(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134218
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】誘導システム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20240926BHJP
G08G 1/123 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
G08G1/00 X
G08G1/123 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044415
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 拓
(72)【発明者】
【氏名】板東 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 貴廣
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181AA27
5H181BB04
5H181BB05
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF13
5H181FF27
5H181FF33
(57)【要約】
【課題】ユーザが容易な手順にて所望の到着地点を指示し、当該到着地点に高精度にモビリティを誘導することを可能とする誘導システムを提供する。
【解決手段】ユーザが保持する端末、及び移動体への移動指令を生成する制御装置を有する誘導システムであって、端末は移動体の目標到着地点の位置を示す到着地点位置情報と、目標到着地点において取得可能な周辺環境の情報である到着地点周辺環境情報とを制御装置に送信し、制御装置は、到着地点位置情報に基づいて、目標到着地点の近傍に移動体を接近させ、移動体に搭載したセンサーによって取得した、該移動体の周辺環境の情報である移動体周辺環境情報と、到着地点周辺環境情報とを照合して、移動体と目標到着地点間の変位を求め、変位に基づいて移動体を目標到着地点に誘導する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが保持する端末、及び移動体への移動指令を生成する制御装置を有する誘導システムであって、
前記端末は、前記移動体の目標到着地点の位置を示す到着地点位置情報と、前記目標到着地点において取得可能な周辺環境の情報である到着地点周辺環境情報とを前記制御装置に送信し、
前記制御装置は、
前記到着地点位置情報に基づいて、前記目標到着地点の近傍に前記移動体を接近させ、
前記移動体に搭載したセンサーによって取得した、該移動体の周辺環境の情報である移動体周辺環境情報と、前記到着地点周辺環境情報とを照合して、前記移動体と前記目標到着地点間の変位を求め、
前記変位に基づいて前記移動体を前記目標到着地点に誘導する、
ことを特徴とする誘導システム。
【請求項2】
請求項1に記載の誘導システムであって、
前記端末は、取得した前記到着地点周辺環境情報が所定の品質未満である場合に、前記ユーザに対して前記到着地点周辺環境情報の再取得を促す指示を行う、
ことを特徴とする誘導システム。
【請求項3】
請求項1に記載の誘導システムであって、
前記到着地点周辺環境情報は画像または3D形状データもしくはその両方である、
ことを特徴とする誘導システム。
【請求項4】
請求項1に記載の誘導システムであって、
前記到着地点周辺環境情報は電波または音波に関する情報である、
ことを特徴とする誘導システム。
【請求項5】
請求項1に記載の誘導システムであって、
前記端末は自ら発した音、光、または電波の情報を前記到着地点周辺環境情報とする、
ことを特徴とする誘導システム。
【請求項6】
請求項1に記載の誘導システムであって、
前記端末は、前記ユーザへの情報の呈示および、情報の入力を可能とする情報呈示部を有する、
ことを特徴とする誘導システム。
【請求項7】
請求項1に記載の誘導システムであって、
前記制御装置は、前記到着地点位置情報に基づく前記目標到着地点への移動開始後または前記到着地点周辺環境情報と前記移動体周辺環境情報との照合開始から一定期間経過後に、前記ユーザが保持する端末に、単一または複数の到着可能地点の情報を送信し、前記ユーザが選択した前記到着可能地点に前記移動体を誘導する、
ことを特徴とする誘導システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザの所在地にモビリティを誘導する誘導システムに関する。
【背景技術】
【0002】
貨物の配送や迎車等、ユーザの所在地に、モビリティを誘導したいという需要が存在する。一方で従来、ユーザが貨物の配送や迎車を依頼する場合、ユーザが自身の所在地を伝えて、当該地点にモビリティを誘導することは困難であるために、ユーザはモビリティの運行者に住所や付近の顕著なランドマーク等の到着地点を伝えてモビリティを当該到着地点へ誘導し、自身も当該到着地点へ移動することが一般的であった。そのため、例えばユーザが自身の所在地の住所を把握していない場合や、周辺に顕著なランドマーク等が存在しない場合、モビリティに到着地点を指示し、誘導することは困難であった。
【0003】
なお、ユーザの希望する地点へモビリティを誘導する従来技術として、特許文献1が存在する。当該文献においては、ドローンの着陸を希望する到着地点に複数の発光素子を有する着陸用ターゲットを設置しておき、ドローンは当該到着地点周辺の上空に接近したのちに前記着陸用ターゲットをドローンに搭載されたセンサーで認識することで、前記着陸用ターゲット上にドローンを誘導する誘導システムを提案している。当該発明によれば、ユーザは自身の希望する到着地点の緯度・経度などの情報を低精度に誘導システムに指示して到着地点周辺の上空にドローンを誘導したうえで、所望の到着地点に前記着陸用ターゲットを設置することで、周辺に顕著なランドマーク等の存在しない地点であっても、ドローン等のモビリティを正確に誘導することが可能となる。
【0004】
しかし、特許文献1に記載の発明は専用の着陸用ターゲットを必要とするため、ユーザが日常生活のなかで、その時々に希望する地点にモビリティを誘導するという目的を実現するためには、着陸用ターゲットを常に携帯する必要があり、現実的に困難である。
【0005】
また、ユーザが希望する地点へモビリティを誘導する従来技術として、特許文献2が存在する。当該文献においては、ユーザが自身の所持する端末にて、ドローンの着陸を希望する地点の地面画像を撮影すると、処理装置が当該画像を元に、当該地点上空を飛行するドローンから撮影した場合に相当する仮想ドローン画像を生成するとともに、当該仮想ドローン画像と実際に飛来したドローンの撮影した画像を比較し、その差分を元にドローンを誘導する手法を提案している。当該発明によれば、ユーザは専用の装置を持たずスマートホン等の自身の保有する端末によって、任意の着陸地点を指示し、誘導することが可能となる。
【0006】
しかし、一般的にモビリティの着陸を希望する床面は、同一のパターンが連続するタイル状のテクスチャとなっていたり、アスファルトや砂地のような特徴点の抽出・マッチングが困難となっている箇所であることが多く、当該発明を用いた場合、仮想ドローン画像と実際に飛来したドローンの撮影した画像を元に、差分を検出することが困難となることが予想される。また、本手法は鉛直上方から着陸してくるドローンの挙動に限定されたものであり、例えば地上を走行するロボットの到着地点への誘導に適用した場合、モビリティが当該到着地点にアプローチしてくる方向は不明であり、従ってモビリティが希望地点に接近した際に取得可能な視野を想定した仮想ドローン画像に類する画像を生成することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5775354号明細書
【特許文献2】国際公開2021/124826号公報
【特許文献3】米国特許第6711293号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、ユーザにとって容易な手順にて所望の到着地点を指示するとともに、当該到着地点に高精度かつ確実にモビリティを誘導するシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る誘導システムは、ユーザが保持する端末、及び移動体への移動指令を生成する制御装置を有する誘導システムであって、端末は、移動体の目標到着地点の位置を示す到着地点位置情報と、目標到着地点において取得可能な周辺環境の情報である到着地点周辺環境情報とを制御装置に送信し、制御装置は、到着地点位置情報に基づいて、目標到着地点の近傍に移動体を接近させ、移動体に搭載したセンサーによって取得した、該移動体の周辺環境の情報である移動体周辺環境情報と、到着地点周辺環境情報とを照合して、移動体と目標到着地点間の変位を求め、変位に基づいて移動体を目標到着地点に誘導する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ユーザは容易な手順にて所望の到着地点を指示し、当該到着地点に高精度にモビリティを誘導することが可能となる。
本発明に関連する更なる特徴は、本明細書の記述、添付図面から明らかになるものである。また、上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施例1に係る誘導システムの全体概略構成図。
【
図2】実施例1に係る運動制御部の処理フローを示すフローチャート。
【
図3】実施例1に係る運動制御部の到着地点周辺環境情報を用いた変位計算の概要を示す概要図。
【
図4】実施例1に係る運動制御部の到着地点周辺環境情報を用いた変位計算の概要を示す概要図。
【
図5】本発明の実施例2に係る誘導システムの全体概略構成図。
【
図6】実施例2に係る運動制御部の処理フローを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
[実施例1]
図1は、本発明の実施例1に係るモビリティ誘導システムの全体概略構成図である。
制御装置1は、モビリティに搭載された制御装置であり、測位部11、環境情報取得部12、及び運動制御部13を有する。ここで、測位部11は例えばGNSS(Global Navigation Satellite System/全球測位衛星システム)などを用いた測位装置として実現される。環境情報取得部12は例えばモビリティに取り付けられたカメラとして実現される。運動制御部13は例えばCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサ、各種プログラムを格納するROM(Read Only Memory)、演算過程のデータを一時的に可能するRAM(Random Access Memory)などを有するコンピュータ上のソフトウェアとして実現される。モビリティは運動制御部13より生成された移動指令に基づき、移動を行う。
【0013】
また、端末2は、測位部21、環境情報取得部22、及び指令生成部23を有する。ここで、測位部21は例えばGNSSなどを用いた測位装置として実現される。環境情報取得部22は例えば端末2に取り付けられたカメラとして実現される。指令生成部23は例えばCPUなどのプロセッサ、各種プログラムを格納するROM、演算過程のデータを一時的に可能するRAMなどを有するコンピュータ上のソフトウェアとして実現される。制御装置1と端末2は無線通信によって接続されており、運動制御部13と指令生成部23は当該無線通信を介して通信可能である。
【0014】
次に、実際の処理の流れをもとに、本実施例における動作を説明する。
まず、端末2を所持するユーザは、モビリティの到着を希望する到着希望地点において、端末上のソフトウェアである指令生成部23を起動する。指令生成部23は、測位部21より、端末の位置を取得し、当該位置情報を到着地点位置情報31とする。また、指令生成部23はユーザに環境情報取得部22を用いて、単一または複数の周辺の画像を取得するよう指示し、得られた画像を到着地点周辺環境情報32とする。そして、指令生成部23は到着地点周辺環境情報32が移動体の誘導に適切な品質を有することを確認し、適切な品質に満たない場合には、到着地点周辺環境情報32の再取得をユーザに指示する。この品質の確認方法については後述する。そののちに、指令生成部23は到着地点位置情報31と到着地点周辺環境情報32を、運動制御部13に送信する。
【0015】
次に制御装置1の運動制御部13は、到着地点位置情報31と到着地点周辺環境情報32をもとに、モビリティが前記到着希望地点に到達するよう、移動指令を送出する。当該処理の処理フローの一例を
図2に示す。運動制御部13はまず、到着地点位置情報31を元に、暫定目標位置を生成する(ステップS201)。前記暫定目標位置は通常、到着地点位置情報31が示す位置と同一であるが、例えばモビリティが航空機である場合、到着地点位置情報31が示す地点の上空とすることも考えられる。次に、運動制御部13は測位部11より、モビリティの位置情報を取得し、当該位置情報が前記暫定目標位置より規定値以上の距離である場合、モビリティへの移動指令を生成する処理を繰り返す(ステップS202およびS203)。
【0016】
そして、モビリティが暫定目標位置に到着した場合、運動制御部13は当該地点において環境情報取得部12より周辺環境情報を取得し、当該周辺環境情報が前記到着地点周辺環境情報32と照合可能か確認する(ステップS204)。照合不可能であった場合には、たとえばその場で得られる全周囲方向の画像を得られるよう、旋回を行いながら環境情報取得部12より周辺環境の情報を取得するなどの探索動作を実施する(ステップS205)。
【0017】
そして、運動制御部13は環境情報取得部12より取得した周辺環境情報と前記到着地点周辺環境情報32が照合可能となった場合(ステップS204で“Yes”)、当該周辺環境情報と到着地点周辺環境情報32を比較して、到着地点に到達したか判断し(ステップS206)、到着していないと判断された場合は、当該周辺環境情報と到着地点周辺環境情報32を元に、モビリティが到着地点に接近するよう移動指令を生成する(ステップS207)。そして、再度環境情報取得部12から周辺環境情報を取得し、モビリティが到着地点に到着したと判断された場合は、処理を終了する。
【0018】
ここで、指令生成部23が到着地点周辺環境情報32の品質を確認する手法の一例を説明する。まず、指令生成部23は画像である到着地点周辺環境情報32に対して、特許文献3に示されるSIFT(Scale‐Invariant Feature Transform)などの一般的に画像間のマッチングに用いられる手法を用いて、特徴点およびその特徴点に関する特徴量の抽出を行う。そして、前記特徴点の数が事前に規定される閾値に対して、過少または過大であった場合、当該画像を不適切と判断する。また、前記特徴量の次元をN次元とした場合に、抽出された各特徴点の特徴量のN次元ベクトルの集合をV_cとし、これらの共分散行列Σ(V_c)と、Σ(V_c)の各固有ベクトルを正規化した際の固有値群V_iを求め、V_iの各成分が事前に規定される閾値に対して、過小であった場合、当該画像を不適切と判断してもよい。
【0019】
当該処理によって、後述する運動制御部13における、到着地点周辺環境情報32と環境情報取得部12から取得した環境情報を基に、到着地点に到着したかの判断および到着地点への移動指令を生成する際に、特徴点数が不足または過大であって照合が困難となるリスクや、得られた特徴点間の特徴量差が乏しく、後述する特徴点間の対応づけ処理が困難となるリスクを低減することができる。
【0020】
次に、運動制御部13において、到着地点周辺環境情報32と環境情報取得部12から取得した環境情報を基に、到着地点に到着したかの判断および到着地点への移動指令を生成する方法の一例を、
図3および
図4を用いて説明する。まず、
図3に示すように端末2の環境情報取得部22から取得した到着地点周辺環境情報32である画像41と、モビリティの環境情報取得部12から取得した環境情報である画像42より、それぞれ特徴点群43および特徴点群44を抽出する。
【0021】
そして、得られた特徴点群43と特徴点群44について、各点に関する特徴量をもとに8対以上対応づけを行った場合、当該対応点の情報を基に、
図4に示すように、画像41の撮影位置45と、画像42の撮影位置46間の変位と回転を表す基礎行列(Essential Matrix)47を求めることができる。当該基礎行列47より、変位の大きさが規定値以下であるか否かによって、到着地点に到着したかの判断を行うとともに、変位と回転を元に、到着地点への移動指令を生成することが可能となる。
【0022】
本発明によれば、移動体は到着地点周辺環境情報32として撮像された被写体の存在地点に誘導されるのではなく、撮像を行ったカメラ位置に誘導することが可能となる。そのため、特許文献2に示す手法では到着を希望する地面に画像処理に適した特徴点が存在しない場合、誘導が困難であるという課題が存在したが、本手法によれば例えば周辺の景色など、特徴点の豊富な地点の画像を元に、正確な誘導を行うことが可能となる。
【0023】
上記実施例では、到着地点周辺環境情報32と環境情報取得部12から取得した環境情報に対して、特徴点に基づく処理を行う事例を示したが、本発明はこれに限るものではなく、特徴点のかわりに物体検出などによって得られた物体のラベリング情報を用いたり、その他の2地点にて取得された情報間の変位を求める手法全般が適用可能である。
【0024】
また上記実施例では、制御装置1の測位部11および端末2の測位部21がGNSS受信機である例を示したが、測位部11および測位部21はそれぞれ自装置の位置を同定可能な測位装置であればよく、例えば、GNSSのほか、受信した移動体通信用電波の発信局の情報を元に位置を特定する電波受信器などであったり、環境に埋め込まれたビーコンの情報を元に位置を特定する測位装置であったり、これらの一部または全部を組み合わせた装置であっても良い。
【0025】
また、制御装置1の環境情報取得部12と端末2の環境情報取得部22がカメラである例を示したが、到着地点それぞれ当該装置周辺の環境について情報を取得可能なセンサーであればよく、例えばカメラのほか、LiDAR(Light Detection And Ranging)や磁気センサー、電波受信器、マイクなどであったり、これらの一部または全部を組み合わせた装置であっても良い。
【0026】
ある形態においては、環境情報取得部12と環境情報取得部22は、GNSS受信機によって実現されることが考えられる。本形態においては、指令生成部23は環境情報取得部22を用いて測位位置またはRAWデータと呼ばれるGNSS衛星の電波に関する受信情報を、当該情報が正常に受信できていることを確認して、到着地点周辺環境情報32として連続的に運動制御部13に送信する。
【0027】
本形態によれば、通常のGNSSによって得られる測位データには、衛星が発信した電波が対流圏や電離層を通過した際の電波の伝搬速度の違いによって、長周期で変動する系統誤差が発生するが、運動制御部13は当該到着地点周辺環境情報32と環境情報取得部12を用いて取得した測位位置またはRAWデータをD-GPS処理またはキネマティック処理によって比較・照合することで、前記系統誤差の影響を排して、両環境情報取得部12、22間の相対位置を高精度に取得することが可能となり、周囲に構造物がなかったり夜間である等の影響で、周囲の風景に視覚的な特徴が乏しかった場合であっても、高精度に誘導を行うことが可能となる。
【0028】
ある形態においては、環境情報取得部12と環境情報取得部22はそれぞれSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)またはSfM(Structure from Motion)技術を用いたり、LiDARを利用する等して、周辺環境情報として3D形状データを出力する装置であっても良い。本形態によれば、運動制御部13は到着地点周辺の3D形状を認識して移動することが可能となるため、モビリティ移動経路および到着希望地点周辺に障害物が多いような場合に、当該障害物を認識しながら接近することが可能となる。
【0029】
ある形態においては、到着地点周辺環境情報32は、環境情報取得部22にて取得した情報とあわせて、当該情報を取得した際の端末2または環境情報取得部22の方向情報を含んでも良い。本形態によれば、運動制御部13は環境情報取得部12にて環境情報を取得する際、環境情報取得部12の姿勢を当該方向情報と一致するよう指向することで、例えば環境情報取得部12が狭画角のカメラであった場合であっても、到着地点周辺環境情報32の被写体方向に向けることが可能となり、前記探索動作の探索効率をあげることが可能となる。
【0030】
ある形態においては、端末2の環境情報取得部22は自ら音や発光によって、周辺環境に情報を出力するとともに、当該出力情報を周辺環境情報として運動制御部13に出力し、運動制御部13は当該出力情報を到着地点周辺環境情報32としても良い。本形態によれば、例えば環境情報取得部22は人間の可聴域外の音を出力するとともに、運動制御部13は当該音声データを到着地点周辺環境情報32として出力する。そして運動制御部13は指向性を有するマイク等によって実現される環境情報取得部22を用いて、端末2の環境情報取得部22から発される音の方位と強度を特定することで、例えば形状的な特徴がなく、かつGPS等の電波的な情報も取得不可能な環境であっても、到着希望地点への誘導が可能となる。
【0031】
[実施例2]
上記実施例では、最も簡素な構成例を示したが、端末2はさらに情報呈示部24を有し、ユーザに対する情報の呈示およびユーザによる情報の入力が可能な構造としても良い。当該実施例を実施例2とし、実施例2に係るモビリティ誘導システムの全体概略構成図を
図5に示す。
【0032】
図5に示すように実施例2における端末2は、実施例1の構成に加えて、内部に情報呈示部24を有する構成となっている。情報呈示部24は例えば液晶画面及びタッチパネルなどによって実現され、指令生成部23の指示に従って情報の表示および入力が可能である。
【0033】
実施例2における、運動制御部13の処理フローを
図6に示す。本処理フローは実施例1に係る
図2に示す処理フローと共有する部分が大きいため、
図2に示す処理フローとの差異のみを以下に示す。
【0034】
実施例1においては、移動体が暫定目標位置に到達したのち、環境情報取得部12より取得する情報が、到着地点周辺環境情報32と照合できなかった場合、探索動作を行い、照合が可能となるよう動作を生成するが、例えば端末は屋内にある一方で、モビリティは壁を隔てた屋外で探索動作を開始した場合などにおいては、周辺環境情報の照合を行うことができず、従って探索動作を永遠に続けてしまうリスクが存在する。また、環境情報取得部12より取得する情報と到着地点周辺環境情報32とを照合できた場合であっても、例えば移動体の通行可能な通路の幅に対して、到着地点に接近する通路が狭いなど、到着地点への到達が困難であり、接近できないリスクが存在する。
【0035】
ここで本実施例によれば、実施例1の工程に加えて、周辺環境情報の照合に規定時間以上要しているか否か判定する工程(ステップS604)及び到着地点への到達に規定時間以上要しているか否か判定する工程(ステップ607)をさらに有している。周辺環境情報の照合が規定時間以上不可能であった場合(ステップS604で“Yes”)や、到着地点への到達が規定時間以上不可能であった場合(ステップS607で“Yes”)には、運動制御部13は例えば環境情報取得部12より撮像されたカメラ画像上や、当該移動体周辺の地図上で、移動体が到達可能と予測される到着候補地点を一点または複数表示し、情報呈示部24を介してユーザに提示するとともに、到着候補地点の承認または選択を要求する(ステップS610)。そしてユーザが到着地点の承認または選択を行った場合、当該到着地点へ移動を実施する(ステップS611)。これによって、ユーザが当初指定した到着希望地点への移動が困難な場合であっても、ユーザと移動体が接触することが可能となる。また、提示する到着地点の候補としては、上記の他に、端末2からの移動要求とモビリティの移動結果とを紐づけて記憶された過去の処理履歴から選択してもよい。
【0036】
また、前記情報呈示部24は、環境情報取得部22を用いて、到着地点周辺環境情報32を取得する際に、当該情報の品質に関する情報を表示したり、アドバイスを表示することで、到着地点周辺環境情報32の品質向上に利用することも可能である。本実施例によれば、例えば指令生成部23は、カメラである環境情報取得部22が取得した画像をリアルタイムで前記情報呈示部24に表示するとともに、当該画像上で抽出された特徴点の位置と特徴量を、特徴点位置にマーカーを、特徴量をマーカーの配色やマーカー形状で示すととともに、特徴点数が少ない場合は特徴点が得られやすい人工構造物等の方向にカメラを向けるようアドバイスを表示することが考えられる。本形態によれば、ユーザは取得する画像の品質を直感的に把握することが可能となり、より容易にモビリティの誘導を行うことが可能となる。
【0037】
以上で説明した本発明の実施例によれば、以下の作用効果を奏する。
(1)本発明の一実施例に係る誘導システムは、ユーザが保持する端末、及び移動体への移動指令を生成する制御装置を有する誘導システムであって、端末は移動体の目標到着地点の位置を示す到着地点位置情報と、目標到着地点において取得可能な周辺環境の情報である到着地点周辺環境情報とを制御装置に送信し、制御装置は、到着地点位置情報に基づいて、目標到着地点の近傍に移動体を接近させ、移動体に搭載したセンサーによって取得した、該移動体の周辺環境の情報である移動体周辺環境情報と、到着地点周辺環境情報とを照合して、移動体と目標到着地点間の変位を求め、変位に基づいて移動体を目標到着地点に誘導する。
【0038】
上記構成により、ユーザは容易な手順にて所望の到着地点を指示し、当該到着地点に高精度にモビリティを誘導することが可能となる。
【0039】
(2)端末は、取得した到着地点周辺環境情報が所定の品質未満である場合に、ユーザに対して到着地点周辺環境情報の再取得を促す指示を行う。これにより、例えば画像が不鮮明である等、情報の品質が不十分であることによる情報の照合失敗、ひいては誘導の失敗を回避することが可能になる。
【0040】
(3)到着地点周辺環境情報は画像または3D形状データもしくはその両方である。これにより、情報を視覚的に把握することが可能になる。
【0041】
(4)到着地点周辺環境情報は電波または音波に関する情報である。これにより、電波・音波を取り扱う機械等による自動的な情報の照合が可能になり、その照合の精度が向上する。
【0042】
(5)端末は自ら発した音、光、または電波の情報を到着地点周辺環境情報とする。これにより、画像上の特徴量が不十分である地域であっても移動体を誘導することが可能になる。
【0043】
(6)端末は、ユーザへの情報の呈示および、情報の入力を可能とする情報呈示部を有する。これにより、ユーザの利便性を向上させることが可能になる。
【0044】
(7)制御装置は、到着地点位置情報に基づく目標到着地点への移動開始後または到着地点周辺環境情報と移動体周辺環境情報との照合開始から一定期間経過後に、ユーザが保持する端末に、単一または複数の到着可能地点の情報を送信し、ユーザが選択した到着可能地点に移動体を誘導する。これにより、障害物等により移動体が到着地点に到着できない場合等に、ユーザが到着地点を任意の位置へと変更することが可能になる。
【符号の説明】
【0045】
1…制御装置、2…端末、11…測位部、12…環境情報取得部、13…運動制御部、21…測位部、22…環境情報取得部、23…指令生成部、24…情報呈示部、31…到着地点位置情報、32…到着地点周辺環境情報