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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013423
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】ハロゲンフリー竹炭及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C10B 53/02 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
C10B53/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115490
(22)【出願日】2022-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000175722
【氏名又は名称】サンコール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】弁理士法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】蓮見 啓悟
【テーマコード(参考)】
4H012
【Fターム(参考)】
4H012JA03
4H012JA11
(57)【要約】
【課題】洗浄工程を備えることなく、塩素含有量を有効に低減させたハロゲンフリー竹炭を製造可能な方法を提供する。
【解決手段】本発明の製造方法は、炭化処理空間内に竹チップを収容させて炭化用過熱蒸気発生機構によって生成した過熱蒸気を供給することで竹チップに対して炭化処理を行う炭化工程を備え、一端部が炭化処理空間に流体接続され且つ他端部が外部に開放された炭化排気ラインと、前記炭化排気ラインに介挿された炭化排気ファンとを設けた上で、前記炭化処理は、炭化処理空間内の炭化処理温度が450℃~600℃に維持されるように前記炭化用過熱蒸気発生機構を作動させつつ、前記炭化排気ラインのうち前記炭化排気ファンより上流側が所定減圧範囲となるように前記炭化排気ファンを作動させた状態で、実行される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
竹チップから竹炭を製造する方法であって、
炭化処理空間内に竹チップを収容させて炭化用過熱蒸気発生機構によって生成した過熱蒸気を供給することで竹チップに対して炭化処理を行う炭化工程を備え、
一端部が炭化処理空間に流体接続され且つ他端部が外部に開放された炭化排気ラインと、前記炭化排気ラインに介挿された炭化排気ファンとを設け、
前記炭化処理は、炭化処理空間内の炭化処理温度が450℃~600℃に維持されるように前記炭化用過熱蒸気発生機構を作動させつつ、前記炭化排気ラインのうち前記炭化排気ファンより上流側が所定減圧範囲となるように前記炭化排気ファンを作動させた状態で、実行されることを特徴とするハロゲンフリー竹炭の製造方法。
【請求項2】
前記炭化処理は、水供給部と炭化部と制御部とを備えた炭化装置によって行われ、
前記炭化部は、
炭化処理空間を形成する炭化ケースと、
軸線回りの回転駆動に応じて竹チップを前記炭化ケースの軸線方向一方側から他方側へ搬送する炭化スクリューコンベアと、
前記水供給部から供給される蒸気又は霧状の水を加熱して生成した過熱蒸気を前記炭化ケース内へ供給する前記炭化用過熱蒸気発生機構と、
一端部が前記炭化ケースの内部に流体接続された前記炭化排気ラインと、
前記炭化排気ラインに介挿された前記炭化排気ファンと、
前記炭化ケース内の温度を検出する炭化温度センサーと、
前記炭化排気ラインのうち前記炭化排気ファンより上流側の圧力を検出する炭化圧力センサーとを有し、
前記制御部は、前記炭化スクリューコンベアの搬送速度が所定の設定速度となるように前記炭化スクリューコンベアの作動制御を行い且つ前記炭化温度センサーからの検出値に基づき前記炭化ケース内の炭化処理処理温度が450℃~600℃となるように前記炭化用過熱蒸気発生機構の作動制御を行いつつ、前記炭化圧力センサーからの検出値に基づき前記炭化排気ラインのうち前記炭化排気ファンより上流側の圧力が所定減圧範囲に維持されるように前記炭化排気ファンの作動制御を行うことを特徴とする請求項1に記載のハロゲンフリー竹炭の製造方法。
【請求項3】
前記炭化工程の前に、乾燥処理空間内に竹チップを収容させて乾燥用過熱蒸気発生機構によって生成した過熱蒸気を供給することで竹チップに対して乾燥処理を行う乾燥工程を備え、
一端部が乾燥処理空間に流体接続され且つ他端部が外部に開放された乾燥排気ラインと、前記乾燥排気ラインに介挿された乾燥排気ファンとを設け、
前記乾燥処理は、乾燥処理空間内の温度が所定の乾燥処理温度範囲に維持されるように前記乾燥用過熱蒸気発生機構を作動させつつ、前記乾燥排気ラインのうち前記乾燥排気ファンより上流側が所定減圧範囲となるように前記乾燥排気ファンを作動させた状態で、実行されることを特徴とする請求項1に記載のハロゲンフリー竹炭の製造方法。
【請求項4】
前記乾燥処理及び前記炭化処理は、水供給部と乾燥部と炭化部と制御部とを備えた炭化装置によって行われ、
前記乾燥部は、
乾燥処理空間を形成する乾燥ケースと、
軸線回りの回転駆動に応じて竹チップを前記乾燥ケースの軸線方向一方側から他方側へ搬送する乾燥スクリューコンベアと、
前記水供給部から供給される蒸気又は霧状の水を加熱して生成した過熱蒸気を前記乾燥ケース内へ供給する前記乾燥用過熱蒸気発生機構と、
一端部が前記乾燥ケースの内部に流体接続された前記乾燥排気ラインと、
前記蒸気排出ラインに介挿された前記乾燥排気ファンと、
前記乾燥ケース内の温度を検出する乾燥温度センサーと、
前記乾燥排気ラインのうち前記乾燥排気ファンより上流側の圧力を検出する乾燥圧力センサーとを有し、
前記炭化部は、
炭化処理空間を形成し、前記乾燥ケースの軸線方向他方側から排出される乾燥竹チップを直接又は間接的に受け入れる炭化ケースと、
軸線回りの回転駆動に応じて竹チップを前記炭化ケースの軸線方向一方側から他方側へ搬送する炭化スクリューコンベアと、
前記水供給部から供給される蒸気又は霧状の水を加熱して生成した過熱蒸気を前記炭化ケース内へ供給する前記炭化用過熱蒸気発生機構と、
一端部が前記炭化ケースの内部に流体接続された前記炭化排気ラインと、
前記炭化排気ラインに介挿された前記炭化排気ファンと、
前記炭化ケース内の温度を検出する炭化温度センサーと、
前記炭化排気ラインのうち前記炭化排気ファンより上流側の圧力を検出する炭化圧力センサーとを有し、
前記制御部は、前記乾燥スクリューコンベアの搬送速度が所定の設定速度となるように前記乾燥スクリューコンベアの作動制御を行い且つ前記乾燥温度センサーからの検出値に基づき前記乾燥ケース内の温度が所定の乾燥処理処理温度となるように前記乾燥用過熱蒸気発生機構の作動制御を行いつつ、前記乾燥圧力センサーからの検出値に基づき前記乾燥排気ラインのうち前記乾燥排気ファンより上流側の圧力が所定減圧範囲に維持されるように前記乾燥排気ファンの作動制御を行なうと共に、前記炭化スクリューコンベアの搬送速度が所定の設定速度となるように前記炭化スクリューコンベアの作動制御を行い且つ前記炭化温度センサーからの検出値に基づき前記炭化ケース内の炭化処理処理温度が450℃~600℃となるように前記炭化用過熱蒸気発生機構の作動制御を行いつつ、前記炭化圧力センサーからの検出値に基づき前記炭化排気ラインのうち前記炭化排気ファンより上流側の圧力が所定減圧範囲に維持されるように前記炭化排気ファンの作動制御を行うことを特徴とする請求項3に記載のハロゲンフリー竹炭の製造方法。
【請求項5】
カリウムに対する塩素の含有比率が0.05以下とされていることを特徴とするハロゲンフリー竹炭。
【請求項6】
リンに対する塩素の含有比率が0.2以下とされていることを特徴とするハロゲンフリー竹炭。
【請求項7】
灰分に対する塩素の含有比率が0.05以下とされていることを特徴とするハロゲンフリー竹炭。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩素含有量を有効に低減させたハロゲンフリー竹炭及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
竹を炭化させてなる竹炭は、スクリーンインキ等に有効利用されているが(下記特許文献1及び2参照)、近年、環境への影響を考慮して、塩素含有量を有効に低減させたハロゲンフリー化が望まれている。
【0003】
ここで、竹を炭化させてなる竹炭のハロゲンフリー化を図る為には、原材料となる竹チップを炭化させる炭化工程の前又は後に、炭化工程とは独立して、竹チップを洗浄水によって洗浄する洗浄工程を行なう必要があり、製造コストの削減を行うことが困難であった。
【0004】
特に、炭化工程の前に洗浄工程を行う場合には、洗浄工程によって水分を含有した状態の竹チップを炭化させると炭化効率が悪くなると共に、場合によっては不活性ガス等が発生し、均一な炭化を行うことが困難となる。
【0005】
従って、炭化工程の前に洗浄工程を行う場合には、洗浄工程の後で且つ炭化工程の前に、洗浄後竹チップの含水率を所定値(例えば20%)以下まで乾燥させる乾燥工程が必須となり、さらに、製造コストの削減が困難となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-029537号公報
【特許文献2】特開2019-182942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来技術に鑑みなされたものであり、安価に製造可能なハロゲンフリー竹炭及びその製造方法の提供を目的とする。
【0008】
前記目的を達成する為に、本発明は、竹チップから竹炭を製造する方法であって、炭化処理空間内に竹チップを収容させて炭化用過熱蒸気発生機構によって生成した過熱蒸気を供給することで竹チップに対して炭化処理を行う炭化工程を備え、一端部が炭化処理空間に流体接続され且つ他端部が外部に開放された炭化排気ラインと、前記炭化排気ラインに介挿された炭化排気ファンとを設け、前記炭化処理は、炭化処理空間内の炭化処理温度が450℃~600℃に維持されるように前記炭化用過熱蒸気発生機構を作動させつつ、前記炭化排気ラインのうち前記炭化排気ファンより上流側が所定減圧範囲となるように前記炭化排気ファンを作動させた状態で、実行されるハロゲンフリー竹炭の製造方法を提供する。
【0009】
一形態においては、前記炭化処理は、水供給部と炭化部と制御部とを備えた炭化装置によって行われる。
【0010】
この場合、前記炭化部は、炭化処理空間を形成する炭化ケースと、軸線回りの回転駆動に応じて竹チップを前記炭化ケースの軸線方向一方側から他方側へ搬送する炭化スクリューコンベアと、前記水供給部から供給される蒸気又は霧状の水を加熱して生成した過熱蒸気を前記炭化ケース内へ供給する前記炭化用過熱蒸気発生機構と、一端部が前記炭化ケースの内部に流体接続された前記炭化排気ラインと、前記炭化排気ラインに介挿された前記炭化排気ファンと、前記炭化ケース内の温度を検出する炭化温度センサーと、前記炭化排気ラインのうち前記炭化排気ファンより上流側の圧力を検出する炭化圧力センサーとを有するものとされる。
【0011】
前記制御部は、前記炭化スクリューコンベアの搬送速度が所定の設定速度となるように前記炭化スクリューコンベアの作動制御を行い且つ前記炭化温度センサーからの検出値に基づき前記炭化ケース内の炭化処理処理温度が450℃~600℃となるように前記炭化用過熱蒸気発生機構の作動制御を行いつつ、前記炭化圧力センサーからの検出値に基づき前記炭化排気ラインのうち前記炭化排気ファンより上流側の圧力が所定減圧範囲に維持されるように前記炭化排気ファンの作動制御を行うように構成される。
【0012】
好ましくは、本発明に係るハロゲンフリー竹炭の製造方法は、前記炭化工程の前に、乾燥処理空間内に竹チップを収容させて乾燥用過熱蒸気発生機構によって生成した過熱蒸気を供給することで竹チップに対して乾燥処理を行う乾燥工程を備え、一端部が乾燥処理空間に流体接続され且つ他端部が外部に開放された乾燥排気ラインと、前記乾燥排気ラインに介挿された乾燥排気ファンとを設けることができる。
前記乾燥処理は、乾燥処理空間内の温度が所定の乾燥処理温度範囲に維持されるように前記乾燥用過熱蒸気発生機構を作動させつつ、前記乾燥排気ラインのうち前記乾燥排気ファンより上流側が所定減圧範囲となるように前記乾燥排気ファンを作動させた状態で、実行される。
【0013】
一形態においては、前記乾燥処理及び前記炭化処理は、水供給部と乾燥部と炭化部と制御部とを備えた炭化装置によって行われる。
【0014】
この場合、前記乾燥部は、乾燥処理空間を形成する乾燥ケースと、軸線回りの回転駆動に応じて竹チップを前記乾燥ケースの軸線方向一方側から他方側へ搬送する乾燥スクリューコンベアと、前記水供給部から供給される蒸気又は霧状の水を加熱して生成した過熱蒸気を前記乾燥ケース内へ供給する前記乾燥用過熱蒸気発生機構と、一端部が前記乾燥ケースの内部に流体接続され且つ他端部が直接又は間接的に大気に開放された前記乾燥排気ラインと、前記蒸気排出ラインに介挿された前記乾燥排気ファンと、前記乾燥ケース内の温度を検出する乾燥温度センサーと、前記乾燥排気ラインのうち前記乾燥排気ファンより上流側の圧力を検出する乾燥圧力センサーとを有するものとされる。
【0015】
前記炭化部は、炭化処理空間を形成し、前記乾燥ケースの軸線方向他方側から排出される乾燥竹チップを直接又は間接的に受け入れる炭化ケースと、軸線回りの回転駆動に応じて竹チップを前記炭化ケースの軸線方向一方側から他方側へ搬送する炭化スクリューコンベアと、前記水供給部から供給される蒸気又は霧状の水を加熱して生成した過熱蒸気を前記炭化ケース内へ供給する前記炭化用過熱蒸気発生機構と、一端部が前記炭化ケースの内部に流体接続された前記炭化排気ラインと、前記炭化排気ラインに介挿された前記炭化排気ファンと、前記炭化ケース内の温度を検出する炭化温度センサーと、前記炭化排気ラインのうち前記炭化排気ファンより上流側の圧力を検出する炭化圧力センサーとを有するものとされる。
【0016】
前記制御部は、前記乾燥スクリューコンベアの搬送速度が所定の設定速度となるように前記乾燥スクリューコンベアの作動制御を行い且つ前記乾燥温度センサーからの検出値に基づき前記乾燥ケース内の温度が所定の乾燥処理処理温度となるように前記乾燥用過熱蒸気発生機構の作動制御を行いつつ、前記乾燥圧力センサーからの検出値に基づき前記乾燥排気ラインのうち前記乾燥排気ファンより上流側の圧力が所定減圧範囲に維持されるように前記乾燥排気ファンの作動制御を行なうと共に、前記炭化スクリューコンベアの搬送速度が所定の設定速度となるように前記炭化スクリューコンベアの作動制御を行い且つ前記炭化温度センサーからの検出値に基づき前記炭化ケース内の炭化処理処理温度が450℃~600℃となるように前記炭化用過熱蒸気発生機構の作動制御を行いつつ、前記炭化圧力センサーからの検出値に基づき前記炭化排気ラインのうち前記炭化排気ファンより上流側の圧力が所定減圧範囲に維持されるように前記炭化排気ファンの作動制御を行うように構成される。
【0017】
また、本発明は、カリウムに対する塩素の含有比率が0.05以下とされているハロゲンフリー竹炭を提供する。
さらに、本発明は、リンに対する塩素の含有比率が0.2以下とされているハロゲンフリー竹炭を提供する。
さらに、本発明は、灰分に対する塩素の含有比率が0.05以下とされているハロゲンフリー竹炭を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、洗浄工程を備えることなく、塩素含有量を有効に低減させたハロゲンフリー竹炭を効率良く安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の一実施の形態に係るハロゲンフリー竹炭の製造方法に利用可能な炭化装置の模式図である。
図2図2は、洗浄処理無しの原料竹チップに対して前記炭化装置を用いて過熱蒸気で炭化処理して竹炭を製造する際に、炭化処理温度を異ならせて製造条件の異なる複数種類の竹炭を製造し、製造された複数種類の竹炭の塩素含有量を測定して、炭化処理温度と塩素含有量との関係を検証した検証1の結果を示すグラフである。
図3図3は、検証1とは塩素含有量が異なる原料竹チップに対して、検証1と同様の検証を行った検証2の結果を示すグラフである。
図4図4は、本発明の一実施の形態に係る製造方法によって原料竹チップから製造された竹炭の塩素、リン、カリウム及びカルシウムの含有量、並びに、前記原料竹チップに対して洗浄処理を行った洗浄済み竹チップの塩素、リン、カリウム及びカルシウムの含有量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るハロゲンフリー竹炭の製造方法の一実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0021】
まず、本実施の形態に係る製造方法に好適に使用可能な炭化装置1について説明する。
図1に、前記炭化装置1の模式図を示す。
【0022】
図1に示すように、前記炭化装置1は、蒸気又は霧状の水を供給する水供給部90と、炭化部200と、制御部300とを備えている。
【0023】
前記炭化部200は、竹チップを炭化処理して竹炭を製造するように構成されている。
具体的には、図1に示すように、前記炭化部200は、炭化ケース210と、炭化スクリューコンベア220と、炭化用過熱蒸気発生機構230と、炭化排気ライン80と、前記炭化排気ライン80に介挿された炭化排気ファン82とを備えている。
【0024】
前記炭化ケース210は、被処理物である竹チップの炭化処理空間210Aを形成する。
図1に示すように、前記炭化ケース210は、竹チップを炭化処理空間210Aの一方側へ受け入れる炭化用受入口210(in)と、竹チップを炭化処理空間210Aの他方側から排出する炭化用排出口210(out)とを有している。
【0025】
前記炭化スクリューコンベア220は、軸線回りの回転駆動に応じて、前記炭化用受入口210(in)から前記炭化ケース210内に供給された竹チップを、前記炭化ケース210の軸線方向他方側の前記炭化用排出口210(out)へ向けて搬送するように構成されている。
【0026】
具体的には、前記炭化スクリューコンベア220は、前記制御部300によって作動制御される電動モータ等の炭化コンベア用アクチュエータ222と、前記炭化ケース210内に長手方向に沿って収容された状態で前記炭化コンベア用アクチュエータ222によって軸線回りに回転駆動される回転軸224と、前記回転軸224に設けられた螺旋はね等の搬送体226とを有している。
【0027】
前記炭化用過熱蒸気発生機構230は、前記水供給部90から供給される蒸気又は霧状の水を加熱して過熱蒸気を生成し、生成した過熱蒸気を前記炭化ケース210内へ供給するように構成されている。
【0028】
図1に示すように、前記炭化用過熱蒸気発生機構230は、前記炭化ケース210に着脱可能に連結される炭化カバー240と、前記炭化カバー240に支持された炭化用流体加熱管250とを有している。
【0029】
詳しくは、炭化ケース210には、前記炭化スクリューコンベア220の搬送方向に関し炭化用受入口210(in)及び炭化用排出口210(out)の間において炭化処理空間210Aを上方に開く炭化用上方開口が設けられており、前記炭化カバー240は、前記炭化用上方開口を気密に閉塞するように前記炭化ケース210に連結されている。
【0030】
前記炭化用流体加熱管250は、前記制御部300によって作動制御される電圧供給部260からの電圧印可に応じて発熱するインコネル、ハステロイ又はステンレス等の導電材によって形成された長尺の中空部材とされており、前記水供給部90から供給される蒸気又は霧状の水を内部空間に受け入れ、前記電圧供給部260からの電圧印加を受けて発熱されることによって内部空間の蒸気又は霧状の水を過熱蒸気に変換し、外部に放出するように構成されている。
【0031】
詳しくは、前記炭化用流体加熱管250は、前記炭化カバー240が前記炭化ケース210に連結された状態において、長手方向一方側の第1端部及び長手方向他方側の第2端部が前記炭化カバー240から外方へ延在された状態で、前記第1及び第2端部の間の前記中間部分が前記炭化用上方開口に臨むように、前記炭化カバー240に支持されている。
【0032】
前記第1及び第2端部には、それぞれ、第1及び第2給電点が設けられ、且つ、前記第1及び第2端部の一方には前記炭化用流体加熱管250の内部空間に前記水供給機構90からの蒸気又は霧状の水を導入する導入口が設けられている。
【0033】
本実施の形態においては、図1に示すように、前記水供給部90はボイラー91を有しており、前記ボイラー91から前記炭化用流体加熱管250の導入口に蒸気が供給される。
図1中の符号93は、前記ボイラー91から前記炭化用流体加熱管250へ供給される蒸気の量を調整する調整弁である。前記調整弁93は、前記制御部300によって作動制御、又は、人為操作される。
【0034】
前記炭化用流体加熱管250の中間部分には一又は複数の吐出口(図示せず)が設けられており、前記炭化用流体加熱管250によって生成された過熱蒸気は、前記一又は複数の吐出口から外部に放出され、前記炭化用上方開口を介して炭化処理空間210Aに供給される。
【0035】
前記炭化排気ライン80は、一端部が炭化処理空間210Aに流体接続され、且つ、他端部が直接又は間接的に大気に開放されている。
【0036】
図1に示すように、本実施の形態においては、前記炭化装置1は、強制酸化機構85を有しており、前記炭化排気ライン80の他端部は前記強制酸化機構85に流体接続されている。
【0037】
前記炭化排気ライン80、前記炭化排気ファン82及び前記強制酸化機構85を備えることによって、竹チップの炭化処理の際に生成されるタール等の不要ガスを炭化処理空間210Aから吸引して、前記強制酸化機構85によって燃焼させた状態で大気に放出することができる。
【0038】
図1に示すように、前記炭化装置1は、さらに、炭化処理空間210Aの温度を検出する炭化温度センサー219と、前記炭化排気ライン80のうち前記炭化排気ファン82より上流側の圧力を検出する炭化圧力センサー89とを有している。
【0039】
前記制御部300は、前記炭化圧力センサー89からの圧力値信号に基づき、前記炭化排気ライン80のうち前記炭化排気ファン82より上流側の圧力が所定の炭化排気減圧範囲に維持されるように、前記炭化排気ファン82の作動制御を行なうように構成されている。
【0040】
前記所定の炭化排気減圧範囲は、炭化処理空間210Aに収容されている竹チップの量や前記炭化スクリューコンベア220の搬送速度に応じて、炭化処理の際に生成される不要ガスを炭化処理空間210Aから有効に排出しつつ前記炭化用過熱蒸気発生機構230から炭化処理空間210Aに供給された過熱蒸気を吸引し過ぎないように、前記炭化処理空間210A内の圧力が大気圧より高圧に維持される範囲で、適宜設定される。
【0041】
さらに、前記制御装置300は、前記炭化温度センサー219からの検出値に基づき炭化処理空間210Aの炭化処理処理温度が所定温度となるように前記炭化用過熱蒸気発生機構230の作動制御を行うように構成されている。
【0042】
図1に示すように、前記炭化装置1は、さらに、竹チップの処理流れ方向に関し前記炭化部200より上流側に配置された乾燥部100を有している。
【0043】
前記炭化部200による炭化処理の際に竹チップが過剰に水分(例えば、含水率20%を越える水分)を含んでいると、均一な炭化処理が困難となると共に、場合によっては不活性ガスの発生等の問題も生じ得る。
【0044】
前記乾燥部100はかかる不都合を防止する為に前記炭化装置1に備えられている。
従って、被処理物である竹チップが十分に乾燥されている場合(例えば、含水率20%以下の場合)には、前記乾燥部100での乾燥処理は省略できる。
【0045】
図1に示すように、前記乾燥部100は、乾燥ケース110と、乾燥スクリューコンベア120と、乾燥用過熱蒸気発生機構130と、乾燥排気ライン70と、前記乾燥排気ライン70に介挿された乾燥排気ファン72とを備えている。
【0046】
前記乾燥ケース110は、被処理物である竹チップの乾燥処理空間110Aを形成する。
図1に示すように、前記乾燥ケース110は、竹チップを乾燥処理空間110Aの一方側へ受け入れる乾燥用受入口110(in)と、竹チップを乾燥処理空間110Aの他方側から排出する乾燥用排出口110(out)とを有している。
【0047】
前記乾燥スクリューコンベア120は、軸線回りの回転駆動に応じて、前記乾燥用受入口110(in)から前記乾燥ケース110内に供給された竹チップを、前記乾燥ケース110の軸線方向他方側の前記乾燥用排出口110(out)へ向けて搬送するように構成されている。
【0048】
具体的には、前記乾燥スクリューコンベア120は、前記制御部300によって作動制御される電動モータ等の乾燥コンベア用アクチュエータ122と、前記乾燥ケース110内に長手方向に沿って収容された状態で前記乾燥コンベア用アクチュエータ122によって軸線回りに回転駆動される状態で回転軸124と、前記回転軸124に設けられた螺旋はね等の搬送体126とを有している。
【0049】
前記乾燥用過熱蒸気発生機構130は、前記水供給部90から供給される蒸気又は霧状の水を加熱して過熱蒸気を生成し、生成した過熱蒸気を前記乾燥ケース110内へ供給するように構成されている。
【0050】
図1に示すように、前記乾燥用過熱蒸気発生機構130は、前記乾燥ケース110に着脱可能に連結される乾燥カバー140と、前記乾燥カバー140に支持された乾燥用流体加熱管150とを有している。
【0051】
詳しくは、乾燥ケース110には、前記乾燥スクリューコンベア120の搬送方向に関し乾燥用受入口110(in)及び乾燥用排出口110(out)の間において乾燥処理空間110Aを上方に開く乾燥用上方開口が設けられており、前記乾燥カバー140は、前記乾燥用上方開口を気密に閉塞するように前記乾燥ケース110に連結されている。
【0052】
前記乾燥用流体加熱管150は、前記制御部300によって作動制御される電圧供給部260からの電圧印可に応じて発熱するインコネル、ハステロイ又はステンレス等の導電材によって形成された長尺の中空部材とされており、前記水供給部90から供給される蒸気又は霧状の水を内部空間に受け入れ、前記電圧供給部260からの電圧印加を受けて発熱されることによって内部空間の蒸気又は霧状の水を過熱蒸気に変換し、外部に放出するように構成されている。
【0053】
詳しくは、前記乾燥用流体加熱管150は、前記乾燥カバー140が前記乾燥ケース110に連結された状態において、長手方向一方側の第1端部及び長手方向他方側の第2端部が前記乾燥カバー140から外方へ延在された状態で、前記第1及び第2端部の間の前記中間部分が前記乾燥用上方開口に臨むように、前記乾燥カバー140に支持されている。
【0054】
前記第1及び第2端部には、それぞれ、第1及び第2給電点が設けられ、且つ、前記第1及び第2端部の一方には前記乾燥用流体加熱管150の内部空間に前記水供給機構90からの蒸気又は霧状の水を導入する導入口が設けられている。
【0055】
前述の通り、本実施の形態においては、前記水供給部90はボイラー91を有しており、前記ボイラー91から前記乾燥用流体加熱管150の導入口に蒸気が供給される。
図1中の符号92は、前記ボイラー91から前記乾燥用流体加熱管150へ供給される蒸気の量を調整する調整弁である。前記調整弁92は、前記制御部300によって作動制御、又は、人為操作される。
【0056】
前記乾燥用流体加熱管150の中間部分には一又は複数の吐出口(図示せず)が設けられており、前記乾燥用流体加熱管150によって生成された過熱蒸気は、前記一又は複数の吐出口から外部に放出され、前記乾燥用上方開口を介して乾燥処理空間110Aに供給される。
【0057】
前記乾燥排気ライン70は、一端部が乾燥処理空間110Aに流体接続され、且つ、他端部が前記炭化排気ライン80に流体接続されている。
【0058】
前記乾燥排気ライン70及び前記乾燥排気ファン72を備えることにより、乾燥処理空間110Aの余剰蒸気を、被処理物である竹チップに対する処理に影響を与えること無く大気に放出することができる。
前記乾燥排気ファン72は、前記制御部300によって作動制御されるように構成される。
【0059】
図1に示すように、前記炭化装置1は、さらに、乾燥処理空間110Aの温度を検出する乾燥温度センサー119と、前記乾燥排気ライン70のうち前記乾燥排気ファン72より上流側の圧力を検出する乾燥圧力センサー79とを有している。
【0060】
この場合、前記制御部300は、前記乾燥圧力センサー119からの圧力値信号に基づき、前記乾燥排気ライン70のうち前記乾燥排気ファン72より上流側の圧力が所定の乾燥排気減圧範囲に維持されるように、前記蒸気排出ファン72の作動制御を行なうように構成される。
【0061】
前記所定の乾燥排気減圧範囲は、乾燥処理空間110Aに収容されている竹チップの量や前記乾燥スクリューコンベア120の搬送速度に応じて、乾燥処理空間110Aが大気圧より高圧に維持される範囲で、適宜設定される。
【0062】
さらに、前記制御装置300は、前記乾燥温度センサー119からの検出値に基づき乾燥処理空間110Aの乾燥処理処理温度が所定温度となるように前記乾燥用過熱蒸気発生機構130の作動制御を行うように構成される。
【0063】
図1に示すように、本実施の形態においては、前記炭化装置1は、さらに、竹チップの処理方向に関し前記乾燥部100及び前記炭化部200の間に中間搬送部50を有しており、前記炭化ケース210には前記中間搬送部50から竹チップが供給される。
【0064】
前記中間搬送部50は、気密状態の中間搬送空間を画する中間搬送ケース51と、前記中間搬送ケース51の中間搬送空間の一方側から他方側へ被処理物を搬送する中間搬送スクリューコンベア52とを有している。
【0065】
前記中間搬送ケース51は、中間搬送空間の一方側及び他方側にそれぞれ連通するように形成された中間受入口51(in)及び中間排出口51(out)を有しており、前記乾燥ケース110の乾燥用排出口110(out)が前記中間搬送ケース51の中間受入口51(in)に気密状態で連結され且つ前記中間搬送ケース51の中間排出口51(out)が前記炭化ケース210の炭化用受入口210(in)に気密状態で連結されている。
【0066】
前記中間搬送スクリューコンベア52は、少なくとも一端部が外方へ延在された状態で搬送空間を長手方向に沿って縦断する回転軸52aと、前記回転軸52aに設けられた螺旋羽根等の搬送体52bと、前記制御部300によって作動制御され、前記回転軸52aの一端部を回転駆動する電動モータ等のアクチュエータ(図示せず)とを有している。
【0067】
図1に示すように、前記炭化装置1は、さらに、前記乾燥部100より竹チップの処理方向上流側に竹チップを収容可能なホッパー20を備えており、前記乾燥ケース110の乾燥用受入口110(in)は前記ホッパー20の出口に直接又は間接的に連結されている。
【0068】
なお、本実施の形態においては、図1に示すように、前記ホッパー20と前記乾燥部100との間には上流側搬送部30が介挿されている。
【0069】
前記上流側搬送部30は、気密状態の上流搬送空間を画する上流側搬送ケース31と、前記上流側搬送ケース31の上流搬送空間の一方側から他方側へ被処理物を搬送する上流側搬送スクリューコンベア32とを有している。
【0070】
前記上流側搬送ケース31は、上流搬送空間の一方側及び他方側にそれぞれ連通するように形成された上流側受入口31(in)及び上流側排出口31(out)を有しており、前記ホッパー20の出口が前記上流側搬送ケース31の上流側受入口31(in)に気密状態で連結され且つ前記上流側搬送ケース31の上流側排出口31(out)が前記乾燥ケース110の乾燥用受入口110(in)に気密状態で連結されている。
【0071】
図1に示すように、前記炭化装置1は、さらに、前記乾燥ケース110の乾燥用受入口110(in)を直接又は間接的に開閉する上流側開閉弁40が設けられる。
前記上流側開閉弁40を備えることにより、前記乾燥部100への竹チップの投入量の制御を行うことができる。
【0072】
さらに、前記上流側開閉弁40を備えることにより、前記乾燥ケース110内への大気の流入をより確実に防止して前記乾燥ケース110内の過熱蒸気雰囲気を有効に維持することができる。
【0073】
即ち、前記乾燥ケース110内は前記乾燥用流体加熱管130から放出される過熱蒸気によって与圧状態とされている為、前記上流側開閉弁40を備えなくても、前記乾燥ケース110の乾燥用受入口110(in)から大気が流入することをある程度は防止することができるが、前記上流側開閉弁40を備えることによって、この大気の流入をより確実に防止することができる。
【0074】
さらに、前記上流側開閉弁40を備えて乾燥処理空間110Aへの大気の流入を防止することにより、乾燥処理空間110Aを所定圧力範囲に維持する為の前記制御装置300による前記蒸気排出ファン72の作動制御、及び/又は、炭化処理空間210Aを所定圧力範囲に維持する為の前記制御装置300による前記炭化排気ファン82の作動制御をより容易且つ正確に行うことができる。
【0075】
前記上流側開閉弁40は、前記制御部300によって作動制御されるアクチュエータによって開閉動作するように構成され得る。
なお、本実施の形態においては、前記上流側開閉弁40は、前記上流側搬送ケース31の上流側排出口31(out)と前記乾燥ケース110の乾燥用受入口110(in)とを連結する配管に介挿されている。
【0076】
さらに、図1に示すように、前記炭化装置1には、前記炭化ケース210の炭化用排出口210(out)を直接又は間接的に開閉する下流側開閉弁60が設けられる。
【0077】
前記下流側開閉弁60を備えることにより、前記炭化ケース210内への大気の流入をより確実に防止して前記炭化ケース210内の過熱蒸気雰囲気を有効に維持することができる。
【0078】
即ち、前記炭化ケース210内は前記炭化用流体加熱管230から放出される過熱蒸気によって与圧状態とされている為、前記下流側開閉弁60を備えなくても、前記炭化ケース210の炭化用排出口210(out)から大気が流入することをある程度は防止することができるが、前記下流側開閉弁60を備えることによって、この大気の流入をより確実に防止することができる。
【0079】
さらに、前記下流側開閉弁40を備えて炭化処理空間210Aへの大気の流入を防止することにより、炭化処理空間210Aを所定圧力範囲に維持する為の前記制御装置300による前記炭化排気ファン82の作動制御及び/又は、乾燥処理空間110Aを所定圧力範囲に維持する為の前記制御装置300による前記蒸気排出ファン72の作動制御をより容易且つ正確に行うことができる。
【0080】
前記下流側開閉弁60は、前記制御部300によって作動制御されるアクチュエータによって開閉動作するように構成され得る。
なお、本実施の形態においては、前記下流側開閉弁60は、前記炭化ケース210の炭化用排出口210(out)に設けられている。
【0081】
ここで、本願発明者は、
・過熱蒸気によって竹チップを炭化させて竹炭を製造する方法においては、過熱蒸気による竹チップの炭化処理の際に、炭化処理温度を通常の温度(650℃~750℃)よりも低温で行うことにより、過熱蒸気によって原料竹チップに対して炭化処理を行いつつ含有塩素を除去できるのではないか、及び
・炭化処理空間の圧力を大気圧よりも高圧の与圧状態とすることで炭化処理空間の過熱蒸気雰囲気を維持して炭化処理の有効状態を現出させる一方で、炭化処理空間の圧力を、竹チップの処理量等の炭化条件に応じて適宜設定される所定の炭化処理範囲に維持するように炭化処理空間のガス抜きを行うことで、過熱蒸気による炭化処理中に竹チップから洗浄除去され得る塩素が再度竹チップに付着することを有効に防止して、ハロゲンフリー竹炭を得ることができるのではないか、
という新規な着想を思いつき、下記の検証を行った。
【0082】
・検証1
塩素含有量が2190ppmの原料竹チップに対して、洗浄処理を行うことなく、前記炭化装置1を用いて乾燥処理及び炭化処理を行なって竹炭を製造した。
【0083】
乾燥処理は以下の条件で行った。
前記乾燥排気ライン70のうち前記乾燥排気ファン72より上流側の圧力が所定の減圧範囲(100~300Pa)に維持されるように前記乾燥排気ファン72の作動制御を行いつつ、前記乾燥温度センサー119によって検出される乾燥処理温度が400℃~600℃に維持されるように前記乾燥用過熱蒸気発生機構130の作動制御を行なって、乾燥状態(含水率20%以下)の竹チップを得た。
【0084】
炭化処理は以下の条件で行った。
前記炭化排気ライン80のうち前記炭化排気ファン82より上流側の圧力が所定の炭化排気減圧範囲(100~300Pa)に維持されるように前記炭化排気ファン82の作動制御を行いつつ、前記炭化温度センサー219によって検出される炭化処理温度がそれぞれ400℃、450℃、500℃、550℃、600℃、650℃及び700℃に維持されるように前記炭化用過熱蒸気発生機構230の作動制御を行って、炭化処理温度が異なる複数種類の竹炭チップを製造した。
【0085】
炭化処理温度400℃、450℃、500℃、550℃、600℃、650℃及び700℃で製造した竹炭チップの塩素含有量は、それぞれ、1460ppm、164ppm、196ppm、257ppm、850ppm、1250ppm及び1610ppmであった。
検証1の結果を図2に示す。
【0086】
・検証2
塩素含有量が740ppmの原料竹チップに対して、検討1と同一条件で、洗浄処理を行うことなく、乾燥処理及び炭化処理を行なって竹炭を製造した。
【0087】
炭化処理温度400℃、450℃、500℃、550℃、600℃、650℃及び700℃で製造した竹炭チップの塩素含有量は、それぞれ、902ppm、157ppm、160ppm、150ppm、175ppm、974ppm及び676ppmであった。
検証2の結果を図3に示す。
【0088】
検証1及び2の結果から明らかなように、過熱蒸気による竹チップの炭化処理の際に、炭化処理温度を通常の炭化温度より低温の450℃~600℃に維持しつつ、前記炭化排気ライン80のうち前記炭化排気ファン82より上流側の圧力が所定の炭化排気減圧範囲無いに維持されるように前記炭化排気ファン82を作動させれば、洗浄処理を行うことなく、塩素含有量を効果的に低減させたハロゲンフリー竹炭を製造することができた。
【0089】
・検証3
塩素(Cl)、リン(P)、カリウム(K)及びカルシウム(Ca)の含有量がそれぞれ2190ppm、207ppm、3650ppm及び146ppmの原料竹チップに対して、洗浄処理を行うことなく、前記炭化装置1を用いて乾燥処理及び炭化処理を行なって竹炭を製造した。
【0090】
乾燥処理は以下の条件で行った。
前記乾燥排気ライン70のうち前記乾燥排気ファン72より上流側の圧力が所定の減圧範囲(100~300Pa)に維持されるように前記乾燥排気ファン72の作動制御を行いつつ、前記乾燥温度センサー119によって検出される乾燥処理温度が400℃~600℃に維持されるように前記乾燥用過熱蒸気発生機構130の作動制御を行なって、乾燥状態(含水率20%以下)の竹チップを得た。
【0091】
炭化処理は以下の条件で行った。
前記炭化排気ライン80のうち前記炭化排気ファン82より上流側の圧力が所定の炭化排気減圧範囲(100~300Pa)に維持されるように前記炭化排気ファン82の作動制御を行いつつ、前記炭化温度センサー219によって検出される炭化処理温度が500℃に維持されるように前記炭化用過熱蒸気発生機構230の作動制御を行って、竹炭チップを製造した。
【0092】
このようにして製造した竹炭チップの塩素(Cl)、リン(P)、カリウム(K)及びカルシウム(Ca)の含有量は、それぞれ、257ppm、2200ppm、8420ppm及び459ppmであった。
検証3の結果を図4に示す。
【0093】
比較例として、同じ成分の原料竹チップに対して洗浄処理を行なった洗浄済竹チップを用意し、洗浄済竹チップに対して乾燥処理及び炭化処理を行った洗浄済み竹炭チップを製造して、その塩素(Cl)、リン(P)、カリウム(K)及びカルシウム(Ca)の含有量を測定した。
【0094】
洗浄処理として、原料竹チップをイオン交換水に含浸させた状態で、煮沸及び冷却を行なった。
乾燥処理及び炭化処理の条件は前記検証3と同一とした。
【0095】
洗浄済竹炭チップの塩素(Cl)、リン(P)、カリウム(K)及びカルシウム(Ca)の含有量は、それぞれ、49ppm、87ppm、355ppm及び197ppmであった。
比較例の結果を図4に併せて示す。
【0096】
検証3及び比較例の結果から、洗浄処理を行った場合には、塩素(Cl)のみならず、リン(P)、カリウム(K)及びカルシウム(Ca)の灰分も除去される一方で、洗浄処理を行わずに、炭化処理温度が500℃に維持されるように過熱蒸気を供給しつつ前記炭化排気ライン80のうち前記炭化排気ファン82より上流側の圧力が所定の炭化排気減圧範囲(100~300Pa)に維持されるように前記炭化排気ファン82の作動制御を行って炭化処理を行った場合には、リン(P)、カリウム(K)及びカルシウム(Ca)の灰分を増やしつつ、塩素(Cl)を有効に低減させ得ることが分かった。
【0097】
詳しくは、カリウム(K)に対する塩素(Cl)の含有比率は、原料竹チップにおいては0.6(=2190/3650)であり、比較例においては0.13(=257/355)であるのに対し、検証3においては0.03(=257/8420)であった。
【0098】
このことから、洗浄処理を行わずに、炭化処理温度が450℃~600℃となるように過熱蒸気を供給しつつ前記炭化排気ライン80のうち前記炭化排気ファン82より上流側の圧力が所定の炭化排気減圧範囲(100~300Pa)に維持されるように前記炭化排気ファン82の作動制御を行って炭化処理を行なう竹炭の製造方法によれば、従来には得ることが困難であった、カリウムに対する塩素の含有比率が0.05以下の竹炭を有効に製造することができると考えられる。
【0099】
また、リン(P)に対する塩素(Cl)の含有比率は、原料竹チップにおいては10.58(=2190/207)であり、比較例においては0.563(=49/87)であるのに対し、検証3においては0.117(=257/2200)であった。
【0100】
このことから、洗浄処理を行わずに、炭化処理温度が450℃~600℃となるように過熱蒸気を供給しつつ前記炭化排気ライン80のうち前記炭化排気ファン82より上流側の圧力が所定の炭化排気減圧範囲(100~300Pa)に維持されるように前記炭化排気ファン82の作動制御を行って炭化処理を行なう竹炭の製造方法によれば、従来には得ることが困難であった、リンに対する塩素の含有比率が0.2以下の竹炭を有効に製造することができると考えられる。
【0101】
さらに、リン(P)、カリウム(K)及びカルシウム(Ca)を含む灰分に対する塩素(Cl)の含有比率は、原料竹チップにおいては0.547(=2190/(207+3650+146))であり、比較例においては0.0766(=49/(87+355+197))であるに対し、検証3においては0.023(=257/2200+8420+459))であった。
【0102】
このことから、洗浄処理を行わずに、炭化処理温度が450℃~600℃となるように過熱蒸気を供給しつつ前記炭化排気ライン80のうち前記炭化排気ファン82より上流側の圧力が所定の炭化排気減圧範囲(100~300Pa)に維持されるように前記炭化排気ファン82の作動制御を行って炭化処理を行なう竹炭の製造方法によれば、従来には得ることが困難であった、灰分に対する塩素の含有比率が0.05以下の竹炭を有効に製造することができると考えられる。
【符号の説明】
【0103】
1 炭化装置
70 乾燥排気ライン
72 乾燥排気ファン
79 乾燥圧力センサー
82 炭化排気ファン
89 炭化圧力センサー
90 水供給部
100 乾燥部
110 乾燥ケース
119 乾燥温度センサー
120 乾燥スクリューコンベア
130 乾燥用過熱蒸気発生機構
200 炭化部
210 炭化ケース
210A 炭化処理空間
219 炭化温度センサー
220 炭化スクリューコンベア
230 炭化用過熱蒸気発生機構
300 制御部
図1
図2
図3
図4