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特開2024-134175車両の自動運転装置、自動運転方法、自動運転プログラム及び自動運転システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134175
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】車両の自動運転装置、自動運転方法、自動運転プログラム及び自動運転システム
(51)【国際特許分類】
   B61L 23/14 20060101AFI20240926BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
B61L23/14
B60L15/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044326
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000196587
【氏名又は名称】西日本旅客鉄道株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591199682
【氏名又は名称】株式会社東京保機エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100160716
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 力
(72)【発明者】
【氏名】村上 真
(72)【発明者】
【氏名】森山 陽介
(72)【発明者】
【氏名】中野 昌平
(72)【発明者】
【氏名】石井 利明
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 考廣
(72)【発明者】
【氏名】鄭 明斌
【テーマコード(参考)】
5H125
5H161
【Fターム(参考)】
5H125AA05
5H125CA04
5H125EE51
5H125EE52
5H125EE55
5H161AA01
5H161BB02
5H161BB20
5H161CC02
5H161EE07
5H161EE20
5H161FF05
(57)【要約】
【課題】本発明は、車両の巡回運転においてスケジュールの遅れを抑制し、回復運転が可能な自動運転装置、自動運転方法、自動運転プログラム及び自動運転システムを提供することを目的とする。
【解決手段】車両の自動運転装置は、分岐器を含む軌道を走行する車両が出発地点から到着地点までの間に前記軌道を走行する距離である行程距離を算出する行程距離算出部と、車両の到着地点に到着するまでに軌道を走行する時間である走行時間を算出する走行時間算出部と、車両の現在位置から到着地点までの距離である残距離を算出する残距離算出部と、行程距離に対する残距離の関係を判定する関係判定部と、を備え、前記走行時間算出部は、現在時刻から前記車両の到着地点への到着時刻までの残り時間である残時間を、前記車両の現在位置から前記到着地点までの間の軌道に含まれる前記分岐器の数に応じて補正することで、前記走行時間を算出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分岐器を含む軌道を走行する車両が出発地点から到着地点までの間に前記軌道を走行する距離である行程距離を算出する行程距離算出部と、
前記車両の到着地点に到着するまでに前記軌道を走行する時間である走行時間を算出する走行時間算出部と、
前記車両の現在位置から前記到着地点までの距離である残距離を算出する残距離算出部と、
前記行程距離に対する前記残距離の関係を判定する関係判定部と、
前記関係判定部の判定結果を参照して前記車両の速度を設定する設定部と、
前記設定部で設定された速度により車両を制御する制御信号を出力する制御信号出力部と、を備え
前記走行時間算出部は、現在時刻から前記車両の到着地点への到着時刻までの残り時間である残時間を、前記車両の現在位置から前記到着地点までの間の軌道に含まれる前記分岐器の数に応じて補正することで、前記走行時間を算出する、ことを特徴とする、車両の自動運転装置。
【請求項2】
前記関係判定部は、前記残距離が前記行程距離に対して第1所定値以下であるか否かを判定し、前記残距離が前記行程距離に対して第1所定値以下である場合に、前記出発地点から前記到着地点までの間の区間における前記車両の最高速度、前記残距離及び前記走行時間を参照して、前記最高速度よりも遅い速度である第1速度を算出し、
前記設定部は、前記残距離が前記行程距離に対して第1所定値以下であると判定された場合に、前記第1速度を前記車両の速度として設定する、
請求項1に記載の車両の自動運転装置。
【請求項3】
前記関係判定部は、前記残距離が前記行程距離に対して第1所定値以下であるか否かを判定し、
前記設定部は、前記残距離が前記行程距離に対して第1所定値を超えると判定された場合に、前記出発地点から前記到着地点までの間の区間における前記車両の最高速度又は前記最高速度の7割以上の値である第2速度を前記車両の速度として設定する、
請求項1に記載の車両の自動運転装置。
【請求項4】
前記関係判定部は、前記残距離が前記行程距離に対して第1所定値以下であるか否かを判定し、前記残距離が前記行程距離に対して第1所定値以下である場合に、前記出発地点から前記到着地点までの間の区間における前記車両の最高速度、前記残距離及び前記走行時間を参照して、前記最高速度よりも遅い速度である第1速度を算出し、
前記設定部は、
前記残距離が前記行程距離に対して第1所定値以下であると判定された場合に、前記第1速度を前記車両の速度として設定し、
前記残距離が前記行程距離に対して第1所定値を超えると判定された場合に、前記最高速度又は前記最高速度の7割以上の値であって前記第1速度より早い第2速度を前記車両の速度として設定する、
請求項1に記載の車両の自動運転装置。
【請求項5】
前記第1所定値は、前記行程距離の半分未満の値である、請求項2から4に記載の車両の自動運転装置。
【請求項6】
前記関係判定部は、前記車両の現在位置が前記車両の停止する地点である停止地点から第2所定値の範囲内にあるか否かを判定し、
前記制御信号出力部は、前記車両の現在位置が前記停止地点から前記第2所定値の範囲内にあると判定された場合に、前記車両へ減速するよう制御する減速信号を出力する、
請求項1に記載の車両の自動運転装置。
【請求項7】
前記関係判定部は、前記残距離の区間に分岐器が含まれるか否かを判定し、
前記設定部は、前記残距離の区間に分岐器が含まれると判定された場合に、前記停止地点として、前記分岐器から第3所定値の範囲内の地点を設定する、
請求項6に記載の車両の自動運転装置。
【請求項8】
前記車両に対する所定の指示が入力される入力部と、をさらに備え、
前記関係判定部は、前記減速信号が出力された後に、前記車両の現在位置が前記到着地点から第4所定値の範囲内にあるか否かを判定し、前記車両の現在位置が前記到着地点から第4所定値の範囲内にないと判定した場合、前記入力部へ所定の指示が入力された否かを判定する、
請求項7に記載の車両の自動運転装置。
【請求項9】
前記関係判定部は、前記残距離の区間に分岐器が含まれるか否かを判定し、
前記設定部は、前記残距離の区間に分岐器が含まれないと判定された場合に、前記停止地点として前記到着地点を設定する、
請求項6に記載の車両の自動運転装置。
【請求項10】
関係判定部は、前記到着地点として特定の地点に関する情報である特定地点情報が含まれるか否かを判定し、
前記設定部は、前記到着地点として前記特定地点情報が含まれると判定された場合に、前記到着時刻よりも所定時間早い時刻を目標到着時刻として設定する、
請求項1に記載の車両の自動運転装置。
【請求項11】
分岐器を含む軌道を走行する車両が出発地点から到着地点までの間に前記軌道を走行する距離である行程距離を算出し、
前記車両の到着地点に到着するまでに前記軌道を走行する時間である走行時間を算出し、
前記車両の現在位置から前記到着地点までの距離である残距離を算出し、
前記行程距離に対する前記残距離の関係を判定し、
前記判定の結果を参照して前記車両の速度を設定し、
前記設定部で設定された速度により車両を制御する制御信号を出力し、
現在時刻から前記車両の到着地点への到着時刻までの残り時間である残時間を、前記車両の現在位置から前記到着地点までの間の軌道に含まれる前記分岐器の数に応じて補正することで、前記走行時間を算出する、処理を含むことを特徴とする、車両の自動運転方法。
【請求項12】
分岐器を含む軌道を走行する車両が出発地点から到着地点までの間に前記軌道を走行する距離である行程距離を算出し、
前記車両の到着地点に到着するまでに前記軌道を走行する時間である走行時間である残時間を算出し、
前記車両の現在位置から前記到着地点までの距離である残距離を算出し、
前記行程距離に対する前記残距離の関係を判定し、
前記判定の結果を参照して前記車両の速度を設定し、
前記設定部で設定された速度により車両を制御する制御信号を出力し、
現在時刻から前記車両の到着地点への到着時刻までの残り時間である残時間を、前記車両の現在位置から前記到着地点までの間の軌道に含まれる前記分岐器の数に応じて補正することで、前記走行時間を算出する、処理をコンピュータに実行させることを特徴とする、車両の自動運転プログラム。
【請求項13】
車両の現在位置に関する情報である車両位置情報を取得する車両位置情報取得部と、
前記車両の出発地点から到着地点までの間の区間における前記車両の最高速度、前記到着地点までの到着時刻及び分岐器を含む軌道を走行する前記車両が前記出発地点から前記到着地点までの間に前記軌道を走行する距離である行程距離の情報を含むルート情報、並びに分岐器を含む軌道に関する情報である軌道情報を記憶するルート/軌道情報記憶装置と、
前記ルート/軌道情報記憶装置に記憶された前記ルート情報及び前記軌道情報を取得する通信部と、
前記行程距離を算出する行程距離算出部と、
前記車両の前記到着地点に到着するまでに前記軌道を走行する時間である走行時間を算出する走行時間算出部と、
前記車両の現在位置から前記到着地点までの距離である残距離を算出する残距離算出部と、
前記行程距離に対する前記残距離の関係を判定する関係判定部と、
前記関係判定部の判定結果を参照して前記車両の速度を設定する設定部と、
前記設定部で設定された速度により車両を制御する制御信号を出力する制御信号出力部と、を備え、
前記走行時間算出部は、現在時刻から前記車両の到着地点への到着時刻までの残り時間である残時間を、前記車両の現在位置から前記到着地点までの間の軌道に含まれる前記分岐器の数に応じて補正することで、前記走行時間を算出する、ことを特徴とする、車両の自動運転システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の自動運転装置、自動運転方法、自動運転プログラム及び自動運転システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、線路とも称される列車の軌道を保守するための保守用車両が知られている。保守用車両は、乗客や貨物を乗せた列車である営業列車が走行を行わない時間帯、例えば夜間等に、軌道の保守安全点検検査及び測定作業等を含む保守作業を行う車両である。
【0003】
保守用車両の目的の一つとして、軌道上に障害物がないかを確認しながら走行すること、つまり、軌道を巡回することが挙げられる。この巡回は法令で定められている。保守用車両の巡回運転は定められたスケジュールに沿って行うことが想定されているところ、この巡回運転がスケジュールに沿って行われるために、保守用車両を自動運転させることが考えられる。例えば特許文献1には、保守用車両にも適用可能な自動列車制御システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-208528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
巡回中、軌道上に障害物が落ちている場合、保守用車両は一旦停止し、保守用車両の乗組員はその物を撤去しなければならない。そのため、この作業を考慮して巡回運転を行う必要がある。また、保守用車両は分岐器上を通行するところ、分岐器上では通行速度が制限されている。もし、保守用車両の巡回運転がこうした事情により遅れると、場合によっては営業列車の運転に支障を生じるおそれもある。
【0006】
特許文献1では、前述のような物を拾う作業や分岐器での速度制限が考慮されていない。そのため、特許文献1の自動列車制御システムでは、スケジュールに遅れてしまうおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、車両の巡回運転においてスケジュールの遅れを抑制し、回復運転が可能な自動運転装置、自動運転方法、自動運転プログラム及び自動運転システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る車両の自動運転装置は、分岐器を含む軌道を走行する車両が出発地点から到着地点までの間に前記軌道を走行する距離である行程距離を算出する行程距離算出部と、前記車両の到着地点に到着するまでに前記軌道を走行する時間である走行時間を算出する走行時間算出部と、前記車両の現在位置から前記到着地点までの距離である残距離を算出する残距離算出部と、前記行程距離に対する前記残距離の関係を判定する関係判定部と、前記関係判定部の判定結果を参照して前記車両の速度を設定する設定部と、前記設定部で設定された速度により車両を制御する制御信号を出力する制御信号出力部と、を備え、前記走行時間算出部は、現在時刻から前記車両の到着地点への到着時刻までの残り時間である残時間を、前記車両の現在位置から前記到着地点までの間の軌道に含まれる前記分岐器の数に応じて補正することで、前記走行時間を算出する、ことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る車両の自動運転方法は、分岐器を含む軌道を走行する車両が出発地点から到着地点までの間に前記軌道を走行する距離である行程距離を算出し、前記車両の到着地点に到着するまでに前記軌道を走行する時間である走行時間を算出し、前記車両の現在位置から前記到着地点までの距離である残距離を算出し、前記行程距離に対する前記残距離の関係を判定し、前記判定の結果を参照して前記車両の速度を設定し、前記設定部で設定された速度により車両を制御する制御信号を出力し、現在時刻から前記車両の到着地点への到着時刻までの残り時間である残時間を、前記車両の現在位置から前記到着地点までの間の軌道に含まれる前記分岐器の数に応じて補正することで、前記走行時間を算出する、処理を含むことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る車両の自動運転プログラムは、分岐器を含む軌道を走行する車両が出発地点から到着地点までの間に前記軌道を走行する距離である行程距離を算出し、前記車両の到着地点に到着するまでに前記軌道を走行する時間である走行時間を算出し、前記車両の現在位置から前記到着地点までの距離である残距離を算出し、前記行程距離に対する前記残距離の関係を判定し、前記判定の結果を参照して前記車両の速度を設定し、前記設定部で設定された速度により車両を制御する制御信号を出力し、前記走行時間算出部は、現在時刻から前記車両の到着地点への到着時刻までの残り時間である残時間を、前記車両の現在位置から前記到着地点までの間の軌道に含まれる前記分岐器の数に応じて補正することで、前記走行時間を算出する、処理をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る車両の自動運転システムは、車両の現在位置に関する情報である車両位置情報を取得する車両位置情報取得部と、前記車両の出発地点から到着地点までの間の区間における前記車両の最高速度、前記到着地点までの到着時刻及び分岐器を含む軌道を走行する前記車両が前記出発地点から前記到着地点までの間に前記軌道を走行する距離である行程距離の情報を含むルート情報、並びに分岐器を含む軌道に関する情報である軌道情報を記憶するルート/軌道情報記憶装置と、前記ルート/軌道情報記憶装置に記憶された前記ルート情報及び前記軌道情報を取得する通信部と、前記行程距離を算出する行程距離算出部と、前記車両の前記到着地点に到着するまでに前記軌道を走行する時間である走行時間を算出する走行時間算出部と、前記車両の現在位置から前記到着地点までの距離である残距離を算出する残距離算出部と、前記行程距離に対する前記残距離の関係を判定する関係判定部と、前記関係判定部の判定結果を参照して前記車両の速度を設定する設定部と、前記設定部で設定された速度により車両を制御する制御信号を出力する制御信号出力部と、を備え、前記走行時間算出部は、現在時刻から前記車両の到着地点への到着時刻までの残り時間である残時間を、前記車両の現在位置から前記到着地点までの間の軌道に含まれる前記分岐器の数に応じて補正することで、前記走行時間を算出する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、車両の巡回運転においてスケジュールの遅れを抑制し、回復運転が可能な自動運転装置、自動運転方法、自動運転プログラム及び自動運転システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る実施形態1の自動運転システムでの、システム構成を説明する図である。
図2】本発明に係る実施形態1の自動運転システムでの、自動運転装置と状態監視装置との関係を示す図である。
図3】(a)は図1に示す自動運転装置のブロック図であり、(b)は図1に示す状態監視装置のブロック図であり、(c)は図1に示すサーバのブロック図である。
図4】本発明に係る実施形態1の自動運転システムでの、自動運転処理の概要を示すフローチャートである。
図5図4に示すステップS101で示される自動運転開始判定の、より詳細な処理を示すフローチャートである。
図6】本発明に係る実施形態1の自動運転システムでの、表示部に表示される自動運転画像を例示する図である。
図7図4に示すステップS102で示される速度調整判定の、より詳細な処理を示すフローチャートである。
図8図4に示すステップS103で示される自動運転終了判定の、より詳細な処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、自動運転装置、自動運転システム、自動運転方法及び自動運転プログラムについて説明する。ただし、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態には限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0015】
(実施形態1に係る自動運転システムのシステム構成)
図1は、本自動運転システムのシステム構成を説明する図である。
【0016】
自動運転システム100は、自動運転装置1と、状態監視装置20と、サーバ30と、タッチパネル70と、操作装置71と、GPS(Global Positioning System)モジュール72と、各種センサ(73、74、75)と、を備え、定められたスケジュールに沿って保守用車両101が巡回運転するよう、保守用車両101を自動運転する。自動運転装置1及びサーバ30は、インターネット等の通信ネットワーク40を介して接続される。自動運転装置1及び状態監視装置20は、保守用車両101内に配置される。
【0017】
自動運転装置1は、通信ネットワーク40を介してサーバ30と通信可能に接続され、ルート情報及び軌道情報をサーバ30から取得し、行程距離等を算出して保守用車両101の速度等を設定し、保守用車両101を制御する制御信号を出力するコンピュータである。
【0018】
ルート情報は、保守用車両101がスケジュールに沿って運転するためのルートに関する情報である。ルート情報は、例えば、保守用車両101が走行する区間の最高速度、保守用車両101の到着地点への到着時刻及び軌道10を走行する車両が出発地点から到着地点までの間に軌道10を走行する距離である行程距離の情報を含む。最高速度は、許容最高速度とも称され、保守用車両101の出発地点から到着地点までの区間における最高速度であり、保守用車両101の車種及び運用方法に応じて適宜決定される。また、到着地点は、保守用車両101の次の目的地ともいえる。より具体的には、ルート情報には、表1に例示される情報が含まれている。
【0019】
【表1】
【0020】
軌道情報は、分岐器12を含む軌道10に関する情報である。軌道情報には、後述する自動運転画像を生成するための情報を含む。より具体的には、軌道情報には表2に例示される情報が含まれている。また、軌道情報にはGPS座標を示す情報が含まれる。
【0021】
【表2】
【0022】
軌道10は、複数のレール11と、複数の分岐器12と、を含む。レール11は、保守用車両101を含む鉄道車両の車輪と接触し、接触した車輪を直接支持すると共に誘導することで、鉄道車両を所定の方向に移動させる。分岐器12は、複数のレール11の何れか一つのレール11を他のレール11に分岐する。
【0023】
状態監視装置20は、運転状態等を含む保守用車両101の各種状態を監視する装置であり、自動運転装置1と通信して各種情報を送受信する。各種情報には、各種データや各種信号が含まれる。本実施形態では、状態監視装置20と自動運転装置1との通信は、通信の安定性確保のため有線通信となっている。もっとも、通信態様としては無線通信であってもよい。
【0024】
サーバ30は、ルート/軌道情報記憶装置とも称され、ルート情報及び軌道情報を記憶する。サーバ30は、予め設定された間隔でルート情報及び/又は軌道情報を自動運転装置1に送信してもよく、自動運転装置1からの要求に応じて、ルート情報及び/又は軌道情報を進路判定装置1に送信してもよい。サーバ30は、クラウド環境に作られたクラウドサーバであるが、物理サーバであってもよく、仮想サーバであってよい。
【0025】
通信ネットワーク40は、例えばインターネットであり、自動運転装置1及びサーバ30の間を通信可能に接続する。通信ネットワーク40は、自動運転装置1及びサーバ30と無線通信を介して接続されてもよく、自動運転装置1及びサーバ30と有線通信を介して接続されてもよい。
【0026】
タッチパネル70は、本実施形態では投影型静電容量方式であり、後述する自動運転画像を表示したり、タップを通じて入力を受け付けたりする。なお、タッチパネルの方式は任意でよく、例えば抵抗膜方式、赤外線遮断方式、超音波表面弾性波方式などであってもよい。
【0027】
操作装置71は、自動運転のスタート/停止をするためのボタンや、自動運転を手動運転に強制的に切り替えるためのスイッチ等を備える。操作装置71は、例えば保守用車両101の運転席に配置される。
【0028】
GPSモジュール72は、GPS装置本体72aとGPSアンテナ72bとから構成され、GPS衛星等の人口衛星から発せられる電波をGPSアンテナ72bで受信し、緯度、経度、高度等に関する位置情報を取得する。GPS装置本体72aは、保守用車両101内に配置される。GPSアンテナ72bは、保守用車両101内又は保守用車両101の車体外の車体付近に配置される。例えばGPSアンテナ72bは、電波を安定的に取得するため、保守用車両101の車体の屋根上に配置される。
【0029】
センサとしては、例えば、ブレーキシリンダ圧力センサ73、レールセンサ74及び地点検知センサ75が設けられる。ブレーキシリンダ圧力センサ73は、例えば圧力センサであり、ブレーキシリンダ圧力を取得する。レールセンサ74は、例えば超音波センサであり、レール11の位置を検出する。特に、レールセンサ74は、分岐器12のレール頭面を検出し、分岐器12の開通方向を取得する。地点検知センサ75は、例えば超音波センサであり、軌道10に設置されている地点検知板(不図示)を検出する。レールセンサ74及び地点検知センサ75は、例えば保守用車両101の車体の下に配置される。
【0030】
保守用車両101は、軌道の保守安全点検検査等を行う車両であり、予め定められたスケジュールに沿って、目的地を次々に移動することで、軌道10を巡回運転する。
【0031】
(実施形態1に係る自動運転システムでの、自動運転装置と状態監視装置との関係)
図2は、本自動運転システムでの、自動運転装置1と状態監視装置20との関係を示す図である。
【0032】
自動運転装置1は、タッチパネル70、操作装置71、GPSモジュール72、ブレーキシリンダ圧力センサ73、レールセンサ74及び地点検知センサ75から各種情報を受信し、状態監視装置20との間で当該情報を送受信する。また、自動運転装置1は、制御信号を状態監視装置20に送信する。
【0033】
タッチパネル70は、保守用車両101の乗組員からの入力を受け付ける入力部70aと、保守用車両101の車両の現在位置等を示す自動運転画像を表示可能な表示部70bと、を備える。入力部70aは、タッチパネル70のタッチ機能により入力を受け付け、入力される情報を自動運転装置1に出力する。表示部70bは、タッチパネル70のパネル機能により種々の画像を表示する。保守用車両101の乗組員は、入力部70aを介して自動運転処理を実行するための操作を行い、操作に伴う結果を表示部70bに表示される画像により確認できるので、正確且つ迅速に自動運転処理を指示できる。
【0034】
操作装置71は、自動運転スタートボタン71aと、自動運転停止ボタン71bと、異常時切替スイッチ71cと、を備える。自動運転スタートボタン71aは、自動運転をスタートさせるためのボタンである。自動運転停止ボタン71bは、自動運転を停止させるためのボタンである。異常時切替スイッチ71cは、異常事態が発生した時に自動運転を手動運転に切り替える際に使用されるスイッチである。異常時切替スイッチ71cが押下さることに応じて、自動運転装置1の異常等によりアクセル信号又はブレーキ信号が出力され続ける等の不具合が生じたときに、自動運転装置1は、自動運転システム100から強制的に切り離される。異常時切替スイッチ71cが手動運転とされている場合、自動運転を行うことができない。自動運転スタートボタン71aや自動運転停止ボタン71bが押されると、各ボタンに対応する指示信号が生成され、当該信号は自動運転装置1に送信される。
【0035】
GPSモジュール72は、GPSアンテナ72bが取得した情報に基づき、位置情報を自動運転装置1に送信する。GPSアンテナ72bが車体付近に配置されていることから、GPSアンテナ72bが取得した位置情報は、保守用車両101の現在位置の緯度、経度、高度等を示す車両位置情報となる。
【0036】
ブレーキシリンダ圧力センサ73はブレーキ圧力を電気的信号に変換し、自動運転装置1に送信する。レールセンサ74及び地点検知センサ75は、軌道10に対して超音波を発信し、その反射波を受波器で受信する。レールセンサ74及び地点検知センサ75は、受信した結果を自動運転装置1に送信する。
【0037】
状態監視装置20は、異常時切替スイッチ71c、ロータリーエンコーダ76、及び車両信号入出力部77と通信し、自動運転装置1との間で各種情報を送受信する。また、状態監視装置20は、車両信号入出力部77を介して、例えば自動運転装置1から出力された制御信号を、保守用車両101に対して送信する。
【0038】
異常時切替スイッチ71cは、自動運転を手動運転に切り替えるスイッチである。異常時切替スイッチ71cが操作されると、保守用車両101の運転を自動運転から手動運転に切り替えることを指示する指示信号が、状態監視装置20に出力される。
【0039】
ロータリーエンコーダ76は、回転の機械的変位量を電気信号に変換し、当該信号を処理して位置、速度等を検出する。一例として、ロータリーエンコーダ76は保守用車両101のエンジン(不図示)の回転数を検出する。
【0040】
車両信号入出力部77は、保守用車両101に設けられたPLC(Programmable Logic Controller)(不図示)及びPLCと状態監視装置20との間を通信する通信ユニット(不図示)により構成され、状態監視装置20との間で車両信号の入出力を行う。車両信号としては、例えば前進、後進、低速、ブレーキ、非常停止等が挙げられる。これら車両信号は、保守用車両101に設けられた運転レバー等を、保守用車両101の乗組員が操作することで出力される。
【0041】
(実施形態1に係る自動運転システムの構成及び機能)
図3(a)は図1に示す自動運転装置1のブロック図である。
【0042】
自動運転装置1は、通信部50と、記憶部51と、車両位置情報取得部52と、センサ情報取得部53と、内部バス54と、処理部60とを備える。通信部50、記憶部51、車両位置情報取得部52、センサ情報取得部53及び処理部60は、内部バス54を介して接続される。
【0043】
通信部50は、LTEルータを含み、Wi-Fi(登録商標)等の無線の通信インターフェース回路及びイーサネット(登録商標)等の有線の通信インターフェース回路を有する。通信部50は、通信ネットワーク40を介して各種情報を送受信する。例えば、通信部50は、サーバ30に記憶されたルート情報及び軌道情報を、通信ネットワーク40を介して受信する。また、通信部50は、状態監視装置20及びタッチパネル70と、インターフェース回路を通じて各種情報を送受信する。さらに、通信部50は、インターフェース回路を通じて操作装置71から各種情報を受信する。
【0044】
記憶部51は、例えば、半導体記憶装置、磁気テープ装置、磁気ディスク装置、又は光ディスク装置のうちの少なくとも一つを備える。記憶部51は、処理部60での処理に用いられるドライバプログラム、オペレーティングシステムプログラム、アプリケーションプログラム、データ等を記憶する。例えば、記憶部51は、サーバ30から取得されたルート情報及び軌道情報を記憶する。また、記憶部51は、行程距離及び残距離の関係を判定して保守用車両101の速度を設定し、現在時刻から保守用車両101の到着地点への到着時刻までの残り時間である残時間を、分岐器の数に応じて補正して走行時間を算出する自動運転処理を、処理部60に実行させるための自動運転プログラム等を記憶する。自動運転プログラムは、例えばUSBメモリ、SDカード、CD-ROM、DVD-ROM等のコンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いて記憶部51にインストールされていてもよい。
【0045】
車両位置情報取得部52は、GPSモジュール72により取得された緯度、経度等に関する位置情報を取得する。センサ情報取得部53は、ブレーキシリンダ圧力センサ73、レールセンサ74及び地点検知センサ75により検出された各種情報を取得する。
【0046】
処理部60は、一又は複数個のプロセッサ及びその周辺回路を有する。処理部60は、自動運転装置1の全体的な動作を統括的に制御するものであり、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。処理部60は、記憶部51に記憶されているプログラム(ドライバプログラム、オペレーティングシステムプログラム、アプリケーションプログラム等)を参照して処理を実行する。また、処理部60は、複数のプログラム(アプリケーションプログラム等)を並列に実行することができる。
【0047】
処理部60は、行程距離算出部61と、走行時間算出部62と、残距離算出部63と、関係判定部64と、設定部65と、制御信号出力部66と、を備える。これらの各部は、処理部60が備えるプロセッサで実行されるプログラムにより実現される機能モジュールである。あるいは、これらの各部は、ファームウェアとして処理部60に実装されてもよい。
【0048】
行程距離算出部61は、ルート情報を参照して、出発地点から到着地点までの間のキロ程距離、言い換えると、保守用車両101が出発地点から到着地点までの間に軌道10を走行する距離である行程距離を算出する。キロ程は、キロメートルを単位とする距離である。行程距離算出部61は、ルート情報に含まれているキロ程テーブルを参照し、出発地点及び到着起点のキロ程を抽出することで、行程距離を算出する。
【0049】
走行時間算出部62は、現在時刻、ルート情報及び軌道情報を参照して、保守用車両101の到着地点に到着するまでに軌道10を走行する時間、言い換えると走行時間を算出する。走行時間算出部62は、ルート情報に含まれている時分テーブルを参照し、到着地点の時分を抽出することで、走行時間を算出する。また、走行時間算出部62は、軌道情報から分岐器の数を抽出し、残時間を補正することで、走行時間を算出する。
【0050】
残距離算出部63は、車両位置情報及びルート情報を参照して、保守用車両101の現在位置から次の到着地点までのキロ程距離、言い換えると残距離を算出する。残距離算出部63は、保守用車両101の現在位置を示す位置情報を車両位置情報取得部52から取得し、ルート情報に含まれているキロ程テーブルを参照して、取得した位置情報に対応するキロ程及び到着地点のキロ程を抽出することで、残距離を算出する。
【0051】
関係判定部64は、行程距離に対する残距離の関係等を判定する。設定部65は、関係判定部64の判定結果を参照して保守用車両101の速度等を設定する。
【0052】
制御信号出力部66は、設定部65で設定された速度により車両を制御する制御信号を出力する。また、制御信号出力部66は、タッチパネル70の表示部70bに表示される画像を示す情報を生成し、通信部50に出力する。当該情報は、通信部50を介してタッチパネル70に送信される。
【0053】
図3(b)は、状態監視装置20の構成及び機能を説明するブロック図である。
【0054】
状態監視装置20は、状態監視装置処理部21と、車両状態情報取得部22と、指示信号入出力部23と、状態監視装置通信部24と、を備える。
【0055】
状態監視装置処理部21は、状態監視装置20の全体的な動作を統括的に制御するものであり、例えば、CPUである。車両状態情報取得部22は、ロータリーエンコーダ76が検出した各種車両状態に関する情報である車両状態情報を取得する。
【0056】
指示信号入出力部23は、車両信号入出力部77から入力された車両指示に関する信号を受信し、状態監視装置処理部21や状態監視装置通信部24に出力する。また、指示信号入出力部23は、自動運転装置1から取得した制御信号を車両信号入出力部77に出力する。さらに、指示信号入出力部23は、異常時切替スイッチ71cから入力された車両指示に関する情報を受信し、状態監視装置処理部21や状態監視装置通信部24に出力する。
【0057】
状態監視装置通信部24は、イーサネット(登録商標)などの有線の通信インターフェース回路を有する。状態監視装置通信部24は、状態監視装置20との間で各種情報を送受信する。なお、状態監視装置通信部24は、Wi-Fi(登録商標)等の無線の通信インターフェース回路を備えていてもよい。
【0058】
図3(c)は、サーバ30の構成及び機能を説明するブロック図である。
【0059】
サーバ30は、サーバ処理部31と、サーバ記憶部32と、サーバ通信部33と、を備える。
【0060】
サーバ処理部31は、サーバ30の全体的な動作を統括的に制御するものであり、例えば、CPUである。サーバ記憶部32は、前述した各種プログラムを記憶可能であると共に、ルート情報及び軌道情報を記憶する。サーバ通信部33は、サーバ記憶部32に記憶されたルート情報及び軌道情報を、通信ネットワーク40を介して自動運転装置1に出力する。サーバ通信部33は、予め設定された間隔でルート情報及び/又は軌道情報を自動運転装置1に出力してもよく、自動運転装置1からの要求に応じてルート情報及び/又は軌道情報を自動運転装置1に出力してもよい。
【0061】
(実施形態1に係る自動運転システムの自動運転処理)
図4は、本自動運転システムの自動運転処理の概要を示すフローチャートである。当該処理は、予め記憶部51に記憶されている制御プログラムを参照して、主に処理部60により、自動運転装置1の各要素と協働して実行される。
【0062】
まず、関係判定部64及び設定部65は、協働して自動運転開始判定を実施する(ステップS101)。自動運転が可能と判定された場合、制御信号出力部66は自動運転開始を示す自動運転開始信号を出力する。自動運転開始後、関係判定部64及び設定部65は、協働して速度調整判定を実施する(ステップS102)。制御信号出力部66は、判定結果を参照して、設定速度により車両を制御する制御信号を出力する。設定速度は、保守用車両101の走行する速度として設定された速度である。さらに、関係判定部64及び設定部65は、協働して自動運転終了判定を実施する(ステップS103)。
【0063】
図5は、図4に示すステップS101で示される自動運転開始判定の、より詳細な処理を示すフローチャートである。
【0064】
まず、車両位置情報取得部52が、GPSモジュール72を介して、保守用車両101の現在位置を示す車両位置情報を取得する(ステップS201)。
【0065】
制御信号出力部66は、車両位置情報及び車両状態情報を参照して、タッチパネル70の表示部70bに表示される自動運転画像を示す情報である自動運転画像情報を生成し、通信部50に出力する(ステップS202)。通信部50は、自動運転画像情報をタッチパネル70に送信する。表示部70bは、自動運転画像情報を受信すると、自動運転画像を表示する。
【0066】
図6は、表示部70bに例示される自動運転画像1000を示す。
【0067】
自動運転画像1000には、GPS受信表示領域1001と、警報表示領域1002と、車両位置キロ程表示領域1003と、車両速度表示領域1004と、制限速度表示領域1005と、減速指示ボタン1006と、運転状態表示領域1007と、が表示される。自動運転画像1000には、さらに、車両位置表示領域1008と、ルート情報読込ボタン1009と、手動入力ボタン1010と、モード表示領域1011と、現在時刻表示領域1012と、行路表示領域1013と、行路表示選択ボタン1014と、スタート準備指示領域1015と、自動運転終了ボタン1016と、が表示される。
【0068】
GPS受信表示領域1001は、保守用車両101の車両位置情報の取得有無や位置情報の精度を示す領域である。例えば、保守用車両101の位置情報の取得有無や位置情報の精度に応じて背景色を異ならせることで、保守用車両101の乗組員は、位置情報を取得できているか否か、あるいはその精度を容易に把握することができる。一例として、GPS受信表示領域1001は、表3に示すようにGPS受信表示領域1001の背景色を異ならせることができる。
【0069】
【表3】
【0070】
警報表示領域1002は、警報を表示する領域であり、所定の警報条件が決定された後、警報条件に対応する警報内容が表示される。
【0071】
車両位置キロ程表示領域1003は、保守用車両101の位置する場所のキロ程を表示する領域である。キロ程の表示にあたって、制御信号出力部66は、まず保守用車両101の現在位置を示す車両位置情報を車両位置情報取得部52から取得し、軌道情報に含まれるキロ程テーブルを参照して、取得した位置情報に対応するキロ程を抽出する。また、制御信号出力部66は、抽出したキロ程を表示する画像を示す情報であるキロ程画像情報を、通信部50を介してタッチパネル70に出力する。タッチパネル70の表示部70bは、キロ程画像情報が入力されると、キロ程画像情報に対応する画像を車両位置キロ程表示領域1003に表示する。
【0072】
車両速度表示領域1004は、保守用車両101の速度を表示する領域である。保守用車両101の速度は車両状態情報に含まれている。速度の表示にあたり、制御信号出力部66は、通信部50を介して車両状態情報をタッチパネル70に出力する。タッチパネル70の表示部70bは、車両状態情報が入力されると、車両状態情報に対応する画像を車両速度表示領域1004に表示する。
【0073】
制限速度表示領域1005は、保守用車両101の通行する区間の制限速度を表示する領域である。制限速度の表示処理は次のとおりである。まず、関係判定部64は、分岐器12上の通行有無や後述する減速指示の有無を判定する。次に、設定部65は、分岐器12上の通行有無や減速有無の判定結果を参照して、ルート情報に含まれている最高速度、分岐器12上の通行速度又は減速指示による徐行速度のうち最も遅い速度を選択する。制御信号出力部66は、設定部65により選択された速度を、制限速度に関する情報として、通信部50を介してタッチパネル70に出力する。タッチパネル70の表示部70bは、当該情報が入力されると、当該情報に対応する画像を制限速度表示領域1005に表示する。
【0074】
減速指示ボタン1006は、表示された速度まで減速し、その速度で定速運転する、言い換えると徐行するよう指示するためのボタンである。乗組員は、タッチパネル70の入力部70aを介して、減速指示ボタン1006をタップすることが可能である。減速指示ボタン1006がタップされると、タップされたボタンに対応する速度で保守用車両101を制御するよう指示する制御信号が生成され、自動運転装置1に出力される。本実施形態では、制限速度の異なる複数の減速指示ボタンが設けられており、乗組員は保守用車両101の進行状況に応じて、複数の減速指示ボタンのうちの一つをタップすることとなる。なお、所定の減速指示ボタンがタップされた際、該当する減速指示ボタンが点灯されていてもよい。これにより、乗組員は現在どの徐行速度で保守用車両101が進行するのかを容易に把握することができる。
【0075】
運転状態表示領域1007は、自動運転中における保守用車両101の運転状態に関する情報を表示する領域である。運転状態に関する情報としては、アクセル指令、ブレーキ指令、ブレーキ圧、残距離が挙げられる。制御信号出力部66は、車両状態情報及び軌道情報を参照して、各運転状態に関する情報を、通信部50を介してタッチパネル70に出力する。タッチパネル70の表示部70bは、当該情報が入力されると、当該情報に対応する画像を運転状態表示領域1007に表示する。
【0076】
車両位置表示領域1008は、保守用車両101の現在位置及び当該位置における軌道の画像が表示される領域である。当該画像の表示にあたり、制御信号出力部66は、車両位置情報及び軌道情報に基づき、軌道における車両位置を示す画像である車両位置画像情報を、通信部50を介してタッチパネル70に出力する。タッチパネル70の表示部70bは、車両位置画像情報が入力されると、車両位置画像情報に対応する画像を車両位置表示領域1008に表示する。本実施形態では、車両の現在位置は、図6の車両位置表示領域1008において白抜きの三角形印で示される。また、車両位置画像情報は一定間隔毎に取得されて表示部70bに表示されるところ、車両の現在位置が車両位置表示領域1008において中央部分に表示されるよう、表示部70bは画像を表示する。なお、軌道は線で示され、好ましくは車両の現在位置、言い換えると白抜きの三角形印とは異なる色で表示される。
【0077】
ルート情報読込ボタン1009は、ルート情報を読み込む際に使用されるボタンである。ルート情報読込ボタン1009がタップされると、タッチパネル70の入力部70aは、ルート情報を読み込む指示信号を自動運転装置1に出力する。関係判定部64は当該指示出力を受信したか否かを判定し、制御信号出力部66は、当該指示信号を受信したと判定されると、記憶部51に記憶されているルート情報を読み出して、又はサーバに記憶されているルート情報を読み出して、通信部50を介してルート情報をタッチパネル70に出力する。タッチパネル70の表示部70bは、データ格納位置を指定するウィンドウを表示する。乗組員は、表示されたウィンドウから指定のルートに関する情報である指定ルート情報を選択できる。入力部70aは、指定ルート情報の入力がされると、通信部50に指定ルート情報を出力する。また、タッチパネル70の表示部70bは、当該指定ルート情報が入力されると、ルート情報読込ボタン1009を点灯させる。
【0078】
手動入力ボタン1010は、乗組員が手動で行程を入力したい場合に使用されるボタンである。手動入力ボタン1010がタップされると、入力部70aは、到着地点を指定する画像を表示するよう指示する指示信号を表示部70bに出力し、表示部70bは、当該指示信号が入力されると当該画像を表示する。到着地点及び最高速度が入力されることで、入力部70aは保守用車両101の現在位置から到着地点までの自動運転の一行程を指定する信号を自動運転装置1に出力する。ルート情報が手動入力によって設定された場合、表示部70bは手動入力ボタン1010を点灯させる。なお、自動運転モード中、表示部70bは、ルート情報読込ボタン1009又は手動入力ボタン1010のいずれか一方を点灯する。これにより、乗組員は保守用車両101の行程が手動入力によるものか否かを容易に把握することができる。
【0079】
モード表示領域1011は、その時点での、保守用車両101の運転状態を示す領域である。自動運転中である場合、モード表示領域1011には「自動運転中」と表示される。
【0080】
現在時刻表示領域1012は、現在時刻を表示する。現在時刻の取得方法は特に限定されず、例えばタッチパネル70に内蔵されたタッチパネル計時部(不図示)によるものであってもよく、車両位置情報取得部52が車両位置情報を取得する際に含まれ得る時刻により取得されるものであってもよい。
【0081】
行路表示領域1013は、保守用車両101の通行する行程を表示する領域である。行路表示領域1013中、中心の太文字で表されている行程は現時点の行程を表す。また現時点の行程の上段に前の行程、下段に次の行程が表示される。なお、現在の行程を表示する際は、その部分だけ背景色を異ならせたり、文字の種類ないしは色を変えたりすることで、他の行程との違いを表示する構成であってもよい。
【0082】
行路表示選択ボタン1014は、前の行程又は後の行程を選択する際に使用されるボタンである。入力部70aは、保守用車両101が停止しているときにのみ行路表示選択ボタン1014への入力を受け付ける。
【0083】
スタート準備指示領域1015は、所定の条件が満たされた場合に点灯する領域である。所定の条件は、自動運転を開始できるような条件であり、具体的には表4に示される。
【0084】
【表4】
【0085】
自動運転終了ボタン1016は、自動運転を終了する場合に使用されるボタンである。自動運転終了ボタン1016がタップされると、入力部70aは自動運転の終了を指示する指示信号を自動運転装置1に出力する。走行中に自動運転終了ボタンが押された場合には、入力部70aは手動運転に切り替えるよう指示する指示信号を自動運転装置1に出力する。
【0086】
図5のフローチャートに戻り、関係判定部64は、指定ルート情報の読込操作が行われたか否かを判定する(ステップS203)。具体的には、ルート情報読込ボタン1009がタップされると、タッチパネル70の表示部70bは、データ格納位置を指定するウィンドウを表示する。乗組員の操作を介して指定ルート情報が選択されると、入力部70aは、自動運転装置1に指定ルート情報を出力する。関係判定部64は、当該情報の受信有無を通じ、指定ルート情報の読込操作が行われたか否かを判定する。関係判定部64は、指定ルート情報の読込操作が行われたと判定する(S203-YES)まで、S203を繰り返す。
【0087】
指定ルート情報の読込操作が行われたと判定されると(S203-YES)、通信部50は、サーバ30にアクセスし、指定ルート情報に対応する到着地点の到着キロ程、到着時刻及び最高速度を読み出す(ステップS204)。また、通信部50は、サーバ30にアクセスし、軌道情報を読み出す(ステップS205)。
【0088】
行程距離算出部61は、行程距離を算出する(ステップS206)。行程距離は、出発地点のキロ程と到着地点のキロ程との差分を算出することで得られる。
【0089】
通信部50は、分岐器の有無及び数に関する情報を読み出す(ステップS207)。分岐器の数は、走行時間の算出の際に用いられる。
【0090】
走行時間算出部62及び残距離算出部63は、それぞれ走行時間及び残距離を算出する(ステップS208)。走行時間は、残時間が分岐器の数に応じて補正されることで算出される。具体的には、走行時間は、現在時刻と到着時刻との時間差である残時間を算出し、さらに、残距離の区間に分岐器が含まれる場合には、分岐器の数に、一例として60秒を掛けた値を残時間から減算することで算出される。言い換えると、走行時間は、分岐器の数により残時間が補正されて算出される。これにより、分岐器の有無及び数を考慮した走行時間の算出を行うことができる。残距離は、保守用車両101の現在位置のキロ程と到着地点のキロ程との差分を演算することで算出される。
【0091】
次に、関係判定部64は、操作装置71に設けられた自動運転スタートボタン71aが押されたか、言い換えると自動運転スタートボタン71aへの入力有無を判定する(ステップS209)。具体的には、自動運転スタートボタン71aが押されると、指示信号入出力部23が、その入力に対応する信号を生成し、状態監視装置通信部24を介して自動運転装置1に出力する。関係判定部64は、当該信号の受信有無に基づき、自動運転スタートボタン71aへの入力有無を判定する。関係判定部64は、自動運転スタートボタン71aへの入力が有ると判定する(S209-YES)まで、S209を繰り返す。
【0092】
自動運転スタートボタン71aへの入力が有ると判定された場合、関係判定部64は、残距離の区間に分岐器が含まれるか否かを判定する(ステップS210)。関係判定部64は、軌道情報に含まれるキロ程テーブルを参照し、分岐器位置の情報の一つである分岐器キロ程が、保守用車両101の現在位置のキロ程と到着地点のキロ程との間に含まれるか否かを判定する。
【0093】
設定部65は、残距離の区間に分岐器が含まれると判定された場合(S210-YES)、次の停止地点として、分岐器から10メートル手前の地点を設定する(ステップS211)。分岐器を通過する場合、運用により分岐器上の通過速度が制限されている。そこで、残距離の区間に分岐器が含まれる場合、分岐器から一定の範囲内の地点を次の停止地点として設定することで、分岐器の存在を考慮した自動運転を行うことができる。なお、10メートルは、第3所定値の一例である。
【0094】
設定部65は、残距離の区間に分岐器が含まれていないと判定された場合(S210-NO)、次の停止地点として、到着地点を設定する(ステップS212)。残距離の区間に分岐器が含まれない場合、前述のような運用による制限を考慮しなくてもよい。そこで、この場合には、次の到着地点を停止地点として設定することで、スケジュールに沿った自動運転を行いやすくなる。
【0095】
設定部65により次の停止地点が設定された後、制御信号出力部66は、自動運転開始を指令する制御信号である自動運転開始信号を出力する(ステップS213)。これにより、自動運転が開始される。
【0096】
S208からS209へ向かう処理中に接続する接続Yについては後述する。
【0097】
図7は、図4に示すステップS102で示される速度調整判定の、より詳細な処理を示すフローチャートである。
【0098】
まず、関係判定部64は、残距離が行程距離の3分の1以下であるか否かを判定する(ステップS301)。3分の1は、行程距離の半分未満の値である第1所定値の一例である。
【0099】
残距離が行程距離の3分の1以下でないと判定された場合(S301-NO)、言い換えると残距離が行程距離の3分の1を超えると判定された場合、設定部65は、ルート情報に含まれていた最高速度を、保守用車両101の速度として設定する(ステップS302)。
【0100】
残距離が行程距離の3分の1を超える場合、保守用車両101の位置は到着地点から一定程度離れていることとなる。そこで、残距離が行程距離の3分の1を超える場合には、保守用車両101の速度を最高速度に設定することで、保守用車両101は短時間でより長い距離を移動することができる。
【0101】
他方、関係判定部64は、残距離が行程距離の3分の1以下であると判定した場合(S301-YES)、最高速度、残距離及び走行時間を参照して、最高速度よりも遅い速度である第1速度を算出する(ステップS303)。具体的には、残距離を走行時間で除し、得られた値が最高速度以下となっているかが判定される。設定部65は、第1速度を保守用車両101の速度として設定する(ステップS304)。
【0102】
残距離が行程距離の3分の1以下となる場合、到着地点までの距離が少なくなっていることを意味する。この場合には、到着時刻に保守用車両101が到着できるようにするため、最高速度、残距離及び走行時間を参照して、保守用車両101の速度が調整される。この際、走行時間は分岐器12の数に応じて算出されているので、第1速度は減速が必要となる減速地点である分岐器12の数を考慮した速度となる。
【0103】
設定速度が設定された後、関係判定部64は、保守用車両101の制動距離から減速速度を算出する(ステップS305)。制動距離に関する情報は、予め記憶部51に記憶されている。さらに、関係判定部64は、設定部65により設定された設定速度が、減速速度を超えるか否かを判定する(ステップS306)。
【0104】
設定速度が減速速度を超えると判定された場合(S306-YES)、保守用車両101を停止させようとしても制動距離を超えることが想定される。そこで、この場合には、設定部65は減速速度を設定速度に設定する(ステップS307)。これにより、保守用車両101が制動距離を超えて停止する事態を抑制することができる。
【0105】
S307の後、又は設定速度が減速速度を超えないと判定された場合(S306-NO)、関係判定部64は、減速指示ボタン1006への入力有無を判定する(ステップS308)。具体的には、減速指示ボタン1006がタップされると、入力部70aはタップされたボタンに対応する速度で運転するよう指示する指示信号を生成し、自動運転装置1に出力する。関係判定部64は、当該指示信号の受信有無に基づき、減速指示ボタン1006への入力有無を判定する。
【0106】
減速指示ボタン1006への入力が有ると判定された場合(S308-YES)、設定部65は、タップされた減速指示ボタン1006に対応する速度を、設定速度として設定する(ステップS309)。
【0107】
S309の後、又は減速指示ボタン1006への入力が無いと判定された場合(S308-NO)、関係判定部64は、現在速度が設定速度未満であるか否かを判定する(ステップS310)。
【0108】
現在速度が設定速度未満であると判定された場合、制御信号出力部66は、設定部65により設定された速度で保守用車両101を制御する制御信号として、アクセル信号を出力する(ステップS311)。他方、現在速度が設定速度未満でないと判定された場合、制御信号出力部66は、設定部65により設定された速度で保守用車両101を制御する制御信号として、減速信号であるブレーキ信号を出力する(ステップS312)。これにより、保守用車両101が設定速度で走行するよう制御することが可能となる。
【0109】
S301へ向かう処理中に接続する接続Xについては後述する。
【0110】
図8は、図4に示すステップS103で示される自動運転終了判定の、より詳細な処理を示すフローチャートである。
【0111】
まず、車両位置情報取得部52は、保守用車両101の現在位置の緯度、経度等を取得する(ステップS401)。制御信号出力部66は、取得された車両位置情報の結果及び車両状態情報を反映した自動運転画像情報を、通信部50を介してタッチパネル70に出力する(ステップS402)。
【0112】
S402の後、関係判定部64は、保守用車両101の車両位置、言い換えると保守用車両101の現在位置が、次の停止地点の手前10メートル以降であるか否かを判定する(ステップS403)。10メートルは、第2所定値の一例である。
【0113】
保守用車両101の現在位置が次の停止地点の手前10メートル以降であると判定された場合(S403-YES)、制御信号出力部66は、ブレーキ信号を出力する(ステップS404)。
【0114】
他方、保守用車両101の現在位置が次の停止地点の手前10メートル以降でないと判定された場合(S403-NO)、S301に戻る(接続X)。すなわち、関係判定部64は、残距離が行程距離の3分の1以下であるか否かを判定する(S301)。保守用車両101の現在位置が次の到着地点の手前10メートル以降でないと判定された場合、保守用車両101はまだ次の到着地点から一定の距離の位置に存在する。そのため、S102の速度調整判定処理に戻り、保守用車両101の速度が再度設定される。
【0115】
ブレーキ信号が出力された後、関係判定部64は、現在位置が到着地点の手前10メートル以降であるか否かを判定する(ステップS405)。10メートルは、第4所定値の一例である。現在位置が到着地点の手前10メートル以降であると判定された場合(S405-YES)、自動運転は終了する。
【0116】
他方で、関係判定部64は、現在位置が到着地点の手前10メートル以降でないと判定した場合(S405-NO)、S203に戻る(接続Y)。すなわち、関係判定部64は、自動運転スタートボタン71aへの入力有無を判定する(S203)。現在位置が到着地点の手前10メートル以降でないと判定されたにも関わらず、次の停止地点手前であるとしてブレーキ出力がされている場合、その停止地点は分岐器12である。この場合、到着地点にはまだ到着していないことから、新たな行程距離等を取得する必要がない。そこで、自動運転スタートボタン71aへの入力がされたか否かを関係判定部64が判定する構成を採用することで、ルート情報及び軌道情報を不要に取得することを防ぐことができ、処理部60の負担を軽減することができる。
【0117】
(実施形態1に係る自動運転システムの作用効果)
自動運転システム100では、行程距離と残距離との関係の判定結果を参照して保守用車両101の運転速度が設定されると共に、保守用車両101の減速が必要となる減速地点である分岐器12の数に応じて補正された走行時間が算出される。これにより、減速が生じる事態を考慮した自動運転が可能となる。
【0118】
また、自動運転システム100では、残距離が行程距離に対して第1所定値以下であるか否かが判定され、残距離が行程距離に対して第1所定値以下である場合に、最高速度、残距離並びに分岐器の有無及び数を考慮して算出された走行時間を参照して、最高速度より遅い速度である第1速度が算出されて保守用車両101の運転速度が設定される。これにより、残距離が行程距離に比して短い場合に、分岐器12の存在も考慮しつつ、スケジュールに遅れを抑制し、回復運転が可能な自動運転を行うことが可能となる。
【0119】
また、自動運転システム100では、残距離が行程距離に対して第1所定値以下であるか否かが判定され、残距離が行程距離に対して第1所定値を超えると判定された場合に、最高速度が保守用車両101の速度として設定される。これにより、残距離が行程距離に比して長い場合に、保守用車両101を高速で移動させることができ、スケジュールに遅れを抑制し、回復運転が可能な自動運転を行うことが可能となる。
【0120】
また、自動運転システム100では、残距離が行程距離に対して第1所定値以下であるか否かが判定され、残距離が行程距離に対して第1所定値以下である場合に、最高速度、残距離並びに分岐器12の有無及び数を考慮して算出された走行時間を参照して、第1速度が算出されて保守用車両101の運転速度が設定される一方で、残距離が行程距離に対して第1所定値を超えると判定された場合に、最高速度が保守用車両101の速度として設定される。これにより、分岐器12の存在も考慮しつつ、行程距離に対する残距離の関係から適切な運転速度を設定することが可能となる。
【0121】
また、自動運転システム100では、第1所定値を行程距離の半分未満の値とすることにより、保守用車両101につき、行程距離の半分以上の距離を所定のダイヤに沿った走行ができると共に、行程距離の半分以上の距離を最高速度で移動させることができる。
【0122】
また、自動運転システム100では、保守用車両101の位置が保守用車両101の停止する地点である停止地点から第2所定値の範囲内にあるか否かが判定され、保守用車両101の位置が停止地点から第2所定値の範囲内にあると判定された場合に、保守用車両101へ減速するよう制御する減速信号が出力される。これにより、停止地点付近で保守用車両101を減速させることが可能となる。
【0123】
また、自動運転システム100では、残距離の区間に分岐器12が含まれるか否かが判定され、残距離の区間に分岐器12が含まれると判定された場合に、停止地点として、分岐器12から第3所定値の範囲内の地点を設定する。これにより、分岐器12の手前で保守用車両101が停止する制御が行われることとなり、分岐器12の存在を考慮した自動運転を行うことが可能となる。
【0124】
また、自動運転システム100では、減速信号が出力された後に、保守用車両101の位置が到着地点から第4所定値の範囲内にあるか否かが判定され、保守用車両101の位置が到着地点から第4所定値の範囲内にないと判定した場合、入力部70aへ所定の指示が入力された否かが判定される。これにより、ルート情報及び軌道情報を不要に取得することを防ぎつつ、保守用車両101の乗組員の意思を自動運転に反映させることができる。
【0125】
また、自動運転システム100では、残距離の区間に分岐器が含まれるか否かが判定され、残距離の区間に分岐器12が含まれないと判定された場合に、停止地点として到着地点を設定する。これにより、分岐器12が含まれない場合に、行程の途中で不要に停止する事態を抑制することができる。
【0126】
(実施形態に係る進路判定システムの変形例)
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上述した本発明の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0127】
自動運転システム100では、関係判定部64は、到着地点として特定の地点に関する情報である特定地点情報が含まれるか否かを判定し、設定部65は、到着地点として特定地点情報が含まれると判定された場合に、到着時刻よりも所定時間は早い時刻を目標到着時刻として設定してもよい。例えば、巡回する地点によっては、その地点で保守用車両101を停止させ、当該地点にいる駅員等と打合せをする必要がある。この場合、打合せ時間を考慮しつつ、スケジュールに遅れないような自動運転が必要となる。そこで、特定地点情報が含まれる到着地点に対しては到着時刻よりも所定時間は早い時刻を目標到着時刻とすることにより、当該地点に早くに到着できる自動運転が可能となる。
【0128】
また、自動運転システム100では、S302において、最高速度の7割以上の値である第2速度を保守用車両101の設定速度としてもよい。この場合、保守用車両101が短時間で長い距離を移動できるために、第2速度は第1速度よりも早いことが好ましい。
【0129】
また、自動運転システム100では、サーバ30はルート情報/軌道情報記憶装置として機能するが、実施形態に係る自動運転システムは、サーバ30の代わりに、ルート情報/軌道情報記憶装置として機能する記憶装置を有してもよい。例えば、ルート情報/軌道情報記憶装置として機能する記憶装置は、持ち運び可能なUSBメモリ等であってもよい。
【0130】
また、自動運転システム100では、出発地点、到着地点、到着時刻等はルート情報に含まれ、ルート情報はルート情報/軌道情報記憶装置に記憶されているが、出発地点、到着地点及び到着時刻は、予め自動運転装置1の記憶部51に記憶されていてもよい。軌道情報についても、予め自動運転装置1の記憶部51に記憶されていてもよい。
【0131】
また、自動運転システム100では、自動運転装置1からの指示信号は状態判定装置20を介して保守用車両101に出力されているが、自動運転装置1からの指示信号は状態判定装置20を介さなくてもよい。
【0132】
また、自動運転システム100では、自動運転装置1とタッチパネル70とは別の装置として説明したが、自動運転装置1はタッチパネル機能を有していてもよい。例えば、自動運転装置1はスマートフォン等の携帯情報端末であってもよい。
【0133】
また、自動運転システム100では、タッチパネル70を入力部として説明したが、入力部は物理ボタンやキーボード、さらには音声入力装置であってもよい。
【0134】
また、自動運転システム100では、S302又はS304にて設定速度が設定された後、S305乃至S309の処理が含まれていたが、これらの処理は含まれていなくてもよい。すなわち、S302又はS304にて設定速度が設定された後、S310の処理が行われてもよい。
【0135】
また、自動運転システム100では、保守用車両101の減速が必要となる減速地点として分岐器12を含む軌道に関する情報を軌道情報に用いたが、減速地点としては、例えば踏切や軌道のカーブする地点等を含めてもよい。また、自動運転システム100では、距離の区間に分岐器が含まれる場合、分岐器から一定の範囲内の地点を次の停止地点として設定される。しかしながら、レールセンサ74から取得される情報に応じて非開通と判断された分岐器から一定の範囲内の地点、及び前方に位置する車両から一定の範囲内の地点が停止地点として設定されてもよい。
【0136】
また、自動運転システム100では、残距離の区間に分岐器12が含まれるか否かを判定し、残距離の区間に分岐器12が含まれると判定された場合に、停止地点として、分岐器12から所定値の範囲内を設定したが、判定の対象としては、他の減速地点、例えば踏切や軌道のカーブする地点等であってもよい。すなわち、関係判定部64は、残距離の区間に減速地点が含まれるか否かを判定し、設定部65は、残距離の機関に減速地点が含まれると判定された場合に、停止地点として、減速地点から所定値の範囲内の地点を設定してもよい。
【0137】
また、自動運転システム100では、自動運転装置1は保守用車両101に配置されるが、実施形態に係る進路判定システムでは、自動運転装置1はレールと接する車輪を有する車両に配置されてもよい。
【0138】
また、自動運転システム100では、残距離の区間に分岐器が含まれると判定された場合、次の停止地点として、分岐器から10メートル手前の地点を設定する。しかしながら、実施形態に係る進路判定システムでは、残距離の区間に分岐器が含まれると判定された場合、制限速度を設けて分岐器を通過するように設定してもよい。例えば、一行程に含まれる第1の分岐器は10km/hまで減速して通過し、2番目以降分岐器は30km/hまで減速して通過するように設定されてもよい。
【符号の説明】
【0139】
100 自動運転システム
101 保守用車両
1 自動運転装置
10 軌道
12 分岐器
20 状態監視装置
30 サーバ(ルート情報/軌道情報記憶装置)
50 通信部
52 車両位置情報取得部
61 行程距離算出部
62 走行時間算出部
63 残距離算出部
64 関係判定部
65 設定部
66 制御信号出力部
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8