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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134222
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】静電チャック
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20240926BHJP
   C23C 16/458 20060101ALI20240926BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALN20240926BHJP
【FI】
H01L21/68 R
C23C16/458
H01L21/302 101G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044419
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099793
【弁理士】
【氏名又は名称】川北 喜十郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154586
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 正広
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 誠浩
(72)【発明者】
【氏名】北林 徹夫
【テーマコード(参考)】
4K030
5F004
5F131
【Fターム(参考)】
4K030GA02
4K030KA23
4K030KA45
5F004BB22
5F004BB25
5F131AA02
5F131AA03
5F131AA32
5F131AA33
5F131BA03
5F131BA04
5F131BA19
5F131BA23
5F131CA02
5F131CA68
5F131EA03
5F131EB11
5F131EB24
5F131EB54
5F131EB82
5F131EB84
5F131EB85
(57)【要約】
【課題】基板に入熱した熱量を早期に取り除くことができ、半導体プロセスのハイパワー化に対応することができ、また、デチャック性の悪化を抑制できる静電チャックを提供する。
【解決手段】静電チャック100であって、セラミックス焼結体からなる基体110と、前記基体110に埋設された静電吸着用電極120と、前記基体110の上面112に開口する複数のガス導入穴118と、を備え、前記基体110は、載置される基板との接触率が30%以上99.5%以下の表面130を有し、前記表面130の表面粗さRaは0.2μm以下であり、前記表面130の粗さ曲線から求められるスキューネスRskは負である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電チャックであって、
セラミックス焼結体からなる基体と、
前記基体に埋設された静電吸着用電極と、
前記基体の上面に開口する複数のガス導入穴と、を備え、
前記基体は、載置される基板との接触率が30%以上99.5%以下の表面を有し、
前記表面の表面粗さRaは0.2μm以下であり、
前記表面の粗さ曲線から求められるスキューネスRskは負であることを特徴とする静電チャック。
【請求項2】
前記スキューネスRskは-1.0未満であることを特徴とする請求項1に記載の静電チャック。
【請求項3】
前記基体の前記上面に対向する下面に接合され、前記ガス導入穴に接続されるガス流路を有するベース部材を備えることを特徴とする請求項1に記載の静電チャック。
【請求項4】
前記基体の前記上面に対向する下面に接合され、前記ガス導入穴に接続されるガス流路を有するベース部材を備えることを特徴とする請求項2に記載の静電チャック。
【請求項5】
前記基体の前記上面から上方に突出して形成される複数のピン状凸部と、
前記複数のピン状凸部を取り囲むように前記基体の前記上面から上方に突出して形成される環状凸部と、を備え、
前記表面は、前記ピン状凸部の上端面および前記環状凸部の上端面により構成されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の静電チャック。
【請求項6】
前記基体の前記上面から上方に突出して形成される複数の島状凸部と、
前記複数の島状凸部を取り囲むように前記基体の前記上面から上方に突出して形成される環状凸部と、を備え、
前記表面は、前記島状凸部の上端面および前記環状凸部の上端面により構成されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の静電チャック。
【請求項7】
前記ピン状凸部の高さは5μm以上10μm以下であることを特徴とする請求項5に記載の静電チャック。
【請求項8】
前記島状凸部の高さは25μm以上1000μm以下であることを特徴とする請求項6に記載の静電チャック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電チャックに関する。
【背景技術】
【0002】
減圧容器内に基板(ウエハ)を設置し、基板上に原料ガスを供給して高周波電流(RF)などによって原料ガスをプラズマ化し、基板上に化学反応によって生成された物質を堆積させることで薄膜を形成するプラズマCVD等の成膜装置や、基板の表面に溝やパターン等を形成するため、プラズマを用いて削り取るプラズマエッチング等のエッチング装置において、基板を保持する手段として静電チャックが用いられている。
【0003】
上記のようなプラズマ処理工程では、発生した熱により基板の温度も上昇する。その際、それぞれの処理温度に適した温度となるように、基板の温度を調節するため種々の方法が取られている。例えば、静電チャックの基板保持面と対抗する面に、冷却水などの媒体を流通させる流路を有するアルミニウム等の金属により形成されたベース部材と接合したり、基板裏面と静電チャックの基板保持面との間の空間にHe等の不活性ガスを導入する熱伝達構造を設けたりして、基板の温度を一定に保っている。
【0004】
近年、製造プロセスの技術の進展によりプラズマの電力密度が増加しており、それに伴い基板への入射熱量も大きくなっている。基板への入射熱量の増加によって基板温度が過度に上昇し、パターン形成プロセスで不具合が発生するなど各工程の製造プロセスに影響を与える虞があるため、これまで以上に基板の冷却性能を高める必要がある。また、製造歩留まり向上のために早期に基板の温度を適切な温度に調節する必要がある。例えば、製造プロセスによって適切なプロセス処理温度は異なるが、100℃~400℃程度(アルミベースでは200℃程度まで)に制御する必要がある。
【0005】
特許文献1では、周辺部に設けられた突出した部分と、キャビティを形成する凹部と、各々が、接触面において終息するとともに前記周縁部分に設けられた前記突出した部分の表面と前記各々の接触面とが概ね同一平面上に設けられた複数の凸部とを有する中央部分と、前記キャビティ内へガスを供給するための少なくとも1つのガス入り口溝とを有する基板接触盤と、前記基板接触盤に熱的に接続されているとともに、冷却液を通すための溝を有する冷却盤とを有する基板冷却装置が開示されている。
【0006】
また、特許文献2では、静電チャックのガス溝を、等間隔に配置された複数の放射状溝と、放射状溝と連通し、同心円状に配置された複数の環状溝と、中心より1つ目の環状溝以降の領域で、隣り合う2つの環状溝と隣り合う2つの放射状溝で囲まれる各設置面を2つ以上に分断する少なくとも一つの放射方向に延びる仕切り溝とから構成し、隣り合う2つの環状溝と隣り合う2つの放射状溝で囲まれる設置面と、隣り合う2つの環状溝と放射状溝及び仕切り溝で囲まれる設置面と、隣り合う2つの環状溝と隣り合う2つの仕切り溝で囲まれる設置面が各々略同等の面積となるようにした静電チャックが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9-232415号公報
【特許文献2】特開2002-170868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1記載の複数の凸部は、基板との接触面がRa0.35μm~3.0μm程度に粗面化されており、また、基板と複数の凸部との接触率は2~20%程度である。特許文献1記載の冷却手段の主たる部分は、基板とキャビティ内のガスによる熱伝達であるが、接触率が低く、ガスの圧力も低かった(20Torr以下)。よって、特許文献1の基板冷却装置では、より大きな熱量を早期に伝熱するには不十分となる虞があった。
【0009】
特許文献2記載の技術では、基体の中央にのみ形成されたガス導入口から熱伝達ガスを導入し、放射状の溝を径方向に流れ、その後、環状の溝と合流しながら流れていく。特許文献2記載のガスの流路は複雑な流路であるために、流路の分岐点での熱伝達ガスの流れの不均一さや、基体中央から外径までのガスの流れのタイムラグなどから、基板全体における温度の均温化や、より大きな熱量を伝熱するためには不十分となる虞があった。また、ガス導入口から導入されるヘリウムガスの圧力も低かった(約10Torr)。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、基板に入熱した熱量を早期に取り除くことができ、半導体プロセスのハイパワー化に対応することができ、また、デチャック性の悪化を抑制できる静電チャックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)上記の目的を達成するため、本発明は、以下のような手段を講じた。すなわち、本発明の適用例の静電チャックは、静電チャックであって、セラミックス焼結体からなる基体と、前記基体に埋設された静電吸着用電極と、前記基体の上面に開口する複数のガス導入穴と、を備え、前記基体は、載置される基板との接触率が30%以上99.5%以下の表面を有し、前記表面の表面粗さRaは0.2μm以下であり、前記表面の粗さ曲線から求められるスキューネスRskは負であることを特徴としている。
【0012】
このように、基板との接触率を高めること、および基板と接触する表面の表面状態を上記の範囲とすることにより、基板と基体の表面との接触状態が良好となり、基板に入熱した熱量を早期に取り除くことができ、半導体プロセスのハイパワー化に対応することができる。また、基板から静電チャックへの伝熱を良好にしつつ、デチャック性の悪化を抑制できる。
【0013】
(2)また、上記(1)の適用例の静電チャックにおいて、前記スキューネスRskは-1.0未満であることを特徴としている。
【0014】
これにより、基板から静電チャックへの伝熱を維持しつつデチャック性の悪化をより抑制できる。
【0015】
(3)また、上記(1)または(2)の適用例の静電チャックにおいて、前記基体の前記上面に対向する下面に接合され、前記ガス導入穴に接続されるガス流路を有するベース部材を備えることを特徴としている。
【0016】
これにより、基体からベース部材への熱伝導を行うことができ、基板から基体への伝熱をより効率的に行うことができる。
【0017】
(4)また、上記(1)から(3)のいずれかの適用例の静電チャックにおいて、前記基体の前記上面から上方に突出して形成される複数のピン状凸部と、前記複数のピン状凸部を取り囲むように前記基体の前記上面から上方に突出して形成される環状凸部と、を備え、前記表面は、前記ピン状凸部の上端面および前記環状凸部の上端面により構成されることを特徴としている。
【0018】
これにより、基板に反りやうねりがある場合であっても基板を均等に吸着でき、ピン状凸部との接触による熱伝導とガスによる熱伝達効果によって基板への入射熱を均等に伝熱することができる。
【0019】
(5)また、上記(1)から(3)のいずれかの適用例の静電チャックにおいて、前記基体の前記上面から上方に突出して形成される複数の島状凸部と、前記複数の島状凸部を取り囲むように前記基体の前記上面から上方に突出して形成される環状凸部と、を備え、前記表面は、前記島状凸部の上端面および前記環状凸部の上端面により構成されることを特徴としている。
【0020】
これにより、基板に反りやうねりがある場合であっても基板を均等に吸着でき、島状凸部との接触による熱伝導とガスによる熱伝達効果によって基板への入射熱を均等に伝熱することができる。
【0021】
(6)また、上記(4)の適用例の静電チャックにおいて、前記ピン状凸部の高さは5μm以上10μm以下であることを特徴としている。
【0022】
これにより、基板と接触しない非接触面部分における静電吸着力を大きくすることができ、基板全体の吸着力の向上を図ることができる。また、空間内にガスを早期に満たすことができる。
【0023】
(7)また、上記(5)の適用例の静電チャックにおいて、前記島状凸部の高さは25μm以上1000μm以下であることを特徴としている。
【0024】
これにより、空間に取り入れるガス導入量を増加させることができ、ガスによる熱伝達効果を高くすることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の静電チャックによれば、基板と基体の表面との接触状態が良好となり、基板に入熱した熱量を早期に取り除くことができ、半導体プロセスのハイパワー化に対応することができる。また、基板から静電チャックへの伝熱を良好にしつつ、デチャック性の悪化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施形態に係る静電チャックの一例を示した模式的な断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る静電チャックの上面の一例を示した模式図である。
図3】本発明の実施形態に係る静電チャックの変形例を示した模式的な断面図である。
図4】本発明の実施形態に係る静電チャックの上面の変形例を示した模式図である。
図5】本発明の実施形態に係る静電チャックの変形例を示した模式的な断面図である。
図6】本発明の実施形態に係る静電チャックの上面の変形例を示した模式図である。
図7】本発明の実施形態に係る静電チャックの変形例を示した模式的な部分断面図である。
図8】実施例および比較例の製造条件および各種試験の結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。なお、構成図において、各構成要素の大きさは概念的に表したものであり、必ずしも実際の寸法比率を表すものではない。
【0028】
[実施形態]
(静電チャックの構成)
本発明の実施形態に係る静電チャックについて、図1図2を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態に係る静電チャックの一例を示した模式的な断面図である。図2は、本発明の実施形態に係る静電チャックの上面の一例を示した模式図である。図1は、図2のAA線における断面を示している。本発明の実施形態に係る静電チャック100は、基体110、および少なくとも1つの静電吸着用電極120を備えている。
【0029】
基体110は、セラミックス焼結体からなる。基体110は略円板状のほか、多角形板状または楕円板状などのさまざまな形状であってもよい。基体110は、上面112に形成される凸部等を除いて平板状である。セラミックス焼結体の材料としては、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、炭化珪素、窒化珪素などが用いられる。
【0030】
基体110は、基体110の上面112に開口する複数のガス導入穴118を備える。ガス導入穴118は、基板Wの裏面に均等かつ高い圧力で熱伝達ガスを導入するため、複数個所に形成されていることが好ましい。例えば、ガス導入穴の直径を0.05mm~3mmとし、基体110の中心116に対応する位置に1つ配置し、これを中心として径方向に等間隔ずつ増加する1または複数の同心円を想定し、その同心円状に等間隔に複数個配置することが好ましい。または、正三角形状や正方形状など規則的に所定の間隔で複数個配置すればよい。均一な熱伝達性を得る目的から、ガス導入穴118の配置は極力対称性を持たせることが好ましい。
【0031】
ただし、リフトピン穴や凸部等の配置により、すべてのガス導入穴118が規則的な配置である必要はない。また、表面130が後述するピン状凸部、または島状凸部の上端面で構成される場合も凹部や溝部の形態に合わせて、極力対称性を持たせるようにガス導入穴118を配置することが好ましい。
【0032】
基体110は、載置される基板Wとの接触率が30%以上99.5%以下の表面130を有する。基体110の表面130とは、基板Wと実際に接触する面をいう。このように、基体110の基板Wと実際に接触する表面130と基板Wとの接触率を30%以上99.5%以下とすることにより、熱伝導が向上し、基板Wから基体110への熱移動を効率的に行うことができるため伝熱性が向上する。その結果、基板Wと基体110の表面130との接触状態が良好となり、基板Wに入熱した熱量を早期に取り除くことができ、半導体プロセスのハイパワー化に対応することができる。
【0033】
なお、接触率は、(基体の表面の面積)/(被吸着対象である基板の面積)×100(%)により求めることができる。基体110の表面130の面積は、基体110の上面112の面積からガス導入穴118やリフトピン孔のような基板Wの接触しない孔の面積を減算することで算出することができる。基板Wの外周より外側に基体110が存在する場合、すなわち、基板Wより基体110が大きい場合、基体110の表面130の面積を算出する際の基体110の上面112の面積は、基板Wの外周より外側にある基体110の上面112を除くものとする。基体110の表面130の面積は、レーザー干渉計を用いて測定してもよい。被吸着対象である基板Wの面積は、SEMI(Semiconductor Equipment and Materials International)の規格を満たす基板を用いることとする。例えば、径Φが300mmの基板Wの面積を基準とすることができる。
【0034】
表面130の表面粗さ(中心線平均粗さ)Raは0.2μm以下である。このように、表面130の表面粗さRaを0.2μm以下の鏡面仕上げに近い状態とすることで、基板Wとの接触状態が良好となり吸着力がアップする。これにより、複数のガス導入穴118からより高い圧力のHeガス等の熱伝達ガスを導入することができ、ガス熱伝達による基板Wの伝熱性が向上する。また、吸着力が向上することで、高いガス圧に対する静電チャック100からの予期しない基板Wの離脱を抑制することができる。例えば、100Torrの圧力下においても基板Wが基体110から離脱されることを抑制し、基板Wの熱を早期に冷却することができる。なお、表面130の表面粗さRaの下限値は特に限定しなくてもよいが、加工時間等を考慮して0.01μm以上であることが好ましい。
【0035】
表面130の粗さ曲線から求められるスキューネスRskは負である。このように、基板Wとの接触率を高めたうえで、表面130の粗さ曲線から求められるスキューネスRskを負とすることで、基板Wから基体110への伝熱を良好にしつつ、基板Wのデチャック性の悪化を抑制できる。スキューネスRskは-1.0未満であることが好ましい。スキューネスRskを-1.0未満とすることで、基板から静電チャックへの伝熱を維持しつつデチャック性の悪化をより抑制できる。
【0036】
スキューネスRskとは高さ分布の対称性を示す指標であり、粗さ曲線における平均高さを中心線とした際に、これに対する山部と谷部との比率を表す指標であり、JIS B 0601に規定される。スキューネスRskが負であることは、細かい谷が多い表面状態であることを示している。スキューネスRskが負である場合、この谷部により熱伝達ガスが入り込むようになり、ガス熱伝達はより良好となる。また、接触率向上によって吸着力が大きくなり過ぎてしまい、デチャック性が悪化することも抑制することができる。スキューネスRskの下限値は特に限定しなくてもよいが、例えば、-5.0以上であることが好ましい。
【0037】
表面粗さRaおよびスキューネスRskの測定は、市販の非接触式の表面粗さ計を用いてJIS B 0601に準拠して測定することができる。スキューネスRskおよび表面粗さRaを本発明の範囲とする方法としては、公知の製法でセラミックス焼結体(基体110)を製造後、サンドブラスト加工やメッシュの大きい(粒径が小さい)砥石による研削加工後に、頂面を研磨加工することにより製造することができる。スキューネスRskを0未満(すなわち負)にする方法として、例えば、以下のようにすることができる。基体110の外形加工後、表面130となる面を#170より高い番手の砥石で研削加工をする。その後、粒径が3μmより大きい遊離砥粒(ダイヤモンドスラリー)を用いた研磨を行い、段階的に最後は粒径が3μm以下の小さな遊離砥粒を用いた仕上げ研磨を行う。研磨は合計で3時間以上行う。また、仕上げ研磨の時間を短くすることで、スキューネスRskを-1.0未満とすることができる。
【0038】
表面130の谷部における脱粒の抑制や、吸着力確保の観点から、表面130の基準長さにおける最大谷深さRvは2μm以上8μm以下となるように設計されることが好ましい。最大谷深さRvもJIS B 0601に準拠した測定方法によって測定することができる。
【0039】
静電吸着用電極120は、基体110に埋設されている。静電吸着用電極120は、静電チャック100の設計に応じた形状のものが埋設される。静電吸着用電極120は、W、Moまたはこれらを主成分とする合金からなることが好ましい。
【0040】
基体110は、静電吸着用電極120以外の電極が埋設されていてもよい。例えば、基体110に静電吸着用電極120とヒーター用電極が埋設されることで、基板の静電吸着機能と温度調節、加熱用機能を発揮させることができ、半導体製造プロセスをより高機能なものにすることができる。
【0041】
図3は、本発明の実施形態に係る静電チャック100の変形例を示した模式的な断面図である。図4は、本発明の実施形態に係る静電チャック100の上面の変形例を示した模式図である。図3は、図4のBB線における断面を示している。図3または図4に示されるように、静電チャック100は、複数のピン状凸部140と、環状凸部150とを備えることが好ましい。この場合、表面130は、ピン状凸部の上端面142および環状凸部の上端面152により構成される。
【0042】
基体110にピン状凸部140が形成される場合、ピン状凸部140は、基体110の上面112から上方に突出して複数形成される。ピン状凸部140は、凹部144に囲まれて形成される。すなわち、凹部144の底面が基体110の上面112となる。ピン状凸部140の形状は、円柱状、角柱状等の柱状、円錐状、角錐状等の錐状、円錐台状、角錐台状等の錐状の上部を切断した形状等から適宜選択される。
【0043】
ピン状凸部140の配置は特に限定されない。既知の形態またはそれに類似する形態であればよい。例えば、図4に示されるような三角格子状のほか、同心円状、または正方格子状など規則的に配置されることが好ましい。隣接するピン状凸部140の中心間の距離(ピッチ)は、4mm以上20mm以下であることが好ましい。ピン状凸部の上端面142の最大径は、0.1mm以上5mm以下であることが好ましい。ピン状凸部の上端面142の表面粗さRaは、0.2μm以下である。ピン状凸部の上端面142の表面粗さRaは、0.01μm以上であることが好ましい。
【0044】
ピン状凸部140の高さは、5μm以上10μm以下であることが好ましい。これにより、基板Wと接触しない非接触面部分における静電吸着力を大きくすることができ、基板W全体の吸着力の向上を図ることができる。また、空間内にガスを早期に満たすことができる。高さが5μm未満のピン状凸部140は、形成が困難である。また、ピン状凸部140の高さが10μmを超える場合、十分な吸着力を得るためには過大な電圧が必要となるので、産業的に好ましくない。なお、基体110の上面112とピン状凸部の上端面142との距離をピン状凸部140の高さとする。
【0045】
基体110にピン状凸部140が形成される場合、環状凸部150が形成される。環状凸部150は、複数のピン状凸部140を取り囲むように基体110の上面112から上方に突出して形成される。環状凸部150の外径は基体110の外径と同一かまたは基体110の外径より小さく設定される。環状凸部150の幅は、封止部として機能させるため、0.3mm以上5mm以下であることが好ましい。また、ガスの圧力を高くすることによるガスリークの対策として、環状凸部150を多重(例えば、2重)に形成してもよい。
【0046】
環状凸部150の高さは、複数のピン状凸部140の高さと同一であることが好ましい。これにより、ガスを封止することができる。ただし、環状凸部の上端面152と基板Wとの間隙からガスが抜ける量がガスによる熱伝達に影響を与えない量である場合、環状凸部150の高さはピン状凸部140の高さより低くてもよい。具体的には1μm~3μm程度低いことは許容される。環状凸部150の高さとは、基体110の上面112(凹部の底面)と環状凸部の上端面152との距離である。環状凸部の上端面152の表面粗さRaは、0.2μm以下である。環状凸部の上端面152の表面粗さRaは、0.01μm以上であることが好ましい。
【0047】
複数のピン状凸部の上端面142および環状凸部の上端面152は、全体として基板Wを載置する所定の形状の平面または曲面(基板載置面132)を画定する。これにより、複数のピン状凸部140および環状凸部150は、基板Wを支持する。すなわち、本変形例では、基板載置面132のうち、基板Wと実際に接触するピン状凸部の上端面142および環状凸部の上端面152が表面130である。なお、複数のピン状凸部140のうち、上端面が基板Wと当接しないものがあってもよい。これは、そのようなピン状凸部140があっても、周りのピン状凸部140の配置によっては、基板Wを支持することが可能だからである。なお、図3では、ピン状凸部の上端面142および環状凸部の上端面152の全面が基板Wと当接しているが、ピン状凸部の上端面142または環状凸部の上端面152の一部のみが基板Wと当接していてもよい。そのような場合、表面130の面積は、ピン状凸部の上端面142および環状凸部の上端面152のうち基板Wと実際に接触する面積とする。
【0048】
図5は、本発明の実施形態に係る静電チャック100の変形例を示した模式的な断面図である。図6は、本発明の実施形態に係る静電チャックの上面の変形例を示した模式図である。図5は、図6のCC線における断面を示している。図5または図6に示されるように、静電チャック100は、島状凸部160と、環状凸部150とを備えることが好ましい。この場合、表面130は、島状凸部の上端面162および環状凸部の上端面152により構成される。
【0049】
基体110に島状凸部160が形成される場合、島状凸部160は、基体110の上面112から上方に突出して複数形成される。島状凸部160は、溝部164に囲まれて形成される。すなわち、溝部164の底面が基体110の上面112となる。島状凸部160の形状や配置は、特に限定されない。溝部164の形状は、溝部164内に熱伝達ガスを速やかに行きわたらせるため、直線状や円弧状などを組み合わせた線状や、急激に狭くなる部分を有しない広がりのある形状であることが好ましい。溝部164が線状に形成される場合、例えば、直線状の溝を組み合わせた碁盤の目状の溝、中心を通る放射状の溝、または環状の溝を組み合わせたドーナツ状の溝等とすることができる。また、これらを組み合わせた形状でもよい。溝部164が線状に形成される場合、溝部164の幅は0.5mm以上5.0mm以下であることが好ましい。島状凸部の上端面162にガス導入穴118が形成されてもよい。
【0050】
本明細書では、上端面が直径5000μmの円の面積以下の面積の凸部をピン状凸部140といい、上端面が直径5000μmの円の面積よりも大きい面積の凸部を島状凸部160という。個々の島状凸部160の面積は、伝熱量の均一化の目的から同程度となるように設計されることが好ましい。島状凸部の上端面162の表面粗さRaは、0.2μm以下である。島状凸部の上端面162の表面粗さRaは、0.01μm以上であることが好ましい。
【0051】
島状凸部160の高さは、25μm以上1000μm以下であることが好ましい。島状凸部160の場合、熱伝達ガスの流路が溝部164となるため、ピン状凸部140の凹部144と比較して体積が小さくなる。そのため、島状凸部160の高さを高くする、すなわち、溝部164を深くすることにより、空間に取り入れるガス導入量を増加させることができ、固体熱伝達とガス熱伝達効果によって基板Wへの入射熱を均等に伝熱することができる。静電吸着力の確保のため、島状凸部160内にも静電吸着用電極120を配置するマルチレイヤーとしてもよい。
【0052】
基体110に島状凸部160が形成される場合、環状凸部150が形成される。環状凸部150は、複数の島状凸部160を取り囲むように基体110の上面112から上方に突出して形成される。環状凸部150の外径は基体110の外径と同一かまたは基体110の外径より小さく設定される。環状凸部150の幅は、封止部として機能させるため、0.3mm以上5mm以下であることが好ましい。また、ガスの圧力を高くすることによるガスリークの対策として、環状凸部150を多重(例えば、2重)に形成してもよい。
【0053】
環状凸部150の高さは、複数の島状凸部160の高さと同一であることが好ましい。これにより、ガスを封止することができる。ただし、環状凸部の上端面152と基板Wとの間隙からガスが抜ける量がガスによる熱伝達に影響を与えない量である場合、環状凸部150の高さは島状凸部160の高さより低くてもよい。具体的には1μm~3μm程度低いことは許容される。環状凸部150の高さとは、基体110の上面112(溝部164の底面)と環状凸部の上端面152との距離である。環状凸部の上端面152の表面粗さRaは、0.2μm以下である。環状凸部の上端面152の表面粗さRaは、0.01μm以上であることが好ましい。
【0054】
複数の島状凸部の上端面162および環状凸部の上端面152は、全体として基板Wを載置する所定の形状の平面または曲面(基板載置面132)を画定する。これにより、複数の島状凸部160および環状凸部150は、基板Wを支持する。すなわち、本変形例では、基板載置面132のうち、基板Wと実際に接触する島状凸部の上端面162および環状凸部の上端面152が表面130である。なお、図5では、島状凸部の上端面162および環状凸部の上端面152の全面が基板Wと当接しているが、島状凸部の上端面162または環状凸部の上端面152の一部のみが基板Wと当接していてもよい。そのような場合、表面130の面積は、島状凸部の上端面162および環状凸部の上端面152のうち基板Wと実際に接触する面積とする。ピン状凸部140または島状凸部160が形成される変形例において、表面130の面積は、基板Wの面積から基板Wの内側にあるガス導入穴118やリフトピン孔、ピン状凸部140や環状凸部150を形成する凹部144、島状凸部160や環状凸部150を形成する溝部164の面積を減算することで算出することができる。
【0055】
ピン状凸部140、島状凸部160、または環状凸部150の高さ、およびピン状凸部の上端面142、島状凸部の上端面162、または環状凸部の上端面152の3次元的な位置は、3次元測定器またはレーザー干渉計で測定できる。
【0056】
基体110は、ピン状凸部140と島状凸部160の両方を備えていてもよい。これにより、島状凸部160が形成された部分で吸着力を向上させると共に、ピン状凸部140が形成された部分でパーティクル挟み込みのリスクを低減でき、反りのある基板Wを反りに応じて適切に吸着することができる。基体110がピン状凸部140と島状凸部160の両方を備える場合、凹部144や溝部164の深さは異なっていてもよい、すなわち、基体110の上面112は、位置により異なる場合がある。
【0057】
図7は、本発明の実施形態に係る静電チャック100の変形例を示した模式的な断面図である。図7に示されるように、静電チャック100は、基体110の上面112に対向する下面114に接合され、ガス導入穴118に接続されるガス流路172を有するベース部材170を備えることが好ましい。これにより、基体110からベース部材170への熱伝導を行うことができ、基板Wから基体110への伝熱をより効率的に行うことができる。
【0058】
ベース部材170は、半導体プロセス中に基板Wに入熱した熱量を基体110を通じて伝熱し、基板Wを所定の温度に保つために用いられる冷却部材として機能する。ベース部材170は金属やセラミックスにより形成される。このような金属としては、加工性や高い熱伝導率を有するAl、Al合金が最も好ましく、その他、銅、チタン、ニッケルを含む合金、SUSなどを使用してもよい。また、セラミックスとしては、特に熱伝導率が100W/m・K以上のセラミックスであることが好ましく、例えば、窒化アルミニウムがあげられる。
【0059】
ベース部材170は、内部に冷媒流路174を有することが好ましい。冷媒流路174は、例えば、管状に形成される。これにより、基板Wからの伝熱性能をさらに高めることができる。冷媒としては、水、エチレングリコール、フロンなどを使用することができる。冷媒流路174の幅は、1mm以上60mm以下であることが好ましい。冷媒流路174の断面形状は、矩形に限られず、円形、楕円形、半円形、段差付きの形状など、製造可能な形状であればどのようなものでもよい。
【0060】
基体110とベース部材170は、接着により接合されることが簡便で好ましい。使用される半導体プロセスの使用温度により接着方法を選定すればよく、例えば、シリコーン樹脂接着やIn接着、Al箔による接合が用いられる。基体110とベース部材170の間に応力緩和構造を設けてもよい。基体110とベース部材170は一般的に熱膨張係数が異なるため、使用時に生じる熱応力による反りや変形により、基体110とベース部材170との剥離等が発生する虞があるが、応力緩和層により剥離等の虞を抑制できる。
【0061】
静電チャック100は、必要に応じて端子180や端子穴182を備えていてもよい。また、静電チャック100は、図示しないリフトピン孔等を備えていてもよい。
【0062】
[静電チャックの製造方法]
次に、本発明の実施形態に係る静電チャックの製造方法を説明する。本発明の実施形態に係る静電チャックは、例えば、粉末ホットプレス法によって作製される。粉末ホットプレス法は、セラミックス原料粉と所定の電極を交互に重ねることにより電極をセラミックスの内部に埋設し、それを1軸ホットプレス焼成する方法である。粉末ホットプレス法を採用することで短期間に作製することができる。なお、製法は本方法に限られず、例えば、特許6148845号で開示されている成形体ホットプレス法や、グリーンシート積層法、CIP成型法、その他従前の製法等であってもよい。
【0063】
例えば、セラミックス粉末に焼結助剤、バインダー、可塑剤、分散剤などの添加剤を適宜添加して混合して、セラミックス原料粉(スラリー)を作製し、スプレードライ法等により造粒粉を造粒する。例えば、AlNを原料とする場合、AlNセラミックス原料粉に焼結助剤として内比で0.3~6wt%のYを添加して造粒粉を造粒する。混合方法は、湿式、乾式の何れであってもよく、例えば、ボールミル、振動ミルなどの混合器を用いることができる。原料となるセラミックス粉末としては、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、炭化珪素、窒化珪素などが用いられる。
【0064】
セラミックス粉末は、高純度であることが好ましく、その純度は、好ましくは96%以上、より好ましくは98%以上である。また、セラミックス粉末の平均粒径は、原料とするセラミックス粉末の種類によっても異なるが、例えば、AlNを原料とする場合、0.1μm以上1.0μm以下であることが好ましく、0.3μm以上0.8μm以下であることがより好ましい。
【0065】
セラミックス焼結体に埋設される静電吸着用電極の材質は、Mo、W、またはこれらの合金を用いることが好ましい。これらの材質のメッシュ、箔、コイル、または薄膜で静電吸着用電極を形成することができる。例えば、Moメッシュ(線径0.1mm、50メッシュ、平織)を所定の形状に裁断して、静電吸着用電極とする。外径は基体の外側面から露出しないように基体外径より小さい。外部電源との接続用の端子が同時に埋設されてもよい。また、局所的な温調等を行う目的で、ヒーター用電極を埋設してもよい。
【0066】
焼結は、一軸ホットプレス焼成や常圧焼成を用いることができる。一軸ホットプレス焼成は、有底のカーボン型に基体を形成する造粒粉を充填し、一軸プレス後に所定形状に裁断された静電吸着用電極を成形体上に配置する。その上に同じ造粒粉を充填しカーボン型のパンチを載せ成形後、所定の焼成条件で焼成する。例えば、AlNを原料とする場合、1700℃以上2000℃以下の温度条件、1MPa以上20MPa以下の圧力条件で、0.1時間以上20時間以下、ホットプレス焼成することが好ましい。
【0067】
焼成後は、ガス導入穴の形成、表面や裏面の加工、端子穴の形成のほか所定の形状に研削や研磨加工を行なう。形成方法としては、ブラスト加工、ミリング加工、レーザー加工等によって形成することが可能である。また、静電チャックの設計に応じて、複数のピン状凸部、複数の島状凸部、環状凸部等を形成してもよい。このとき、表面の接触率が所定の範囲になるように、ガス導入穴、複数のピン状凸部、複数の島状凸部、環状凸部等を形成する。
【0068】
基板載置面となる表面は、所定の表面状態となるように加工等を行う。まず、レーザー加工、サンドブラスト加工や砥石による研削加工を行い、形状加工(フラット面、ピン状凸部、または島状凸部の形成)をする。これにより、後述する研磨加工後の表面のスキューネスRskが負となるようにすることができる。その後、基板載置面となる頂面を研磨加工により加工し、表面粗さRaが所定の範囲となるように加工する。
【0069】
研磨加工後、端子穴にロウ材等で端子を接続する。端子は、Ni等を用いることができる。また、ロウ材はAuロウ等を用いることができる。
【0070】
このようにして、基板に入熱した熱量を早期に取り除くことができ、半導体プロセスのハイパワー化に対応することができ、また、デチャック性の悪化を抑制できる静電チャックを製造することができる。
【0071】
[実施例および比較例]
(実施例1)
実施例1は、表面がフラット面の静電チャックの実施例である。AlN原料粉に焼結助剤として内割で5wt%のYを添加し、バインダー、分散剤などを適宜添加して混合して、スラリーを作製し、スプレードライ法により造粒粉を造粒した。また、静電吸着用電極としてMoのメッシュを線径0.1mm、メッシュサイズ#50に裁断した電極を準備した。次に、カーボン型に造粒粉を充填し、電極の埋設し、窒素雰囲気、焼成温度1800℃、ホットプレス圧力5MPaで一軸ホットプレス焼成した。焼成時間は、6時間とした。得られたセラミックス焼結体に機械加工を行い、直径310mm、厚さ25mmのセラミックス焼結体とした。
【0072】
外形が加工されたセラミックス焼結体の表面となる面を、載置される基板との接触率が99.4%となるようにΦ0.5mmの複数のガス導入穴を形成した。その後、所定の表面状態となるように表面を研削加工、および遊離砥粒による研磨加工を行った。そして、表面と対向する面(下面)に、セラミックス焼結体と同一の径および厚みに形成され、断面に幅10mm、高さ10mmの矩形状の冷媒流路を内蔵しているAl合金製の冷却部材(ベース部材)を準備し、シリコーン接着剤により接着して、実施例1の静電チャックを作製した。作製後確認した表面の表面粗さRaは0.18μm、表面の粗さ曲線から求められるスキューネスRskは-1.2であった。
【0073】
(実施例2)
実施例2から実施例6は、表面がピン状凸部および環状凸部の静電チャックの実施例である。実施例2は、実施例1と同様に作製した外形が加工されたセラミックス焼結体の表面となる面を、研磨加工後の表面の載置される基板との接触率が30%となるようにブラスト加工により複数のピン状凸部、および環状凸部を形成した。また、凹部にΦ0.5mmの複数のガス導入穴を形成した。その後、所定の表面状態となるように、ピン状凸部および環状凸部の上端面(表面)を研削加工、および遊離砥粒による研磨加工を行い、実施例2の静電チャックを作製した。研磨加工後の複数のピン状凸部の直径はΦ1.0mm、高さは10μm、環状凸部の幅は1.0mm、高さは10μmとなるようにした。作製後確認した表面の表面粗さRaは0.08μm、表面の粗さ曲線から求められるスキューネスRskは-2.5であった。
【0074】
(実施例3)
実施例3は、研磨加工後の表面の載置される基板との接触率が45%となるように複数のピン状凸部および環状凸部を形成した。それ以外は、実施例2と同様の条件で実施例3の静電チャックを作製した。作製後確認した表面の表面粗さRaは0.11μm、表面の粗さ曲線から求められるスキューネスRskは-1.8であった。
【0075】
(実施例4)
実施例4は、複数のピン状凸部および環状凸部の高さを5μmとした。それ以外は、実施例2と同様の条件で実施例4の静電チャックを作製した。作製後確認した表面の表面粗さRaは0.08μm、表面の粗さ曲線から求められるスキューネスRskは-2.1であった。
【0076】
(実施例5)
実施例5は、複数のピン状凸部および環状凸部の高さを20μmとした。それ以外は、実施例2と同様の条件で実施例5の静電チャックを作製した。作製後確認した表面の表面粗さRaは0.08μm、表面の粗さ曲線から求められるスキューネスRskは-1.9であった。
【0077】
(実施例6)
実施例6は、研磨方法を変更した。それ以外は、実施例2と同様の条件で実施例6の静電チャックを作製した。作製後確認した表面の表面粗さRaは0.15μm、表面の粗さ曲線から求められるスキューネスRskは-0.33であった。
【0078】
(実施例7)
実施例7から実施例12は、表面が島状凸部および環状凸部の静電チャックの実施例である。実施例7は、実施例1と同様に作製した外形が加工されたセラミックス焼結体の表面となる面を、研磨加工後の表面の載置される基板との接触率が60%となるようにブラスト加工により複数の島状凸部、および環状凸部を形成した。このとき、複数の島状凸部の面積は同程度とし、幅3.0mmの溝部を形成した。また、溝部にΦ0.5mmの複数のガス導入穴を形成した。その後、所定の表面状態となるように、島状凸部および環状凸部の上端面(表面)を研削加工、および遊離砥粒による研磨加工を行い、実施例7の静電チャックを作製した。研磨加工後の複数の島状凸部の高さは500μm、環状凸部の幅は1.0mm、高さは500μmとなるようにした。作製後確認した表面の表面粗さRaは0.12μm、表面の粗さ曲線から求められるスキューネスRskは-2.1であった。
【0079】
(実施例8)
実施例8は、研磨加工後の表面の載置される基板との接触率が75%となるように複数の島状凸部および環状凸部を形成した。それ以外は、実施例7と同様の条件で実施例8の静電チャックを作製した。作製後確認した表面の表面粗さRaは0.15μm、表面の粗さ曲線から求められるスキューネスRskは-3.0であった。
【0080】
(実施例9)
実施例9は、複数の島状凸部および環状凸部の高さを50μmとした。それ以外は、実施例7と同様の条件で実施例9の静電チャックを作製した。作製後確認した表面の表面粗さRaは0.13μm、表面の粗さ曲線から求められるスキューネスRskは-1.8であった。
【0081】
(実施例10)
実施例10は、複数の島状凸部および環状凸部の高さを950μmとした。それ以外は、実施例7と同様の条件で実施例10の静電チャックを作製した。作製後確認した表面の表面粗さRaは0.11μm、表面の粗さ曲線から求められるスキューネスRskは-1.5であった。
【0082】
(実施例11)
実施例11は、複数の島状凸部および環状凸部の高さを20μmとした。それ以外は、実施例7と同様の条件で実施例9の静電チャックを作製した。作製後確認した表面の表面粗さRaは0.12μm、表面の粗さ曲線から求められるスキューネスRskは-2.6であった。
【0083】
(実施例12)
実施例12は、複数の島状凸部および環状凸部の高さを1100μmとした。それ以外は、実施例7と同様の条件で実施例12の静電チャックを作製した。作製後確認した表面の表面粗さRaは0.12μm、表面の粗さ曲線から求められるスキューネスRskは-1.5であった。
【0084】
(比較例1)
比較例1は、表面がフラット面の静電チャックの比較例である。比較例1は、研磨加工後の表面の載置される基板との接触率が99.6%となるように複数のガス導入穴を形成した。また、表面の研削、研磨方法を変更した。それ以外は、実施例1と同様の条件で比較例1の静電チャックを作製した。作製後確認した表面の表面粗さRaは0.17μm、表面の粗さ曲線から求められるスキューネスRskは-1.3であった。
【0085】
(比較例2)
比較例2および比較例3は、表面がピン状凸部および環状凸部の静電チャックの比較例である。比較例2は、研磨方法を変更した。それ以外は、実施例2と同様の条件で比較例2の静電チャックを作製した。作製後確認した表面の表面粗さRaは0.24μm、表面の粗さ曲線から求められるスキューネスRskは-1.1であった。
【0086】
(比較例3)
比較例3は、研磨加工後の表面の載置される基板との接触率が20%となるように複数のピン状凸部および環状凸部を形成した。それ以外は、実施例2と同様の条件で実施例3の静電チャックを作製した。作製後確認した表面の表面粗さRaは0.10μm、表面の粗さ曲線から求められるスキューネスRskは-1.9であった。
【0087】
(温度測定の準備)
実施例および比較例の静電チャックをチャンバー内にインストールし、表面に測定用基板としてシリコンウエハを載置し、静電吸着用電極に±1.0kVの電圧を印加してシリコンウエハを吸着固定した。また、複数のガス導入穴からHeガスを導入し、基板載置面とシリコンウエハとの間に充填した。このときHeのガス圧は100Torrに調整した。冷媒流路には、水とエチレングリコールを混合したものを準備し、冷媒温度を20℃とし、3L/minの流量で循環させた。
【0088】
(表面温度測定)
次に、3kWの出力でプラズマをシリコンウエハに照射することで入熱を行った。使用されるシリコンウエハは、複数のポイント17点(中心1、中間半径8、外周8)に熱電対(TC)を有するTC付ウエハであり、測定ポイントにおける温度を測定した。
【0089】
(温度差測定)
また、温度均一性の評価として、測定ポイントにおける最高温度から最低温度を減算した値を温度差ΔTとし、温度差ΔTが5.0℃以下であったときに特に良好(〇)とし、温度差ΔTが5.0℃を超え7.0℃以下であったとき良好(△)、それよりも温度差ΔTが大きいものは不良(×)として評価した。
【0090】
図8は、実施例および比較例の製造条件および各種試験の結果を示す表である。なお、図8の表の基板の表面温度および温度差の欄の*は、温度測定の条件が異なることを示している。実施例1~4、6~10の静電チャックは、温度測定の準備の条件ですべて測定点において表面温度が100℃以下に制御され、温度差ΔTも5℃以下に制御されており、熱伝達効率および温度分布均一性に優れることがわかった。
【0091】
ピン状凸部の高さが高い実施例5の静電チャックは、温度測定の準備の条件の電圧では十分な吸着力を得ることができず、100Torrのガス圧力によって基板が離脱してしまい測定不可であった。しかし、吸着電圧を上げることで100Torrのガス圧力によって基板が離脱しないようにできた。このとき、すべて測定点において表面温度が100℃以下に制御され、温度差ΔTも5℃以下に制御することが可能であった。
【0092】
島状凸部の高さが低い実施例11の静電チャックは、空間に取り入れるガス導入量が少なかったため、上記の実施例より表面温度が高い測定ポイントがあり、若干の温度差が確認された。
【0093】
また、島状凸部の高さが高い実施例12の静電チャックは、表面温度は他の実施例と同様であったが、溝底と基板間で放電のリスクが高まり、プロセスの安定性に課題が生じた。これは、溝の深さが深すぎることや気体圧力、温度等の条件で溝内の気体分子が他の分子と衝突する確率が増えるためと推測される。
【0094】
基板との接触率が高い比較例1の静電チャックは、固体熱伝達に優れ、表面温度は100℃以下に制御されたが、温度差ΔTは7.0℃より高くなった。これは、形成されるガス導入穴の数が少なく、ガス熱伝達が場所によって適切に行われなかったことと、基板の反りによって、基板載置面全面に均一に吸着できなかったためと推測される。
【0095】
また、基板載置面の表面粗さRaが高い比較例2の静電チャックでは、温度測定の準備の条件の電圧では十分な吸着力を得ることができず、100Torrのガス圧力によって基板が離脱してしまい測定不可であった。吸着電圧を上げることで100Torrのガス圧力によって基板が離脱しないようにできた。このとき、基板の吸着は可能であったが、基板との接触性が悪く、表面温度は100℃以下に制御されたが、温度差ΔTは7.0℃より高くなった。
【0096】
また、基板との接触率が低い比較例3の静電チャックは、十分な固体熱伝導性能を発揮することができず、表面温度を100℃以下に制御することはできなかった。また、温度差ΔTも7.0℃より高くなった
【0097】
また、スキューネスRskが負ではあるものの-1.0より大きい実施例6においては、すべての測定点において表面温度が100℃以下に制御され、温度差ΔTも5℃以下に制御されており、熱伝達効率および温度分布均一性に優れていた。しかし、実施例2と比較して、デチャック性が若干悪くなっていた。これは、実施例2はスキューネスの値が小さく、実施例6より細かい谷が多い表面状態となるので、基板載置面にもガスが入り込むことで、基板載置面と基板との離脱性がよくなる一方、実施例6は細かい谷が少なく、ガスが入り込む部分が減少するため、高い吸着力が維持され、実施例2より離脱性が悪くなるためと推測される。よって、基板から静電チャックへの伝熱を維持しつつデチャック性の悪化をより抑制するためには、スキューネスRskは-1.0未満であることが好ましいことが確かめられた。
【0098】
以上の結果から、本発明の静電チャックは、基板と基体の表面との接触状態が良好となり、基板に入熱した熱量を早期に取り除くことができ、半導体プロセスのハイパワー化に対応することができることが確かめられた。また、基板から静電チャックへの伝熱を良好にしつつ、デチャック性の悪化を抑制できることが確かめられた。
【0099】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形および均等物に及ぶことはいうまでもない。また、各図面に示された構成要素の構造、形状、数、位置、大きさ等は説明の便宜上のものであり、適宜変更しうる。
【符号の説明】
【0100】
100 静電チャック
110 基体
112 上面
114 下面
116 中心
118 ガス導入穴
120 静電吸着用電極
130 表面
132 基板載置面
140 ピン状凸部
142 ピン状凸部の上端面
144 凹部
150 環状凸部
152 環状凸部の上端面
160 島状凸部
162 島状凸部の上端面
164 溝部
170 ベース部材
172 ガス流路
174 冷媒流路
180 端子
182 端子穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8