(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134184
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】粘着シート、積層体および表示体
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20240926BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20240926BHJP
C09J 133/00 20060101ALI20240926BHJP
C09J 11/00 20060101ALI20240926BHJP
B32B 7/12 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J201/00
C09J133/00
C09J11/00
B32B7/12
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044364
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小▲鯖▼ 翔
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AK25B
4F100AT00A
4F100BA03
4F100CA13B
4F100CB05B
4F100DD01A
4F100DD01C
4F100JL10B
4F100JL13B
4F100JN02B
4F100YY00B
4J004AA01
4J004AA05
4J004AA10
4J004AA11
4J004AA14
4J004AA15
4J004AB01
4J004AB07
4J004BA03
4J004DA02
4J004DA03
4J004DA04
4J004DA05
4J004DB02
4J004FA01
4J004FA08
4J040CA001
4J040DF001
4J040ED001
4J040EF001
4J040EF282
4J040EK031
4J040FA131
4J040HB44
4J040JA09
4J040JB09
4J040KA13
4J040KA16
4J040KA35
4J040LA06
4J040LA10
4J040NA16
4J040NA17
4J040NA19
(57)【要約】
【課題】粘着剤層が凹凸に良好に追従しつつ、耐ブリスター性に優れ、さらに、光学的なムラが生じない粘着剤層を備える粘着シートを提供すること。
【解決手段】第1の部材と第2の部材とを貼合するための粘着剤層を有する粘着シートであって、粘着剤層の全光線透過率が85%以下であり、粘着剤層の一方の主面をA面とし、他方の主面をB面とした場合、凹凸を有する被着体にA面を貼合した時に凹凸に対するA面の追従性を示すA面凹凸追従率(%)と、凹凸を有する被着体にB面を貼合した時に凹凸に対するB面の追従性を示すB面凹凸追従率(%)と、が異なり、A面凹凸追従率およびB面凹凸追従率が0%超である粘着シートである。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部材と第2の部材とを貼合するための粘着剤層を有する粘着シートであって、
前記粘着剤層の全光線透過率が、85%以下であり、
前記粘着剤層の一方の主面をA面とし、他方の主面をB面とした場合、凹凸を有する被着体に前記A面を貼合した時に前記凹凸に対する前記A面の追従性を示すA面凹凸追従率(%)と、凹凸を有する被着体に前記B面を貼合した時に前記凹凸に対する前記B面の追従性を示すB面凹凸追従率(%)と、が異なり、
前記A面凹凸追従率および前記B面凹凸追従率が、0%超である粘着シート。
【請求項2】
前記粘着剤層が2層以上から構成される請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記A面凹凸追従率から前記B面凹凸追従率を減じた値が、-20ポイント以上-1ポイント以下である請求項1または2に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記粘着剤層が着色成分を含む請求項1または2に記載の粘着シート。
【請求項5】
前記粘着剤層が架橋構造を有するアクリル系粘着剤である請求項1または2に記載の粘着シート。
【請求項6】
第1の部材と、第2の部材と、前記第1の部材と前記第2の部材とを互いに貼合する粘着剤層と、を備える積層体であって、
前記第1の部材および前記第2の部材のうち、少なくとも1つが凹凸を有しており、
前記粘着剤層が、請求項1または2に記載の粘着シートが有する粘着剤層である積層体。
【請求項7】
請求項6に記載の積層体を備える表示体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シート、積層体および表示体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車のインストルメントパネル、カーナビゲーションシステム、コンソールに設けられた各種計器、あるいは、スマートフォン、タブレット端末等の各種モバイル電子機器は、液晶素子、発光ダイオード(LED素子)、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)素子等を有する表示体モジュールを使用したディスプレイ(表示体)を備えている。
【0003】
このような表示体モジュール、または、表示体モジュールと他の部材との積層体は、一般的に、表示体構成部材と他の部材とを、粘着シートの粘着剤層を用いて貼合することにより形成される。
【0004】
このようなディスプレイに対して、ディスプレイの消灯時に、当該ディスプレイの周辺部材、例えば枠材とディスプレイとの一体感を付与して、ディスプレイの意匠性を高めることが求められている。
【0005】
特許文献1は、プラズマディスプレイパネル本体に積層される光学フィルタが着色層を有し、当該着色層が粘着剤と着色色素とを有することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の発明では、着色層は、透明基板と、透明基板に枠状に形成された隠蔽層と、に接するように設けられている。したがって、着色層を構成する粘着剤は、隠蔽層に起因する凹凸に十分に追従して、凹凸近傍に隙間等が発生しないように凹凸を埋め込む必要がある。
【0008】
しかしながら、粘着剤が凹凸に追従する際には、粘着剤に変形が生じることがある。このような変形が生じると、粘着剤の光学特性に変化等が生じて、粘着剤層を通過する光に光学的なムラ(たとえば、色ムラ)が発生するという問題があった。その結果、表示体に表示される像にも光学的なムラが生じてしまう。
【0009】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、粘着剤層が凹凸に良好に追従しつつ、耐ブリスター性に優れ、さらに、光学的なムラが生じない粘着剤層を備える粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の態様は以下の通りである。
【0011】
[1]第1の部材と第2の部材とを貼合するための粘着剤層を有する粘着シートであって、
粘着剤層の全光線透過率が、85%以下であり、
粘着剤層の一方の主面をA面とし、他方の主面をB面とした場合、凹凸を有する被着体にA面を貼合した時に凹凸に対するA面の追従性を示すA面凹凸追従率(%)と、凹凸を有する被着体にB面を貼合した時に凹凸に対するB面の追従性を示すB面凹凸追従率(%)と、が異なり、
A面凹凸追従率およびB面凹凸追従率が、0%超である粘着シートである。
【0012】
[2]粘着剤層が2層以上から構成される[1]に記載の粘着シートである。
【0013】
[3]A面凹凸追従率からB面凹凸追従率を減じた値が、-20ポイント以上-1ポイント以下である[1]または[2]に記載の粘着シートである。
【0014】
[4]粘着剤層が着色成分を含む[1]から[3]のいずれかに記載の粘着シートである。
【0015】
[5]粘着剤層が架橋構造を有するアクリル系粘着剤である[1]から[4]のいずれかに記載の粘着シートである。
【0016】
[6]第1の部材と、第2の部材と、第1の部材と第2の部材とを互いに貼合する粘着剤層と、を備える積層体であって、
第1の部材および第2の部材のうち、少なくとも1つが凹凸を有しており、
粘着剤層が、[1]から[5]のいずれかに記載の粘着シートが有する粘着剤層である積層体である。
【0017】
[7][6]に記載の積層体を備える表示体である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、粘着剤層が凹凸に良好に追従しつつ、耐ブリスター性に優れ、さらに、光学的なムラが生じない粘着剤層を備える粘着シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1A】
図1Aは、本実施形態に係る粘着シートの一例の断面図である。
【
図1B】
図1Bは、本実施形態に係る粘着シートの他の例の断面図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る積層体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を、具体的な実施形態に基づき、詳細に説明する。
【0021】
(1.粘着シート)
本実施形態に係る粘着シート1は、
図1Aに示すように、粘着剤層10と、剥離シート21,22と、を有する。粘着剤層は、第1の部材と第2の部材とを貼合する。本実施形態では、第1の部材および第2の部材は表示体を構成する部材(表示体構成部材)である。
【0022】
表示体は、所定の機能を有する表示体構成部材を積層して構成されており、各表示体構成部材は粘着剤層を介して貼合される。このとき、表示体構成部材自体が凹凸を有する場合、あるいは、表示体構成部材に凹凸が形成されている場合がある。粘着剤層が凹凸に追従できない場合、凹凸近傍において粘着剤層が浮き上がって隙間等が生じてしまい、表示体の画質等の低下を招く。そのため、粘着剤層には凹凸に十分に追従して貼合されることが求められている。
【0023】
また、表示体構成部材の中には、材質がガラスからプラスチックに変更される部材もある。材質をプラスチックに変更した場合には、粘着剤層により貼合された表示体構成部材を高温高湿環境に曝すと、プラスチックからアウトガスが発生して、気泡、浮き、剥がれ等のブリスターが発生するという問題もあった。したがって、粘着剤層には耐ブリスター性も求められている。
【0024】
一方、表示体について、意匠性を高めるために、たとえば、表示体構成部材間の境界を見えにくくして、表示体の消灯時に、表示体の枠材と表示体との一体感を付与することが行われている。このような一体感の付与は、粘着剤層の光学特性(たとえば、全光線透過率)を制御することにより行われる。
【0025】
しかしながら、凹凸近傍においては、凹凸に追従するために、粘着剤層が変形することがある。このような変形が生じると、粘着剤層の光学特性が変化し、変形が生じた部分と変形が生じていない部分とにおいて光学特性が異なることがある。その結果、粘着剤層を通過する光に影響を与えて、表示体において光学的なムラが生じることがある。このような光学的なムラとしては、粘着剤層が着色される場合における色ムラが例示される。色ムラのような光学的なムラが生じると、表示体の意匠性、画質等が低下するため、好ましくない。
【0026】
上記の問題に対処するために、本実施形態では、粘着剤層を以下に示すものとしている。本実施形態に係る粘着シートの粘着剤層は、凹凸に十分追従しつつ、凹凸近傍においても光学的なムラが抑制され、さらには耐ブリスター性を良好にすることができる。
【0027】
(2.粘着剤層)
本実施形態に係る粘着シートが有する粘着剤層は、後述する粘着剤から構成される。また、粘着剤層は、1層(単層)から構成されていてもよいし、2層以上の複数層から構成されていてもよい。本実施形態では、後述する物性を容易に実現しやすい観点から、粘着剤層は2層以上であることが好ましい。
【0028】
粘着剤層の厚みは、1~2000μmであることが好ましく、10~1200μmであることがより好ましく、40~900μmであることがさらに好ましく、80~600μmであることが特に好ましく、中でも100~400μmであることがさらに好ましく、150~250μmであることが最も好ましい。上記の厚みは、粘着剤層が複数層から構成される場合には、複数層の合計厚みである。
【0029】
粘着剤層が複数層から構成される場合、粘着剤層の厚みは、それぞれ、1~1000μmであることが好ましく、10~600μmであることがより好ましく、20~300μmであることがさらに好ましく、25~200μmであることが特に好ましい。
【0030】
(2.1.粘着剤層の物性)
本実施形態に係る粘着剤層は以下に示すような物性を有している。なお、粘着剤層が複数層である場合には、以下に示す物性は、粘着剤層全体が示す物性である。
【0031】
(2.1.1.粘着剤層の凹凸追従率)
本実施形態では、粘着剤層の主面のうち、粘着剤層の一方の主面をA面とし、他方の主面をB面とする。
図1Aでは、粘着剤層10の主面10aがA面であり、主面10bがB面である。また、A面およびB面は表示体構成部材に貼合される面である。
【0032】
本実施形態では、A面における凹凸追従率(A面凹凸追従率)およびB面における凹凸追従率(B面凹凸追従率)を制御している。凹凸追従率は、粘着剤層が被着体(表示体構成部材)に貼合された時に、当該被着体が有する段差等の凹凸にどの程度追従して貼合されるかの指標である。凹凸追従率が高いほど、高低差の大きい凹凸近傍においても、凹凸が粘着剤層に十分に埋め込まれ、粘着剤層と凹凸との界面に隙間等が形成されることなく貼合することができる。凹凸追従率は下記の式により算出することができる。
凹凸追従率(%)={(所定耐久試験後、気泡、浮き、剥がれ等が無く埋められた状態が維持された段差の高さ(μm))/(粘着剤層の厚み(μm))}×100
【0033】
なお、凹凸追従率の試験方法は、後述する試験例に示す通りである。また、粘着剤層が活性エネルギー線硬化性の粘着剤から構成される場合には、凹凸追従率は、被着体貼付後に活性エネルギー線で硬化させたときの凹凸追従率とする。
【0034】
本実施形態では、粘着剤層のA面凹凸追従率と、粘着剤層のB面凹凸追従率と、は異なっており、かつA面凹凸追従率およびB面凹凸追従率が0%よりも大きい。A面の凹凸追従率と、粘着剤層のB面の凹凸追従率と、が上記の関係を満足することにより、粘着剤層が凹凸に十分に追従しつつ、凹凸に起因する光学特性のムラを抑制することができる。さらに、耐ブリスター性も向上する。
【0035】
A面凹凸追従率およびB面凹凸追従率は、1%~50%であることが好ましく、2%~40%であることがより好ましく、3%~30%であることがさらに好ましく、4%~20%であることが特に好ましい。
【0036】
また、A面凹凸追従率とB面凹凸追従率との差(A面凹凸追従率-B面凹凸追従率)は、-20~-1ポイントであることが好ましく、-15~-1.5ポイントであることがより好ましく、-10~-2ポイントであることがさらに好ましい。
【0037】
(2.1.2.粘着剤層の全光線透過率)
本実施形態に係る粘着剤層の全光線透過率は、85%以下である。これにより、表示体の意匠性が向上する。
【0038】
全光線透過率は、視認性の観点から、3%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、25%以上であることがさらに好ましく、30%以上であることが特に好ましく、中でも35%以上であることが好ましい。当該全光線透過率は、意匠性の観点から、75%以下であることが好ましく、65%以下であることがより好ましく、55%以下であることがさらに好ましく、50%以下であることが特に好ましい。なお、本明細書における全光線透過率は、JISK7361-1:1997に準じて測定した値とする。また、粘着剤層が活性エネルギー線硬化性の粘着剤から構成される場合には、全光線透過率は、被着体貼付後に活性エネルギー線で硬化させたときの全光線透過率とする。
【0039】
(2.1.3.粘着剤層のヘイズ値)
本実施形態に係る粘着剤層のヘイズ値は、所望の全光線透過率を満たし易く、隠蔽性と視認性とを両立することができる観点から、0~80%であることが好ましく、0.1~60%であることがより好ましく、0.5~40%であることがさらに好ましく、1~20%であることが特に好ましく、中でも1.5~10%であることが好ましい。なお、本明細書におけるヘイズ値は、JISK7136:2000に準じて測定した値とする。また、粘着剤層が活性エネルギー線硬化性の粘着剤から構成される場合には、ヘイズ値は、被着体貼付後に活性エネルギー線で硬化させたときのヘイズ値とする。
【0040】
(2.1.4.粘着剤層の粘着力)
本実施形態では、ソーダライムガラスに対する粘着剤層のA面の粘着力(以降、A面粘着力ともいう)が、1N/25mm以上100N/25mm以下であることが好ましい。これにより、貼合する被着対象との密着性を十分に確保でき、良好な段差追従性および良好な耐ブリスター性を達成することが容易となる。
【0041】
上記の観点から、A面粘着力は、5~70N/25mmであることがより好ましく、10~50N/25mmであることがさらに好ましい。
【0042】
本実施形態では、ソーダライムガラスに対する粘着剤層のB面の粘着力(以降、B面粘着力ともいう)が、1N/25mm以上100N/25mm以下であることが好ましい。これにより、貼合する被着対象との密着性を十分に確保でき、良好な段差追従性および良好な耐ブリスター性を達成することが容易となる。
【0043】
上記の観点から、B面粘着力は、5~70N/25mmであることがより好ましく、10~50N/25mmであることがさらに好ましい。
【0044】
上記の粘着力は、JIS Z0237:2009に準じた180度引き剥がし法により測定すればよい。具体的な測定方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0045】
(2.2.粘着剤層が2層である場合)
本実施形態に係る粘着剤層は上述したように、2層以上であることが好ましい。そこで、以下では、粘着剤層が2層である場合について説明する。粘着剤層が2層である場合、
図1Bに示すように、本実施形態に係る粘着シート1は、粘着剤層10(第1粘着剤層11および第2粘着剤層12)と、剥離シート21,22と、を有する。
【0046】
第1粘着剤層11および第2粘着剤層12は積層されて、粘着剤層10を構成している。本実施形態では、第1粘着剤層11において被着体に貼合される主面11aをA面とし、第2粘着剤層12において被着体に貼合される主面12aをB面とする。
【0047】
(2.3.第1粘着剤層および第2粘着剤層の物性)
第1粘着剤層および第2粘着剤層の物性は、粘着剤層全体としての物性が上述した物性を満足する限りにおいて特に制限されない。
【0048】
(2.3.1.全光線透過率)
本実施形態では、第1粘着剤層および第2粘着剤層の全光線透過率は、粘着剤層全体の視認性を満たし易くするための層である場合、85~100%であることが好ましく、88~96%であることがより好ましく、90~93%であることがさらに好ましい。また、第1粘着剤層および第2粘着剤層の全光線透過率は、粘着剤層全体の意匠性を満たし易くするための層である場合、3~85%であることが好ましく、10~80%であることがより好ましく、30~75%であることがさらに好ましく、50~70%であることが特に好ましく、中でも55~68%であることが好ましい。第1粘着剤層および第2粘着剤層が活性エネルギー線硬化性である場合、活性エネルギー線照射前後の全光線透過率は、上記の範囲内であることが好ましい。これにより、粘着剤層全体に要求される光学物性を満たし易くなる。
【0049】
(2.3.2.ヘイズ値)
本実施形態では、第1粘着剤層および第2粘着剤層のヘイズ値は、0~80%であることが好ましく、0.01~40%であることがより好ましく、0.05~10%であることがさらに好ましく、0.1~2%であることがさらに好ましい。第1粘着剤層および第2粘着剤層が活性エネルギー線硬化性である場合、活性エネルギー線照射前後のヘイズ値は、上記の範囲内であることが好ましい。これにより、粘着剤層全体に要求される光学物性を満たし易くなる。
【0050】
(2.3.3.貯蔵弾性率)
本実施形態では、第1粘着剤層および第2粘着剤層の25℃における貯蔵弾性率G’は、0.01~10MPaであることが好ましく、0.04~5MPaであることがより好ましく、0.08~2MPaであることがさらに好ましく、0.1~1.5MPaであることが特に好ましく、中でも0.15~1.1MPaであることが好ましい。
【0051】
第1粘着剤層および第2粘着剤層が活性エネルギー線硬化性である場合、活性エネルギー線照射前の25℃における貯蔵弾性率Gb’は、0.01~1MPaであることが好ましく、0.03~0.5MPaであることがより好ましく、0.05~0.2MPaであることがさらに好ましい。一方、活性エネルギー線照射後の25℃における貯蔵弾性率Ga’は、0.01~10MPaであることが好ましく、0.04~5MPaであることがより好ましく、0.08~1MPaであることがさらに好ましく、0.1~0.5MPaであることが特に好ましい。
【0052】
これにより、第1粘着剤層および第2粘着剤層が好適な粘弾性を有し表示体構成部材等の被着体への密着性が良好になるとともに、上述した粘着力等を所望の範囲に調整し易くなって、良好な凹凸追従性および耐ブリスター性を発揮する。特に、後述する貯蔵弾性率の比を満たし易く、凹凸近傍においては、凹凸に良好に追従しながらも、光学的なムラが抑制されたものとなる。
【0053】
また、第1粘着剤層および第2粘着剤層のうち、一方の粘着剤層が後述する着色成分を含み、他方の粘着剤層が着色成分を含まない場合において、活性エネルギー線照射前の25℃における着色成分を含む粘着剤層の貯蔵弾性率G1b’と、活性エネルギー線照射前の25℃における着色成分を含まない粘着剤層の貯蔵弾性率G2b’と、の比(G1b’/G2b’)は、1.1~10000であることが好ましく、1.2~1000であることがより好ましく、1.3~100であることがさらに好ましく、1.4~50であることがさらに好ましく、中でも1.5~25であることが好ましく、1.6~15であることが最も好ましい。
【0054】
第1粘着剤層および第2粘着剤層のうち、一方の粘着剤層が後述する着色成分を含み、他方の粘着剤層が着色成分を含まない場合において、活性エネルギー線照射後の25℃における着色成分を含む粘着剤層の貯蔵弾性率G1a’と、活性エネルギー線照射前の25℃における着色成分を含まない粘着剤層の貯蔵弾性率G2a’と、の比(G1a’/G2a’)は、1.11~10000であることが好ましく、1.15~1000であることがより好ましく、1.2~100であることがさらに好ましく、1.24~50であることがさらに好ましく、中でも1.28~25であることが好ましく、1.3~15であることが最も好ましい。
【0055】
G1b’/G2b’およびG1a’/G2a’は、上述した範囲を満たすことにより、得られる粘着シートが所望の物性を発揮し易くなって、良好な凹凸追従性および耐ブリスター性を発揮する。特に、凹凸近傍においては、凹凸に良好に追従しながらも、光学的なムラが抑制されたものとなる。
【0056】
(2.3.4.ゲル分率)
本実施形態では、第1粘着剤層および第2粘着剤層のゲル分率は、30~99%であることが好ましく、40~90%であることがより好ましく、45~85%であることがさらに好ましく、50~80%であることが特に好ましい。
【0057】
第1粘着剤層および第2粘着剤層が活性エネルギー線硬化性である場合、活性エネルギー線照射前のゲル分率は、20~80%であることが好ましく、30~70%であることがより好ましく、40~60%であることがさらに好ましく、45~53%であることが特に好ましい。一方、活性エネルギー線照射後のゲル分率は、40~99%であることが好ましく、50~95%であることがより好ましく、55~90%であることがさらに好ましく、60~80%であることが特に好ましい。
【0058】
これにより、第1粘着剤層および第2粘着剤層が好適な凝集性を有し、上述した粘着力および貯蔵弾性率を所望の範囲に調整し易くなって、良好な凹凸追従性および耐ブリスター性を発揮する。また、上述した貯蔵弾性率の比を満たし易く、凹凸近傍においては、凹凸に良好に追従しながらも、光学的なムラが抑制されたものとなる。
【0059】
(2.3.5.粘着力)
本実施形態では、上述したように、A面は第1粘着剤層の主面であり、B面は第2粘着剤層の主面であるから、第1粘着剤層の粘着力は、上述したA面粘着力の範囲を満足することが好ましく、第2粘着剤層の粘着力は、上述したB面粘着力の範囲を満足することが好ましい。
【0060】
(2.4.第1粘着剤層および第2粘着剤層の組成)
本実施形態に係る粘着剤層が上記の物性を有するように構成されていれば、第1粘着剤層および第2粘着剤層の組成は特に限定されない。たとえば、アクリル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤が例示される。また、当該粘着剤は、エマルション型、溶剤型または無溶剤型のいずれであってもよい。さらに、当該粘着剤は、活性エネルギー線硬化性であってもよいし、活性エネルギー線非硬化性であってもよい。さらに、当該粘着剤は、架橋構造を有していてもよいし、架橋構造を有していなくてもよい。そして、当該粘着剤を構成する材料としては、SDGsの観点から、バイオマス度の高い材料を用いてもよいし、リサイクルまたはリユースが可能な材料を用いてもよいし、リサイクルまたはリユースされた材料を用いてもよい。なお、第1粘着剤層および第2粘着剤層を構成する粘着剤は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0061】
本実施形態では、上述した物性の実現しやすさの観点、および、粘着物性、光学特性等の観点から、第1粘着剤層および第2粘着剤層を構成する粘着剤としては、アクリル系粘着剤が好ましく、架橋構造を有するアクリル系粘着剤がより好ましい。
【0062】
ただし、A面凹凸追従率と、B面凹凸追従率と、が異なるように制御する観点から、第1粘着剤層を構成する粘着剤と、第2粘着剤層を構成する粘着剤とは、粘着剤の組成が異なっていることが好ましく、主ポリマーのモノマー組成が異なっていることがより好ましい。
【0063】
架橋構造を有するアクリル系粘着剤は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、架橋剤(B)と、を含有する粘着性組成物(以下「粘着性組成物P」という場合がある。)を架橋して得られる粘着剤であることが好ましい。かかる粘着剤であれば、上述した物性を満足しやすく、かつ、良好な粘着力が得られやすい。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を意味する。他の類似用語も同様である。また、「重合体」には「共重合体」の概念も含まれるものとする。
【0064】
(2.4.1.(メタ)アクリル酸エステル重合体)
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、後述する架橋剤(B)と反応する反応性官能基を分子内に有する反応性官能基含有モノマーを含むことが好ましい。この反応性官能基含有モノマー由来の反応性官能基が架橋剤(B)と反応して、架橋構造(三次元網目構造)が形成され、所望の凝集力を有する粘着剤を得ることができる。
【0065】
(2.4.1.1.反応性官能基含有モノマー)
反応性官能基含有モノマーとしては、分子内に水酸基を有するモノマー(水酸基含有モノマー)、分子内にカルボキシ基を有するモノマー(カルボキシ基含有モノマー)、分子内にアミノ基を有するモノマー(アミノ基含有モノマー)などが好ましく挙げられる。これらの中でも、架橋剤(B)との反応性に優れる水酸基含有モノマーまたはカルボキシ基含有モノマーが好ましい。また、水酸基含有モノマーとカルボキシ基含有モノマーとを併用してもよい。
【0066】
これらの中でも、得られる(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)における水酸基の架橋剤(B)との反応性および他の単量体との共重合性の観点から、炭素数が1~4のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルが好ましい。具体的には、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等が好ましく挙げられ、特に、アクリル酸2-ヒドロキシエチルまたはアクリル酸4-ヒドロキシブチルが好ましく挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸が挙げられる。これらの中でも、得られる(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)におけるカルボキシ基が示す架橋剤(B)との反応性および他の単量体との共重合性の点からアクリル酸が好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
アミノ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸n-ブチルアミノエチル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、このアミノ基含有モノマーからは、後述の窒素原子含有モノマーは除かれる。
【0069】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が、当該重合体を構成するモノマー単位として反応性官能基含有モノマーを含む場合、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該反応性官能基含有モノマーを、1~40質量%含有することが好ましく、2~35質量%含有することがより好ましい。特に、反応性官能基含有モノマーが水酸基含有モノマーである場合、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該水酸基含有モノマーを、5~32質量%含有することが好ましく、10~30質量%含有することがより好ましく、15~28質量%含有することがさらに好ましく、18~26質量%含有することが特に好ましい。また、反応性官能基含有モノマーがカルボキシ基含有モノマーである場合、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該カルボキシ基含有モノマーを、3~25質量%含有することが好ましく、4~15質量%含有することがより好ましく、5~10質量%含有することがさらに好ましい。これにより、得られる粘着剤において良好な架橋構造が形成され、凝集力の比較的高い粘着剤が得られるとともに、耐ブリスター性に優れる。また、得られる粘着剤は、所望の粘着物性、光学特性等を満たし易くなり、特に、凹凸近傍においては、凹凸に良好に追従しながらも、光学的なムラが抑制されたものとなる。
【0070】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、カルボキシ基含有モノマーを含まないことも好ましい。カルボキシ基は酸成分であるため、カルボキシ基含有モノマーを含有しないことにより、粘着剤の貼付対象に、酸により不具合が生じるもの、例えばスズドープ酸化インジウム(ITO)等の透明導電膜や金属膜などが存在する場合にも、酸によるそれらの不具合(腐食、抵抗値変化等)を抑制することができる。
【0071】
ここで、「カルボキシ基含有モノマーを含まない」とは、カルボキシ基含有モノマーを実質的に含有しないことを意味し、カルボキシ基含有モノマーを全く含有しない他、カルボキシル基による透明導電膜や金属配線等の腐食が生じない程度にカルボキシ基含有モノマーを含有することを許容するものである。具体的には、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)中に、モノマー単位として、カルボキシ基含有モノマーを0.1質量%未満、好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下の量で含有することが許容される。
【0072】
(2.4.1.2.(メタ)アクリル酸アルキルエステル)
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有することが好ましい。これにより、粘着剤が好ましい粘着性を発現することができる。また、アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、より好ましい粘着性を発現できる観点からは、直鎖状または分岐鎖状の構造であることが好ましい。
【0073】
アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸n-ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。
【0074】
これらの中でも、粘着性をより向上させる観点から、アルキル基の炭素数が1~12の(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、アルキル基の炭素数が1~8の(メタ)アクリル酸エステルがより好ましい。具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチルが好ましく、メタクリル酸メチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸n-オクチルが特に好ましい。なお、これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0075】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを、30~99質量%含有することが好ましく、40~90質量%含有することがより好ましく、50~80質量%含有することがさらに好ましく、55~70質量%含有することが特に好ましい。これにより、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)中に、所望の特性を発現させるための他のモノマー成分を所望量導入することができ、得られる粘着剤に好適な粘着物性、光学特性等を付与することが容易となる。特に、凹凸追従性および耐ブリスター性に優れ、また、凹凸近傍においては、凹凸に良好に追従しながらも、光学的なムラが抑制されたものとなる。
【0076】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、分子内に脂環式構造を有するモノマー(脂環式構造含有モノマー)を含有することも好ましい。脂環式構造含有モノマーは嵩高いため、これを重合体中に存在させることにより、重合体同士の間隔を広げるものと推定され、得られる粘着剤を柔軟性に優れたものとすることができる。これにより、上述した凹凸追従率や粘着力等の物性を満たし易くなって、凹凸追従性が良好になる。
【0077】
脂環式構造含有モノマーにおける脂環式構造の炭素環は、飽和構造のものであってもよいし、不飽和結合を一部に有するものであってもよい。また、脂環式構造は、単環の脂環式構造であってもよいし、二環、三環等の多環の脂環式構造(多環構造)であってもよい。得られる(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の相互間の距離を適切にし、粘着剤により高い応力緩和性を付与する観点から、上記脂環式構造は、多環構造であることが好ましい。さらに、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と他の成分との相溶性を考慮して、上記多環構造は、二環から四環であることが特に好ましい。また、上記と同様に応力緩和性を付与する観点および相溶性の観点から、脂環式構造の炭素数(環を形成している部分の全ての炭素数をいい、複数の環が独立して存在する場合には、その合計の炭素数をいう)は、通常5~15であることが好ましく、7~10であることがより好ましい。
【0078】
脂環式構造含有モノマーとしては、具体的には、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル等が例示される。中でも、より優れた凹凸追従性を発揮する、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル(脂環式構造の炭素数:10)、(メタ)アクリル酸アダマンチル(脂環式構造の炭素数:10)または(メタ)アクリル酸イソボルニル(脂環式構造の炭素数:7)が好ましく、特に(メタ)アクリル酸イソボルニルが好ましく、さらにアクリル酸イソボルニルが好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0079】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として脂環式構造含有モノマーを含有する場合、当該脂環式構造含有モノマーを、1~30質量%含有することが好ましく、3~26質量%含有することがより好ましく、6~22質量%含有することがさらに好ましく、9~18質量%含有することが特に好ましい。これにより、上述した凹凸追従率や粘着力等の物性を満たし易くなって、凹凸追従性が良好になる。特に、凹凸近傍においては、凹凸に良好に追従しながらも、光学的なムラが抑制されたものとなる。
【0080】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、窒素原子含有モノマーを含有することも好ましい。窒素原子含有モノマーを構成単位として重合体中に存在させることにより、粘着剤に所定の極性を付与し、ある程度の極性を有する被着体に対しても、親和性に優れたものとすることができる。上記窒素原子含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)に適度な剛性を持たせる観点から、窒素含有複素環を有するモノマーが好ましい。また、構成される粘着剤の高次構造中で上記窒素原子含有モノマー由来部分の自由度を高める観点から、当該窒素原子含有モノマーは、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を形成するための重合に使用される1つの重合性基以外に反応性不飽和二重結合基を含有しないことが好ましい。
【0081】
窒素含有複素環を有するモノマーとしては、例えば、N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-ビニル-2-ピロリドン、N-(メタ)アクリロイルピロリドン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン、N-(メタ)アクリロイルアジリジン、アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、2-ビニルピラジン、1-ビニルイミダゾール、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルフタルイミド等が例示される。中でも、より優れた粘着力を発揮するN-(メタ)アクリロイルモルホリンが好ましく、特にN-アクリロイルモルホリンが好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0082】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として窒素原子含有モノマーを含有する場合、当該窒素原子含有モノマーを、1~20質量%含有することが好ましく、2~16質量%含有することがより好ましく、3~12質量%含有することがさらに好ましく、4~8質量%含有することが特に好ましい。これにより、上述した凹凸追従率や粘着力等の物性を満たし易くなって、凹凸追従性が良好になる。特に、凹凸近傍においては、凹凸に良好に追従しながらも、光学的なムラが抑制されたものとなる。
【0083】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、所望により、当該重合体を構成するモノマー単位として、他のモノマーを含有してもよい。他のモノマーとしては、反応性官能基含有モノマーの前述した作用を阻害しないためにも、反応性官能基を含有しないモノマーが好ましい。このようなモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、酢酸ビニル、スチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0084】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、直鎖状のポリマーであることが好ましい。これにより、分子鎖の絡み合いが起こりやすくなり、凝集力の向上が期待できるため、上述した凹凸追従率や粘着力等の物性を満たし易くなって、凹凸追従性が良好になる。
【0085】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、溶液重合法によって得られた溶液重合物であることが好ましい。これにより、高分子量のポリマーが得られやすくなり、凝集力の向上が期待できるため、上述した凹凸追従率や粘着力等の物性を満たし易くなって、凹凸追従性が良好になる。特に、凹凸近傍においては、凹凸に良好に追従しながらも、光学的なムラが抑制されたものとなる。
【0086】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合態様は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
【0087】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量は、10万~300万であることが好ましく、20万~250万であることがより好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を構成するモノマー単位として、カルボキシ基を含まずに水酸基含有モノマーを含む場合、当該重量平均分子量は、30万~180万であることが好ましく、35万~120万であることがより好ましく、40万~90万であることがさらに好ましく、45万~75万であることが特に好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を構成するモノマー単位として、水酸基含有モノマーを含まずにカルボキシ基を含む場合、当該重量平均分子量は、50万~230万であることが好ましく、100万~220万であることがより好ましく、150万~210万であることがさらに好ましい。これにより、上述した凹凸追従率や粘着力等の物性を満たし易くなって、凹凸追従性が良好になる。特に、凹凸近傍においては、凹凸に良好に追従しながらも、光学的なムラが抑制されたものとなる。なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0088】
なお、粘着性組成物Pにおいて、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0089】
(2.4.2.架橋剤(B))
架橋剤(B)は、粘着性組成物Pの加熱により(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を架橋し、三次元網目構造を良好に形成することが可能となる。これにより、得られる粘着剤の凝集力が向上し、上述した凹凸追従率や粘着力等の物性を満たし易くなって、凹凸追従性が良好になる。特に、凹凸近傍においては、凹凸に良好に追従しながらも、光学的なムラが抑制されたものとなる。
【0090】
架橋剤(B)としては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が有する反応性基と反応するものであればよい。たとえば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アミン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、アンモニウム塩系架橋剤等が例示される。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が有する反応性官能基が水酸基の場合、水酸基との反応性に優れたイソシアネート系架橋剤を使用することが好ましい。一方、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が有する反応性官能基がカルボキシ基の場合、カルボキシ基との反応性に優れたエポキシ系架橋剤を使用することが好ましく、所望の架橋構造を得やすい観点でイソシアネート系架橋剤を使用することも好ましい。なお、架橋剤(B)は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0091】
イソシアネート系架橋剤は、少なくともポリイソシアネート化合物を含むものである。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などが挙げられる。これらの中でも水酸基との反応性の観点から、トリメチロールプロパン変性の芳香族ポリイソシアネート、特にトリメチロールプロパン変性のトリレンジイソシアネートおよびトリメチロールプロパン変性のキシリレンジイソシアネートが好ましい。
【0092】
エポキシ系架橋剤としては、例えば、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N',N'-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン等が例示される。これらの中でもカルボキシ基との反応性の観点から、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンが好ましい。
【0093】
粘着性組成物P中における架橋剤(B)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、0.01~10質量部であることが好ましく、0.04~5質量部であることがより好ましく、0.08~1質量部であることがさらに好ましく、0.12~0.5質量部であることが特に好ましい。これにより、得られる粘着剤が良好な凝集力を発揮し、上述した凹凸追従率や粘着力等の物性を満たし易くなって、凹凸追従性が良好になる。特に、凹凸近傍においては、凹凸に良好に追従しながらも、光学的なムラが抑制されたものとなる。
【0094】
(2.4.3.活性エネルギー線硬化性成分(C))
本実施形態では、第1粘着剤層および第2粘着剤層を構成する粘着剤が活性エネルギー線硬化性である場合、粘着性組成物Pは、活性エネルギー線硬化性成分(C)を含有することが好ましい。粘着性組成物Pを架橋してなる粘着剤をさらに活性エネルギー線により硬化した粘着剤においては、互いに重合した活性エネルギー線硬化性成分(C)が、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)および架橋剤(B)の架橋により形成された架橋構造(三次元網目構造)に絡み付くものと推定される。このような高次構造を有する粘着剤は、上述した凹凸追従率や粘着力等の物性を満たし易くなって、凹凸追従性および耐ブリスター性に優れる。特に、凹凸近傍においては、凹凸に良好に追従しながらも、光学的なムラが抑制されたものとなる。
【0095】
活性エネルギー線硬化性成分(C)は、活性エネルギー線の照射によって硬化し、上記の効果が得られる成分であれば特に制限されず、モノマー、オリゴマーまたはポリマーのいずれであってもよいし、それらの混合物であってもよい。これらの中でも、上述した凹凸追従率や粘着力等の物性を満たし易くなる観点および耐ブリスター性により優れ易くなる観点から、多官能アクリレート系モノマーを好ましく挙げることができる。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)との相溶性の観点から、多官能アクリレート系モノマーは、分子量1000未満のものが好ましい。
【0096】
多官能アクリレート系モノマーとしては、2官能型、3官能型、4官能型、5官能型、6官能型アクリレート系モノマーが好ましい。
【0097】
2官能型アクリレート系モノマーとしては、例えば、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、ジ(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン等が挙げられる。
【0098】
3官能型アクリレート系モノマーとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0099】
4官能型アクリレート系モノマーとしては、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。5官能型アクリレート系モノマーとしては、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。6官能型アクリレート系モノマーとしては、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0100】
これらの中でも、得られる粘着剤の耐ブリスター性の観点から、ジ(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート等の分子内にイソシアヌレート構造を含有する多官能アクリレート系モノマー、またはトリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート等の分子内に環状構造(特にシクロアルカン構造)を含有する多官能アクリレート系モノマーが好ましく、3官能以上、かつ、分子内にイソシアヌレート構造を含有する多官能アクリレート系モノマー、または2官能以上、かつ、分子内に多環構造(特にシクロアルカンの多環構造)を含有する多官能アクリレート系モノマーがより好ましく、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレートまたはトリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレートが特に好ましく、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートまたはトリシクロデカンジメタノールアクリレートがさらに好ましく、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートが最も好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0101】
粘着性組成物P中における活性エネルギー線硬化性成分(C)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、1~40質量部であることが好ましく、3~32質量部であることがより好ましく、6~24質量部であることがさらに好ましく、9~16質量部以下であることが特に好ましい。これにより、活性エネルギー線照射後には、凝集力等が向上し、上述した凹凸追従率や粘着力等の物性を満たし易くなって、耐ブリスター性および凹凸追従性がより優れる。特に、凹凸近傍においては、凹凸に良好に追従しながらも、光学的なムラが抑制されたものとなる。
【0102】
(2.4.4.光重合開始剤(D))
本実施形態では、粘着性組成物Pが活性エネルギー線硬化性成分(C)を含有し、活性エネルギー線として紫外線を用いる場合には、粘着性組成物Pは光重合開始剤(D)を含有することが好ましい。これにより、活性エネルギー線硬化性成分(C)を効率良く硬化させることができ、また重合硬化時間および紫外線の照射量を少なくすることができる。
【0103】
光重合開始剤(D)としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-プロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-2-(ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p-フェニルベンゾフェノン、4,4'-ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-ターシャリ-ブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン、2-メチルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p-ジメチルアミノ安息香酸エステル、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0104】
上記の中でも、紫外線照射時に開裂し易く、粘着剤を確実に硬化させ易いという観点から、フォスフィンオキサイド系の光重合開始剤が好ましい。具体的には、2,4,6-トリメチルベンゾイルージフェニルーフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等が好ましい。被着体となる光学部材の中には、紫外線遮蔽性を有する部材もあるが、このような紫外線を通しにくい紫外線遮蔽性部材越しに紫外線を照射する場合であっても、上記のフォスフィンオキサイド系の光重合開始剤であれば、活性エネルギー線硬化性成分(C)の硬化を進行させることができる。
【0105】
粘着性組成物P中における光重合開始剤(D)の含有量は、活性エネルギー線硬化性成分(C)100質量部に対して、1~30質量部であることが好ましく、4~22質量部であることがより好ましく、8~15質量部であることがさらに好ましい。これにより、得られる粘着シートは、所望の物性を満たし易くなって、凹凸追従性および耐ブリスター性に優れたものになり易い。特に、凹凸近傍においては、凹凸に良好に追従しながらも、光学的なムラが抑制されたものとなる。
【0106】
(2.4.5.着色成分(E))
本実施形態では、第1粘着剤層および第2粘着剤層のうち、少なくとも1層が着色成分(E)を含むことが好ましい。複数の層が着色成分(E)を含む場合には、着色成分が同じであってもよいし、異なっていてもよい。着色成分(E)を含むことにより、粘着剤層の全光線透過率およびヘイズ値を所望の範囲に調整することができ、粘着剤層が貼合される表示体の意匠性を高めることができる。粘着剤層が1層である場合には、当該粘着剤層が着色成分(E)を含むことが好ましい。粘着剤層が3層以上から構成される場合には、少なくとも1層が着色成分(E)を含むことが好ましい。
【0107】
着色成分(E)は、顔料であってもよいし、染料であってもよい。顔料は、無機系顔料であってもよいし、有機系顔料であってもよい。得られる粘着剤の耐久性の観点からは、無機系顔料が好ましい。着色成分(E)の色は、目的に応じて適宜選択することができるが、一般的には、黒、茶、紺、紫、青等の暗色または濃色であることが好ましく、特に黒色が好ましい。
【0108】
無機系顔料としては、例えば、カーボンブラック、コバルト系色素、鉄系色素、クロム系色素、チタン系色素、バナジウム系色素、ジルコニウム系色素、モリブデン系色素、ルテニウム系色素、白金系色素、ITO(インジウムスズオキサイド)系色素、ATO(アンチモンスズオキサイド)系色素等が挙げられる。
【0109】
有機系顔料及び有機系染料としては、例えば、アミニウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、アズレニウム系色素、ポリメチン系色素、ナフトキノン系色素、ピリリウム系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、ナフトラクタム系色素、アゾ系色素、縮合アゾ系色素、インジゴ系色素、ペリノン系色素、ペリレン系色素、ジオキサジン系色素、キナクリドン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、ピロール系色素、チオインジゴ系色素、金属錯体系色素(金属錯塩染料)、ジチオール金属錯体系色素、インドールフェノール系色素、トリアリルメタン系色素、アントラキノン系色素、ジオキサジン系色素、ナフトール系色素、アゾメチン系色素、ベンズイミダゾロン系色素、ピランスロン系色素及びスレン系色等が挙げられる。
【0110】
黒色顔料としては、例えば、カーボンブラック、酸化銅、四三酸化鉄、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭等が挙げられる。また、黒色染料としては、例えば、高濃度の植物性染料やアゾ系染料等が挙げられる。
【0111】
上記の顔料又は染料は、粘着剤層において目的とする物性が得られるよう、適宜混合して使用することができる。
【0112】
上記の着色成分(E)の中でも、前述した物性を満たし易く、表示体の意匠性を高める観点から、カーボンブラック、ニグロシン系黒色染料およびクロム酸塩系黒色染料が好ましい。なお、カーボンブラックは、その表面に対して所定の処理(例えば親溶剤化処理)がされていてもよいし、されていなくてもよい。
【0113】
また、光学特性の観点から、上記の着色成分(E)は、以下に示す特性を満足することが好ましい。
【0114】
着色成分(E)は、当該着色成分を酢酸エチルで1万倍希釈した液の、波長780nmにおけるヘイズ値と、波長380nmにおけるヘイズ値との平均値である平均ヘイズが、1~60%であるものが好ましく、2~40%であるものがより好ましく、さらには3~20%であるものが好ましく、特に4~10%であるものが好ましい。このような着色成分(E)を適量に使用することにより、前述した粘着剤層の光学物性(全光線透過率、ヘイズ値等)が満たされ易くなる。
【0115】
また、着色成分(E)は、当該着色成分を酢酸エチルで1万倍希釈した液の、波長780nmにおけるヘイズ値と、波長380nmにおけるヘイズ値との差分の値が、0~30ポイントであるものが好ましく、0.1~22ポイントであるものがより好ましく、特に0.5~14ポイントであるものが好ましく、さらには1~8ポイントであるものが好ましい。このような着色成分を適量に使用することにより、前述した粘着剤層の光学物性(全光線透過率、ヘイズ値等)が満たされ易くなる。
【0116】
着色成分(E)を酢酸エチルで1万倍希釈した液の、波長780nmにおけるヘイズ値は、0.1~50%であることが好ましく、0.5~35%であることがより好ましく、特に1~20%であることが好ましく、さらには2~10%であることが好ましい。また、上記着色成分を酢酸エチルで1万倍希釈した液の、波長380nmにおけるヘイズ値は、1~60%であることが好ましく、3~45%であることがより好ましく、特に6~30%であることが好ましく、さらには10~20%であることが好ましい。これにより、粘着剤層の光学物性(全光線透過率、ヘイズ値等)が満たされ易くなる。
【0117】
さらに、着色成分(E)を酢酸エチルで1万倍希釈した液の、波長領域380nm~780nmの5nmピッチの各波長(すなわち、380nm、385nm、390nm、・・・、775nm、780nm)におけるヘイズ値の標準偏差は、0.1~10であることが好ましく、0.5~6であることがより好ましく、特に1~3であることが好ましい。これにより、前述した粘着剤層の光学物性(全光線透過率、ヘイズ値等)が満たされ易くなる。
【0118】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、着色成分(E)の含有量は、0.01~10質量部であることが好ましく、0.05~5質量部であることがより好ましく、0.1~1質量部であることがさらに好ましく、0.2~0.5質量部であることが特に好ましい。これにより、前述した光学物性が満たされ易くなるとともに、所望の粘着力や凝集力が維持されるため凹凸追従率を満たし易くなる。特に、凹凸近傍においては、凹凸に良好に追従しながらも、光学的なムラが抑制されたものとなる。
【0119】
(2.4.6.その他の添加剤)
粘着性組成物Pは、必要に応じて、その他の添加剤を含有してもよい。このような添加剤としては、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、粘着付与剤、酸化防止剤、光安定剤、防錆剤、赤外線吸収剤、軟化剤、充填剤、屈折率調整剤等が例示される。なお、後述の重合溶媒や希釈溶媒は、粘着性組成物Pを構成する添加剤に含まれないものとする。
【0120】
(2.5.粘着剤層の他の構成)
図1Aに示すように、粘着剤層10が1層から構成されている場合には、粘着剤層10を構成する粘着剤は、上述した粘着性組成物Pを用いて構成すればよい。また、A面凹凸追従率と、B面凹凸追従率と、を異ならせる手法としては、たとえば、A面側からB面側の厚さ方向に向かって粘着剤の硬さが変化する傾斜構造を形成する方法等が例示される。
【0121】
また、粘着剤層が2層から構成されている場合として、
図1Bに示すように、第1粘着剤層と第2粘着剤層とが接している構成について説明したが、第1粘着剤層と第2粘着剤層とが接していない構成であってもよい。このような構成としては、たとえば、第1粘着剤層と第2粘着剤層とが、粘着性を有していない部材を介して積層された構成が例示される。具体的には、樹脂フィルム等から構成される基材の一方の主面に第1粘着剤層が形成され、他方の主面に第2粘着剤層が形成された構成が例示される。
【0122】
粘着剤層が3層以上から構成されている場合には、粘着剤層全体として上述した物性を満足するように、各層を構成する粘着剤を上述した粘着性組成物Pを用いて構成すればよい。
【0123】
(2.6.剥離シート)
剥離シート21,22は、粘着シート1の使用時まで粘着剤層10を保護するものであり、粘着シート1を使用するときに剥離される。本実施形態に係る粘着シート1において、剥離シート21,22の一方または両方は必ずしも必要なものではない。
【0124】
剥離シートとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニルフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム等が用いられる。また、これらの架橋フィルムも用いられる。さらに、これらの積層フィルムであってもよい。なお、SDGsの観点からは、剥離シートを構成する材料として、バイオマス度の高い材料を用いてもよいし、リサイクルまたはリユースが可能な材料を用いてもよいし、リサイクルまたはリユースされた材料を用いてもよい。
【0125】
剥離シートの剥離面(特に粘着剤層と接する面)には、剥離処理が施されていることが好ましい。剥離処理に使用される剥離剤としては、例えば、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系の剥離剤が挙げられる。なお、剥離シートのうち、一方の剥離シートを剥離力の大きい重剥離型剥離シートとし、他方の剥離シートを剥離力の小さい軽剥離型剥離シートとすることが好ましい。
【0126】
剥離シートの厚さについては特に制限はないが、通常20~150μm程度である。
【0127】
(3.粘着性組成物の製造)
粘着性組成物Pは、たとえば、まず、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を製造し、得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、架橋剤(B)とを混合することにより製造することができる。必要に応じて、活性エネルギー線硬化性成分(C)と、光重合開始剤(D)と、着色成分(E)と、を混合することにより製造することができる。
【0128】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、重合体を構成するモノマーの混合物を通常のラジカル重合法で重合することにより製造することができる。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合は、所望により重合開始剤を使用して、溶液重合法等により行うことができる。重合溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。重合開始剤としては、アゾ系化合物、有機過酸化物等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。なお、上記重合工程において、2-メルカプトエタノール等の連鎖移動剤を配合することにより、得られる重合体の重量平均分子量を調節することができる。
【0129】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が得られたら、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の溶液に、架橋剤(B)と、必要に応じて、活性エネルギー線硬化性成分(C)、光重合開始剤(D)、着色成分(E)、その他の添加剤、希釈溶剤等を添加し、十分に混合することにより、溶剤で希釈された粘着性組成物P(塗布溶液)を得る。なお、上記各成分のいずれかにおいて、固体状のものを用いる場合、あるいは、希釈されていない状態で他の成分と混合した際に析出を生じる場合には、その成分を単独で予め希釈溶媒に溶解もしくは希釈してから、その他の成分と混合してもよい。
【0130】
希釈溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤などが用いられる。
【0131】
このようにして調製された塗布溶液の濃度・粘度としては、コーティング可能な範囲であればよく、特に制限されず、状況に応じて適宜選定することができる。例えば、粘着性組成物Pの濃度が10~60質量%となるように希釈する。なお、塗布溶液を得るに際して、希釈溶剤等の添加は必要条件ではなく、粘着性組成物Pがコーティング可能な粘度等であれば、希釈溶剤を添加しなくてもよい。この場合、粘着性組成物Pは、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合溶媒をそのまま希釈溶剤とする塗布溶液となる。
【0132】
(4.粘着剤の製造)
粘着剤層を構成する粘着剤は、上述した粘着性組成物Pを架橋して得られることが好ましい。粘着性組成物Pの架橋は、通常は加熱処理により行うことができる。なお、この加熱処理は、所望の対象物に塗布した粘着性組成物Pの塗膜から希釈溶剤等を揮発させる際の乾燥処理で兼ねることもできる。また、かかる粘着剤層は、粘着性組成物Pを所望の対象物に塗布し加熱処理した後、活性エネルギー線の照射により粘着性組成物Pを硬化させることによっても、好ましく形成することができる。
【0133】
加熱処理の加熱温度は、粘着性組成物Pの場合、50~150℃であることが好ましく、70~120℃であることがより好ましい。また、加熱時間は、粘着性組成物Pの場合、10秒~10分であることが好ましく、50秒~2分であることがより好ましい。
【0134】
ここで、活性エネルギー線とは、電磁波または荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものをいい、具体的には、紫外線や電子線などが挙げられる。活性エネルギー線の中でも、取扱いが容易な紫外線が特に好ましい。紫外線の照射は、高圧水銀ランプ、へレウス社製Hランプ、キセノンランプ等によって行うことができる。
【0135】
加熱処理した後、活性エネルギー線の照射により粘着性組成物Pを硬化させる場合、紫外線の照射量は、照度が50~1000mW/cm2程度であることが好ましい。また、光量は、50~10000mJ/cm2であることが好ましく、80~5000mJ/cm2であることがより好ましく、200~2000mJ/cm2であることが特に好ましい。一方、電子線の照射は、電子線加速器等によって行うことができ、電子線の照射量は、10~1000krad程度が好ましい。
【0136】
必要に応じて、常温(例えば、23℃、相対湿度50%)で1~2週間程度の養生期間を設けてもよい。養生が必要な場合は、養生期間経過後、架橋構造を有する粘着剤が得られる。養生が不要な場合には、加熱処理終了後、架橋構造を有する粘着剤が得られる。
【0137】
(5.粘着シートの製造)
粘着シートを製造する方法としては特に制限されず、公知の方法により製造すればよい。たとえば、一方の剥離シートの剥離面に、上記の粘着性組成物Pの塗布液を塗布し、加熱処理を行って粘着性組成物Pを架橋することで所定の厚みを有する塗布層を形成する。形成した塗布層に他方の剥離シートの剥離面を重ね合わせる。養生が必要な場合は、所定の養生期間を経ると、塗布層が粘着剤層となる。また、養生が不要な場合は塗布層がそのまま粘着剤層となる。これにより、粘着シートが得られる。
【0138】
また、粘着剤層が2層である場合には、たとえば、一方の剥離シートの剥離面に、一の粘着剤層(たとえば、第1粘着剤層)を形成するための粘着性組成物Pの塗布液を塗布し、加熱処理を行って粘着性組成物を架橋し、塗布層を形成して、塗布層付きの剥離シートを得る。また、他方の剥離シートの剥離面に、他の粘着剤層(たとえば、第2粘着剤層)を形成するための粘着性組成物Pの塗布液を塗布し、加熱処理を行って粘着性組成物を架橋し、塗布層を形成して、塗布層付きの剥離シートを得る。そして、塗布層付きの剥離シートと塗布層付きの剥離シートとを、両塗布層が互いに接触するように貼り合わせる。
【0139】
粘着剤層が3層以上である場合には、塗布層付きの剥離シートを複数作製し、その塗布層を所望の数、所望の積層順で貼合してもよい。
【0140】
養生が必要な場合は、所定の養生期間を経ると、塗布層が粘着剤層となる。また、養生が不要な場合は塗布層がそのまま粘着剤層となる。また、粘着剤層が活性エネルギー線硬化性である場合には、必要に応じて、粘着剤層に活性エネルギー線を照射して粘着剤層を硬化させてもよい。上記の工程を経て、粘着シート1が得られる。
【0141】
粘着性組成物Pの塗布液を塗布する方法としては、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等が例示される。
【0142】
(6.粘着シートの使用)
本実施形態に係る粘着シートは以下のように使用される。まず、粘着シートから一方の剥離シートを除去して、露出した粘着剤層を第1の部材(または第2の部材)に貼合する。続いて、他方の剥離シートを剥離して、露出した粘着剤層第2の部材に貼合する。これにより、第1の部材および第2の部材が粘着剤層を介して積層され一体化された積層体が得られる。
【0143】
また、粘着剤層が活性エネルギー線硬化性である場合には、必要に応じて、得られた積層体の粘着剤層に対して所定の活性エネルギー線を照射し、粘着剤層を硬化させて硬化後粘着剤層としてもよい。
【0144】
粘着剤層を構成する粘着剤が活性エネルギー線硬化性成分を含んでいる場合、活性エネルギー線を照射する前に、粘着剤層は第1の部材または第2の部材に貼合されるので、粘着剤層は架橋構造を含んでいながら比較的柔らかく、第1の部材および/または第2の部材に凹凸が形成されていても、凹凸に十分に追従し、凹凸近傍に隙間、浮き等が生じることが抑制される。
【0145】
そして、粘着剤層が比較的柔らかい状態で光学部材に貼合した後に、粘着剤層に対して所定の活性エネルギー線を照射して、粘着剤層を硬化させる。したがって、凹凸追従性が良好な状態で、硬化後粘着剤層の凝集力を高めることができるので、凹凸追従性と耐ブリスター性とを両立することができる。特に、凹凸近傍においては、凹凸に良好に追従しながらも、光学的なムラが抑制されたものとなる。
【0146】
(7.積層体)
図2に示すように、本実施形態に係る積層体3は、凹凸41を有する第1の部材31(一の表示体構成部材)と、第2の部材32(他の表示体構成部材)と、それらの間に位置し、第1の部材31および第2の部材32を互いに貼合する粘着剤層10とを備えて構成される。
【0147】
積層体3における粘着剤層10は、上述した粘着シート1の粘着剤層10または硬化後粘着剤層であるので、凹凸41に十分追従して貼合されている。したがって、凹凸追従性および耐ブリスター性が良好である。また、凹凸近傍においても光学的なムラが抑制されている。
【0148】
積層体3は、表示体自体であるか、または表示体の一部を構成する部材であることが好ましい。表示体としては、例えば、自動車のインストルメントパネル、カーナビゲーションシステム、コンソールに設けられた各種計器等における車載用の表示体、一般ユーザ用のスマートフォン、タブレット端末等の表示体、商業用のタブレット端末やデジタルサイネージ等の表示体、屋外用のデジタルサイネージ等の表示体などが挙げられる。また、表示体の種類として、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)ディスプレイ、電気泳動方式のディスプレイ(電子ペーパー)、基板としてプラスチック基板(フィルム)を用いた液晶ディスプレイ、発光ダイオード(LED)ディスプレイ等が例示される。これらは、位置入力手段を備えるタッチパネルであってもよい。
【0149】
また、これらの表示体は、フレキシブルディスプレイであってもよい。フレキシブルディスプレイは、製造時に1回曲げられ、曲げられた状態を維持している部材を含むディスプレイであってもよいし、繰り返しの屈曲(折り曲げを含む)が可能な部材を含むディスプレイであってもよい。フレキシブルディスプレイとしては、たとえば、フォルダブルディスプレイ、ローラブルディスプレイ、ストレッチャブルディスプレイ等が例示される。
【0150】
積層体3は、表示体自体であるか、または表示体の一部を構成する部材(表示体構成部材)である場合、積層体3における凹凸41は、当該表示体構成部材自体の凹凸であってもよいし、当該表示体構成部材に形成されている他の構成要素に起因する凹凸であってもよい。このような他の構成要素に起因する凹凸としては、印刷層に起因する段差、発光体に起因する段差等が例示される。
【0151】
凹凸が印刷層に起因する段差である場合、印刷層が形成されている表示体構成部材は、ガラス板、プラスチック板等の他、それらを含む積層体などからなる保護パネルが例示される。印刷層は、保護パネル上に額縁状に形成されることが一般的である。印刷層を構成する材料は特に限定されることなく、印刷用の公知の材料が使用される。印刷層の厚さ、すなわち段差の高さは、3~40μmであることが好ましく、5~35μmであることが好ましく、7~30μmであることがより好ましく、10~25μmであることがさらに好ましい。これにより、粘着剤層が段差に十分追従することができる。
【0152】
ガラス板としては、特に限定されることなく、例えば、化学強化ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス、ソーダライムガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、アルミノケイ酸ガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス等が挙げられる。ガラス板の厚さは、特に限定されないが、通常は0.1~5mmであり、好ましくは0.2~2mmである。
【0153】
プラスチック板としては、特に限定されることなく、例えば、アクリル板、ポリカーボネート板等が挙げられる。プラスチック板の厚さは、特に限定されないが、通常は0.2~5mmであり、好ましくは0.4~3mmである。
【0154】
なお、上記ガラス板やプラスチック板の片面または両面には、各種の機能層(透明導電膜、金属層、シリカ層、ハードコート層、防眩層、反射防止層、光拡散層、光学調整層、紫外線吸収層、書き味向上層等)が設けられていてもよいし、光学部材が積層されていてもよい。また、透明導電膜および金属層は、パターニングされていてもよい。
【0155】
表示体構成部材は、光学部材、表示体モジュール(例えば、液晶(LCD)モジュール、発光ダイオード(LED)モジュール、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)モジュール、電気泳動方式のディスプレイ等)、表示体モジュールの一部としての光学部材、または表示体モジュールを含む積層体であることが好ましい。上記光学部材としては、例えば、飛散防止フィルム、偏光板(偏光フィルム)、偏光子、位相差板(位相差フィルム)、視野角補償フィルム、輝度向上フィルム、コントラスト向上フィルム、液晶ポリマーフィルム、拡散フィルム、半透過反射フィルム、透明導電性フィルム等が好ましく挙げられる。飛散防止フィルムとしては、基材フィルムの片面にハードコート層が形成されてなるハードコートフィルム等が例示される。
【0156】
凹凸が発光体に起因する段差である場合、発光体が形成されている表示体構成部材としては、発光体を備える基板が例示される。このような基板は、直下型のバックライトであってもよい。たとえば、液晶ディスプレイのバックライトが例示される。発光体としては、例えば、発光ダイオード(LED)、レーザーダイオード(LD)、有機エレクトロルミネッセンス発光素子、無機エレクトロルミネッセンス発光素子等が挙げられる。これらの中でも、粘着剤層による封止性の観点から、LEDが好ましく、特に、ミニLEDまたはマイクロLEDが好ましい。
【0157】
発光体の厚さは、10~300μmであることが好ましく、30~200μmであることがより好ましく、さらには50~150μmであることが好ましく、特に80~120μmであることが好ましい。発光体が複数設けられる場合、互いに隣り合う発光体の間隙の幅は、0.01~100mmであることが好ましく、0.1~10mmであることがより好ましく、さらには0.5~4mmであることが好ましい。発光体の形状は、特に限定されないが、通常は、直方体状、半球状等である。発光体の大きさも特に限定されないが、発光体封止性の観点から、平面視の一辺または直径が、0.01~100mmであることが好ましく、0.1~10mmであることがより好ましい。
【0158】
積層体3を製造する一例を示す。まず、粘着シート1の一方の剥離シート21を剥離して、粘着シート1の露出した粘着剤層10を、第1の部材31の一方の面に貼合する。
【0159】
その後、粘着シート1の粘着剤層10から他方の剥離シート22を剥離して、粘着シート1の露出した粘着剤層10と第2の部材32とを貼合し、積層体3を得る。また、他の例として、第1の部材31および第2の部材32の貼合順序を入れ替えてもよい。
【0160】
また、粘着剤層10が活性エネルギー線硬化性である場合には、必要に応じて、粘着剤層10と、第1の部材31および第2の部材32と、を貼合した後、粘着剤層10に対して活性エネルギー線を照射する。これにより、粘着剤層10中の上記の活性エネルギー線硬化性成分(C)が重合し、粘着剤層10が硬化した積層体3が得られる。
【0161】
(8.表示体)
本実施形態に係る表示体は、上記の積層体を備えたものであり、積層体のみからなってもよいし、一または複数の積層体と、他の部材とを備えて構成されてもよい。一の積層体と他の積層体とを積層する場合、または、積層体と他の部材とを積層する場合には、上述した粘着シートの粘着剤層を介して積層することが好ましい。したがって、本実施形態に係る表示体は、凹凸追従性、耐ブリスター性、意匠性に優れ、しかも光学的なムラが抑制されている。
【0162】
なお、本明細書において、「X~Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特に断らない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。また、「X以上」(Xは任意の数字)と記載した場合、特に断らない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と記載した場合、特に断らない限り「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
【0163】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の範囲内において種々の態様で改変しても良い。
【0164】
(製造例1)
1.(メタ)アクリル酸エステル重合体の調製
アクリル酸n-ブチル25質量部、アクリル酸2-エチルヘキシル30質量部、N-アクリロイルモルホリン5質量部、アクリル酸イソボルニル10質量部、メタクリル酸メチル5質量部およびアクリル酸2-ヒドロキシエチル25質量部を共重合させて、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を調製した。得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の分子量を以下に示す方法で測定したところ、重量平均分子量(Mw)は50万であった。
【0165】
重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定(GPC測定)したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
(測定条件)
・GPC測定装置:東ソー社製,HLC-8020
・GPCカラム(以下の順に通過):東ソー社製
TSK guard column HXL-H
TSK gel GMHXL(×2)
TSK gel G2000HXL
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
【0166】
2.粘着性組成物の調製
上記で得られた(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部(固形分換算値;以下同じ)と、架橋剤(B)としてのイソシアネート系架橋剤(三井化学社製,製品名「タケネートD-101E」,イソシアネート種:トリレンジイソシアネート,変性形態:トリメチロールプロパンアダクト体)0.2質量部と、着色成分(E)としての黒色顔料0.25質量部と、を混合し、十分に撹拌して、メチルエチルケトンで希釈することにより、粘着性組成物の塗布溶液を得た。
【0167】
3.粘着剤層の製造
得られた粘着性組成物の塗布溶液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離シートの剥離処理面に、ナイフコーターで塗布した。そして、塗布層に対し、90℃で1分間加熱処理して架橋反応を進行させ、塗布層を形成した。
【0168】
次いで、上記で得られた剥離シート上の塗布層と、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離シートの剥離処理面とが塗布層に接触するように貼合し、23℃、相対湿度50%の条件下で7日間養生することにより、厚さ25μmの粘着剤層(活性エネルギー線非硬化性)を作製した。
【0169】
なお、粘着剤層の厚さは、JIS K7130に準拠し、定圧厚さ測定器(テクロック社製PG-02)を使用して測定した値である。
【0170】
(製造例2~7)
メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の組成、架橋剤(B)の種類および配合量、活性エネルギー線硬化性成分(C)の種類および配合量、光重合開始剤(D)の種類および配合量、着色成分(E)の配合量ならびに粘着剤層の厚さを表1に示すように変更した以外は、製造例1と同じ方法により粘着剤層を製造した。なお、製造例4および5については、塗布層に対して活性エネルギー線(紫外線;UV)を剥離シート越しに照射して硬化させた。活性エネルギー線の照射条件を以下に示す。また、染色したPETフィルムについても、便宜上、表1に示す。
<活性エネルギー線照射条件(以下「条件A」という。)>
・高圧水銀ランプ使用
・照度200mW/cm2,光量2000mJ/cm2
・UV照度・光量計はアイグラフィックス社製「UVPF-A1」を使用
【0171】
なお、表1において、架橋剤(B)、活性エネルギー線硬化性成分(C)、光重合開始剤(D)および着色成分(E)の各配合量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部(固形分換算)に対する量(固形分換算)であった。また、製造例1,4,5,7の粘着剤は、活性エネルギー線非硬化性であり、製造例2,3,6の粘着剤は、活性エネルギー線硬化性であった。
【0172】
【0173】
表1に記載の略号等の詳細は以下の通りである。なお、着色成分(E)に関しては、表1に記載した着色成分E1を酢酸エチルで1万倍希釈した液の光学特性を表2に示す。表2に示す光学特性は、上記の希釈液について、JISK7136:2000に準じて、ヘイズメーター(日本電色工業社製,製品名「SH-7000」)を用いて得られたヘイズ値(%)から算出した。ヘイズ値との差分は、波長780nmにおけるヘイズ値と、波長380nmにおけるヘイズ値との差分であり、平均ヘイズは、波長780nmにおけるヘイズ値と、波長380nmにおけるヘイズ値との平均値であり、ヘイズ値の標準偏差は、波長領域380nm~780nmの5nmピッチの各波長におけるヘイズ値の標準偏差である。
((メタ)アクリル酸エステル重合体(A))
BA:アクリル酸n-ブチル
2EHA:アクリル酸2-エチルヘキシル
ACMO:N-アクリロイルモルホリン
IBXA:アクリル酸イソボルニル
MMA:メタクリル酸メチル
HEA:アクリル酸2-ヒドロキシエチル
4HBA:アクリル酸4-ヒドロキシブチル
AAc:アクリル酸
(架橋剤(B))
B1:イソシアネート系架橋剤(三井化学製,製品名「タケネートD-101E」,イソシアネート種:トリレンジイソシアネート,変性形態:トリメチロールプロパンアダクト体)
B2:イソシアネート系架橋剤(三井化学社製,製品名「タケネートD-110N」,イソシアネート種:キシリレンジイソシアネート,変性形態:トリメチロールプロパンアダクト体)
(活性エネルギー線硬化性成分(C))
C1:ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート(新中村化学社製,製品名「NKエステルA-9300-1CL」)
C2:トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート(新中村化学社製,製品名「NKエステルA-9300」)
(光重合開始剤(D))
D1:2,4,6-トリメチルベンゾイルージフェニルーフォスフィンオキサイド
D2:1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとベンゾフェノンとを1:1の質量比で混合したもの
(着色成分(E))
E1:カーボンブラック系黒色顔料
【0174】
【0175】
(全光線透過率の測定)
製造例1~7で得られた粘着剤層をガラスに貼合して、これを測定用サンプルとした。ガラスでバックグラウンド測定を行った上で、上記測定用サンプルについて、JISK7361-1:1997に準じて、ヘイズメーター(日本電色工業社製,製品名「SH-7000」)を用いて全光線透過率(%)を測定した。結果を表3に示す。なお、製造例2、3および6については、活性エネルギー線(紫外線;UV)照射前後での全光線透過率を上記と同じ方法により測定した。活性エネルギー線の照射条件は、上記の条件Aとした。
【0176】
(ヘイズ値の測定)
製造例1~7で得られた粘着剤層について、粘着剤層側から、JISK7136:2000に準じて、ヘイズメーター(日本電色工業社製,製品名「SH-7000」)を用いてヘイズ値(%)を測定した。得られたヘイズ値(%)を表3に示す。なお、製造例2、3および6については、活性エネルギー線(紫外線;UV)照射前後でのヘイズ値を上記と同じ方法により測定した。活性エネルギー線照射条件は、上記の条件Aとした。
【0177】
(粘着剤層の粘着力の測定)
製造例1~7で得られた粘着剤層から剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層を、易接着層を有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡社製,製品名「コスモシャインA4160」,厚さ:100μm)の易接着層に貼合し、剥離シート/粘着剤層/PETフィルムの積層体を得た。得られた積層体を25mm幅、100mm長に裁断し、これをサンプルとした。
【0178】
23℃、相対湿度50%の環境下にて、上記サンプルから剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層をソーダライムガラス(日本板硝子社製)に貼付したのち、栗原製作所社製オートクレーブにて0.5MPa、50℃で、20分加圧した。その後、23℃、相対湿度50%の条件下で24時間放置してから、引張試験機(オリエンテック社製,製品名「テンシロン」)を用い、剥離速度300mm/min、剥離角度180度の条件で粘着力(N/25mm)を測定した。ここに記載した以外の条件はJISZ0237:2009に準拠して、測定を行った。結果を表3に示す。なお、製造例2、3および6については、活性エネルギー線(紫外線;UV)照射前後での粘着力を上記と同じ方法により測定した。活性エネルギー線照射条件は、上記の条件Aとした。
【0179】
(粘着剤層の貯蔵弾性率)
製造例1~7で得られた粘着剤層を複数層積層し、厚さ3mmの積層体とした。得られた粘着剤層の積層体から、直径8mmの円柱体(高さ3mm)を打ち抜き、貯蔵弾性率測定用試料とした。
【0180】
測定用試料について、JISK7244-6に準拠し、粘弾性測定装置(Anton Paar社製,MCR301)を用いてねじりせん断法により、測定温度25℃、測定周波数1Hzの条件で貯蔵弾性率を測定した。結果を表3に示す。なお、製造例2、3および6については、活性エネルギー線(紫外線;UV)照射前後での貯蔵弾性率を上記と同じ方法により測定した。活性エネルギー線照射条件は、上記の条件Aとした。
【0181】
(粘着剤のゲル分率の評価)
製造例1~7で得られた粘着剤層を80mm×80mmのサイズに裁断して、その着色粘着剤層をポリエステル製メッシュ(品名:テトロンメッシュ#200)に包み、その質量を精密天秤にて秤量した。秤量値から上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM1とした。
【0182】
次に、上記ポリエステル製メッシュに包まれた粘着剤を、室温下(23℃)で酢酸エチルに24時間浸漬させた。その後メッシュを取り出し、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、24時間風乾させ、さらに80℃のオーブン中にて12時間乾燥させた。乾燥後、その質量を精密天秤にて秤量した。秤量値から上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM2とした。得られたM1およびM2を用いて、ゲル分率を以下の式から算出した。結果を表3に示す。
ゲル分率(%)=(M2/M1)×100
なお、製造例2、3および6については、全光線透過率の測定と同様に、活性エネルギー線(紫外線;UV)を照射前後でのゲル分率を上記と同じ方法により測定した。活性エネルギー線照射条件は、上記の条件Aとした。
【0183】
【0184】
(実施例1)
製造例2で得られた粘着剤層を2枚積層して、厚さ50μmの第1粘着剤層とした。続いて、製造例6で得られた粘着剤層を6枚積層して、厚さ150μmの第2粘着剤層とした。得られた第1粘着剤層の主面と第2粘着剤層の主面とを貼り合わせて、表4に示す構成の粘着シートを得た。
【0185】
(実施例2~5および比較例1~3)
第1粘着剤層と第2粘着剤層とが表4に示す組み合わせになるように、製造例1~7の粘着剤層を選択して、表4に示す厚さとなるように積層して、粘着シートを得た。実施例5は、粘着剤層が3層であった。また、比較例3は、染色したPETフィルム(染色PET)の両主面に製造例3の粘着剤層が形成された構成であった。なお、当該染色PETについて、厚みは表1に、貯蔵弾性率、全光線透過率、ヘイズ、ゲル分率は表3に、便宜上それぞれ示した。
【0186】
【0187】
(凹凸追従率)
ガラス板(NSGプレシジョン社製,製品名「コーニングガラスイーグルXG」,縦90mm×横50mm×厚み0.5mm)の表面に、紫外線硬化型インク(帝国インキ社製,製品名「POS-911墨」)を額縁状(外形:縦90mm×横50mm,幅5mm)にスクリーン印刷した。次いで、紫外線を照射(80W/cm2,メタルハライドランプ2灯,ランプ高さ15cm,ベルトスピード10~15m/分)して、印刷した上記紫外線硬化型インクを硬化させ、印刷による段差(段差の高さ:5μm、10μm、15μm、20μm及び25μmのいずれか1つ)を有する段差付ガラス板を作製した。
【0188】
実施例および比較例で作製した粘着シートから、第2粘着剤層の主面が露出するように、剥離シートを剥がした。露出した第2粘着剤層を、易接着層を有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡社製,製品名「コスモシャインA4160」,厚さ:100μm)の易接着層に貼合した。次いで、他方の剥離シートを剥がし、第1粘着剤層の主面(A面)を露出させた。そして、ラミネーター(フジプラ社製,製品名「LPD3214」)を用いて、第1粘着剤層の主面(A面)が額縁状の印刷全面を覆うように粘着剤層を各段差付ガラス板にラミネートし、これを評価用サンプルとした。
【0189】
得られた評価用サンプルを、50℃、0.5MPaの条件下で30分間オートクレーブ処理した後、常圧、23℃、相対湿度50%にて24時間放置した。実施例1、3および比較例1~3で作製した粘着シートについては、PETフィルム越しに、上記の条件Aにて活性エネルギー線を照射し、粘着剤層を硬化させた。
【0190】
次いで、85℃、相対湿度85%の高温高湿条件下にて72時間保管し(耐久試験)、その後、A面の凹凸追従性を評価した。凹凸追従性は、粘着剤層により印刷段差が完全に埋められているか否かで判断し、印刷段差と粘着剤層との界面で気泡、浮き、剥がれなどが観察された場合は、印刷段差の凹凸に追従できなかったと判断される。ここでは、凹凸追従性は、下記の式で示される凹凸追従率(%)として評価した。結果を表5に示す。
凹凸追従率(%)={(耐久試験後、気泡、浮き、剥がれ等が無く埋められた状態が維持された段差の高さ(μm))/(粘着剤層の厚み)}×100
【0191】
また、上記と同様にして、B面の凹凸追従性を評価した。結果を表5に示す。さらに、得られたA面凹凸追従率およびB面凹凸追従率から、凹凸追従率の差(A面凹凸追従率-B面凹凸追従率)を算出した。結果を表5に示す。
【0192】
(全光線透過率)
実施例および比較例で作製した粘着シートの粘着剤層に対して、上記の全光線透過率の測定と同じ方法で、全光線透過率を測定した。結果を表5に示す。なお、実施例1、3および比較例1~3で作製した粘着シートについては、PETフィルム越しに、上記の条件Aにて活性エネルギー線を照射し、粘着剤層を硬化させた。
【0193】
(ヘイズ値)
実施例および比較例で作製した粘着シートの粘着剤層に対して、上記の全光線透過率の測定と同じ方法で、全光線透過率を測定した。結果を表5に示す。なお、実施例1、3および比較例1~3で作製した粘着シートについては、PETフィルム越しに、上記の条件Aにて活性エネルギー線を照射し、粘着剤層を硬化させた。
【0194】
(着色粘着剤層の貯蔵弾性率と透明粘着剤層の貯蔵弾性率との比)
実施例および比較例で作製した粘着シートの粘着剤層において、着色された粘着剤層(カーボンブラックを含む粘着剤層)の貯蔵弾性率(G1b’)と、透明粘着剤層(カーボンブラックを含まない粘着剤層)の貯蔵弾性率(G2b’)と、の比を算出した。結果を表5に示す。なお、実施例1、3および比較例1~3で作製した粘着シートについては、PETフィルム越しに、上記の条件Aにて活性エネルギー線を照射し、粘着剤層を硬化させた後の貯蔵弾性率(G1a’およびG2a’)についても、上記の比を算出した。
【0195】
(凹凸追従性および色ムラの評価1)
被着体として、凹凸追従率の測定において作製した段差付ガラス板と同様にして作製した段差付きガラス(段差の高さ:25μm)と、段差が形成されていないガラス板(NSGプレシジョン社製,製品名「コーニングガラスイーグルXG」,縦90mm×横50mm×厚み0.5mm)を準備した。表5中、段差付きガラスを凹凸板、段差が形成されていないガラス板を平滑板と記載する。
【0196】
実施例および比較例で作製した粘着シートから剥離シートを剥がし、露出した第1粘着剤層を平滑板に貼付した。次に、粘着シートから剥離シートを剥がし、露出した第2粘着剤層を凹凸板に貼合した。
【0197】
このようにして得られた構成体の凹凸板側を下にして、タブレット端末(アップル社製、製品名「iPad(登録商標)」、解像度:264ppi)の上に載置した。このサンプルについて、タブレット端末を全面白表示して、段差近傍を目視により観察し、以下の基準により、凹凸追従性を評価した。結果を表5に示す。
○…浮き・剥がれはなかった
×…浮き・剥がれが発生した
【0198】
さらに、段差近傍を目視により観察し、以下の基準により、色ムラを評価した。結果を表5に示す。
◎:斜め60度からでも、正面からでも観察で色ムラが視認できない
○:斜め60度から見ると色ムラが視認できるが正面からでは視認できない
×:正面から色ムラが視認できる
【0199】
(凹凸追従性および色ムラの評価2)
第2粘着剤層を凹凸板に貼付してから、第1粘着剤層を平滑板に貼付した以外は、上記と同じ方法により、凹凸追従性および色ムラを評価した。結果を表5に示す。
【0200】
(耐ブリスター性の評価)
実施例および比較例で得られた粘着シートから剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層を、ITO蒸着フィルム(尾池工業社製,製品名「テトライトTCFKH150NMH2-125-U6/T2」に貼付した。さらに、粘着シートから剥離シートを剥離して、露出した粘着剤層を、ポリカーボネート樹脂板にポリメタクリル酸メチル樹脂層を積層した樹脂板(三菱ガス化学社製,製品名「ユーピロン・シートMR58U」,紫外線吸収剤含有,厚さ:1mm)のポリカーボネート側の面に貼付することで、評価用サンプルを得た。なお、実施例1、3および比較例1~3で製造した粘着シートについては、粘着剤層に対して、プラスチック板越しに、製造例1と同様の条件で活性エネルギー線を照射し、粘着剤層を硬化させた。
【0201】
その後、評価用サンプルを50℃、0.5MPaの条件下で20分間オートクレーブ処理し、常圧、23℃、相対湿度50%にて12時間放置した後、85℃、相対湿度85%の高温高湿条件下にて72時間保管した。その後、粘着剤層と被着体との界面における状態を目視により確認し、以下の基準により耐ブリスター性を評価した。結果を表5に示す。
◎…気泡や浮き・剥がれがなかった
○…浮き・剥がれはなく、気泡がわずかに発生したが、問題ないレベルだった
×…浮き・剥がれが発生した
【0202】
【0203】
表5より、実施例1から5の粘着シートは、凹凸に起因する色ムラを抑制しつつ、凹凸追従性と耐ブリスター性とを両立できることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0204】
本発明の粘着シートは、たとえば、表示体を構成する部材を貼合するのに好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0205】
1…粘着シート
10…粘着剤層
11…第1粘着剤層
12…第2粘着剤層
10a(11a)…A面
10b(12a)…B面
21、22…剥離シート
3…積層体
31…第1の部材
32…第2の部材