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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134253
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】磁気記録再生装置
(51)【国際特許分類】
   G11B 5/02 20060101AFI20240926BHJP
   G11B 25/04 20060101ALI20240926BHJP
   G11B 9/14 20060101ALI20240926BHJP
   G11B 5/09 20060101ALI20240926BHJP
   G11B 5/31 20060101ALI20240926BHJP
   G11B 20/10 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
G11B5/02 R
G11B5/02 Q
G11B25/04 101H
G11B9/14 C
G11B5/09 311A
G11B5/09 331
G11B5/31 A
G11B20/10 311
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044459
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 拓也
【テーマコード(参考)】
5D044
【Fターム(参考)】
5D044AB01
5D044BC01
5D044CC04
5D044DE01
5D044EF10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ライト動作寿命による磁気記録再生装置の寿命の低下を抑制する磁気記録再生装置を提供する。
【解決手段】磁気記録再生装置1は、記録面2bを有する磁気記録媒体2と、磁気記録ヘッド10(ライトヘッド10W、リードヘッド10R、アシスト素子100)と、第1磁気記録方式(隣接するトラックに間隔を置いて記録する通常記録方式)又は第1磁気記録方式とは異なる第2磁気記録方式(隣接するトラックを重ねて記録する瓦記録方式)のアシスト磁気記録を行った時のアシストパワー或いはアシストパワーの印加時間の少なくとも一方に基づいて、データ記録位置を制御するデータ記録位置制御部と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録面を有する磁気記録媒体と、
アシスト磁気記録ヘッドと、
第1磁気記録方式、または前記第1磁気記録方式とは異なる第2磁気記録方式のアシスト磁気記録を行った時のアシストパワー、または前記アシストパワーの印加時間の少なくとも一方に基づいて、データ記録位置を制御するデータ記録位置制御部とを含む磁気記録再生装置。
【請求項2】
前記アシストパワー及び前記アシストパワー印加時間に基づいてライト動作寿命に関連するライト動作寿命指標値を算出するライト動作寿命指標値演算部をさらに含み、前記データ記録位置制御部は、前記ライト動作寿命指標値に基づいてデータ記録位置を制御する請求項1に記載の磁気記録再生装置。
【請求項3】
前記ライト動作寿命指標値を保存する保存部をさらに含む請求項2に記載の磁気記録再生装置。
【請求項4】
前記ライト動作寿命指標値は、前記アシスト磁気記録ヘッドに関するヘッド動作寿命指標値、または前記記録面に関する媒体動作寿命指標値のうち少なくとも一方である請求項2に記載の磁気記録再生装置。
【請求項5】
前記第1磁気記録方式は、半径方向に隣接するトラックに間隔を置いて記録する通常記録方式であり、前記第2磁気記録方式は、少なくとも、半径方向に隣接するトラックを重ねて記録する瓦記録方式、または半径方向に隣接するトラックを互い違いに重ねて記録するインターレース記録方式である請求項1に記載の磁気記録再生装置。
【請求項6】
前記データ記録位置制御部は、第1ライト動作寿命指標値を有する第1データ記録位置に通常記録方式の書き込み命令を受けた際、前記第1データ記録位置を、前記第1ライト動作寿命指標値よりも高い第2ライト動作寿命指標値を有する第2データ記録位置に変更する請求項2に記載の磁気記録再生装置。
【請求項7】
前記データ記録位置制御部は、第1ライト動作寿命指標値を有する第1データ記録位置に通常記録方式または瓦記録方式の書き込み命令を受けた際に、
前記瓦記録方式では、前記第1データ記録位置は、前記第1ライト動作寿命指標値よりも高い第3ライト動作寿命指標値を有する第3データ記録位置に変更され、
前記通常記録方式では、前記第1データ記録位置は、前記第3データ記録位置のヘッドの第3ライト動作寿命指標値よりも高い第2ライト動作寿命指標値を有する第2データ記録位置に変更される請求項1に記載の磁気記録再生装置。
【請求項8】
前記記録面は、第1周速を有する第1領域と、前記第1周速よりも早い第2周速を有する第2領域とを有し、前記データ記録位置は前記第2領域に設けられ、前記アシスト記録ヘッドは通常記録方式に設定される請求項1に記載の磁気記録再生装置。
【請求項9】
前記記録面は、第1周速を有する第1領域と、前記第1周速よりも早い第2周速を有する第2領域とを有し、前記データ記録位置は前記第1領域に設けられ、前記アシスト記録ヘッドは瓦記録方式に設定される請求項1に記載の磁気記録再生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アシスト磁気記録で用いられる磁気ヘッド、例えば熱アシスト磁気記録に用いられる近接場光素子を備えた磁気ヘッドは、光源であるレーザーダイオードからの光を近接場光素子に当てることで、素子先端から近接場光を発生させ、磁気記録媒体の高い垂直磁気異方性を有する記録層を局所的に加熱する。加熱された記録層部分は保磁力が記録時において十分に低下するため、高記録密度化が可能になると期待される。
一方で、近接場光を発生させる際に近接場光素子内部の発熱が起こるため、記録を繰り返すことで近接場光素子へのダメージが蓄積し、最終的に記録層を十分に加熱できなくなり、記録不可となってしまうライト動作寿命が大きな課題である。
【0003】
このため、従来より、記録時のレーザー印加時間、レーザーパワー、及び半径位置を監視することにより、記録ヘッドの状態を推定する技術、あるいは記録ヘッドの使用量にばらつきが出ないようなアルゴリズムの技術などが開示されている。例えば、コールドデータのセットを動作寿命指標値の悪いデータ記録位置に移行するステップを設ける技術が提案されている、しかしながら、データ処理/応答性能に影響を与えるという不利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第9569121号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2019/227898号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態は、ライト動作寿命による磁気記録再生装置の寿命の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態にかかる磁気記録再生装置は、記録面を有する磁気記録媒体と、アシスト磁気記録ヘッドと、前記第1磁気記録方式、または前記第2磁気記録方式のアシスト磁気記録を行った時のアシストパワー、または前記アシストパワーの印加時間の少なくとも一方に基づいて、データ記録位置を制御するデータ記録位置制御部とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係る第1磁気記録再生装置を示すブロック図である。
図2】熱アシスト磁気記録用磁気ディスクの瓦記録方式の一例を表す図である。
図3】実施形態に係る第2磁気記録再生装置を示すブロック図である。
図4】実施形態に用いられるデータ記録位置の一例を表す図である。
図5】実施形態に係る磁気記録再生装置の第1実施例の一部の横断面図である。
図6】実施形態に係る磁気記録再生装置の動作例を表すフロー図である。
図7】各磁気記録ヘッドのライト寿命指標値の例を表すグラフ図である。
図8】実施形態に係る磁気記録再生装置の他の動作例を表すフロー図である。
図9】各磁気記録ヘッドのライト寿命指標値の例を表すグラフ図である。
図10】実施形態に係る磁気記録再生装置のさらに他の動作例を表すフロー図である。
図11】各エリアのライト寿命指標値を表すグラフ図である。
図12】実施形態に係る磁気記録再生装置のさらにまた他の動作例を表すフロー図である。
図13】各エリアのライト寿命指標値を表すグラフ図である。
図14】実施形態に係る磁気記録再生装置の第5実施例の一部の横断面図である。
図15図14の記録ヘッド部分をABS面からみた図である。
図16】各ヘッドのライト寿命指標値を表すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施形態に係る磁気記録再生装置は、記録面を有する磁気記録媒体と、アシスト磁気記録ヘッドと、データ記録位置制御部とを含む。データ記録位置制御部は、第1磁気記録方式、または第1磁気記録方式とは異なる第2磁気記録方式でアシスト磁気記録を行った時のアシストパワー、またはアシストパワーの印加時間の少なくとも一方に基づいて、データ記録位置を制御する。
【0009】
実施形態に使用されるアシスト磁気記録ヘッドは、第1磁気記録方式、または第2磁気記録方式のいずれの記録方式にも適用可能である。
実施形態によれば、データ記録位置制御部を用いて、第1磁気記録方式、または第2磁気記録方式でアシスト磁気記録を行った時のアシストパワー、またはアシストパワーの印加時間の少なくとも一方に基づいて、データ記録位置を制御することにより、ヘッドの動作寿命のばらつきを低減し、磁気記録再生装置の寿命を延ばすことを可能とする。
【0010】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更であって容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0011】
図1は、実施形態に係る第1磁気記録再生装置としての磁気ディスク装置の制御構成の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、磁気ディスク装置1は、磁気記録媒体としての磁気ディスク2、回転駆動部としてのスピンドルモータ(SPM)3と、アクチュエータアッセンブリ4、ボイスコイルモータ(VCM)5と、磁気ヘッド10と、を備えている。磁気ディスク2には、記録されるデータを管理するための情報を記録する管理エリア2aが設けられている。磁気ディスク2の回転方向は矢印180Rに示すように反時計回りで示しているが、逆向きにすることもできる。
【0012】
さらに、磁気ディスク装置1は、ヘッドアンプIC110と、R/Wチャネル120と、ハードディスクコントローラ(HDC)130と、マイクロプロセッサ(MPU)140と、ドライバIC150と、メモリ160とを備えている。また、磁気ディスク装置1は、ホストコンピュータ(ホスト)170と接続可能である。なお、R/Wチャネル120、HDC130、及びMPU140は、1チップの集積回路に組み込まれていてもよい。
【0013】
磁気ヘッド10は、ライトヘッド10W、リードヘッド10R、アシスト素子100を備えている。ライトヘッド10Wは、磁気ディスク2にデータをライトする。リードヘッド10Rは、磁気ディスク2からデータをリードする。アシスト素子としての熱アシスト部100は、ライトヘッド10Wがデータを磁気ディスク2にライトする場合に、データのライトをアシストする。磁気ヘッド10は、単独または複数の磁気ヘッドを含むことができる。磁気ディスク2についても、磁気ヘッドに対応して、単独または複数の磁気磁気ディスクを含むことができる。
【0014】
スピンドルモータ3は、ドライバIC150から供給される駆動電流(または駆動電圧)により駆動される。磁気ディスク2は、磁気ヘッド10によってデータパターンが記録再生される。
ボイスコイルモータ5によってボイスコイルを動作させ、アクチュエータアッセンブリ4を図示省略のランプロード機構のアンロード位置から回動することで、磁気ヘッド10は、磁気ディスク2の所望のトラック上に移動され、磁気ディスク2上の所定位置に位置決めされる。ボイスコイルモータ5は、ドライバIC150から供給される駆動電流(または駆動電圧)によって駆動される。
【0015】
ヘッドアンプIC110は、R/Wチャネル120から供給されるライトデータに応じたライト信号(ライト電流)をライトヘッド10Wに供給する。また、熱アシスト部100から出力する光出力を制御する。また、ヘッドアンプIC110は、リードヘッド10Rから出力されたリード信号を増幅して、R/Wチャネル120に伝送する。
【0016】
R/Wチャネル120は、読み出し(リード)/書き込み(ライト)に関連する信号を処理する信号処理回路である。R/Wチャネル120は、リードデータの信号処理を実行するリードチャネルと、ライトデータの信号処理を実行するライトチャネルとを含む。リードチャネルは、リード信号をデジタルデータに変換し、デジタルデータからリードデータを復調する。ライトチャネルは、HDC130から転送されるライトデータを符号化し、符号化されたライトデータをヘッドアンプIC110に転送する。
【0017】
HDC130は、磁気ヘッド10、ヘッドアンプIC110、R/Wチャネル120、及びMPU140を介した、磁気ディスク2へのデータの書き込みと、磁気ディスク2からのデータの読み出しとを制御する。HDC130は、磁気ディスク装置1とホスト170とのインタフェースを構成し、リードデータおよびライトデータの転送制御を実行する。すなわち、HDC130は、ホスト170から転送される信号を受信し、且つホスト170へ信号を転送するホストインタフェースコントローラとして機能する。また、HDC130は、ホスト170から転送されるコマンド(ライトコマンド、リードコマンド等)を受信し、受信したコマンドをMPU140に送信する。
【0018】
MPU140は、磁気ディスク装置1のメインコントローラ(制御部)であり、リード/ライト動作の制御および磁気ヘッド10の位置決めに必要なサーボ制御等を実行する。さらに、MPU140は、第1磁気記録方式、または第2磁気記録方式でアシスト磁気記録を行った時のアシストパワー、またはアシストパワーの印加時間の少なくとも一方に基づいて、データ記録位置を制御するデータ記録位置制御部142を含む。アシスト記録では、第1磁気記録方式、または第2磁気記録方式でアシスト磁気記録を行うことができる。データ記録位置制御部142は、アシスト磁気記録を行った時のアシストパワー、またはアシストパワーの印加時間の少なくとも一方に基づいて、データ記録位置を制御する。
【0019】
アシストパワー印加時間は、アシストパワー印加の累計時間である。
データ記録位置は、例えば複数のアシスト磁気記録ヘッドのうちの1つのアシスト磁気記録ヘッド、または磁気記録媒体の記録面内の所定の記録領域(エリア)に設けることができる。
データ記録位置は、例えばC(シリンダ数)、H(ヘッド数)、S(セクタ数)の3つの数値で表される3Dアドレスで表すことができる。Cは、磁気ディスク2の記録面2bの矢印180Dで表される径方向の位置を決めることにより、トラックを指定することができる。Hは、ヘッドを決めることにより、磁気記録媒体の記録面を指定することができる。Sは、記録面2bの矢印180Cで表される円周方向の位置を決めることにより、記録面内のエリアを指定することができる。
【0020】
記録面内のエリアは、例えば、半径方向の所定の範囲ごとに複数の領域に区分したゾーン、あるいはゾーン内の複数のトラックを束ねたバンド領域、トラック単位、セクタ単位に指定することもできる。
ドライバIC150は、MPU140の制御に従い、スピンドルモータ3と、ボイスコイルモータ5との駆動を制御する。ボイスコイルモータ5が駆動することによって、磁気ヘッド10は磁気ディスク2上の目標トラックへ位置付けられる。
メモリ160は、揮発性メモリおよび不揮発性メモリを含む。例えば、メモリ160は、DRAMからなるバッファメモリ、及びフラッシュメモリを含む。
【0021】
アシスト素子を用いたアシスト記録としては、例えば熱アシスト記録、またはマイクロ波アシスト記録等があげられる。
熱アシスト記録の場合、アシスト素子は熱アシスト素子としての近接場光素子であり、近接場光素子に対しレーザー光を出力するレーザー光源をさらに含むことができる。マイクロ波アシスト記録の場合、アシスト素子は、スピントルクを発振するスピントルク素子である。
【0022】
また、ここで、アシストパワーとは、熱アシスト記録の場合は、記録層に照射する光の強さ、マイクロ波アシスト記録の場合は、記録層に照射するマイクロ波の強さである。熱アシスト記録の場合は、電源からアシスト素子である近接場光素子に光を出力するレーザー光源に与える電流あるいは電圧などの制御を行うことで、マイクロ波アシスト記録の場合は電源からアシスト素子であるスピントルク素子に与える電流あるいは電圧などの制御を行うことで、アシストパワーの制御を行うことができる。
【0023】
第1磁気記録方式、または第2磁気記録方式として、半径方向に間隔を置いてトラックをライトし、隣接するトラックが重ならないように記録を行う通常記録方式いわゆるCMR(Conventional Magnetic Recording)、半径方向に順に重ねられたトラックを有し、隣接するトラックの一部に重ねて記録する瓦記録方式いわゆるSMR(Shingled Magnetic Recording)、または隣接するトラックが互い違いに重ねられたボトムトラックとトップトラックとを有し、ボトムトラックに記録したのちに、インターレースされたトップトラックにボトムトラックに重ねて記録するインターレース記録方式いわゆるIMR(Interlaced Magnetic Recording)があげられる。
【0024】
例えば、第1磁気記録方式として通常記録方式を設定し、第2磁気記録方式として、瓦記録方式、またはインターレース記録方式を設定することができる。
図2に、瓦記録方式の一例を表す図を示す。
アシスト磁気記録再生装置では、隣接するトラックの一部に重ねて記録する瓦記録方式を用いて記録を行なうように設定することができる。瓦記録方式で記録を行うとき、瓦記録方式で記録される領域の大きさは、垂直磁気記録用磁気ディスクの記録面よりも熱アシスト磁気記録用磁気ディスクの記録面を大きくすることができる。
【0025】
図2中、トラック221-1、221-2、221-3は、アシスト磁気記録用磁気ディスク220の複数のトラック221における領域221a内の隣接するトラックを表す。図示するように、アシスト磁気記録用磁気ディスク220では、隣接するトラック221-1、221-2、221-3のように、トラックの一部に重ねて記録するSMR方式で記録を行うように設定されている。また、このSMR方式では隣接するトラック221-1、221-2、221-3が順に重なっているが、トラック221-1、221-2、221-3の代わりに、トラック221-4,221-7,221-5,221-8,221-6のように、それぞれ互い違いに重なったIMR方式を用いることができる。IMR方式では、幅広のボトムトラック221-4,221-5,221-6上に記録したのちに、ボトムトラック221-4,221-5,221-6にインターレースされたトップトラック221-7,221-8に重ねて記録することができる。これによって、トラック密度が向上し、高記録容量化が可能となる。なお、SMR方式として、トラック221-1、221-2、221-3のようにトラックが順に重なっている方式がよくあげられるが、トラックが互い違いに重なっているIMR方式についても、トラックの一部に重ねて記録すると考えることができるので、IMR方式はSMR方式に含まれると考えることができる。
【0026】
このように、図示するようなSMR方式では、磁気ディスクにデータを記録する際に、隣接するトラックの一部に重ねて記録する。IMR方式は、ボトムトラックに記録したのちに、インターレースされたトップトラックにボトムトラックに重ねて記録する。これによって、トラック密度が向上し、高記録容量化が可能となる。
【0027】
図3に、実施形態に係る第2磁気記録再生装置の制御構成の一例を表すブロック図を示す。
第2磁気記録再生装置1-1は、MPU140の代わりにMPU140-1を用いること、及びメモリ160の代わりにメモリ160-1を用いること以外は、図1の第1磁気記録再生装置1と同様の制御構成を有することができる。
MPU140-1は、第1磁気記録方式、または第2磁気記録方式でアシスト磁気記録を行った時のアシストパワー、またはアシストパワーの印加時間の少なくとも一方に基づいて、データ記録位置を制御するデータ記録位置制御部142と、磁気ヘッドの記録時のアシストパワー及びアシストパワー印加時間に基づいてライト動作寿命に関連するライト動作寿命指標値を算出するライト動作寿命指標値演算部143とを含む。
【0028】
ここで、ライト動作寿命とは、十分な記録品質で繰り返し記録動作を行うことができる期間をいう。ライト動作寿命はアシストパワーとアシストパワー印加時間に依存する。例えば熱アシスト磁気記録方式では、ライト動作寿命は、レーザー光源であるレーザーダイオードのレーザーパワーの大きさとレーザー印加の累計時間に依存する。また、マイクロ波アシスト磁気記録方式では、ライト動作寿命は、スピントルク素子に印加する電流と電流印加の累計時間に依存する。
【0029】
また、MPU140及びMPU140-1には、記録方式を第1磁気記録方式または第2磁気記録方式に変更する図示しない制御部を、任意に設けることができる。
メモリ160-1には、さらに、磁気ヘッドの記録時のヘッドまたは媒体のライト動作寿命指標値を保存する保存部161を、任意に設けることができる。また、アシストパワーとアシストパワー印加時間のデータを、保存部161に保存することが可能であり、必要に応じて保存部161から取得することができる。
ライト動作寿命指標値は、ライト動作寿命を推定した計算値であり、アシストパワーとアシストパワー印加時間のデータに基づいてライト動作寿命指標値演算部143にて算出することができる。データ記録位置制御部142は、ライト動作寿命指標値に基づいてデータ記録位置を制御することができる。
【0030】
ライト動作寿命指標値として、各アシスト磁気記録ヘッドのライト動作によるヘッド動作寿命指標値、あるいは磁気記録媒体の記録面内の各領域のライト動作による媒体動作寿命指標値があげられる。ヘッド動作寿命は、近接場光素子、あるいはスピントルク発振素子などのアシスト素子が発熱することによるダメージを受けて低下し得る。媒体動作寿命は、アシスト素子により加熱された媒体の保護膜や潤滑層がダメージを受けることにより低下し得る。例えば、熱アシスト磁気記録では記録の際に媒体記録層を加熱するため、記録を繰り返すことで磁気ディスクの保護膜、潤滑剤が熱で変質、破壊されてしまう懸念がある。その場合、記録ヘッドと磁気ディスクの接触リスクや磁気ディスクからのコンタミリスクが高まる。
【0031】
ライト動作寿命指標値がヘッド動作寿命指標値である場合には、ヘッド動作寿命指標値に基づいてデータ記録位置としてヘッドを変更することができる。ライト動作寿命指標値が媒体動作寿命指標値である場合には、記録面上の記録領域を変更することができる。
【0032】
図4に、実施形態に用いられるデータ記録位置の一例を表す図を示す。
図示するように、180は、磁気ディスク2の記録面2b上の記録領域であり、記録領域180は、同一記録面2b内に、第1周速を有する第1領域180-1と、第1周速よりも高い第2周速を有する第2領域180-2とを有する。
図示するように、例えばデータ記録位置を第2領域180-2内に指定することができる。第2領域180-2は、第1領域180-1よりも、180Xで表される外側方向に設けられ、周速が高いため、例えばアクセス頻度の高い記録に適した通常記録方式で書き込まれ得る。
【0033】
また、第1領域180-1は、第2領域180-2よりも、矢印180Yで表される内側方向に設けられ、周速が低いため、例えばデータ記録位置を第1領域180-1とする場合には、例えばアクセス頻度の低いデータの記録に適した瓦記録方式で書き込まれ得る。
【0034】
データ記録位置制御部142は、第1データ記録位置に通常記録方式の書き込み命令を受けた際、第1データ記録位置を、第1ライト動作寿命指標値よりも高い第2ライト動作寿命指標値を有する第2データ記録位置に変更することができる。
【0035】
データ記録位置制御部142は、第1データ記録位置に通常記録方式または瓦記録方式の書き込み命令を受けた際に、瓦記録方式の場合は、第1データ記録位置の第1ライト動作寿命指標値よりも良い第3ライト動作寿命指標値を有する第3データ記録位置に変更を行い、通常記録方式の場合は、第3データ記録位置のヘッドの第3ライト動作寿命指標値よりも良い第2ライト動作寿命指標値を有するヘッドで記録する第2データ記録位置に変更を行うことができる。
【0036】
実施例
実施例1
図5は、熱アシスト記録方式の実施例に使用可能な磁気記録再生装置の一部であるライトヘッド10Wと磁気ディスク2の横断面図である。
磁気ディスク2は、熱アシスト記録方式の磁気ディスクであって、基板20と、基板20上に順に積層されたヒートシンク層21、結晶配向層22、垂直記録層23、及び保護膜24を有する。垂直記録層23はディスク面に対して垂直方向に大きな異方性をもつ。結晶配向層22は、その垂直記録層23の配向性を向上させるために垂直記録層23の下に配置される。ヒートシンク層21は、加熱領域の広がりを抑制するために結晶配向層22の下に配置される。保護膜24は垂直記録層23の上部に配置され、垂直記録層23を保護するものであり、表面に潤滑剤が設けられている。
【0037】
磁気ヘッド10は、記録用ヘッド10Wと再生用ヘッド10Rが分離された分離型磁気ヘッドであり、記録ヘッド10Wはディスク面に対して垂直方向磁界を発生させる高透磁率材料からなる主磁極40と、その主磁極40に磁束を流す主磁極と磁気的に接合されたトレーリングヨーク50と、主磁極40のリーディング側に配置された主磁極直下の磁路を効率的に閉じるために設けられたリターンシールド磁極60と、主磁極40に磁束を流すためにトレーリングヨークおよびリターンシールド磁極を含む磁路に巻きつくように配置されたコイル70と、記録ヘッドの浮上高さを制御するためのヒーター80と、主磁極40のリーディング側に、磁気記録媒体2の垂直記録層23を加熱する近接場光を発生させる近接場光素子30と、近接場光発生用の光を伝播させるための導波路31で構成される。光源はレーザーダイオード32がアクチュエータアッセンブリ4のスライダーにマウントする形で組み込まれている。近接場光素子30としては、例えばAu、Pd、Pt、Rh、またはIr、またはこれらのうちのいくつかの組合せからなる合金を用いることができる。主磁極と近接場光素子との間に設けられる絶縁層として、例えばSiO、Al等からなる酸化物を用いることができる。
【0038】
図6に、図1の第1磁気記録再生装置を適用した場合の動作例を表すフロー図を示す。
実施例1では、熱アシスト磁気記録再生装置において、データ記録位置を、複数のアシスト磁気記録ヘッドのうちの1つのアシスト磁気記録ヘッドとし、ライト動作寿命指標値として、ヘッド動作寿命指標値が使用した例を示す。
【0039】
以下に、図1の第1磁気記録再生装置を適用した場合の動作例について説明する。
ユーザーから従来記録方式(CMR)または瓦記録方式(SMR)で書き込み命令が発行される。命令を受けた磁気記録再生装置は図6に示すフローに進む。
記録動作の前に、ライト動作寿命指標値をメモリ160から取得することができる(301)。ここでは、ヘッド動作寿命指標値を各ヘッド10について取得することができる。ライト動作寿命指標値はレーザーダイオード32に印加するレーザーパワーの大きさ、レーザーパワー印加の累計時間に基づいてMPU140で計算されるライト動作寿命を示すものである。計算に用いる関連データとして、例えばコイル70に印加する記録電流、ヒーター80に印加するヒーターパワーなどを含むことができる。ここでは、ライト動作寿命指標値は、ヘッド動作寿命指標値として、ヘッドごとに算出・保存することができる。なお、データ記録位置が磁気ディスクのエリアである場合には、ライト動作寿命指標値は、媒体動作寿命指標値として、磁気ディスクのエリア単位で算出・保存することができる。
【0040】
また、ライト動作寿命指標値は、ヘッド動作寿命指標値100を基準として、ライト動作が行われると100から動作状況に応じて減少していき、0になるとライト動作不可とすることができる。
【0041】
次に、取得したライト動作寿命指標値が他のライト動作寿命指標値以上か、MPU140で判定を行う(S302)。ここでは、第1ヘッドのヘッド動作寿命指標値が他のヘッドのヘッド動作寿命指標値以上か判定を行う。S302の判定がYesの場合は、データ記録位置を変更せず、記録を行う(S305)。ここでは、ヘッドを変更せず、第1データ記録位置として第1ヘッドで記録する。S302の判定がNoの場合、記録方式がSMRかCMRかを調べる。ここでは、SMRであるかを判定する(S303)。S303の判定がYesの場合は、ヘッドを変更せず、第1データ記録位置として第1ヘッドで記録を行う(S305)。S303の判定がNoの場合、すなわち記録方式がCMR場合は、MPU140はデータ記録位置制御部142にて、データ記録位置を第1データ記録位置から第2データ記録位置に変更する制御を行う(S304)。ここでは、データ記録位置制御部142は、データ記録位置を、第1ヘッドから第2データ記録位置としての第2ヘッドに変更するようにヘッドアンプIC110を制御する。最後に、変更されたヘッドで記録を行い(S305)、終了する。
【0042】
図7は、複数の磁気記録ヘッドを含む磁気記録再生装置の各ヘッドについてライト寿命指標値を表したグラフである。
図7に示すように、実施例1に使用されるヘッドは、ヘッド番号1-0,1-1,1-2の順に、ライト動作寿命指標値が高くなっている。ライト動作寿命指標値は高い方が、ライト動作寿命が良好となる。
例えば、CMRで第1データ記録位置としてヘッド番号1-0のヘッドを用いる場合、ヘッド番号1-0のライト動作寿命指標値はS302の判定で、他のヘッドのライト動作寿命指標値未満と判定される。このとき、S303の判定はNoとなり、S304にて、データ記録位置としてヘッドを変更する。ここでは、第2ヘッドとして、ヘッド番号1-0のライト動作寿命指標値よりも高いライト動作寿命指標値を有するヘッド番号1-1または1-2が選択される。
【0043】
なお、データ記録位置については、ユーザデータセクタの論理アドレスを磁気記録再生装置の物理位置に紐づけたマップを更新することで、データ記録位置を変更することができる。
実施例1の効果として、CMRのような書き込みアクセス頻度の高いデータの書き込み命令がライト動作寿命指標値の悪いヘッドのデータ記録位置に指定された場合は、ライト動作寿命指標値の良いヘッドのデータ記録位置に変更することで、ヘッドの動作寿命のばらつきを減らすことができ、装置としての寿命を延ばすことが可能になる。
【0044】
実施例2
図8に、図1の第1磁気記録再生装置を適用した場合の他の動作例を表すフロー図を示す。
実施例2では、熱アシスト磁気記録再生装置において、データ記録位置を複数のアシスト磁気記録ヘッドのうちの1つのアシスト磁気記録ヘッドとし、ライト動作寿命指標値として、ヘッド動作寿命指標値を用いた他の例を示す。
ユーザーから従来記録方式(CMR)または瓦記録方式(SMR)で書き込み命令が発行される。命令を受けた磁気記録再生装置は図8に示すフローに進む。
【0045】
記録動作の前に、ライト動作寿命指標値をメモリ160から取得することができる(501)。ここでは、ヘッド動作寿命指標値を各ヘッド10について取得することができる。ライト動作寿命指標値は、実施例1と同様にして算出・保存することができる。ここでは、ライト動作寿命指標値は、ヘッド動作寿命指標値100を基準として、ライト動作が行われると100から動作状況に応じて減少していき、0になるとライト動作不可とすることができる。
【0046】
次に、取得したライト動作寿命指標値が他のライト動作寿命指標値以上か、MPU140で判定を行う(S502)。ここでは、第1ヘッドのヘッド動作寿命指標値が他のヘッドのライト動作寿命指標値以上か判定を行う。S502の判定がYesの場合は、データ記録位置を変更せず、記録を行う(S505)。ここでは、ヘッドを変更せず、第1データ記録位置として第1ヘッドで記録を行う(S506)。S502の判定がNoの場合、記録方式がSMRかCMRかを調べる。ここでは、SMRであるかを判定する(S503)。S503の判定がNoの場合、すなわち記録方式がCMR場合は、MPU140は、データ記録位置制御部142にて、データ記録位置を第1データ記録位置から第2データ記録位置に変更する制御を行う(S504)。ここでは、データ記録位置制御部142は、第1データ記録位置としての第1ヘッドから第2データ記録位置としての第2ヘッドに変更するようにヘッドアンプIC110を制御する。S503の判定がYesの場合、すなわち記録方式がSMRの場合は、データ記録位置制御部142は、第1データ記録位置から第3データ記録位置に変更する制御を行う(S505)。ここでは、第1データ記録位置としての第1ヘッドから第3データ記録位置としての第3ヘッドに変更する。
【0047】
第3データ記録位置としての第3ヘッドとして、第1データ記録位置に記録動作を行う第1ヘッドのライト動作寿命指標値よりも良いライト動作寿命指標値を有するヘッドが選択される。第2データ記録位置に記録動作を行う第2ヘッドは、第3データ記録位置に記録動作を行う第3ヘッドのライト動作寿命指標値よりも高いライト動作寿命指標値を有するヘッドが選択される(S504、S505)。最後に、変更されたヘッドで記録を行い(S506)、終了する。
【0048】
図9は、複数の磁気記録ヘッドを含む磁気記録再生装置の各ヘッドについてライト寿命指標値を表したグラフである。
図9に示すように、実施例2に使用されるヘッドは、ヘッド番号2-0,2-1,2-2の順に、ライト動作寿命指標値としてのヘッド寿命指標値が高くなっている。
例えば、CMRで第1データ記録位置としてヘッド番号2-0のヘッドを用いる場合、
ヘッド番号2-0のライト動作寿命指標値はS502の判定で、他のヘッドであるヘッド番号2-1、2-2のライト動作寿命指標値未満と判定される。S503の判定はNoとなり、S504にて、データ記録位置制御部142は、第1ヘッドから第2データ記録位置として第2ヘッドに変更する制御を行う。なお、S503の判定がYesであり、SMRの場合は、データ記録位置制御部142は、第1データ記録位置から第3データ記録位置に変更する制御を行う。
【0049】
第3データ記録位置に記録動作を行うヘッドは、第1データ記録位置に記録動作を行うヘッドのライト動作寿命指標値よりも良いライト動作寿命指標値を有するヘッド番号2-1のヘッドが選択され、第2データ記録位置に記録動作を行うヘッドは、第3データ記録位置に記録動作を行うヘッドのライト動作寿命指標値よりも高いライト動作寿命指標値を有するヘッド番号2-2のヘッドが選択される。
なお、データ記録位置については、ユーザデータセクタの論理アドレスを磁気記録再生装置の物理位置に紐づけたマップを更新することで、データ記録位置を変更することができる。
【0050】
実施例2の効果として、CMRのような書き込みアクセス頻度の高いデータの書き込み命令がライト動作寿命指標値の悪いヘッドのデータ記録位置に指定された場合は、ライト動作寿命指標値の良いヘッドのデータ記録位置に変更することで、ヘッドの動作寿命のばらつきを減らすことができ、装置としての寿命を延ばすことが可能になる。
【0051】
実施例3
図10に、図1の第1磁気記録再生装置を適用した場合のさらに他の動作例を表すフロー図を示す。
実施例3では、熱アシスト磁気記録再生装置において、データ記録位置を磁気記録媒体の記録面内の所定のエリアとし、ライト動作寿命指標値として、媒体動作寿命指標値を用いた例を示す。
ユーザーから従来記録方式(CMR)または瓦記録方式(SMR)で書き込み命令が発行される。命令を受けた磁気記録再生装置は図10に示すフローに進む。
【0052】
記録動作の前に、ライト動作寿命指標値をメモリ160から取得することができる(S701)。ここでは、一記録面の各エリアについて媒体動作寿命指標値を取得することができる。ライト動作寿命指標値はレーザーダイオード32に印加するレーザーパワーの大きさ、レーザーパワー印加の累計時間に基づいてMPU140で計算されるライト動作寿命を示すものである。計算に用いる関連データとして、例えばコイル70に印加する記録電流、ヒーター80に印加するヒーターパワーなどを含むことができる。ここでは、ライト動作寿命指標値は、媒体動作寿命指標値として、磁気ディスクのエリア単位で算出・保存することができる。
また、ライト動作寿命指標値は、媒体動作寿命指標値100を基準として、ライト動作が行われると100から動作状況に応じて減少していき、0になるとライト動作不可とすることができる。
【0053】
次に、取得したライト動作寿命指標値が他のライト動作寿命指標値以上か、MPU140で判定を行う(S702)。ここでは、取得した磁気ディスクの、第1データ記録位置としての第1エリアの媒体動作寿命指標値が、他のエリアの媒体動作寿命指標値以上か判定を行う。S702の判定でYesの場合は、データ記録位置を変更せず、記録を行う(S705)。ここでは、エリアを変更せず、第1エリアで記録を行う。S702の判定でNoの場合、記録方式がSMRかCMRかを調べる。ここでは、SMRであるかを判定する(S703)。S703の判定がYesの場合は、エリアを変更せず、第1エリアで記録を行う(S705)。S703の判定がNoの場合、すなわち記録方式がCMR場合は、MPU140はデータ記録位置制御部142にて、データ記録位置を第1データ記録位置から第2データ記録位置に変更する制御を行う(S704)。ここでは、データ記録位置制御部142は、データ記録位置を、第1エリアから第2データ記録位置としての第2エリアに変更するようにヘッドアンプIC110を制御する。最後に、変更されたエリアで記録を行い(S305)、終了する。
【0054】
図11は、磁気ディスクの記録面内の各エリアについてライト寿命指標値を表したグラフである。
図示するように、実施例3に使用されるヘッドは、エリア1-A,エリア1-B,エリア1-Cの順に、ライト動作寿命指標値が高くなっている。
例えば、CMRで第1データ記録位置としてエリア1-Aを用いる場合、エリア1-Aの媒体動作寿命指標値はS702の判定で、他のエリアの媒体動作寿命指標値未満と判定される。このとき、S703の判定はNoとなり、S704にて、データ記録位置制御部142は、データ記録位置としてエリアを変更する。ここでは、第2エリアとして、エリア1-Aの媒体動作寿命指標値よりも高い媒体動作寿命指標値を有するエリア1-B、またはエリア1-Cが選択される。
【0055】
なお、データ記録位置については、ユーザデータセクタの論理アドレスを磁気記録再生装置の物理位置に紐づけたマップを更新することで、データ記録位置を変更することができる。
実施例3の効果として、CMRのような書き込みアクセス頻度の高いデータの書き込み命令がライト動作寿命指標値の悪いエリアのデータ記録位置に指定された場合は、ライト動作寿命指標値の良いエリアのデータ記録位置に変更することで、磁気ディスクのエリアごとの動作寿命のばらつきを減らすことができ、装置としての寿命を延ばすことが可能になる。
【0056】
実施例4
図12に、図1の第1磁気記録再生装置を適用した場合のさらにまた他の動作例を表すフロー図を示す。
実施例4では、熱アシスト磁気記録再生装置において、データ記録位置を磁気記録媒体の記録面内の所定のエリアとし、ライト動作寿命指標値として、媒体動作寿命指標値を用いた他の例を示す。
【0057】
ユーザーから従来記録方式(CMR)または瓦記録方式(SMR)で書き込み命令が発行される。命令を受けた磁気記録再生装置は図12に示すフローに進む。
記録動作の前に、各エリアのライト動作寿命指標値をメモリ160から取得することができる(S901)。ここでは、一記録面の各エリアについて媒体動作寿命指標値を取得することができる。ライト動作寿命指標値は、実施例3と同様にして算出・保存することができ、媒体動作寿命指標値100を基準として、ライト動作が行われると100から動作状況に応じて減少していき、0になるとライト動作不可とすることができる。
【0058】
次に、取得したライト動作寿命指標値が他のライト動作寿命指標値以上か、MPU140で判定を行う(S902)。ここでは、取得した第1データ記録位置としての磁気ディスクの第1エリアの媒体動作寿命指標値が、他のエリアの媒体動作寿命指標値以上かMPU140で判定を行う。S902の判定でYesの場合は、データ記録位置を変更せず、記録を行う(S905)。ここでは、エリアを変更せず、第1データ記録位置として第1エリアで記録を行う(S906)。S902の判定でNoの場合、記録方式がSMRかCMRかを調べる。ここでは、SMRであるかを判定する(S903)。S903の判定がNoの場合、すなわち記録方式がCMR場合は、データ記録位置制御部142は、データ記録位置を第1データ記録位置から第2データ記録位置に変更するようにヘッドアンプIC110の制御を行う(S904)。ここでは、第1データ記録位置を、第1エリアから第2データ記録位置としての第2エリアに変更する。S903の判定がYesの場合、すなわち記録方式がSMRの場合は、データ記録位置制御部142は、第1データ記録位置から第3データ記録位置に変更する(S905)。ここでは、MPU140は、第1データ記録位置を、第1エリアから第3データ記録位置としての第3エリアに変更する。
【0059】
第3データ記録位置としての第3エリアとして、第1データ記録位置に記録動作を行う第1エリアのライト動作寿命指標値よりも良いライト動作寿命指標値を有するエリアが選択される。第2データ記録位置に記録動作を行う第2エリアは、第3データ記録位置に記録動作を行う第3エリアのライト動作寿命指標値よりも高いライト動作寿命指標値を有するエリアが選択される(S904、S905)。最後に、変更されたエリアで記録を行い(S906)、終了する。
【0060】
図13は、複数の磁気記録ヘッドを含む磁気記録再生装置の各エリアについてライト寿命指標値を表したグラフである。
図13に示すように、実施例4に使用される磁気ディスクは、記録面内のエリアがエリア2-A,2-B,2-Cの順に、ライト動作寿命指標値としての媒体寿命指標値が高くなっている。
【0061】
例えば、CMRで第1データ記録位置としてエリア2-Aを用いる場合、エリア2-Aのライト動作寿命指標値は、S902の判定で、他のエリア2-B、2-Cのライト動作寿命指標値未満と判定される。S903の判定はNoとなり、S904にて、データ記録位置制御部142は、第1データ記録位置から第2データ記録位置に変更する制御を行なう。なお、S903の判定がYesであり、SMRの場合には、データ記録位置制御部142は、第1データ記録位置から第3データ記録位置に変更する制御を行う。
【0062】
第3データ記録位置に記録動作を行うエリアは、第1データ記録位置に記録動作を行うエリアのライト動作寿命指標値よりも高いライト動作寿命指標値を有するエリア2-Bが選択され、第2データ記録位置に記録動作を行うエリアは、第3データ記録位置に記録動作を行うエリアのライト動作寿命指標値よりも高いライト動作寿命指標値を有するエリア2-Cが選択される。
【0063】
なお、データ記録位置については、ユーザデータセクタの論理アドレスを磁気記録再生装置の物理位置に紐づけたマップを更新することで、データ記録位置を変更することができる。
実施例4の効果として、CMRのような書き込みアクセス頻度の高いデータの書き込み命令がライト動作寿命指標値の悪いエリアのデータ記録位置に指定された場合は、ライト動作寿命指標値の良いエリアのデータ記録位置に変更することで、磁気ディスクのエリアごとの動作寿命のばらつきを減らすことができ、装置としての寿命を延ばすことが可能になる。
【0064】
実施例5
図14は、高周波アシスト記録方式の実施例に使用可能な磁気記録再生装置の一部である磁気ヘッドのライトヘッド10W’と磁気ディスク2’の横断面図である。
【0065】
図15は、図14の記録ヘッド部分をABS面からみた図を示す。
図示するように、磁気ディスク2’は、基板420上に軟磁性層422とその上層部にディスク面に対して垂直方向に異方性をもつ垂直記録層423を有する垂直2層膜媒体である。垂直記録層423上には保護層424が設けられている。
【0066】
磁気ヘッド10は、記録用ヘッド10W’と再生用ヘッド10R’が分離された分離型磁気ヘッドであり、記録ヘッド部10W’はディスク面に対して垂直方向磁界を発生させる高透磁率材料からなる主磁極340と、記録ヘッド10W’の浮上高さを制御するためのヒーター390と、その主磁極340のトレーリング側に配置された垂直磁気ヘッドの主磁極340直下の軟磁性層422を介して効率的に磁路を閉じるために設けられたライトシールド磁極350と、主磁極340のトラック幅方向両側に主磁極340とABS面上では物理的に分断された高透磁率材料からなるサイドシールド360と、主磁極340に磁束を流すために主磁極340及びライトシールド磁極350を含む磁路に巻きつくように配置されたコイル370とを有する。
【0067】
また、主磁極340の先端部とライトシールド磁極350の間に配置され、マイクロ波アシスト部100’として機能するスピントルク素子300を備える。スピントルク素子300は磁性体と非磁性体からなる積層構造である。
主磁極340とライトシールド磁極350の接合部には図14に示されるように電気的絶縁層320が配置されており、互いに絶縁されたこれらの部分はそれぞれ駆動端子電極380に電気的に接続されている。これによりライトシールド磁極350と主磁極340はスピントルク素子300に垂直通電する電極として働くことになる。
【0068】
図15に示すように、スピントルク素子300の発振は、素子300に印加されるギャップ磁界とスピン注入力がつり合うことによって、素子300の磁化が固有振動周期で回転することで起こる。ギャップ磁界は磁気ヘッドのコイルに流す記録電流によって変化する。記録電流の増大に伴い、ギャップ磁界も増大するため、スピン注入力がつり合うにはスピントルク素子300に印加する電圧を増大させる必要がある。
【0069】
スピントルク素子300に電圧を印加するとスピントルク素子300内部の発熱が起こるため、記録を繰り返すことでスピントルク素子300へのダメージが蓄積し、最終的にスピントルク素子300の発振が十分できなくなり記録品質の劣化を招く傾向がある。ライト動作寿命はスピントルク素子300に印加する電圧の大きさと印加の累計時間に依存する。
【0070】
実施例5では、高周波アシスト磁気記録再生装置において、データ記録位置を複数のアシスト磁気記録ヘッドのうちの1つのアシスト磁気記録ヘッドとし、ライト動作寿命指標値として、ヘッド動作寿命指標値を用いた例を示す。
実施例5の高周波アシスト磁気記録再生装置の動作例は、熱アシスト磁気記録磁気記録再生装置用のアシスト磁気記録ヘッドの代わりに、高周波アシスト磁気記録用のアシスト磁気記録ヘッドを用いること以外は、実施例1と同様であり、図6のフロー図で示すことができる。
【0071】
図16は、高周波アシスト磁気記録再生装置の各ヘッドについてライト寿命指標値を表したグラフである。
図16に示すように、実施例5に使用されるヘッドは、ヘッド番号3-0,3-1,3-2の順に、ライト動作寿命指標値が高くなっている。ライト動作寿命指標値は高い方が、ライト動作寿命が良好となる。
【0072】
例えば、CMRで第1データ記録位置としてヘッド番号3-0のヘッドを用いる場合、ヘッド番号3-0のライト動作寿命指標値はS302の判定で、他のヘッドのライト動作寿命指標値未満と判定される。このとき、S303の判定はNoとなり、S304にて、データ記録位置制御部142は、データ記録位置としてヘッドを変更する制御を行う。ここでは、第2データ記録位置として、ヘッド番号3-0のライト動作寿命指標値よりも高いライト動作寿命指標値を有するヘッド番号3-1または3-2のヘッドが選択される。
【0073】
なお、データ記録位置については、ユーザデータセクタの論理アドレスを磁気記録再生装置の物理位置に紐づけたマップを更新することで、データ記録位置を変更してもよい。
【0074】
実施例5の効果として、CMRのような書き込みアクセス頻度の高いデータの書き込み命令がライト動作寿命指標値の悪いヘッドのデータ記録位置に指定された場合は、ライト動作寿命指標値の良いヘッドのデータ記録位置に変更することで、ヘッドの動作寿命のばらつきを減らすことができ、装置としての寿命を延ばすことが可能になる。
【0075】
なお、上記実施例ではライト動作指標値は、アシストパワー及びアシストパワー印加時間の両方に基づいて算出しているが、アシストパワー及びアシストパワー印加時間のうちいずれか一方に基づいていればよい。
【符号の説明】
【0076】
1,1-1…磁気記録再生装置、2…磁気記録媒体、2b…記録面、3…回転駆動部、10,10W,10R,10W’10R’,100,100’…磁気ヘッド、30…近接場光素子、32…レーザー光源、140,140-1…MPU、142…データ記録位置制御部、143…ライト動作寿命指標値演算部、145…記録条件制御部、161,161-1…保存部、300…スピントルク素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16