(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134174
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
F16H 57/037 20120101AFI20240926BHJP
【FI】
F16H57/037
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044325
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福本 堪太
(72)【発明者】
【氏名】片瀬 博昭
(72)【発明者】
【氏名】戸崎 翔平
【テーマコード(参考)】
3J063
【Fターム(参考)】
3J063AA01
3J063AB01
3J063AC11
3J063BA01
3J063BB48
3J063CD41
3J063CD51
3J063XA09
3J063XA12
(57)【要約】
【課題】ポジションスイッチの、挿入開始時の回転角度位置の決定を容易にする。
【解決手段】キャリア2とケース部材3とサイドギヤ10と断続部材12と連動部材13と、連動部材13の位置を検出するポジションスイッチ4とを備え、キャリア2はポジションスイッチ4が挿入される貫通円孔2Aを有し、ポジションスイッチ4は、貫通円孔2Aに挿入される主円筒部14と、主円筒部14の外周面から径方向に延設されたプレート部18と、主円筒部18のキャリア内部側端面の、中心とは異なる位置から軸方向に延設された延出部16と、延出部16のキャリア内部側端部から径方向に張り出し連動部材13と係合する傘部17とを有する動力伝達装置1において、ポジションスイッチ4の、貫通円孔2Aに挿入する際の回転方向角度位置を、傘部17と連動部材13とが干渉しない角度に位置決めする位置決め機構を有する、動力伝達装置1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアと、
前記キャリアに収容されて駆動力により車輪軸回りに回転するケース部材と、
前記ケース部材内に、前記車輪軸回りに相対回転可能に配置された一対のサイドギヤと、
前記ケース部材内に、前記車輪軸に沿って軸方向に移動可能に配置され、前記軸方向に移動することによって、一方の前記サイドギヤと前記ケース部材との相対回転を規制する断続部材と、
前記断続部材と一体として前記軸方向に移動する連動部材と、
前記連動部材の位置を検出するポジションスイッチと、
を備え、
前記キャリアが前記軸方向に沿って前記キャリアの内外を連通する貫通円孔を有し、
前記ポジションスイッチは、少なくとも一部が前記貫通円孔に挿入される主円筒部と、前記主円筒部の外周面から径方向に延設されたプレート部と、前記主円筒部のキャリア内部側端面の、中心とは異なる位置から前記軸方向に延設された延出部と、前記延出部のキャリア内部側端部から前記延出部の径方向に張り出し、前記連動部材と係合する傘部と、を有し、
前記ポジションスイッチが前記貫通円孔に取り付けられた動力伝達装置において、
前記ポジションスイッチの、前記貫通円孔に挿入する際の前記主円筒部の中心軸回りの回転方向角度位置を、前記傘部と前記連動部材とが干渉しない角度に位置決めする位置決め機構を有することを特徴とする、動力伝達装置。
【請求項2】
請求項1に記載の動力伝達装置において、
前記位置決め機構は、
前記プレート部が備える、前記主円筒部と同一の回転軸を有する円板部と、前記円板部の外縁から径方向内側に向けて設けられた切り欠き部と、
前記キャリアが備える、前記円板部の少なくとも一部と接する固定面と、回転軸方向視で取り付け後の前記円板部の外縁よりも外側の位置から回転軸に沿って延出する脚部と、前記脚部の先端部から前記貫通円孔の径方向内側に向けて回転軸方向視で取り付け後の前記円板部の外縁より内側まで延出する爪部と、
により構成され、
前記固定面と前記爪部との間隔は前記円板部の厚みよりも大きく、
前記切り欠き部は、回転軸方向視で取り付け後の前記円板部と前記爪部との重複領域よりも大きく、かつ、回転軸方向視で前記傘部と前記連動部材とが干渉しない角度のときに前記爪部と重なる位置に設けられている、動力伝達装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の動力伝達装置において、
前記ポジションスイッチの回転可能な範囲を規制する回転規制機構をさらに備える、動力伝達装置。
【請求項4】
請求項2を引用する請求項3に記載の動力伝達装置において、
前記回転規制機構は、
前記脚部と、
前記円板部の外縁から径方向外側に向けて延出する係止部と、
により構成され、
前記係止部は、前記切り欠き部に対して前記ポジションスイッチの前記貫通円孔への挿入後の回転方向進行側に設けられ、
前記主円筒部の回転軸から前記係止部の径方向端部までの径方向長さが、前記貫通円孔の軸心から前記脚部までの径方向長さより長い、動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等に用いられる動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等に用いられる動力伝達装置として、差動機構を有するデフケースと、デフケースを収容するキャリアと、差動機構のサイドギヤとデフケースとの間の動力伝達を断続する断続部材と、断続部材と一体に移動する連動部材と、連動部材の位置を検出するポジションスイッチとを備えるものが知られている。特許文献1には、筒状組付部と、筒状組付部の軸心と異なる位置で筒状組付部の先端から軸方向に延設された延出部と、延出部の先端から径方向に露出し連動部材に係合される傘部と、を備えるポジションスイッチが開示されている。このポジションスイッチは、傘部が連動部材と干渉しない回転角度位置でキャリアの円孔に挿入され、挿入後に回転することによって傘部と連動部材とが係合するようになっている。これにより、ポジションスイッチの組み付け性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記文献の動力伝達装置では、ポジションスイッチの円孔への挿入開始時における回転角度位置が規制されていない。このため、作業者は傘部の位置を確認することで傘部と連動部材とが干渉しない回転角度位置を探して挿入する必要がある。そして、回転角度位置が間違っていた場合には、傘部と連動部材とが干渉してしまうおそれがある。
【0005】
そこで本発明は、ポジションスイッチの、挿入開始時の傘部と連動部材とが干渉しない回転角度位置を容易に決定できる動力伝達装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によれば、キャリアと、キャリアに収容されて駆動力により車輪軸回りに回転するケース部材と、ケース部材内に、車輪軸回りに相対回転可能に配置された一対のサイドギヤと、ケース部材内に、車輪軸に沿って軸方向に移動可能に配置され、軸方向に移動することによって、一方のサイドギヤとケース部材との相対回転を規制する断続部材と、断続部材と一体として軸方向に移動する連動部材と、連動部材の位置を検出するポジションスイッチと、を備え、キャリアが軸方向に沿ってキャリアの内外を連通する貫通円孔を有し、ポジションスイッチは、少なくとも一部が貫通円孔に挿入される主円筒部と、主円筒部の外周面から径方向に延設されたプレート部と、主円筒部のキャリア内部側端面の中心とは異なる位置から軸方向に延設された延出部と、延出部のキャリア内部側端部から延出部の径方向に張り出し、連動部材と係合する傘部と、を有し、ポジションスイッチが貫通円孔に取り付けられた動力伝達装置が提供される。この装置は、ポジションスイッチの貫通円孔に挿入する際の主円筒部の中心軸回りの回転方向角度位置を、傘部と連動部材とが干渉しない角度に位置決めする位置決め機構を有する。
【発明の効果】
【0007】
上記態様によれば、ポジションスイッチの、挿入開始時の傘部と連動部材とが干渉しない回転角度位置を容易に決定できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、動力伝達装置の概略構成を示す断面図である。
【
図2】
図2は、ポジションスイッチ取り付け部周辺の斜視図である。
【
図3】
図3は、ポジションスイッチの取り付け作業を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0010】
図1は、本実施形態に係る動力伝達装置1の概略構成を示す断面図である。
図2は後述するポジションスイッチ4の取り付け部周辺の斜視図である。
【0011】
動力伝達装置1は、キャリア2と、キャリア2に収容されて駆動源(図示せず)から入力される駆動力により車輪軸回りに回転するケース部材3と、を備える。駆動源は、例えば内燃機関又は電動モータである。なお、車輪軸とは、後述するドライブシャフト11のことである。駆動源の駆動力は、プロペラシャフト5を介して入力され、プロペラシャフト5と一体回転するピニオンギヤ6及びケース部材3と一体回転するリングギヤ7を介してケース部材3に伝達される。
【0012】
ケース部材3内には、車輪軸回りに相対回転可能に配置された一対のサイドギヤ10と、車輪軸に沿って軸方向(
図1の双方向矢印の方向)に移動可能に配置され、軸方向に移動することによって、一方のサイドギヤ10とケース部材3との相対回転を規制する断続部材12と、が配置されている。
【0013】
ケース部材3はいわゆる差動機構であって、上記のサイドギヤ10の他に、ケース部材3と一体回転するピニオンギヤシャフト8と、ピニオンギヤシャフト8に固定され一対のサイドギヤ10と噛み合う一対のピニオンギヤ9と、サイドギヤ10と一体回転するドライブシャフト11とを備える。
【0014】
また、動力伝達装置1は、いわゆるデフロック機能を有する。具体的には、一対のサイドギヤ10のうち一方とケース部材3との相対回転が断続部材12により規制されることにより、ケース部材3とサイドギヤ10とが一体回転な状態になることでロック状態となる。
【0015】
断続部材12は、環状部材であって、サイドギヤ10の背面とケース部材3の当該背面と対向する面との間に軸方向移動可能に配置されている。断続部材12とケース部材3の間には、断続部材12をケース部材3と一体回転可能に係合する係合部28が設けられている。係合部28は、断続部材12に周方向に等間隔に設けられた図示しない複数の凸部と、ケース部材3に周方向に等間隔に設けられた図示しない複数の孔部とからなる。上記の凸部と孔部とが回転方向に係合することで、断続部材12がケース部材3と一体回転可能になる。また、凸部と孔部の周方向の対向面には、断続部材12をサイドギヤ10の方向に移動させるカム機構としての、同一傾斜のカム面がそれぞれ形成されている。これにより、断続部材12がサイドギヤ10の方向に移動し、断続部材12とサイドギヤ10とが係合すると、ケース部材3の回転によって上記カム面同士が係合して、断続部材12をさらにサイドギヤ10の方向へ移動させ、断続部材12とサイドギヤ10との接続を強化させる。
【0016】
断続部材12をサイドギヤ10の方向への移動させるために、例えば可動部材及び電磁石からなるアクチュエータ(図示せず)を用いる。また、断続部材12とサイドギヤ10の背面との間には、断続部材12にサイドギヤ10の背面から離れる方向の力を付勢する図示しない付勢部材が配置されており、上記アクチュエータからの入力がない場合には、付勢部材によって断続部材12とサイドギヤ10との接続が解除される。
【0017】
また、動力伝達装置1は、断続部材12と一体として軸方向に移動する連動部材13と、連動部材13の位置を検出するポジションスイッチ4と、を備える。
【0018】
連動部材13は、断続部材12の上記凸部の軸方向端面にボルト等の固定部材(図示せず)を介して固定されている。また、連動部材13はケース部材3に設けられた上記孔部に対して径方向に貫通する径方向孔(図示せず)に配置され、径方向端部はケース部材3の外周面から露出している。
【0019】
上記のような構成の動力伝達装置1の差動機構がロック状態か非ロック状態かは、連動部材13の位置に基づいて検知できる。このため、キャリア2に軸方向に沿ってキャリア2の内外を連通する貫通円孔2Aを設け、ここに連動部材13の位置を検出するポジションスイッチ4を配置する。
【0020】
ポジションスイッチ4は、少なくとも一部が貫通円孔2Aに挿入される主円筒部14と、主円筒部14の外周面から径方向に延設されたプレート部18と、主円筒部14のキャリア内部側端面の中心とは異なる位置から軸方向に延設された延出部16とを有する。主円筒部14の外径は貫通円孔2Aの内径と略同等である。そして、延出部16のキャリア内部側端部には、延出部16の径方向に張り出し、連動部材13と係合する傘部17が設けられている。なお、主円筒部14のキャリア2から露出する部分には図示しないコントローラと電気的に接続するためのコネクタ15が設けられている。
【0021】
延出部16は軸方向に伸縮可能であり、初期状態では最も縮んだ状態となっており、かつ外部から軸方向の入力がない場合には初期状態に戻るよう図示しないバネ部材等により付勢されている。そして、傘部17が連動部材13と係合していることにより、連動部材13が軸方向に移動すると、これに伴い延出部16も伸縮する。この延出部16の伸縮によりポジションスイッチ4がオン・オフ操作され、この信号を検出することにより、ロック状態か非ロック状態かを検知することができる。
【0022】
ここで、ポジションスイッチ4のキャリア2への取り付け方法について説明する。
【0023】
ポジションスイッチ4の取り付けは、キャリア2にケース部材3が収容された状態で行われる。なお、この取り付け作業を行うとき、差動機構は非ロック状態である。
【0024】
傘部17と連動部材13は、連動部材13に対して傘部17が貫通円孔2Aとは反対側に位置することで係合する。したがって、ポジションスイッチ4の回転角度位置を傘部17と連動部材13とが係合する回転角度位置にすると、挿入の途中で傘部17と連動部材13とが干渉してしまう。そこで、傘部17と連動部材13とが干渉しない回転角度位置にしてからポジションスイッチ4の挿入を開始する。プレート部18がキャリア2の固定面25に当接するまで挿入したら、ポジションスイッチ4を軸回りに回転させる。延出部16は主円筒部14に対して偏心しているので、この回転により傘部17を連動部材13に近づけることができる。そして、傘部17と連動部材13とが係合する回転角度位置までポジションスイッチ4を軸回りに回転させたら、ボルト27等でプレート部18をキャリア2に固定する。
【0025】
ところで、上記の通り、ポジションスイッチ4を貫通円孔2Aに挿入する際のポジションスイッチ4の回転角度位置が正しくないと挿入工程の途中で傘部17と連動部材13とが干渉するおそれがある。また、当該干渉を回避するために、延出部16の位置を確認しながらポジションスイッチ4の回転角度位置を決めるとなると作業性の低下を招く。
【0026】
そこで本実施形態では、貫通円孔2Aに挿入する際のポジションスイッチ4の回転方向角度位置を、傘部17と連動部材13とが干渉しない角度に位置決めする位置決め機構を設ける。
【0027】
位置決め機構は、プレート部18とキャリア2とにより構成される。以下、より詳細に説明する。
【0028】
プレート部18は、主円筒部14と同一の回転軸を有する円板部19と、円板部19の外縁から径方向内側に向けて設けられた切り欠き部24とを備えている。
【0029】
キャリア2は、円板部19の少なくとも一部と接する固定面25を備えている。さらにキャリア2は、回転軸方向視で取り付け後の円板部19の外縁よりも外側の位置から回転軸に沿って延出する脚部22と、脚部22の先端部から貫通円孔2Aの径方向内側に向けて回転軸方向視で取り付け後の円板部19の外縁より内側まで延出する爪部23とを備えている。
【0030】
固定面25と爪部23との軸方向の間隔は円板部19の厚みよりも大きい。切り欠き部24は、回転軸方向視で取り付け後の円板部19と爪部23との重複領域よりも大きい。そして切り欠き部24は、回転軸方向視で傘部17と連動部材13とが干渉しない角度のときに爪部23と重なる位置に設けられている。なお、爪部23の外面(回転軸方向で固定面25から遠い方の面)から連動部材13の背面(回転軸方向で固定面25に近い方の面)までの距離は、プレート部18の固定面25と当接する面から傘部17の先端までの距離より長い。
【0031】
また、プレート部18は、円板部19の外縁から径方向外側に向けて延出する係止部20を備える。この係止部20は、切り欠き部24に対してポジションスイッチ4の貫通円孔2Aへの挿入後の回転方向進行側に設けられ、主円筒部14の軸心から係止部20の径方向端部までの径方向長さが、貫通円孔2Aの軸心から脚部26までの径方向長さより長い。キャリア2の脚部22とこの係止部20が、ポジションスイッチ4の回転方向を規制する回転規制機構として機能する。
【0032】
図3は、ポジションスイッチ4の取り付け作業を説明するための図である。(a)はポジションスイッチ4取り付け部分を回転軸方向外側から見た図、(b)は
図1のポジションスイッチ4周辺の拡大断面図、(c)はポジションスイッチ4取り付け部分を回転軸内側から見た図である。また、(a)~(c)の各図とも、左側から右側へ作業工程が進む。なお、(a)ではコネクタ15を省略している。
【0033】
まず、切り欠き部24が爪部23の位置にくるよう回転角度位置を調整して、ポジションスイッチ4を貫通円孔2Aに挿入する。切り欠き部24は、爪部23と重なったときに傘部17と連動部材13とが干渉しない位置に設けられているので、傘部17が連動部材13に対して貫通円孔2Aとは反対側に位置するまでポジションスイッチ4を挿入することができる。また、切り欠き部24を爪部23の位置に合わせることで傘部17と連動部材13とが干渉しない回転角度位置にすることができるので、延出部16の位置を確認しながら挿入時の回転角度位置を調整する必要がない。仮に切り欠き部24が爪部23と重ならない回転角度位置のままポジションスイッチ4を挿入しようとしても、円板部19が爪部23と干渉するため、プレート部18が固定面25に当接するところまで挿入できない。そして、爪部23の外面から連動部材13までの距離はプレート部18から傘部17の先端までの距離より長いので、円板部19が爪部23と干渉するまで挿入しても、傘部17と連動部材13とが干渉することはない。
【0034】
プレート部18が固定面25に当接するまで挿入したら、係止部20に設けたボルト孔20Aが固定面25に設けたボルト孔25Aと重なるまで、ポジションスイッチ4を主円筒部14の軸心を中心として回転させる((a)、(c)の矢印方向)。これにより、延出部16及び傘部17は(b)、(c)に示すように連動部材13に近付き、傘部17と連動部材13とが係合する。
【0035】
上記の通り、切り欠き部24の位置を爪部23に合わせるだけで、挿入時に傘部17と連動部材13が干渉しない回転角度位置にすることができる。
【0036】
また、ポジションスイッチ4のボルト孔20Aを、回転軸方向視で切り欠き部24と固定面25のボルト孔25Aとの間に設けてあるので、挿入後の回転方向を容易に判断できる。
【0037】
点検や交換のためにポジションスイッチ4を外す場合は、上記とは逆に、ポジションスイッチ4を切り欠き部24と爪部23とが重なるまで回転させてから引き出す。このとき、切り欠き部24を爪部23と重ねることが分かっていれば、回転方向を容易に判断できる。
【0038】
また、ポジションスイッチ4を外す場合は、(c)の図中の矢印とは反対方向に回転させて右図から左図の状態にすることになるが、回転させ過ぎると、延出部16が連動部材13と干渉するおそれがある。その点、本実施形態では主円筒部14の軸心から係止部20の径方向端部までの径方向長さが、貫通円孔2Aの軸心から脚部22までの径方向長さより長いので、係止部20が脚部22に当接するところまでしか回転できない。すなわち、延出部16が連動部材13と干渉しない回転角度位置になる前に係止部20が脚部22に当接するよう係止部20を設ける位置を設定することで、過回転による延出部16と連動部材13との干渉を回避できる。
【0039】
以上の通り本実施形態では、キャリア2と、キャリア2に収容されて駆動力により車輪軸回りに回転するケース部材3と、ケース部材3内に、車輪軸回りに相対回転可能に配置された一対のサイドギヤ10と、ケース部材3内に、車輪軸に沿って軸方向に移動可能に配置され、軸方向に移動することによって、一方のサイドギヤ10とケース部材3との相対回転を規制する断続部材12と、断続部材12と一体として軸方向に移動する連動部材13と、連動部材13の位置を検出するポジションスイッチ4と、を備える動力伝達装置が提供される。この装置は、キャリア2が軸方向に沿ってキャリア2の内外を連通する貫通円孔2Aを有し、ポジションスイッチ4が、少なくとも一部が貫通円孔2Aに挿入される主円筒部14と、主円筒部14の外周面から径方向に延設されたプレート部18と、主円筒部14のキャリア内部側端面の中心とは異なる位置から軸方向に延設された延出部16と、延出部16のキャリア内部側端部から延出部16の径方向に張り出し、連動部材13と係合する傘部17と、を有し、ポジションスイッチ4が貫通円孔2Aに取り付けられている。また、この装置は、ポジションスイッチ4の、貫通円孔2Aに挿入する際の主円筒部14の中心軸回りの回転方向角度位置を、傘部17と連動部材13とが干渉しない角度に位置決めする位置決め機構を有する。これにより、ポジションスイッチ4の、挿入開始時の傘部17と連動部材13とが干渉しない回転角度位置を容易に決定できる。
【0040】
位置決め機構は、プレート部18が備える、主円筒部14と同一の回転軸を有する円板部19と、円板部19の外縁から径方向内側に向けて設けられた切り欠き部24と、キャリア2が備える、円板部19の少なくとも一部と接する固定面25と、回転軸方向視で取り付け後の円板部19の外縁よりも外側の位置から回転軸に沿って延出する脚部22と、脚部22の先端部から貫通円孔2Aの径方向内側に向けて回転軸方向視で取り付け後の円板部19の外縁より内側まで延出する爪部23と、により構成される。固定面25と爪部23との間隔は円板部19の厚みよりも大きく、切り欠き部24は、回転軸方向視で取り付け後の円板部19と爪部23との重複領域よりも大きく、かつ、回転軸方向視で傘部17と連動部材13とが干渉しない角度のときに爪部23と重なる位置に設けられている。これにより、延出部16の位置を目視しなくても、切り欠き部24が爪部23に重なる回転角度位置にするだけで、挿入開始時の傘部17と連動部材13とが干渉しない回転角度位置を決定することができる。
【0041】
本実施形態では、ポジションスイッチ4の回転可能な範囲を規制する回転規制機構をさらに備える。回転規制機構は、脚部22と、円板部19の外縁から径方向外側に向けて延出する係止部20と、により構成され、係止部20は、切り欠き部24に対してポジションスイッチ4の貫通円孔2Aへの挿入後の回転方向進行側に設けられ、主円筒部14の回転軸から係止部20の径方向端部までの径方向長さが、貫通円孔2Aの軸心から脚部22までの径方向長さより長い。これにより、ポジションスイッチ4が挿入時とは反対方向に過剰に回転することを防止できる。
【0042】
なお、回転規制機構は上述した構成に限られない。例えば、係止部20の他に、主円筒部14の回転軸から径方向端部までの径方向長さが貫通円孔2Aの軸心から脚部22までの径方向長さより長い第2係止部を、切り欠き部24に対して係止部20とは反対側に設けてもよい。第2係止部を、ポジションスイッチ4がボルト27によりキャリア2に締結された状態で脚部22と当接又はこれに近い状態になる位置に設けることで、ポジションスイッチ4を取り外す際の回転方向が一方に規制され、延出部16と連動部材13の干渉をより確実に防止できる。
【0043】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0044】
1 動力伝達装置、 2 キャリア、 3 ケース部材、 4 ポジションスイッチ、 12 断続部材、 13 連動部材、 14 主円筒部、 16 延出部、 17 傘部、 20 係止部、 22 脚部、 23 爪部、 24 切り欠き部、 25 固定面