IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイキン工業株式会社の特許一覧

特開2024-134255エアフィルタ濾材、フィルタパック、エアフィルタユニット、および、エアフィルタ濾材の製造方法
<>
  • 特開-エアフィルタ濾材、フィルタパック、エアフィルタユニット、および、エアフィルタ濾材の製造方法 図1
  • 特開-エアフィルタ濾材、フィルタパック、エアフィルタユニット、および、エアフィルタ濾材の製造方法 図2
  • 特開-エアフィルタ濾材、フィルタパック、エアフィルタユニット、および、エアフィルタ濾材の製造方法 図3
  • 特開-エアフィルタ濾材、フィルタパック、エアフィルタユニット、および、エアフィルタ濾材の製造方法 図4
  • 特開-エアフィルタ濾材、フィルタパック、エアフィルタユニット、および、エアフィルタ濾材の製造方法 図5
  • 特開-エアフィルタ濾材、フィルタパック、エアフィルタユニット、および、エアフィルタ濾材の製造方法 図6
  • 特開-エアフィルタ濾材、フィルタパック、エアフィルタユニット、および、エアフィルタ濾材の製造方法 図7
  • 特開-エアフィルタ濾材、フィルタパック、エアフィルタユニット、および、エアフィルタ濾材の製造方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134255
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】エアフィルタ濾材、フィルタパック、エアフィルタユニット、および、エアフィルタ濾材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 39/16 20060101AFI20240926BHJP
   B01D 46/52 20060101ALI20240926BHJP
   B32B 5/24 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
B01D39/16 C
B01D39/16 E
B01D46/52 A
B32B5/24 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044461
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】清谷 秀之
(72)【発明者】
【氏名】乾 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 吉之
【テーマコード(参考)】
4D019
4D058
4F100
【Fターム(参考)】
4D019AA01
4D019BA13
4D019BB08
4D019BC20
4D019BD01
4D019CA02
4D019CB06
4D019DA02
4D019DA03
4D019DA06
4D058JA14
4D058JB14
4D058JB23
4D058JB39
4D058KA11
4D058TA06
4F100AK17A
4F100AT00B
4F100AT00C
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA06
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100DG01B
4F100DG01C
4F100DG03B
4F100DJ00A
4F100GB56
4F100JA04B
4F100JA04C
4F100JA13B
4F100JG04
4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】熱融着によるエアフィルタ濾材の圧力損失の増大を小さく抑えることが可能なエアフィルタ濾材、プリーツパック、エアフィルタユニット、および、エアフィルタ濾材の製造方法を提供する。
【解決手段】フッ素樹脂多孔膜と、フッ素樹脂多孔膜を支持する第1支持材と、を備えたエアフィルタ濾材であって、フッ素樹脂多孔膜と第1支持材とは熱融着しており、第1支持材は第1芯部と第1芯部よりも融点が低い第1鞘部とを含む芯鞘構造繊維を有しており、第1支持材は、次式を満たす。式:目付(g/m)/{平均繊維断面積(cm)×材料比重(g/cm)×厚み(cm)×1000000}≦380(m/cm
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素樹脂多孔膜(31)と、
前記フッ素樹脂多孔膜を支持する第1支持材(32)と、
を備え、
前記フッ素樹脂多孔膜と前記第1支持材とは熱融着しており、
前記第1支持材は、第1芯部と前記第1芯部よりも融点が低い第1鞘部とを含む芯鞘構造繊維を有しており、
前記第1支持材は、次式を満たす、
式:目付(g/m)/{平均繊維断面積(cm)×材料比重(g/cm)×厚み(cm)×1000000}≦380(m/cm
エアフィルタ濾材(30)。
【請求項2】
前記フッ素樹脂多孔膜を支持する第2支持材(33)をさらに備え、
前記フッ素樹脂多孔膜は、前記第1支持材と前記第2支持材の間に位置しており、
前記フッ素樹脂多孔膜と前記第2支持材とは熱融着しており、
前記第2支持材は、第2芯部と前記第2芯部よりも融点が低い第2鞘部とを含む芯鞘構造繊維を有しており、
前記第2支持材は、次式を満たす、
式:目付(g/m)/{平均繊維断面積(cm)×材料比重(g/cm)×厚み(cm)×1000000}≦380(m/cm
請求項1に記載のエアフィルタ濾材。
【請求項3】
絶縁破壊電圧が0.8kV以上である、
請求項1または2に記載のエアフィルタ濾材。
【請求項4】
厚みが350μm以上1000μm以下である、
請求項1または2に記載のエアフィルタ濾材。
【請求項5】
前記エアフィルタ濾材に空気を流速5.3cm/秒で通過させたときの圧力損失、および、前記エアフィルタ濾材について粒子径0.1μmのNaCl粒子を用いて把握される捕集効率を用いて、次式:PF値={-log((100-捕集効率(%))/100)}/(圧力損失(Pa)/1000)で定められるPF値が20以上である、
請求項1または2に記載のエアフィルタ濾材。
【請求項6】
前記第1支持材の目付が、25g/m以上60g/m以下である、
請求項1または2に記載のエアフィルタ濾材。
【請求項7】
前記第1支持材の平均繊維径が23μm以上である、
請求項1または2に記載のエアフィルタ濾材。
【請求項8】
請求項1または2に記載のエアフィルタ濾材であって、山折り部および谷折り部が生じるように折り込まれた形状となっている、フィルタパック(20)。
【請求項9】
請求項1または2に記載のエアフィルタ濾材、または、請求項1または2に記載のエアフィルタ濾材であって山折り部および谷折り部が生じるように折り込まれた形状となっているプリーツ状濾材(20)と、
前記エアフィルタ濾材または前記プリーツ状濾材を保持する枠体(25)と、
を備えるエアフィルタユニット(1)。
【請求項10】
フッ素樹脂多孔膜(31)を用意する工程と、
第1芯部と前記第1芯部よりも融点が低い第1鞘部とを含む芯鞘構造繊維を有しており、次式を満たす第1支持材(32)を用意する工程と、
式:目付(g/m)/{平均繊維断面積(cm)×材料比重(g/cm)×厚み(cm)×1000000}≦380(m/cm
前記フッ素樹脂多孔膜と前記第1支持材とを熱融着させる工程と、
を備えたエアフィルタ濾材(30)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エアフィルタ濾材、フィルタパック、エアフィルタユニット、および、エアフィルタ濾材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEという場合がある。)からなる多孔膜(以下、PTFE多孔膜という場合がある。)がエアフィルタとして用いられている。PTFE多孔膜は、薄く、それ自体では形状維持が困難な場合があるため、通気性支持材を積層させた状態で濾材として用いられる。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2002-66226号公報)に記載のエアフィルタ濾材では、PTFE多孔膜に対して、比較的柔らかい不織布を熱融着させることで濾材を得ることが提案されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、フッ素樹脂多孔膜と支持材を熱融着させて得られるエアフィルタ濾材では、熱融着時に繊維構造の変化が生じうる。このため、フッ素樹脂多孔膜と支持材を熱融着させる前の単に積層させただけの状態の濾材の圧力損失よりも、熱融着により得られたエアフィルタ濾材の圧力損失の方が増大してしまうことがある。このため、熱融着によるエアフィルタ濾材の圧力損失の増大を小さく抑えることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1観点に係るエアフィルタ濾材は、フッ素樹脂多孔膜と、第1支持材と、を備える。第1支持材は、フッ素樹脂多孔膜を支持する。フッ素樹脂多孔膜と第1支持材とは熱融着している。第1支持材は、第1芯部と第1芯部よりも融点が低い第1鞘部とを含む芯鞘構造繊維を有している。第1支持材は、次式を満たす。式:目付(g/m)/{平均繊維断面積(cm)×材料比重(g/cm)×厚み(cm)×1000000}≦380(m/cm)。
【0006】
なお、仮に、エアフィルタ濾材が第2支持材をさらに含んでおり、フッ素樹脂多孔膜が第1支持材と第2支持材の間に配置されている場合には、第1支持材と第2支持材の両方の上記値がいずれも380(m/cm)であることが好ましい。この場合に、第1支持材と第2支持材とは、同じ物性を備えていてもよいし、異なる物性を備えていてもよい。
【0007】
また、フッ素樹脂多孔膜としては、1枚の多孔膜で構成されていてもよいし、2枚などの複数枚の多孔膜で構成されていてもよい。
【0008】
このエアフィルタ濾材は、第1支持材がフッ素樹脂多孔膜に重ねられるだけで互いに熱融着していない状態の濾材と比べて、圧力損失の増大を小さく抑えることが可能になる。
【0009】
第2観点に係るエアフィルタ濾材は、第1観点のエアフィルタ濾材であって、フッ素樹脂多孔膜を支持する第2支持材をさらに備える。フッ素樹脂多孔膜は、第1支持材と第2支持材の間に位置している。フッ素樹脂多孔膜と第2支持材とは熱融着している。第2支持材は、第2芯部と第2芯部よりも融点が低い第2鞘部とを含む芯鞘構造繊維を有しておいる。第2支持材は、次式を満たす。式:目付(g/m)/{平均繊維断面積(cm)×材料比重(g/cm)×厚み(cm)×1000000}≦380(m/cm)。
【0010】
このエアフィルタ濾材は、第2支持材がフッ素樹脂多孔膜に重ねられるだけで互いに熱融着していない状態の濾材と比べて、圧力損失の増大を小さく抑えることが可能になる。
【0011】
第3観点に係るエアフィルタ濾材は、第1観点または第2観点のエアフィルタ濾材であって、絶縁破壊電圧が0.8kV以上である。
【0012】
このエアフィルタ濾材は、フッ素樹脂多孔膜を静電気から保護し、フッ素樹脂多孔膜におけるダメージを小さく抑えることができる。
【0013】
第4観点に係るエアフィルタ濾材は、第1観点から第3観点のいずれかのエアフィルタ濾材であって、厚みが350μm以上1000μm以下である。
【0014】
このエアフィルタ濾材は、フッ素樹脂多孔膜を物理的に保護することが可能になり、プリーツ形状に変形させる等の変形が容易になる。
【0015】
第5観点に係るエアフィルタ濾材は、第1観点から第4観点のいずれかのエアフィルタ濾材であって、PF値が20以上である。PF値は、PF値={-log((100-捕集効率(%))/100)}/(圧力損失(Pa)/1000)の式で定められる。PF値の算出には、エアフィルタ濾材に空気を流速5.3cm/秒で通過させたときの圧力損失、および、エアフィルタ濾材について粒子径0.1μmのNaCl粒子を用いて把握される捕集効率を用いる。
【0016】
比較的高性能のフッ素樹脂多孔膜を用いる場合には特に第1支持材の熱融着による圧力損失の増大程度が大きくなりがちである。この場合においても、このエアフィルタ濾材は、第1支持材の熱融着による圧力損失の増大程度を小さく抑えることが可能になる。
【0017】
第6観点に係るエアフィルタ濾材は、第1観点から第5観点のいずれかのエアフィルタ濾材であって、第1支持材の目付が、25g/m以上60g/m以下である。
【0018】
このエアフィルタ濾材は、フッ素樹脂多孔膜に熱融着させることによる圧力損失の増大を抑制させやすい第1支持材を容易に得ることができる。
【0019】
第7観点に係るエアフィルタ濾材は、第1観点から第6観点のいずれかのエアフィルタ濾材であって、第1支持材の平均繊維径が23μm以上である。
【0020】
このエアフィルタ濾材は、フッ素樹脂多孔膜に熱融着させることによる圧力損失の増大を抑制させやすい第1支持材を容易に得ることができる。
【0021】
第8観点に係るフィルタパックは、第1観点から第7観点のいずれかのエアフィルタ濾材であって、山折り部および谷折り部が生じるように折り込まれた形状となっている
このフィルタパックは、圧力損失を低く抑えることが可能となる。
【0022】
第9観点に係るエアフィルタユニットは、第1観点から第7観点のいずれかのエアフィルタ濾材、または、第1観点から第7観点のいずれかのエアフィルタ濾材であって山折り部および谷折り部が生じるように折り込まれた形状となっているプリーツ状濾材と、枠体と、を備える。枠体は、エアフィルタ濾材またはプリーツ状濾材を保持する。
【0023】
このエアフィルタユニットは、圧力損失を低く抑えることが可能となる。
【0024】
第10観点に係るエアフィルタ濾材の製造方法は、フッ素樹脂多孔膜を用意する工程と、第1支持材を用意する工程と、フッ素樹脂多孔膜と第1支持材とを熱融着させる工程と、を備える。用意する第1支持材は、第1芯部と第1芯部よりも融点が低い第1鞘部とを含む芯鞘構造繊維を有している。用意する第1支持材は、次式を満たす。式:目付(g/m)/{平均繊維断面積(cm)×材料比重(g/cm)×厚み(cm)×1000000}≦380(m/cm
【0025】
このエアフィルタ濾材の製造方法によれば、フッ素樹脂多孔膜に対して熱融着させる第1支持材として、上記特有の物性のものを用いている。このため、第1支持材がフッ素樹脂多孔膜に重ねられるだけで互いに熱融着していない状態の濾材と比べて、圧力損失の増大を小さく抑えることが可能なエアフィルタ濾材を得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】エアフィルタ濾材(その1)の層構成を示す概略断面図である。
図2】エアフィルタ濾材(その2)の層構成を示す概略断面図である。
図3】エアフィルタ濾材(その3)の層構成を示す概略断面図である。
図4】長手方向の延伸を行う装置の側面視における概略構成図である。
図5】幅方向の延伸を行う装置の側面視における概略構成図である。
図6】幅方向の延伸を行う装置の概略斜視構成図である。
図7】フィルタパックの概略外観斜視図である。
図8】エアフィルタユニットの概略外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、エアフィルタ濾材(以降、単に濾材ともいう。)、フィルタパック、エアフィルタユニット、および、エアフィルタ濾材の製造方法について、例を挙げて説明する。
【0028】
(1)エアフィルタ濾材
エアフィルタ濾材は、フッ素樹脂多孔膜と、支持材と、を備えている。支持材は、フッ素樹脂多孔膜に対して膜厚方向に積層された状態で熱融着されている。
【0029】
エアフィルタ濾材の層構成は、特に限定されるものではなく、例えば、図1に示すエアフィルタ濾材30のように、フッ素樹脂多孔膜31と第1支持材32が、空気流れ方向において積層されて構成されるものであってもよい。第1支持材32は、図1に示すように、フッ素樹脂多孔膜31の風下側に設けられていてもよいし、図2に示すように、フッ素樹脂多孔膜31の風上側に設けられていてもよい。また、エアフィルタ濾材は、図3に示すように、フッ素樹脂多孔膜31に対して空気流れ方向において積層される第1支持材32と、フッ素樹脂多孔膜31に対して第1支持材32側とは反対側に積層される第2支持材33を備え、フッ素樹脂多孔膜31が風下側と風上側の両方から支持されたものであってもよい。
【0030】
エアフィルタ濾材の圧力損失は、例えば、250Pa以下であってよく、200Pa以下であることが好ましい。なお、エアフィルタ濾材の圧力損失は、特に限定されないが、50Pa以上であってよい。エアフィルタ濾材の圧力損失は、空気を流速5.3cm/秒で通過させたときの圧力損失として測定することができる。
【0031】
エアフィルタ濾材は、粒子径0.1μmのNaCl粒子を含む空気を流速5.3cm/秒で通過させた時の粒子の捕集効率が、99.00%以上であってよく、99.99%以上であることが好ましい。
【0032】
エアフィルタ濾材としては、粒子径0.1μmのNaCl粒子を用いて把握される圧力損失および捕集効率を用いて、次式:PF値={-log((100-捕集効率(%))/100)}/(圧力損失(Pa)/1000)で定められるPF値が、例えば、20以上であることが好ましく、21以上であることがより好ましい。エアフィルタ濾材のPF値は、主としてフッ素樹脂多孔膜の性能により定まるが、エアフィルタ濾材においてPF値が高いような比較的高性能のフッ素樹脂多孔膜を用いる場合には、特に、第1支持材および/または第2支持材のフッ素樹脂多孔膜への熱融着による圧力損失の増大程度が大きくなりがちである。この場合においても、上記所定の第1支持材および/または第2支持材を用いることにより、熱融着による圧力損失の増大程度を小さく抑えることが可能になる。
【0033】
エアフィルタ濾材の厚みは、例えば、350μm以上であることが好ましく、380μm以上であることがより好ましい。これにより、フッ素樹脂多孔膜を保護するための第1支持材および/または第2支持材の厚みを十分に確保しやすく、フッ素樹脂多孔膜を物理的に保護することが可能になる。エアフィルタ濾材の厚みは、折り込んだ箇所を有する状態で用いられる場合には、折り込み箇所の厚みが大きくなりすぎることを抑制する観点から、例えば、1000μm以下であることが好ましく、750μm以下であることがより好ましい。エアフィルタ濾材の厚みが大きくなり過ぎないようにすることで、プリーツ形状等に変形させる際の変形が容易になる。なお、エアフィルタ濾材の厚みは、特定の測定装置において、測定対象に0.3Nの荷重をかけたときの厚さの値である。例えば、膜厚計(1D-110MH型、ミツトヨ社製)を使用し、測定対象を5枚重ねて全体の膜厚を測定し、その値を5で割った数値を1枚の膜厚として把握することができる。
【0034】
エアフィルタ濾材の絶縁破壊電圧は、0.8kV以上であることが好ましく、0.85以上であることがより好ましい。絶縁破壊電圧が十分に確保されることにより、フッ素樹脂多孔膜が静電気により受けるダメージが抑制され、リークが生じる状態になることが抑制される。
【0035】
(2)フッ素樹脂多孔膜
フッ素樹脂多孔膜は、主としてフッ素樹脂を含んで構成されており、フィブリル(繊維)とフィブリルに接続されたノード(結節部)とを有する多孔質膜構造を有するものであることがより好ましい。ここで、「主として」とは、複数種類の成分を含有する場合にはフッ素樹脂が最も多く含有されていることを意味する。フッ素樹脂多孔膜は、例えば、フッ素樹脂多孔膜の重量に対して50重量%以上のフッ素樹脂を含んでいてもよいし、80重量%以上のフッ素樹脂を含んでいることが好ましく、95重量%以上のフッ素樹脂を含んでいることがより好ましく、フッ素樹脂のみから構成されていてもよい。
【0036】
フッ素樹脂多孔膜に含まれるフッ素樹脂と異なる成分としては、例えば、繊維化しない非溶融加工性成分である無機フィラーが挙げられる。
【0037】
フッ素樹脂多孔膜に用いられるフッ素樹脂は、1種類の成分からなってもよく、2種以上の成分からなってもよい。また、フッ素樹脂としては、例えば、繊維化し得るPTFEを含むものが挙げられる。また、フッ素樹脂としては、繊維化し得るPTFEと、繊維化しない非熱溶融加工性成分、および、融点320℃未満の繊維化しない熱溶融加工可能な成分の3成分の混合物が挙げられる。
【0038】
繊維化し得るPTFEは、テトラフルオロエチレン(TFE)の乳化重合、または懸濁重合から得られた高分子量PTFEである。ここでいう高分子量とは、多孔膜作成時の延伸の際に繊維化しやすく、繊維長の長いフィブリルが得られるものであって、標準比重(SSG)が、2.130~2.230であり、溶融粘度が高いため実質的に溶融流動しない大きさの分子量をいう。繊維化し得るか否かは、TFEの重合体から作られた高分子量PTFE粉末を成形する代表的な方法であるペースト押出しが可能か否かによって判断できる。ペースト押出しで得られた未焼成の成形体に実質的な強度や伸びがない場合、例えば伸びが0%で、引っ張ると切れるような場合は繊維化性がないとみなすことができる。高分子量PTFEは、変性ポリテトラフルオロエチレンであってもよいし、ホモポリテトラフルオロエチレンであってもよいし、変性PTFEとホモPTFEの混合物であってもよい。
【0039】
繊維化しない非熱溶融加工性成分としては、低分子量PTFE等の熱可塑性を有する成分、熱硬化性樹脂、無機フィラー、およびこれらの混合物が挙げられる。低分子量PTFEは、数平均分子量が60万以下、融点が320℃以上335℃以下、380℃での溶融粘度が100Pa・s~7.0×10Pa・sのPTFEである。
【0040】
融点320℃未満の繊維化しない熱溶融加工可能な成分は、380℃において10000Pa・s未満の溶融粘度を示すことが好ましい。繊維化しない熱溶融加工可能な成分の融点は、示差走査熱量計(DSC)により昇温速度10℃/分で融点以上まで昇温して一度完全に溶融させ、10℃/分で融点以下まで冷却した後、10℃/分で再び昇温したときに得られる融解熱曲線のピークトップとする。
【0041】
これらの繊維化し得るPTFE、繊維化しない非熱溶融加工性成分、融点320℃未満の繊維化しない熱溶融加工可能な成分は、例えば、国際公開第2020/067182号等に詳述されているものとすることができる。
【0042】
また、フッ素樹脂多孔膜の製造方法は、TFEの乳化重合から凝析、共凝析によって得られるファインパウダー等を用いて、脱水、乾燥後に、液体潤滑剤(押出助剤)を混合し、ペースト押出を行うことでシート状の押出物を得る。シート状の押出物をカレンダーロール等により圧延して得られる未焼成フィルムから、液体潤滑剤を除去し、延伸を行うことによりフッ素樹脂多孔膜を得ることができる。
【0043】
このようにして得られるフッ素樹脂多孔膜は、空気を流速5.3cm/秒で通過させたときの圧力損失が250Pa以下であり、200Pa以下であることが好ましい。なお、フッ素樹脂多孔膜の圧力損失は、特に限定されないが、50Pa以上であってよく、80Pa以上であってよい。
【0044】
フッ素樹脂多孔膜は、粒子径0.1μmのNaCl粒子を含む空気を流速5.3cm/秒で通過させた時の粒子の捕集効率が、99.00%以上であってよく、99.99%以上であることが好ましい。
【0045】
また、フッ素樹脂多孔膜のPF値は、20以上であり、21以上であることがより好ましい。PF値は、粒子径0.1μmのNaCl粒子を用いて把握される圧力損失および捕集効率を用いて、次式:PF値={-log((100-捕集効率(%))/100)}/(圧力損失(Pa)/1000)で定められる値である。
【0046】
また、フッ素樹脂多孔膜の厚みは、例えば、1.0μm以上とすることができ、3.0μm以上であることが好ましい。フッ素樹脂多孔膜の膜厚を大きくすることにより、保塵量を増加させることが可能になる。また、フッ素樹脂多孔膜の膜厚は、例えば、100μm以下であり、50.0μm以下であることが好ましい。フッ素樹脂多孔膜の厚みは、例えば、膜厚計(1D-110MH型、ミツトヨ社製)を使用し、測定対象を5枚重ねて全体の膜厚を測定し、その値を5で割った数値を1枚の膜厚として把握することができる。
【0047】
フッ素樹脂多孔膜の平均繊維径は、例えば、0.01μm以上であってよく、0.05μm以上であることが好ましく、0.08μm以上であることがより好ましい。フッ素樹脂多孔膜の平均繊維径は、例えば、0.5μm以下であってよく、0.25μm以下であることが好ましく、0.2μm以下であることがより好ましい。当該平均繊維径は、走査型電子顕微鏡写真の画像からランダムに50個の繊維を選択し、数平均繊維径として算出してもよい。
【0048】
(3)支持材
フッ素樹脂多孔膜は、支持材が積層されることで支持される。このため、フッ素樹脂多孔膜の膜厚が薄い等で自立が困難であっても、支持材によりフッ素樹脂多孔膜を立たせることが可能になる。また、エアフィルタ濾材としての強度が確保され、特定の形状に折り込んだ場合であっても当該形状が保たれやすい。支持材としては、フッ素樹脂多孔膜に対して、空気流れ方向の一方側に積層される第1支持材だけであってもよいし、さらに、フッ素樹脂多孔膜に対して空気流れ方向の第1支持材側とは反対側に積層される第2支持材を備えたものであってもよい。支持材の材質は、特に限定されないが、例えば、不織布、織布等が挙げられる。ここで、不織布としては、例えば、スパンボンド不織布が好ましい。
【0049】
(3-1)第1支持材
エアフィルタ濾材は、フッ素樹脂多孔膜に対して気流通過方向における上流側または下流側のいずれかに配置された第1支持材を備える。第1支持材は、第1芯部と、第1芯部よりも融点が低い第1鞘部と、を含む第1芯鞘構造繊維を有する。フッ素樹脂多孔膜に対して第1支持材を熱融着させる際は、第1芯部よりも融点の低い第1鞘部について少なくとも一部を溶融させることで、フッ素樹脂多孔膜と第1支持材を熱融着させる。
【0050】
ここで、互いに熱融着させることなく、単に、フッ素樹脂多孔膜と第1支持材とを積層させた状態の濾材の圧力損失と、第1支持材をフッ素樹脂多孔膜に熱融着させて得られるエアフィルタ濾材の圧力損失とを比較すると、熱融着による繊維構造の変化等により、フッ素樹脂多孔膜と第1支持材とが熱融着して得られるエアフィルタ濾材の方が、圧力損失が大きいことが分かっている。そして、発明者らは、当該熱融着時の圧力損失の増大を抑制させるべく鋭意検討した結果、フッ素樹脂多孔膜と第1支持材との接点が少ないほど、熱融着による圧力損失の増大を抑制できることを新たに見出した。発明者らは、さらに検討することにより、エアフィルタ濾材におけるフッ素樹脂多孔膜と熱融着して用いられる第1支持材としては、単位体積当たりの平均総繊維長が短いものを用いるのが好適であることを見出した。この単位体積当たりの平均総繊維長としては、第1支持材の目付(g/m)と、平均繊維断面積(cm)と、材料比重(g/cm)と、厚み(cm)と、を用いて、次の式1で表現することができる。
式1:目付(g/m)/{平均繊維断面積(cm)×材料比重(g/cm)×厚み(cm)×1000000}
【0051】
そして、第1支持材における単位体積当たりの平均総繊維長は、得られるエアフィルタ濾材の圧力損失の増大を抑制する観点から、次の式2を満たすものとするのがよいことを見出した。
式2:目付(g/m)/{平均繊維断面積(cm)×材料比重(g/cm)×厚み(cm)×1000000}≦380(m/cm
【0052】
なお、第1支持材は、上記式2により算出される値が、350(m/cm)以下であることが好ましく、300(m/cm)以下であることがより好ましい。
【0053】
これにより、第1支持材とフッ素樹脂多孔膜との接点を少なくすることができ、第1支持材の第1鞘部を溶融させてフッ素樹脂多孔膜と熱融着させる場合であっても、得られるエアフィルタ濾材の圧力損失の増大が抑制される。
【0054】
なお、第1芯部の融点は、例えば、第1鞘部の融点よりも30℃以上高いことが好ましく、50℃以上高いことがより好ましい。これにより、熱融着時に第1支持材全体が溶融してしまうことを抑制できる。第1芯部の成分は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル等、またはこれらの複合材が挙げられる。第1鞘部の成分は、例えば、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、ポリアミド(PA)等、またはこれらの複合材が挙げられる。なお、第1芯部と第1鞘部の成分の組合せは、特に限定されないが、例えば、第1芯部がポリエチレンテレフタレート等のポリエステルであり、第1鞘部がポリエチレン等のポリオレフィンであってもよいし、第1芯部が高融点ポリエステルであり第1鞘部が高融点ポリエステルよりも融点が低い低融点ポリエステルであってもよい。
【0055】
第1支持材は、空気を流速5.3cm/秒で通過させたときの圧力損失が、例えば、10Pa以下であることが好ましい。
【0056】
第1支持材は、粒子径0.1μmのNaCl粒子を含む空気を流速5.3cm/秒で通過させた時の粒子の捕集効率が、10%以下であってよく、5%以下であることが好ましい。
【0057】
第1支持材の厚みは、例えば、500μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましい。なお、フッ素樹脂多孔膜を折り込んでプリーツ状等の非フラット形状に変形させて用いる際については、当該形状を維持させやすくする観点から、通気性支持材の厚みは、140μm以上であることが好ましい。なお、第1支持材の厚みは、絶縁破壊電圧を確保してフッ素樹脂多孔膜を外部の静電気から保護しやすくする観点から、195μm以上であることが好ましく、200μm以上であることがより好ましい。
【0058】
第1支持材の平均繊維径は、フッ素樹脂多孔膜と接触する箇所の数を低減させる観点から、23μm以上であることが好ましく、25μm以上であることがより好ましい。なお、第1支持材の平均繊維径は、例えば、50μm以下とすることができ、40μm以下であってもよい。平均繊維径は、顕微鏡等を用いて観察される画像の所定の範囲内に存在する繊維を対象として評価することができ、例えば、200本の繊維の数平均繊維径としてもよい。
【0059】
第1支持材の目付は、特に限定されず、例えば、25g/m以上60g/m以下であってよい。
【0060】
第1支持材の材料比重は、特に限定されず、例えば、0.8以上1.4以下であってよい。
【0061】
(3-2)第2支持材
エアフィルタ濾材は、フッ素樹脂多孔膜に対して気流通過方向における上流側または下流側のいずれかであって、フッ素樹脂に対して第1支持材が設けられている側とは反対側に配置された第2支持材をさらに備えることが好ましい。第2支持材は、第2芯部と、第2芯部よりも融点が低い第2鞘部と、を含む第2芯鞘構造繊維を有することが好ましい。
【0062】
なお、第1支持材の上記式により算出される値が380(m/cm)以下であれば、第2支持材について上記式により算出される値は特に限定されないが、第2支持材についても、次の式3を満たすことが好ましい。
式3:目付(g/m)/{平均繊維断面積(cm)×材料比重(g/cm)×厚み(cm)×1000000}≦380(m/cm
【0063】
なお、第2支持材は、上記式3により算出される値が、350(m/cm)以下であることが好ましく、300(m/cm)以下であることがより好ましい。
【0064】
これにより、第2支持材とフッ素樹脂多孔膜との接点を少なくすることができ、第2支持材の第2鞘部を溶融させてフッ素樹脂多孔膜と熱融着させる場合であっても、得られるエアフィルタ濾材の圧力損失の増大が抑制される。また、フッ素樹脂多孔膜を両面から支持材で支持することにより、エアフィルタ濾材の取り扱い性が向上する。
【0065】
なお、第2支持材は、第1支持材と同様であり、第2芯部の融点は、例えば、第2鞘部の融点よりも30℃以上高いことが好ましく、50℃以上高いことがより好ましい。これにより、熱融着時に第2支持材全体が溶融してしまうことを抑制できる。第2芯部の成分は、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル等またはこれらの複合材が挙げられる。第2鞘部の成分は、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリアミド等またはこれらの複合材が挙げられる。なお、第2芯部と第2鞘部の成分の組合せは、特に限定されないが、例えば、第2芯部がポリエチレンテレフタレート等のポリエステルであり、第2鞘部がポリエチレン等のポリオレフィンであってもよいし、第2芯部が高融点ポリエステルであり第2鞘部が高融点ポリエステルよりも融点が低い低融点ポリエステルであってもよい。
【0066】
第2支持材は、空気を流速5.3cm/秒で通過させたときの圧力損失が、例えば、10Pa以下であることが好ましい。
【0067】
第2支持材は、粒子径0.1μmのNaCl粒子を含む空気を流速5.3cm/秒で通過させた時の粒子の捕集効率が、10%以下であってよく、5%以下であることが好ましい。
【0068】
第2支持材の厚みは、例えば、500μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましい。なお、フッ素樹脂多孔膜を折り込んでプリーツ状等の非フラット形状に変形させて用いる際については、当該形状を維持させやすくする観点から、通気性支持材の厚みは、140μm以上であることが好ましい。なお、第2支持材の厚みは、絶縁破壊電圧を確保してフッ素樹脂多孔膜を外部の静電気から保護しやすくする観点から、195μm以上であることが好ましく、200μm以上であることがより好ましい。
【0069】
第2支持材の平均繊維径は、フッ素樹脂多孔膜と接触する箇所の数を低減させる観点から、23μm以上であることが好ましく、25μm以上であることがより好ましい。なお、第2支持材の平均繊維径は、例えば、50μm以下とすることができ、40μm以下であってもよい。平均繊維径は、顕微鏡等を用いて観察される画像の所定の範囲内に存在する繊維を対象として評価することができ、例えば、200本の繊維の数平均繊維径としてもよい。
【0070】
第2支持材の目付は、特に限定されず、例えば、25g/m以上60g/m以下であってよい。
【0071】
第2支持材の材料比重は、特に限定されず、例えば、0.8以上1.4以下であってよい。
【0072】
(4)フッ素樹脂多孔膜と支持材の接合等
以下、フッ素樹脂多孔膜の延伸工程と、その後に行われる支持材との接合等の手順を説明する。
【0073】
ロール状に巻き取られる等されたフッ素樹脂シートは、例えば、図4に示す装置および図5図6に示す装置を用いて延伸することができる。
【0074】
図4に示す装置では、ロール状に巻き取られているフッ素樹脂シートは、ロール41としてセットされ、長手方向(縦方向)に延伸された長手方向延伸シートは巻き取りロール42において巻き取られる。なお、43~45はロールであり、46、47はヒートロールであり、48~52はロールをそれぞれ示している。
【0075】
次に、長手方向延伸シートは、図5図6に示す装置により、幅方向に延伸される。具体的には、巻き取られた長手方向延伸シートが、ロール61にセットされ、順次送り出されながら、テンター65により幅方向に延伸される。テンター65では、延伸シートの幅方向の両端がそれぞれ対向する図示しない連続クリップにより挟持された状態とされ、延伸シートが送り出されながら対向する連続クリップ同士が離れていくことで、幅方向に延伸される。連続クリップは、特定形状に調節可能なラインに沿って上流側から下流側に送られるように構成されている。なお、テンター65は、上流側の予熱領域62において延伸シートを予熱し、中間の延伸領域63では延伸シートを所定の温度に加熱した状態で幅方向への延伸を行い、下流側の熱固定領域64において延伸後のシートを熱固定することができる。熱固定を終えたフッ素樹脂多孔膜31は、第1支持材32と、必要に応じて第2支持材33と重ねられ、ホットプレス装置の加熱された熱板と対向する板の組み合わせや一対の加熱ロール66等を用いて熱ラミネートされることでエアフィルタ濾材30となってロール67に巻き取られる。
【0076】
第1支持材32の第1鞘部、第2支持材33の第2鞘部は、ホットプレス装置の加熱された熱板と対向する板の組み合わせや一対や加熱ロール66によって加熱される際に一部が溶融し、フッ素樹脂多孔膜31に付着する。このようにして、第1支持材32と第2支持材33をフッ素樹脂多孔膜31に熱融着させることで、エアフィルタ濾材30が得られる。
【0077】
(5)フィルタパック
次に、図7を参照して、本実施形態のフィルタパックについて説明する。
【0078】
図7は、本実施形態のフィルタパック20の外観斜視図である。
【0079】
フィルタパック20は、上記説明したエアフィルタ濾材(例えば、エアフィルタ濾材30)を備えている。フィルタパック20のエアフィルタ濾材は、山折りおよび谷折りが交互に繰り返されたジグザグ形状に加工(プリーツ加工)された加工済み濾材である。プリーツ加工は、例えば、ロータリー式折り機によって行うことができる。濾材の折り幅は、特に限定されないが、例えば25mm以上280mm以下である。フィルタパック20は、プリーツ加工が施されていることで、エアフィルタユニットに用いられた場合の濾材の折り込み面積を増やすことができ、これにより、捕集効率の高いエアフィルタユニットを得ることができる。
【0080】
フィルタパック20は、濾材のほか、エアフィルタユニットに用いられた場合のプリーツ間隔を保持するためのスペーサ(不図示)をさらに備えていてもよい。スペーサの材質は特に限定されないが、ホットメルト樹脂を好ましく用いることができる。また、エアフィルタ濾材30が複数のエンボス突起を有しており、当該エンボス突起によってプリーツ間隔が保持されていてもよい。
【0081】
(6)エアフィルタユニット
次に、図8を参照して、エアフィルタユニット1について説明する。
【0082】
図8は、本実施形態のエアフィルタユニット1の外観斜視図である。
【0083】
エアフィルタユニット1は、上記説明したエアフィルタ濾材またはフィルタパックと、エアフィルタ濾材またはフィルタパックを保持する枠体25と、を備えている。エアフィルタユニットは、山折り谷折されていない濾材が枠体に保持されるように作製されてもよいし、フィルタパック20が枠体25に保持されるように作製されてもよい。図8に示すエアフィルタユニット1は、フィルタパック20と枠体25を用いて作製したものである。
【0084】
枠体25は、例えば、板材を組み合わせてあるいは樹脂を成形して作られ、フィルタパック20と枠体25の間は好ましくはシール剤によりシールされる。シール剤は、フィルタパック20と枠体25の間のリークを防ぐためのものであり、例えば、エポキシ、アクリル、ウレタン系などの樹脂製のものが用いられる。
【0085】
フィルタパック20と枠体25とを備えるエアフィルタユニット1は、平板状に延在する1つのフィルタパック20を枠体25の内側に収納するように保持させたミニプリーツ型のエアフィルタユニットであってもよく、平板状に延在するフィルタパックを複数並べて枠体に保持させたVバンク型エアフィルタユニットあるいはシングルヘッダー型エアフィルタユニットであってもよい。
【0086】
(7)用途の例
本実施形態に係るエアフィルタ濾材、フィルタパック、および、エアフィルタユニットは、例えば、次のような用途に用いられる。
【0087】
ULPAフィルタ(Ultra low Penetration Air Filter)(半導体製造用)、HEPAフィルタ(病院、半導体製造用)、円筒カートリッジフィルタ(産業用)、バグフィルタ(産業用)、耐熱バグフィルタ(排ガス処理用)、耐熱プリーツフィルタ(排ガス処理用)、SINBRAN(登録商標)フィルタ(産業用)、触媒フィルタ(排ガス処理用)、吸着剤付フィルタ(HDD組込み用)、吸着剤付ベントフィルタ(HDD組込み用)、ベントフィルタ(HDD組込み用等)、掃除機用フィルタ(掃除機用)、汎用複層フェルト材、ガスタービン用カートリッジフィルタ(ガスタービン向け互換品用)、クーリングフィルタ(電子機器筐体用)等の分野。
【0088】
凍結乾燥用の容器等の凍結乾燥用材料、電子回路やランプ向けの自動車用換気材料、容器キャップ向け等の容器用途、電子機器向け等の保護換気用途、医療用換気用途等の換気/内圧調整分野。
【0089】
平型、プリーツ型、立体型等のマスク(人間の口、鼻を介した、埃、油煙、菌、ウィルス等の体内への侵入を抑制するもの)。
【実施例0090】
以下、実施例および比較例を示して、本開示の内容を具体的に説明する。
【0091】
(実施例1)
平均分子量650万のPTFEファインパウダー(ダイキン工業株式会社製「ポリフロンファインパウダーF106」)1kg当たり押出液状潤滑剤として炭化水素油(出光興産株式会社製「IPソルベント2028」)を20℃において300g加えて混合した。次に、得られた混合物をペースト押出装置を用いて押し出して丸棒形状の成形体を得た。この丸棒形状の成型体を70℃に加熱したカレンダーロールによりシート状に成形しフッ素樹脂シートを得た。このフッ素樹脂シートを250℃の熱風乾燥炉に通して炭化水素油を蒸発除去し、平均厚さ200μm、平均幅150mmの帯状の未焼成のフッ素樹脂シートを得た。
【0092】
次に、未焼成のフッ素樹脂シートを、長手方向に延伸倍率5倍で延伸した。長手方向の延伸における延伸温度は250℃であった。ここで、長手方向への延伸割合速度(%/s)は、150(%/s)であった。
【0093】
次に、延伸した未焼成のフッ素樹脂シートを、連続クリップできるテンターを用いて、幅方向に延伸倍率36倍で延伸した。幅方向の延伸における延伸温度は290℃であった。
【0094】
ここで、フッ素樹脂シートを延伸して得られるフッ素樹脂多孔膜に対して、空気流れの通過方向における風上側に第1支持材を積層し、風下側に第2支持材を積層し、ホットプレス装置を用いて第1支持材と第2支持材をフッ素樹脂多孔膜に熱融着させることにより、実施例1のエアフィルタ濾材を得た。なお、ホットプレス装置による熱ラミネートは、160℃に加熱した熱板と対向する板により挟み込んで0.4MPaの荷重を8秒間かけることにより行った。
【0095】
なお、実施例1で用いた風上側の第1支持材は、PETを芯に、PEを鞘に用いた芯/鞘構造の繊維からなるスパンボンド不織布(平均繊維径26μm、目付40g/m、厚さ210μm)であった。実施例1で用いた風下側の第2支持材は、PETを芯に、PEを鞘に用いた芯/鞘構造の繊維からなるスパンボンド不織布(平均繊維径26μm、目付40g/m、厚さ210μm)であった。
【0096】
(実施例2)
平均分子量650万のPTFEファインパウダー(ダイキン工業株式会社製「ポリフロンファインパウダーF106」)1kg当たり押出液状潤滑剤として炭化水素油(出光興産株式会社製「IPソルベント2028」)を20℃において290g加えて混合した。次に、得られた混合物をペースト押出装置を用いて押し出して丸棒形状の成形体を得た。この丸棒形状の成型体を70℃に加熱したカレンダーロールによりシート状に成形しフッ素樹脂シートを得た。このフッ素樹脂シートを250℃の熱風乾燥炉に通して炭化水素油を蒸発除去し、平均厚さ200μm、平均幅150mmの帯状の未焼成のフッ素樹脂シートを得た。
【0097】
次に、未焼成のフッ素樹脂シートを、長手方向に延伸倍率5倍で延伸した。長手方向の延伸における延伸温度は250℃であった。ここで、長手方向への延伸割合速度(%/s)は、150(%/s)であった。
【0098】
次に、延伸した未焼成のフッ素樹脂シートを、連続クリップできるテンターを用いて、幅方向に延伸倍率36倍で延伸した。幅方向の延伸における延伸温度は290℃であった。
【0099】
ここで、フッ素樹脂シートを延伸して得られるフッ素樹脂多孔膜に対して、空気流れの通過方向における風上側に第1支持材を積層し、風下側に第2支持材を積層し、ホットプレス装置を用いて第1支持材と第2支持材をフッ素樹脂多孔膜に熱融着させることにより、実施例2のエアフィルタ濾材を得た。なお、ホットプレス装置による熱ラミネートは、160℃に加熱した熱板と対向する板により挟み込んで0.4MPaの荷重を8秒間かけることにより行った。
【0100】
なお、実施例2で用いた風上側の第1支持材は、PETを芯に、PEを鞘に用いた芯/鞘構造の繊維からなるスパンボンド不織布(平均繊維径37μm、目付40g/m、厚さ210μm)であった。実施例2で用いた風下側の第2支持材は、PETを芯に、PEを鞘に用いた芯/鞘構造の繊維からなるスパンボンド不織布(平均繊維径37μm、目付40g/m、厚さ210μm)であった。
【0101】
(実施例3)
実施例3は、エアフィルタ濾材に用いられる第1支持材として、PETを芯に、PPを鞘に用いた芯/鞘構造の繊維からなるスパンボンド不織布(平均繊維径37μm、目付30g/m、厚さ350μm)を用い、エアフィルタ濾材で用いられる第2支持材として、PETを芯に、PPを鞘に用いた芯/鞘構造の繊維からなるスパンボンド不織布(平均繊維径37μm、目付30g/m、厚さ350μm)を用い、ホットプレス装置による熱ラミネートを195℃に加熱した熱板を用いて0.4MPaの荷重を8秒間かけることにより行った点以外は、実施例1と同様にしてエアフィルタ濾材を作成した。
【0102】
(実施例4)
実施例4は、エアフィルタ濾材に用いられる第1支持材として、PETを芯に、PPを鞘に用いた芯/鞘構造の繊維からなるスパンボンド不織布(平均繊維径37μm、目付50g/m、厚さ400μm)を用い、エアフィルタ濾材で用いられる第2支持材として、PETを芯に、PPを鞘に用いた芯/鞘構造の繊維からなるスパンボンド不織布(平均繊維径37μm、目付50g/m、厚さ400μm)を用い、ホットプレス装置による熱ラミネートを195℃に加熱した熱板を用いて0.4MPaの荷重を8秒間かけることにより行った点以外は、実施例1と同様にしてエアフィルタ濾材を作成した。
【0103】
(実施例5)
実施例5は、エアフィルタ濾材に用いられる第1支持材として、PETを芯に、PEを鞘に用いた芯/鞘構造の繊維からなるスパンボンド不織布(平均繊維径37μm、目付30g/m、厚さ190μm)を用い、エアフィルタ濾材で用いられる第2支持材として、PETを芯に、PEを鞘に用いた芯/鞘構造の繊維からなるスパンボンド不織布(平均繊維径37μm、目付30g/m、厚さ190μm)を用いた点以外は、実施例1と同様にしてエアフィルタ濾材を作成した。
【0104】
(比較例1)
比較例1では、エアフィルタ濾材に用いられる第1支持材と第2支持材を以下に述べるように変更した以外は、実施例2と同様にしてエアフィルタ濾材を得た。
【0105】
比較例1で用いた風上側の第1支持材は、PETを芯に、PEを鞘に用いた芯/鞘構造の繊維からなるスパンボンド不織布(平均繊維径20μm、目付40g/m、厚さ280μm)であった。比較例1で用いた風下側の第2支持材は、PETを芯に、PEを鞘に用いた芯/鞘構造の繊維からなるスパンボンド不織布(平均繊維径20μm、目付40g/m、厚さ200μm)であった。
【0106】
なお、実施例1-5および比較例1において測定した各物性は、以下の通りである。
【0107】
(積層品の圧力損失)
フッ素樹脂多孔膜に対して第1支持材と第2支持材を積層させただけで、熱融着させていない測定サンプルを、直径100mmのフィルタホルダにセットし、コンプレッサで入口側を加圧し、流速計で空気の透過する流量を5.3cm/秒に調整した。そして、この時の圧力損失をマノメータで測定した。
【0108】
(エアフィルタ濾材の圧力損失)
エアフィルタ濾材の測定サンプルを、直径100mmのフィルタホルダにセットし、コンプレッサで入口側を加圧し、流速計で空気の透過する流量を5.3cm/秒に調整した。そして、この時の圧力損失をマノメータで測定した。
【0109】
(熱融着による圧力損失の上昇)
上述のエアフィルタ濾材における圧力損失を測定して得られた値から、上述の積層品における圧力損失を測定して得られた値を差し引くことにより、熱融着による圧力損失の上昇分を算出した。
【0110】
(フッ素樹脂多孔膜の厚み)
膜厚計(1D-110MH型、ミツトヨ社製)を使用し、測定対象を5枚重ねて全体の膜厚を測定し、その値を5で割った数値を1枚の膜厚とした。
【0111】
(第1支持材の厚み、第2支持材の厚み)
ABSデジマチックインジケータ(ミツトヨ社製、ID-C112CX)をゲージスタンドに固定し、測定対象に0.3Nの荷重をかけたときの厚さの値を読み取った。
【0112】
(エアフィルタ濾材の厚み)
ABSデジマチックインジケータ(ミツトヨ社製、ID-C112CX)をゲージスタンドに固定し、測定対象に0.3Nの荷重をかけたときの厚さの値を読み取った。
【0113】
(第1支持材の目付、第2支持材の目付)
目付は、4.0cm×12.0cmの長方形にカットした試料を精密天秤にて測定した質量(g)を面積(0.0048m)で除した値とした。
【0114】
(第1支持材の平均繊維径、第2支持材の平均繊維径)
試験サンプルの表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で1000~5000倍で撮影し、撮影した1画像上で直交した2本の線を引き、これらの線と交わった繊維の像の太さを繊維径として測定した。測定した繊維数は200本以上とした。こうして得られた繊維径について、横軸に繊維径、縦軸に累積頻度を採って対数正規プロットし、累積頻度が50%となる値を平均繊維径とした。繊維径の分布を表す幾何標準偏差は、上述の対数正規プロットの結果から、累積頻度50%の繊維径と累積頻度84%の繊維径を読み取り下記式より算出した。
幾何標準偏差[-]=累積頻度84%繊維径/累積頻度50%繊維径
【0115】
(第1支持材の単位体積内の総繊維長、第2支持材の単位体積内の総繊維長)
目付(g/m)/{平均繊維断面積(cm)×材料比重(g/cm)×厚み(cm)×1000000}を計算して得られる値を単位体積内の総繊維長とした。
【0116】
(第1支持材の平均繊維断面積、第2支持材の平均繊維断面積)
上記の(第1支持材の平均繊維径、第2支持材の平均繊維径)の測定でえられた平均繊維径から断面形状を円として計算した値を用いた。
【0117】
(支持材の合計総繊維長)
第1支持材の単位体積内の総繊維長+第2支持材の単位体積内の総繊維長を計算して得られる値を支持材の合計総繊維長とした。
【0118】
(積層品における粒子径0.1μmのNaCl粒子の捕集効率)
JIS B9928 附属書5(規定)NaClエアロゾルの発生方法(加圧噴霧法)記載の方法に準じて、アトマイザーで発生させたNaCl粒子を、静電分級器(TSI社製)で、粒径0.1μmに分級し、アメリシウム241を用いて粒子帯電を中和した後、透過する流量を5.3cm/秒に調整し、パーティクルカウンター(TSI社製、CNC)を用いて、フッ素樹脂多孔膜に対して第1支持材と第2支持材を積層させただけで熱融着させていない積層品の前後での粒子数を求め、次式により捕集効率を算出した。
捕集効率(%)=(CO/CI)×100
【0119】
CO=測定試料が捕集したNaCl 0.1μmの粒子数
CI=測定試料に供給されたNaCl 0.1μmの粒子数
【0120】
(積層品における粒子径0.1μmのNaCl粒子の透過率)
{100(%)-積層品における粒子径0.1μmのNaCl粒子の捕集効率(%)}により得られる値を、積層品における粒子径0.1μmのNaCl粒子の透過率(%)とした。
【0121】
(エアフィルタ濾材における粒子径0.1μmのNaCl粒子の捕集効率)
JIS B9928 附属書5(規定)NaClエアロゾルの発生方法(加圧噴霧法)記載の方法に準じて、アトマイザーで発生させたNaCl粒子を、静電分級器(TSI社製)で、粒径0.1μmに分級し、アメリシウム241を用いて粒子帯電を中和した後、透過する流量を5.3cm/秒に調整し、パーティクルカウンター(TSI社製、CNC)を用いて、エアフィルタ濾材の前後での粒子数を求め、次式により捕集効率を算出した。
捕集効率(%)=(CO/CI)×100
【0122】
CO=測定試料が捕集したNaCl 0.1μmの粒子数
CI=測定試料に供給されたNaCl 0.1μmの粒子数
【0123】
(エアフィルタ濾材の粒子径0.1μmのNaCl粒子の透過率)
{100(%)-エアフィルタ濾材における粒子径0.1μmのNaCl粒子の捕集効率(%)}により得られる値を、エアフィルタ濾材における粒子径0.1μmのNaCl粒子の透過率(%)とした。
【0124】
(透過率比)
{エアフィルタ濾材の粒子径0.1μmのNaCl粒子の透過率/積層品における粒子径0.1μmのNaCl粒子の透過率}により得られた値を透過率比として算出した。
【0125】
(エアフィルタ濾材における粒子径0.1μmのNaCl粒子のPF値)
粒子径0.1μmのNaCl粒子を用いて、エアフィルタ濾材の圧力損失及び捕集効率(粒子径0.1μmのNaCl粒子の捕集効率)とから、次式に従いPF値を求めた。
PF値={-log((100-捕集効率(%))/100)}/(圧力損失(Pa)/1000)
【0126】
(エアフィルタ濾材の絶縁破壊電圧)
JIS C2110-1 固体電気絶縁材料‐絶縁破壊の強さの試験方法 に準拠して、短時間(急速昇圧)試験により、対象エアフィルタ濾材サンプルの絶縁破壊電圧を測定した。
【0127】
各実施例1-5および比較例1のエアフィルタ濾材の諸物性を、以下の表に示す。
【表1】
【0128】
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0129】
1 エアフィルタユニット
20 フィルタパック(プリーツ状濾材)
25 枠体
30 エアフィルタ濾材
31 フッ素樹脂多孔膜
32 第1支持材
33 第2支持材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0130】
【特許文献1】特開2002-66226号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8