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特開2024-134209操作システム及び操作システムの親機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134209
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】操作システム及び操作システムの親機
(51)【国際特許分類】
   H04Q 9/00 20060101AFI20240926BHJP
【FI】
H04Q9/00 301Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044403
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000201814
【氏名又は名称】双葉電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】高尾 晃
(72)【発明者】
【氏名】白石 崇也
(72)【発明者】
【氏名】小倉 誠
【テーマコード(参考)】
5K048
【Fターム(参考)】
5K048BA21
5K048DA02
5K048DC01
5K048EB02
5K048EB06
(57)【要約】
【課題】複数の子機の中の一つのみが操作権限を有し、単一の受信部を有する親機を備えた操作システムを提供すること。
【解決手段】操作システムは、識別番号を有し、操作情報を含む制御信号を送信する複数の子機TX-1 、TX-2 、TX-3 と、制御信号を受信して操作対象1を操作する親機RX を有する。親機は、子機の識別番号と、操作権限に紐付けられた特定識別番号を記憶する記憶部2と、単一の受信部5と、特定識別番号の子機から受信した制御信号の操作情報のみを操作対象に出力する制御部3を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固有の識別番号と操作対象の操作情報が含まれた制御信号を送信する複数の子機と、
前記子機からの制御信号を受信して操作対象に操作情報を送る親機を有し、
前記親機は、
複数の前記子機の識別番号と、操作対象の操作権限に紐付けられた1の識別番号である特定識別番号を記憶する記憶部と、
複数の前記子機から送信される制御信号を受信する単一の受信部と、
前記受信部が受信した制御信号のうち、特定識別番号を含む制御信号の操作情報を操作対象に出力する制御部と、
を有することを特徴とする操作システム。
【請求項2】
自己の識別番号が特定識別番号である前記子機が、自己の識別番号が特定識別番号でなくなることを求める放棄信号を前記親機に送信し、
自己の識別番号が特定識別番号でなない他の前記子機が、自己の識別番号が特定識別番号となることを求める要求信号を前記親機に送信したとき、
前記親機の前記制御部が、放棄信号と要求信号を解析して他の前記子機の識別番号を特定識別番号に設定することを特徴とする請求項1に記載された操作システム。
【請求項3】
自己の識別番号が特定識別番号である前記子機が、
自己の識別番号が特定識別番号でなくなることを求める放棄信号と、自己以外の他の特定の前記子機の識別番号が特定識別番号となることを求める要求信号を前記親機に送信したとき、
前記親機の前記制御部が、放棄信号と要求信号を解析して他の特定の前記子機の識別番号を特定識別番号に設定することを特徴とする請求項1に記載された操作システム。
【請求項4】
前記子機が、音声データを生成して前記親機に送信し、
前記親機の制御部が、前記子機から受信した音声データを他の前記子機に転送することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一つに記載の操作システム。
【請求項5】
操作対象を操作する操作システムの親機であって、
固有の識別番号と操作対象の操作情報が含まれた制御信号を送信する複数の子機の識別番号と、操作対象の操作権限に紐付けられた1の識別番号である特定識別番号を記憶する記憶部と、
複数の前記子機から送信される制御信号を受信する単一の受信部と、
前記受信部が受信した制御信号のうち、特定識別番号を含む制御信号の操作情報を操作対象に出力する制御部と、
を有することを特徴とする操作システムの親機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作対象を操作情報によって操作する親機と、操作情報を含む制御信号を親機に送信する複数の子機とによって構成される操作システムに係り、特に、親機は単一の受信部によって複数の子機と通信可能であるが、操作対象を操作できるのは操作権限を有する特定の子機のみであることを特徴とする操作システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には通信制御装置の発明が記載されている。この通信制御装置は、複数の送信装置に対応して設けられ、各送信装置からの操作信号をそれぞれ受信する複数の受信装置と、操作信号に基づいて駆動対象の制御を行う駆動制御装置を備えている。さらに、駆動制御装置と複数の受信装置の間には、切替処理部が設けられており、この切替処理部は、複数の受信装置から入力した操作信号のうちの何れかから他の操作信号へと切り替える処理を行うことができる。この発明によれば、複数の送信装置によって共通のラジオコントロール模型を交替で操作可能にする際の安全性を向上させることができるものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017―192493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示された通信制御装置の発明によれば、複数の送信装置と複数の受信装置が1対1で対応しており、送信装置及び受信装置の組は、他の組と周波数や変調方式等が全く異なっていても問題はなく、送信装置から送られる操作信号によって切替処理部が何れかの組を選択することで、共通のラジオコントロール模型を複数の送信装置によって交替で操作することができる。
【0005】
しかしながら、複数の送信装置と複数の受信装置が1対1で対応するシステム構成であり、複数の送信装置の各々に対応して複数の受信装置を用意する必要があるため、ラジオコントロール模型に搭載する受信装置及びこれに関連する部品が多く、その搭載スペースの確保や配線の引き回しが難しいという問題があり、後から送信装置を増やすことも困難であった。
【0006】
本発明は、以上説明した従来の技術の課題を解決するためになされたものであって、親機は単一の受信部によって複数の子機と通信できる簡素かつ安価な構成であるが、操作対象を操作できるのは操作権限が与えられた特定の子機のみである安全かつ使い勝手のよい操作システムと、係る操作システムにおける単一の受信部を備えた親機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載された操作システムは、
固有の識別番号と操作対象の操作情報が含まれた制御信号を送信する複数の子機と、
前記子機からの制御信号を受信して操作対象に操作情報を送る親機を有し、
前記親機は、
複数の前記子機の識別番号と、操作対象の操作権限に紐付けられた1の識別番号である特定識別番号を記憶する記憶部と、
複数の前記子機から送信される制御信号を受信する単一の受信部と、
前記受信部が受信した制御信号のうち、特定識別番号を含む制御信号の操作情報を操作対象に出力する制御部と、
を有することを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載された操作システムは、請求項1に記載された操作システムにおいて、
自己の識別番号が特定識別番号である前記子機が、自己の識別番号が特定識別番号でなくなることを求める放棄信号を前記親機に送信し、
自己の識別番号が特定識別番号でなない他の前記子機が、自己の識別番号が特定識別番号となることを求める要求信号を前記親機に送信したとき、
前記親機の前記制御部が、放棄信号と要求信号を解析して他の前記子機の識別番号を特定識別番号に設定することを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載された操作システムは、請求項1に記載された操作システムにおいて、
自己の識別番号が特定識別番号である前記子機が、
自己の識別番号が特定識別番号でなくなることを求める放棄信号と、自己以外の他の特定の前記子機の識別番号が特定識別番号となることを求める要求信号を前記親機に送信したとき、
前記親機の前記制御部が、放棄信号と要求信号を解析して他の特定の前記子機の識別番号を特定識別番号に設定することを特徴としている。
【0010】
請求項4に記載された操作システムは、請求項1乃至3の何れか一つに記載の操作システムにおいて、
前記子機が、音声データを生成して前記親機に送信し、
前記親機の制御部が、前記子機から受信した音声データを他の前記子機に転送することを特徴としている。
【0011】
請求項5に記載された親機は、操作対象を操作する操作システムの親機であって、
固有の識別番号と操作対象の操作情報が含まれた制御信号を送信する複数の子機の識別番号と、操作対象の操作権限に紐付けられた1の識別番号である特定識別番号を記憶する記憶部と、
複数の前記子機から送信される制御信号を受信する単一の受信部と、
前記受信部が受信した制御信号のうち、特定識別番号を含む制御信号の操作情報を操作対象に出力する制御部と、
を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載された操作システム及び請求項5に記載された操作システムの親機によれば、一又は複数の子機から送信された制御信号は、親機の単一の受信部に受信されるが、受信した制御信号のうち、操作対象の操作権限を付与された特定の子機から送信される制御信号に含まれている操作情報のみが、制御部を介して操作対象に与えられ、操作対象の操作に使用される。すなわち、子機ごとに固有である識別番号と、操作対象を操作するための操作情報を含む制御信号が、子機から親機に対して送信されると、親機の制御部は、受信した制御信号に含まれる子機の識別番号が記憶部に予め記憶された識別番号であるか否かを確認し、また当該識別番号が操作対象の操作権限に紐付けられた特定識別番号であるか否かを確認する。当該識別番号が予め記憶された識別番号であり、かつ当該識別番号が特定識別番号であることが確認された場合には、親機の制御部は、この制御信号に含まれる操作情報を操作対象に出力して操作対象を操作する。子機の数を増やす場合には、当該子機の識別番号を、親機の記憶部に新たに記憶させればよい。
【0013】
請求項2に記載された操作システムによれば、現に操作権限を有する子機からの求めと、操作権限を欲する他の子機からの求めにより、操作対象の操作権限を他の子機に委譲することができる。まず、現に操作権限を有する子機が放棄信号を親機に送信し、操作権限を持たない他の子機が要求信号を親機に送信する。放棄信号には、現に操作権限を有する子機の識別番号、すなわち特定識別番号の情報が含まれる。要求信号は、子機が、自らが新たな操作権限の主体となることを要求する信号であり、他の子機の識別番号の情報が含まれる。親機の制御部は、これらの信号を単一の受信部で受信する。親機の制御部は、放棄信号に含まれる識別番号が特定識別番号であることを確認し、要求信号に含まれる識別番号が予め記憶部に記憶された識別番号であることを確認すると、現在の特定識別番号が通常の識別番号となり、要求信号に含まれる識別番号が特定識別番号となるように、記憶部の記憶内容を更新する。
【0014】
請求項3に記載された操作システムによれば、現に操作権限を有する子機からの要求のみにより、操作対象の操作権限を他の子機に委譲することができる。まず、現に操作権限を有する子機が、放棄信号と要求信号を親機に送信する。放棄信号には、現に操作権限を有する子機の識別番号、すなわち特定識別番号の情報が含まれる。要求信号には、他の子機の識別番号の情報が含まれる。なお、放棄信号と要求信号は、信号として別々に送信されるものであってもよいし、一体に送信されるものであってもよい。親機の制御部は、これらの信号を単一の受信部で受信する。親機の制御部は、放棄信号に含まれる識別番号が特定識別番号であることを確認し、要求信号に含まれる識別番号が予め記憶部に記憶された識別番号であることを確認すると、現在の特定識別番号が通常の識別番号となり、要求信号に含まれる識別番号が特定識別番号となるように、記憶部の記憶内容を更新する。
【0015】
請求項4に記載された操作システムによれば、子機を操作しているユーザーが自分の子機に対して音声を発すると、当該子機は、当該音声から音声データを生成して親機に送信する。その際、音声データは制御信号に載せて送信することができるが、制御信号とは別に音声データのみで送信してもよい。親機の制御部は、受信した音声データを他の子機に転送するので、他の子機のユーザーは当該音声を聞くことができる。操作対象が現に操作されて動作している途中で操作権限を委譲するような場合であっても、複数の子機をそれぞれ操作する複数のユーザーは、同時的に会話し、声を掛け合いながら権限委譲のタイミングを図れるため、操作権限の委譲を受けたユーザーが委譲に気付かずに操作対象が制御されない状態に陥る等の不都合な事象は発生しにくく、作業中の危険を未然に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態の操作システムの概略と、操作権限を有する子機の切り替えを示す模式図である。
図2】実施形態の操作システムにおける親機の構成の詳細を示す機能ブロック図である。
図3】実施形態の操作システムにおける子機の構成の詳細を示す機能ブロック図である。
図4】実施形態の操作システムによって操作対象であるクレーンを操作する状況を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態を図1図4を参照して説明する。
図1は、実施形態の操作システムにおいて、操作対象の操作権限を有する子機の切り替えの概要を示す模式図であり、まず同図を参照して操作システムの概要を説明する。なお、ここで「操作」とは、所定の目的を達成するように対象物を動作させることを意味する。本例の操作対象としては、一例としてクレーンを例示しているので、クレーンの「操作」とは「操縦」と略同様の意味である。
【0018】
図1に示すように、この操作システムは、複数(図示例では3台)の子機TX-1 、TX-2 、TX-3 と、これらの子機TX-1 、TX-2 、TX-3 と相互に通信を行える1台の親機RX を備えている。1台の子機は、通常は一人のユーザー(操作者、又は操縦者)が所持して操作する。各子機TX-1 、TX-2 、TX-3 は、それぞれ固有の識別番号を有しており、後に詳述するように、その識別番号と、操作対象であるクレーン1を操作するための操作情報を含む制御信号を親機RX に対して送信することができる。前記親機RX は、クレーン1に搭載され、かつクレーン1の駆動機構に接続されており、子機TX-1 、TX-2 、TX-3 からの制御信号を受信し、操作権限を有する子機からの制御信号に含まれる操作情報のみをクレーン1の駆動機構に送り、これを操作する。
【0019】
また、図1に示す操作システムでは、操作権限を有する子機は1台のみである。左側の第1の状態では、子機TX-1 のみが操作権限を有している。すなわち、クレーン1の操作情報を含む制御信号に関しては、双方向の矢印で示すように、この子機TX-1 のみが親機RX と相互通信の状態を確立し、維持している。そして、この操作システムでは、右側の第2の状態に示すように、操作権限を有する子機を、左側の第1の状態において操作権限を有していた子機TX-1 から、第1の状態では操作権限を有していなかった子機TX-3 へと切り替えることができる。
【0020】
次に、図2及び図3を参照して操作システムの詳細を説明する。
図2は、操作システムにおける親機RX の構成の詳細を示す機能ブロック図である。親機RX は、記憶部2と、制御部3と、送信部4と、単一の受信部5と、アンテナ6を有している。記憶部2と送信部4と受信部5は、制御部3に接続されている。アンテナ6は、送信部4と受信部5の何れかに切り替え手段7を介して接続される。
【0021】
親機の記憶部2は不揮発性メモリで構成されており、親機の識別番号(親ID)と、複数台(例示ではn台)の子機の識別番号(子ID1 …子IDn )が記憶されている。なお、新たにn+1台目の子機を追加する場合には、当該子機の識別番号(図示例に倣えば子IDn+1 )を記憶させることができる。また、記憶済みの子機の中で故障等の理由により使用しないものが発生し、これを排除したい場合には、当該子機の識別番号を記憶部2から削除することができる。
【0022】
また、図1中には示していないが、操作対象であるクレーン1の操作権限に紐付けられた一つの識別番号が、特定識別番号として記憶部2に記憶されている。特定識別番号は、次のように決定され、記憶部2に記憶される。親機RX は、クレーン1が稼働状態となった場合には、特に電源スイッチを操作することなく、クレーン1側に連動してその電源がONとなり、さらに電源がONとなった親機RX は、自動的に、各子機との接続を求める初期接続要求信号を子機ごとに順に送信するようになっている。初期接続要求信号には、少なくとも初期接続要求である旨を示す情報と、親機の識別番号(親ID)と、当該子機の識別番号(例えば子ID1 )が含まれている。初期接続要求信号を受信し、電源がONとなった子機(又はその後でユーザーが所定の応答動作を行った子機)は、親機RX に応答信号を送信する。応答信号には、少なくとも初期接続要求に応答する信号である旨を示す情報と、自己の識別番号が含まれている。親機RX は、初期接続要求信号の送信を始めてから、最初に受信した応答信号を送信した子機の識別番号を特定識別番号として記憶部2に記憶する。なお、特定識別番号が決定されると、親機RX は、特定識別番号となった子機の識別番号と、当該識別番号が特定識別番号となった旨を示す情報を、全ての子機に対して送信する。これらの情報は各子機の表示部16(図3参照)に表示されるので、現在の操作権限が何れの子機にあるかが全てのユーザーに一目瞭然となる。なお、最初から、任意の子機の識別番号を特定識別番号として記憶部2に記憶させておいてもよい。なお、以上の初期接続要求信号の説明では、親機RX は、信号を子機ごとに順に送信するユニキャスト通信を行っていたが、全子機を対象として必要な情報を送信するブロードキャスト通信を行ってもよい。
【0023】
親機RX の制御部3は、受信データ解析部8と、権限切替部9と、音声データ転送部10と、送信データ生成部11を有している。
受信データ解析部8は、アンテナ6及び受信部5で受信した子機からの信号を解析し、その信号に含まれるデータの目的に応じて当該データを必要な送り先へ供給する。
まず、受信した信号が、送信元である子機の識別番号と、クレーン1を操作するための操作情報とを含む制御信号である場合、受信データ解析部8は、記憶部2に記憶されている操作権限に紐付けられた識別番号(すなわち特定識別番号)を参照して、受信した制御信号に含まれる識別番号が特定識別番号であるか否かを調べる。当該識別番号が特定識別番号でない場合には、受信した制御信号は操作権限のない子機からの信号であるとして破棄する。また、当該識別番号が特定識別番号である場合には、受信した制御信号に含まれる操作信号をクレーン1の駆動機構に送る。
【0024】
次に、受信した信号が、子機の音声入力部19(図3参照。後に説明する。)から入力された音声の音声データと、当該子機の識別番号を含むデータ信号である場合、又は音声データが付加された制御信号である場合には、受信データ解析部8は、記憶部2に記憶されている識別番号を参照して送信元の子機を特定し、音声データ転送部10により、信号中に含まれる音声データを送信データ生成部11に送る。送信データ生成部11は、当該音声データから送信データを生成し、送信元の子機以外の子機に当該音声の送信データを送信する。これにより、クレーン1の操作中、操作権限のある子機を操作しているユーザーが自分の子機に対して音声を発すると、他のすべての子機の各ユーザーは当該音声を聞くことができる。また、操作権限のない子機を操作しているユーザーが、自分の子機に対して音声を発すれば、操作権限を有する子機のユーザーを含む他のすべての子機の各ユーザーに音声で情報を伝達することもできる。従って、クレーン1の操作中に操作権限の委譲を行う場合、ユーザー相互の意思疎通が確実にできるため安全である。
【0025】
次に、受信した信号が、操作権限の委譲に関する信号である場合を説明する。操作権限の委譲については、後で子機の説明においても触れるが、実施形態における操作権限の委譲には大きく分けて2つの態様がある。
【0026】
第1の態様では、操作権限を有する子機のユーザーが、操作権限を放棄する放棄信号を親機RX に送信し、操作権限を持たない子機のユーザーが、操作権限を求める要求信号を親機RX に送信する。放棄信号には、少なくとも操作権限を放棄する旨を示す情報と、現に操作権限を有する子機の識別番号、すなわち特定識別番号の情報が含まれる。要求信号には、少なくとも操作権限を取得したい旨を示す情報と、当該他の子機の識別番号の情報が含まれる。要求信号が親機RX に送信された場合、親機RX は、要求信号を送信してきた子機の識別番号を含む通知信号を、操作権限を有する子機に送信する。親機RX の制御部3の権限切替部9は、受信した信号が放棄信号であり、またこれに含まれる識別番号が特定識別番号であることを確認するとともに、受信した信号が要求信号であり、またこれに含まれる識別番号が予め記憶部2に記憶された識別番号であることを確認すると、現在の特定識別番号を通常の識別番号とし、要求信号に含まれる識別番号を特定識別番号とするように、記憶部2の記憶内容を更新する。また、権限切替部9は、送信データ生成部11に権限委譲に関する必要な情報を送って権限委譲に関する送信データを生成させる。送信データ生成部11は、新たに操作権限を取得した子機の識別番号を含む送信データを生成し、送信部4及びアンテナ6により、全ての子機に通知信号として送信する。
【0027】
第2の態様では、操作権限を有する子機のユーザーが、放棄信号と、新たな操作権限の主体として他の子機を指名する要求信号を、同時に親機RX に送信する。放棄信号には、少なくとも操作権限を放棄する旨を示す情報と、現に操作権限を有する子機の識別番号、すなわち特定識別番号の情報が含まれる。要求信号には、少なくとも他の子機に操作権限を取得させたい旨を示す情報と、当該他の子機の識別番号の情報が含まれる。なお、放棄信号と要求信号は別々に送信する2つの信号でなくてもよく、その名称に関わらず、必要な情報を含む一連のデータを送信するものであってもよい。親機RX の制御部3の権限切替部9は、放棄信号に含まれる識別番号が特定識別番号であることを確認し、要求信号に含まれる識別番号が予め記憶部2に記憶された識別番号であることを確認すると、現在の特定識別番号を通常の識別番号とし、要求信号に含まれる識別番号を特定識別番号とするように、記憶部2の記憶内容を更新する。また、権限切替部9は、送信データ生成部11に権限委譲に関する必要な情報を送って権限委譲に関する送信データを生成させる。送信データ生成部11は、新たに操作権限を取得した子機の識別番号を含む送信データを生成し、送信部4及びアンテナ6により、全ての子機に通知信号として送信する。
【0028】
なお、操作権限が移動する第3の態様を設けてもよい。この態様では、操作権限を有する子機のユーザーが操作権限を放棄する放棄信号を親機RX に送信していない状況下において、操作権限を持たない他の子機のユーザーが、単独で操作権限を求める要求信号を親機RX に送信する。この場合、親機RX は、要求信号を受信すると、要求信号を送信してきた子機が記憶部2に予め記憶された識別番号の子機であることを確認した上で、操作権限を有する子機に対して操作権限を放棄するか否かの確認信号を送る。操作権限を有する子機から正規の放棄信号が送られれば、第1及び第2の態様と同様に、親機RX は操作権限を新たな子機に委譲する動作を行い、委譲の結果は、第1及び第2の態様と同様に全ての子機に通知信号として送信される。
【0029】
なお、操作権限を持つ子機がない場合であっても、基本的に問題は生じない。このような場合、クレーン1は何れの子機からも操作情報を得られないため、動作を停止することになるが、地上に設置されて作業を行うクレーン1という機械の性質上、停止することで問題が発生することはないからである。仮に、操作対象がドローンのような飛行機械であり、これが現に飛行中であると、何れの子機からも操作情報を得られない場合には、飛行を安全に継続させるため、操作の中断が生じないように自動運転装置等を設けておく必要がある。
【0030】
なお、親機RX は、操作権限の移動がない場合であっても、操作権限を持つ子機の識別番号を通知する通知信号、また操作権限の委譲について放棄又は要求等の意思があるか否かを問い合わせる確認信号を、各子機に定期的に送信している。また、親機RX は、各子機に対し、クレーン1の状態を示す情報を送信データ生成部11で生成し、クレーン状態信号として常時送信している。
【0031】
図3は、操作システムにおける子機TX-1 の構成の詳細を示す機能ブロック図である。なお、この実施形態では、図1に示したように3台の子機TX-1 X-2 X-3 を用いることとしており、図3では子機にTX-1 の符号を付したが、他の子機TX-2 、TX-3 も構成は同一である。
【0032】
子機TX-1 は、記憶部12と、制御部13と、送信部14及び受信部15と、表示部16及び入力部17と、アンテナ18と、音声入出力部19を有している。制御部13以外の構成各部分は、以下に説明するように何れも制御部13と接続されており、アンテナ18は、送信部14と受信部15の何れかに切り替え手段20を介して接続される。
【0033】
記憶部12は、不揮発性メモリからなる第1記憶部12aと、揮発性メモリからなる第2記憶部12bで構成されている。第1記憶部12aには、親機の識別番号(親ID)と、自らの識別番号(自ID)が予め記憶されている。第2記憶部12bには、自分以外の子機の識別番号(子ID1 ~子IDn-1 )が記憶されている。電源を入れた子機TX-1 が、親機RX から送られてくる初期接続要求信号を受信すれば、後述する受信データ解析部21が、受信したデータから他の子機の識別番号を抽出して第2記憶部12bに記憶させる。この第2記憶部12bの記憶内容は、当該子機TX-1 の電源をOFFにすると消滅する。なお、親機RX から子機TX-1 に送られる信号の方式がユニキャストであるかブロードキャストであるかに関わらず、各子機TX-1 は、受信データ解析部21の上記作用により、電源がONとなり、親機RX からの送信を受ける度に、他の子機の識別番号を記憶することができる。
【0034】
子機TX-1 の制御部13は、送信データ生成部22と、受信データ解析部21を有している。
入力部17は、送信データ生成部22に接続されている。入力部17は、ユーザーの操作により、クレーン1の操作情報、操作権限の放棄、操作権限を放棄する場合の操作権限の委譲先の指定、操作権限を持たない場合に行う操作権限の要求、さらにその他必要な情報の入力を行うことができる。
【0035】
送信データ生成部22は、クレーン1の操作情報を入力部17から受け取ると、第1記憶部12aにある自分の識別番号を操作情報に加えて送信データを生成し、これを送信部14に送る。送信部14は、これを制御信号としてアンテナ18から親機RX に送信する。なお、この場合、当該識別番号が特定識別番号として親機RX の記憶部12に記憶されていなければ、親機RX は、これを受信しても破棄してしまう。
【0036】
送信データ生成部22は、操作権限の放棄の情報を受け取ると、第1記憶部12aにある自分の識別番号を当該情報に加えて送信データを生成し、これを送信部14に送る。送信部14は、これを放棄信号としてアンテナ18から親機RX に送信する。この場合、送信データ生成部22が、放棄した操作権限の委譲先を指定する情報を入力部17から受け取っている場合には、第1記憶部12aにある指定した子機の識別番号を当該情報に加えて送信データを生成し、これを送信部14に送る。送信部14は、これを要求信号としてアンテナ18から親機に送信する。先に説明したように、放棄信号と要求信号は一連の信号として送信してもよい。
【0037】
受信部15は、親機RX から種々の信号を受信し、受信データ解析部21に送る。
受信データ解析部21は、受信した親機RX からの信号を解析する。まず、受信データ解析部21は、受信した信号に含まれる宛先の子機の識別番号を、第1記憶部12aに記憶されている自分の識別番号と比較して、当該信号が自分宛ての信号であるか否かを確認する。次に受信した信号に含まれる送信元の親機の識別番号を、第1記憶部12aに記憶されている正規の親機RX の識別番号と比較し、当該信号が正規の親機RX からの信号であるか否かを確認する。
【0038】
受信データ解析部21は、以上のようにして、受信した信号が正規の親機RX から自分に宛てて送信されたものであることを確認すると、その信号に含まれるデータの目的に応じて当該データを必要な送り先へ供給する。
【0039】
まず、受信した信号が、現在時点で操作権限を持つ子機の識別番号を通知する通知信号である場合、受信データ解析部21は、送られた情報を表示部16に送り、操作権限を保有している子機の識別番号を表示部16に表示させる。また、受信した信号が、操作権限を求める要求信号を送信している子機の識別番号を通知する通知信号である場合、受信データ解析部21は、操作権限を要求している子機の当該識別番号を表示部16に表示させる。また、受信した信号が、操作権限に関して放棄又は要求等の意思があるか否かを各子機に問い合わせる定期的な確認信号である場合は、受信データ解析部21は、表示部16にその旨を表示させる。また、受信した信号が、クレーン状態信号である場合は、受信データ解析部21は、クレーン1の作動状態等を表示部16に表示させる。このように、本操作システムによれば、操作権限がどの子機にあるのか、どの子機が権限を欲しているのか、クレーン1の状態はどうなっているか、といった種々の情報を各子機において表示部16で表示することができるため、各子機を操作する各ユーザーは本操作システム及びクレーン1の全体の状態を容易に把握することができる。これは、クレーン作業をする上で大変便利であり、かつ作業の安全に資するものである。
【0040】
音声入出力部19は、送信データ生成部22と受信データ解析部21に接続されており、各子機のユーザーは、以下に説明するように、親機RX を介して他の子機のユーザーと同時通話することができる。音声入出力部19には、ヘッドフォンとマイクから構成されるヘッドセット23が接続されており、この子機TX-1 を操作しているユーザーがこれを装着する。ユーザーがヘッドセット23のマイクに向けて発声すると、その音声は送信データ生成部22に送られる。送信データ生成部22は音声データを生成する。音声データは制御信号に載せられて送信部14からアンテナ18を介して親機RX に送信される。前述したように、親機RX の制御部3(図2参照)は、受信した音声データを音声データ転送部10によって他の子機に転送する。各子機では、受信した制御信号中に音声データが含まれている場合には、受信データ解析部21がこれを音声入出力部19に送るので、ユーザーはヘッドセット23のヘッドフォンで他のユーザーの音声を聞くことができる。
【0041】
図4は、本実施形態の操作システムによってクレーン1を操作する現場の状況を模式的に示す図である。この現場では、地上に設置された壁Wの一方側(壁の右側)にクレーン1を設置し、このクレーン1によって壁Wの一方側で荷物を吊り上げ、壁Wの他方側(壁Wの左側)に吊り下ろす作業を行う。このような作業では、壁Wの一方側にクレーン1を配置し、クレーン1と同じ側にクレーン1を操作する操作端末を保持したオペレータを配置することが多いが、これでは荷物の吊り下げ位置が壁Wの向こう側で見えないため、作業に危険が生じる可能性がある。壁Wの他方側に監視員を配置し、オペレータと通話しながら作業を行っても、監視員の言葉のみでオペレータが吊り下げ位置の状況を完全に把握できるものではなく、作業の不確かさには大差がない。そこで、クレーン1のブーム1aの先端にカメラを取り付けて吊り下げ位置の状況を確認することも考えられるが、カメラの画像データをオペレータの操作端末に無線で送る手法には、次のような問題点がある。まず、広く用いられている手法として、国際標準規格を使用した電子デバイス間の相互接続方式をカメラと操作端末の接続に使用すると、手軽であり費用も低廉で済むが、通信速度に難があり、操作端末に画像データが届くまでに時間差があるため、安全作業には適さないという問題がある。また、例えば5GHz帯を伝送周波数に使用してフルHDの画質を伝送できる画像データ送受信装置も知られているが、このようなシステムは実質的にデータ転送の遅延は無いが、高額であるため費用の面で容易には採用できないという問題がある。
【0042】
本実施形態の操作システムは、上述したような現場には最適である。具体的には、図4に示すように、壁Wの両側に、それぞれ1名以上のオペレータP1、P2を配置し、それぞれ操作用の子機TX-1 、TX-2 を持たせる。壁Wの一方側のオペレータP1は、クレーン1に登載された親機RX に操作権限のある子機TX-1 で制御信号を送り、クレーン1で荷物を吊り上げ、壁Wを越えるまで荷物を移動させる操作を行う。荷物が壁Wを越えた後は、壁Wの他方側のオペレータP2は、オペレータP1から操作権限の委譲を受け、クレーン1に登載された親機RX に子機TX-2 で制御信号を送り、クレーン1を操作して荷物を壁Wの他方側の所定位置に吊り下ろす。操作権限の委譲は、互いに子機TX-1 と子機TX-2 の間でオペレータP1、P2同士が適宜声を掛け合いながら行うので、作業の停滞もなく、能率的で安全な作業を行うことができる。さらに、本操作システムは、子機を増やした場合にも親機RX の側で受信機を増設する必要がない。従って、親機RX は、増設する受信機や、配線の引き回しに要するスペースを気にする必要がないため安価であり、高額な費用はかけられない現場にとっては最適である。
【0043】
以上説明したクレーン1の操作システムでは、親機と子機の通信は無線で行った。しかしながら、親機と子機の通信媒体は電波に限らない。例えば、親機と、複数の子機とを有線で接続して上述した実施形態と同様の作用、効果を得る構成とすることもできる。例えば鉄工所などのように多くの無線機器を持ち込んで使用すると干渉が発生する可能性がある現場では、本発明の操作システムとしては、親機と複数の子機を有線で接続した実施形態の方が好ましい。
【符号の説明】
【0044】
1…操作対象であるクレーン
(親機の構成)
X …親機
2…記憶部
3…制御部
4…送信部
5…受信部
6…アンテナ
7…切り替え手段
8…受信データ解析部
9…権限切替部
10…音声データ転送部
11…送信データ生成部
(子機の構成)
X-1 、TX-2 、TX-3 …子機
12…記憶部
12a…第1記憶部
12b…第2記憶部
13…制御部
14…送信部
15…受信部
16…表示部
17…入力部
18…アンテナ
19…音声入出力部
20…切り替え手段
21…受信データ解析部
22…送信データ生成部
23…ヘッドセット
図1
図2
図3
図4