記突起の位置が設定されている。前記接続部材が挿入開始から挿入終了までに受ける前記挿入抵抗は、前記乗上動作のときに最大値(Pmax)を発生する。
【0008】
この構成によれば、乗上動作時に最大値を発生した接続部材は、一端における補強板に、挿入抵抗付与部材突起が乗り上げてから、一端がコンタクトの傾斜部の途中部に当接するまでに、勢いよく所定距離移動する。このときの慣性で、接続部材の一端が接触部を乗り越えて、挿入完了位置まで確実に達するので、嵌合不良の発生を抑制することができる。先行技術のように補強部材(補強板)に凹みを設ける必要がなく、補強板の外面の全域が平坦面なので、構造が簡単である。また、接続部材を抜脱するときに、先行技術のような解除作業は不要であり、作業性がよい。
【0009】
なお、括弧内の英数字は、後述する実施形態における対応構成要素等を表すが、このことは、むろん、本発明がそれらの実施形態に限定されるべきことを意味するものではない。以下、この項において同じ。
【0010】
本発明の一実施形態では、前記接続部材が前記挿入開始から前記挿入終了までに移動する区間は、初期挿入区間(K1)と、乗上動作区間(K2)と、中期挿入区間(K3)と、乗越動作区間(K4)と、後期挿入区間(K5)と、を含む。前記初期挿入区間は、挿入開始位置(A0)から前記補強板の一端が前記突起に当接する第1当接位置(A1)まで移動する区間である。前記乗上動作区間は、前記第1当接位置から前記突起が前記補強板の前記一端における前記外面に乗り上げる動作を完了する乗上動作完了位置(A2)まで移動する区間である。前記中期挿入区間は、前記乗上動作完了位置から前記接続部材の前記一端が前記コンタクトの前記傾斜部の前記途中部に当接する第2当接位置(A3)まで移動する区間である。乗越動作区間は、前記第2当接位置から前記一端が前記接触部を乗り越える動作を完了する乗越動作完了位置(A4)まで移動する区間である。前記後期挿入区間は、前記乗越動作完了位置から挿入完了位置(A5)まで移動する区間である。前記接続部材が前記挿入開始から前記挿入終了までに受ける前記挿入抵抗は、前記乗上動作区間で前記最大値(Pmax)である第1ピーク値(P1)を発生し、前記乗越動作区間で前記第1ピーク値よりも低い第2ピーク値(P2)を発生し、且つ、前記中期挿入区間での前記挿入抵抗は、前記第2ピーク値よりも低くされている。
【0011】
この構成によれば、最大値である第1ピーク値を発生する乗上動作区間を通過した接続部材の一端は、第2ピーク値よりも低い挿入抵抗で中期挿入区間を勢いよく慣性移動し、その慣性で、接触部を乗り越えて、挿入完了位置まで確実に達する。これにより嵌合不良の発生を抑制することができる。
【0012】
本発明の一実施形態では、前記初期挿入区間の区間長(LK1)は、前記乗上動作区間の区間長(LK2)よりも長い(LK1>LK2)。この構成によれば、接続部材は、乗上動作の前に十分な長さで挿入凹部に挿入される。このため、乗上動作時の接続部材の挿入姿勢が安定する。
【0013】
本発明の一実施形態では、前記乗上動作区間の区間長(LK2)、前記中期挿入区間の区間長(LK3)、および前記乗越動作区間の区間長(LK4)の和が、前記後期挿入区間の区間長(LK5)と同等または同等以下である(LK2+LK3+LK4≦LK5)。この構成によれば、乗越動作の後に、接続部材が十分な距離を移動して突き当て部に突き当たるので、作業者は、接続部材が挿入凹部の奥まで挿入されて、挿入が完了した感覚を得易い。
【0014】
本発明の一実施形態では、前記初期挿入区間の区間長(LK1)は、前記接続部材が前記挿入開始から前記挿入終了までに移動する全区間(WK)の合計の区間長(LWK)の20%以上60%以下である(0.2×LWK≦LK1≦0.6×LWK)。この構成によれば、初期挿入区間の区間長を全区間の合計の区間長の20%以上とすることにより、接続部材は、乗上動作の前に十分な長さで挿入凹部に挿入される。このため、作業者は、接続部材を安定した姿勢で挿入方向に加圧することかでき、作業性が良い。また、初期挿入区間の区間長を全区間の合計の区間長の60%以下とすることにより、小型化に寄与することができる。
【0015】
本発明の一実施形態では、前記挿入抵抗付与部材は、前記ハウジングと単一の部材で一体に形成された片持ち状の樹脂弾性アーム(26)であって、前記突起を先端に有する樹脂弾性アームを含む。この構成によれば、構造を簡素化することができる。
【0016】
本発明の一実施形態では、前記樹脂弾性アームは、前記挿入凹部に挿入されるときの前記接続部材の前記短手方向の幅中心(W1C)の位置に位置が一致する幅中心(W2C)を有しており、前記樹脂弾性アームの幅(W2)は、前記接続部材の前記短手方向の幅(W1)の50%以上70%以下である(0.5×W1≦W2≦0.7×W1)。樹脂弾性アームの幅が接続部材の幅の50%未満では、挿入抵抗の最大値が低くなるため、十分な慣性が得られない。一方、樹脂弾性アームの幅が、接続部材の幅の70%を超えると、接続部材を挿入し難くなる。そこで、樹脂弾性アームの幅を、接続部材の幅の50%以上70%以下とすることにより、十分な慣性と挿入し易さを両立することができる。)
本発明の一実施形態では、前記挿入抵抗付与部材は、前記ハウジングに保持された金属弾性アーム(6;37)を含む。この構成によれば、弾性力の調整が容易になる。
【0017】
本発明の一実施形態では、前記金属弾性アームは、前記複数のコンタクトとは別体で設けられた金属弾性アーム(6)を含む。この構成によれば、弾性力の調整が容易になる。
【0018】
本発明の一実施形態では、前記複数のコンタクトは、前記金属弾性アーム(37)と単一の部材で一体に形成されたコンタクト(3R)を含む。この構成によれば、構造を簡素化することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、簡単な構造で嵌合不良の発生を抑制することができ、且つ接続部材を抜脱するときの作業が簡単である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係るコネクタと接続部材の斜視図である。
図2図2は、別角度からのコネクタと接続部材の斜視図である。
図3A-3B】図3Aおおよび図3Bは、接続部材の平面図および側面図である。
図4図4は、コネクタの正面図である。
図5図5は、コネクタの背面図である。
図6図6は、コネクタの平面図である。
図7図7は、コネクタの底面図である。
図8A-8B】図8Aは、コネクタの断面図であり、図6のXIIIA-XIIIA断面図に相当する。図8Bは、樹脂弾性アームの突起の拡大図である。
図9図9は、コネクタの断面図であり、図6のIX-IX断面図に相当する。
図10図10は、接続部材の初期挿入が完了したときのコネクタの斜視図である。
図11図11は、接続部材が挿入完了位置に達したしたときのコネクタの斜視図である。
図12A-12F】図12A-12Fは、接続部材の挿入工程を順次に示すコネクタの断面図である。
図13図13は、接続部材の挿入位置と接続部材に付与される挿入抵抗の関係を示すグラフ図である。
図14図14は、本発明の第2実施形態に係るコネクタと接続部材の斜視図である。
図15図15は、別角度からのコネクタと接続部材の斜視図である。
図16図16は、コネクタの部分断面斜視図である。
図17図17は、コネクタの断面図である。
図18A-18F】図18A-18Fは、接続部材の挿入工程を順次に示すコネクタの断面図である。
図19図19は、本発明の第3実施形態に係るコネクタと接続部材の斜視図である。
図20図20は、コネクタの平面図である。
図21図21は、コネクタの断面図であり、図20のXXI-XXI断面図に相当する。
図22図22は、コネクタの断面図であり、図20のXXII-XXII断面図に相当する。
図23A-23F】図23A-23Fは、接続部材の挿入工程を順次に示すコネクタの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に従って説明する。
【0022】
図1は、本発明の第1実施形態に係るコネクタと接続部材の斜視図である。図2は、別角度からのコネクタと接続部材の斜視図である。図1および図2に示すように、コネクタ1は、合成樹脂性のハウジング2と、複数のコンタクト3と、挿入抵抗付与部材RA(図8Aを参照)とを備える。コネクタ1には、フレキシブルな平形の接続部材4が接続される。
【0023】
接続部材4は、FFC(フレキシブル・フラット・ケーブル)やFPC(フレキシブル・プリンテッド・サーキット)などのフレキシブルな平形の接続部材である。本実施形態では、接続部材4がFFCである場合に則して説明する。
【0024】
図3Aおおよび図3Bは、接続部材4の平面図および側面図である。図3Aおおよび図3Bに示すように、接続部材4は、長手方向Lに延びる絶縁部41および複数の導体部42と、補強板43と、を含む。複数の導体部42は、短手方向Sに間隔を空けて並列に配置されている。絶縁部41は、接続部材4の厚み方向Tに積層されたベース部44と、カバー部45と、を含む。カバー部45は、各導体部42が接続部材4の長手方向Lの一端4eから所定の範囲で露出するように、ベース部44および各導体部42を覆っている。各導体部42は、絶縁部41の一方の面41aに部分的に露出する。
【0025】
補強板43は、ベース部44に対してカバー部45とは反対側に配置されている。補強板43は、ベース部44(絶縁部41の他方の面41b)に、接続部材4の長手方向Lの一端4eから所定の範囲で積層固定されている。補強板43の外面43aの全域が、平坦面である。補強板43は、合成樹脂製である。ただし、補強板43が、金属製であってもよい。
【0026】
次いで、ハウジング2を説明する。
【0027】
図4は、コネクタ1の正面図である。図5は、コネクタ1の背面図である。図6は、コネクタ1の平面図である。図7は、コネクタ1の底面図である。図8Aは、図6のXIIIA-XIIIA断面図に相当する。図8Bは、図8Aの部分拡大図である。図9は、図6のIX-IX断面図である。
【0028】
図1および図2に示すように、ハウジング2は、前壁21と、後壁22と,一対の側壁23と、上壁24と、下壁25と、挿入凹部SSと、挿入抵抗付与部材RAを構成する樹脂弾性アーム26(図8Aを参照)と、を含む。図8Aに示すように、挿入凹部SSは、上壁24と、下壁25との間で、前壁21と、後壁22と、一対の側壁23とによって取り囲まれた、ハウジング2の内部空間である。
【0029】
図1図10および図11に示すように、挿入凹部SSに対して、接続部材4が、一端4e側から、長手方向Lに沿う挿入方向X1に挿入される。そのため、図6および図8Aに示すように、挿入凹部SSは、上壁24に形成された矩形状の挿入開口SSaで、上方(挿入方向X1の反対方向X2)に開放している。図8Aに示すように、挿入凹部SSの底には、下壁25の内上面である突き当て部25aが設けられている。以下では、挿入方向X1に対して直交し且つ互いに直交する2方向を前後方向Yおよび幅方向Wと言う。幅方向Wは、挿入時の接続部材4の短手方向Sに沿う方向である。
【0030】
図8Aに示すように、前壁21は、前面である外面21aと、挿入凹部SSに面する内面21bと、コンタクト圧入溝21cと、矩形状の開口孔21dと、を含む。コンタクト圧入溝21cは、挿入方向X1に延び、下方(挿入方向X1)に開放する。図4および図8Aに示すように、開口孔21dは、前壁21を前後方向Yに貫通する。開口孔21dには、樹脂弾性アーム26が形成されている。
【0031】
図8Aに示すように、樹脂弾性アーム26は、開口孔21dの上縁部21eから下方(挿入方向X1)に片持ち状に延設された矩形板状のアーム本体27と、アーム本体27の延設端27aに設けられた突起28と、を含む。
【0032】
図4に示すように、樹脂弾性アーム26は、挿入凹部SSに挿入されるときの接続部材4の短手方向Sの幅中心W1Cの位置に位置が一致する幅中心W2Cを有している。樹脂弾性アーム26の幅W2は、接続部材4の短手方向Sの幅W1の50%以上70%以下である。すなわち、0.5×W1≦W2≦0.7×W1の関係が成立する。
【0033】
図8Aに示すように、突起28は、頂部28aと、頂部28aよりも挿入方向X1の反対方向X2に配置された第1傾斜部28bと、頂部28aよりも挿入方向X1に配置された第2傾斜部28cと、を含む。樹脂弾性アーム26の自由状態で、突起28の少なくとも一部は、挿入凹部SS内に進出している。第1傾斜部28bおよび第2傾斜部28cは、挿入方向X1に対して、互いに逆向きに傾斜している。第1傾斜部28bは、挿入方向X1に向かって接触部C側に近づくように傾斜している。
【0034】
樹脂弾性アーム26の自由状態で、図8Bに示すように、挿入方向X1に対する第1傾斜部28bの傾斜角度θは、60度以上90度未満の範囲(60度≦θ<90度)にあることが好ましく、70度以上90度未満の範囲(70度≦θ<90度)にあれば、より好ましく、80度以上90度未満の範囲(80度≦θ<90度)であれば一層好ましい。すなわち、第1傾斜部28bの傾斜角度θが90度に近いほど、接続部材4の挿入時に、接続部材4の一端4eが突起28に突き当たった感覚を作業者に強く与えることができるからである。
【0035】
図8Aに示すように、後壁22は、後面である外面22a(図5を参照)と、挿入凹部SSに面する内面22bと、複数のコンタクト保持溝22cと、を含む。コンタクト保持溝22cは、後壁22の内面22bに形成され、挿入方向X1に延び、下方(挿入方向X1)に開放する。
【0036】
次いで、コンタクト3を説明する。
【0037】
図8Aに示すように、コンタクト3は、ベース30と、第1固定片部31と、第2固定片部32と、湾曲状の折り返し部33と、弾性片部34と、接触部Cと、含む。ベース30は、前後方向Yに延びるリードを構成し、回路基板(図示せず)の表面の導体部に半田付けされる。ベース30は、前端30aと、後端30bと、を含む。第1固定片部31は、ベース30の中間部から上方(挿入方向X1の反対方向X2)に直交状に延設されている。第1固定片部31は、ハウジング2の前壁21のコンタクト圧入溝21cに圧入固定されている。
【0038】
第2固定片部32は、ベース30の後端30bから上方に直交状に延設されている。弾性片部34は、第2固定片部32の延設端32aから折り返し部33を介して折り返された片持ち状の片部である。第2固定片部32は、ハウジング2の後壁22のコンタクト保持溝22cに挿入保持されている。
【0039】
弾性片部34は、挿入方向延伸部35と、傾斜部36と、接触部Cと、を含む。挿入方向延伸部35は、折り返し部33から挿入方向X1に沿って延びる。傾斜部36は、挿入方向延伸部35の延伸端35aから、挿入方向X1に向かって前壁21に近づくように傾斜状に延びる。接触部Cは、傾斜部36の挿入側端に位置する頂部36aに配置されている。弾性片部34の自由状態で、接触部Cと、接触部Cに隣接する傾斜部36の途中部とは、挿入凹部SS内に配置されている。
【0040】
次いで、接続部材4をコネクタ1に接続する動作を説明する。
【0041】
図10は、接続部材4の初期挿入が完了したときのコネクタ1の斜視図である。図11は、接続部材4が挿入完了位置に達したしたときのコネクタ1の斜視図である。図12A-12Fは、接続部材4の挿入工程を順次に示すコネクタ1の断面図である。図13は、接続部材4の挿入位置(横軸)と接続部材4に付与される挿入抵抗(縦軸)との関係を示すグラフ図である。
【0042】
図12Aに示すように、接続部材4は、一端4eから挿入開口SSaを通して挿入凹部SSに挿入される。接続部材4の挿入位置は、接続部材4の一端4eの挿入方向X1の位置を基準として表される。接続部材4の一端4eが挿入開口SSaに位置するときの接続部材4の位置が、挿入開始位置A0(図12Aを参照)である。
【0043】
図13に示すように、接続部材4が挿入開始位置(図12Aを参照)から挿入完了位置(図12Fを参照)までに移動する区間(全区間WKに相当)は、初期挿入区間K1と、乗上動作区間K2と、中期挿入区間K3と、乗越動作区間K4と、後期挿入区間K5と、を含む。
【0044】
初期挿入区間K1は、接続部材4が、挿入開始位置A0(図12Aを参照)から第1当接位置A1(図12Bを参照)に達するまでに移動する区間である。第1当接位置A1は、補強板43の一端(接続部材4の一端4e)が樹脂弾性アーム26の突起28の第1傾斜部28bに当接するときの接続部材4の位置である。
【0045】
乗上動作区間K2は、接続部材4が、第1当接位置A1(図12Bを参照)から乗上動作完了位置A2(図12Cを参照)に達するまでに移動する区間である。乗上動作完了位置A2は、突起28の頂部28aが補強板43の一端(接続部材4の一端4e)における外面43aに乗り上げる動作を完了するときの接続部材4の位置である。
【0046】
中期挿入区間K3は、接続部材4が、乗上動作完了位置A2(図12Cを参照)から第2当接位置A3(図12Dを参照)に達するまでに移動する区間である。第2当接位置A3は、接続部材4の一端4eがコンタクト3の傾斜部36の途中部に当接するときの接続部材4の位置である。
【0047】
乗越動作区間K4は、接続部材4が、第2当接位置A3(図12Dを参照)から乗越動作完了位置A4(図12Eを参照)に達するまでに移動する区間である。乗越動作完了位置A4は、接続部材4の一端4eが接触部Cを乗り越える動作を完了する乗ときの接続部材4の位置である。
【0048】
後期挿入区間K5は、接続部材4が、乗越動作完了位置A4(図12Eを参照)から挿入完了位置A5(図12Fを参照)に達するまでに移動する区間である。挿入完了位置A5は、接続部材4の一端4eが挿入凹部SSの底の突き当て部に突き当たるときの接続部材4の位置である。
【0049】
図13に示すように、接続部材4が挿入開始から挿入終了までに受ける挿入抵抗は、乗上動作区間K2で、全区間WKにおける挿入抵抗の最大値Pmaxである第1ピーク値P1を発生する。また、乗越動作区間K4で第1ピーク値P1よりも低い第2ピーク値P2を発生する(P2<P1)。中期挿入区間K3での挿入抵抗の最大値P3および後期挿入区間K5での挿入抵抗の最大値P4は、第2ピーク値P2よりも低い。中期挿入区間K3での挿入抵抗の最大値P3は、後期挿入区間K5での挿入抵抗の最大値P4よりも低い。
【0050】
初期挿入区間K1の区間長LK1は、乗上動作区間K2の区間長LK2よりも長くされている。すなわち、LK1>LK2の関係が成立する。
【0051】
乗上動作区間K2の区間長LK2、中期挿入区間K3の区間長LK3、および乗越動作区間K4の区間長LK4の和が、後期挿入区間K5の区間長LK5と同等または同等以下にされている。すなわち、LK2+LK3+LK4≦LK5の関係が成立する。
【0052】
初期挿入区間K1の区間長LK1は、挿入開始位置A0から前記挿入完了位置A5までの全区間WKの合計の区間長LWKの20%以上60%以下である。すなわち、0.2×LWK≦LK1≦0.6×LWKの関係が成立する。
【0053】
本実施形態によれば、接続部材4の一端4eの補強板43に樹脂弾性アーム26(挿入抵抗付与部材RA)の突起28が乗り上げるときに(図12Bおよび図12Cを参照)、図13に示すように、全区間WKにおける挿入抵抗の最大値Pmax(第1ピーク値P1)を発生する。突起28が補強板43に乗り上げてから、接続部材4の一端4eがコンタクト3の傾斜部36の途中部に当接するまでに(図12Cおよび図12Dを参照)、勢いよく所定距離移動する。このときの慣性で、接続部材4の一端4eがコンタクト3の接触部Cを乗り越えて(図12Eを参照)、挿入完了位置A5(図12Fを参照)まで確実に達するので、嵌合不良の発生を抑制することができる。先行技術のように補強部材(補強板)に凹みを設ける必要がなく、補強板43の外面43aの全域が平坦面なので、構造が簡単である。また、接続部材4を抜脱するときに、先行技術のような解除作業は不要であり、作業性がよい。
【0054】
また、図13に示すうように、接続部材4が挿入開始から挿入終了までに受ける挿入抵抗は、乗上動作区間K2で最大値Pmaxである第1ピーク値P1を発生し、乗越動作区間K4で第1ピーク値P1よりも低い第2ピーク値P2を発生する。この構成によれば、Pmaxである第1ピーク値P1を発生する乗上動作区間K2を通過した接続部材4の一端4eは、第2ピーク値P2よりも低い挿入抵抗を受ける状態で中期挿入区間K3を勢いよく慣性移動し、その慣性で、コンタクト3の接触部Cを乗り越えて、挿入完了位置A5まで確実に達する。これにより嵌合不良の発生を抑制することができる。
【0055】
また、初期挿入区間K1の区間長LK1は、乗上動作区間K2の区間長LK2よりも長い(LK1>LK2)。この構成によれば、接続部材4は、乗上動作の前に十分な長さで挿入凹部SSに挿入されている(図12Bを参照)。このため、乗上動作時の接続部材4の挿入姿勢が安定する。
【0056】
また、乗上動作区間K2の区間長LK2、中期挿入区間K3の区間長LK3、および乗越動作区間K4の区間長LK4の和が、後期挿入区間K5の区間長LK5と同等または同等以下にされている(LK2+LK3+LK4≦LK5)。この構成によれば、乗越動作の後に、接続部材4が十分な距離を移動して突き当て部に突き当たるので(図12Eおよび図12Fを参照)、作業者は、接続部材4が挿入凹部SSの奥まで挿入されて、挿入が完了した感覚を得易い。
【0057】
また、初期挿入区間K1の区間長LK1は、挿入開始位置A0から前記挿入完了位置A5までの全区間WKの合計の区間長LWKの20%以上60%以下である(0.2×LWK≦LK1≦0.6×LWK)。この構成によれば、初期挿入区間K1の区間長LK1を全区間WKの合計の区間長LWKの20%以上であるので、接続部材4は、乗上動作の前に十分な長さで挿入凹部SSに挿入されていることになる。このため、作業者は、接続部材4を安定した姿勢で挿入方向に加圧することができ、作業性が良い。また、初期挿入区間K1の区間長LK1を全区間WKの合計の区間長LWKの60%以下の範囲の値とすることにより、小型化に寄与することができる。
【0058】
また、図8Aに示すように、挿入抵抗付与部材RAは、ハウジング2と単一の部材で一体に形成された片持ち状の樹脂弾性アーム26を含む。この構成によれば、構造を簡素化することができる。
【0059】
また、樹脂弾性アーム26は、挿入凹部SSに挿入されるときの接続部材4の短手方向Sの幅中心W1C(図3Aを参照)の位置に位置が一致する幅中心W2C(図4を参照)を有しており、樹脂弾性アーム26の幅W2は、接続部材4の短手方向Sの幅W1の50%以上70%以下にされている(0.5×W1≦W2≦0.7×W1)。樹脂弾性アーム26の幅W2が接続部材4の幅W1の50%未満では、挿入抵抗の最大値が低くなるため、十分な慣性が得られない。一方、樹脂弾性アーム26の幅W2が、接続部材4の幅W1の70%を超えると、接続部材4を挿入し難くなる。そこで、樹脂弾性アーム26の幅W2を、接続部材の幅W1の50%以上70%以下の範囲の値とすることにより、十分な慣性と挿入し易さを両立することができる。
【0060】
次いで、本発明の第2実施形態を説明する。
【0061】
図14は、本発明の第2実施形態に係るコネクタ1Qと接続部材4の斜視図である。図15は、別角度からのコネクタ1Qと接続部材4の斜視図である。図16は、コネクタ1Qの部分断面斜視図である。図17は、コネクタ1Qの断面図である。図18A-18Fは、接続部材4の挿入工程を順次に示すコネクタ1Qの断面図である。
【0062】
第2実施形態のコネクタ1Qが第1実施形態のコネクタ1と主に異なるのは下記である。すなわち、図16および図17に示すように、コネクタ1Qにおいて、ハウジング2の前壁21が、外面21aの幅方向Wの中央部の下部に配置された凹部21fと、凹部21fよりも上方に配置された開放部21gと、を含む。また、ハウジング2は、一対の側部において挿入方向X1の反対方向にX2に延びて反対方向X2に開放するタブ固定溝29(図16では、一方の側部のタブ固定溝29のみを図示)を含む。コネクタ1Qが、単一の金属板で一体に形成された金属アームユニットUを含む。金属アームユニットUは、板状の金属固定アーム5と、挿入抵抗付与部材RAを提供する板状の金属弾性アーム6と、を含む。
【0063】
金属固定アーム5は、ベース50と、主板部51と、一対のタブ52(図16では、一方のタブ52のみを図示)とを含む。ベース50は、回路基板の導体部(図示せず)に半田付けされて固定される。主板部51は、ベース50の後端50aから直交状に挿入方向X1の反対方向X2に延びる。主板部51は、前壁21の外面21aに設けられた凹部21fに沿わされる。一対のタブ52は、主板部51の延設端51aよりも挿入方向X1に配置され、主板部51の一対の側縁から外側方に延びる。各タブ52は、ハウジング2の両側部に設けられたタブ固定溝29に圧入固定される。
【0064】
金属弾性アーム6は、第1部分61と、第2部分62と、第3部分63と、第4部分64と、突起65とを含む。第1部分61は、主板部51の延設端51aから挿入方向X1の反対方向X2に連続して延びる板部である。第1部分61は、金属固定アーム5の一対のタブ52よりも挿入方向X1の反対方向X2に配置される。第1部分61は、主板部51の延設端51aを支点として前後方向Yに曲げ変形可能である。図16に示すように、第1部分61は、開放部21gを覆うカバーとしての機能も果たしている。
【0065】
図16および図17に示すように、第2部分62は、湾曲状の折り返し部を形成する板部である。第3部分63は、第1部分61の延設端61aから、湾曲状の第2部分62を介して折り返され、挿入方向X1に延びる板部である。自由状態の金属弾性アーム6において、第1部分61と第3部分63とは互いに平行である。また、第1部分61の長さは、第3部分63の長さよりも長くされている。
【0066】
図17に示すように、第4部分64は、第3部分63の延設端63aから後方へ直交状に延設された板部である。突起65は、第4部分64の延設端64aに接続された湾曲板状の突起である。突起65は、頂部65aと、頂部65aよりも挿入方向X1の反対方向X2に配置された第1傾斜部65bと、頂部65aよりも挿入方向X1に配置された第2傾斜部65cと、を含む。金属弾性アーム6の自由状態で、突起65の少なくとも一部は、挿入凹部SS内に進出している。第1傾斜部65bおよび第2傾斜部65cは、挿入方向X1に対して、互いに逆向きに傾斜している。第1傾斜部65bは、挿入方向X1に向かって接触部C側に近づくように傾斜している。
【0067】
図15に示すように、幅方向Wに関して、金属弾性アーム6は、挿入凹部SSに挿入されるときの接続部材4の短手方向Sの幅中心W1Cの位置に位置が一致する幅中心W3Cを有している。好ましくは、金属弾性アーム6の幅W3は、接続部材4の短手方向Sの幅W1の50%以上70%以下である(0.5×W1≦W3≦0.7×W1)。金属弾性アーム6の幅W3が接続部材4の幅W1の50%未満では、挿入抵抗の最大値が低くなるため、十分な慣性が得られない。一方、金属弾性アーム6の幅W3が、接続部材4の幅W1の70%を超えると、接続部材4を挿入し難くなる。そこで、金属弾性アーム6の幅W3を、接続部材4の幅W1の50%以上70%以下とすることにより、十分な慣性と挿入し易さを両立することができる。
【0068】
図18A-18Fは、接続部材4の挿入工程を順次に示すコネクタ1Qの断面図である。図18Aは、接続部材4が、一端4eが突起65の第1傾斜部65bに当接する第1当接位置にある状態を示している。
【0069】
図18Bは、第1当接位置から挿入方向X1に微小量だけ移動した接続部材4の一端4eが、第1傾斜部65bを介して突起65を挿入方向X1へ微小量だけ押し下げることにより、第1部分61が後方へ弾性的に曲げ変形された状態を示している。図18Cは、接続部材4が、突起65が接続部材4の一端4eにおける補強板43に乗り上げる動作を完了する乗上動作完了位置にある状態を示している。このとき、金属弾性アーム6の第1部分61が前方へ弾性的に曲げ変形するとともに、第2部分62が湾曲の曲率半径を小さくするように弾性変形する。図18Bおよび図18Cに示すように、第1部分61が、一旦、後方へ曲げ変形してから、前方へ曲げ変形するので、突起65が補強板43に乗り上げるときの挿入抵抗の値(すなわち図13における第1ピーク値P1に相当)を大きくすることができる。
【0070】
図18Dは、接続部材4が、一端4eが傾斜部36の途中部に当接する第2当接位置にある状態を示している。図18Eは、接続部材4が、一端4eが接触部Cを乗り越える動作を完了する乗越動作完了位置にある状態を示している。図18Fが、接続部材4が挿入完了位置にある状態を示している。第2実施形態における接続部材の挿入位置と挿入抵抗との関係は、図示していないが、第1実施形態の図13と同じ変化をする。
【0071】
本実施形態においても、第1実施形態と同じ作用効果を奏する。また、金属弾性アーム6を用いることにより、挿入抵抗を左右する弾性力の調整が容易になる。弾性力の調整は、前述のように、金属弾性アーム6の幅W3を調整することにより行うことに拘らず、金属弾性アーム6の板厚を調整することにより行ってもよい。
【0072】
次いで、本発明の第3実施形態を説明する。
【0073】
図19は、本発明の第3実施形態に係るコネクタ1Rと接続部材4の斜視図である。図20は、コネクタ1Rの平面図である。図21は、コネクタ1Rの断面図であり、図20のXXI-XXI断面図に相当する。図22は、コネクタ1Rの断面図であり、図20のXXII-XXII断面図に相当する。図23A-23Fは、接続部材4の挿入工程を順次に示すコネクタ1Rの断面図である。
【0074】
第3実施形態のコネクタ1Rが第1実施形態のコネクタ1と主に異なるのは下記である。すなわち、第3実施形態のコネクタ1Rでは、図20に示すように、全てのコンタクト3のうちの少なくとも一部の複数のコンタクト3Rが、図21に示すように、挿入抵抗付与部材RAとしての金属弾性アーム37を単一の部材で一体に形成している。図22に示すように、コンタクト3Rを除く残りのコンタクト3には、金属弾性アーム37は設けられていない。
【0075】
図21に示すように、コンタクト3Rにおいて、金属弾性アーム37は、ベース30から上方(反対方向X2)に直交状に延設されている。ハウジング2の前壁21は、金属弾性アーム37を収容し且つ挿入凹部SSに開放する金属弾性アーム収容溝21hを含む。金属弾性アーム37は、ベース30に接続された基端37aと、延設端37bと、延設端37bに設けられた突起38と、を含む。
【0076】
突起38は、頂部38aと、頂部38aよりも挿入方向X1の反対方向X2に配置された第1傾斜部38bと、頂部38aよりも挿入方向X1に配置された第2傾斜部38cと、を含む。金属弾性アーム37の自由状態で、突起38の少なくとも一部は、挿入凹部SS内に進出している。第1傾斜部38bおよび第2傾斜部38cは、挿入方向X1に対して、互いに逆向きに傾斜している。第1傾斜部38bは、挿入方向X1に向かって接触部C側に近づくように傾斜している。
【0077】
図20に示すように、幅方向Wに関して、金属弾性アーム37(図21を参照)が設けられる複数のコンタクト3Rの配置幅W4の幅中心W4Cは、挿入凹部SSに挿入されるときの接続部材4の短手方向S(幅方向Wに相当)の幅の幅中心W1C(図19を参照)と一致する。全てのコンタクト3の極数に対して、金属弾性アーム37が設けられるコンタクト3Rの極数の割合は、例えば、30%~70%の範囲にあることが好ましい。ただし、金属弾性アーム37が設けられるコンタクト3Rが、1つ置きや2つ置きに分散配置されて、幅方向Wの全域に分布されてもよい。
【0078】
図23A-23Fは、接続部材4の挿入工程を順次に示すコネクタ1Rの断面図である。図23Aは、接続部材4の一端4eが挿入開始位置にある状態を示している。図23Bは、接続部材4が、一端4eが突起38の第1傾斜部38bに当接する第1当接位置にある状態を示している。図23Cは、接続部材4が、突起38が接続部材4の一端4eにおける補強板43に乗り上げる動作を完了する乗上動作完了位置にある状態を示している。
【0079】
図23Dは、接続部材4が、一端4eが傾斜部36の途中部に当接する第2当接位置にある状態を示している。図23Eは、接続部材4が、一端4eが接触部Cを乗り越える動作を完了する乗越動作完了位置にある状態を示している。図23Fが、接続部材4が挿入完了位置にある状態を示している。第3実施形態における接続部材の挿入位置と挿入抵抗との関係は、図示していないが、第1実施形態の図13と同じ変化をする。
【0080】
本実施形態においても、第1実施形態と同じ作用効果を奏する。また、少なくとも一部のコンタクト3Rが、挿入抵抗付与部材RAを提供する金属弾性アーム37を単一の部材で一体に形成しているので、構造を簡素化することができる。また、全てのコンタクト3の極数に対する、金属弾性アーム37が設けられるコンタクト3Rの極数の割合を調整することにより、挿入抵抗を左右する弾性力の調整が容易になる。
【0081】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、接続部材4として、FFC(フレキシブル・フラット・ケーブル)が用いられてもよい。また、第1実施形態および第2実施形態では、同一形状のコンタクトが用いられているが、異なる形状のコンタクト3が交互に配置されるものであってもよい。その他、本発明は、特許請求の範囲記載の範囲内で種々の変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0082】
1 コネクタ
1Q コネクタ
1R コネクタ
2 ハウジング
3 コンタクト
3R コンタクト
4 接続部材
4e 一端
25a 突き当て部
26 樹脂弾性アーム(挿入抵抗付与部材)
28 突起
34 弾性片部
36 傾斜部
36a 頂部
37 金属弾性アーム(挿入抵抗付与部材)
38 突起
41 絶縁部
41a 一方の面
41b 他方の面
42 導体部
43 補強板
43a 外面
65 突起
A0 挿入開始位置
A1 第1当接位置
A2 乗上動作完了位置
A3 第2当接位置
A4 乗越動作完了位置
A5 挿入完了位置
C 接触部
K1 初期挿入区間
K2 乗上動作区間
K3 中期挿入区間
K4 乗越動作区間
K5 後期挿入区間
L 長手方向
LK1 区間長
LK2 区間長
LK3 区間長
LK4 区間長
LK5 区間長
LWK 区間長
P1 第1ピーク値
P2 第2ピーク値
Pmax 最大値
S 短手方向
SS 挿入凹部
W 幅方向
W1 幅
W1C 幅中心
W2 幅
W2C 幅中心
WK 全区間
X1 挿入方向
X2 反対方向
図1
図2
図3A-3B】
図4
図5
図6
図7
図8A-8B】
図9
図10
図11
図12A-12F】
図13
図14
図15
図16
図17
図18A-18F】
図19
図20
図21
図22
図23A-23F】