(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134243
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】任意波形発生装置及び任意波形発生方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/3183 20060101AFI20240926BHJP
G01R 31/28 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
G01R31/3183
G01R31/28 Q
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044445
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】保坂 恭男
(72)【発明者】
【氏名】岩井 達也
【テーマコード(参考)】
2G132
【Fターム(参考)】
2G132AG02
2G132AG04
2G132AG05
(57)【要約】
【課題】擬似ランダム信号やNRZ方式のデジタル信号など長大なパルスパターンの信号であっても大容量の波形メモリを必要とすることなく波形信号を発生可能な任意波形発生装置を提供する。
【解決手段】任意波形の波形データを格納する波形メモリ10と、波形メモリに格納された波形データを時系列順に所定の時間間隔で出力させる制御部30と、制御部による制御下で出力された波形データをデジタル-アナログ変換して波形信号を生成する波形信号生成部20と、を備える。パルスパターン波形を発生する場合に、パルスパターンデータに基づいて波形データを時系列順に逐次算出するデータ処理部40をさらに備え、制御部は、逐次算出された波形データを所定の時間間隔でデータ処理部から波形信号生成部へ出力させ、波形信号生成部にてデジタル-アナログ変換して波形信号を生成させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意波形の時系列データである波形データを格納する波形メモリ(10)と、
前記波形メモリに格納された前記波形データを時系列順に所定の時間間隔で出力させる制御を行う制御部(30)と、
前記制御部による制御下で出力された前記波形データをデジタル-アナログ変換して波形信号を生成する波形信号生成部(20)と、
を備えた任意波形発生装置において、
パルスパターン波形を発生する場合は、パルスパターンの時系列データであるパルスパターンデータに基づいて前記波形データを時系列順に逐次算出するデータ処理部(40)を備え、
前記制御部は、前記逐次算出された前記波形データを前記所定の時間間隔で前記データ処理部から前記波形信号生成部へ出力させ、前記波形信号生成部にてデジタル-アナログ変換して波形信号を生成させることを特徴とする任意波形発生装置。
【請求項2】
前記データ処理部は、指定された擬似ランダムビットシーケンスに対応する生成多項式に基づいて前記パルスパターンデータを逐次算出しつつ、逐次算出された前記パルスパターンデータに基づいて前記波形データを逐次算出する、請求項1に記載の任意波形発生装置。
【請求項3】
前記データ処理部は、指定された擬似ランダムビットシーケンスに対応する生成多項式に基づいて前記パルスパターンデータを逐次算出し、逐次算出された前記パルスパターンデータを指定された符号化方式により符号化してパルスパターン符号化データを逐次算出しつつ、逐次算出された前記パルスパターン符号化データに基づいて前記波形データを逐次算出する、請求項1に記載の任意波形発生装置。
【請求項4】
前記波形メモリは、前記パルスパターンデータを格納し、
前記制御部は、前記波形メモリに格納された前記パルスパターンデータを時系列順に前記データ処理部へ出力させる制御を行い、
前記データ処理部は、前記制御部の制御下で前記波形メモリから出力された前記パルスパターンデータに基づいて前記波形データを時系列順に逐次算出する、請求項1に記載の任意波形発生装置。
【請求項5】
前記波形メモリは、前記パルスパターンデータを格納し、
前記制御部は、前記波形メモリに格納された前記パルスパターンデータを時系列順に前記データ処理部へ出力させる制御を行い、
前記データ処理部は、前記制御部による制御下で前記波形メモリから出力された前記パルスパターンデータを指定された符号化方式により符号化してパルスパターン符号化データを逐次算出しつつ、逐次算出された前記パルスパターン符号化データに基づいて前記波形データを逐次算出する、請求項1に記載の任意波形発生装置。
【請求項6】
任意波形の時系列データである波形データを波形メモリに格納するステップと、
前記波形メモリに格納された前記波形データを時系列順に所定の時間間隔でデジタル-アナログ変換器に出力させる制御を行う制御ステップと、
前記制御ステップの前記制御下で出力された前記波形データを前記デジタル-アナログ変換器によりデジタル-アナログ変換して波形信号を生成する波形信号生成ステップと、
を備えた任意波形発生方法において、
パルスパターン波形を発生する場合は、パルスパターンの時系列データであるパルスパターンデータに基づいて前記波形データを時系列順に逐次算出するデータ処理ステップと、
前記逐次算出された前記波形データを前記所定の時間間隔で前記デジタル-アナログ変換器に出力させる制御を行なってデジタル-アナログ変換により波形信号を生成させるステップと、
を含むことを特徴とする任意波形発生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、任意波形発生装置及び任意波形発生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、試験対象機器に既知の試験信号を入力し、試験対象機器からの出力信号を測定することにより、試験対象機器の性能を評価している。試験信号を生成する装置として、任意の波形信号を発生することができる任意波形発生装置が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図7は、特許文献1に開示された従来の任意波形発生装置の概略構成を示す図である。
図7に示すように、従来の任意波形発生装置100は、波形データ111を格納する波形メモリ110と、デジタル-アナログ変換器を備えた波形信号生成部120と、波形データの波形メモリ110からの読み出しを制御する制御部130と、を備えている。任意波形発生器100は、制御部130による制御下で波形メモリ110から波形データ111を順に読み出し、デジタルの波形データを波形信号生成部120のデジタル-アナログ変換器によりアナログ信号に変換することで、任意の波形信号を出力するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の任意波形発生器では、全ての波形データを予め波形メモリに格納しておくため、PRBS(Pseudo Random Bit Sequence)31などの非常に長いデータ列からなる擬似ランダム信号を出力する場合には、膨大な容量の波形メモリが必要とされるという問題があった。また、NRZ(Non Return to Zero)方式のデジタル信号を出力する場合、H/L(High/Low)を表す1ビットに対して、デジタル-アナログ変換器の分解能を規定する複数ビット数を要するので、必要以上に大きな波形メモリが要求されるという問題があった。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、擬似ランダム信号やNRZ方式のデジタル信号など長大なパルスパターンの信号であっても大容量の波形メモリを必要とすることなく発生することが可能な任意波形発生装置及び任意波形発生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の任意波形発生装置は、任意波形の時系列データである波形データを格納する波形メモリ(10)と、前記波形メモリに格納された前記波形データを時系列順に所定の時間間隔で出力させる制御を行う制御部(30)と、前記制御部による制御下で出力された前記波形データをデジタル-アナログ変換して波形信号を生成する波形信号生成部(20)と、を備えた任意波形発生装置において、パルスパターン波形を発生する場合は、パルスパターンの時系列データであるパルスパターンデータに基づいて前記波形データを時系列順に逐次算出するデータ処理部(40)を備え、前記制御部は、前記逐次算出された前記波形データを前記所定の時間間隔で前記データ処理部から前記波形信号生成部へ出力させ、前記波形信号生成部にてデジタル-アナログ変換して波形信号を生成させることを特徴とする。
【0008】
上述のように、本発明の任意波形発生装置は、データ処理部が、パルスパターン波形を発生する場合は、パルスパターンの時系列データであるパルスパターンデータに基づいて波形データを時系列順に逐次算出し、制御部が、逐次算出された波形データを所定の時間間隔でデータ処理部から波形信号生成部へ出力させ、波形信号生成部にてデジタル-アナログ変換して波形信号を生成させるようになっている。この構成により、予め全データを波形メモリに格納しておく必要がなく、擬似ランダム信号やNRZ方式のデジタル信号など長大なパルスパターンの波形信号であっても、大容量の波形メモリを必要とすることなく発生することができる。
【0009】
また、本発明の任意波形発生装置において、前記データ処理部は、指定された擬似ランダムビットシーケンスに対応する生成多項式に基づいて前記パルスパターンデータを逐次算出しつつ、逐次算出された前記パルスパターンデータに基づいて前記波形データを逐次算出する構成であってもよい。
【0010】
この構成により、本発明の任意波形発生装置は、擬似ランダム信号のように長大なパルスパターンの波形信号であっても、大容量の波形メモリを必要とすることなく発生することができる。
【0011】
また、本発明の任意波形発生装置において、前記データ処理部は、指定された擬似ランダムビットシーケンスに対応する生成多項式に基づいて前記パルスパターンデータを逐次算出し、逐次算出された前記パルスパターンデータを指定された符号化方式により符号化してパルスパターン符号化データを逐次算出しつつ、逐次算出された前記パルスパターン符号化データに基づいて前記波形データを逐次算出する構成であってもよい。
【0012】
この構成により、本発明の任意波形発生装置は、擬似ランダム信号を符号化して得られる波形信号であっても、大容量の波形メモリを必要とすることなく発生することができる。
【0013】
また、本発明の任意波形発生装置において、前記波形メモリは、前記パルスパターンデータを格納し、前記制御部は、前記波形メモリに格納された前記パルスパターンデータを時系列順に前記データ処理部へ出力させる制御を行い、前記データ処理部は、前記制御部の制御下で前記波形メモリから出力された前記パルスパターンデータに基づいて前記波形データを時系列順に逐次算出する構成であってもよい。
【0014】
この構成により、本発明の任意波形発生装置は、NRZ方式のデジタル信号のような任意のパルスパターンの信号であっても、大容量の波形メモリを必要とすることなく発生することができる。
【0015】
また、本発明の任意波形発生装置において、前記波形メモリは、前記パルスパターンデータを格納し、前記制御部は、前記波形メモリに格納された前記パルスパターンデータを時系列順に前記データ処理部へ出力させる制御を行い、前記データ処理部は、前記制御部による制御下で前記波形メモリから出力された前記パルスパターンデータを指定された符号化方式により符号化してパルスパターン符号化データを逐次算出しつつ、逐次算出された前記パルスパターン符号化データに基づいて前記波形データを逐次算出する構成であってもよい。
【0016】
この構成により、本発明の任意波形発生装置は、パルスパターンデータを符号化して得られる波形信号であっても、大容量の波形メモリを必要とすることなく発生することができる。
【0017】
また、本発明の任意波形発生方法は、任意波形の時系列データである波形データを波形メモリに格納するステップと、前記波形メモリに格納された前記波形データを時系列順に所定の時間間隔でデジタル-アナログ変換器に出力させる制御を行う制御ステップと、前記制御ステップの前記制御下で出力された前記波形データを前記デジタル-アナログ変換器によりデジタル-アナログ変換して波形信号を生成する波形信号生成ステップと、を備えた任意波形発生方法において、パルスパターン波形を発生する場合は、パルスパターンの時系列データであるパルスパターンデータに基づいて前記波形データを時系列順に逐次算出するデータ処理ステップと、前記逐次算出された前記波形データを前記所定の時間間隔で前記デジタル-アナログ変換器に出力させる制御を行なってデジタル-アナログ変換により波形信号を生成させるステップと、を含むことを特徴とする。
【0018】
上述のように、本発明の任意波形発生方法は、パルスパターン波形を発生する場合は、パルスパターンの時系列データであるパルスパターンデータに基づいて波形データを時系列順に逐次算出し、逐次算出された波形データを前記所定の時間間隔でデジタル-アナログ変換器に出力させる制御を行なってデジタル-アナログ変換により波形信号を生成させるステップを有している。この構成により、予め全データを波形メモリに格納しておく必要がなく、擬似ランダム信号やNRZ方式のデジタル信号など長大なパルスパターンの波形信号であっても、大容量の波形メモリを必要とすることなく発生することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、擬似ランダム信号やNRZ方式のデジタル信号など長大なパルスパターンの信号であっても大容量の波形メモリを必要とすることなく発生することが可能な任意波形発生装置及び任意波形発生方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係る任意波形発生装置の概略構成を示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る任意波形発生方法のフローチャートを示す図である。
【
図7】従来の任意波形発生装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0022】
図1は、本実施形態に係る任意波形発生装置1の概略構成を示す図である。
図1に示すように、任意波形発生装置1は、波形メモリ10と、波形信号生成部20と、制御部30と、データ処理部40と、操作部50と、表示部60と、記憶部70とを備えている。
【0023】
(波形メモリ)
波形メモリ10は、任意波形の時系列データである「波形データ」を格納するようになっている。また、波形メモリ10は、ユーザが設定したパルスパターンの波形を発生する場合は、パルスパターンの時系列データである「パルスパターンデータ」を格納するようになっている。
【0024】
波形データは、例えば、波形f(t)の時刻t1,t2,・・・,tNでの値のデータ列f(t1),f(t2),・・・,f(tN)からなる。この場合、波形メモリ10は、所定アドレスに波形データf(t1),f(t2),・・・,f(tN)を格納する。波形データを構成するデータ列の各データは、順次読み出されて波形信号生成部20に与えられ波形信号が生成される。すなわち、波形データは、波形信号生成部20において所望の波形信号を生成可能なデータ列である。
【0025】
パルスパターンデータは、例えば、パルスパターンB1,B2,・・・,Bm,・・・,BM(ただしBmは0又は1)からなる。パルスパターンデータは、ユーザが設定したパルスパターンに基づくものと、ユーザが指定したPRBSから生成されるものがある。ユーザが設定したパルスパターンに基づく場合、パルスパターンデータB1,B2,・・・,BMは、波形メモリ10に格納される。いずれの場合も、パルスパターンデータB1,B2,・・・,BMは、順に生成あるいは取得されて、必要ならばユーザ指定された符号化処理が施され、波形信号生成部20において使用可能なように波形データに逐次変換される。
【0026】
(波形信号生成部)
波形信号生成部20は、デジタル-アナログ変換器(D/A変換器ともいう)を備えており、制御部30による出力制御下で出力された波形データをデジタル-アナログ変換して波形信号を生成するようになっている。
【0027】
(制御部)
制御部30は、データ設定部31とデータ読み出し制御部32とを備えている。
【0028】
データ設定部31は、ユーザにより操作部50を介して入力された設定情報(波形,符号化方式,PRBS,信号レベルなど)を基に、記憶部70に格納されていた波形データやパルスパターンデータを取得し、波形メモリ10に設定する。また、データ設定部31は、ユーザにより操作部50を介して入力された符号化方式の設定情報を基に、符号化処理部41において指定された符号化方式による符号化が実施されるように設定する。また、データ設定部31は、ユーザにより操作部50を介して入力された擬似ランダム信号を特定する情報を基に、擬似ランダム信号生成部42において擬似ランダム信号に対応した生成多項式が用いられるように設定する。
【0029】
データ読み出し制御部32は、波形メモリ10に格納された波形データを時系列順に所定の時間間隔で出力させる出力制御を行うようになっている。出力された波形データは、波形信号生成部20によりアナログの波形信号に変換される。
【0030】
また、データ読み出し制御部32は、パルスパターン波形を発生する場合であって、パルスパターンデータが波形メモリ10に格納されている場合には、波形メモリ10に格納されたパルスパターンデータを時系列順にデータ処理部40へ出力させる出力制御を行うようになっている。
【0031】
また、データ読み出し制御部32は、パルスパターン波形を発生する場合は、データ処理部40により逐次算出された波形データを所定の時間間隔でデータ処理部40から波形信号生成部20へ出力させ、波形信号生成部20にてデジタル-アナログ変換して波形信号を生成させるようになっている。
【0032】
制御部30は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SDD(Solid State Drive)などの記憶装置等を有するコンピュータで構成され、任意波形発生装置1を構成する各部の動作を制御するようにしてもよい。制御部30による制御は、ROMや記憶装置に記憶された制御プログラムをRAMに読み出してCPUで実行することにより行うことができる。
【0033】
(データ処理部)
データ処理部40は、パルスパターンの時系列データであるパルスパターンデータに基づいて必要なデータ処理(符号化,信号レベル調整等)を行なって波形データを時系列順に逐次算出するようになっている。このため、データ処理部40は、符号化処理部41と擬似ランダム信号生成部42とを備えている。
【0034】
擬似ランダム信号生成部42は、指定された擬似ランダムビットシーケンスに対応する生成多項式に基づいてパルスパターンデータ(擬似ランダムビットシーケンス)を逐次算出しつつ、逐次算出されたパルスパターンデータに基づいて波形データを逐次算出するようになっている。
【0035】
符号化処理部41は、制御部30による出力制御下で波形メモリ10から出力されたパルスパターンデータを指定された符号化方式により符号化してパルスパターン符号化データを逐次算出しつつ、逐次算出されたパルスパターン符号化データに基づいて波形データを逐次算出するようになっている。
【0036】
符号化処理部41は、制御部30の出力制御下で波形メモリ10から出力されたパルスパターンデータに基づいて波形データを時系列順に逐次算出してもよい。
【0037】
データ処理部40は、擬似ランダム信号生成部42により、指定された擬似ランダムビットシーケンスに対応する生成多項式に基づいてパルスパターンデータ(擬似ランダムビットシーケンス)を生成し、符号化処理部41により、パルスパターンデータを指定された符号化方式により符号化してパルスパターン符号化データを逐次算出しつつ、逐次算出されたパルスパターン符号化データに基づいて波形データを逐次算出してもよい。
【0038】
<擬似ランダム信号の生成>
擬似ランダム信号生成部42は、直列接続されたn個のシフトレジスタと、最終段のシフトレジスタの出力信号とシフトレジスタの段数nによって定まる中間に位置する1個以上のシフトレジスタの出力信号との排他的論理和を帰還信号として先頭のシフトレジスタへ帰還させる排他的論理和ゲートと、により構成されている。生成される擬似ランダム信号の周期(パターン長)は、2n-1である。例えば、擬似ランダム信号がPRBS31の場合、生成多項式は1+X28+X31であり、231-1=2,147,483,647ビットの周期である。
【0039】
<符号化>
符号化処理部41により行われる符号化の方式は、例えば、各ビットの間でゼロに復帰しない方式であるNRZ変調方式、振幅をシンボルごとに4以上のレベルに分ける方式であるパルス振幅変調(PAM:Pulse Amplitude Modulation)方式、互いに独立な2つの搬送波の振幅を変更・調整することによってデータを伝達する変調方式である直角位相振幅変調(QAM:Quadrature Amplitude Modulation)方式などがある。PAM信号を扱う伝送方式としては、例えば、PAM4信号を伝送するPAM4方式や、PAM8信号を伝送するPAM8方式などが知られている。このうち、PAM4方式は、情報信号の振幅をパルス信号の系列で符号化したパルス振幅変調(PAM)信号として、論理「0」及び「1」から構成されるビット列を、4つの電圧レベル又は光電力のパルス信号として変調して伝送する方式である。例えば16QAMとは、デジタル信号の変調方式であるQAMのうち、一度に16通りの値(4ビットのデータ)を送ることができる方式である。
【0040】
なお、データ処理部40は、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのデジタル回路で構成される。あるいは、処理速度にも依るが、データ処理部40の少なくとも一部は、デジタル回路によるハードウェア処理と所定のプログラムによるソフトウェア処理とを適宜組み合わせて構成することも可能である。
【0041】
(操作部)
操作部50は、ユーザによる操作入力を受け付けるためのものであり、例えば表示部60に設けられたタッチパネルで構成される。あるいは、操作部50は、キーボード又はマウスのような入力デバイスを含んで構成されてもよい。また、操作部50は、リモートコマンドなどによる遠隔制御を行う外部制御装置で構成されてもよい。操作部50への操作入力は、制御部30により検知されるようになっている。例えば、操作部50により、生成する波形、符号化方式、擬似ランダム信号、信号レベル等に関する設定情報をユーザが設定することが可能である。
【0042】
(表示部)
表示部60は、例えばLCDやCRTなどの表示機器で構成され、制御部30から出力される制御信号に応じて、波形信号生成における諸条件等を設定するためのボタン、ソフトキー、プルダウンメニュー、テキストボックスなどの操作対象の表示を行うようになっている。
【0043】
<任意波形発生方法>
次に、任意波形発生方法について説明する。
図6は、本発明の一実施形態に係る任意波形発生方法のフローチャートを示す図である。
【0044】
図6に示すように、まず、ユーザが、例えば操作部50を操作して、波形、符号化方式、擬似ランダム信号、信号レベルなどの条件を設定する(ステップS1)。制御部30は、ユーザが設定した波形が任意波形発生器型の波形(すなわち、全データを事前に準備しておく全データ事前準備型)か否かを判定し(S2)、判定が否の場合(ステップS2でNO)、ステップS7に進む。判定が是の場合(ステップS2でYES)、制御部30のデータ設定部31は指定された波形データを波形メモリ10に格納する。次いで、制御部30のデータ読み出し制御部32は、波形メモリ10に格納された波形データを所定の時間間隔で順次読み出す(ステップS3)。波形信号生成部20は、波形メモリ10から読み出された波形データをデジタル-アナログ変換によってアナログの波形信号に変換する(ステップS4)。制御部30は、波形データが全て読み出されたか否かを判定し(S5)、判定が否の場合(S5でNO)、ステップS3に戻って処理を続行する。判定が是の場合(S5でYES)、処理を終了する。
【0045】
ステップS7では、制御部30は、ユーザが設定した波形がPRBSパターンか否かを判定し(S7)、判定が否の場合(ステップS7でNO)、ステップS12に進む。判定が是の場合(ステップS7でYES)、データ処理部40は、指定されたPRBSに対応する生成多項式によりPRBSの値を逐次算出する(ステップS8)。データ処理部40は、逐次算出されたPRBSの値に対して、指定された符号化方式にて逐次符号化を行いつつ波形データに変換する(ステップS9)。波形信号生成部20は、データ処理部40により逐次符号化されたPRBSの値に対応する波形データをデジタル-アナログ変換によってアナログの波形信号に変換する(ステップS10)。制御部30は、PRBSパターンのデータが全て終了したか否かを判定し(S11)、判定が否の場合(S11でNO)、ステップS8に戻って処理を続行する。判定が是の場合(S11でYES)、処理を終了する。
【0046】
ステップS12では、制御部30は、ユーザが設定した波形がパルスパターンか否かを判定し(S12)、判定が否の場合(ステップS12でNO)、処理を終了する。判定が是の場合(ステップS12でYES)、データ処理部40は、波形メモリ10に格納されたパルスパターンデータを取得し、指定された符号化方式で逐次符号化する(ステップS13)。波形信号生成部20は、データ処理部40により逐次符号化されたパルスパターンの値をデジタル-アナログ変換によってアナログの波形信号に変換する(ステップS14)。制御部30は、パルスパターンのデータが全て終了したか否かを判定し(S15)、判定が否の場合(S15でNO)、ステップS13に戻って処理を続行する。判定が是の場合(S15でYES)、処理を終了する。
【0047】
図2は、任意波形を出力する場合の画面例を示す。「Test Pattern」の項目で、「AWG Waveform」を選択すると、波形ファイルを選択することができ、波形ファイルに含まれる波形データを波形メモリ10に格納して、波形信号生成部20により波形信号を出力することができる。
図2では、「Max Amplitude」と「Offset」を設定できるようになっている。
【0048】
図3は、波形メモリ10に格納されたパルスパターンデータを基に波形信号を出力する場合の画面例を示す。「Test Pattern」の項目で、「Pattern」を選ぶと、パルスパターンデータファイルを選択することができ、符号化方式や振幅レベルを設定することができる。
図3では、符号化方式としてPAM4が選択されている。符号化における「Symbol」と「Volt」を編集することにより、アイダイアグラムにおける「Eye Ratio」や「Eye Amplitude」も設定できるようになっている。
【0049】
図4及び
図5は、PRBSパターンを出力する場合の画面例を示す。「Test Pattern」の項目で、「PRBS」を選択すると、PRBSの種類、符号化方式、振幅レベルを設定することができる。
図4では、符号化方式としてQAM16が選択されており、
図5では、符号化方式としてPAM4が選択されている。
【0050】
<作用・効果>
上述のように、本実施形態の任意波形発生装置1は、データ処理部40が、パルスパターン波形を発生する場合は、パルスパターンの時系列データであるパルスパターンデータに基づいて波形データを時系列順に逐次算出するデータ処理を実施し、制御部30が、逐次算出された波形データを所定の時間間隔でデータ処理部40から波形信号生成部20へ出力させ、波形信号生成部20にてデジタル-アナログ変換して波形信号を生成させるようになっている。この構成により、予め全データを波形メモリ10に格納しておく必要がなく、擬似ランダム信号やNRZ方式のデジタル信号など長大なパルスパターンの信号であっても、大容量の波形メモリを必要とすることなく発生することができる。
【0051】
また、本実施形態の任意波形発生装置1は、データ処理部40が、指定された擬似ランダムビットシーケンスに対応する生成多項式に基づいてパルスパターンデータ(擬似ランダムビットシーケンス)を逐次算出しつつ、逐次算出されたパルスパターンデータに基づいて波形データを逐次算出するようになっている。また、データ処理部40は、指定された擬似ランダムビットシーケンスに対応する生成多項式に基づいてパルスパターンデータ(擬似ランダムビットシーケンス)を逐次算出し、逐次算出したパルスパターンデータを指定された符号化方式により符号化してパルスパターン符号化データを逐次算出しつつ、逐次算出されたパルスパターン符号化データに基づいて波形データを逐次算出してもよい。この構成により、本発明の任意波形発生装置は、擬似ランダム信号又は擬似ランダム信号を符号化して得られる信号のように長大なパルスパターンの信号であっても、大容量の波形メモリを必要とすることなく発生することができる。
【0052】
また、本実施形態の任意波形発生装置1において、波形メモリ10は、パルスパターンデータを格納し、制御部10は、波形メモリ10に格納されたパルスパターンデータを時系列順に出力させる出力制御を行い、データ処理部40は、制御部30の出力制御下で波形メモリ10から出力されたパルスパターンデータに基づいて波形データを時系列順に逐次算出するようになっている。また、データ処理部40は、制御部30による出力制御下で波形メモリ10から出力されたパルスパターンデータを指定された符号化方式により符号化してパルスパターン符号化データを逐次算出しつつ、逐次算出されたパルスパターン符号化データに基づいて波形データを逐次算出してもよい。この構成により、NRZ方式のデジタル信号のような任意のパルスパターン信号又はパルスパターン信号を符号化して得られる信号であっても、大容量の波形メモリを必要とすることなく発生することができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上説明したように、本発明は、擬似ランダム信号やNRZ方式のデジタル信号など長大なパルスパターンの信号であっても大容量の波形メモリを必要とすることなく発生することができるという効果を有し、任意波形発生装置及び任意波形発生方法の全般に有用である。
【符号の説明】
【0054】
1 任意波形発生装置
10 波形メモリ
20 波形信号生成部
30 制御部
31 データ設定部
32 データ読み出し制御部
40 データ処理部
41 符号化処理部
42 擬似ランダム信号生成部
50 操作部
60 表示部
70 記憶部