(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134176
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】印刷制御システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 3/12 20060101AFI20240926BHJP
B41J 29/38 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
G06F3/12 329
G06F3/12 303
B41J29/38 202
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044331
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】駒沢 寿夫
【テーマコード(参考)】
2C061
【Fターム(参考)】
2C061AP01
2C061HK09
2C061HN08
2C061HN15
(57)【要約】
【課題】最適な環境条件が異なる複数の印刷装置をそれぞれ含む印刷装置列の動作を制御する際に、印刷装置列から出力される印刷物の品質を維持する。
【解決手段】制御部44は、複数の印刷ライン1~3が同一の環境領域において稼働する場合、複数の印刷ライン1~3にそれぞれ設定された最適環境条件が、予め設定された範囲内である複数の印刷ラインをグループ化する。制御部44は、複数の印刷ライン1~3が稼働する環境領域の温度・湿度という環境状態を温度センサ51、湿度センサ52を用いて検出する。そして、制御部44は、検出された環境状態が、あるグループ化された複数の印刷ラインの最適環境条件から予め設定された許容範囲内である場合、そのグループ化された複数の印刷ラインを稼働させる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを備え、
前記プロセッサは、
印刷装置と当該印刷装置により印刷された印刷物の後処理を実行する装置とにより構成された複数の印刷装置列が同一の環境領域において稼働する場合、前記複数の印刷装置列にそれぞれ設定された最適環境条件が、予め設定された範囲内である複数の印刷装置列をグループ化し、
前記複数の印刷装置列が稼働する環境領域の環境状態を検出し、
検出された環境状態が、あるグループ化された複数の印刷装置列の最適環境条件から予め設定された許容範囲内である場合、当該グループ化された複数の印刷装置列を稼働させる、
印刷制御システム。
【請求項2】
前記プロセッサは、
検出された環境状態が、稼働中のグループ化された複数の印刷装置列の最適環境条件から予め設定された範囲内でなくなった場合、当該稼働中の複数の印刷装置列の稼働を停止させる、
請求項1記載の印刷制御システム。
【請求項3】
前記プロセッサは、同一グループ内に含まれる複数の印刷装置列を稼働させたことにより、環境領域内の環境状態が変化して、変化後の環境状態が、当該グループ化された複数の印刷装置列の最適環境条件から予め設定された範囲以上外れたものとなって当該複数の印刷装置列の稼働を停止した場合、その後に検出された環境状態が、当該グループ化された複数の印刷装置列の最適環境条件から予め設定された範囲内となった場合でも、当該グループ化された複数の印刷装置列のうち、優先度の高い印刷処理が割り当てられた印刷装置列のみを稼働させる、
請求項2記載の印刷制御システム。
【請求項4】
前記プロセッサは、
検出された環境状態が、最適環境条件から予め設定された範囲内である印刷装置列のグループが複数存在する場合、当該複数の印刷装置列のグループのうち、優先度の高い印刷処理が割り当てられている印刷装置列が含まれるグループを優先して稼働させる、
請求項1記載の印刷制御システム。
【請求項5】
前記環境領域の環境状態を調整するための環境調整装置をさらに備え、
前記プロセッサは、
ある印刷装置列による印刷処理が終了すると、前記複数の印刷装置列が配置された環境領域の環境状態が、優先度が最も高い印刷処理が割り当てられている印刷装置列の最適環境条件に近づくように、前記環境調整装置を制御する、
請求項1記載の印刷制御システム。
【請求項6】
前記環境状態が、前記環境領域の温度及び湿度のいずれか一方、又は両方であり、
前記環境調整装置は、前記環境領域の温度及び湿度を調整する機能を有する空調機器である
請求項5記載の印刷制御システム。
【請求項7】
前記環境状態が、前記環境領域の温度及び湿度であり、
前記プロセッサは、検出された温度が、最適温度から許容温度範囲内で、かつ、検出された湿度が許容湿度範囲内の場合に、検出された環境状態が、最適環境条件から予め設定された範囲内にあると判定する、
請求項1記載の印刷制御システム。
【請求項8】
印刷装置と当該印刷装置により印刷された印刷物の後処理を実行する装置とにより構成された複数の印刷装置列が同一の環境領域において稼働する場合、前記複数の印刷装置列にそれぞれ設定された最適環境条件が、予め設定された範囲内である複数の印刷装置列をグループ化するステップと、
前記複数の印刷装置列が稼働する環境領域の環境状態を検出するステップと、
検出された環境状態が、あるグループ化された複数の印刷装置列の最適環境条件から予め設定された許容範囲内である場合、当該グループ化された複数の印刷装置列を稼働させるステップと、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、印刷制御システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、汎用ネットワークインタフェイスを備えることにより、印刷機近傍に配置されることなく印刷品質や印刷機の稼働情報をオンラインで把握可能にした印刷物画像検査装置が開示されている。
【0003】
特許文献2には、複数の印刷装置がネットワークを介して接続された印刷システムにおいて、環境センサの精度ランクが高い印刷装置からのキャリブレーションの実行タイミング情報を優先することにより、各印刷装置間のキャリブレーション実行タイミングのばらつきを少なくするようにした印刷システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-170489号公報
【特許文献2】特開2003-276278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
業務用の印刷を行う印刷工場内では、複数の印刷装置と、その複数の印刷装置により印刷された印刷物の後処理を行う装置により印刷ラインと呼ばれる印刷装置列が形成される。しかし、印刷工場という同一の環境領域において動作する複数の印刷装置であっても、それぞれ温度、湿度等の最適な環境条件が異なる場合がある。
【0006】
そして、印刷用紙上に印刷を行う印刷装置の印刷品質は、温度変化、湿度変化等の環境変化に敏感であり、最適環境条件から離れた環境状態において印刷装置列を稼働させたのでは印刷品質が維持できなくなってしまう。
【0007】
本発明の目的は、最適な環境条件が異なる複数の印刷装置をそれぞれ含む印刷装置列の動作を制御する際に、印刷装置列から出力される印刷物の品質を維持することが可能な印刷制御システム及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1態様の印刷制御システムは、プロセッサを備え、前記プロセッサは、印刷装置と当該印刷装置により印刷された印刷物の後処理を実行する装置とにより構成された複数の印刷装置列が同一の環境領域において稼働する場合、前記複数の印刷装置列にそれぞれ設定された最適環境条件が、予め設定された範囲内である複数の印刷装置列をグループ化し、
前記複数の印刷装置列が稼働する環境領域の環境状態を検出し、
検出された環境状態が、あるグループ化された複数の印刷装置列の最適環境条件から予め設定された許容範囲内である場合、当該グループ化された複数の印刷装置列を稼働させる。
【0009】
第2態様の印刷制御システムは、第1態様の印刷制御システムにおいて、前記プロセッサは、検出された環境状態が、稼働中のグループ化された複数の印刷装置列の最適環境条件から予め設定された範囲内でなくなった場合、当該稼働中の複数の印刷装置列の稼働を停止させる。
【0010】
第3態様の印刷制御システムは、第2態様の印刷制御システムにおいて、前記プロセッサは、同一グループ内に含まれる複数の印刷装置列を稼働させたことにより、環境領域内の環境状態が変化して、変化後の環境状態が、当該グループ化された複数の印刷装置列の最適環境条件から予め設定された範囲以上外れたものとなって当該複数の印刷装置列の稼働を停止した場合、その後に検出された環境状態が、当該グループ化された複数の印刷装置列の最適環境条件から予め設定された範囲内となった場合でも、当該グループ化された複数の印刷装置列のうち、優先度の高い印刷処理が割り当てられた印刷装置列のみを稼働させる。
【0011】
第4態様の印刷制御システムは、第1態様の印刷制御システムにおいて、前記プロセッサは、検出された環境状態が、最適環境条件から予め設定された範囲内である印刷装置列のグループが複数存在する場合、当該複数の印刷装置列のグループのうち、優先度の高い印刷処理が割り当てられている印刷装置列が含まれるグループを優先して稼働させる。
【0012】
第5態様の印刷制御システムは、第1態様の印刷制御システムにおいて、前記環境領域の環境状態を調整するための環境調整装置をさらに備え、
前記プロセッサは、ある印刷装置列による印刷処理が終了すると、前記複数の印刷装置列が配置された環境領域の環境状態が、優先度が最も高い印刷処理が割り当てられている印刷装置列の最適環境条件に近づくように、前記環境調整装置を制御する。
【0013】
第6態様の印刷制御システムは、第5態様の印刷制御システムにおいて、前記環境状態が、前記環境領域の温度及び湿度のいずれか一方、又は両方であり、
前記環境調整装置は、前記環境領域の温度及び湿度を調整する機能を有する空調機器である。
【0014】
第7態様の印刷制御システムは、第1態様の印刷制御システムにおいて、前記環境状態が、前記環境領域の温度及び湿度であり、
前記プロセッサは、検出された温度が、最適温度から許容温度範囲内で、かつ、検出された湿度が許容湿度範囲内の場合に、検出された環境状態が、最適環境条件から予め設定された範囲内にあると判定する。
【0015】
第8態様のプログラムは、印刷装置と当該印刷装置により印刷された印刷物の後処理を実行する装置とにより構成された複数の印刷装置列が同一の環境領域において稼働する場合、前記複数の印刷装置列にそれぞれ設定された最適環境条件が、予め設定された範囲内である複数の印刷装置列をグループ化するステップと、
前記複数の印刷装置列が稼働する環境領域の環境状態を検出するステップと、
検出された環境状態が、あるグループ化された複数の印刷装置列の最適環境条件から予め設定された許容範囲内である場合、当該グループ化された複数の印刷装置列を稼働させるステップと、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0016】
第1態様の印刷制御システムによれば、最適な環境条件が異なる複数の印刷装置をそれぞれ含む印刷装置列の動作を制御する際に、印刷装置列から出力される印刷物の品質を維持することが可能となる。
【0017】
第2態様の印刷制御システムによれば、現在の環境状態が最適環境条件から予め設定された範囲内にない印刷装置列により印刷物が印刷されることを防ぐことができる。
【0018】
第3態様の印刷制御システムによれば、複数の印刷装置列を同時に稼働させたのでは環境状態が変化してしまう場合でも、優先度の高い印刷処理を実行することができる。
【0019】
第4態様の印刷制御システムによれば、複数グループの印刷装置列が稼働することにより、優先度の高い印刷処理が割り当てられている印刷装置列の稼働が停止してしまうような事態の発生を防ぐことができる。
【0020】
第5態様の印刷制御システムによれば、複数の印刷装置列毎に最適環境条件が異なる場合でも、優先度が高い順番で印刷処理を実行することができる。
【0021】
第6態様の印刷制御システムによれば、空調機器により複数の印刷装置列が配置された環境領域の温度及び湿度を調整して、複数の印刷装置列毎に最適環境条件が異なる場合でも、優先度が高い順番で印刷処理を実行することができる。
【0022】
第7態様の印刷制御システムによれば、最適な温度条件及び湿度条件が異なる複数の印刷装置をそれぞれ含む印刷装置列の動作を制御する際に、印刷装置列から出力される印刷物の品質を維持することができる。
【0023】
第8態様のプログラムによれば、最適な環境条件が異なる複数の印刷装置をそれぞれ含む印刷装置列の動作を制御する際に、印刷装置列から出力される印刷物の品質を維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本開示の一実施形態の印刷制御システムの構成を示す図である。
【
図2】本開示の一実施形態における印刷制御サーバ10のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】本開示の一実施形態における印刷制御サーバ10の機能構成を示すブロック図である。
【
図4】印刷制御サーバ10において、印刷ライン1~3のそれぞれの最適環境条件等の環境設定を行う際の環境設定画面例を示す図である。
【
図6】最適環境条件が印刷ライン1~3毎に設定された様子を示す図である。
【
図7】制御部44が印刷ラインのグループ分けを行う際の動作を示すフローチャートである。
【
図8】印刷ラインのグループ分けが実行される際の様子を示す図である。
【
図9】制御部44が、印刷工場内の温度、湿度に基づいて複数の印刷ラインをグループ単位で制御する際の様子を示すフローチャートである。
【
図10】優先度の高い印刷ジョブを実行可能とするための稼働制御例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本開示の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0026】
図1は本開示の一実施形態の印刷制御システムのシステム構成を示す図である。
【0027】
本開示の一実施形態の印刷制御システムは、
図1に示されるように、印刷工場内に配置された印刷装置21~23、後処理装置31~33、温度センサ51、湿度センサ52、空調機器53が、印刷工場内のネットワーク40とインターネット60を介して印刷制御サーバ10と接続された構成となっている。
【0028】
後処理装置31~33は、それぞれ、印刷装置21~23により印刷された印刷物の後処理を実行する装置である。具体的には、後処理装置31、33は、印刷装置21、23により印刷された印刷物の中綴じ処理を実行する。また、後処理装置32は、印刷装置22により印刷された印刷物の断裁処理を実行する。
【0029】
そして、印刷装置21と後処理装置31とにより印刷ライン1が構成され、印刷装置22と後処理装置32とにより印刷ライン2が構成される。また、印刷装置23と後処理装置33とにより印刷ライン3が構成される。
【0030】
このように、本実施形態では、印刷工場内に、印刷装置列である3つの印刷ライン1~3が配置されているものとして説明する。
【0031】
ここで、印刷用紙上に印刷を行う印刷装置21~23の印刷品質は、温度変化、湿度変化等の環境変化に敏感であり、それぞれ印刷品質が安定する最適な環境条件が存在する。そのため、最適環境条件から離れた環境状態において印刷ライン1~3を稼働させたのでは印刷品質が維持できなくなってしまう。そして、業務用の印刷処理を行う印刷工場では、印刷物の色合い等の印刷品質が所定の条件を満たさない場合には、その印刷物を納品することができず膨大な無駄が発生してしまうことになる。
【0032】
そのため、印刷工場内には、印刷工場という環境領域における温度を検出する温度センサ51、及び、印刷工場という環境領域における湿度を検出する湿度センサ52が設けられている。印刷制御サーバ10は、温度センサ51、及び、湿度センサ52から印刷工場の環境情報を取得して、取得した環境情報に基づいて印刷ライン1~3の稼働を制御している。
【0033】
なお、印刷工場内には、印刷工場内の温度・湿度という環境状態を調整するための環境調整装置として空調機器53が設けられている。この空調機器53は、環境領域である印刷工場内の温度及び湿度を調整する機能を有する。そして、印刷制御サーバ10は、インターネット60及びネットワーク40経由にて空調機器53を制御して、印刷工場内の温度・湿度という環境状態を調整することができるようになっている。
【0034】
しかし、印刷工場という同一の環境領域において複数の印刷ライン1~3が存在し、それぞれの印刷ライン1~3の最適な環境条件が異なる場合、全ての印刷ライン1~3をそれぞれ最適な環境条件の下で同時に稼働することは難しい。
【0035】
そこで、本実施形態の印刷制御サーバ10は、インターネット60、及びネットワーク40経由にて、最適な環境条件が異なる3つの印刷ライン1~3の動作を制御する際に、下記で説明するような制御を行うことにより、印刷ライン1~3から出力される印刷物の品質を維持するようにしている。
【0036】
次に、本実施形態の印刷制御システムにおける印刷制御サーバ10のハードウェア構成を
図2に示す。
【0037】
印刷制御サーバ10は、
図2に示されるように、CPU11、メモリ12、ハードディスクドライブ等の記憶装置13、ネットワーク30を介して外部の装置等との間でデータの送信及び受信を行う通信インタフェース(IFと略す。)14、タッチパネル又は液晶ディスプレイ並びにキーボードを含むユーザインタフェース(UIと略す。)装置15を有する。これらの構成要素は、制御バス16を介して互いに接続されている。
【0038】
CPU11は、メモリ12又は記憶装置13に格納された制御プログラムに基づいて所定の処理を実行して、印刷制御サーバ10の動作を制御するプロセッサである。なお、本実施形態では、CPU11は、メモリ12又は記憶装置13内に格納された制御プログラムを読み出して実行するものとして説明したが、これに限定されるものではない。この制御プログラムをコンピュータ読取可能な記録媒体に記録した形態で提供してもよい。例えば、このプログラムをCD(Compact Disc)-ROM及びDVD(Digital Versatile Disc)-ROM等の光ディスクに記録した形態、若しくはUSB(Universal Serial Bus)メモリ及びメモリカード等の半導体メモリに記録した形態で提供してもよい。また、この制御プログラムを、通信インタフェース14に接続された通信回線を介して外部装置から取得するようにしてもよい。
【0039】
図3は、上記の制御プログラムが実行されることにより実現される印刷制御サーバ10の機能構成を示すブロック図である。
【0040】
本実施形態の印刷制御サーバ10は、
図3に示されるように、表示部41と、操作入力部42と、データ送受信部43と、制御部44と、環境設定記憶部45とを備えている。
【0041】
操作入力部42は、ユーザからの各種入力を受け付ける。表示部41は、制御部44により制御され、ユーザに各種情報を表示する。データ送受信部43は、インターネット60、及びネットワーク40を経由して、温度センサ51、湿度センサ52、印刷装置21~23、後処理装置31~33、及び空調機器53との間でデータの送受信を行う。
【0042】
制御部44は、温度センサ51、及び湿度センサ52から取得した印刷工場内の温度情報及び湿度情報に基づいて、印刷装置21~23、後処理装置31~33、及び空調機器53の動作を制御する。
【0043】
環境設定記憶部45は、印刷ライン1~3のそれぞれの最適環境条件等の各種環境設定情報を格納する。
【0044】
印刷制御サーバ10において、印刷ライン1~3のそれぞれの最適環境条件等の環境設定を行う際の環境設定画面例を
図4に示す。
【0045】
図4に示された環境設定画面例では、印刷ライン毎の最適温度、最適湿度が最適環境条件として設定されているのが分かる。このような最適環境条件を新たに追加することにより設定する際の追加画面例を
図5に示す。
図4に示した環境設定画面において、「追加」ボタンを操作することにより、
図5に示すような最適環境条件の追加画面が表示される。
【0046】
そして、
図5に示した最適環境条件の追加画面では、ライン名が「印刷ライン1」という印刷ラインについて、最適温度として20℃、最適湿度として30%という最適条件が設定される様子が示されている。なお、「現在の温度を取得」、「現在の湿度を取得」という操作ボタンを操作することにより、温度センサ51により取得された現在の温度、及び湿度センサ52により取得された現在の湿度がそのまま最適温度、最適湿度として設定される。この操作ボタンは、例えば、階調補正等のキャリブレーションを実施した際に、その時の温度及び湿度を最適温度及び最適湿度として設定したい場合に使用される。
【0047】
また、
図4に示した環境設定画面では、複数の印刷ラインをグループ化するグルーピングの際の許容誤差を設定することができるようになっている。
図4では、グルーピングする際の温度の許容誤差として2℃、湿度として5%が設定されている。このような設定が行われることにより、最適温度が20℃の印刷ラインと、最適温度が22℃の印刷ラインとは最適条件が予め設定された範囲内であるとして同一のグループとしてグループ化され得ることになる。また、このような設定が行われることにより、最適湿度が30%の印刷ラインと、最適湿度が35%の印刷ラインとは最適条件が予め設定された範囲内であるとして同一のグループとしてグループ化され得ることになる。
【0048】
さらに、
図4に示した環境設定画面では、印刷ラインを稼働させる際、及び稼働を停止する際の最適条件からの許容範囲を設定することができるようになっている。
図4では、温度の許容誤差として4℃、湿度として10%が設定されている。このような設定が行われることにより、最適温度が20℃の印刷ラインは、印刷工場の温度が20±4℃の範囲内の場合には稼働するように制御され、その範囲外の場合には稼働が停止するように制御される。また、このような設定が行われることにより、最適湿度が30%の印刷ラインは、印刷工場の湿度が30±10%の範囲内の場合には稼働するように制御され、その範囲外の場合には稼働が停止するように制御される。
【0049】
このような最適環境条件が印刷ライン1~3毎に設定された様子を
図6に示す。
図6を参照すると、印刷装置21と後処理装置31とから構成された印刷ライン1には、最適環境条件として、最適温度が20℃に設定され、最適湿度が30%に設定されている。また、印刷装置22と後処理装置32とから構成された印刷ライン2には、最適環境条件として、最適温度が30℃に設定され、最適湿度が20%に設定されている。さらに、印刷装置23と後処理装置33とから構成された印刷ライン3には、最適環境条件として、最適温度が20℃に設定され、最適湿度が30%に設定されている。
【0050】
そして、このような最適環境条件の設定が行われた印刷ライン1~3に対して、それぞれ優先度が異なる2つの印刷ジョブが割り当てられているものとして以下の説明を行う。
【0051】
図6では、印刷ライン1に対して、優先度1、優先度4の印刷ジョブが割り当てられている。また、印刷ライン2に対して、優先度2、優先度5の印刷ジョブが割り当てられ、印刷ライン3に対して、優先度3、優先度6の印刷ジョブが割り当てられている。ここで、優先度の数字は、小さいほど優先度が高いことを意味している。つまり、優先度1の印刷ジョブの方が、優先度2の印刷ジョブよりも優先度が高いことを意味している。なお、この優先度とは、例えば、印刷物の納期に基づいて設定され、納期が最先の印刷物を印刷するための印刷ジョブが最も高い優先度に設定される。ただし、優先度は単に納期の後先だけでなく、印刷量、印刷物の納品先等の様々な条件により設定される。
【0052】
このような最適条件の設定が行われると、制御部44は、複数の印刷ライン1~3が同一の環境領域において稼働する場合、複数の印刷ライン1~3にそれぞれ設定された最適環境条件が、予め設定された範囲内である複数の印刷ラインをグループ化する。
【0053】
そして、制御部44は、複数の印刷ライン1~3が稼働する環境領域の温度・湿度という環境状態を温度センサ51、湿度センサ52を用いて検出する。
【0054】
そして、制御部44は、検出された環境状態が、あるグループ化された複数の印刷ラインの最適環境条件から予め設定された許容範囲内である場合、そのグループ化された複数の印刷ラインを稼働させる。
【0055】
なお、制御部44は、検出された環境状態が、稼働中のグループ化された複数の印刷ラインの最適環境条件から予め設定された範囲内でなくなった場合、稼働中の複数の印刷ラインの稼働を停止させる。
【0056】
そして、制御部44は、同一グループ内に含まれる複数の印刷ラインを稼働させたことにより、環境領域内の環境状態が変化して、変化後の環境状態が、そのグループ化された複数の印刷ラインの最適環境条件から予め設定された範囲以上外れたものとなってその複数の印刷ラインの稼働を停止した場合、その後に検出された環境状態が、そのグループ化された複数の印刷ラインの最適環境条件から予め設定された範囲内となった場合でも、そのグループ化された複数の印刷ラインのうち、優先度の高い印刷処理が割り当てられた印刷ラインのみを稼働させる。
【0057】
また、制御部44は、検出された環境状態が、最適環境条件から予め設定された範囲内である印刷ラインのグループが複数存在する場合、その複数の印刷ラインのグループのうち、優先度の高い印刷処理が割り当てられている印刷ラインが含まれるグループを優先して稼働させるようにしてもよい。
【0058】
さらに、制御部44は、ある印刷ラインによる印刷処理が終了すると、複数の印刷ラインが配置された環境領域の環境状態が、優先度が最も高い印刷処理が割り当てられている印刷ラインの最適環境条件に近づくように、空調機器53を制御する。
【0059】
なお、本実施形態においては、環境状態が、印刷工場という環境領域の温度及び湿度の両方を含む場合について説明するが、環境領域の温度及び湿度のうちのいずれか一方の情報のみに基づいて印刷ライン1~3の稼働制御を行うようにしてもよい。
【0060】
つまり、本実施形態では、環境状態が、印刷工場内の温度及び湿度の両方であるため、制御部44は、検出された温度が、最適温度から許容温度範囲内で、かつ、検出された湿度が許容湿度範囲内の場合に、検出された環境状態が、最適環境条件から予め設定された範囲内にあると判定する。
【0061】
次に、本実施形態の印刷制御サーバ10の動作について図面を参照して詳細に説明する。
【0062】
まず、制御部44が印刷ラインのグループ分けを行う際の動作を
図7のフローチャートに示す。
【0063】
例えば、
図4に示したような環境設定画面において、印刷ラインに設定されている最適温度、最適湿度という環境設定が変更、追加、又は削除された場合、制御部44は、ステップS101において、環境設定に変更があると判定する。
【0064】
そして、ステップS101において環境設定に変更があると判定した場合、制御部44は、ステップS102において、印刷ラインのグループ分けを実行する。
【0065】
このような印刷ラインのグループ分けが実行される際の様子を
図8に示す。
図8では、最適温度が20℃、最適湿度が30%の印刷ライン1と、最適温度が20℃、最適湿度が30%の印刷ライン3とが、最適環境条件が一致すると判定されてグループされる様子が示されている。以降の説明においては、印刷ライン1と印刷ライン3とがグループ化されてグループ1として設定され、印刷ライン2は単独でグループ2として設定されたものとして説明する。
【0066】
そして、制御部44は、原則として、印刷工場内の温度、湿度という環境状態に基づいて、複数の印刷ラインがグループ化されたグループ単位で稼働開始及び稼働停止を制御する。
【0067】
このように制御部44は、印刷工場内の温度、湿度に基づいて複数の印刷ラインをグループ単位で制御する際の様子を
図9のフローチャートに示す。
【0068】
まず、制御部44は、ステップS201において、印刷工場内の環境情報を取得する。具体的には、制御部44は、温度センサ51により印刷工場内の温度情報を取得し、湿度センサ52により印刷工場内の湿度情報を取得する。
【0069】
そして、制御部44は、ステップS202において、取得した環境情報に基づく印刷工場内の環境状態が、印刷ラインのグループの動作許容範囲内であるか否かの判定を行う。
【0070】
ステップS202において、印刷工場内の環境状態が、ある印刷ラインのグループの動作許容範囲内であると判定した場合、制御部44は、ステップS203において、そのグループに属する印刷ラインの稼働を開始する。
【0071】
また、ステップS202において、印刷工場内の環境状態が、ある稼働中の印刷ラインのグループの動作許容範囲から外れたと判定した場合、制御部44は、ステップS204において、そのグループに属する印刷ラインの稼働を停止する。
【0072】
なお、単に印刷工場内の温度と湿度が動作許容範囲内である印刷ラインのグループ単位で稼働開始及び稼働停止の制御を行ったのでは、優先度の高い印刷ジョブを適切に実行することができないような場合も発生し得る。例えば、隣接する2つの印刷ラインが同一のグループに属するようなグループ分けが行われ、この2つの印刷ラインを同時に稼働させたのでは、発熱により温度が最適温度を超えてしまうような場合が発生し得る。また、ある印刷ジョブが完了して、次に優先度の高い印刷ジョブを実行したいが、その印刷ジョブが割り当てられている印刷ラインの最適環境条件が現在の環境状態と合致しない場合も発生し得る。
【0073】
このような場合でも優先度の高い印刷ジョブを実行可能とするための稼働制御例を
図10に示す。
【0074】
図10(A)は、印刷工場内の環境状態が、温度20℃、湿度30%の場合であり、制御部44は、グループ1に属する印刷ライン1、3を稼働状態とする。そして、制御部44は、グループ2に属する印刷ライン2については停止状態とする。
【0075】
図10(B)は、印刷工場内の環境状態が、温度25℃、湿度30%となった場合の様子を示している。この場合、制御部44は、温度25℃がグループ1の最適温度である20℃から5℃離れており、許容温度範囲である20±4℃の範囲外になっていると判定する。そのため、制御部44は、グループ1に属する印刷ライン1、3の稼働を停止して停止状態とする。
【0076】
ただし、
図6に示したように、印刷ライン1には、優先度が最も高い優先度1の印刷ジョブが割り当てられている。そのため、制御部44は、この優先度1の印刷ジョブを実行させるために、
図10(C)のように、印刷工場内の温度が下がって20℃となった場合でも、印刷ライン1のみを稼働させ、印刷ライン3は停止状態のままとする。
【0077】
そして、優先度1の印刷ジョブが完了すると、印刷ライン2に割り当てられている優先度2の印刷ジョブが、印刷ライン1~3に割り当てられている全ての印刷ジョブのうち最も優先度の高い印刷ジョブとなる。
【0078】
そのため、制御部44は、優先度2の印刷ジョブを実行させるために、印刷工場内の環境状態が、印刷ライン2の最適環境条件に近づくように、空調機器53を制御する。具体的には、制御部44は、印刷工場内の温度及び湿度が、印刷ライン2の最適環境条件である最適温度30℃、最適湿度20%となるように、空調機器53を制御する。
【0079】
そして、
図10(D)に示すように、印刷工場内の温度と湿度が、例えば30℃、湿度20%となり、印刷ライン2の最適環境条件から予め設定された範囲内になると、制御部44は、印刷ライン2の稼働を開始する。その結果、現在残っている印刷ジョブのうち最も優先度の高い優先度2の印刷ジョブが実行されることになる。
【0080】
上記各実施形態において、プロセッサとは広義的なプロセッサを指し、汎用的なプロセッサ(例えばCPU:Central Processing Unit、等)や、専用のプロセッサ(例えばGPU:Graphics Processing Unit、ASIC:Application Specific Integrated Circuit、FPGA:Field Programmable Gate Array、プログラマブル論理デバイス等)を含むものである。
【0081】
また上記各実施形態におけるプロセッサの動作は、1つのプロセッサによって成すのみでなく、物理的に離れた位置に存在する複数のプロセッサが協働して成すものであってもよい。また、プロセッサの各動作の順序は上記各実施形態において記載した順序のみに限定されるものではなく、適宜変更してもよい。
【0082】
本実施形態における「システム」とは、複数の装置によって構成されたもの及び単一の装置によって構成されたものの両方を含む。
【0083】
[付記]
以下に、本開示の好ましい形態について付記する。
【0084】
(((1)))
プロセッサを備え、
前記プロセッサは、
印刷装置と当該印刷装置により印刷された印刷物の後処理を実行する装置とにより構成された複数の印刷装置列が同一の環境領域において稼働する場合、前記複数の印刷装置列にそれぞれ設定された最適環境条件が、予め設定された範囲内である複数の印刷装置列をグループ化し、
前記複数の印刷装置列が稼働する環境領域の環境状態を検出し、
検出された環境状態が、あるグループ化された複数の印刷装置列の最適環境条件から予め設定された許容範囲内である場合、当該グループ化された複数の印刷装置列を稼働させる、
印刷制御システム。
【0085】
(((2)))
前記プロセッサは、
検出された環境状態が、稼働中のグループ化された複数の印刷装置列の最適環境条件から予め設定された範囲内でなくなった場合、当該稼働中の複数の印刷装置列の稼働を停止させる、
(((1)))記載の印刷制御システム。
【0086】
(((3)))
前記プロセッサは、同一グループ内に含まれる複数の印刷装置列を稼働させたことにより、環境領域内の環境状態が変化して、変化後の環境状態が、当該グループ化された複数の印刷装置列の最適環境条件から予め設定された範囲以上外れたものとなって当該複数の印刷装置列の稼働を停止した場合、その後に検出された環境状態が、当該グループ化された複数の印刷装置列の最適環境条件から予め設定された範囲内となった場合でも、当該グループ化された複数の印刷装置列のうち、優先度の高い印刷処理が割り当てられた印刷装置列のみを稼働させる、
(((2)))記載の印刷制御システム。
【0087】
(((4)))
前記プロセッサは、
検出された環境状態が、最適環境条件から予め設定された範囲内である印刷装置列のグループが複数存在する場合、当該複数の印刷装置列のグループのうち、優先度の高い印刷処理が割り当てられている印刷装置列が含まれるグループを優先して稼働させる、
(((1)))から(((3)))のいずれか1つに記載の印刷制御システム。
【0088】
(((5)))
前記環境領域の環境状態を調整するための環境調整装置をさらに備え、
前記プロセッサは、
ある印刷装置列による印刷処理が終了すると、前記複数の印刷装置列が配置された環境領域の環境状態が、優先度が最も高い印刷処理が割り当てられている印刷装置列の最適環境条件に近づくように、前記環境調整装置を制御する、
(((1)))から(((4)))のいずれか1つに記載の印刷制御システム。
【0089】
(((6)))
前記環境状態が、前記環境領域の温度及び湿度のいずれか一方、又は両方であり、
前記環境調整装置は、前記環境領域の温度及び湿度を調整する機能を有する空調機器である
(((5)))記載の印刷制御システム。
【0090】
(((7)))
前記環境状態が、前記環境領域の温度及び湿度であり、
前記プロセッサは、検出された温度が、最適温度から許容温度範囲内で、かつ、検出された湿度が許容湿度範囲内の場合に、検出された環境状態が、最適環境条件から予め設定された範囲内にあると判定する、
(((1)))から(((4)))のいずれか1つに記載の印刷制御システム。
【0091】
(((8)))
印刷装置と当該印刷装置により印刷された印刷物の後処理を実行する装置とにより構成された複数の印刷装置列が同一の環境領域において稼働する場合、前記複数の印刷装置列にそれぞれ設定された最適環境条件が、予め設定された範囲内である複数の印刷装置列をグループ化するステップと、
前記複数の印刷装置列が稼働する環境領域の環境状態を検出するステップと、
検出された環境状態が、あるグループ化された複数の印刷装置列の最適環境条件から予め設定された許容範囲内である場合、当該グループ化された複数の印刷装置列を稼働させるステップと、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【0092】
以下に、付記の構成による効果について記載する。
【0093】
(((1)))の印刷制御システムによれば、最適な環境条件が異なる複数の印刷装置をそれぞれ含む印刷装置列の動作を制御する際に、印刷装置列から出力される印刷物の品質を維持することが可能となる。
【0094】
(((2)))の印刷制御システムによれば、現在の環境状態が最適環境条件から予め設定された範囲内にない印刷装置列により印刷物が印刷されることを防ぐことができる。
【0095】
(((3)))の印刷制御システムによれば、複数の印刷装置列を同時に稼働させたのでは環境状態が変化してしまう場合でも、優先度の高い印刷処理を実行することができる。
【0096】
(((4)))の印刷制御システムによれば、複数グループの印刷装置列が稼働することにより、優先度の高い印刷処理が割り当てられている印刷装置列の稼働が停止してしまうような事態の発生を防ぐことができる。
【0097】
(((5)))の印刷制御システムによれば、複数の印刷装置列毎に最適環境条件が異なる場合でも、優先度が高い順番で印刷処理を実行することができる。
【0098】
(((6)))の印刷制御システムによれば、空調機器により複数の印刷装置列が配置された環境領域の温度及び湿度を調整して、複数の印刷装置列毎に最適環境条件が異なる場合でも、優先度が高い順番で印刷処理を実行することができる。
【0099】
(((7)))の印刷制御システムによれば、最適な温度条件及び湿度条件が異なる複数の印刷装置をそれぞれ含む印刷装置列の動作を制御する際に、印刷装置列から出力される印刷物の品質を維持することができる。
【0100】
(((8)))のプログラムによれば、最適な環境条件が異なる複数の印刷装置をそれぞれ含む印刷装置列の動作を制御する際に、印刷装置列から出力される印刷物の品質を維持することが可能となる。
【符号の説明】
【0101】
10 印刷制御サーバ
11 CPU
12 メモリ
13 記憶装置
14 通信インタフェース
15 ユーザインタフェース装置
16 制御バス
21~23 印刷装置
31~33 後処理装置
40 ネットワーク
41 表示部
42 操作入力部
43 データ送受信部
44 制御部
45 環境設定記憶部
51 温度センサ
52 湿度センサ
53 空調機器
60 インターネット