(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134205
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】洋上発電設備
(51)【国際特許分類】
A01G 33/00 20060101AFI20240926BHJP
A01K 61/10 20170101ALI20240926BHJP
B63B 35/00 20200101ALI20240926BHJP
【FI】
A01G33/00
A01K61/10
B63B35/00 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044397
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】514209526
【氏名又は名称】九電みらいエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】弁理士法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福岡 達也
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 悠二
(72)【発明者】
【氏名】矢野 雄一
(72)【発明者】
【氏名】溝口 直孝
(72)【発明者】
【氏名】二宮 早由子
(72)【発明者】
【氏名】神尾 光一郎
【テーマコード(参考)】
2B026
2B104
【Fターム(参考)】
2B026AA02
2B026AA05
2B026AB06
2B026AC01
2B104GA01
(57)【要約】
【課題】 洋上発電設備の浮体に隣接して海藻牧場を設置し、その水深を簡便な装置を用いて容易に変更可能とすること、洋上発電設備等を設置した海域における魚介類の行動を解析して海藻牧場の水深や配置の調整、漁業者の活動に役立つ情報発信を行うこと及び自動給餌機や生簀を併設して魚介類の生育環境を整え、養殖を行って地域貢献すること。
【解決手段】 海上に浮かぶ浮体1、浮体1の上面に設置されている風力発電機2、風力発電機2で発電した電力を地上の各種設備3に電力を送る送電線4、浮体1の周囲に設置されている海藻牧場5、生簀6、自動給餌機7、風力発電機2で発電した電力を自動給餌機7に送る給餌用送電手段8及び海藻牧場5が設置されている海域に生息している複数種類の魚介類に小型記録計を取り付け、記録された時刻情報とセンサ情報(位置情報、水深情報、温度情報等)を解析するバイオロギングシステムを備えている洋上発電設備。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海上に浮かぶ浮体と、該浮体の上面に設置されている発電機と、海底に設置されている複数の浮体用アンカーと、前記浮体と前記複数のアンカーを繋ぐ浮体用係留索を備えている洋上発電設備であって、
海上に浮かぶブイと、海底に設置されているブイ用アンカーと、
前記ブイと前記ブイ用アンカーを繋ぐブイ用係留索と、
海中において前記浮体から下方に延びる浮体側海藻用ロープ及び前記ブイから下方に延びるブイ側海藻用ロープに接続されている海藻養殖用ロープ又は海藻養殖用井桁と、
前記浮体側海藻用ロープを巻き取ることができる浮体側巻取り機構と、
前記ブイ側海藻用ロープを巻き取ることができるブイ側巻取り機構と、
前記発電機又は前記ブイに設置されている補助発電機から前記浮体側巻取り機構及び前記ブイ側巻取り機構に電力を送る巻取り用送電手段を備えている
ことを特徴とする洋上発電設備。
【請求項2】
前記浮体及び前記ブイが設置されている海域において、特定の魚介類が経験している時系列の行動データを解析する魚介類行動解析手段を備えている
ことを特徴とする請求項1に記載の洋上発電設備。
【請求項3】
前記浮体又は前記ブイに設置されている自動給餌機と、前記発電機又は前記補助発電機から前記自動給餌機に電力を送る給餌用送電手段を備えている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の洋上発電設備。
【請求項4】
前記浮体又は前記ブイに隣接して設置されている生簀を備え、
前記自動給餌機は、少なくとも前記生簀の中に魚介類のエサを供給する
ことを特徴とする請求項3に記載の洋上発電設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮体の上面に設置されている発電機と浮体に隣接して設置されている海藻牧場を備えている洋上発電設備に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、日本近海において魚介類の漁獲高や海藻の収穫高が減少しており、その原因は漁獲の機械化による大量乱獲、未成育の魚を漁獲したによる再生不良、地球温暖化に伴う環境変化などが指摘されている。これに対して、漁場の近くに魚礁を設置したり、洋上発電装置の近くに浮魚礁を設置したりして、魚介類の生育環境を整える試みも行われている。
例えば、特許文献1(特開2015-165796号公報)には、洋上発電装置(2)の近くに、大型の洋上フロート部(25)と小型の浮沈フロート部(26)を備える魚礁本体(22)を設置し、浮沈フロート部(26)をエアコンプレッサによって浮き沈みさせることによって、通常は太陽光が届きにくく藻場が育つ光量が得られない深い水深(例えば、回遊魚が比較的多く生息する水深50mより深い水深)に魚礁本体(22)を配置するとともに発光体(6)を発光させ、波の影響が少ない時に海面から10m以内の水深に魚礁本体(22)を配置し、メンテナンス時に洋上まで魚礁本体(22)を浮上させることもできる魚礁本体(22)を併設した浮漁礁が記載されている(特に、段落0045~0047及び
図7等を参照)。
【0003】
また、特許文献2(特開2019-104420号公報)には、浮体(1a)と洋上風車(1b)からなる洋上風力発電設備(1)の浮体(1a)が、網状部材(50)や生け簀(60)を備えている点、各洋上風力発電設備(1)にそれぞれ設置されている制御ユニット(X)は、魚介類監視装置(3)と自然環境情報取得手段(4)と給餌装置(5)と制御装置(6)を備えている点、魚介類監視装置(3)は内側領域(2)や生け簀(60)内における魚介類の位置、種類、個体数等に関する魚介類情報を取得する点及び制御装置(6)、魚介類監視装置(3)、自然環境情報取得手段(4)、給餌装置(5)に必要な電力は洋上風車(1b)から供給する点等が記載されている(特に、段落0017~0018、段落0038~0040、段落0043及び
図2、6等を参照)。
【0004】
しかし、特許文献1に記載されている浮漁礁は、浮沈フロート部(26)をエアコンプレッサによって浮き沈みさせ魚礁本体(22)の水深を変化させるため、設備自体が高価な上にメンテナンスも容易ではなく費用がかさむという問題があった。
また、特許文献2に記載されている洋上風力発電設備(1)は、魚介類監視装置(3)と自然環境情報取得手段(4)と給餌装置(5)と制御装置(6)とを備えてはいるが、洋上風力発電設備(1)の近くに海藻牧場や魚礁を併設しておらず、海藻牧場や魚礁の水深又は配置と魚介類の位置、種類、個体数等との関係を把握できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-165796号公報(特許第6566391号公報)
【特許文献2】特開2019-104420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の問題等を解決し、洋上発電設備の浮体に隣接して海藻牧場を設置するとともに、その海藻牧場の水深を、洋上発電設備等から電力の供給を受けて作動する簡便な装置を用いて容易に変更できるようにすることを第1の課題としている。
また、本発明は、海藻牧場が設置されている海域における魚介類の行動を解析し、海藻牧場の水深や配置を調整できるようにするとともに、漁業者の活動に役立つ情報を発信できるようにすることを第2の課題としている。
さらに、本発明は、洋上発電設備に自動給餌機や生簀を併設して、積極的に魚介類の生育環境を整え、養殖を行うことによって地域貢献することを第3の課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、海上に浮かぶ浮体と、該浮体の上面に設置されている発電機と、海底に設置されている複数の浮体用アンカーと、前記浮体と前記複数のアンカーを繋ぐ浮体用係留索を備えている洋上発電設備であって、
海上に浮かぶブイと、海底に設置されているブイ用アンカーと、
前記ブイと前記ブイ用アンカーを繋ぐブイ用係留索と、
海中において前記浮体から下方に延びる浮体側海藻用ロープ及び前記ブイから下方に延びるブイ側海藻用ロープに接続されている海藻養殖用ロープ又は海藻養殖用井桁と、
前記浮体側海藻用ロープを巻き取ることができる浮体側巻取り機構と、
前記ブイ側海藻用ロープを巻き取ることができるブイ側巻取り機構と、
前記発電機又は前記ブイに設置されている補助発電機から前記浮体側巻取り機構及び前記ブイ側巻取り機構に電力を送る巻取り用送電手段を備えていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の洋上発電設備において、
前記浮体及び前記ブイが設置されている海域において、特定の魚介類が経験している時系列の行動データを解析する魚介類行動解析手段を備えていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の洋上発電設備において、
前記浮体又は前記ブイに設置されている自動給餌機と、前記発電機又は前記補助発電機から前記自動給餌機に電力を送る給餌用送電手段を備えていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載されている洋上発電設備において、
前記浮体又は前記ブイに隣接して設置されている生簀を備え、前記自動給餌機は、少なくとも前記生簀の中に魚介類のエサを供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明の洋上発電設備によれば、浮体から下方に延びる浮体側海藻用ロープ及びブイから下方に延びるブイ側海藻用ロープに接続されている海藻養殖用ロープ又は海藻養殖用井桁を備えているので、洋上発電設備の浮体に隣接して海藻牧場を設置することができ、その海藻養殖用ロープ又は海藻養殖用井桁の大きさを自由に設定することができる。また、浮体側海藻用ロープを巻き取ることができる浮体側巻取り機構と、ブイ側海藻用ロープを巻き取ることができるブイ側巻取り機構と、浮体の上面に設置されている発電機又はブイに設置されている補助発電機から浮体側巻取り機構及びブイ側巻取り機構に電力を送る巻取り用送電手段を備えているので、海藻牧場の水深を、洋上発電設備等から電力の供給を受けて作動する簡便な装置を用いて容易に変更できる。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、請求項1に係る発明による効果に加えて、浮体及びブイが設置されている海域において、特定の魚介類が経験している時系列の行動データを解析する魚介類行動解析手段を備えているので、海藻牧場が設置されている海域における魚介類の行動を解析し、海藻牧場の水深や配置を調整でき、かつ、漁業者の活動に役立つ情報を発信でき、近隣漁業関係者に対して地域貢献を行うことができる。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、請求項1又は2に係る発明による効果に加えて、浮体又はブイに設置されている自動給餌機と、発電機又は補助発電機から自動給餌機に電力を送る給餌用送電手段を備えているので、積極的に魚介類の生育環境を整えることができ、近隣漁業関係者に対してより大きな地域貢献を行うことができる。
【0014】
請求項4に係る発明によれば、請求項3に係る発明による効果に加えて、浮体又は前記ブイに隣接して設置されている生簀を備え、自動給餌機は少なくとも生簀の中に魚介類のエサを供給するので、洋上発電設備に併設した生簀で養殖を行うことによって、より確かな漁獲を見込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の海藻牧場を設置する洋上発電設備に関する概念図。
【
図2】実施例1に係る洋上発電設備の全体構成を示す図。
【
図3】実施例1に係る海藻養殖用井桁の斜視図及び海藻の成長を示す図。
【
図4】実施例2に係る洋上発電設備の全体構成を示す図。
【
図5】実施例3に係る洋上発電設備の全体構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の海藻牧場を設置する洋上発電設備に関する概念図である。
図1に示すように、本発明の洋上発電設備は、海上に浮かぶ浮体1、浮体1の上面に設置されている風力発電機2、風力発電機2で発電した電力を地上の各種設備3(例えば、陸上養殖・ふ化施設や漁港に付帯する施設)に電力を送る送電線4、浮体1の周囲に設置されている海藻牧場5、浮体1の近くに設置されている生簀6、浮体1の上面に設置されている自動給餌機7、風力発電機2で発電した電力を自動給餌機7に送る給餌用送電手段8及び海藻牧場5が設置されている海域に生息している複数種類の魚介類に時計、各種センサ及びメモリを有する小型記録計を取り付け、そのメモリに記録された時刻情報とセンサ情報(位置情報、水深情報、温度情報等)を解析するバイオロギングシステム(図示せず)を備えている。
【0017】
本発明の洋上発電設備は上記の構成を備えているため、次のような効果を奏する。
(1)浮体1の上面に設置されている風力発電機2で発電した電力を、地上の各種設備3に送電線4により送ることができ、グリーン電力(発電時に二酸化炭素を発生しない電力)で陸上養殖・ふ化施設や漁港に付帯する施設等を稼働させることができるので、それらの施設から得られる水産物等のエコブランド化を図ることができる。
(2)浮体1の周囲に海藻牧場5を備えているので、海藻を食い荒らすウニ(キタムラサキウニ等)のいない沖合で海藻を育てることができ、海藻牧場5で育てた海藻を海岸の近くにある藻場に移植することで、キタムラサキウニの生息密度が概ね5個体/m2以上になると発生するとされる磯焼けを解消することができる。
また、海岸付近にある藻場で捕獲した痩せウニを陸上養殖施設で畜養することによって、安定的な雇用を創出できるので、近隣漁業関係者の収入増につなげることができる。
(3)浮体1の近くに生簀6が設置され、浮体1に自動給餌機7及び風力発電機2で発電した電力を自動給餌機7に送る配電線8を備えているので、ほとんど人手をかけずに沖合養殖を行うことができ、洋上発電設備の浮体1を有効活用するとともに、風力発電機2で発電した電力を利用することによって、育てる漁業を発展させることができる。
また、点検作業用の船9に乗って風力発電機2の保守点検を行う際に、生簀6等の保守点検及び自動給餌機7への餌の補給を行うことができるので、人件費を抑制できる。
(4)バイオロギングシステムを備えているので、海藻牧場5が設置されている海域に生息している複数種類の魚介類の行動を解析することができる。
また、その解析結果に基づいて海藻牧場5の配置や水深を最適化でき、魚種別の魚道や生息域等の情報提供を行うことができる。その結果、海藻及び魚介類の生育環境が向上し、漁獲高も上昇するので、近隣漁業関係者の生活向上に貢献することができる。
以下、実施例によって本発明の実施形態を説明する。
【実施例0018】
図2は、実施例1に係る洋上発電設備の全体構成を示す図である。
なお、
図1と共通する構成については、
図1と同じ番号を用いて説明する。
実施例1に係る洋上発電設備は、
図2に示すように、以下の構成を備えている。
(1)長さ70~120m、海面上の高さ10~20m、水深10~20mの浮体1。
(2)浮体1の上面に設置されている風力発電機2(ロータ直径:200~250m)。
(3)海底に設置されている複数の浮体用アンカー10(ドラッグアンカー・パイルアンカー・サクションアンカー・重力式アンカーのいずれか)。
(4)浮体1と複数の浮体用アンカー10を繋ぐ浮体用係留索11。
(5)海上に浮かぶ複数のブイ12(直径:2~5m、通常は2~6個)。
(6)ブイ12の上面に掛け渡されているブイ接続板13(長さ:20~50m)。
(7)海底に設置されているブイ用アンカー14(ドラッグアンカー・パイルアンカー・サクションアンカー・重力式アンカーのいずれか)。
(8)ブイ12とブイ用アンカー14を繋ぐブイ用係留索15。
(9)浮体1から下方に延びる浮体側海藻用ロープ16。
(10)ブイ接続板13から下方に延び、2つに分岐しているブイ側海藻用ロープ17。
(11)海中において浮体側海藻用ロープ16及びブイ側海藻用ロープ17に接続されている海藻養殖用ロープ18。
なお、海藻養殖用ロープ18は、長さ100~200mのロープをストライプ状に並べ、両端及び途中の複数箇所に長さ20~50mの横桟を渡して構成されており、浮体1に最も近い浮体側横桟19の両端に2つの浮体側海藻用ロープ16が接続され、ブイ12に最も近いブイ側横桟20の両端にブイ側海藻用ロープ17が接続されている。また、浮体用係留索11を浮体側横桟19とその両端に接続されるチェーン21との間に貫通させ、2つのブイ用係留索15に沿ってスライドするループ部材(図示せず)をブイ側横桟20の両端に固定しているので、海藻養殖用ロープ18の位置を安定させることができる。
(12)浮体1の上面に設置され、2つの浮体側海藻用ロープ16をそれぞれ巻き取ることができる2つの浮体側巻取り機構22。
(13)ブイ接続板13の上面に設置され、ブイ側海藻用ロープ17を巻き取ることができるブイ側巻取り機構23。
(14)風力発電機2から浮体側巻取り機構22及びブイ側巻取り機構23に電力を送る巻取り用送電手段24。
(15)海中に浮かぶ球形の海中ブイ25(直径:2~5m)。なお、海中ブイ25の水深は、浅い場合でD1(5~10m)、深い場合でD2(15~20m)である。
(16)海底に設置されている海中ブイ用アンカー26(ドラッグアンカー・パイルアンカー・サクションアンカー・重力式アンカーのいずれか)。
(17)海中ブイ25と海中ブイ用アンカー26を繋ぐ海中ブイ用係留索27。
(18)海中ブイ用係留索27に接続されている海藻養殖用井桁28。
なお、海中ブイ用アンカー26を設置する場所は、浮体用アンカー10やブイ用アンカー14の近くであれば良いが、海中ブイ25、海中ブイ用係留索27及び海藻養殖用井桁28が、他の係留索やロープ等に絡んだりぶつかったりしない場所を選択する。
【0019】
実施例1に係る洋上発電設備は上記のように構成されているので、大きな面積の海藻牧場5を洋上発電設備に隣接して設置することができる。
また、海藻養殖用ロープ18は、長さ100~200m、幅20~50mの組合せの中から適宜選択できるので、海藻牧場5の大きさを自由に設定することができる。
さらに、浮体側巻取り機構22及びブイ側巻取り機構23によって、浮体側海藻用ロープ16及びブイ側海藻用ロープ17を巻き取ることができ、かつ、風力発電機2から各巻取り機構に電力を送る巻取り用送電手段24を備えているので、海藻養殖用ロープ18の水深を風力発電機2からの電力で作動する簡便な装置を用いて容易に変更できる。
そのため、養殖する海藻の種類に合った水深を選択して水温や光量を適切に調整でき、荒天時には水深を深くして海藻や海藻養殖用ロープ18等を保護することができ、天気が良く波の影響が少ない時には水深を浅くして海藻に十分な太陽光を届けることができ、保守点検時や海藻収穫時には水深をほぼ0として容易に作業を行うことができる。
【0020】
海藻養殖用ロープ18を用いて行う海藻の養殖について説明する。
海藻養殖用ロープ18を用いる養殖に適している海藻としては、ワカメ、アントクメ、マコンブ、オゴノリが挙げられる。これらの各海藻の特徴を説明すると、ワカメは、しなやかで波浪に強く種糸が入手しやすいので、特にロープ養殖に適している海藻である。そして、通常は11月に種苗巻き付け(刺し込み)を行い1~2月に収穫できる。
アントクメは、水深の深い所でも生育可能であり、長い茎を持たないのでロープ上でもストロンを伸ばし増殖する可能性が有る。また、種苗ではなく幼体をロープに巻いて養殖することも可能である。
マコンブは、各所でロープ養殖が行われているが、越夏できないため薄い早煮えコンブとして流通している。通常は10~11月に種付けし5月に収穫される。
オゴノリは、比較的静穏な汽水域に適しており、壱岐では商品として出荷されている。通常は春に成体の一部をロープに挟み秋までに収穫する。
【0021】
次に、海藻養殖用井桁28を用いて行う海藻の養殖について説明する。
図3は、実施例1に係る海藻養殖用井桁の斜視図及び海藻の成長を示す図である。
海藻養殖用井桁28を用いる養殖に適している海藻としては、アカモク、ノコギリモク、キレバモク、マジリモク等のホンダワラ類、カジメ、アラメ、クロメ、アントクメが挙げられる(アントクメはロープでも井桁でも養殖可能)。また、このような海藻養殖用井桁28を用いて海藻を養殖する場合は、
図3(A)のように、海藻養殖用井桁28の上面に種苗付着プレート29を固定し、種苗を種苗付着プレート29に植え付けて養殖する。
図3(B)はアカモクの成長の様子であり、上段に示すように種苗を種苗付着プレート29に植え付け、中段に示す幼体の状態を経て、下段に示す成体の状態に成長する。
上記各海藻の特徴を説明すると、アカモク等の1年生ホンダワラ類は、成体となってから刈り取り、海岸近くの浅い所に数株ずつ錘を付けて投入し、成熟卵を拡散させて、藻場を拡大するのに用いることができる。
ノコギリモク、キレバモク、マジリモク等の多年生ホンダワラ類は、ある程度成長した段階で種苗付着プレート29ごと岩場等に移植して、核となる藻場とすることもできる。
カジメ、アラメ、クロメは、10cm程度の幼体を種苗付着プレート29に接着して養殖することも可能であり、接着する時期としては付着器の活性が高い春が適している。
アントクメは、海水温が高くても繁殖する1年生海藻であり、伊豆半島ではカジメからアントクメに変わりつつある。そのため、海水温の高い海域での養殖に適している。
バイオロギングシステムは、特定の魚介類が経験している時系列の行動データを解析する魚介類行動解析手段であり、海藻牧場5が設置されている海域に生息している複数種類の魚介類に時計、各種センサ及びメモリを有する小型記録計を取り付けて放流し、再度捕獲した魚介類から小型記録計を取り出し、メモリに時刻毎に記録されているセンサ情報(位置情報、水深情報、温度情報等)を読み出して解析するシステムである。
バイオロギングシステムを利用すると、魚種別の魚道や生息域を特定することができるので、給餌時間や給餌量並びに海藻牧場5の配置や水深を変えて解析を繰り返すことにより、希望する魚介類の漁獲を行うのに適した給餌時間や給餌量並びに海藻牧場5の配置や水深を決定できる。そして、給餌時間や給餌量並びに海藻牧場5の配置や水深を最適化するとともに、魚種別の魚道や生息域等の情報提供を行うことによって漁獲高の上昇が見込めるので、近隣漁業関係者に喜ばれる洋上発電設備を提供することができる。
太陽光発電パネル30は、ブイ側巻取り機構23を作動させるための電力を発電する補助発電機であり、巻取り用補助送電手段31は、ブイ接続板13の上面に設置されている太陽光発電パネル30で発電した直流電力を蓄電する電池と、ブイ側巻取り機構23に適した電圧の交流電力に変換するDC/ACインバータを有している。
そして、ブイ側巻取り機構23を、ブイ接続板13の上面に設置されている太陽光発電パネル30からの電力で作動させることができるので、実施例1に係る洋上発電設備に設置されていた巻取り用送電手段24のうち、風力発電機2からブイ側巻取り機構23に電力を送る送電線をなくすことができ、送電線の断線等によるトラブルを回避できる。