(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134219
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】剥離シートおよび化粧材
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20240926BHJP
B32B 7/06 20190101ALI20240926BHJP
E04F 13/08 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B7/06
E04F13/08 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044416
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】臼井 寛詠
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 啓介
(72)【発明者】
【氏名】新里 栄美
【テーマコード(参考)】
2E110
4F100
【Fターム(参考)】
2E110AA60
2E110AB02
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4F100AJ02
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(57)【要約】 (修正有)
【課題】化粧シートまたは化粧板である加飾体と、被着体と、を有する化粧材に用いられる剥離シートであって、被着体から加飾体を容易に剥離することが可能な剥離シート、および該剥離シートを有する化粧材を提供する。
【解決手段】剥離シート10は、厚さ方向において、加飾体5および被着体3の間に配置されるシートであり、上記剥離シートは、紙である下地層1と、上記下地層の一方の面に配置され、樹脂を含有するバリア層2と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧シートまたは化粧板である加飾体と、被着体と、を有する化粧材に用いられる剥離シートであって、
前記剥離シートは、厚さ方向において、前記加飾体および前記被着体の間に配置されるシートであり、
前記剥離シートは、紙である下地層と、前記下地層の一方の面に配置され、樹脂を含有するバリア層と、を有する、剥離シート。
【請求項2】
JIS P 8122に基づき測定される前記紙のサイズ度は、20秒間以上である、請求項1に記載の剥離シート。
【請求項3】
前記紙の坪量は、30g/m2以上、100g/m2以下である、請求項1に記載の剥離シート。
【請求項4】
前記紙は、植物性繊維を含有する、請求項1に記載の剥離シート。
【請求項5】
前記バリア層は、前記樹脂として、アクリルポリオール系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ウレタン系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合系樹脂、エポキシ系樹脂、オレフィン系樹脂の少なくとも一種を含有する、請求項1に記載の剥離シート。
【請求項6】
前記バリア層の厚さは、7μm以上である、請求項1に記載の剥離シート。
【請求項7】
前記バリア層の算術平均高さ(Sa)は、4.0μm以下である、請求項1に記載の剥離シート。
【請求項8】
前記剥離シートの紙間剥離強度は、1000mN/15mm以下である、請求項1に記載の剥離シート。
【請求項9】
前記剥離シートは、前記下地層の両面に、それぞれ、前記バリア層を有する、請求項1に記載の剥離シート。
【請求項10】
化粧シートまたは化粧板である加飾体と、被着体と、前記加飾体および前記被着体の間に配置された剥離シートと、を有し、
前記剥離シートは、紙である下地層と、前記下地層の一方の面に配置され、樹脂を含有するバリア層と、を有する、化粧材。
【請求項11】
前記加飾体は、前記化粧シートであり、
前記化粧シートは、厚さ方向において、前記剥離シート側から、基材層および意匠層を、この順に有する、請求項10に記載の化粧材。
【請求項12】
前記加飾体は、前記化粧板であり、
前記化粧板は、厚さ方向において、前記剥離シート側から、基体層、基材層および意匠層を、この順に有する、請求項10に記載の化粧材。
【請求項13】
前記化粧材は、前記下地層と前記加飾体との間に、前記バリア層を有する、請求項10に記載の化粧材。
【請求項14】
前記化粧材は、前記バリア層と前記加飾体との間に、第1接着剤層を有する、請求項13に記載の化粧材。
【請求項15】
前記化粧材は、前記下地層と前記被着体との間に、前記バリア層を有する、請求項10に記載の化粧材。
【請求項16】
前記化粧材は、前記バリア層と前記被着体との間に、第2接着剤層を有する、請求項15に記載の化粧材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、剥離シートおよび化粧材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のリサイクル技術の発達に応じて、環境保全や資源の有効利用の観点から、廃材のリサイクルが広く進められている。リサイクル技術として、マテリアルリサイクルやケミカルリサイクル等が推進されている。
【0003】
従来、建築部材等として化粧材が用いられている。化粧材は、例えば、化粧シートまたは化粧板である加飾体と、被着体とが、接着剤層を介して接着されている。この場合、加飾体と接着剤層とが強固に密着しているため、加飾体を被着体から剥離することが困難である。そのため、被着体と、加飾体とを分別することが困難となる。このような理由から、化粧材の工場廃材は複合廃棄物である場合が多く、サーマルリサイクルが中心となっている。建築の解体廃棄物も、複合廃棄物である場合が多く、焼却、埋め立て等による処理が中心となっている。
【0004】
特許文献1には、基材と化粧シートとの分離・回収を容易とすることを目的として、化粧シート裏面側に、発泡剤が樹脂バインダー中に添加された未発泡の発泡凝集破壊層が積層されてなる、化粧シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、化粧シートまたは化粧板である加飾体と、被着体と、を有する化粧材に用いられる剥離シートであって、被着体から加飾体を容易に剥離することが可能な剥離シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示においては、化粧シートまたは化粧板である加飾体と、被着体と、を有する化粧材に用いられる剥離シートであって、上記剥離シートは、厚さ方向において、上記加飾体および上記被着体の間に配置されるシートであり、上記剥離シートは、紙である下地層と、上記下地層の一方の面に配置され、樹脂を含有するバリア層と、を有する、剥離シートを提供する。
【0008】
本開示においては、化粧シートまたは化粧板である加飾体と、被着体と、上記加飾体および上記被着体の間に配置された剥離シートと、を有し、上記剥離シートは、紙である下地層と、上記下地層の一方の面に配置され、樹脂を含有するバリア層と、を有する、化粧材を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本開示においては、化粧シートまたは化粧板である加飾体と、被着体と、を有する化粧材に用いられる剥離シートであって、被着体から加飾体を容易に剥離することが可能な剥離シートを提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示における剥離シートを例示する概略断面図である。
【
図2】本開示における化粧材を例示する概略断面図である。
【
図3】本開示における化粧材を例示する概略断面図である。
【
図4】本開示における化粧シートを例示する概略断面図である。
【
図5】本開示における化粧材を例示する概略断面図である。
【
図6】本開示における化粧板を例示する概略断面図である。
【
図7】紙間剥離強度の測定方法を説明するための概略図である。
【
図8】加飾体と被着体との間に剥離層を配置した化粧材の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
下記に、図面等を参照しながら、実施の形態を説明する。ただし、本開示は、多くの異なる態様で実施することが可能であり、下記に例示する実施の形態の記載内容に限定されるべきではない。また、図面は説明をより明確にするため、実際の形態に比べ、各部の幅、厚さ、形状について模式的に表す場合があるが、これはあくまで一例であり、限定して解釈されるべきではない。
【0012】
本明細書において、ある部材の上に、他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」あるいは「下に」と表記する場合、特に断りの無い限り、ある部材に接するように、直上あるいは直下に、他の部材を配置する場合と、ある部材の上方あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合と、の両方を含む。また、本明細書において、ある部材の面に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「面に」と表記する場合、特に断りの無い限り、ある部材に接するように、直上あるいは直下に、他の部材を配置する場合と、ある部材の上方あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合と、の両方を含む。
【0013】
上述したように、従来の化粧材は、加飾体と被着体とが接着剤層で強固に密着しているため、加飾体を被着体から剥離することが困難であり、無理に剥がそうとすると、材破する場合がある。そのため、被着体と、加飾体とを分別することが困難となり、リサイクル性に劣る。
【0014】
本願発明者等は、被着体から加飾体を容易に剥離するために、
図8(a)に示すように、化粧シート5である加飾体と、接着剤層(第2接着剤層4b)との間に、紙である剥離層81を配置することを検討した。
図8(a)に示す化粧材80aは、基材層51および意匠層52を含む化粧シート5と、第1接着剤層4aと、剥離層81と、第2接着剤層4bと、被着体3と、をこの順に有する。しかしながら、このような化粧材は、例えば、化粧シート5をドライラミネート方式で第1接着剤層4aを介して、剥離層81に貼り合わせる際に、第1接着剤層4aの接着剤樹脂が剥離層81に浸透し、剥離層81と化粧シート5とが一体化してしまうことを知見した。ドライラミネートとは、溶剤で溶解した液状の接着剤を、互いに貼り合せるべき2つの部材に対してその貼り合せ面の少なくとも一方に塗布し、乾燥後に、接着剤層を間に介して積層した両部材を1対の加熱ロールに挟持して加圧して貼り合わせる貼り合せ方法である。接着剤樹脂とは、接着剤層の形成に用いられる樹脂をいう。また、第2接着剤層4bの接着剤樹脂も、剥離層81に浸透する場合がある。
【0015】
また、本願発明者等は、被着体から加飾体を容易に剥離するために、
図8(b)に示すように、化粧板6である加飾体と、接着剤層4との間に、紙である剥離層81を配置することを検討した。
図8(b)に示す化粧材80bは、フェノール樹脂含浸紙等に代表される基体層61、チタン紙等に代表される基材層62と、意匠層63と、を有するメラミン化粧板6と、剥離層81と、接着剤層4と、被着体3と、をこの順に有する。このような化粧材の製造工程においては、例えば、熱硬化性樹脂が含浸されている基体層および基材層を含む複数層と、剥離層とを、積層させて熱プレスする。この熱プレスの際に、含浸樹脂(例えば、メラミン樹脂、フェノール樹脂等)が剥離層81に浸透し、剥離層81と化粧板6が一体化してしまうことを知見した。また、接着剤層4の接着剤樹脂も、剥離層81に浸透する場合がある。
【0016】
本願発明者等は、上述したように含浸樹脂や接着剤樹脂が剥離層へ浸透することによって、剥離層での剥離が困難であることを知見した。そして、鋭意検討を行った結果、樹脂を含有するバリア層を、紙である下地層の少なくとも一方の面に配置することにより、下地層への樹脂の浸透を抑制することができ、剥離層での紙間剥離が可能であることを見出し、本発明を完成させた。本明細書において、ドライラミネート時の接着剤樹脂の下地層への浸透、熱プレス時の含浸樹脂の下地層への浸透等を、単に、樹脂の浸透ともいう。
【0017】
A.剥離シート
図1は、本開示における剥離シートを例示する概略断面図である。
図2は、本開示における化粧材を例示する概略断面図である。本開示における剥離シートは、
図1(a)に示すように、下地層1の片面にバリア層2を有する構成であってもよいし、
図1(b)に示すように、下地層1の両面に、それぞれ、バリア層2を有する構成であってもよい。本開示における剥離シート10は、
図2に示すように、化粧シート5または化粧板6である加飾体Xと、被着体3と、を有する化粧材100に用いられる剥離シートであって、厚さ方向D
Tにおいて、加飾体Xおよび被着体3の間に配置されるシートである。
【0018】
本開示における剥離シートが加飾体および被着体の間に配置された化粧材は、加飾体を剥離する際に、剥離シートにおける下地層において紙間剥離が生じる。従って、被着体から加飾体を容易に剥離することが可能となり、リサイクル性が向上する。
【0019】
上記特許文献1には、加熱により、化粧シートの裏面側に積層された発泡凝集破壊層を発泡させた後、発泡凝集破壊層の部分で凝集破壊させて剥離し、化粧材から、化粧シートと基材とを分離することが開示されている。このような化粧シートは、例えば、100℃以上に加熱するため、高熱源が必要となる。また、例えば1m×1mサイズの板のような大きなサイズでの化粧材の剥離時には作業効率が悪い。
【0020】
これに対し、本開示における剥離シートは、常温でも、被着体から加飾体を容易に剥離することが可能となる。
【0021】
1.下地層
本開示における剥離シートは、紙である下地層を有する。下地層は、剥離シートを化粧材に用いた場合に、加飾体と被着体との接着を維持することが可能であり、かつ、層間剥離(紙間剥離)することにより、加飾体と被着体とを分離可能とする層である。
【0022】
(1)紙
本開示における下地層となる紙の種類は、層間剥離が可能なものであれば、特に限定されない。本明細書において、紙とは、日本工業規格(JIS)で定義されている「植物繊維その他の繊維を膠着させて製造したもの」を意味する。
【0023】
紙は、通常、繊維材料を含む。本開示において、紙は、繊維材料として、植物性繊維を含有することが好ましい。環境負荷が少なく、紙間剥離強度を後述の範囲に調整しやすいためである。また、上記繊維材料として、合成繊維、金属繊維等を含有していてもよい。
【0024】
植物性繊維としては、例えば、木材パルプや麻、綿、藁を原料とした非木材パルプを挙げることができる。木材パルプとしては、例えば、化学パルプ、セミケミカルパルプ、機械パルプなどが挙げられる。また、樹種としては針葉樹、広葉樹を問わない。化学パルプとしては、例えば、クラフトパルプ、サルファイトパルプ等が挙げられる。本開示における紙は、植物性繊維を1種または2種類以上含有していてもよい。また、合成パルプ、レーヨン繊維、合成繊維、ガラス繊維などを併用することもでき、生分解性を有するものも使用できる。
【0025】
本開示において、紙は、上記繊維材料を含むものであるが、必要に応じて、填料、紙力増強剤、サイズ剤等を含むものであってもよい。
【0026】
紙力増強剤としては、例えば、ポリアクリルアミド、エポキシポリアミド、カチオン化澱粉、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。紙力増強剤の含有量は、特に限定されない。
【0027】
サイズ剤としては、例えば、ロジンサイズ剤、合成サイズ剤、石油樹脂系サイズ剤等の内添サイズ剤、スチレン/アクリル酸共重合体、スチレン/メタクリル酸共重合体等の表面サイズ剤が挙げられる。サイズ剤の含有量は、特に限定されない。
【0028】
填料としては、例えば、タルク、カオリン、焼成カオリン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シリカ、ホワイトカーボン、ベントナイト、ゼオライト、セリサイト、スメクタイト等の無機填料、アクリル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂等の有機填料が挙げられる。
【0029】
植物性繊維を含有する紙としては、具体的には、公知の各種化粧紙に用いられる壁紙用裏打紙、上質紙、薄葉紙、クラフト紙、リンター紙、パーチメント紙、グラシン紙、硫酸紙等、又はこれらの紙に硝子繊維や樹脂纖維を混抄した混抄紙が挙げられる。
【0030】
裏打ち紙としては、例えば、公知の針葉樹の晒しクラフトパルプ(NBKP)、広葉樹の晒しクラフトパルプ(LBKP)、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)を、単独または任意の配合率で混合して抄紙したものが挙げられる。また、これらの木材繊維に、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂繊維、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂繊維、ナイロン等のポリアミド系樹脂繊維、ポリ塩化ビニル等の含ハロゲン系樹脂繊維等の合成繊維を配合しても良い。
【0031】
(2)サイズ度
本開示における紙は、JIS P 8122に基づき測定されるサイズ度が、例えば、10秒間以上であり、20秒間以上であることが好ましい。
【0032】
サイズ度が上記範囲であることにより、下地層自体が樹脂を浸透しにくいため、接着剤樹脂および含浸樹脂等の浸透がより抑制され、紙間剥離性がより容易となる。また、バリア層形成時の下地層への樹脂浸透を抑制でき、バリア層を後述の厚さに調整しやすくなる。
【0033】
一方、上記サイズ度は、例えば、60秒間以下であり、40秒間以下であることが好ましい。サイズ度が大きすぎると、接着剤樹脂および含浸樹脂等の樹脂浸透が過剰に抑制され、加飾体と剥離シートとの密着性の低下が生じる可能性がある。
【0034】
本開示において、紙のサイズ度は、JIS P 8122:2004(ステキヒト法)にて規定された試験方法に基づいて測定された値である。ステキヒト法の原理は、以下の通りである。まず、チオシアン酸アンモニウム水溶液に試験片を浮かべ、その試験片上に塩化鉄(III)水溶液の液滴を載せる。それぞれの水溶液は紙中に浸透し、接触、反応することによってチオシアン酸鉄を生じ赤色を呈する。したがって、呈色を確認することによって、浸透に要する時間を容易に測定することができる。
【0035】
(サイズ度測定方法)
本開示における具体的なサイズ度の測定方法は、JIS P 8111に規定する標準条件で行う。まず、試験片(紙)を、シャーレに入れた23±1℃のチオシアン酸アンモニウム水溶液に浮かべる。試験片(紙)は予め、チオシアン酸アンモニウム水溶液が試験片の上面に触れないように四周を折っておく。直ちに、ピペットを用いて同じ温度の1%塩化鉄(III)水溶液を試験片上に一滴落とし、滴内に3個の赤色はん点が現れるまでの時間をストップウォッチによって0.1秒単位で計る。この操作を、試験片の両面について5回ずつ、計10回行う。10回の平均値を算出し、上記サイズ度の値とする。
【0036】
(3)坪量
本開示における紙の坪量は、30g/m2以上であることが好ましく、50g/m2以上であることがより好ましい。紙の坪量が上記範囲であれば、安定した紙間剥離性が得られる。一方、紙の坪量は、100g/m2以下であることが好ましく、80g/m2以下であることがより好ましい。紙の坪量が上記範囲であれば、コストの削減、被着体へ積層する際の加工性向上等の効果が期待できる。
【0037】
(4)厚さ
本開示における下地層の厚さは、60μm以上であることが好ましく、80μm以上であることがより好ましい。下地層の厚さが上記範囲であれば、安定した紙間剥離性が得られる。一方、下地層の厚さは、120μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましい。下地層の厚さが上記範囲であれば、コストの削減、被着体へ積層する際の加工性向上等の効果が期待できる。
【0038】
(5)算術平均高さ(Sa)
下地層は、バリア層が設けられる面の算術平均高さ(Sa)が、4.0μm以下であることが好ましく、3.5μm以下であることがより好ましい。これにより、下地層上にバリア層を形成する際に、バリア層の厚みのムラを軽減させる事ができ、均一な厚さのバリア層を形成することができる。従って、剥離シートのバリア層の表面(下地層とは反対側の表面)の算術平均高さ(Sa)を後述の範囲に調整しやすくなり、その後の加飾体積層時に、場所による樹脂浸透の差を抑制することが出来る。
【0039】
算術平均高さ(Sa)は、キーエンス製レーザー顕微鏡「VKX1000(制御部)/VKX1050(測定部)」を用いて、以下の条件にて測定した値である。
・対物レンズ:5倍
・レーザー波長:661nm
・表面形状モード
・測定領域:2061μm×2768μm
・測定回数:10回
10回の測定値の平均を、算術平均高さ(Sa)とする。
【0040】
2.バリア層
本開示における剥離シートは、下地層の一方の面に配置され、樹脂を含有するバリア層を有する。バリア層は、下地層への樹脂浸透性を抑制し、下地層に紙間剥離性を付与する層である。
【0041】
(1)材料
バリア層は、主としてバインダー樹脂から構成される。バインダー樹脂としては、例えば、アクリルポリオール系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ウレタン系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリプロピレン樹脂等のオレフィン系樹脂等が挙げられる。これらは、単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
【0042】
中でも、耐熱性を有する樹脂が好ましく、具体的には、ガラス転移温度(Tg)が50℃以上である樹脂が好ましく、70℃以上である樹脂がより好ましく、90℃以上である樹脂が特に好ましい。なお、上記ガラス転移温度は、インキ(バリア層用組成物)として配合する前の樹脂単体のガラス転移温度である。加飾体または被着体との積層工程において、熱プレス、高温の接着剤塗布、および接着剤の乾燥時など、剥離シートが加熱される場合がある。そのため、バリア層が耐熱性が低い樹脂を有する場合、接着剤樹脂や含浸樹脂などが下地層に過剰に浸透する可能性がある。このような耐熱性を有する樹脂としては、例えば、アクリルポリオール系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂が挙げられる。特に、耐熱性に加え、バリア層形成のしやすさ、バリア層に対する接着剤樹脂や含浸樹脂との密着性を考慮すると、アクリルポリオール系樹脂が好ましい。
【0043】
また、バインダー樹脂としては、上記の樹脂に、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤等の硬化剤を添加し、架橋硬化させる樹脂であってもよい。例えば、アクリルポリオール樹脂等のポリオール系樹脂をイソシアネート系硬化剤で架橋硬化させる樹脂が好ましく、アクリルポリオール樹脂をイソシアネート系硬化剤で架橋硬化させる樹脂がより好ましい。
【0044】
バリア層は、必要に応じて、添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、例えば、後述に示される無機粒子等が挙げられる。
【0045】
バリア層は、無機粒子を含むことが好ましい。後述するバリア層の形成工程にて、バリア層形成済みの下地層を重ね置きしたり、巻取りした際に発生するブロッキング現象を防止することができるためである。また、無機粒子は、インキ状態での分散剤や消泡剤としての機能を有していてもよい。無機粒子としては、シリカ、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。
【0046】
無機粒子の平均粒子径は、例えば、20μm以下であり、10μm以下であることが好ましい。バリア層の表面の算術平均高さSaを、後述の範囲に調整しやすいためである。一方、例えば、1μm以上であり、3μm以上であってもよい。平均粒子径は、レーザー回折散乱法により測定される、体積基準粒度分布によるd50をいう。
【0047】
無機粒子の含有量としては、例えば、樹脂成分100質量部に対して、5質量部以上、60質量部以下が好ましく、10質量部以上、50質量部以下がより好ましい。
【0048】
(2)厚さ
バリア層の厚さは、3μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、7μm以上であることが特に好ましい。バリア層の厚さが上記範囲であることにより、下地層への接着剤樹脂および含浸樹脂等の樹脂の浸透抑制効果をより向上することができ、紙間剥離性が向上する。
【0049】
一方、バリア層の厚さは、25μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、17μm以下であることがさらに好ましい。バリア層の厚さが厚すぎると、バリア層によって下地層への樹脂浸透が過剰に抑制され、加飾体と剥離シートとの密着性が低下し、化粧材とした場合に加飾体が剥がれてしまう場合がある。
【0050】
バリア層の厚さは、キーエンス製レーザー顕微鏡「VKX1000(制御部)/VKX1050(測定部)」の光学モードを用い、対物レンズ20倍で、バリア層の断面観察を行い、任意の20箇所の測定値の平均値とする。
【0051】
(3)算術平均高さSa
バリア層の表面(下地層とは反対側の表面)の算術平均高さ(Sa)は、4.0μm以下であることが好ましく、3.5μm以下であることがより好ましい。バリア層の下地層とは反対側の表面の算術平均高さ(Sa)が上記範囲であることにより、例えば、化粧材の製造時に、接着剤樹脂や含浸樹脂等がバリア層の凹部に入り込むのを抑制することができる。従って、場所による下地層への樹脂浸透の差を抑制することができ、紙間剥離がより生じやすくなる。
【0052】
バリア層の下地層とは反対側の表面の算術平均高さ(Sa)の測定方法は、上述した下地層のバリア層が設けられる面の算術平均高さ(Sa)の測定方法と同様である。
【0053】
(4)形成方法
バリア層の形成方法としては、特に限定されないが、下地層の一方の面に、上記バインダー樹脂を含むバリア層用組成物を塗工し、その後、必要に応じて、乾燥、硬化する方法が挙げられる。バリア層用組成物の塗工方法としては、例えば、グラビア印刷法、バーコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、コンマコート法等の公知の方法が挙げられる。塗工法としては、1工程または複数回工程のグラビア印刷法が好ましい。この時、下地層が上述したサイズ度(例えば、20秒間以上)を有する場合、印刷時にバリア層が下地層へ浸透してしまう事を防ぎ、上記の厚み(例えば、7μm以上)を担保しやすくなる。
【0054】
バリア層用組成物は、例えば、上述のバインダー樹脂、添加剤、及び溶剤を含有する。
【0055】
3.剥離シート
(1)構成
本開示における剥離シートは、上述の下地層と、下地層の一方の面に配置されたバリア層と、を有していればよく、
図1(a)に示すように、下地層1の片面にバリア層2を有する構成であってもよいし、
図1(b)に示すように、下地層1の両面に、それぞれ、バリア層2を有する構成であってもよい。
【0056】
(2)紙間剥離強度
剥離シートの紙間剥離強度は、例えば、1500mN/15mm以下であり、1000mN/15mm以下であることが好ましく、800mN/15mm以下であることがより好ましい。紙間剥離強度が上記範囲であることにより、化粧材に使用した場合に、剥離シートの下地層での紙間剥離がしやすくなり、被着体と加飾体とを容易に分離できる。
【0057】
一方、剥離シートの紙間剥離強度は、例えば、150mN/15mm以上であり、200mN/15mm以上であることが好ましい。紙間剥離強度が上記範囲であることにより、実際に化粧材として使用した際に、経年劣化で被着体から加飾体が剥がれてしまうことを防ぐことができる。
【0058】
剥離シートの紙間剥離強度は、下記測定方法により測定された値である。
(紙間剥離強度の測定方法)
図7(a)に示すように、剥離シート10の両面に、ニチバン製のセロテープ(登録商標)71を貼り付け、紙間剥離強度の測定サンプルSを作製する。
図7(b)に示すように、測定サンプルSをT型剥離の要領で、下記条件で剥離試験を行い、剥離強度の積分平均荷重を剥離強度とする。
・剥離幅:15mm
・剥離距離:20mm
・剥離速度:100mm/min
【0059】
剥離シートにおける下地層は、通常、バリア層に含まれる樹脂を含有する事で下地層とバリア層が密着し、積層される。また、バリア層が無機粒子を含む場合、無機粒子は、下地層に含有されず、バリア層の下地層側の表面近傍に堆積している状態が好ましい。これにより、ブロッキング現象の防止効果、接着剤樹脂や含浸樹脂とバリア層との密着性、及び下地層への浸透抑制の効果が更に向上すると推察される。
なお、上述の剥離シートの様子は、SEM-EDXによる断面観察により確認することができる。
【0060】
B.化粧材
本開示における化粧材は、化粧シートまたは化粧板である加飾体と、被着体と、上記加飾体および上記被着体の間に配置された剥離シートと、を有し、上記剥離シートは、紙である下地層と、上記下地層の一方の面に配置され、樹脂を含有するバリア層と、を有する。
【0061】
図2は、本開示における化粧材を例示する概略断面図である。
図2(a)、(b)に示す化粧材100は、化粧シート5または化粧板6である加飾体Xと、被着体3と、加飾体Xおよび被着体3の間に配置された剥離シート10と、を有し、剥離シート10は、紙である下地層1と、下地層1の一方の面に配置され、樹脂を含有するバリア層2と、を有する。
図2(a)、(b)に示す化粧材100は、剥離シート10と被着体3との間に、接着剤層4を有している。
【0062】
本開示における化粧材は、
図2(a)に示すように、下地層1と加飾体Xとの間に、バリア層2を有することが好ましい。この場合、加飾体Xが化粧板6である場合においては、化粧板6の含浸樹脂の下地層1への浸透を抑制することができる。また、加飾体Xが化粧シート5である場合においては、化粧シート5と剥離シート10との間に配置されている不図示の接着剤層(第1接着剤層)の接着剤樹脂の下地層1への浸透を抑制することができる。
【0063】
一方、本開示における化粧材は
図2(b)に示すように、下地層1と被着体3との間に、バリア層2を有していてもよい。この場合、被着体3と剥離シート10との間に配置されている接着剤層4の接着剤樹脂の下地層1への浸透を抑制することができる。
【0064】
本開示によれば、上述した剥離シートを有するため、被着体から加飾体を容易に剥離することが可能となる。
【0065】
以下、本開示における化粧材を、加飾体が化粧シートの場合を第1実施態様の化粧材、加飾体が化粧板の場合を第2実施態様の化粧材として、説明する。
【0066】
I.第1実施態様
図3(a)~(c)は、加飾体が化粧シートの場合の、本開示における化粧材を例示する概略断面図である。
図3(a)~(c)に示す化粧材100a、100b、100cは、厚さ方向D
Tにおいて、被着体3と、剥離シート10と、化粧シート5と、をこの順に有する。化粧シート5は、例えば、厚さ方向D
Tにおいて、剥離シート10側から、基材層51および意匠層52を、この順に有する。
【0067】
ここで、
図3(a)に示す化粧材100aは、下地層1と化粧シート5との間にバリア層2を有しており、バリア層2と化粧シート5との間に第1接着剤層4aを有している。このような化粧材であれば、剥離シート10におけるバリア層2によって、接着剤層(第1接着剤層4a)の接着剤樹脂の下地層1への浸透が抑制され、下地層1での紙間剥離が容易となる。
なお、
図3(a)に示すように、剥離シート10と化粧シート5との間および剥離シート10と被着体3との間の両方に接着剤層4a,4bが配置されている場合であっても、剥離シート10は、少なくとも一方の面側からの接着剤樹脂の下地層1への浸透が抑制されていれば、上述の効果が得られる。
【0068】
また、
図3(b)に示す化粧材100bは、下地層1と被着体3との間に、バリア層2を有しており、バリア層2と被着体3との間に第2接着剤層4bを有する。このような化粧材であれば、剥離シートにおけるバリア層によって、接着剤層(第2接着剤層4b)の接着剤樹脂の下地層への浸透が抑制され、下地層での紙間剥離が容易となる。この場合、化粧シート5と剥離シート10とは、接着剤層(不図示)を介してラミネートされる方法の他、例えば化粧シート5における剥離シート10が積層される面側にヒートシール層を設けることで、熱ラミネートによって貼合わせる方法も挙げられる。
【0069】
図3(c)に示す化粧材100cは、下地層1と化粧シート5との間にバリア層2を有しており、バリア層2と化粧シート5との間に第1接着剤層4aを有している。さらに、化粧材100cは、下地層1と被着体3との間に、バリア層2を有しており、バリア層2と被着体3との間に第2接着剤層4bを有する。このような化粧材であれば、剥離シートにおけるバリア層によって、接着剤層(第1接着剤層4aおよび第2接着剤層4b)の接着剤樹脂の下地層への浸透が抑制され、下地層での紙間剥離が容易となる。
【0070】
(1)化粧シート
本開示における加飾体は、例えば、化粧シートである。
図4は、本開示における化粧シートを例示する概略断面図である。
図4(a)に示す化粧シート5は、厚さ方向D
Tにおいて、基材層51および意匠層52を、この順に有する。
図4(b)に示す化粧シート5は、厚さ方向D
Tにおいて、基材層51、意匠層52、透明性樹脂層53および表面保護層54を、この順に有する。
【0071】
(a)基材層
化粧シートは、例えば、基材層を有する。化粧シートが基材層を有することで、機械的強度、後加工適性、意匠性等の各種性能が向上するので、シートとしての使用性が向上する。
【0072】
基材層は、特に限定されず、例えば、樹脂基材が挙げられる。基材層の種類は、化粧シートの用途に応じて適宜選択される。
【0073】
樹脂基材に用いられる樹脂としては、例えば、各種の合成樹脂、各種の天然樹脂が挙げられる。合成樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂が挙げられる。化粧シートの製造適性、取扱い適性、後加工適性を考慮すると、熱可塑性樹脂が好ましい。
【0074】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、アイオノマー、各種オレフィン系熱可塑性エラストマー等のオレフィン樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等の塩化ビニル樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、エチレングリコール-テレフタル酸-イソフタル酸共重合体、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等のポリエステル樹脂;ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸ブチル共重合体等のアクリル樹脂;ナイロン6、ナイロン66等に代表されるポリアミド樹脂;三酢酸セルロース、セロファン、セルロイド等のセルロース樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)等のスチレン樹脂;ポリビニルアルコール、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリイミド樹脂が挙げられる。
【0075】
天然樹脂としては、例えば、天然ゴム、松脂、琥珀が挙げられる。
【0076】
また、硬化性樹脂としては、例えば、電離放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0077】
基材層は、必要に応じて、添加剤を含有してもよい。樹脂基材の場合、添加剤としては、例えば、無機充填剤、難燃剤、滑剤、発泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤が挙げられる。各種添加剤は、単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。添加剤の含有量は、表面特性、加工特性を阻害しない範囲であれば特に制限はなく、要求特性に応じて適宜設定できる。
【0078】
基材層は、単層であってもよく、2層以上の積層体であってもよい。積層体の場合、基材層は、同じ種類の基材を2層以上有していてもよく、異なる種類の基材を2層以上有していてもよい。
【0079】
本開示において、基材層は、後述の意匠層を兼ねることができる。
【0080】
基材層は、透明であってもよく、不透明であってもよい。基材層が不透明である場合には、基材層が意匠層になり得る。
【0081】
また、基材層は着色されていてもよい。基材層が着色されている場合には、基材層が意匠層になり得る。着色の態様には特に限定されず、透明着色であってもよく、不透明着色(隠蔽着色)であってもよく、これらは任意に選択できる。
【0082】
基材層が着色されている場合、着色剤を含有することができる。着色剤としては、例えば、チタン白等の白色顔料、鉄黒、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料;キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー、ニッケル-アゾ錯体、アゾメチンアゾ系黒色顔料、ペリレン系黒色顔料等の有機顔料又は染料;アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料;二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料が挙げられる。例えば、化粧シートを積層する被着体の表面色相がばらついている場合に、表面色相を隠蔽し、装飾層の色調の安定性を向上させたい場合は、白色顔料等の無機顔料を用いればよい。
【0083】
基材層は、基材層に接する層との密着性、例えば意匠層との密着性、接着層との密着性を高めるために、表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、例えば、酸化法、凹凸化法等の物理的表面処理、化学的表面処理が挙げられる。酸化法としては、例えば、コロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン-紫外線処理法が挙げられる。凹凸化法としては、例えば、サンドブラスト法、溶剤処理法が挙げられる。これらの表面処理は、基材層の種類に応じて適宜選択されるが、表面処理の効果および操作性を考慮すると、一般にはコロナ放電処理が好ましい。
【0084】
また、基材層が積層体である場合、隣接する各層の接着性を向上させるために、各層間に、接着層又はプライマー層が配置されていてもよい。
【0085】
基材層の厚さは、特に限定されず、基材層の材料に応じて適宜選択される。樹脂を含有する基材層の場合、基材層の厚さは、例えば、10μm以上300μm以下であり、20μm以上200μm以下であってもよく、40μm以上100μm以下であってもよい。
【0086】
(b)意匠層
本開示における化粧シートは、基材層の一方の面側に、意匠層を有していてもよい。また、化粧シートが後述の透明性樹脂層を有する場合、基材層および透明性樹脂層の間に、意匠層を有していてもよい。意匠層を設けることで、化粧シートの意匠性が向上する。また、化粧シートを厚さ方向に沿って平面視した場合に、意匠層は、化粧シートの全面に配置されていてもよく、化粧シートの一部に配置されていてもよい。
【0087】
意匠層としては、例えば、ベタ層(インキをベタ塗りした層)、絵柄層(インキを印刷した層)が挙げられる。絵柄層における絵柄(模様)としては、例えば、木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様、草花模様が挙げられる。
【0088】
意匠層は、通常、着色剤およびバインダー樹脂を含有する。着色剤としては、例えば、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、ニッケルアゾ錯体、フタロシアニンブルー、アゾメチンアゾブラック等の有機顔料(染料を含む)、アルミニウム、真鍮等の金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等のパール顔料が挙げられる。
【0089】
バインダー樹脂としては、例えば、ウレタン系樹脂、アクリルポリオール系樹脂、アクリル系樹脂、エステル系樹脂、アミド系樹脂、ブチラール系樹脂、スチレン系樹脂、ウレタン-アクリル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニルーアクリル共重合体、塩素化プロピレン系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、酢酸セルロース系樹脂が挙げられる。
【0090】
意匠層は、必要に応じて、紫外線吸収剤、光安定剤、硬化剤、可塑剤、触媒等の添加剤を含有していてもよい。意匠層の厚さは、例えば、0.5μm以上、20μm以下であり、1μm以上、10μm以下であってもよく、2μm以上、5μm以下であってもよい。
【0091】
意匠層の形成方法としては、例えば、着色剤、バインダー樹脂および溶剤を含有するインキを塗工し、その後、乾燥する方法が挙げられる。塗工法としては、グラビア印刷法が好ましい。
【0092】
(c)他の層
本開示における化粧シートは、
図4(a)に示すように、基材層51および意匠層52を少なくとも有することが好ましい。また、本開示における化粧シートは、これらの層に加えて、他の層を有していてもよい。他の層としては、例えば、透明性樹脂層、接着剤層、セパレータ層、プライマー層が挙げられる。例えば
図4(b)に示す化粧シート5は、基材層51、意匠層52に加えて、透明性樹脂層53、表面保護層54を有する。
【0093】
(c-1)透明性樹脂層
本開示における化粧シートは、透明性樹脂層を有することにより、化粧シートの強度を高めることができる。透明性樹脂層は、意匠層を視認できる程度に透明であればよく、無色透明の他、着色透明および半透明であってもよい。
【0094】
透明性樹脂層を構成する樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(以下、「ABS樹脂」とも称する。)、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂が挙げられる。加工適性を考慮すると、中でも、ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル樹脂が好ましい。樹脂は、単独で、又は2種以上を用いてもよい。
【0095】
透明性樹脂層は、必要に応じて、添加剤を含む。添加剤としては、例えば紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候剤が挙げられる。耐候剤としては、既述のものから適宜選択して用いればよい。
【0096】
透明性樹脂層の厚さは、加工適性を考慮すると、例えば20μm以上150μm以下であり、40μm以上120μm以下であってもよく、60μm以上100μm以下であってもよい。
【0097】
透明性樹脂層の形成方法としては、例えば、樹脂組成物を塗布する方法、樹脂フィルムをドライラミネートにより積層する方法が挙げられる。
【0098】
(c-2)層間接着剤層
化粧シートは、化粧シートの層間に配置される層間接着剤層を有していてもよい。層間接着剤層の位置は、特に限定されない。層間接着剤層は、基材層および意匠層の間に配置されていてもよい。また、化粧シートが透明性樹脂層を有する場合、層間接着剤層は、意匠層と透明性樹脂層との間に配置されていてもよい。
【0099】
層間接着剤層は、樹脂を含有する。上記樹脂としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン-アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体(EMAA)、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、アルキド系樹脂、石油系樹脂、ケトン系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂繊維素誘導体、ゴム系樹脂が挙げられる。
【0100】
層間接着剤層の厚さは、例えば、0.1μm以上、10μm以下である。また、層間接着剤層の形成方法としては、例えば、樹脂および溶剤を含有する樹脂組成物を塗工し、その後、乾燥する方法が挙げられる。
【0101】
(c-3)プライマー層
本開示における化粧シートは、化粧シートを構成する複数の層の層間密着性を向上させるために、プライマー層を有してもよい。
【0102】
プライマー層は、主としてバインダー樹脂から構成され、必要に応じて、紫外線吸収剤、光安定剤等の添加剤を含有してもよい。
【0103】
バインダー樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、アクリルポリオール樹脂、アクリル樹脂、エステル樹脂、アミド樹脂、ブチラール樹脂、スチレン樹脂、ウレタン-アクリル共重合体、ポリカーボネート系ウレタン-アクリル共重合体(ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、末端、側鎖に2個以上の水酸基を有する重合体(ポリカーボネートポリオール)由来のウレタン-アクリル共重合体)、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-アクリル共重合体樹脂、塩素化プロピレン樹脂、ニトロセルロース樹脂(硝化綿)、酢酸セルロース樹脂が挙げられる。これらは、単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
【0104】
また、バインダー樹脂としては、上記の樹脂に、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤等の硬化剤を添加し、架橋硬化させる樹脂であってもよい。例えば、アクリルポリオール樹脂等のポリオール系樹脂をイソシアネート系硬化剤で架橋硬化させる樹脂が好ましく、アクリルポリオール樹脂をイソシアネート系硬化剤で架橋硬化させる樹脂がより好ましい。
【0105】
プライマー層の厚さは、例えば0.5μm以上であり、1μm以上であってもよく、2μm以上であってもよい。また、プライマー層の厚さは、例えば10μm以下であり、8μm以下であってもよく、6μm以下であってもよい。
【0106】
プライマー層の形成方法としては、樹脂組成物を塗布し、必要に応じて、乾燥、硬化する方法が挙げられる。
【0107】
(c-4)表面保護層
本開示における化粧シートは、意匠層の基材層とは反対側の面に、表面保護層を有していてもよい。化粧シートは、表面保護層を最表層として有していてもよい。表面保護層を有することにより、耐久性(例えば、耐傷性、耐汚染性、耐候性)を付与することができる。一方、化粧シートは、表面保護層を有していなくてもよい。
【0108】
表面保護層は、樹脂成分を含有する。樹脂成分は、主にバインダー樹脂として機能する。表面保護層は、樹脂成分として、樹脂組成物、および、その硬化物の少なくとも一方を含有することが好ましい。上記硬化物は、硬化性樹脂組成物を電離放射線により硬化した硬化物であってもよく、硬化性樹脂組成物を熱により硬化した硬化物であってもよい。
【0109】
硬化性樹脂組成物としては、例えば、電離放射線硬化性樹脂組成物、熱硬化性樹脂組成物が挙げられる。耐擦傷性および生産効率の観点では、電離放射線硬化性樹脂組成物が好ましい。すなわち、表面保護層は、樹脂成分として、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含有することが好ましい。
【0110】
電離放射線硬化性樹脂組成物の具体例としては、電子線硬化性樹脂組成物、紫外線硬化性樹脂組成物が挙げられる。中でも、電子線硬化性樹脂組成物は、重合開始剤が不要のため臭気が少ない、着色が生じにくい等の利点がある。
【0111】
電離放射線硬化性樹脂組成物は、電離放射線硬化性官能基を有する化合物(以下、「電離放射線硬化性化合物」ともいう)を含む組成物である。電離放射線硬化性官能基は、電離放射線の照射によって架橋硬化する基であり、その具体例としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性二重結合を有する官能基が挙げられる。また、電離放射線硬化性官能基の他の具体例としては、エポキシ基、オキセタニル基が挙げられる。本明細書において、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基またはメタクロイル基をいう。また、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレートまたはメタクリレートをいう。また、電離放射線とは、電磁波または荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するものをいい。電離放射線の具体例としては、紫外線(UV)、電子線(EB)が挙げられる。電離放射線の他の具体例としては、X線、γ線等の電磁波、α線、イオン線等の荷電粒子線が挙げられる。
【0112】
電離放射線硬化性樹脂組成物は、電離放射線硬化性化合物を1種のみ含有していてもよく、2種以上含有していてもよい。電離放射線硬化性化合物の種類は、特に限定されず、公知の重合性モノマー、公知の重合性オリゴマー(重合性プレポリマー)を用いることができる。
【0113】
電離放射線硬化性化合物は、エチレン性不飽和結合基を2つ以上有する化合物を含むことが好ましい。中でも、電離放射線硬化性化合物は、エチレン性不飽和結合基を2つ以上有する、多官能性(メタ)アクリレート系化合物を含むことが好ましい。多官能性(メタ)アクリレート系化合物は、モノマーであってもよく、オリゴマーであってもよい。
【0114】
多官能性(メタ)アクリレート系化合物は、2官能(メタ)アクリレート系モノマーであってもよく、3官能以上の(メタ)アクリレート系モノマーであってもよい。2官能(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAテトラエトキシジアクリレート、ビスフェノールAテトラプロポキシジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレートが挙げられる。3官能以上の(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性トリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0115】
多官能性(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート等のアクリレート系重合体が挙げられる。
【0116】
ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、多価アルコールおよび有機ジイソシアネートと、ヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応によって得られる。また、エポキシ(メタ)アクリレートは、例えば、エポキシ系樹脂と、(メタ)アクリル酸との反応によって得られる。この反応の際に、多塩基酸およびフェノール類の少なくとも一方を、さらに用いてもよい。エポキシ系樹脂は、2官能であってもよく、3官能以上であってもよい。また、エポキシ系樹脂としては、例えば、芳香族エポキシ系樹脂、脂環族エポキシ系樹脂、脂肪族エポキシ系樹脂が挙げられる。
【0117】
電離放射線硬化性化合物は、シリコーン(メタ)アクリレートを含んでいてもよい。シリコーン(メタ)アクリレートを用いることで、表面保護層の耐汚染性が向上する。シリコーン(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリシロキサンを含むシリコーンオイルが挙げられる。シリコーン(メタ)アクリレートは、ポリシロキサンの末端に、(メタ)アクリル基を導入した変性シリコーンオイルであってもよい。シリコーン(メタ)アクリレートの含有量は、電離放射線硬化性化合物(シリコーン(メタ)アクリレートを除く)100質量部に対して、例えば、1質量部以上、7質量部以下であり、2質量部以上、5質量部以下であってもよい。
【0118】
電離放射線硬化性化合物が、紫外線硬化性化合物である場合、電離放射線硬化性樹脂組成物は、光重合開始剤、光重合促進剤等の添加剤を含むことが好ましい。光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、ベンゾフェノン、α-ヒドロキシアルキルフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、α-アシルオキシムエステル、チオキサントンが挙げられる。光重合促進剤としては、例えば、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステルが挙げられる。
【0119】
一方、熱硬化性樹脂組成物は、少なくとも熱硬化性樹脂を含む組成物である。この樹脂組成物は、加熱により、硬化する。熱硬化性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、尿素メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、硬化剤および硬化触媒等の添加剤を含有していてもよい。
【0120】
表面保護層は、添加剤として、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗アレルゲン剤の少なくとも一つをさらに含有していてもよい。酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤が挙げられる。中でも、リン系酸化防止剤は、光による表面保護層の変色を効果的に抑制できる。また、光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系化合物が挙げられる。ヒンダードアミン系化合物は、通常、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン骨格を分子内に含む構造を有する。ヒンダードアミン系化合物としては、例えば、NH型ヒンダードアミン系化合物、NR型ヒンダードアミン系化合物、NOR型ヒンダードアミン系化合物が挙げられる。また、紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤が挙げられる。
【0121】
表面保護層の厚さは、特に限定されないが、例えば、1μm以上50μm以下である。表面保護層が薄いと、十分に耐久性を付与することができない場合があり、表面保護層が厚いと、意匠層の視認性が低下してしまう場合がある。表面保護層の厚さは、3μm以上40μm以下であってもよく、5μm以上35μm以下であってもよい。
【0122】
表面保護層の形成方法としては、例えば、樹脂成分と、添加物とを含有する混合物を、樹脂層の面に塗工し、乾燥し、硬化させる方法が挙げられる。また、離型性を有する基板の面に、上記混合物を塗工し、乾燥し、硬化させて表面保護層を形成し、その表面保護層を、樹脂層上に転写してもよい。
【0123】
化粧シートは、基材層を基準として、表面保護層側の最表面に、エンボス模様を有していてもよい。中でも、表面保護層の基材層とは反対側の面に、エンボス模様が配置されていることが好ましい。エンボス模様としては、例えば、木目板導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチャア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝が挙げられる。
【0124】
エンボス模様の形成方法としては、例えば、化粧シートを加熱し、エンボス版を押圧する方法が挙げられる。化粧シートの加熱温度は、例えば、80℃以上、260℃以下であり、85℃以上、200℃以下であってもよく、100℃以上、180℃以下であってもよい。
【0125】
(2)被着体
被着体としては、例えば、木質部材、樹脂部材、金属部材、窯業部材が挙げられる。
【0126】
被着体は、木質部材であってもよい。木質部材としては、例えば、木質繊維板が挙げられる。木質繊維板としては、例えば、木材単板、木材合板、集成材、パーティクルボード、MDF(中密度繊維板)が挙げられる。木質部材の材料としては、例えば、杉、檜、松、ラワン等の木材が挙げられる。
【0127】
被着体は、金属部材であってもよい。金属部材に用いられる金属としては、例えば、鉄、アルミニウム、銅、これら金属の1種以上を含む合金が挙げられる。
【0128】
被着体は、樹脂部材であってもよい。樹脂部材に用いられる樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)樹脂、フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ゴムが挙げられる。
【0129】
被着体は、窯業部材であってもよい。窯業部材の材料は、ガラス、陶磁器等のセラミックスであってもよく、石膏等の非セメント窯業系材料であってもよく、ALC(軽量気泡コンクリート)等の非陶磁器窯業系材料であってもよい。
【0130】
(3)剥離シート
本実施態様における剥離シートとしては、上述した「A.剥離シート」の内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0131】
(4)接着剤層(第1接着剤層および第2接着剤層)
本実施態様における化粧材は、剥離シートと化粧シートとの間に、第1接着剤層を有していてもよい。また、剥離シートと被着体との間に、第2接着剤層を有していてもよい。
これらの接着剤層は、透明であってもよく、不透明であってもよい。
【0132】
第1接着剤層および第2接着剤層に用いられる接着剤としては、例えば、硬化型接着剤、感圧型接着剤が挙げられる。ドライラミネート方式の貼り合せ方法に用いられるものが好ましく、例えば、熱硬化型樹脂が代表的である。
【0133】
具体例としては、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ゴム系接着剤が挙げられる。また、接着層として、OCA(Optically Clear Adhesive)又はOCR(Optically Clear Resin)を用いることもできる。
【0134】
第1接着剤層および第2接着剤層の厚さは、効率よく所望の接着力を得る観点から、例えば、5μm以上100μm以下であり、10μm以上75μm以下であってもよく、20μm以上50μm以下であってもよい。
【0135】
第1接着剤層および第2接着剤層の形成方法としては、例えば、接着剤組成物を塗布する方法、接着フィルムをドライラミネートにより積層する方法が挙げられる。
【0136】
第1接着剤層および第2接着剤層の形成に用いられる樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリル変性ポリオレフィン、塩素化ポリオレフィン、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、スチレン-(メタ)アクリル共重合体、ポリエステル、ポリウレタン及びポリアミドが挙げられる。イソシアネート化合物等を硬化剤とする、二液硬化型のポリウレタン系接着剤又はポリエステル系接着剤も適用し得る。接着剤としては、(メタ)アクリル系、ウレタン系、シリコーン系又はゴム系の粘着剤(感圧接着剤)も挙げられる。
【0137】
(5)製造方法
本実施態様における化粧材の製造方法としては、例えば、上述の化粧シートと、上述の剥離シートを準備する工程と、化粧シートの基材層側の面を、剥離シートの第1面に貼り合わせる工程(化粧シート積層工程)と、剥離シートの第2面を、被着体に貼り合わせる工程(被着体積層工程)と、を有する。化粧シート積層工程と被着体積層工程とは、いずれを先に行ってもよい。また、化粧シートと剥離シートとは、第1接着剤層を介して貼り合わせることが好ましい。また、被着体と剥離シートとは、第2接着剤層を介して貼り合わせることが好ましい。
【0138】
ここで、剥離シートは、上述したように下地層およびバリア層を有する。第1面は下地層の表面であり、第2面はバリア層の表面であってもよい。また、第1面がバリア層の表面であり、第2面が下地層の表面であってもよい。また、剥離シートが、下地層の両面にバリア層を有する場合には、第1面および第2面はバリア層の表面である。
【0139】
II.第2実施態様
図5(a)~(c)は、加飾体が化粧板の場合の、本開示における化粧材を例示する概略断面図である。
図5(a)~(c)に示す化粧材100d、100e、100fは、厚さ方向D
Tにおいて、被着体3と、剥離シート10と、化粧板6と、をこの順に有する。化粧板6は、例えば、厚さ方向D
Tにおいて、剥離シート10側から、基体層61、基材層62および意匠層63を、この順に有する。
【0140】
ここで、
図5(a)に示す化粧材100dは、下地層1と化粧板6との間にバリア層2を有しており、バリア層2は、基体層61と接触している。このような化粧材であれば、剥離シート10におけるバリア層2によって、基体層61および基材層62の含浸樹脂の下地層1への浸透が抑制され、下地層1での紙間剥離が容易となる。
なお、
図5(a)に示すように、剥離シート10と化粧板6とが接触しており、剥離シート10と被着体3との間の両方に接着剤層4が配置されている場合であっても、剥離シート10は、少なくとも一方の面側からの含浸樹脂または接着剤樹脂の下地層1への浸透が抑制されていれば、上述の効果が得られる。
【0141】
図5(b)に示す化粧材100eは、下地層1と被着体3との間に、バリア層2を有しており、バリア層2と被着体3との間に第2接着剤層4bを有する。このような化粧材であれば、剥離シート10におけるバリア層2によって、接着剤層4の接着剤樹脂の下地層1への浸透が抑制され、下地層1での紙間剥離が容易となる。
【0142】
図5(c)に示す化粧材100fは、下地層1と化粧板6との間にバリア層2を有しており、バリア層2は、基体層61と接触している。さらに、化粧材100fは、下地層1と被着体3との間に、バリア層2を有しており、バリア層2と被着体3との間に接着剤層4を有する。このような化粧材であれば、剥離シートにおけるバリア層によって、基体層61および基材層62の含浸樹脂の下地層1への浸透、および接着剤層4の接着剤樹脂の下地層1への浸透が抑制され、下地層での紙間剥離が容易となる。
【0143】
(1)化粧板
本開示における加飾体は、例えば、化粧板である。
図6は、本開示における化粧板を例示する概略断面図である。
図6(a)に示す化粧板6は、厚さ方向D
Tにおいて、基体層61、基材層62および意匠層63を、この順に有する。
図6(b)に示す化粧板6は、厚さ方向D
Tにおいて、基体層61、基材層62、意匠層63および硬化樹脂層64を、この順に有する。
図6(c)に示す化粧板6は、基体層61、基材層62、意匠層63およびパターン形状を有する離型層65を、この順に有し、さらに、離型層65のパターン間に配置された硬化樹脂層64を有する。
【0144】
(a)基体層
基体層としては、例えば、多孔質なコア基材が挙げられる。コア基材としては、例えば、フェノール樹脂含浸紙が挙げられる。フェノール樹脂含浸紙は、例えば、コア紙であるクラフト紙にフェノール樹脂を含浸し、乾燥させることにより得られる紙である。
【0145】
(b)基材層
基材層としては、例えば、多孔質基材が挙げられる。多孔質基材として、例えば、浸透性のある繊維質基材が挙げられる。浸透性のある繊維質基材としては、例えば、紙、合成紙、不織布、織布が挙げられる。上記紙としては、例えば、チタン紙、薄葉紙、クラフト紙、リンター紙、板紙、石膏ボード紙、上質紙、コート紙、パーチメント紙、和紙が挙げられる。また、繊維質基材として、ビニル壁紙原反(紙にポリ塩化ビニル樹脂をドライラミネートしたもの)を用いることもできる。繊維質基材の他の例としては、ガラス繊維、石綿、チタン酸カリウム繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、炭素繊維等の無機等繊維質を含む、不織布または織布が挙げられる。また、繊維質基材の他の例としては、ポリエステル、ビニロン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂繊維を含む、不織布または織布が挙げられる。これらの多孔質基材の中でも、熱硬化性樹脂の含浸性の点で、チタン紙、薄葉紙、クラフト紙、コート紙、アート紙、硫酸紙、グラシン紙、パーチメント紙、パラフィン紙および和紙が好ましい。
【0146】
多孔質基材は、着色されていてもよい。例えば、多孔質基材の製造段階で、着色剤を配合することにより、着色された多孔質基材が得られる。例えば、多孔質基材が紙である場合、抄造段階で着色剤を配合することにより、着色された紙が得られる。着色剤としては、例えば、二酸化チタン、カーボンブラック、酸化鉄等の無機顔料、フタロシアニンブルー等の有機顔料、各種の染料が挙げられる。また、着色剤の配合量は、所望の色合いに応じて適宜設定される。また、多孔質基材は、必要に応じて、充填剤、艶消し剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤等の各種の添加剤を含有していてもよい。
【0147】
多孔質基材の坪量は、特に限定されないが、例えば、40g/m2以上、150g/m2以下である。多孔質基材の厚さは、特に限定されないが、例えば、50μm以上、170μm以下である。例えば、意匠層を形成するインキの密着性を高めるために、多孔質基材の意匠層側の面に、コロナ放電処理が施されていてもよい。
【0148】
上記基体層および上記基材層は、硬化性樹脂の硬化物を含むことが好ましい。硬化性樹脂としては、熱硬化型の樹脂を広く使用することができる。熱硬化性樹脂として、メラミン系樹脂(メラミン系樹脂前駆体)、メラミン-尿素共縮合体系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂(2液硬化型ポリウレタンも含む)、エポキシ系樹脂、アミノアルキッド系樹脂、フェノール系樹脂、尿素系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、グアナミン系樹脂、珪素系樹脂、ポリシロキサン系樹脂が挙げられる。
【0149】
(c)意匠層
意匠層としては、第1実施態様における化粧シートの意匠層と同様の内容であるため、ここでの説明は省略する。
【0150】
(d)他の層
本実施態様における化粧板は、
図6(b)に示すように、意匠層63の基材層62とは反対側に、硬化樹脂層64を有していてもよい。硬化樹脂層は、例えば、上述した基体層および基材層に充填された硬化性樹脂の硬化物と、同一の硬化性樹脂により形成される。
【0151】
硬化樹脂層の厚さは、特に限定されないが、例えば、1μm以上であり、10μm以上であってもよい。一方、硬化樹脂層の厚さは、例えば、500μm以下であり、300μm以下であってもよい。
【0152】
本実施態様における化粧板は、
図6(c)に示すように、意匠層63の基材層62とは反対側の面に配置され、パターン形状を有する離型層65を有していてもよい。離型層65を有することにより、例えば、硬化樹脂層64がグロス調の意匠感を与え、離型層65がマット調の意匠感を与えることにより、鮮明なグロスマット調の意匠感を表現することができる。
【0153】
また、離型層は、絵柄層の柄と同調するように配置されていることが好ましい。「同調」とは、対象となる2つのパターンの形状および位置が概ね一致することをいう。具体的には、離型層のパターンと、絵柄層の絵柄を構成する少なくとも一部のパターンとの、形状および位置が、リアル感および高級感を損ねない程度に一致することをいう。離型層のパターンを、絵柄層の柄と同調させるように配置することで、高い質感が得られる。
【0154】
離型層は、樹脂成分を含有する。樹脂成分は、典型的には、硬化性樹脂の硬化物(架橋構造体)である。一方、樹脂成分は、熱可塑性樹脂であってもよい。中でも、離型層は、硬化性樹脂の硬化物を含有することが好ましい。耐摩耗性が良好な離型層が得られるからである。また、離型層が、硬化性樹脂の硬化物を含有することで、硬化樹脂層に対する離型性が良好になる。
【0155】
硬化性樹脂としては、例えば、電離放射線硬化性樹脂および熱硬化性樹脂が挙げられる。電離放射線硬化性樹脂としては、例えば、電子線硬化性樹脂および紫外線硬化性樹脂が挙げられる。
【0156】
電離放射線硬化性樹脂(電離放射線硬化性化合物)は、電離放射線の照射により架橋重合反応を生じ、3次元の高分子構造に変化する材料であれば限定されない。電離放射線硬化性樹脂としては、例えば、電離放射線の照射により架橋可能な重合性不飽和結合またはエポキシ基を分子中に有する、プレポリマー、オリゴマーおよびモノマーが挙げられる。本開示においては、電離放射線硬化性樹脂を1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。中でも、電離放射線硬化性樹脂をとして、多官能モノマーおよびオリゴマーの少なくとも一方を用いることが好ましい。
【0157】
電離放射線硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、エステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系樹脂;シロキサン等のケイ素系樹脂;エステル系樹脂;エポキシ系樹脂が挙げられる。(メタ)アクリレート系樹脂とは、アクリレート系樹脂またはメタクリレート系樹脂をいう。
【0158】
電離放射線硬化性樹脂の重量平均分子量は、例えば、500以上、80,000以下であり、1,000以上、50,000以下であってもよい。重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレンを標準物質に用いて測定される値である。
【0159】
電離放射線硬化性樹脂として、重量平均分子量が500以上である、多官能モノマーまたはオリゴマーを少なくとも含有することが好ましい。このような多官能モノマーまたはオリゴマーとしては、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系樹脂が挙げられる。
【0160】
一方、熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和エステル系樹脂、ウレタン系樹脂(2液硬化型ポリウレタンも含む)、エポキシ系樹脂、アミノアルキッド系樹脂、フェノール系樹脂、尿素系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、メラミン系樹脂、グアナミン系樹脂、メラミン尿素共縮合系樹脂、珪素系樹脂、シロキサン系樹脂が挙げられる。
【0161】
離型層は、マット化剤を含有していてもよい。マット化剤としては、例えば、無機粒子、合成樹脂粒子が挙げられる。無機粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、カオリンが挙げられる。合成樹脂粒子としては、例えば、アクリルビーズ、ウレタンビーズ、ナイロンビーズ、シリコーンビーズ、シリコーンゴムビーズ、ポリカーボネートビーズ、ポリオレフィンワックス(例えば、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス)が挙げられる。
【0162】
(2)被着体
本実施態様における被着体としては、第1実施態様の化粧材における被着体の内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0163】
(3)剥離シート
本実施態様における剥離シートとしては、上述した「A.剥離シート」の内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0164】
(4)接着剤層
本実施態様における化粧材は、剥離シートと被着体との間に接着剤層を有していてもよい。接着剤層としては、第1実施態様の化粧材における第1接着剤層および第2接着剤層の内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0165】
(5)製造方法
本実施態様における化粧材の製造方法としては、例えば、上述の剥離シートと、硬化性樹脂を含む基体層および基材層を有する積層体と、を準備する工程と、積層体の基体層側の面を、剥離シートの第1面に貼り合わせ、加熱および加圧を行い、例えば、基体層および基材層に含まれる硬化性樹脂を硬化させる工程と、剥離シートの第2面を、被着体に貼り合わせる工程と、を有する。剥離シートと被着体とは、第2接着剤層を介して貼り合わせることが好ましい。
【0166】
ここで、剥離シートは、上述したように下地層とバリア層を有する。第1面は下地層の表面であり、第2面はバリア層の表面であってもよい。また、第1面がバリア層の表面であり、第2面が下地層の表面であってもよい。また、剥離シートが、下地層の両面にバリア層を有する場合には、第1面および第2面はバリア層の表面である。
【0167】
本開示における上記第1実施態様および第2実施態様の化粧材の用途としては、例えば、壁、天井、床、屋根、軒天井、柵、門扉等の建築部材;窓枠、扉、手すり、幅木、廻り縁、モール等の建具又は造作部材;箪笥、棚、机等の一般家具;食卓、流し台等の厨房家具;台所、トイレ、風呂場、洗面台等の水廻りで用いられる各種家具;家電、OA機器等のキャビネット等の表面化粧板;車両の内装又は外装用部材が挙げられる。また、本開示における化粧材は、屋外で使用される部材(外装用部材)であってもよく、屋内で使用される部材(内装用部材)であってもよい。
【0168】
本開示は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態は例示であり、本開示における特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示における技術的範囲に包含される。
【実施例0169】
[実施例1]
下地層として、クラフトパルプ、紙力増強剤およびサイズ剤を含む紙1(坪量60g/m2、厚さ95μm、紙単体の紙間剥離強度 600mN/15mm)を用い、下地層の一方の面に下記方法により調製したバリア層用組成物1をグラビア印刷法により2回に分けて塗布し、厚さ10μmのバリア層を形成した。これにより、剥離シートを得た。なお、紙単体の紙間剥離強度とは、バリア層形成前の紙の紙間剥離強度である。
【0170】
(バリア層用組成物1)
下記主剤インク、硬化剤および希釈溶剤を、100:5:40の質量比で混合した。
・主剤インク
アクリルポリオール 20質量%
シリカ 10質量%
溶剤 メチルエチルケトン/酢酸エチル/酢酸ブチル=5質量%/45質量%/20質量%
・硬化剤
ポリイソシアネート(HDI)/酢酸エチル=75質量%/25質量%
・希釈溶剤
酢酸エチル
【0171】
次に、剥離シートのバリア層側の面に、フェノール樹脂含浸紙とメラミン樹脂含浸紙を含む化粧板を積層させ、熱プレスにて剥離シートと化粧板の積層体を成形した。積層体の剥離シート側の面(下地層の面)と、被着体(パーティクルボード)とを、接着剤(ノーテープ工業製 ウレタン樹脂系溶剤型接着剤)を介して貼り合わせた。これにより、化粧板である加飾体と、被着体と、加飾体および被着体の間に配置された剥離シートと、を有する化粧材を得た。
【0172】
[実施例2]
下地層として上記紙1を用い、下地層の一方の面に上記バリア層用組成物1をグラビア印刷法により2回に分けて塗布し、厚さ10μmのバリア層を形成した。これにより、剥離シートを得た。
【0173】
剥離シートの下地層側の面に、溶剤系接着剤(ノーテープ工業製 ウレタン樹脂系溶剤型接着剤)を10g/m2の塗布量で塗布し、ロールラミネート方式で被着体へ貼り合わせ、積層体を得た。次に、ポリエチレン樹脂を含む基材層および絵柄層を含む化粧シートの基材層側の面(絵柄層面の反対側)に、溶剤系接着剤(ノーテープ工業製 ウレタン樹脂系溶剤型接着剤)を10g/m2の塗布量で塗布し、ロールラミネート方式で、積層体の剥離シート側の面に貼り合わせた。これにより、化粧シートである加飾体と、被着体と、加飾体および被着体の間に配置された剥離シートと、を有する化粧材を得た。
【0174】
[実施例3]
下地層として上記紙1を用い、下地層の一方の面に上記バリア層用組成物1をグラビア印刷法により2回に分けて塗布し、厚さ10μmのバリア層を形成した。これにより、剥離シートを得た。
【0175】
剥離シートの下地層側の面に、溶剤系接着剤10g/m2を塗布し、ロールラミネート方式で被着体へ貼り合わせ、積層体を得た。次に、ポリエチレンテレフタレート樹脂を含む基材層および絵柄層を含む化粧シートの基材層側の面(絵柄層面の反対側)に、溶剤系接着剤を10g/m2の塗布量で塗布し、ロールラミネート方式で、積層体の剥離シート側の面に貼り合わせた。これにより、化粧シートである加飾体と、被着体と、加飾体および被着体の間に配置された剥離シートと、を有する化粧材を得た。
【0176】
[実施例4]
下地層として上記紙1を用い、下地層の一方の面に上記バリア層用組成物1をグラビア印刷法により2回に分けて塗布し、厚さ15μmのバリア層を形成した。これにより、剥離シートを得た。
【0177】
剥離シートの下地層側の面に、溶剤系接着剤10g/m2を塗布し、ロールラミネート方式で被着体へ貼り合わせ、積層体を得た。次に、ポリエチレンテレフタレート樹脂を含む基材層および絵柄層を含む化粧シートの基材層側の面(絵柄層面の反対側)に、溶剤系接着剤を10g/m2の塗布量で塗布し、ロールラミネート方式で、積層体の剥離シート側の面に貼り合わせた。これにより、化粧シートである加飾体と、被着体と、加飾体および被着体の間に配置された剥離シートと、を有する化粧材を得た。
【0178】
[実施例5]
下地層として、クラフトパルプ、紙力増強剤およびサイズ剤を含む紙2(坪量55g/m2、厚さ90μm、紙単体の紙間剥離強度800mN/15mm)を用い、下地層の一方の面に上記バリア層用組成物1をグラビア印刷法により2回に分けて塗布し、厚さ15μmのバリア層を形成した。これにより、剥離シートを得た。なお、紙単体の紙間剥離強度とは、バリア層形成前の紙の紙間剥離強度である。
【0179】
剥離シートの下地層側の面に、溶剤系接着剤10g/m2を塗布し、ロールラミネート方式で被着体へ貼り合わせ、積層体を得た。次に、ポリエチレン樹脂を含む基材層および絵柄層を含む化粧シートの基材層側の面(絵柄層面の反対側)に、溶剤系接着剤を10g/m2の塗布量で塗布し、ロールラミネート方式で、積層体の剥離シート側の面に貼り合わせた。これにより、化粧シートである加飾体と、被着体と、加飾体および被着体の間に配置された剥離シートと、を有する化粧材を得た。
【0180】
[実施例6]
下地層として紙1を用い、下地層の一方の面にバリア層用組成物1をグラビア印刷法により2回に分けて塗布し、厚さ6μmのバリア層を形成した。これにより、剥離シートを得た。
【0181】
次に、剥離シートのバリア層側の面に、フェノール樹脂含浸紙とメラミン樹脂含浸紙を含む化粧板を積層させ、熱プレスにて剥離シートと化粧板の積層体を成形した。積層体の剥離シート側の面(下地層の面)と、被着体とを、接着剤を介して貼り合わせた。これにより、化粧板である加飾体と、被着体と、加飾体および被着体の間に配置された剥離シートと、を有する化粧材を得た。
【0182】
[実施例7]
下地層として上記紙1を用い、下地層の一方の面に上記バリア層用組成物1をグラビア印刷法により2回に分けて塗布し、厚さ8.5μmのバリア層を形成した。これにより、剥離シートを得た。
【0183】
剥離シートの下地層側の面に、溶剤系接着剤10g/m2を塗布し、ロールラミネート方式で被着体へ貼り合わせ、積層体を得た。次に、ポリエチレン樹脂を含む基材層および絵柄層を含む化粧シートの基材層側の面(絵柄層面の反対側)に、溶剤系接着剤を10g/m2の塗布量で塗布し、ロールラミネート方式で、積層体の剥離シート側の面に貼り合わせた。これにより、化粧シートである加飾体と、被着体と、加飾体および前記被着体の間に配置された剥離シートと、を有する化粧材を得た。
【0184】
[実施例8]
下地層として紙1を用い、下地層の一方の面にバリア層用組成物1をグラビア印刷法により2回に分けて塗布し、厚さ15μmのバリア層を形成した。これにより、剥離シートを得た。
【0185】
次に、剥離シートのバリア層側の面に、フェノール樹脂含浸紙とメラミン樹脂含浸紙を含む化粧板を積層させ、熱プレスにて剥離シートと化粧板の積層体を成形した。積層体の剥離シート側の面(下地層の面)と、被着体とを、接着剤を介して貼り合わせた。これにより、化粧板である加飾体と、被着体と、加飾体および前記被着体の間に配置された剥離シートと、を有する化粧材を得た。
【0186】
[実施例9]
下地層として、クラフトパルプ、紙力増強剤およびサイズ剤を含む紙3(坪量45g/m2、厚さ80μm、紙単体の紙間剥離強度1500mN/15mm)を用い、下地層の一方の面に上記バリア層用組成物1をグラビア印刷法により2回に分けて塗布し、厚さ10μmのバリア層を形成した。これにより、剥離シートを得た。
【0187】
次に、剥離シートのバリア層側の面に、フェノール樹脂含浸紙とメラミン樹脂含浸紙を含む化粧板を積層させ、熱プレスにて剥離シートと化粧板の積層体を成形した。積層体の剥離シート側の面(下地層の面)と、被着体とを、接着剤を介して貼り合わせた。これにより、化粧板である加飾体と、被着体と、加飾体および前記被着体の間に配置された剥離シートと、を有する化粧材を得た。
【0188】
[比較例1]
紙1の一方の面に、溶剤系接着剤10g/m2を塗布し、ロールラミネート方式で被着体へ貼り合わせ、積層体を得た。次に、ポリエチレン樹脂を含む基材層および絵柄層を含む化粧シートの基材層側の面(絵柄層面の反対側)に、溶剤系接着剤を10g/m2の塗布量で塗布し、ロールラミネート方式で、積層体の紙1側の面に貼り合わせた。これにより、化粧シートである加飾体と、被着体と、加飾体および被着体の間に配置された紙と、を有する化粧材を得た。
【0189】
[サイズ度の測定]
実施例および比較例1で用いた下地層(紙)のサイズ度を、上述した方法により測定した。測定結果を表1に示す。
【0190】
[紙間剥離強度の測定]
実施例で得られた剥離シート及び比較例1の紙を用い、上述した方法で、紙間剥離強度(実施例においてはバリア層形成後の紙間剥離強度)を測定した。測定結果を表1に示す。
【0191】
[表面粗さの測定]
実施例で得られた剥離シートのバリア層の下地層とは反対側の表面の算術平均高さ(Sa)を、上述した方法で測定した。また、比較例1で使用した紙の一方の面の表面の算術平均高さ(Sa)を、上述した方法で測定した。測定結果を表1に示す。
【0192】
[剥離性評価]
実施例および比較例で得られた化粧材の側面から、金属ヘラを押し当てて、被着体と剥離シートの剥離切っ掛けを作成し、その切っ掛けから素手で加飾体を剥がし、被着体との分離し易さを、下記評価基準により評価した。
A:紙間剥離し、加飾体と被着体を容易に分離可能。
B:一部紙間剥離しない箇所があるが、概ね加飾体と被着体が分離可能。
C:紙間剥離せず、加飾体が破損する等の現象により加飾体と被着体の分離が困難。
【0193】
【0194】
表1に示されるように、下地層およびバリア層を有する剥離シートを使用した化粧材は、加飾体を被着体から容易に分離することができた(実施例1~9)。一方、比較例1のように、紙を剥離層として使用した化粧材は、加飾体の分離が困難であることが確認された。また、実施例1~5は、実施例6と比較して、バリア層の厚さが大きいため、剥離性が良好であった。また、実施例1~5は、実施例7および実施例8と比較して、紙のサイズ度が大きいため、剥離性が良好であった。実施例1~5は、実施例9と比較して、紙間剥離強度が小さく、剥離性が良好であった。
【0195】
このように、本開示においては、例えば、以下の発明が提供される。
【0196】
[1]
化粧シートまたは化粧板である加飾体と、被着体と、を有する化粧材に用いられる剥離シートであって、
前記剥離シートは、厚さ方向において、前記加飾体および前記被着体の間に配置されるシートであり、
前記剥離シートは、紙である下地層と、前記下地層の一方の面に配置され、樹脂を含有するバリア層と、を有する、剥離シート。
【0197】
[2]
JIS P 8122に基づき測定される前記紙のサイズ度は、20秒間以上である、[1]に記載の剥離シート。
【0198】
[3]
前記紙の坪量は、30g/m2以上、100g/m2以下である、[1]または[2]に記載の剥離シート。
【0199】
[4]
前記紙は、植物性繊維を含有する、[1]から[3]までのいずれかに記載の剥離シート。
【0200】
[5]
前記バリア層は、前記樹脂として、アクリルポリオール系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ウレタン系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合系樹脂、エポキシ系樹脂、オレフィン系樹脂の少なくとも一種を含有する、[1]から[4]までのいずれかに記載の剥離シート。
【0201】
[6]
前記バリア層の厚さは、7μm以上である、[1]から[5]までのいずれかに記載の剥離シート。
【0202】
[7]
前記バリア層の算術平均高さ(Sa)は、4.0μm以下である、[1]から[6]までのいずれかに記載の剥離シート。
【0203】
[8]
前記剥離シートの紙間剥離強度は、1000mN/15mm以下である、[1]から[7]までのいずれかに記載の剥離シート。
【0204】
[9]
前記剥離シートは、前記下地層の両面に、それぞれ、前記バリア層を有する、[1]から[8]までのいずれかに記載の剥離シート。
【0205】
[10]
化粧シートまたは化粧板である加飾体と、被着体と、前記加飾体および前記被着体の間に配置された剥離シートと、を有し、
前記剥離シートは、紙である下地層と、前記下地層の一方の面に配置され、樹脂を含有するバリア層と、を有する、化粧材。
【0206】
[11]
前記加飾体は、前記化粧シートであり、
前記化粧シートは、厚さ方向において、前記剥離シート側から、基材層および意匠層を、この順に有する、[10]に記載の化粧材。
【0207】
[12]
前記加飾体は、前記化粧板であり、
前記化粧板は、厚さ方向において、前記剥離シート側から、基体層、基材層および意匠層を、この順に有する、[10]に記載の化粧材。
【0208】
[13]
前記化粧材は、前記下地層と前記加飾体との間に、前記バリア層を有する、[10]から[12]までのいずれかに記載の化粧材。
【0209】
[14]
前記化粧材は、前記バリア層と前記加飾体との間に、第1接着剤層を有する、[10]、[11]および[13]のいずれかに記載の化粧材。
【0210】
[15]
前記化粧材は、前記下地層と前記被着体との間に、前記バリア層を有する、[10]から[14]までのいずれかに記載の化粧材。
【0211】
[16]
前記化粧材は、前記バリア層と前記被着体との間に、第2接着剤層を有する、[10]から[15]までのいずれかに記載の化粧材。