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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134194
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】検査システム及び検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01V 3/12 20060101AFI20240926BHJP
   G01S 13/04 20060101ALI20240926BHJP
   G01S 13/88 20060101ALI20240926BHJP
   G01S 13/34 20060101ALI20240926BHJP
   G01V 11/00 20060101ALI20240926BHJP
   G08B 25/04 20060101ALI20240926BHJP
   G01V 8/10 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
G01V3/12 A
G01S13/04
G01S13/88
G01S13/34
G01V11/00
G08B25/04 E
G01V8/10 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044380
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関谷 亮太
【テーマコード(参考)】
2G105
5C087
5J070
【Fターム(参考)】
2G105AA01
2G105BB11
2G105BB17
2G105CC01
2G105DD02
2G105EE06
2G105HH06
5C087DD05
5C087DD31
5C087EE08
5C087FF04
5C087GG02
5C087GG06
5J070AB17
5J070AB24
5J070AC02
5J070AD02
5J070AD03
5J070AD08
5J070AE09
5J070AF01
5J070AH31
5J070AH35
5J070AH40
5J070AK22
(57)【要約】
【課題】検査対象者の所持品を短時間に正確に検査することができる検査システムを提供すること。
【解決手段】実施形態に係る検査装置は、対象を測定する第1測定部と、前記第1測定部の測定結果を基に第1機械学習モデルを利用して前記対象が所定物を含むか否かに関する第1判定を行う第1判定部と、前記対象を測定する第2測定部と、前記第2測定部の測定結果を基に前記対象が前記所定物を含むか否かに関する第2判定を行う第2判定部と、前記第2判定の結果を基に前記第1機械学習モデルの第1更新データを作成し、前記第1更新データを前記第1判定部へ送信する処理部と、を具備する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象を測定する第1測定部と、
前記第1測定部の測定結果を基に第1機械学習モデルを利用して前記対象が所定物を含むか否かに関する第1判定を行う第1判定部と、
前記対象を測定する第2測定部と、
前記第2測定部の測定結果を基に前記対象が前記所定物を含むか否かに関する第2判定を行う第2判定部と、
前記第2判定の結果を基に前記第1機械学習モデルの第1更新データを作成し、前記第1更新データを前記第1判定部へ送信する処理部と、
を具備する検査システム。
【請求項2】
前記第1判定部は、前記第1更新データを基に前記第1機械学習モデルを更新する、
請求項1記載の検査システム。
【請求項3】
前記第1判定部は、前記第1機械学習モデルの更新後、前記第1判定を再度行う、
請求項2記載の検査システム。
【請求項4】
前記第2判定部は、前記第2測定部の測定結果を基に第2機械学習モデルを利用して前記第2判定を行う、
請求項1記載の検査システム。
【請求項5】
前記第1測定部は、前記対象の第1特徴量を求め、
前記第2測定部は、前記対象の第2特徴量を求め、
前記第2特徴量は前記第1特徴量と異なる、
請求項1乃至請求項4のいずれか一項記載の検査システム。
【請求項6】
前記第1測定部は、前記対象の特徴量を第1詳細度で求め、
前記第2測定部は、前記特徴量を第2詳細度で求め、
前記第2詳細度は前記第1詳細度より高い、
請求項1乃至請求項4のいずれか一項記載の検査システム。
【請求項7】
前記第2判定の信頼度は、前記第1判定の信頼度より高い、
請求項1乃至請求項4のいずれか一項記載の検査システム。
【請求項8】
前記第1測定部が前記対象を測定した後、前記第2測定部が前記対象を測定する、
請求項1乃至請求項4のいずれか一項記載の検査システム。
【請求項9】
前記第1測定部と前記第2測定部の各々は、レーダ、金属探知機、液体探知機、エックス線診断装置、又はカメラを含む、
請求項1乃至請求項4のいずれか一項記載の検査システム。
【請求項10】
前記第2測定部は、金属探知機又はカメラである、
請求項1乃至請求項4のいずれか一項記載の検査システム。
【請求項11】
前記対象を測定する第3測定部と、
前記第3測定部の測定結果を基に前記対象が前記所定物を含むか否かに関する第3判定を行う第3判定部と、をさらに具備し、
前記第1測定部が前記対象を測定した後、前記第3測定部が前記対象を測定し、
前記第3測定部が前記対象を測定した後、前記第2測定部が前記対象を測定する、
請求項1記載の検査システム。
【請求項12】
前記第3判定部は、前記第3測定部の測定結果を基に第3機械学習モデルを利用して前記第3判定を行い、
前記処理部は、前記第2判定の結果を基に前記第3機械学習モデルの第2更新データを作成し、前記第2更新データを前記第3判定部へ送信し、
前記第3判定部は、前記第2更新データを基に前記第3機械学習モデルを更新する、
請求項11記載の検査システム。
【請求項13】
前記第3判定部は、前記第3機械学習モデルの更新後、前記第3判定を再度行う、
請求項12記載の検査システム。
【請求項14】
前記第1測定部は、前記対象の第1特徴量を求め、
前記第2測定部は、前記対象の第2特徴量を求め、
前記第3測定部は、前記対象の第3特徴量を測定し、
前記第2特徴量は前記第1特徴量と異なり、
前記第3特徴量は前記第2特徴量と異なる、
請求項11乃至請求項13のいずれか一項記載の検査システム。
【請求項15】
前記第1測定部は、前記対象の特徴量を第1詳細度で測定し、
前記第3測定部は、前記特徴量を第3詳細度で測定し、
前記第2測定部は、前記特徴量を第2詳細度で測定し、
前記第2詳細度は、前記第1詳細度と前記第3詳細度より高い、
請求項11乃至請求項13のいずれか一項記載の検査システム。
【請求項16】
前記第2判定の信頼度は、前記第1判定の信頼度と前記第3判定の信頼度より高い、
請求項11乃至請求項13のいずれか一項記載の検査システム。
【請求項17】
対象を測定する第1測定部の測定結果を基に機械学習モデルを利用して前記対象が所定物を含むか否かに関する第1判定を行い、
前記対象を測定する第2測定部の測定結果を基に前記対象が前記所定物を含むか否かに関する第2判定を行い、
前記第2判定の結果を基に前記機械学習モデルの更新データを作成し、
前記更新データを前記機械学習モデルへ送信する、検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、検査システム及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
検査対象の所持品を検査する複数の検査装置を備える検査システムが提案されている。複数の検査装置は、段階的に検査を行う。複数の検査装置は、所定物(ここでは、拳銃)に関する異なる項目を判定するために、それぞれが情報を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-204513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、検査対象を短時間に正確に検査することができる検査システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る検査システムは、第1測定部と、第1判定部と、第2測定部と、第2判定部と、処理部と、を具備する。第1測定部は、対象を測定する。第1判定部は、前記第1測定部の測定結果を基に第1機械学習モデルを利用して前記対象が所定物を含むか否かに関する第1判定を行う。第2測定部は、前記対象を測定する。第2判定部は、前記第2測定部の測定結果を基に前記対象が前記所定物を含むか否かに関する第2判定を行う。処理部は、前記第2判定の結果を基に前記第1機械学習モデルの第1更新データを作成し、前記第1更新データを前記第1判定部へ送信する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態に係る検査システムの一例を説明するための図。
図2】実施形態に係る機械学習モデルの一例を説明するための図。
図3】実施形態に係る測定データメモリの一例を説明するための図。
図4】実施形態に係る更新データメモリの一例を説明するための図。
図5】実施形態に係る検査システムの検査装置の処理の一例の前半を説明するためのフローチャート。
図6】実施形態に係る検査システムの検査装置の処理の一例の後半を説明するためのフローチャート。
図7】実施形態に係る検査システムの第1応用例を説明するための図。
図8】実施形態に係る検査システムの第2応用例を説明するための図。
図9】実施形態に係る検査システムの制御装置の処理の一例を説明するためのフローチャート。
図10】実施形態に係る検査システムの変形例を説明するための図である。
図11】実施形態に係る検査装置の配置の一例を説明するための図である。
図12】実施形態に係る検査装置の詳細な構成の一例を説明するための図である。
図13】実施形態に係る測定部の一例を説明するための図である。
図14】実施形態に係る測定部で用いられるチャープ信号の一例を説明するための図である。
図15】実施形態に係る測定部における受信信号の一例を説明するための図である。
図16】実施形態に係る測定部における反射強度分の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して、実施形態を説明する。以下の説明は、実施形態の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、実施形態の技術的思想は、以下に説明する構成要素の構造、形状、配置、材質等に限定されるものではない。当業者が容易に想到し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各要素のサイズ、厚み、平面寸法又は形状等を実際の実施態様に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、互いの寸法の関係や比率が異なる要素が含まれることもある。複数の図面において、対応する要素には同じ参照数字を付して重複する説明を省略する場合もある。いくつかの要素に複数の呼称を付す場合があるが、これら呼称の例はあくまで例示であり、これらの要素に他の呼称を付すことを否定するものではない。また、複数の呼称が付されていない要素についても、他の呼称を付すことを否定するものではない。なお、以下の説明において、「接続」は直接接続のみならず、他の要素を介した接続を含む場合もある。
【0008】
複数の検査装置を含む検査システムにおいて、検査装置は、測定結果を基に機械学習モデルを利用して判定結果を求めることができる。機械学習モデルが検査装置毎に用意されていると、或る検査装置の判定結果が他の検査装置の判定結果と整合しない場合がある。「検査対象が金属物を所持しているか否か」を判定する第1検査装置と、「検査対象が何処に何を所持しているか」を判定する第2検査装置を備えるとする。第1検査装置の判定結果が「検査対象が金属物を所持する」であり、第2検査装置の判定結果が「検査対象が左胸ポケットに手帳を所持する」である場合、「金属物」と「手帳」は整合しない。この場合、検査システムは、最終的に拳銃を所持している検査対象を精度よく特定することが困難である。本実施形態はこのような課題に着目して得られたものである。
【0009】
図1は、実施形態に係る検査システムの一例を説明するための図である。検査システムの実施形態としては、セキュリティに関する検査システムを説明する。検査システムは、駅、商業施設、コンサートホール、遊園地等の不特定多数者が存在するエリアに配置される。所定物、例えば拳銃、ナイフ、爆薬等の危険物のこのエリアへの持ち込みは許可されていない。以下、所定物としては拳銃を説明する。検査システムは、拳銃を含む検査対象を特定する。ここで、「含む」とは、例えば、身に着けていたり、手荷物に含まれたりすることを言う。検査システムが拳銃を所持する検査対象を特定すると、係員が検査対象を入念に調べる。
【0010】
検査システムは、複数の検査装置を備える。図1は、3つの検査装置を含む検査システムの例を示す。検査システムは、第1検査装置10a、第2検査装置10b、第3検査装置10c、及び制御装置12を含む。第1検査装置10a、第2検査装置10b及び第3検査装置10cは、制御装置12に接続される。検査装置の数は、2個でもよいし、3個以上でもよい。
【0011】
検査システムの設置場所に係員が居る場合、係員は、検査対象を第1検査装置10a、第2検査装置10b及び第3検査装置10cの順に誘導する。これにより、検査対象は、第1検査装置10a、第2検査装置10b及び第3検査装置10cにより、この順番に検査される。
【0012】
検査システムが通路等の人流のある場所に設置される場合、第1検査装置10a、第2検査装置10b及び第3検査装置10cは、検査対象の流れに従った順番に設置される。例えば、検査システムが歩行者の通路に設置される場合、第1検査装置10aは通路の入口側に設置され、第3検査装置10cは通路の出口側に設置され、第2検査装置10bは第1検査装置10aと第3検査装置10cの間に設置される。これにより、通路を移動する検査対象は、第1検査装置10a、第2検査装置10b及び第3検査装置10cにより、この順番に検査される。
【0013】
第1検査装置10aは、侵入検知部20a、測定部22a、判定部24a、更新部28a、及び通信部30aを含む。
【0014】
侵入検知部20aは、検査対象が第1検査装置10aの検査範囲に侵入したことを検知する。侵入検知部20aの例は、人感センサ、カメラである。侵入検知部20aが検査対象の侵入を検知すると、測定部22aは、測定を開始するとともに、検査対象の識別情報(検査対象ID)を発行する。
【0015】
通信部30aは、検査対象IDを制御装置12へ送信する。制御装置12は、検査対象IDを第2検査装置10bと第3検査装置10cへ送信する。
【0016】
測定部22aは、検査対象の第1特徴量を求める。測定部22aの例は、レーダ、金属探知機、液体探知機、エックス線診断装置、又はカメラである。測定部22aは、第1特徴量を示す第1測定データを検査対象IDとともに判定部24a及び通信部30aに送信する。測定部22aは、第1測定データを一時的に保存するメモリを備えてもよい。
【0017】
判定部24aは、機械学習モデル26aを含む。機械学習モデル26aは、或る第1測定データが与えられた時、第1判定結果を出力する回路である。判定結果はラベルと称される。機械学習モデルは、人工知能(AI)モデルとも称される。機械学習モデルの例は、畳み込みニューラルネットワークである。機械学習モデル26aは、測定部22aで多数の検査対象を測定し、多数の第1測定データに対して多数の第1ラベルを夫々割り当てることにより生成される。第1ラベルは、オペレータにより入力される。
【0018】
図2は、機械学習モデル26aの一例を説明するための図である。機械学習モデル26aは、複数の第1測定データM1、M2、M3、…と、複数の第1ラベルL1、L2、L3、…を備える。機械学習モデル26aは、第1測定データと第1ラベルとの対応関係を示すデータである。図2は、第1測定データM1、M2、M3、…が第1ラベルL1、L2、L3、…にそれぞれ対応する例を示す。1つの第1測定データに対応する第1ラベルの数は複数でもよい。
【0019】
図1の説明に戻り、第1測定データが判定部24aに入力される。判定部24aは、機械学習モデル26aを利用して第1判定を行う。第1判定は、第1測定データに対応する1つ又は複数の第1ラベルを決定することである。第1判定の例は、「検査対象が金属物を所持しているか否か」である。判定部24aは、1つの第1測定データに対して「金属物所持」又は「金属物非所持」という単数の第1ラベルを出力する。第1ラベルは、検査システムの最終的なラベルの一部である。そのため、検査システムの最終的なラベルの信頼度を1とすると、第1ラベルの信頼度は1以下である。
【0020】
判定部24aは、機械学習モデル26aを利用しないで、第1測定データを演算処理して第1ラベルを決定してもよい。
【0021】
検査システムの設置場所に係員が居る場合、判定部24aは、図示しない表示部やスピーカにより第1ラベルをテキスト表示または音声出力し、係員に知らせてもよい。検査システムの設置場所に係員が居ない場合、判定部24aは、通信部30aを介して、第1ラベルを係員が携帯する電子機器又は係員が待機する管理室の表示装置に送信してもよい。判定部24aは、第1ラベルを一時的に保存するメモリを備えてもよい。
【0022】
通信部30aは、第1測定データを検査対象IDとともに制御装置12へ送信する。通信部30aは、制御装置12から送信される第1更新データを受信する。通信部30aは、第1更新データを更新部28aへ送信する。更新部28aは、第1更新データを基に機械学習モデル26aを更新(再学習とも称される)する。機械学習モデル26aの更新により、第1測定データM1、M2、M3、…と複数の第1ラベルL1、L2、L3、…との対応関係が変更される。機械学習モデル26aの更新後、測定部22aは、検査対象を再度測定し、判定部24aは、再度測定した測定データを基に第1判定を再度実行してもよい。機械学習モデル26aの更新後、測定部22aによる検査対象の再測定をせず、判定部24aは、既に得られている第1測定データを基に第1判定を再度実行してもよい。
【0023】
第2検査装置10bは、侵入検知部20b、測定部22b、判定部24b、更新部28b、及び通信部30bを含む。
【0024】
侵入検知部20b、測定部22b、判定部24b、更新部28b、及び通信部30bは、侵入検知部20a、測定部22a、判定部24a、更新部28a、及び通信部30aとそれぞれ対応する。
【0025】
第1検査装置10aによる検査が終了した検査対象が第2検査装置10bの検査範囲に侵入したことを侵入検知部20bが検知すると、測定部22bは、測定を開始する。
【0026】
測定部22bの例は、レーダ、金属探知機、液体探知機、エックス線診断装置、又はカメラである。
【0027】
測定部22bは、測定部22aと同様に、検査対象の第1特徴量を求めてもよい。測定部22aは、第1特徴量を第1詳細度で求め、測定部22bは、第1特徴量を第2詳細度で求めてもよい。第2詳細度は、第1詳細度より高くてもよい。詳細度は分解能とも称される。通信部30bは、制御装置12から検査対象IDを受信する。測定部22bは、第1特徴量を示す第2測定データを判定部24b及び通信部30bに送信する。測定部22bは、第2測定データを一時的に保存するメモリを備えてもよい。
【0028】
測定部22a、測定部22bがレーダである場合、測定部22a、測定部22bそれぞれは、検査対象に電磁波を送信し、検査対象からの反射波を受信する。金属物の電磁波の反射率は、皮膚の電磁波の反射率より高い。測定部22a、測定部22bそれぞれは、検査対象の各点の電磁波の反射率の分布を示す画像を求める。詳細度は、画像の分解能に関連する。測定部22bが求める画像は、測定部22aが求める画像より解像度が高くてもよい。画像の解像度は、検査対象に送信する電磁波の数、すなわち検査対象の反射点の数に比例する。
【0029】
あるいは、測定部22bは、測定部22aとは異なり、検査対象の第2特徴量を求めてもよい。第2特徴量は、第1特徴量と異なる。測定部22aは、第1特徴量を第1詳細度で求め、測定部22bは、第2特徴量を第2詳細度で求めてもよい。第2詳細度は、第1詳細度より高くてもよい。測定部22bは、第2特徴量を第2測定データとして判定部24bに送信してもよい。測定部22aがレーダであり、測定部22bが金属探知機であるとすると、金属物を特定する場合、金属探知機が求める情報(第2特徴量)は、レーダが求める画像(第1特徴量)よりも詳細度が高い。
【0030】
判定部24bは、機械学習モデル26bを含む。機械学習モデル26bは、図2に示した機械学習モデル26aと同様に、或る第2測定データが与えられた時、第2ラベルを出力する回路である。機械学習モデル26bは、測定部22bで多数の検査対象を測定し、多数の第2測定データに対して多数の第2ラベルを割り当てることにより生成される。第2ラベルは、オペレータにより入力される。
【0031】
第1機械学習モデル22aと同様に、第2機械学習モデル22bでも、1つの第2ラベルが1つの第2測定データに対応してもよいし、複数の第2ラベルが1つの第2測定データに対応してもよい。
【0032】
判定部24bは、機械学習モデル26bを利用し第2判定を行う。第2判定は、第2測定データに対応する1つ又は複数の第2ラベルを決定することである。第2判定の例は、「検査対象が何を何処に所持している」である。判定部24bは、1つの第2測定データに対して「スマートフォンのようなもの」(何)と「左胸ポケット」(何処)の2つの第2ラベルを出力する。第2ラベルは、検査システムの最終的なラベルの一部である。第1、第2、第3ラベルの信頼度とは別に、装置の信頼度が定義されている。ラベルの信頼度と装置の信頼度の積により、「目標が何であるか」の判定の信頼度f(x)が定義される。そのため、第3ラベルの信頼度x3が第2ラベルの信頼度x2より低くても(x2>x3)、判定の信頼度f(x3)が判定の信頼度f(x2)より高くなる(f(x2)≦f(x3)≦1.0)ことがある。第2センサデータの詳細度は第1センサデータの詳細度より高いので、第2ラベルの信頼度は第1ラベルの信頼度より高い。
【0033】
判定部24bは、機械学習モデル26bを利用しないで、第2測定データを演算処理して第2ラベルを決定してもよい。
【0034】
検査システムの設置場所に係員が居る場合、判定部24bは、図示しない表示部やスピーカにより第2ラベルの情報をテキスト表示または音声出力し、係員に知らせてもよい。検査システムの設置場所に係員が居ない場合、判定部24bは、通信部30bを介して、第2ラベルを係員が携帯する電子機器又は係員が待機する管理室の表示装置に送信してもよい。判定部24bは、第2ラベルを一時的に保存するメモリを備えてもよい。
【0035】
通信部30bは、第2測定データを検査対象IDとともに制御装置12へ送信する。通信部30bは、制御装置12から送信される第2更新データを受信する。通信部30bは、第2更新データを更新部28bへ送信する。更新部28bは、第2更新データを基に機械学習モデル26bを更新する。機械学習モデル26bの更新により、第2測定データと第2ラベルとの対応関係が変更される。機械学習モデル26bの更新後、測定部22bは、検査対象を再度測定し、判定部24bは、再度測定した測定データを基に第2判定を再度実行してもよい。機械学習モデル26bの更新後、測定部22bによる検査対象の再測定をせず、判定部24bは、既に得られている第2測定データを基に第2判定を再度実行してもよい。
【0036】
第3検査装置10cは、侵入検知部20c、測定部22c、判定部24c、及び通信部30cを含む。侵入検知部20c、測定部22c、判定部24c、及び通信部30cは、侵入検知部20a(又は侵入検知部20b)、測定部22a(又は測定部22b)、判定部24a(又は判定部24b)、更新部28a(又は更新部28b)、及び通信部30a(又は通信部30b)とそれぞれ対応する。
【0037】
第2検査装置10bによる検査が終了した検査対象が第3検査装置10cの検査範囲に侵入したことを侵入検知部20cが検知すると、測定部22cは測定を開始する。
【0038】
測定部22cの例は、レーダ、金属探知機、液体探知機、エックス線診断装置、又はカメラである。測定部22cがカメラである場合、侵入検知部20cは、検査対象が第3検査装置10cの検査エリアに到達したことを検知すると、表示部やスピーカにより、検査対象に対して所持品をポケットから取り出し測定部22cの前方の撮影台に載置するよう促す。
【0039】
測定部22cは、測定部22a、測定部22bと同様に、検査対象の第1特徴量を求めてもよい。測定部22aは、第1特徴量を第1詳細度で求め、測定部22bは、第1特徴量を第2詳細度で求め、測定部22cは、第1特徴量を第3詳細度で求めてもよい。第3詳細度は、第1詳細度、第2詳細度より高くてもよい。通信部30cは、制御装置12から検査対象IDを受信する。測定部22cは、第1特徴量を第3測定データとして判定部24c及び通信部30cに送信する。測定部22cは、第3測定データを一時的に保存するメモリを備えてもよい。
【0040】
測定部22a、測定部22b、測定部22cがレーダであるとすると、測定部22a、測定部22b、測定部22cそれぞれは、検査対象に電磁波を送信し、検査対象からの反射波を受信する。金属物の電磁波の反射率は、皮膚の電磁波の反射率より高い。測定部22a、測定部22b、測定部22cそれぞれは、検査対象の各点の電磁波の反射率の分布を示す画像を求める。詳細度は、画像の分解能に関連する。測定部22bが求める画像は、測定部22aが求める画像より解像度が高くてもよい。測定部22cが求める画像は、測定部22bが求める画像より解像度が高くてもよい。
【0041】
あるいは、測定部22cは、測定部22a、測定部22bとは異なり、検査対象の第3特徴量を求めてもよい。第3特徴量は、第1特徴量、第2特徴量と異なる。測定部22aは、第1特徴量を第1詳細度で求め、測定部22bは、第2特徴量を第2詳細度で求め、測定部22cは、第3特徴量を第3詳細度で求めてもよい。第3詳細度は、第1詳細度、第2詳細度より高くてもよい。測定部22aがレーダであり、測定部22bが金属探知機であり、測定部22cがカメラであるとすると、金属物を特定する際、所持品を撮影するカメラの画像(第3特徴量)は、レーダが求める画像(第1特徴量)や金属探知機が求める情報(第2特徴量)よりも詳細度が高い。測定部22cは、第3特徴量を第3測定データとして判定部24cに送信してもよい。
【0042】
判定部24cは、機械学習モデル26cを含む。機械学習モデル26cは、機械学習モデル26b及び図2に示した機械学習モデル26aと同様に、或る第3測定データが与えられた時、第3ラベルを出力する回路である。機械学習モデル26cは、測定部22cで多数の検査対象を測定し、多数の第3測定データに対して多数の第3ラベルを割り当てることにより生成される。第3ラベルは、オペレータにより入力される。第1機械学習モデル22a、第2機械学習モデル22bと同様に、第3機械学習モデル22cでも、1つの第3ラベルが1つの第3測定データに対応してもよいし、複数の第3ラベルが1つの第3測定データに対応してもよい。第3検査装置10cが最後の検査装置であるので、第3ラベルが検査システムの最終的なラベルとなる。第3ラベルは、第1ラベルと第2ラベルを含む。
【0043】
判定部24cは、機械学習モデル26cを利用し、第3測定データを基に第3判定を行う。第3判定は、第3測定データに対応する1つ又は複数の第3ラベルを決定することである。第3判定の例は、「検査対象は金属物を所持しているか否か」と「検査対象が何を何処に所持している」である。判定部24cは、「金属物所持」又は「金属物非所持」、「スマートフォン」(何)、「左胸ポケット」(何処)の3つの第3ラベルを出力する。測定部22cがカメラの場合、所持品を撮影した画像を画像解析することにより、所持品が何(スマートフォン)であるかを確定することができる。第3判定の信頼度f(x3)はは1であり、第1、第2判定の信頼度f(x1)、f(x2)より高い。
【0044】
判定部24cは、機械学習モデル26cを利用しないで、第3測定データを演算処理して第3ラベルを決定してもよい。
【0045】
検査システムの設置場所に係員が居る場合、第3判定部24bは、図示しない表示部やスピーカにより第3ラベルの情報をテキスト表示または音声出力し、係員に知らせてもよい。検査システムの設置場所に係員が居ない場合、判定部24cは、通信部30cを介して、第3ラベルを係員が携帯する電子機器又は係員が待機する管理室の表示装置に送信してもよい。第3ラベルが「検査対象は拳銃を左胸ポケットに所持している」を表す場合、係員が検査対象を入念に調べてもよい。第3判定部22cは、第3ラベルを一時的に保存するメモリを備えてもよい。
【0046】
判定部24cは、第3ラベルを通信部30cへ送信する。通信部30cは、第3測定データとそれに対応する第3ラベルを検査対象IDとともに制御装置12へ送信する。
【0047】
制御装置12は、通信部42、コントローラ44、測定データメモリ46、及び更新データメモリ48を含む。
【0048】
図3は測定データメモリ46が記憶するデータの一例を説明するための図である。コントローラ44は、第1検査装置10aから送信された第1測定データM10、M11、M12、…、第2検査装置10bから送信された第2測定データM20、M21、M22、…、及び第3検査装置10cから送信された第3測定データM30、M31、M32と第3ラベルを検査対象ID毎に測定データメモリ46に書き込む。第3ラベルは、第1ラベルと第2ラベルを含むので、第3ラベルの数は複数である。
【0049】
検査対象ID=00000000の第3ラベルは、第1ラベルL30aと、第2ラベルL30b、L30cを含む。検査対象ID=00000001の第3ラベルは、第1ラベルL31aと、第2ラベルL31b、L31cを含む。検査対象ID=00000002の第3ラベルは、第1ラベルL32aと、第2ラベルL32b、L32cを含む。
【0050】
図4は、更新データメモリ48が記憶する更新データの一例を説明するための図である。更新データは、多数の測定データと教師ラベルの対からなる。
【0051】
判定部24a、24bのラベルの信頼度は、低下することがある。低下する場合の例は、機械学習モデル26a、26bが生成された時の検査装置10a、10bの設置環境が変化することである。第1、第2測定データ自体が変化するので、機械学習モデル26a、26bは測定データに対して正しいラベルを出力できない。判定部24a、24bのラベルの信頼度を維持するためには、実測定データに基づいて機械学習モデル26a、26bを更新することが好ましい。
【0052】
実測定データは測定データメモリ46に格納されている。第3ラベルは信頼度が1であるので、第3ラベルは、正確な第1ラベルと第2ラベルを含む。第3ラベルを用いて機械学習モデル26a、26bを更新すると、判定部24a、24bの判定の信頼度を維持することができる。コントローラ44は、測定データメモリ46内の第3ラベルの中の第1ラベルL30a、L31a、L32a、…を第1教師ラベルとして第1測定データM10、M11、M12、…と対応付けて第1更新データを作成する。コントローラ44は、測定データメモリ46内の第3ラベルの中の第2ラベルL30b、L30c;L31b、L31c;L32b、L32c;…を第2教師ラベルとして第2測定データM20、M21、M22、…と対応付けて第2更新データを作成する。
【0053】
更新タイミングになると、コントローラ44は、更新部28a、28bに第1、第2更新データをそれぞれ送信する。更新部28a、28bは、更新データを基に機械学習モデル26a、26bを更新する。更新部28aは、図2に示すような機械学習モデル26aの第1ラベルL1、L2、L3、…を第1更新データに含まれる第1教師ラベルL30a、L31a、L32a、…に変更する。これにより、測定データとラベルの対応関係が更新され、判定部24a、24bが正しく判定する可能性が高くなる。
【0054】
図5図6は、実施形態に係る検査システムの検査装置10a、10b、10cの処理の一例を説明するためのフローチャートである。図7は、検査システムの第1応用例を説明するための図である。図8は、検査システムの第2応用例を説明するための図である。第1、第2応用例では、測定部22a、22bは、第1、第2レーダであり、第2レーダの解像度は、第1レータの解像度より高く、測定部22cはカメラであるとする。第1応用例(図7)では、第1ラベルは「金属物所持」であり、第2ラベルは「スマートフォン」、「左胸ポケット」であり、第3ラベルは「金属物所持」、「スマートフォン」、「左胸ポケット」である。第2応用例(図8)では、第1ラベルは「金属物所持」であり、第2ラベルは「スマートフォン」、「左胸ポケット」であり、第3ラベルは「金属物非所持」、「手帳」、「左胸ポケット」である。
【0055】
侵入検知部20aは、第1検査装置10aの検査範囲に検査対象が入ったか否か判定する(S10)。侵入検知部20aが検査対象の侵入を検知すると(S10:YES)、第1測定部(レーダ)22aは、検査対象に電波を照射する(S12)。測定部22aは、検査対象からの電波の反射波を受信する(S14)。測定部22aは、受信信号に基づいて、検査対象の各点の反射強度を示す画像信号を生成し、画像信号を第1測定データとして判定部24a及び通信部30aに検査対象IDとともに送信する(S16)。
【0056】
判定部24aは、画像信号を基に機械学習モデル26aを利用して検査対象が金属物を所持するか否かを判定する(第1判定)(S18)。第1応用例でも第2応用例でも、第1ラベルは、「金属物所持」である。
【0057】
通信部30aは、第1測定データを制御装置12に送信する(S20)。
【0058】
本検査システムは、3つの検査装置を含むが、3つの検査装置が必ず検査するとは限らない。検査システムの設置場所によっては、人流を妨げないことが最優先の日時、時間帯があることがある。検査の目的によっては、第1検査装置10a又は第2検査装置10bまでの検査で十分な場合がある。このため、第1検査装置10aしか検査しない場合、または第3検査装置が検査しない場合がある。制御装置12は、設置状況に応じて、第2検査装置10b及び第3検査装置10cを稼働させるか、させないかを選ぶことができる。制御装置12は、第2検査装置10b、第3検査装置10cにオン信号またはオフ信号を送信する。
【0059】
第2検査装置10bは、制御装置12からのオン信号またはオフ信号を受信したかを判定する(S22)。オフ信号を受信した場合、第2検査装置10bは検査を実行せず、検査システムの処理は終了する。
【0060】
オン信号を受信した場合、侵入検知部20bは、第2検査装置10bの検査範囲に検査対象が入ったか否か判定する(S24)。侵入検知部20bが検査対象の侵入を検知すると(S24:YES)、第2測定部(レーダ)22bは、検査対象に電波を照射する(S26)。測定部22bは、検査対象からの電波の反射波を受信する(S28)。測定部22bは、検査対象の各点の反射強度を示す画像信号を生成し、画像信号を第2測定データとして判定部24bに送信する(S30)。
【0061】
判定部24bは、画像信号を基に機械学習モデル26bを利用して検査対象が何を何処に所持しているかを決定する(第2判定)(S32)。第1応用例(図7)でも第2応用例(図8)でも、第2ラベルは、「スマートフォンを左胸ポケットに所持する」である。
【0062】
通信部30bは、第2測定データを検査対象IDとともに制御装置12に送信する(S34)。
【0063】
第3検査装置10cは、制御装置12からのオン信号またはオフ信号を受信したかを判定する(S36)。オフ信号を受信した場合、第3検査装置10cは検査を実行せず、検査システムの処理は終了する。
【0064】
オン信号を受信した場合、侵入検知部20cは、第3検査装置10cの検査範囲に検査対象が入ったか否か判定する(S38)。侵入検知部20cが検査対象の侵入を検知すると(S38:YES)、第3測定部(カメラ)22cは、撮影台の上の所持品を撮影する(S40)。検査対象は、第3検査装置10cの検査範囲に入ると、所持品を測定部22cの撮影範囲内の撮影台上に載置する。測定部22cは、所持品の画像信号を生成し、画像信号を第3測定データとして判定部24c及び通信部30cに送信する(S42)。
【0065】
判定部24cは、画像信号を基に機械学習モデル26cを利用して検査対象の所持品を特定する(第3判定)(S44)。第1応用例(図7)では、第3ラベル(第3判定結果)は、「金属物所持」と「スマートフォンを左胸ポケットに所持する」であるとする。第2応用例(図8)では、第3ラベルは、「金属物非所持」と「手帳を左胸ポケットに所持する」であるとする。
【0066】
判定部24cは、第3ラベルを通信部30cに送信する(S46)。
【0067】
通信部30cは、第3測定データと第3ラベルを検査対象IDとともに制御装置12に送信する(S48)。
【0068】
この後、システムの処理は終了する。なお、測定データを3つのステップS16、S34、S48に分けて制御装置12に送信したが、第3検査装置10cの測定データの送信時に纏めて送信してもよい。
【0069】
図9は、実施形態に係る検査システムの制御装置12の処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【0070】
コントローラ44は、通信部42が第1測定データと検査対象IDを受信すると、第1測定データと検査対象IDを測定データメモリ46に書き込む(S60)。
【0071】
コントローラ44は、通信部42が第2測定データと検査対象IDを受信すると、第2測定データを測定データメモリ46に書き込む(S62)。コントローラ44は、検査対象IDに基づいて、第1測定データと第2測定データを対応付けて測定データメモリ46に書き込む。
【0072】
コントローラ44は、通信部42が第3測定データと第3ラベルを受信すると、第3測定データと第3ラベルを測定データメモリ46に書き込む(S64)。コントローラ44は、検査対象IDに基づいて、第1測定データ、第2測定データ、第3測定データ、及び第3ラベル(金属物所持、スマートフォン、左胸ポケット)を対応付けて測定データメモリ46に書き込む。
【0073】
コントローラ44は、第3ラベルの中の第1ラベル(金属物所持)と第1測定データとを対応付けて第1更新データを作成し、第1更新データを更新データメモリ48に書き込む(S66)。コントローラ44は、第3ラベルの中の第2ラベル(スマートフォン、左胸ポケット)と第2測定データとを対応付けて第2更新データを作成し、第2更新データを更新データメモリ48に書き込む(S68)。
【0074】
コントローラ44は、図3図4に示すように、多数の検査対象についての第1、第2、第3測定データを受信し、多数の第1、第2更新データを生成する。
【0075】
コントローラ44は、検査装置10a、10bの機械学習モデル26a、26bの更新時であるか否かを判定する(S70)。コントローラ44は、一定期間の経過で周期的に更新を実施するように設定されもよいし、図示しない環境センサがシステムの設置環境(気温、湿度等)の変化を検知した時に更新を実施するように設定されてもよい。
【0076】
更新時であると判定した場合(S70:YES)、コントローラ44は、第1更新データを第1検査装置10aに送信し(S72)、第2更新データを第2検査装置10bに送信する(S74)。
【0077】
更新時ではないと判定した場合(S70:NO)、又は第2更新データの送信後、コントローラ44は、処理を終了する。
【0078】
検査装置10a、10bの各々は、第1、第2更新データを受信すると、更新部28a、28bを用いて機械学習モデル26a、26bを更新する。第1応用例(図7)では、判定部24a、24bが出力する第1、第2ラベルは第3ラベルと整合している。そのため、機械学習モデル26a、26bが更新されても、第1、第2ラベルは変化しない。第2応用例(図8)では、第1ラベルは金属物所持であり、第3ラベルは金属物非所持であり、第1ラベルは第3ラベルと整合していない。第2ラベルの中の物に関する一部はスマートフォンであり、第3ラベルの中の物に関する一部は手帳であり、第2ラベルの一部も第3ラベルの一部と整合していない。機械学習モデル26a、26bが更新されると、第1ラベルは金属物非所持に変化し、第2ラベルの物に関する一部は手帳に変化する。
【0079】
このように第3ラベルに基づいて作成した更新データに基づいて第1、第2ラベルを求める機械学習モデルを更新することにより、第1、第2ラベルの信頼度が向上する。
【0080】
図10は、実施形態に係る検査システムの変形例を説明するための図である。変形例に係る検査システムは、制御装置12を備えない。第3検査装置10dは、制御装置12の機能を備える。第3検査装置10dは、第3検査装置10cと同様に、侵入検知部20c、測定部22c、判定部24c、機械学習モデル26c、通信部30cを備える。第3検査装置10dは、さらに、コントローラ44、測定データメモリ46、及び更新データメモリ48を備える。第1、第2、第3検査装置10a、10b、10dはネットワーク14に接続される。
【0081】
第1、第2検査装置10a、10bの各々は、第1、第2測定データを、ネットワーク14を介して、第3検査装置10dへ送信する。制御装置12と同様に、第3検査装置10dは、第1、第2測定データを測定データメモリ46に書き込むとともに、更新データを作成し、更新データを更新データメモリ48に書き込む。機械学習モデル26a、26bの更新時になると、第3検査装置10dは、第1、第2更新データを、ネットワーク14を介して、第1、第2検査装置10a、10bへ送信する。このため、変形例に係る検査システムは、実施形態に係る検査システムと同じ効果を奏する。
【0082】
図11は、実施形態に係る検査装置10a、10b、10c(又は10d)の配置の一例を説明するための図である。検査対象18は通路に沿って歩行する。検査装置10a、10b、10c(又は10d)は、通路に沿って、進行方向の順番に配置される。検査対象18は歩行中に第1、第2、第3検査装置10a、10b、10c(又は10d)により順次検査される。ここでは、検査装置10a、10b、10c(又は10d)は、全てレーダを含むとする。検査対象18が一番最初に通過する検査装置10aのレーダが含むアンテナ数は一番少ない。検査装置10aの検査時間は一番短いが、判定結果の信頼度は一番悪い。検査対象18が一番最後に通過する検査装置10c(又は10d)のレーダが含むアンテナ数は一番多い。検査装置10c(又は10d)の検査時間は一番長いが、判定結果の信頼度は一番良い。
【0083】
検査装置10a、10b、10c(又は10d)と制御装置12は、無線LAN又は有線LANにより接続される。無線LANの例は、WiFi(登録商標)、ブルートゥース(登録商標)である。有線LANは、メタルケーブルを用いてもよいし、光ファイバを用いてもよい。
【0084】
図12は、実施形態に係る第1、第2、第3検査装置10a、10b、10c(又は10d)の詳細な構成の一例を説明するための図である。第1、第2、第3検査装置10a、10b、10c(又は10d)は、格別に区別する必要が無い場合、検査装置10と称される。第1、第2、第3侵入検知部20a、20b、20cは、格別に区別する必要が無い場合、侵入検知部20と称される。第1、第2、第3測定部22a、22b、22cは、格別に区別する必要が無い場合、測定部22と称される。第1、第2、第3判定部24a、24b、24cは、格別に区別する必要が無い場合、判定部24と称される。第1、第2、第3機械学習モデル26a、26b、26cは、格別に区別する必要が無い場合、機械学習モデル26と称される。第1、第2、第3更新部28a、28b、28cは、格別に区別する必要が無い場合、更新部28と称される。第1、第2、第3通信部30a、30b、30cは、格別に区別する必要が無い場合、通信部30と称される。検査装置10は、侵入検知部20、測定部22、通信部30、CPU62、ストレージ64、及びメモリ66を含む。侵入検知部20、測定部22、通信部30、ストレージ64、及びメモリ66は、CPU62のバスラインに接続される。測定部22は、アンテナ72と信号処理部74を有する。
【0085】
アンテナ72は、少なくとも1つの送受信アンテナを含んでもよいし、少なくとも1つの送信アンテナと少なくとも1つの受信アンテナを含んでもよい。アンテナ72の電波の放出方向又は放出点の位置は、機械的なスキャン機構により機械的に変更することもできるし、信号処理部74に設けられた電子的なスキャン回路により電子的に変更することもできる。測定部22は、スキャン機構とスキャン回路の両方を備えてもよい。
【0086】
レーダで使用される電波は、波長が1ミリメートルから30ミリメートルの電波を含む。波長が1ミリメートルから10ミリメートルの電波はミリ波とも称される。波長が10ミリメートルから100ミリメートルの電波はマイクロ波とも称される。人物に電波を放出すると、電波の伝搬路上に存在する物体で電波は反射される。ある距離で反射された電波の反射強度を測定することにより、その距離に存在する物体が人体であるか、又は拳銃、爆薬等の危険物であるかを判定できる。検査の精度は人物一人当たりの電波の放出点数(アンテナの個数)に比例する。
【0087】
アンテナ72の例は、マイクロストリップアンテナ(パッチアンテナとも称される)である。
【0088】
信号処理部74は、アンテナ72に電波を放出させ、アンテナ72で反射波を受信させ、アンテナ72からの受信信号を処理して、検査対象の所持品を表す信号を生成する。信号処理部74は、アンテナ72と一体として構成してもよいし、アンテナ72とは別体として構成し、アンテナ72と別の位置に配置してもよい。
【0089】
ストレージ64は、CPU62が実行するプログラムや種々のデータを記憶する不揮発性の記憶装置であり、HDDやSSD等からなる。メモリ66は、ストレージ64から読み出したプログラムやデータ又は検査途中で生成された種々のデータを記憶する不揮発性のメモリである。プログラムの例は、CPU62に判定部24と更新部28の機能を実行させるプログラムである。CPU62は、ストレージ64から読み出され、メモリ66に記憶されているプログラムを実行することにより、判定部24と更新部28として機能する。なお、判定部24と更新部28は、ハードウェアにより構成されてもよい。
【0090】
検査装置10は、キーボードや表示部を備えてもよい。キーボードは、ユーザがラベルを設定する場合等に使われる。表示部は検査対象の画像を表示して、係員に検査結果を知らせてもよい。
【0091】
図13は、実施形態に係る測定部22の一例を説明するためのブロック図である。アンテナ72は、1つ以上の送信アンテナ72aと1つ以上の受信アンテナ72bを含む。送信アンテナ72aと受信アンテナ72bを別々に設けずに、1つのアンテナで送受信するようにしてもよい。
【0092】
信号処理部74は、シンセサイザ82、パワーアンプ84、低雑音増幅器86、ミキサ88、ローパスフィルタ(LPF)90、A/D変換器(ADC)92、及び高速フーリエ変換(Fast Fourier Transformation:FFT)回路94を含む。シンセサイザ82で生成された信号がパワーアンプ84で増幅された後、送信アンテナ72aに供給され、送信アンテナ72aから電波が検査範囲に放出される。放出された電波は検査範囲に存在する全ての物体で反射され、反射波が受信アンテナ72bで受信される。受信アンテナ72bから出力される受信信号が低雑音増幅器86を介してミキサ88の第1入力端子に入力される。ミキサ88の第2入力端子にはシンセサイザ82の出力信号が入力される。
【0093】
ミキサ88は送信信号と受信信号を組み合わせ、中間周波数(IF)信号を生成する。中間周波数信号はローパスフィルタ90を介してA/D変換器92に入力される。A/D変換器92から出力されたディジタル信号は高速フーリエ変換(FFT)回路94で解析され、物体の電波の反射強度が求められる。
【0094】
レーダの動作原理を説明する。送受信アンテナの組み合わせは種々ある。例えば、1つの送信アンテナから放出された電波の反射波を複数の受信アンテナで受信するものや、複数の送信アンテナから放出された電波の反射波を1つの受信アンテナで受信するものや、複数の送信アンテナから放出された電波の反射波を複数の受信アンテナで受信するものがある。ここでは、1つの送信アンテナから放出された電波の反射波を1つの受信アンテナで受信するものについての反射強度の求め方を説明する。
【0095】
シンセサイザ82は時間の経過に応じて周波数が直線的に増加するFMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)信号を生成する。FMCW信号はチャープ信号とも称される。図14は、チャープ信号の波形の一例を説明するための図である。チャープ信号は、振幅Aを時間tの関数として表すと、図14(a)に示すようになる。チャープ信号は、周波数fを時間tの関数として表すと、図14(b)に示すようになる。チャープ信号は、図14(b)に示すように、中心周波数fc、変調帯域幅fb、信号時間幅Tbにより表される。チャープ信号の傾きは周波数の変化レート(チャープレート)γと称される。
【0096】
送信アンテナ72aから放射されるFMCW信号の送信波St(t)は、式1で表される。
【0097】
St(t)=cos[2π(fct+γt/2)] 式1
チャープレートγは式2で表される。
【0098】
γ=fb/Tb 式2
送信アンテナ72aから距離Rだけ離れた物体からの反射波は、送信タイミングからΔt=2R/cだけ遅れて受信アンテナ72bで観測される。cは光速である。受信信号Sr(t)は物体の反射強度をaとすると式3で表される。
【0099】
Sr(t)=a・cos[2πfc(t-Δt)+πγ(t-Δt)] 式3
図15は複数、例えば3つの物体が存在する場合の信号処理部74における受信信号の一例を説明するための図である。図15(a)は送信信号/受信信号と時間との関係を示す。図15(a)に示すように、送信信号は時間とともに周波数が線形的に変化する。受信信号は、送信信号に対してΔtだけ遅延している。物体が複数ある場合、破線で示すように、最も近い物体からの反射波が最も早く受信され、一点鎖線で示すように、最も遠い物体からの反射波が最も遅く受信される。
【0100】
図13に示すように、ミキサ88で受信信号は送信信号と乗算され、ローパスフィルタ90に入力される。ローパスフィルタ90の出力信号はIF信号z(t)と称され、式4で表される。
【0101】
z(t)=a・cos(2πΔtγt) 式4
図15(b)はIF信号の周波数と時間との関係を示す。ノイズ等がない理想的な環境下では、反射波毎に周波数が一定となる。ここでは、破線で示すように、最も近い物体からの反射波の周波数が最も低く、一点鎖線で示すように、最も遠い物体からの反射波の周波数が最も高い。
【0102】
式4に示す時間領域のIF信号z(t)をFFT回路94においてFFTすることにより周波数領域の反射強度が計算できる。したがって、IF信号のFFTの結果である周波数領域の各点での振幅がレーダからの距離毎の反射強度に対応する。周波数とレーダからの距離は式5の関係がある。
【0103】
if=Δtγ=2Rγ/c 式5
時間領域のIF信号をFFTすることで得られる反射強度と周波数の関係を図15(c)に示す。このように、IF信号の周波数領域信号の振幅を求めることにより、レーダからの距離毎の反射強度を求めることができる。
【0104】
検査装置10を設置した時、検査装置10と検査対象18との距離は決まってしまう。例えば、検査装置10と検査対象18との距離を2メートルであると仮定した場合、測定部22は、式5から距離R=2メートルの地点に対応するIF信号の周波数fifを求める。測定部22は、図15(c)に示すような多数の受信信号の反射強度の中から周波数fifの反射強度を物体の反射強度として抽出できる。
【0105】
上述の処理は、電波の放出点を走査方向に沿って変化(走査)させながら、放出点毎に行われる。
【0106】
図16は、反射強度分布の一例説明するための図である。走査線上の電波の反射強度の分布は、図16に示すように、電波を反射した物質によって異なる。
【0107】
図16(a)は、検査対象が何も所持していない場合の電波の反射強度分布を示す。電波は検査対象の皮膚で反射されるので、放出点の位置に関わらず、電波の反射強度は変わらず、反射強度の分布はフラットな分布である。図16(a)の反射強度分布は、標準検査結果に対応する標準反射強度分布である。
【0108】
図16(b)は、検査対象が、走査方向の中央部に拳銃(金属)を所持している場合の電波の反射強度分布を示す。金属は皮膚に比べて反射強度が高いので、拳銃の位置に対応する放出点の電波の反射強度は他の点の電波の反射強度に比べて高くなる。横軸は反射強度(右が反射強度が高い)であるので、電波の反射強度は右に凸な分布になる。
【0109】
図16(c)は、検査対象が、走査方向の中央部に爆薬を所持している場合の電波の反射強度分布を示す。爆薬は皮膚に比べて電波を良く吸収するので、爆薬の位置に対応する放出点の反射強度は他の点の反射強度に比べて低くなり、電波の反射強度は左に凸な分布になる。分布は少なくとも2点の反射強度の値の相違により特定できる。
【0110】
測定部22は、所定物が存在する可能性のある領域を推定できればよいので、距離方向の分解能としては衣服と人体との差(例えば1cm)の高い分解能は要求されず、数cm程度の分解能で十分である。測定部22は、現在流通している車載用の安価なミリ波レーダを使用できる。
【0111】
このように走査線上の数点(少なくとも2点)で検査対象の反射強度が取得されると、判定部24は、反射強度に基づいて機械学習モデル26を用いて所持品を判定する。
【0112】
判定部24は、機械学習モデル26を用いずに所持品を判定してもよい。判定部24は、測定部22から出力された反射強度分布の形状を標準反射強度の分布形状と比較してもよい。標準反射強度は、所持品を持っていない検査対象の反射強度分布、拳銃等の金属物を持っている検査対象の反射強度分布、爆薬等の粉体物を持っている検査対象の反射強度分布を含む。
【0113】
実施形態に係る検査システムによれば、複数の検査装置が段階的に検知目標の信頼度を上げながら、順番に検査を行う。或る検査装置が検知目標を達成した時、検知結果を他の検査装置にフィードバックする。他の検査装置は、検査のために機械学習モデルを利用している場合、この検知結果に基づき、機械学習モデルを更新する。これにより、他の検査装置の検査結果の信頼度が向上する。
【0114】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0115】
10a,10b,10c、10d…検査装置、12…制御装置、20a,20b,20c…侵入検知部、22a,22b,22c…測定部、24a,24b,24c…判定部、26a,26b,26c…機械学習モデル、28a,28b,28c…更新部、30a,30b,30c…通信部、42…通信部、44…コントローラ、46…測定データメモリ、48…更新データメモリ
図1
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