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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134233
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】運行管理システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20240926BHJP
   E02F 1/00 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
G08G1/00 D
E02F1/00
G08G1/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044432
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000969
【氏名又は名称】弁理士法人中部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野澤 優介
(72)【発明者】
【氏名】溝尾 駿
(72)【発明者】
【氏名】高島 亨
(72)【発明者】
【氏名】長川 研太
(72)【発明者】
【氏名】平中 貴士
(72)【発明者】
【氏名】小西 翔太
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA07
5H181AA15
5H181BB04
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181EE11
5H181FF13
(57)【要約】      (修正有)
【課題】鉱山での作業効率の低下を抑制することができる運行管理システムを提供する。
【解決手段】本発明において、コンピュータ10は、路面状態を検出する路面状態検出装置2が搭載された登録モビリティから取得した位置情報と路面情報とに基づいて、地図データ上の位置と路面情報とを関連付けて路面地図データを作成し、散水車M3による路面への散水に関する情報である散水情報又は特定エリアの天気情報と路面地図データとに基づいて、水溜まりが形成された位置を算出し、複数の登録モビリティから指定モビリティを指定し、水溜まりの位置に基づいて、指定モビリティの目標ルートを修正し、指定モビリティに修正後の目標ルートを指令する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
未舗装路を含み一般道を含まない限定された特定エリアにおいて、それぞれ位置情報を取得可能な複数の登録モビリティの運行を、各前記登録モビリティに目標ルート及び走行速度を指令することで管理するように構成された運行管理システムであって、
コンピュータを備え、
前記コンピュータは、
路面状態を検出する路面状態検出装置が搭載された前記登録モビリティから取得した前記位置情報と路面情報とに基づいて、地図データ上の位置と前記路面情報とを関連付けて路面地図データを作成し、
散水車による路面への散水に関する情報である散水情報又は前記特定エリアの天気情報と前記路面地図データとに基づいて、水溜まりが形成された位置を算出し、
複数の前記登録モビリティから指定モビリティを指定し、前記水溜まりの位置に基づいて、前記指定モビリティの前記目標ルートを修正し、
前記指定モビリティに修正後の前記目標ルートを指令する、
運行管理システム。
【請求項2】
前記コンピュータには、各前記登録モビリティのタイヤの配置位置に関する諸元情報が記憶されており、
前記コンピュータは、前記指定モビリティのタイヤが前記水溜まりを通過するように、前記指定モビリティの前記目標ルートを修正する、
請求項1に記載の運行管理システム。
【請求項3】
前記コンピュータは、前記水溜まりを走行する際の前記指定モビリティの走行速度を、自動運転時の走行速度よりも低い特定速度に修正し、前記指定モビリティに走行速度として前記特定速度を指令する、
請求項2に記載の運行管理システム。
【請求項4】
前記特定エリアは、鉱山であり、
複数の前記登録モビリティには、重機、前記重機よりも軽量な車両、及び前記散水車が含まれ、
前記コンピュータは、1台以上の前記車両を前記指定モビリティに設定する、
請求項2又は3に記載の運行管理システム。
【請求項5】
前記コンピュータは、前記散水車の後続車のうち目的地が前記散水車の目的地と同じである前記車両が複数存在する場合、その複数の前記車両のうち最も全体質量が小さい前記車両を前記指定モビリティに設定する、
請求項4に記載の運行管理システム。
【請求項6】
前記コンピュータは、前記散水車の後続車のうち目的地が前記散水車の目的地と同じで且つ無人である前記車両を前記指定モビリティに設定する、
請求項4に記載の運行管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運行管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2020-84431号公報には、鉱山の路面に対して散水などの土煙抑制作業が必要であると判定した場合、土煙抑制作業の実行指示信号を出力する路面管理システムが開示されている。鉱山では、未舗装路上を重機(作業機械)やライトビークル等が走行している。乾燥した未舗装路に対して散水車により散水が実行されると、土煙や砂埃が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-84431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、散水の結果、窪み等の凹部が形成された路面には、水溜まりが形成される可能性がある。水溜まりは、その部分の路面摩擦係数を小さくし、スリップを誘発する可能性がある。また、水溜まり上を走行するタイヤとそうでないタイヤとの間に、路面摩擦係数の差が発生することで、モビリティの走行に悪影響が出る可能性がある。例えば重機の走行が乱れると鉱山での作業効率は大きく低下する。
【0005】
本発明の目的は、鉱山での作業効率の低下を抑制することができる運行管理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の運行管理システムは、未舗装路を含み一般道を含まない限定された特定エリアにおいて、それぞれ位置情報を取得可能な複数の登録モビリティの運行を、各前記登録モビリティに目標ルート及び走行速度を指令することで管理するように構成されたシステムである。運行管理システムは、コンピュータを備える。前記コンピュータは、路面状態を検出する路面状態検出装置が搭載された前記登録モビリティから取得した前記位置情報と路面情報とに基づいて、地図データ上の位置と前記路面情報とを関連付けて路面地図データを作成する。前記コンピュータは、散水車による路面への散水に関する情報である散水情報又は前記特定エリアの天気情報と前記路面地図データとに基づいて、水溜まりが形成された位置を算出する。前記コンピュータは、複数の前記登録モビリティから指定モビリティを指定し、前記水溜まりの位置に基づいて、前記指定モビリティの前記目標ルートを修正する。前記コンピュータは、前記指定モビリティに修正後の前記目標ルートを指令する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、水溜まりの位置に基づいて指定モビリティの目標ルートを修正することができる。これにより、鉱山での作業効率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態の運行管理システムの構成図である。
図2】本実施形態の目標ルートの修正を説明するための概念図である。
図3】本実施形態の制御例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態として、本発明の一実施形態である運行管理システムを、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、本発明は、下記実施例の他、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の形態で実施することができる。本実施形態の運行管理システム1は、未舗装路を含み一般道を含まない限定された特定エリアとしての鉱山で運用されるシステムである。
【0010】
図1に示すように、運行管理システム1は、それぞれ位置情報を取得可能な複数の登録モビリティの運行を、目標ルート及び走行速度を指令することで管理するように構成されている。運行管理システム1は、各登録モビリティのタイヤの配置位置に関する諸元情報が記憶されたコンピュータ10を備えている。本実施形態の運行管理システム1は、コンピュータ10により構成されているといえる。登録モビリティは、予めコンピュータ10に登録されている管理対象のモビリティである。モビリティは、路面を走行する移動体(例えば車両等)である。各登録モビリティには、例えばGNSS(Global Navigation Satellite System:全球測位衛星システム)の受信機4、及び自動運転制御を実行する自動運転ECU3が搭載されている。
【0011】
本実施形態では、登録モビリティとして、複数のライトビークルM1と、複数の大型ダンプトラック(大型重機)M2と、1台以上の散水車M3が登録されている。ライトビークルM1は、重機よりも軽量な車両であり、例えばピックアップトラックである。散水車M3は、水が収容されたタンクを積載し、ポンプにより後方に水を撒くことができる車両である。つまり、散水車M3は、水を撒く装置を備えた車両である。このように、コンピュータ10は、種類又は型が異なるモビリティを含む複数の登録モビリティの運行を管理する。コンピュータ10は、各登録モビリティと通信可能に構成されている。運行管理システム1は、管制システムともいえ、無線通信装置を持つ施設に設置されている。
【0012】
コンピュータ10は、1つ以上のプロセッサ11と、1つ以上のメモリ12と、を備えている。プロセッサ11は、メモリ12に記憶されたプログラムに従って、各種処理を実行する。メモリ12は、記憶装置であって、コンピュータ10の内部及び/又は外部に配置されている。コンピュータ10は、電子制御ユニット(ECU)を含んでいるともいえる。コンピュータ10には、各登録モビリティのタイヤの配置位置に関する諸元情報が記憶されている。コンピュータ10には、例えば、登録モビリティの位置情報に対するタイヤの相対位置が記憶されている。コンピュータ10は、登録モビリティの位置情報と諸元情報に基づいて、登録モビリティの各タイヤの位置を算出する。
【0013】
コンピュータ10には、道路の位置情報を含む地図データが記憶されている。コンピュータ10は、地図データ、各登録モビリティの目的地、及び各登録モビリティの位置(現在地)等に基づいて、各登録モビリティの目標ルートを演算する。コンピュータ10は、各登録モビリティに目標ルート及び走行条件の情報を指令(指示信号ともいえる)として送信する。走行条件には、走行速度及び走行間隔(車間距離)が含まれている。コンピュータ10は、自動運転が実行される登録モビリティに対して、自動運転時の走行速度として設定された「通常指令速度」を指令として送信する。各登録モビリティに搭載された自動運転ECU3は、コンピュータ10から受信した指令に基づいて、図示しない転舵装置、駆動装置、及び制動装置に対して自動運転制御を実行する。
【0014】
各登録モビリティには、路面状態を検出する路面状態検出装置2が搭載されている。路面状態検出装置2は、周辺の物体に関する情報を検出する周辺監視装置20を含んで構成されている。周辺監視装置20は、カメラ、ライダー(LiDAR:Light Detection and Ranging, or Laser Imaging Detection and Ranging)、及びレーダーの少なくとも1つを含んで構成されている。また、本実施形態において、周辺監視装置20は、すべての登録モビリティに搭載されている。
【0015】
例えば、本実施形態の各ライトビークルM1には、周辺監視装置20として、複数のカメラと、1つのライダーと、複数のミリ波レーダーとが搭載されている。各登録モビリティの自動運転ECU3は、周辺監視装置20の検出結果及び地図データに基づいて、障害物を避ける等、目標ルートを微調整することができる。周辺監視装置20は、カメラ等の認識センサ及び/又はToF(Time of Flight)技術を用いた装置を含んで構成されるといえる。各登録モビリティの路面状態検出装置2の検出結果は、路面情報として、位置情報とともにコンピュータ10に送信される。
【0016】
コンピュータ10は、路面状態検出装置2が搭載された登録モビリティから取得した位置情報と路面情報とに基づいて、地図データ上の位置と路面情報とを関連付けて路面地図データを作成する。この処理は、地図作成処理ともいえる。コンピュータ10は、路面地図データを記憶し、随時更新する。なお、コンピュータ10は、路面地図データの作成に用いる路面情報を、すべての登録モビリティから取得してもよいし、一部の登録モビリティ(例えばライトビークル)のみから取得してもよい。
【0017】
コンピュータ10は、各散水車M3から、散水車M3による路面への散水に関する情報である散水情報を取得する。散水情報には、散水車M3の運行情報(位置情報)及び作業情報(散水作業実行の有無、散水幅等)が含まれている。散水車M3は、自動運転であっても手動運転であっても、散水情報をコンピュータ10に送信する。自動運転対象の散水車M3に搭載された自動運転ECU3は、コンピュータ10から指令された目標ルート、走行速度、走行間隔、及び散水のタイミング等に基づいて、自動運転制御を実行する。
【0018】
コンピュータ10は、路面地図データと散水情報とに基づいて、水溜まりが形成された位置を算出する。この処理は、水溜まり位置算出処理ともいえる。コンピュータ10は、路面地図データから把握できる路面における窪みや轍などの凹んだ部分(以下、凹部という)の位置と、散水情報から把握できる散水されたエリア(以下、散水エリアという)とが重なっているエリアを、水溜まりとして算出する。コンピュータ10は、散水情報に基づいて散水エリアを設定する。コンピュータ10は、散水エリアのうち、凹部の位置を水溜まりが形成された位置(以下、水溜まり位置という)として設定する。散水エリアの設定は、設定から所定時間経過した場合、解除される。所定時間は、例えば路面の水はけ度等に応じて設定される。
【0019】
コンピュータ10は、複数の登録モビリティから指定モビリティを指定(選択)し、指定モビリティのタイヤが水溜まりの上を走行するように、指定モビリティの目標ルートを修正(設定)する。この処理は、目標ルート修正処理ともいえる。コンピュータ10は、各登録モビリティの位置情報及び目標ルートに基づいて、すべての登録モビリティ又は予め設定された登録モビリティの中から、散水エリアを走行予定の又は走行中の登録モビリティを選択する。コンピュータ10は、選択された1台以上の登録モビリティから、所定の指定ルールに基づいて、指定モビリティとして水溜まりを走行させる登録モビリティを1台以上指定する。
【0020】
指定モビリティの指定ルールは、例えば、「散水車M3よりも後方を走行している登録モビリティであること」及び「大型重機よりも軽量な登録モビリティ(本実施形態ではライトビークルM1)であること」に設定されている。この指定ルールによれば、例えば図2に示すように、散水作業中の散水車M3の直接後方(後続1台目)に大型ダンプトラックM2が走行し、その大型ダンプトラックM2の直接後方にライトビークルM1が走行している場合、散水車M3の後続2台目のライトビークルM1が指定モビリティに設定される。なお、この場合、コンピュータ10は、散水車M3の直接後方の大型ダンプトラックM2に対して、水溜まりを避けるように設定した目標ルートを指令してもよい。つまり、コンピュータ10は、散水車M3と指定モビリティとの間を走行する登録モビリティが存在する場合、その登録モビリティに対して、水溜まりを避けるように修正した目標ルートを指令してもよい。また、コンピュータ10は、上記指定ルールを用いずに、散水エリアを走行予定の又は走行中の登録モビリティを1台以上選択し、その登録モビリティ(指定モビリティともいえる)に対して、水溜まりを避けるように修正した目標ルートを指令してもよい。例えば、コンピュータ10は、散水エリアを走行予定の又は走行中の大型ダンプトラックM2やライトビークルM1に対して、水溜まりを避けるように設定した目標ルートを指令してもよい。コンピュータ10は、指定モビリティに対して、水溜まりの位置に基づいて、水溜まりを通過する又は避けるように設定した目標ルートを指令することができる。このように、コンピュータ10は、水溜まりの位置に基づいて、指定モビリティの目標ルートを修正する。
【0021】
コンピュータ10は、指定モビリティに対して、タイヤが水溜まりを通過するように修正した目標ルートと走行速度の情報を送信する。コンピュータ10は、指定モビリティに、修正後の目標ルートを指令する。さらに、コンピュータ10は、自動運転時の走行速度である通常指令速度よりも低速な特定速度で水溜まりを通過するように、指定モビリティの走行速度を特定速度に設定し、指定モビリティに指令する(通常指令速度>特定速度)。特定速度は、指定モビリティが水溜まりをより安全に走行できるように低速(所定速度以下)に設定されている。特定速度は、例えば、スリップが発生しても、モビリティの挙動が不安定にならない速度に設定される。このように、コンピュータ10は、水溜まりを走行する際の指定モビリティの走行速度を、自動運転時の走行速度よりも低い特定速度に修正し、指定モビリティに走行速度として特定速度を指令する。
【0022】
コンピュータ10は、例えば、1台の指定モビリティが複数の水溜まりを通過するように目標ルートを設定してもよいし、複数の指定モビリティが1つ以上の水溜まりを通過するように目標ルートを設定してもよい。コンピュータ10は、例えば当該指定モビリティ及び他の登録モビリティの目的地への到達時刻が許容時刻以前となるように、指定モビリティの台数及び目標ルートを設定してもよい。なお、指定モビリティに搭載されている周辺監視装置20の検出結果も、路面地図データに反映される。
【0023】
コンピュータ10は、指定モビリティが同一の水溜まりを所定回数通過した場合、当該水溜まりの存在による水の偏在が解消したとして、当該水溜まり位置の設定を解除(削除)する。すべての水溜まり位置の設定が解除されると、指定モビリティの設定も解除され、指定モビリティであった登録モビリティの目標ルート及び走行速度は通常の目標ルート及び走行速度に戻される。
【0024】
図3に示すように、コンピュータ10は、各登録モビリティから、路面情報及び散水情報を取得する(S1)。コンピュータ10は、取得した路面情報に基づいて路面地図データを作成する(S2)。コンピュータ10は、取得した散水情報に基づいて、散水作業が行われているか否かを判定する(S3)。散水作業が行われている場合(S3:Yes)、コンピュータ10は、水溜まり位置を算出する(S4)。コンピュータ10は、指定モビリティを選定し、指定モビリティの目標ルート及び走行速度を修正する(S5)。また、コンピュータ10は、必要に応じて、指定モビリティ以外の登録モビリティの目標ルート及び走行速度を修正する。コンピュータ10は、修正後の目標ルート及び走行速度を、指定モビリティ等に指令する(S6)。
【0025】
散水作業が行われていない場合(S3:No)、路面地図データに基づいて、必要に応じて各登録モビリティの目標ルート等を修正する(S5)。コンピュータ10は、路面地図データ及び散水情報に基づいて、各登録モビリティの目標ルート及び走行速度について計画する(S5)。運行管理システム1では、このような処理が繰り返される。このように、コンピュータ10は、地図作成処理、水溜まり位置算出処理、及び目標ルート修正処理を実行する。
【0026】
本実施形態によれば、水溜まりの位置に基づいて指定モビリティの目標ルートを修正することができる。これにより、鉱山での作業効率の低下を抑制することができる。また、本実施形態によれば、指定モビリティのタイヤが水溜まりを通過することで、水溜まりの水を水溜まり外の路面に飛散させ分散させることができる。つまり、本実施形態によれば、路面の水の偏在を抑制することができる。これにより、水溜まりによる路面摩擦係数の差の発生は抑制される。本実施形態によれば、未舗装路における水の偏在が抑制され、路面摩擦係数の適正化が可能となる。
【0027】
鉱山での運用では、特定エリアは鉱山であり、複数の登録モビリティには、例えば、重機(例えば大型ダンプトラック)、重機よりも軽量な車両(例えばライトビークル)、及び散水車が含まれている。この場合、コンピュータ10は、1台以上の車両を指定モビリティに設定することで、路面形状の変化を抑制しつつ、水溜まりの水を分散させることができる。
【0028】
(他の運用条件)
散水エリアを走行して目的地に向かうライトビークル(相対的に軽量の登録モビリティ)が複数台存在し、且つ積載量が互いに異なる2台以上のライトビークルが存在する場合、コンピュータ10は、最も積載量が小さいライトビークルを指定モビリティに指定してもよい。軽量のライトビークルが水溜まりを走行することで、路面形状の変化を抑制しつつ、路面の水を分散させることができる。このように、コンピュータ10は、散水車M3の後続車のうち目的地が散水車M3の目的地と同じである車両が複数存在する場合、その複数の車両のうち最も全体質量(積載質量含む)が小さい車両を指定モビリティに設定する。
【0029】
散水エリアのうち、指定モビリティが特定速度で水溜まりを通過した際、仮にスリップが発生した場合に指定モビリティが損傷する可能性が高いエリア(以下、リスクエリアという)に対しては、コンピュータ10は、走行速度を特定速度よりも低い値に設定してもよい。あるいは、コンピュータ10は、リスクエリアにおいては、指定モビリティが水溜まりを避けて走行するように、目標ルートを設定してもよい。危険エリアは、例えば、水溜まりの周辺に障害物が存在するエリア、又は水溜まりの周辺に崖が存在するエリアに設定される。
【0030】
指定モビリティの指定順序は、障害物との接触が発生した際のリスクに応じて設定されてもよい。例えば、指定モビリティの選択において、有人自動運転よりも無人自動運転のモビリティが優先される。また、同じ無人自動運転又は有人自動運転の登録モビリティの中では、積載量を含む全体重量が小さいほど、指定モビリティの選択の優先度が高い。つまり、この指定ルールによれば、無人自動運転で軽量の登録モビリティが優先して指定モビリティに指定される。乗員がいないこと及び軽いことにより、スリップが発生して障害物と接触した時の人やモビリティに対する損傷リスクは低減される。このように、コンピュータ10は、散水車M3の後続車のうち、目的地が散水車M3の目的地と同じで且つ無人である車両を指定モビリティに設定する。
【0031】
コンピュータ10は、指定モビリティに搭載された周辺監視装置20の検出結果に基づいて、リアルタイムで水溜まり位置を設定し、指定モビリティの目標ルートを修正してもよい。コンピュータ10又は周辺監視装置20は、カメラ等の画像データから前方の水溜まりの有無を判定し、水溜まり位置を判定してもよい。リアルタイムの水溜まり位置の情報は、路面情報として路面地図データに反映されてもよい。
【0032】
(その他)
本発明は、上記実施形態に限られない。例えば、コンピュータ10は、インターネット等のネットワークを介して、特定エリア(例えば鉱山)の天気情報を取得してもよい。コンピュータ10は、天気情報及び路面地図データに基づいて、水溜まり位置が形成された位置を算出する。例えば天気情報が雨天を示している場合、路面の凹部に水溜まりが形成される可能性が高い。コンピュータ10は、例えば雨が止んだ後に、指定モビリティを指定し、水溜まり位置に対応して指定モビリティの目標ルート及び走行速度を設定してもよい。これによっても、上記同様の効果が発揮される。
【0033】
この場合、例えば図3のフローの一部は下記のように変更される。コンピュータ10は、散水情報に替えて又は加えて、天気情報を取得する(S1)。コンピュータ10は、散水確認に替えて又は加えて、特定エリアの天気が雨天であるか否かを判定する(S3)。コンピュータ10は、雨が降った雨天エリアを算出し、水溜まり位置を算出する(S4)。その他の処理は、上記同様に実行される。このように、天気情報に基づいて水溜まり位置が設定されてもよい。
【0034】
また、コンピュータ10は、散水車M3の運行及び作業エリアを予め把握しているため、散水車M3が作業開始する前に、予め、散水車M3の後続車として指定モビリティの条件に合う登録モビリティを設定してもよい。コンピュータ10は、例えば、散水車M3の後続車として軽量のライトビークルM1が配置されるように、散水車M3の作業開始前に、対象のライトビークルM1の目標地を散水車の後方位置に設定し、当該ライトビークルM1を移動させてもよい。散水車M3の散水開始前(出発前又は運行中)に、散水車M3の後ろに対象のライトビークルM1が指定モビリティとして配置されることで、散水後早期に水溜まりの水を分散させることができる。
【0035】
また、路面状態検出装置2は、周辺監視装置20に加えて又は替えて、轍判定装置を備えていてもよい。轍判定装置は、例えばECUであってもよいし又はコンピュータ10であってもよい。轍判定装置は、「目標転舵角に対して予め設定された転舵モータへの電流供給基準値」と「転舵モータに設置された電流センサの検出値」との差(以下、対基準偏差という)に基づいて、轍の有無を判定する。目標転舵角は、自動運転ECU3が転舵装置に指令する目標の転舵角である。転舵装置は、転舵輪を転舵する転舵モータに、目標転舵角と実際の転舵角との差に応じた制御電流を供給する。例えばライトビークルが轍に沿って走行している際に旋回しようとすると、轍を乗り越えるために、轍がない路面に比べて大きな制御電流が必要となる。したがって、轍がある場合、対基準偏差は大きくなる。轍判定装置は、自モビリティの旋回時に、対基準偏差が所定の閾値以上となった場合、轍あり(さらには轍を乗り越えようとしている)と判定する。このような方法で、路面状態を検出してもよい。
【0036】
また、路面状態検出装置2は、車両の挙動を検出する挙動検出センサを含んでいてもよい。挙動検出センサとしては、例えば、加速度センサやヨーレートセンサ等が挙げられる。例えば加速度センサ上下方向の加速度を検出する加速度センサが登録モビリティに搭載されている場合、コンピュータ10は、その検出結果に基づいて、路面の凹凸の有無を判定することができる。
【0037】
また、コンピュータ10は、路面の凹凸の規模や形状を考慮して、指定モビリティの指定、目標ルートの修正、及び走行速度の修正を実行してもよい。例えば、轍が水溜まり位置として設定されている場合、コンピュータ10は、轍の溝に沿うように指定モビリティの目標ルートを設定してもよい。これにより効率的に轍の水を分散させることができる。また、登録モビリティが水溜まりに到達する前に大きめの凸部を乗り越える必要がある場合、コンピュータ10は、相対的に走破能力が高い登録モビリティを指定モビリティに指定してもよい。コンピュータ10は、路面の形状、凹凸の規模、モビリティの諸元、及び積載量等を考慮して目標ルート及び走行速度を設定することができる。
【0038】
また、運行管理システム1は、全体でコンピュータ10の機能を発揮するように、複数のコンピュータで構成されてもよい。運行管理システム1は、鉱山に限らず、他の場所でも利用可能である。未舗装路を含み一般道を含まない限定されたエリアとしては、鉱山に限らず、例えば土木工事等の工事現場やオフロードレースの会場等であってもよい。指定ルールは、「散水車M3の直接の後続車(後続1台目)」に設定されてもよい。この場合、図2の例での指定モビリティは、大型ダンプトラックM2になる。また、進行方向の同様の位置に、道幅方向に離れて複数の水溜まり位置が設定されている場合、コンピュータ10は、指定モビリティを複数設定し、進行方向の同様の位置にある複数の水溜まりのうち1つの水溜まりを1つの指定モビリティで走行するように、各指定モビリティの目標ルートを設定してもよい。
【符号の説明】
【0039】
1…運行管理システム、10…コンピュータ、2…路面状態検出装置。
図1
図2
図3