(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134196
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】走行音生成装置及び走行音生成方法
(51)【国際特許分類】
B60W 50/14 20200101AFI20240926BHJP
B60W 40/064 20120101ALI20240926BHJP
【FI】
B60W50/14
B60W40/064
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044383
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】中路 義晴
(72)【発明者】
【氏名】越智 大輔
(72)【発明者】
【氏名】生越 渉
(72)【発明者】
【氏名】河本 晃一
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA60
3D241BB06
3D241DB05Z
3D241DB26Z
(57)【要約】
【課題】車両に対する運転支援の制御介入があったことを運転者に明確に示すことができる走行音生成装置を提供する。
【解決手段】コントローラ11は、少なくとも車両の車速の情報と、車両に対する運転支援の制御介入に関する情報とを含む運転支援情報を取得し、車両の横方向の加速度の情報を取得する。コントローラ11は、少なくとも車速の情報に基づいて、タイヤのグリップ状態を想起させる第1音データを生成し、加速度の情報に基づいて、車両の走行状態を想起させる第2音データを生成する。コントローラ11は、運転支援の制御介入に関する情報に基づいて、第1及び第2音データの少なくとも一方を加工するか否かを判定し、第1及び第2音データの少なくとも一方を加工すると判定した場合に、第1及び第2音データの少なくとも一方を変化させ、第1及び第2音データを合成した合成音データを生成する。出力部12は、合成音データを出力装置20に出力する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転者に対して音を出力する出力装置に音データを出力する出力部と、
コントローラと、を備え、
前記コントローラは、
少なくとも前記車両の速度の情報と、前記車両に対する運転支援の制御介入に関する情報とを含む運転支援情報を取得し、
前記車両の横方向の加速度の情報を取得し、
前記運転支援情報と前記加速度の情報に基づいて、タイヤのグリップ状態を想起させる第1音データを生成し、
少なくとも前記車両の速度の情報に基づいて、前記車両の走行状態を想起させる第2音データを生成し、
前記運転支援の制御介入に関する情報に基づいて、前記第1及び第2音データの少なくとも一方を加工するか否かを判定し、
前記第1及び第2音データの少なくとも一方を加工すると判定した場合に、前記第1及び第2音データの少なくとも一方を変化させ、
前記第1及び第2音データを合成した合成音データを生成し、
前記出力部は、前記合成音データを前記出力装置に出力する
走行音生成装置。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記第1及び第2音データの少なくとも一方を加工すると判定した場合に、前記第1及び第2音データの少なくとも一方を前記運転支援の制御介入による前記タイヤのグリップ状態又は前記車両の走行状態の変化に対応させずに変化させる
請求項1に記載の走行音生成装置。
【請求項3】
前記コントローラは、
前記運転支援の制御介入に関する情報に基づいて、前記運転支援の制御介入の有無を判定し、
前記運転支援の制御介入が有ると判定した場合に、前記第1及び第2音データの少なくとも一方を加工すると判定する
請求項1又は2に記載の走行音生成装置。
【請求項4】
前記コントローラは、
前記運転支援の制御介入に関する情報に基づいて、前記運転支援の制御介入の度合いが所定の基準を満たすか否かを判定し、
前記運転支援の制御介入の度合いが前記所定の基準を満たすと判定した場合に、前記運転支援の制御介入の度合いに応じて前記第1及び第2音データの一方を加工する
請求項1に記載の走行音生成装置。
【請求項5】
前記コントローラは、
前記運転支援の制御介入の度合いが第1の基準を満たすか、前記第1の基準より前記運転支援の制御介入の度合いが大きいことを判断するための第2の基準を満たすかを判定し、
前記運転支援の制御介入の度合いが前記第1の基準を満たすと判定した場合に、前記第1及び第2音データの一方を、前記運転支援の制御介入による前記タイヤのグリップ状態又は前記車両の走行状態の変化に対応させずに第1変化量だけ変化させ、
前記運転支援の制御介入の度合いが前記第2の基準を満たすと判定した場合に、前記第1及び第2音データの一方を、前記運転支援の制御介入による前記タイヤのグリップ状態又は前記車両の走行状態の変化に対応させずに、前記第1変化量より大きい第2変化量だけ変化させる
請求項4に記載の走行音生成装置。
【請求項6】
前記コントローラは、
前記運転支援の制御介入の度合いが第1の基準を満たすか、前記第1の基準より前記運転支援の制御介入の度合いが大きいことを判断するための第2の基準を満たすかを判定し、
前記運転支援の制御介入の度合いが前記第1の基準を満たすと判定した場合に、前記第1及び第2音データの一方を、前記運転支援の制御介入による前記タイヤのグリップ状態又は前記車両の走行状態の変化に対応させずに変化させ、
前記運転支援の制御介入の度合いが前記第2の基準を満たすと判定した場合に、前記第1及び第2音データの他方を、前記運転支援の制御介入による前記タイヤのグリップ状態又は前記車両の走行状態の変化に対応させずに変化させる
請求項4に記載の走行音生成装置。
【請求項7】
前記コントローラは、
前記運転支援の制御介入の度合いが少なくとも第1の基準を満たすか、前記第1の基準より前記運転支援の制御介入の度合いが大きいことを判断するための複数の基準のうちのいずれかを満たすかを判定し、
前記運転支援の制御介入の度合いが前記第1の基準を満たすと判定した場合に、前記第1及び第2音データの一方を、前記運転支援の制御介入による前記タイヤのグリップ状態又は前記車両の走行状態の変化に対応させずに変化させ、
前記運転支援の制御介入の度合いが前記複数の基準うちのいずれかを満たすと判定した場合に、前記第1及び第2音データの他方を、前記運転支援の制御介入による前記タイヤのグリップ状態又は前記車両の走行状態の変化に対応させずに、前記運転支援の制御介入の度合いに応じて変化させる
請求項4に記載の走行音生成装置。
【請求項8】
前記コントローラは、
前記運転支援の制御介入の度合いが第1の基準を満たすか、前記第1の基準より前記運転支援の制御介入の度合いが大きいことを判断するための第2の基準を満たすか、前記第2の基準より前記運転支援の制御介入の度合いが大きいことを判断するための第3の基準を満たすかを判定し、
前記運転支援の制御介入の度合いが前記第1の基準を満たすと判定した場合に、前記第1及び第2音データの一方を、前記運転支援の制御介入による前記タイヤのグリップ状態又は前記車両の走行状態の変化に対応させずに変化させ、
前記運転支援の制御介入の度合いが前記第2の基準を満たすと判定した場合に、前記第1及び第2音データの他方を、前記運転支援の制御介入による前記タイヤのグリップ状態又は前記車両の走行状態の変化に対応させずに第1変化量だけ変化させ、
前記運転支援の制御介入の度合いが前記第3の基準を満たすと判定した場合に、前記第1及び第2音データの他方を、前記運転支援の制御介入による前記タイヤのグリップ状態又は前記車両の走行状態の変化に対応させずに、前記第1変化量より大きい第2変化量だけ変化させる、
請求項4又は7に記載の走行音生成装置。
【請求項9】
前記コントローラは、
前記運転者の運転の技量を示す運転者情報及び前記車両の運転に関する環境情報の少なくとも一方を更に取得し、
前記基準の条件を、前記運転者情報及び前記環境情報の少なくとも一方に応じて変更する
請求項4~8のいずれか1項に記載の走行音生成装置。
【請求項10】
少なくとも車両の車速の情報と、前記車両に対する運転支援の制御介入に関する情報とを含む運転支援情報とを取得し、
前記車両の横方向の加速度の情報を取得し、
前記運転支援情報と前記加速度の情報に基づいて、タイヤのグリップ状態を想起させる第1音データを生成し、
少なくとも前記車速の情報に基づいて、前記車両の走行状態を想起させる第2音データを生成し、
前記運転支援の制御介入に関する情報に基づいて、前記第1及び第2音データの少なくとも一方を加工するか否かを判定し、
前記第1及び第2音データの少なくとも一方を変化させ、
前記第1及び第2音データを合成した合成音データを生成し、
前記合成音データを運転者に対して音を出力する出力装置に出力する
走行音生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行音生成装置及び走行音生成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の運動状態に基づいてタイヤのスキール音の疑似音を発生させ、車両の運動の限界に対する余裕度を告知する車両運動限界余裕度告知装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した車両運動限界余裕度告知装置は、車両の運動の限界に対する余裕度を告知する機能を持つが、運転支援のような制御が介入する場合には、車両の運動状態に基づいたタイヤのスキール音が発生しない。このため、車両に対する運転支援の制御介入があったことを運転者に告知することができない。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて成されたものであり、その目的は、車両に対する運転支援の制御介入があったことを運転者に明確に示すことができる走行音生成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る走行音生成装置は、車両の運転者に対して音を出力する出力装置に音データを出力する出力部と、コントローラと、を備える。コントローラは、少なくとも車両の車速の情報と、車両に対する運転支援の制御介入に関する情報とを含む運転支援情報を取得し、車両の横方向の加速度の情報を取得し、少なくとも車速の情報に基づいて、タイヤのグリップ状態を想起させる第1音データを生成し、加速度の情報に基づいて、車両の走行状態を想起させる第2音データを生成し、運転支援の制御介入に関する情報に基づいて、第1及び第2音データの少なくとも一方を加工するか否かを判定し、第1及び第2音データの少なくとも一方を加工すると判定した場合に、第1及び第2音データの少なくとも一方を変化させ、第1及び第2音データを合成した合成音データを生成する。出力部は、合成音データを出力装置に出力する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、運転支援制御が介入したことを運転者に明確に示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る走行音生成装置、及びその周辺機器の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1実施形態に係る走行音生成装置の一動作例を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、本発明の第2実施形態に係る走行音生成装置の一動作例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、本発明の第3実施形態に係る走行音生成装置の一動作例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、本発明の第4実施形態に係る走行音生成装置の一動作例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、本発明の第5実施形態に係る走行音生成装置の一動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1実施形態]
以下、本発明を適用した第1実施形態について、図面を参照して説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0010】
(走行音生成装置の構成)
図1を参照して、本発明の第1実施形態に係る走行音生成装置10及びその周辺機器の構成例を説明する。
図1に示すように、第1実施形態に係る走行音生成装置10は、スピーカ(出力装置)20、運転支援装置30、加速度センサ40、車速センサ50と接続されている。走行音生成装置10、運転支援装置30、加速度センサ40、車速センサ50は、図示しない車両に搭載されている。
【0011】
運転支援装置30は、各種センサを使用して運転者の車両操作と車両の動きを監視し、車両の走行状態に応じて車両の走行または運転者の運転操作を支援する運転支援を行う。運転支援装置30は、例えば、車両の速度に応じて駆動輪のスリップを低減するためにブレーキ圧とエンジンの出力を制御するトラクションコントロール(TRC:Traction Control)機能を備えるものであってもよい。また、運転支援装置30は、車両運動制御(VMC:Vehicle Motion Control)機能および車両ダイナミックス制御(VDC:Vehicle Dynamics Control)機能を備えるものであってもよい。さらに、運転支援装置30は、衝突被害軽減ブレーキを備えるものであってもよく、急発進防止装置であってもよい。
【0012】
加速度センサ40は、車両に搭載され、車両の横方向の加速度を検出し、検出された車両の横方向の加速度を走行音生成装置10及び運転支援装置30に出力する。車速センサ50は、車両に搭載され、車両の速度を検出し、検出された車両の速度を走行音生成装置10及び運転支援装置30に出力する。
【0013】
図1に示すように、走行音生成装置10は、コントローラ11と出力部12とを備える。
【0014】
コントローラ11は、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、記憶装置、入出力部などを備える汎用のマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータには、走行音生成装置10として機能させるためのコンピュータプログラムがインストールされている。コンピュータプログラムを実行することにより、マイクロコンピュータは、走行音生成装置10が備える複数の情報処理回路として機能する。なお、ここでは、ソフトウェアによって走行音生成装置10が備える複数の情報処理回路を実現する例を示すが、もちろん、以下に示す各情報処理を実行するための専用のハードウェアを用意して、情報処理回路を構成することも可能である。また、複数の情報処理回路を個別のハードウェアにより構成してもよい。
【0015】
走行音生成装置10は複数の情報処理回路として、情報取得部111、第1音生成部112、第2音生成部113、判定部114、加工部115、合成音生成部116を備える。
【0016】
情報取得部111は、運転支援装置30から、少なくとも車両の速度の情報と、車両に対する運転支援の制御介入に関する情報を含む運転支援情報を取得する。運転支援の制御介入に関する情報とは、運転支援装置30が車両に対して行う制御の情報と、運転支援装置30が車両に対して行う制御を判断するために用いた各種の情報とが含まれる。運転支援の制御介入に関する情報には、例えば、タイヤのスリップ角(以下、単にスリップ角と言う)、タイヤの接地面にかかる荷重(以下、単に荷重と言う)、エンジン回転速度、車両が走行した路面の情報などが含まれてもよい。なお、情報取得部111は、車速センサ50から直接車両の速度の情報を取得してもよい。情報取得部111は、運転支援装置30から、運転支援装置30が車両に対して行う制御を判断するために各種の情報から推測した情報を取得してもよい。
【0017】
さらに、情報取得部111は、加速度センサ40から車両の横方向の加速度の情報を取得する。なお、情報取得部111は、加速度センサ40から直接加速度の情報を取得する代わりに、運転支援装置30から、運転支援装置30が加速度センサ40から取得した加速度の情報を取得してもよく、運転支援装置30から、運転支援装置30が推測した加速度の情報を取得してもよい。
【0018】
第1音生成部112は、運転支援情報と車両の横方向の加速度の情報に基づいて、タイヤのグリップ状態を想起させる第1音データを生成する。タイヤのグリップ状態を想起させる第1音データとは、スキール音の音データである。第1音生成部112は、例えば、予め記憶されている疑似スキール音の振動特性を、運転支援情報に含まれるスリップ角と、荷重と、車両の横方向の加速度などに応じて変更することにより、スキール音の音データを生成する。
【0019】
また、第1音生成部112は、運転支援情報に対応する予め記憶されたスキール音の音データを選択することによりスキール音を生成してもよい。また、第1音生成部112は、運転支援情報と車両の横方向の加速度の情報に基づいて、スキール音の音量を算出する。スキール音の音データの生成方法は既知の技術であればよく、特に限定されない。
【0020】
第2音生成部113は、少なくとも車両の速度の情報に基づいて、車両の走行状態を想起させる第2音データを生成する。車両の走行状態を想起させる第2音データとは、例えばエンジン音の音データである。第2音生成部113は、例えば、予め記憶されている疑似エンジン音の振動特性を車両の速度に応じて変更することにより、エンジン音の音データを生成する。
【0021】
また、第2音生成部113は、車両の速度に対応する、予め記憶されたエンジン音の音データを選択することによりエンジン音を生成してもよい。また、第2音生成部113は、少なくとも車両の速度の情報に基づいてエンジン音の音量を算出する。エンジン音の音データの生成方法は既知の技術であればよく、特に限定されない。第2音生成部113は、車両の速度と、運転支援情報に含まれるエンジン回転速度、車両が走行した路面の情報などに基づいて、エンジン音の音データを生成してもよい。なお、第2音データは、スキール音のようなタイヤのグリップ状態を想起させる音の音データを含まない。
【0022】
なお、第2音生成部113は、車両の走行状態を想起させる音として、エンジン音に代えて風切り音、ロードノイズ等の音データを生成してもよく、エンジン音に加えて風切り音、ロードノイズ等を含む音の音データを生成してもよい。
【0023】
判定部114は、運転支援情報に含まれる運転支援の制御介入に関する情報に基づいて、第1及び第2音データの少なくとも一方を加工するか否かを判定する。第1実施形態では、判定部114は、運転支援の制御介入に関する情報に基づいて、車両に対する運転支援の制御介入の有無を判定し、運転支援の制御介入が有ると判定した場合に、第1及び第2音データの少なくとも一方を加工すると判定する。一方、運転支援の制御介入がないと判定した場合には、判定部は、第1及び第2音データを加工しないと判定する。
【0024】
判定部114は、例えば、第1及び第2音データのうち一方を加工すると判定してもよく、第1及び第2音データの両方を加工すると判定してもよい。また、判定部114は、常に第1及び第2音データのうち一方を加工すると判定してもよく、常に第1及び第2音データの両方を加工すると判定してもよい。
【0025】
加工部115は、判定部114が第1及び第2音データの少なくとも一方を加工すると判定した場合に、第1及び第2音データの少なくとも一方を変化させる。加工部115は、例えば第1及び第2音データが出力されるときの音の音程、音色等を変化させるように、第1及び第2音データを変化させる。
【0026】
ここで、加工部115による第1及び第2音データの加工方法について説明する。加工部115は、スキール音の音データを加工する場合に、スキール音の音データを、運転支援の制御介入によるタイヤのグリップ状態の変化に対応させずに変化させる。例えば、スキール音は実際には本来タイヤのグリップの余裕が無くなるほど音が高くなるのに対し、加工部115は、タイヤのグリップの余裕が無くなるほど音が低くなるようにスキール音の音データを加工する。すなわち、加工部115は、物理的に起こり得る第1音データの変化とは異なるように第1音データを変化させる。これにより、加工部115は第1音データを不自然な音に加工することができる。
【0027】
同様に、加工部115は、例えばエンジン音の音データを加工する場合に、エンジン音の音データを、運転支援の制御介入による車両の走行状態の変化に対応させずに変化させる。例えば、エンジン音は実際には車両の速度が速くなるほど音程が高くなるのに対し、加工部115は、車両の速度が速くなるほど音程が低くなるようにエンジン音のデータを加工する。すなわち、加工部115は、物理的に起こり得る第2音データの変化とは異なるように第2音データを加工する。これにより、過去部115は第2音データを不自然な音に加工することができる。
【0028】
合成音生成部116は、第1及び第2音データを合成した合成音データを生成する。合成音生成部116は、加工部115により第1及び第2音データの少なくとも一方が加工された場合には、加工部115により少なくとも一方が加工された第1及び第2音データを合成して、合成音データを生成する。一方、加工部115により第1及び第2音データが加工されない場合には、合成音生成部116は、第1音生成部112により生成され第1音データと、第2音生成部113により生成された第2音データとを合成して、合成音データを生成する。なお、合成音生成部116は、第1音データに含まれる波形信号と、第2音データに含まれる波形信号とを重畳することにより合成音データを生成してもよく、第1音データと、第2音データを含む音データを作成することにより、合成音データを生成してもよい。合成音生成部116は、生成した合成音データを出力部12に送信する。
【0029】
出力部12は、合成音データをスピーカ20に出力する。出力部12は、例えば、合成音データのデジタル信号をアナログの音声信号に変換するD/Aコンバータ(図示せず)と、アンプ(図示せず)により構成される。アンプは、D/Aコンバータから送信されたアナログの音声信号を増幅してスピーカ20に出力する。
【0030】
スピーカ20は、車両内に搭載され、車両の運転者に対して音を出力する。なお、スピーカ20の数は特に限定されるものでは無い。
【0031】
(走行音生成装置の動作)
次に
図2を参照して、第1実施形態に係る走行音生成装置10の一動作例を説明する。以下の説明では、第1音データはスキール音の音データであり、第2音データはエンジン音の音データであるものとする。
【0032】
ステップS101において、情報取得部111は、例えば運転支援装置30から、少なくとも車両の速度の情報と、車両に対する運転支援の制御介入に関する情報を含む運転支援情報を取得する。情報取得部111は、例えば加速度センサ40から、車両の横方向の加速度の情報を取得する。
【0033】
処理はステップS102に進み、第1音生成部112は、運転支援情報と車両の横方向の加速度の情報に基づいて、タイヤのグリップ状態を想起させるスキール音の音データを生成する。
【0034】
処理はステップS103に進み、情報取得部111は、車両の速度の情報を取得する。情報取得部111は、例えば車速センサ50から車両の速度の情報を取得する。処理はステップS104に進み、第2音生成部113は、少なくとも車両の速度の情報に基づいて、車両の走行状態を想起させるエンジン音の音データを生成する。
【0035】
処理はステップS105に進み、判定部114は、運転支援の制御介入に関する情報に基づいて、車両に対する運転支援の制御介入の有無を判定する。運転支援の制御介入が有る場合(ステップS105でYES)は、判定部114は、スキール音及びエンジン音の音データのうち一方を加工すると判定し、処理はステップS106に進む。一方、運転支援の制御介入がない場合(ステップS105でNO)は、判定部114は、スキール音及びエンジン音の音データを加工しないと判定し、処理はステップS107に進む。
【0036】
ステップS106において、加工部115は、スキール音及びエンジン音の音データのうち一方を加工する。加工部115は、スキール音及びエンジン音の音データのうち一方を、車両に対する運転支援の制御介入によるタイヤのグリップ状態の変化又は車両の走行状態の変化に対応させずに変化させる。その後処理はステップS107に進む。
【0037】
ステップS107において、合成音生成部116は、スキール音及びエンジン音の音データを合成した合成音データを生成する。合成音生成部116は、ステップS106においてスキール音及びエンジン音の音データのうち一方が加工された場合には、ステップS106において加工部115により一方が加工されたスキール音及びエンジン音の音データを合成して、合成音データを生成する。一方、ステップS106においてスキール音及びエンジン音の音データが加工されていない場合には、ステップS102において生成されたスキール音の音データと、ステップS104において生成されたエンジン音の音データとを合成して、合成音データを生成する。合成音生成部116は、生成した合成音データを出力部12に送信する。
【0038】
ステップS108に進み、出力部12は、合成音データをスピーカ20に出力する。その後、走行音生成装置10は
図2の動作を終了する。
【0039】
[第1実施形態の作用効果]
以上説明したように、本発明の第1実施形態に係る走行音生成装置10のコントローラ11は、車両の運転者に対して音を出力する出力装置20に音データを出力する出力部12と、コントローラ11と、を備える。コントローラ11は、少なくとも車両の速度の情報と、車両に対する運転支援の制御介入に関する情報とを含む運転支援情報を取得し、車両の横方向の加速度の情報を取得する。コントローラ11は、運転支援情報と加速度の情報に基づいて、タイヤのグリップ状態を想起させる第1音データを生成する。コントローラ11は、少なくとも車両の速度の情報に基づいて、車両の走行状態を想起させる第2音データを生成する。コントローラ11は、運転支援の制御介入に関する情報に基づいて、第1及び第2音データの少なくとも一方を加工するか否かを判定する。コントローラ11は、第1及び第2音データの少なくとも一方を加工すると判定した場合に、第1及び第2音データの少なくとも一方を変化させ、第1及び第2音データを合成した合成音データを生成する。出力部12は、合成音データを出力装置20に出力する
【0040】
また、本発明の第1実施形態に係る走行音生成装置10のコントローラ11は、第1及び第2音データの少なくとも一方を加工すると判定した場合に、第1及び第2音データの少なくとも一方を運転支援の制御介入によるタイヤのグリップ状態又は車両の走行状態の変化に対応させずに変化させる。
【0041】
また、本発明の第1実施形態に係る走行音生成装置10のコントローラ11は、運転支援の制御介入に関する情報に基づいて、運転支援の制御介入の有無を判定し、運転支援の制御介入が有ると判定した場合に、第1及び第2音データの少なくとも一方を加工すると判定する。
【0042】
第1実施形態に係る走行音生成装置10は、車両に対する運転支援の制御介入があった場合に、タイヤのグリップ状態を想起させる第1音データ及び車両の走行状態を想起させる第2音データの少なくとも一方を、運転支援の制御介入によるタイヤのグリップ状態又は車両の走行状態の変化に対応させずに変化させる。これにより、走行音生成装置10は、運転支援の制御介入があった場合に第1及び第2音データの少なくとも一方を不自然な音に加工できる。また、走行音生成装置10は、少なくとも一方が加工された第1及び第2音データの合成音データを出力装置20に出力することにより、不自然に加工された合成音を運転者に対して出力することができる。不自然に加工された合成音を聞いた運転者は、車両に対する運転支援の制御介入があったことを認識できる。よって、走行音生成装置10は、車両に対する運転支援の制御介入があったことを運転者に明確に示すことができる。
【0043】
[第2実施形態]
以下、本発明を適用した第2実施形態について、図面を参照して説明する。以下の説明では、第1実施形態に係る走行音生成装置10との相違点を中心に説明する。
【0044】
第2実施形態に係る走行音生成装置は、第1実施形態に係る走行音生成装置10に対して、判定部114及び加工部115の動作が異なる。その他の第2実施形態に係る走行音生成装置の構成は第1実施形態と同じであるため説明を省略する。
【0045】
第2実施形態において、判定部114は、運転支援の制御介入に関する情報に基づいて、運転支援の制御介入の度合いが所定の基準を満たすか否かを判定する。より具体的には、判定部114は、運転支援の制御介入の度合いが第1の基準を満たすか、第1の基準より運転支援の制御介入の度合いが大きいことを判断するための第2の基準を満たすかを判定する。
【0046】
第2実施形態における「運転支援の制御介入の度合い」とは、運転支援の制御介入が、例えばドライバがステアリングを切った操作に連動して後輪を更に制御するといったような、ドライバの操作に対応した運転支援の制御介入であるか、例えばドライバがアクセルを踏むという操作に反してアクセルを抑制するといったような、ドライバの操作に対応していない運転支援の制御介入であるかを意味する。この場合、ドライバの操作に対応していない運転支援の制御介入の方が、運転支援の制御介入の度合いが大きいと言える。
【0047】
また、第2実施形態における第1の基準とは、運転支援の制御介入の度合いがドライバの操作に対応した運転支援の制御介入であることを示し、第2の基準とは、運転支援の制御介入の度合いがドライバの操作に対応していない運転支援の制御介入であることを示す。
【0048】
判定部114は、運転支援の制御介入の度合いが所定の基準を満たす場合には、第1及び第2音データの一方を加工すると判定する。判定部114は、第1及び第2音データの一方を加工するか否かを判定するものであればよい。
【0049】
第2実施形態において、加工部115は、判定部114が運転支援の制御介入の度合いが所定の基準を満たすと判定した場合に、運転支援の制御介入の度合いに応じて第1及び第2音データの一方を加工する。より具体的には、加工部115は、判定部114が運転支援の制御介入の度合いが第1の基準を満たすと判定した場合に、例えば第1音データを、運転支援の制御介入によるタイヤのグリップ状態の変化に対応させずに第1変化量だけ変化させる。この場合、加工部115は、判定部114が運転支援の制御介入の度合いが第2の基準を満たすと判定した場合に、第1音データを、運転支援の制御介入によるタイヤのグリップ状態の変化に対応させずに、第1変化量より大きい第2変化量だけ変化させる。
【0050】
なお、第1音データ及び第2音データの関係は逆であってもよい。加工部115は、判定部114が運転支援の制御介入の度合いが第1の基準を満たすと判定した場合に、例えば第2音データを、運転支援の制御介入による車両の走行状態の変化に対応させずに第1変化量だけ変化させてもよい。この場合、加工部115は、判定部114が運転支援の制御介入の度合いが第2の基準を満たすと判定した場合に、第2音データを、運転支援の制御介入による車両の走行状態の変化に対応させずに、第1変化量より大きい第2変化量だけ変化させる。
【0051】
図3を参照して、第2実施形態に係る走行音生成装置の一動作例について説明する。
図3のステップS201~S204及びステップS209、S210は、
図2のステップS101~S104及びステップS107、108と同じ動作であるであるため、説明を省略する。
【0052】
図3のステップS205において、判定部114は、運転支援の制御介入に関する情報に基づいて、運転支援の制御介入の度合いが第1の基準を満たすかを判定する。運転支援の制御介入の度合いが第1の基準を満たす場合(ステップS205でYES)には、判定部114は、例えばスキール音の音データを加工すると判定する。処理はステップS206に進み、加工部115は、スキール音の音データを運転支援の制御介入によるタイヤのグリップ状態の変化に対応させずに第1変化量だけ変化させる。一方、運転支援の制御介入の度合いが第1の基準を満たさない場合(ステップS205でNO)には、処理はステップS207に進む。
【0053】
ステップS207において、判定部114は、運転支援の制御介入に関する情報に基づいて、運転支援の制御介入の度合いが第2の基準を満たすかを判定する。運転支援の制御介入の度合いが第2の基準を満たす場合(ステップS207でYES)には、判定部114は、スキール音の音データを加工すると判定する。処理はステップS208に進み、加工部115は、スキール音の音データを、運転支援の制御介入によるタイヤのグリップ状態の変化に対応させずに、第1変化量よりも大きい第2変化量だけ変化させる。一方、運転支援の制御介入の度合いが第2の基準を満たさない場合(ステップS207でNO)には、処理はステップS209に進む。その後ステップS209、S210の動作を実施した後に、第2実施形態に係る走行音生成装置は
図3の動作を終了する。
【0054】
[第2実施形態の作用効果]
以上説明したように、本発明の第2実施形態に係る走行音生成装置のコントローラは、運転支援の制御介入に関する情報に基づいて、運転支援の制御介入の度合いが所定の基準を満たすか否かを判定する。コントローラは、運転支援の制御介入の度合いが所定の基準を満たすと判定した場合に、運転支援の制御介入の度合いに応じて第1及び第2音データの一方を加工する。
【0055】
また、本発明の第2実施形態に係る走行音生成装置のコントローラは、運転支援の制御介入の度合いが第1の基準を満たすか、第1の基準より前記運転支援の制御介入の度合いが大きいことを判断するための第2の基準を満たすかを判定する。コントローラは、運転支援の制御介入の度合いが第1の基準を満たすと判定した場合に、第1及び第2音データの一方を、運転支援の制御介入によるタイヤのグリップ状態又は車両の走行状態の変化に対応させずに第1変化量だけ変化させる。コントローラは、運転支援の制御介入の度合いが第2の基準を満たすと判定した場合に、第1及び第2音データの一方を、運転支援の制御介入によるタイヤのグリップ状態又は車両の走行状態の変化に対応させずに、第1変化量より大きい第2変化量だけ変化させる。
【0056】
第2実施形態に係る走行音生成装置のコントローラは、運転支援の制御介入の度合いが第2の基準を満たすと判定した場合に、第1及び第2音データの一方をより多く変化させる。これにより、走行音生成装置10は、運転支援の制御介入が第2の基準を満たすと判定した場合に、第1及び第2音データの一方をより不自然な音に加工することができる。走行音生成装置10は、は、運転支援の制御介入の度合いに応じて、第1及び第2音データの変化量を異ならせることにより、運転者に運転支援の制御介入の度合いを明確に示すことができる。
【0057】
[第3実施形態]
以下、本発明を適用した第3実施形態について、図面を参照して説明する。以下の説明では、第2実施形態に係る走行音生成装置との相違点を中心に説明する。
【0058】
第3実施形態に係る走行音生成装置は、第2実施形態に係る走行音生成装置に対して、判定部114及び加工部115の動作が異なる。その他の第3実施形態に係る走行音生成装置の構成は第2実施形態と同じであるため説明を省略する。
【0059】
第3実施形態において、判定部114は、運転支援の制御介入の度合いが第1の基準を満たすか、第1の基準より運転支援の制御介入の度合いが大きいことを判断するための第2の基準を満たすかを判定する。判定部114は、運転支援の制御介入の度合いが第1の基準を満たす場合には、第1及び第2音データの一方を加工すると判定する。また、判定部114は、運転支援の制御介入の度合いが第2の基準を満たす場合には、第1及び第2音データの他方を加工すると判定する。
【0060】
第3実施形態において、加工部115は、判定部114が運転支援の制御介入の度合いが所定の基準を満たすと判定した場合に、第1及び第2音データの一方を加工する。より具体的には、加工部115は、判定部114が運転支援の制御介入の度合いが第1の基準を満たすと判定した場合に、例えば第1音データを、運転支援の制御介入によるタイヤのグリップ状態の変化に対応させずに変化させる。この場合、加工部115は、判定部114が運転支援の制御介入の度合いが第2の基準を満たすと判定した場合に、第2音データを、運転支援の制御介入による車両の走行状態の変化に対応させずに変化させる。
【0061】
なお、第1音データ及び第2音データの関係は逆であってもよい。加工部115は、判定部114が運転支援の制御介入の度合いが第1の基準を満たすと判定した場合に、例えば第2音データを、運転支援の制御介入による車両の走行状態の変化に対応させずに変化させてもよい。この場合、加工部115は、判定部114が運転支援の制御介入の度合いが第2の基準を満たすと判定した場合に、第1音データを、運転支援の制御介入によるタイヤのグリップ状態の変化に対応させずに変化させる。
【0062】
図4を参照して、第2実施形態に係る走行音生成装置の一動作例について説明する。
図4のステップS301~S304、S309及びS310は、
図3のステップS201~S204、S209及びS210と同じ動作であるであるため、説明を省略する。
【0063】
図4のステップS305において、判定部114は、運転支援の制御介入に関する情報に基づいて、運転支援の制御介入の度合いが第1の基準を満たすかを判定する。運転支援の制御介入の度合いが第1の基準を満たす場合(ステップS305でYES)には、判定部114は、例えばエンジン音の音データを加工すると判定する。処理はステップS306に進み、加工部115は、エンジン音の音データを、運転支援の制御介入によるタイヤのグリップ状態又は車両の走行状態の変化に対応させずに変化させ、処理はステップS309に進む。一方、運転支援の制御介入の度合いが第1の基準を満たさない場合(ステップS305でNO)には、処理はステップS307に進む。
【0064】
ステップS307において、判定部114は、運転支援情報に基づいて、運転支援の制御介入の度合いが第2の基準を満たすかを判定する。運転支援の制御介入の度合いが第2の基準を満たす場合(ステップS307でYES)には、判定部114は、スキール音の音データを加工すると判定する。処理はステップS308に進み、加工部115は、スキール音の音データを、運転支援の制御介入による車両の走行状態の変化に対応させずに変化させ、処理はステップS309に進む。一方、運転支援の制御介入の度合いが第2の基準を満たさない場合(ステップS307でNO)には、処理はステップS309に進む。その後ステップS309、S310の動作を実施した後に、第3実施形態に係る走行音生成装置は
図4の動作を終了する。
【0065】
[第3実施形態の作用効果]
以上説明したように、本発明の第3実施形態に係る走行音生成装置のコントローラは、運転支援の制御介入の度合いが第1の基準を満たすか、第1の基準より運転支援の制御介入の度合いが大きいことを判断するための第2の基準を満たすかを判定する。コントローラは、運転支援の制御介入の度合いが第1の基準を満たすと判定した場合に、第1及び第2音データの一方を、運転支援の制御介入によるタイヤのグリップ状態又は前記車両の走行状態の変化に対応させずに変化させる。コントローラは、運転支援の制御介入の度合いが第2の基準を満たすと判定した場合に、第1及び第2音データの他方を、運転支援の制御介入によるタイヤのグリップ状態又は車両の走行状態の変化に対応させずに変化させる。
【0066】
第3実施形態に係る走行音生成装置のコントローラは、運転支援の制御介入の度合いが第1の基準を満たす場合と、第2の基準を満たす場合とで、加工する対象の音データを異ならせる。これにより、走行音生成装置は、運転支援の制御介入の度合いに応じて加工する対象の音データを異ならせることができ、運転者に運転支援の制御介入の度合いを明確に示すことができる。
【0067】
[第4実施形態]
以下、本発明を適用した第4実施形態について、図面を参照して説明する。以下の説明では、第2実施形態に係る走行音生成装置との相違点を中心に説明する。
【0068】
第4実施形態に係る走行音生成装置は、第2実施形態に係る走行音生成装置に対して、判定部114及び加工部115の動作が異なる。その他の第4実施形態に係る走行音生成装置の構成は第2実施形態と同じであるため説明を省略する。
【0069】
第4実施形態において、判定部114は、運転支援の制御介入の度合いが少なくとも第1の基準を満たすか、第1の基準より運転支援の制御介入の度合いが大きいことを判断するための複数の基準のうちのいずれかを満たすかを判定する。
【0070】
第4実施形態における「運転支援の制御介入の度合い」とは、運転支援の制御介入がドライバの操作に対応した運転支援の制御介入であるか、ドライバの操作に対応していない運転支援の制御介入であるかに加えて、運転支援の制御介入により車両の速度等の車両の走行状態がどの程度変化したかを更に示す。
【0071】
第4実施形態において、加工部115は、判定部114が運転支援の制御介入の度合いが第1の基準を満たすと判定した場合に、第1及び第2音データの一方を、運転支援の制御介入によるタイヤのグリップ状態又は車両の走行状態の変化に対応させずに変化させる。また、加工部115は、判定部114が運転支援の制御介入の度合いが複数の基準うちのいずれかを満たすと判定した場合に、第1及び第2音データの他方を、運転支援の制御介入によるタイヤのグリップ状態又は車両の走行状態の変化に対応させずに、運転支援の制御介入の度合いに応じて変化させる。
【0072】
例えば、判定部114は、運転支援の制御介入の度合いが第1の基準を満たすか、第1の基準より運転支援の制御介入の度合いが大きいことを判断するための第2の基準を満たすか、第2の基準より運転支援の制御介入の度合いが大きいことを判断するための第3の基準を満たすかを判定する。
【0073】
この場合、第1の基準とは、運転支援の制御介入がドライバの操作に対応した運転支援の制御介入であることを示す。第2の基準とは、例えば、運転支援の制御介入がドライバの操作に対応していない運転支援の制御介入であり且つ、運転支援の制御介入により車両の速度等の車両の走行状態が変化した度合いが第1閾値以上第2閾値未満であることを示す。第3の基準とは、例えば、運転支援の制御介入がドライバの操作に対応していない運転支援の制御介入であり且つ、運転支援の制御介入により車両の速度等の車両の走行状態が変化した度合いが第2閾値以上であることを示す。
【0074】
判定部114は、運転支援の制御介入の度合いが第1の基準を満たす場合には、例えば第1音データを加工すると判定する。この場合、判定部114は、運転支援の制御介入の度合いが第2又は第3の基準を満たす場合には、第2音データを加工すると判定する。
【0075】
加工部115は、判定部114が運転支援の制御介入の度合いが第1の基準を満たすと判定した場合に、第1及び第2音データの一方を加工し、判定部114が運転支援の制御介入の度合いが第2又は第3の基準を満たすと判定した場合に、運転支援の制御介入の度合いに応じて第1及び第2音データの他方を加工する。より具体的には、加工部115は、判定部114が運転支援の制御介入の度合いが第1の基準を満たすと判定した場合に、例えば第1音データを、運転支援の制御介入によるタイヤのグリップ状態の変化に対応させずに変化させる。この場合、加工部115は、判定部114が運転支援の制御介入の度合いが第2の基準を満たすと判定した場合に、第2音データを、運転支援の制御介入による車両の走行状態の変化に対応させずに第1変化量だけ変化させる。さらに加工部115は、判定部114が運転支援の制御介入の度合いが第3の基準を満たすと判定した場合に、第2音データを、運転支援の制御介入による車両の走行状態の変化に対応させずに、第1変化量より大きい第2変化量だけ変化させる。
【0076】
なお、第1音データ及び第2音データの関係は逆であってもよい。加工部115は、判定部114が運転支援の制御介入の度合いが第1の基準を満たすと判定した場合に、第2音データを、運転支援の制御介入による車両の走行状態の変化に対応させずに変化させてもよい。この場合、加工部115は、判定部114が運転支援の制御介入の度合いが第2の基準を満たすと判定した場合に、第1音データを、運転支援の制御介入によるタイヤのグリップ状態の変化に対応させずに第1変化量だけ変化させる。さらに加工部115は、判定部114が運転支援の制御介入の度合いが第3の基準を満たすと判定した場合に、第1音データを、運転支援の制御介入によるタイヤのグリップ状態の変化に対応させずに、第1変化量より大きい第2変化量だけ変化させる。
【0077】
図5を参照して、第4実施形態に係る走行音生成装置の一動作例について説明する。
図5のステップS401~S404、S411及びS412は、
図3のステップS201~S204、S209及びS210と同じ動作であるであるため、説明を省略する。
【0078】
図5のステップS405において、判定部114は、運転支援の制御介入の度合いに基づいて、運転支援の制御介入の度合いが第1の基準を満たすかを判定する。運転支援の制御介入の度合いが第1の基準を満たす場合(ステップS405でYES)には、判定部114は、例えばスキール音の音データを加工すると判定する。処理はステップS406に進み、加工部115は、スキール音の音データを、運転支援の制御介入によるタイヤのグリップ状態又は車両の走行状態の変化に対応させずに変化させ、処理はステップS411に進む。一方、運転支援の制御介入の度合いが第1の基準を満たさない場合(ステップS405でNO)には、処理はステップS407に進む。
【0079】
ステップS407において、判定部114は、運転支援情報に基づいて、運転支援の制御介入の度合いが第2の基準を満たすかを判定する。運転支援の制御介入の度合いが第2の基準を満たす場合(ステップS407でYES)には、判定部114は、エンジン音の音データを加工すると判定する。処理はステップS408に進み、加工部115は、エンジン音の音データを、運転支援の制御介入による走行状態の変化に対応させず第1変化量だけ変化させ、処理はステップS411に進む。一方、運転支援の制御介入の度合いが第2の基準を満たさない場合(ステップS407でNO)には、処理はステップS409に進む。
【0080】
ステップS409において、判定部114は、運転支援情報に基づいて、運転支援の制御介入の度合いが第3の基準を満たすかを判定する。運転支援の制御介入の度合いが第3の基準を満たす場合(ステップS409でYES)には、判定部114は、エンジン音の音データを加工すると判定する。処理はステップS410に進み、加工部115は、エンジン音の音データを、運転支援の制御介入による走行状態の変化に対応させず第1変化量より大きい第2変化量だけ変化させ、処理はステップS411に進む。一方、運転支援の制御介入の度合いが第3の基準を満たさない場合(ステップS409でNO)には、処理はステップS411に進む。その後ステップS411、S412の動作を実施した後に、第4実施形態に係る走行音生成装置は
図5の動作を終了する。
【0081】
[第4実施形態の作用効果]
以上説明したように、本発明の第4実施形態に係る走行音生成装置のコントローラは、運転支援の制御介入の度合いが少なくとも第1の基準を満たすか、第1の基準より運転支援の制御介入の度合いが大きいことを判断するための複数の基準のうちのいずれかを満たすかを判定する。コントローラは、運転支援の制御介入の度合いが第1の基準を満たすと判定した場合に、第1及び第2音データの一方を、運転支援の制御介入によるタイヤのグリップ状態又は車両の走行状態の変化に対応させずに変化させる。コントローラは、運転支援の制御介入の度合いが複数の基準うちのいずれかを満たすと判定した場合に、第1及び第2音データの他方を、運転支援の制御介入によるタイヤのグリップ状態又は車両の走行状態の変化に対応させずに、運転支援の制御介入の度合いに応じて変化させる。
【0082】
例えば、本発明の第4実施形態に係る走行音生成装置のコントローラは、運転支援の制御介入の度合いが少なくとも第1の基準を満たすか、第1の基準より運転支援の制御介入の度合いが大きいことを判断するための第2の基準を満たすか、第2の基準より運転支援の制御介入の度合いが大きいことを判断するための第3の基準を満たすかを判定する。コントローラは、運転支援の制御介入の度合いが第1の基準を満たすと判定した場合に、第1及び第2音データの一方を、運転支援の制御介入によるタイヤのグリップ状態又は車両の走行状態の変化に対応させずに変化させる。コントローラは、運転支援の制御介入の度合いが第2の基準を満たすと判定した場合に、第1及び第2音データの他方を、運転支援の制御介入によるタイヤのグリップ状態又は車両の走行状態の変化に対応させずに第1変化量だけ変化させる。コントローラは、運転支援の制御介入の度合いが第3の基準を満たすと判定した場合に、第1及び第2音データの他方を、運転支援の制御介入によるタイヤのグリップ状態又は車両の走行状態の変化に対応させずに、第1変化量より大きい第2変化量だけ変化させる。
【0083】
第4実施形態に係る走行音生成装置のコントローラは、運転支援の制御介入の度合いが第1の基準を満たす場合と、第1の基準より運転支援の制御介入の度合いが大きいことを判断するための基準のいずれかを満たす場合とで、加工する対象の音データを異ならせる。また、コントローラは、判定部114が第1の基準より運転支援の制御介入の度合いが大きいことを判断するための基準を満たすと判定した場合に、運転支援の制御介入の度合いに応じて第1又は第2音データを変化させる。これにより、走行音生成装置は、判定部114が第1の基準より運転支援の制御介入の度合いが大きいことを判断するための基準を満たすと判定した場合に、運転支援の制御介入の度合いに応じて、第1又は第2音データの変化量を異ならせることができる。よって、走行音生成装置は、運転者に運転支援の制御介入の度合いをより明確に示すことができる。
【0084】
[変形例]
以下、本発明を適用した第2~第4実施形態の変形例について説明する。第2~第4実施形態に係る走行音生成装置の情報取得部111は、運転者の運転の技量を示す運転者情報及び車両の運転に関する環境情報の少なくとも一方を更に取得してもよい。情報取得部111は、運転者情報として、例えば運転者の累積運転時間及び年齢などの情報を取得してもよい。また、情報取得部111は、環境情報として、現在時刻、車両の現在位置周辺の天気及び路面状況などの情報を取得してもよい。なお、運転者情報及び環境情報は、図示しない外部の装置又はサーバ等から取得されてもよく、図示しない操作部を介して運転者により入力されてもよい。運転者情報及び環境情報の取得方法は、特に限定されるものではない。
【0085】
第2~第4実施形態に係る走行音生成装置の判定部114は、運転者情報及び環境情報の少なくとも一方が所定の条件を満たすか否かを判定し、運転者情報及び環境情報の少なくとも一方が所定の条件を満たす場合に、基準の条件を、運転者情報及び環境情報の少なくとも一方に応じて変更してもよい。
【0086】
判定部114は、例えば、運転者の累積運転時間が所定時間より短い場合に、基準となる運転支援の制御介入の度合いが小さくなるように、基準を変更してもよく、運転者の年齢が所定年齢より低い場合に、基準となる運転支援の制御介入の度合いが小さくなるように、基準を変更してもよい。すなわち、判定部114は、運転者の運転の技量がある水準よりも低い場合に、基準となる運転支援の制御介入の度合いが小さくなるように、基準を変更してもよい。
【0087】
また、判定部114は、例えば、現在時刻が夜間である場合に、基準となる運転支援の制御介入の度合いが小さくなるように、基準を変更してもよく、車両の現在位置周辺の天気が雨天時の場合に、基準となる運転支援の制御介入の度合いが小さくなるように、基準を変更してもよい。
【0088】
図6を参照して、本発明を適用した第2実施形態の変形例に係る走行音生成装置の一動作例について説明する。
図6のステップS501~S504、S508~S513は、
図3のステップS201~S204、S209及びS210と同じ動作であるであるため、説明を省略する。
【0089】
図6のステップS505において、情報取得部111は、例えば運転者情報を更に取得する。処理はステップS506に進み、判定部114は、運転者情報が所定の条件を満たすかを判定する。運転者情報が所定の条件を満たす場合(ステップS506でYES)には、処理はステップS507に進み、判定部114は、第1の基準及び第2の基準を、運転者情報に応じて変更する。そして、処理はステップS508に進む。ステップS507において、判定部114は、例えば、第1の基準及び第2の基準の各々を、運転支援の制御介入の度合いが小さくなるように変更する。一方、運転者情報が所定の条件を満たさない場合(ステップS506でNO)には、処理はステップS508に進む。その後ステップS508~S513の動作を実施した後に、第2実施形態の変形例に係る走行音生成装置は
図6の動作を終了する。
【0090】
[変形例の作用効果]
以上説明したように、本発明の第2~第4実施形態の変形例に係る走行音生成装置のコントローラは、運転者の運転の技量を示す運転者情報及び車両の運転に関する環境情報の少なくとも一方を更に取得し、運転者情報及び環境情報の少なくとも一方が所定の条件を満たすか否かを判定する。コントローラは、運転者情報及び環境情報の少なくとも一方が所定の条件を満たす場合に、基準の条件を、運転者情報及び環境情報の少なくとも一方に応じて変更する。
【0091】
本発明の第2~第4実施形態の変形例に係る走行音生成装置は、運転者情報及び環境情報に応じて、基準を変更することができる。走行音生成装置は、第1及び第2音データを加工し、第1及び第2音データの合成音を出力装置に出力する条件を、運転者情報及び環境情報に応じて変更できる。走行音生成装置は、運転者の運転の技量がある水準よりも低い場合、周囲の環境が運転に適さないような場合に、通常よりも早いタイミングで第1及び第2音データの少なくとも一方を加工し、第1及び第2音データの合成音を出力装置に出力できる。これにより、運転者がより安心して運転できる。
【0092】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0093】
10 走行音生成装置
11 コントローラ
12 出力部