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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134261
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】ワーク搬送装置及び工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/08 20060101AFI20240926BHJP
   B23Q 7/04 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
B23Q11/08 Z
B23Q7/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044469
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000137856
【氏名又は名称】シチズンマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100160716
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 力
(72)【発明者】
【氏名】宮川 直己
【テーマコード(参考)】
3C011
3C033
【Fターム(参考)】
3C011DD00
3C033HH12
(57)【要約】
【課題】ワーク保持装置とカバーとの間の離隔距離を長くことができるワーク搬送装置及び工作機械を提供することを目的とする。
【解決手段】ワーク搬送装置1は、ワークWが加工される加工領域111においてワークWを保持し、加工領域111に隣接する非加工領域113と加工領域111との間を移動可能なワーク保持装置10と、加工領域111と非加工領域113との間を遮断すると共に、少なくとも加工領域を移動可能なカバー20と、を有し、カバー20は、加工領域111を移動するときにワーク保持装置10と一体的に移動し、ワーク保持装置10が移動可能な区間である保持装置移動区間WLは、カバー20が移動可能な区間であるカバー移動区間CLよりも長い。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークが加工される加工領域においてワークを保持し、前記加工領域に隣接する非加工領域と前記加工領域との間を移動可能なワーク保持装置と、
前記加工領域と非加工領域との間を遮断すると共に、少なくとも前記加工領域を移動可能なカバーと、を有し、
前記カバーは、前記加工領域を移動するときに前記ワーク保持装置と一体的に移動し、
前記ワーク保持装置が移動可能な区間である保持装置移動区間は、前記カバーが移動可能な区間であるカバー移動区間よりも長い、
ことを特徴とするワーク搬送装置。
【請求項2】
前記カバーは、
前記加工領域と前記非加工領域との間を遮断可能な遮断面と、
前記遮断面に直交する方向に延伸する一対の防壁面と、
を有する、請求項1に記載のワーク搬送装置。
【請求項3】
前記ワーク保持装置を前記カバーに結合する結合機構を更に有し、
前記ワーク保持装置は、前記非加工領域から前記加工領域に移動する前に、前記結合機構によって前記カバーに結合され、前記加工領域から前記非加工領域に移動した後に、前記結合機構によって前記カバーから分離される、請求項1又は2に記載のワーク搬送装置。
【請求項4】
前記結合機構は、
前記ワーク保持装置及び前記カバーの一方に配置された凹部と、
前記ワーク保持装置及び前記カバーの他方に配置され、前記凹部に係合する凸部と、
を有する、請求項3に記載のワーク搬送装置。
【請求項5】
前記カバーを前記加工領域から離隔する方向に付勢する付勢装置を更に有する、請求項1又は2に記載のワーク搬送装置。
【請求項6】
加工されるワークを保持する主軸と、
前記ワークを搬送するワーク搬送装置と、を有し、
前記ワーク搬送装置は、
ワークが加工される加工領域においてワークを保持し、前記加工領域に隣接する非加工領域と前記加工領域との間を移動可能なワーク保持装置と、
前記加工領域と非加工領域との間を遮断すると共に、前記加工領域を移動可能なカバーと、を有し、
前記カバーは、前記加工領域を移動するときに前記ワーク保持装置と一体的に移動し、
前記ワーク保持装置が移動可能な区間である保持装置移動区間は、前記カバーが移動可能な区間であるカバー移動区間よりも長い、
ことを特徴とする工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク搬送装置及び工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークの搬送時にワークの受け渡す工作機械以外の他の工作機械から切粉及び切削液が侵入することを防止することができる生産ラインが知られている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1に記載される生産ラインは、前行程の工作機械における更に前工程側に位置する中間シャッタと、次工程の工作機械における更に次工程側に位置する中間シャッタとを共に閉じた状態とすることで工作機械から飛散する切粉及び切削液の侵入が防止される。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載される生産ラインでは、中間シャッタを開閉するタイミング及びストロークは、ワークを搬送するタイミング及びストロークと相違するため、ワークを搬送する機構及び制御方法が複雑となり、製造コストが上昇するおそれがある。
【0004】
特許文献2には、ワークを保持するワーク保持装置と一体的に移動し、ワークが加工される加工領域外にワーク保持装置が移動したときに開口部を閉塞するカバーを有する工作機械が記載される。特許文献2に記載される工作機械は、カバーをワーク保持装置と一体的に移動することで、ワークを搬送する機構及び制御方法が簡素化され、製造コストを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018―118329号公報
【特許文献2】特許第6351475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載される工作機械では、ワーク保持装置は、付勢手段によりカバーと近接する方向に付勢されるので、ワーク保持装置とカバーとの間の離隔距離を長くすることは容易ではない。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するものであり、ワーク保持装置とカバーとの間の離隔距離を長くことができるワーク搬送装置及び工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るワーク搬送装置は、ワークが加工される加工領域においてワークを保持し、加工領域に隣接する非加工領域と加工領域との間を移動可能なワーク保持装置と、加工領域と非加工領域との間を遮断すると共に、少なくとも加工領域を移動可能なカバーと、を有し、カバーは、加工領域を移動するときにワーク保持装置と一体的に移動し、ワーク保持装置が移動可能な区間である保持装置移動区間は、カバーが移動可能な区間であるカバー移動区間よりも長い。
【0009】
さらに、本発明に係るワーク搬送装置では、カバーは、壁部の延伸方向に平行に延伸する遮断面と、遮断面に直交する方向に延伸する一対の防壁面とを有することが好ましい。
【0010】
さらに、本発明に係るワーク搬送装置は、ワーク保持装置をカバーに結合する結合機構を更に有し、ワーク保持装置は、非加工領域から加工領域に移動する前に、結合機構によってカバーに結合され、加工領域から非加工領域に移動した後に、結合機構によってカバーから分離されることが好ましい。
【0011】
さらに、本発明に係るワーク搬送装置では、結合機構は、ワーク保持装置及びカバーの一方に配置された凹部と、ワーク保持装置及びカバーの他方に配置され、凹部に係合する凸部とを有することが好ましい。
【0012】
さらに、本発明に係るワーク搬送装置は、カバーを加工領域から離隔する方向に付勢する付勢装置を更に有することが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る工作機械は、加工されるワークを保持する主軸と、ワークを搬送するワーク搬送装置と、を有し、ワーク搬送装置は、ワークが加工される加工領域においてワークを保持し、加工領域に隣接する非加工領域と加工領域との間を移動可能なワーク保持装置と、加工領域と非加工領域との間を遮断すると共に、加工領域を移動可能なカバーと、を有し、カバーは、加工領域を移動するときにワーク保持装置と一体的に移動し、ワーク保持装置が移動可能な区間である保持装置移動区間は、カバーが移動可能な区間であるカバー移動区間よりも長い。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るワーク搬送装置及び工作機械は、ワーク保持装置とカバーとの間の離隔距離を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態に係る工作機械の斜視図である。
図2】正面の筐体が取り外された図1に示す工作機械の正面図である。
図3】筐体が取り外された図1に示す工作機械の斜視図である。
図4図1に示す工作機械によるワーク加工処理を示す図であり、(a)は第1状態を示し、(b)は第2状態を示し、(c)は第3状態を示し、(d)は第4状態を示し、(e)は第5状態を示し、(f)は第6状態を示す。
図5図3に示すワーク保持装置の斜視図(その1)である。
図6図3に示すワーク保持装置の斜視図(その2)である。
図7】(a)は図3に示すカバーの斜視図(その1)であり、(b)は図3に示すカバーの斜視図(その2)であり、(c)は図3に示すカバーの斜視図(その3)であり、(d)は図3に示すカバーの斜視図(その4)である。
図8】待機状態である図3に示すワーク搬送装置の斜視図である。
図9】把持状態である図3に示すワーク搬送装置の斜視図である。
図10】搬出状態である図3に示すワーク搬送装置の斜視図である。
図11】(a)は第2実施形態に係るワーク搬送装置の斜視図(その1)であり、(b)は第2実施形態に係るワーク搬送装置の斜視図(その2)である。
図12図11(a)に示すワーク搬送装置の斜視図である。
図13】(a)は図11(a)に示すカバーの斜視図(その1)であり、(b)は図11(a)に示すカバーの斜視図(その2)である。
図14】待機状態である図11(a)に示すワーク搬送装置の斜視図である。
図15】把持状態である図11(a)に示すワーク搬送装置の斜視図である。
図16】搬出状態である図11(a)に示すワーク搬送装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、実施形態に係るワーク搬送装置及び工作機械について説明する。ただし、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態には限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0017】
図1は実施形態に係る工作機械の斜視図であり、図2は正面側の筐体が取り外された図1に示す工作機械の正面図であり、図3は筐体が取り外された図1に示す工作機械の斜視図である。
【0018】
工作機械100は、傾斜するように配置されるベッド101と、正面主軸102と、背面主軸103と、タレット刃物台104と、筐体105と、NC装置110と、第1実施形態に係るワーク搬送装置1とを有するスラントタイプの工作機械である。ベッド101には、正面主軸102、背面主軸103及びタレット刃物台104が搭載され、筐体105に収容される。正面主軸102は、ワークを把持可能な部材であり、ベッド101に固定される。背面主軸103は、正面主軸102に把持されたワークを把持可能な部材であり、X軸方向及びZ軸方向に沿って移動する移動機構106上に設置されることによってX軸方向及びZ軸方向の2方向に移動可能である。タレット刃物台104は、種々の工具を保持し、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に沿って移動する移動機構107上に設置されることによってX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の3方向に移動可能である。正面主軸102及び背面主軸103の回転並びに背面主軸103、タレット刃物台104及びワーク搬送装置1の移動等は、NC装置110によって制御される。
【0019】
工作機械100は、ワークが加工される加工領域111と、加工領域111と壁部112を介して隣接する非加工領域113とを含む。ベッド101、正面主軸102、背面主軸103及びタレット刃物台104は加工領域111に配置され、ワーク搬送装置1は非加工領域113に配置される。ワーク搬送装置1は、壁部112に形成される開口部114を覆うように配置される。
【0020】
ワーク搬送装置1は、ワーク保持装置10と、カバー20とを有し、加工されたワークWを工作機械100の外部に配置される搬出口115に搬出する。なお、工作機械100では、ワーク搬送装置1は、背面主軸103に保持されたワークWを搬出するが、実施形態に係る工作機械では、ワーク搬送装置1は、工作機械の内部にワークWを搬入してもよく、工作機械の内部でワークWを搬送してもよい。
【0021】
図4は工作機械100によるワーク加工処理を示す図であり、図4(a)は第1状態を示し、図4(b)は第2状態を示し、図4(c)は第3状態を示し、図4(d)は第4状態を示し、図4(e)は第5状態を示し、図4(f)は第6状態を示す。
【0022】
まず、第1状態において、正面主軸102は、ワークWを保持する。次いで、第2状態において、正面主軸102がワークWを回転すると共に、工具108をタレット刃物台104が移動することで、タレット刃物台104に保持される工具108によってワークWが加工される。工具108によるワークWの加工が終了すると、背面主軸103は、正面主軸102に近接する位置に移動して、工具108によって加工されたワークWを把持する。次いで、第3状態において、背面主軸103がワークWを回転すると共に、工具109をタレット刃物台104が移動することで、タレット刃物台104に保持される工具109によってワークWが加工される。背面主軸103で保持されたワークの加工が完了した後、第4状態において、ワーク搬送装置1は、背面主軸103に保持されるワークWを把持する。次いで、第5状態において、ワーク搬送装置1は、把持したワークWを持ち上げて、矢印で示されるように水平方向に移動する。そして、第6状態において、ワーク搬送装置1は、把持したワークWを工作機械100の外に搬出する。
【0023】
図5はワーク保持装置10の斜視図(その1)であり、図6はワーク保持装置10の斜視図(その2)である。
【0024】
ワーク保持装置10は、基台部11に移動可能に保持され、収容部12と、スライド部13と、把持基部14と、ワーク把持部15と、リニアガイド部16と、スライド部移動機構17とを有する。ワーク保持装置10は、正面主軸102又は背面主軸103に保持されたワークWを、工作機械100の外部に配置される搬出口115に搬出する。
【0025】
基台部11は、筐体105の天井近傍に配置され、工作機械100の長手方向に直線状に延伸するように工作機械100の内部に配置される。基台部11は、レール及び水平駆動装置が配置され、ワーク保持装置10をレールに沿って移動する。ワーク保持装置10が移動可能な基台部11の延伸方向は、移動方向とも称される。
【0026】
収容部12は、基台部11が延伸する方向に直交する方向に基台部11から起立して配置され、スライド部13を収容位置に収容する。また、収容部12は、電流が供給されることに応じてスライド部移動機構17に動力を供給するサーボモータが搭載される。
【0027】
スライド部13は、切欠きが基台部11と反対の端部に形成された板状の部材であり、収容部12に収容される収容位置とワークを把持する把持位置との間で移動可能なように、リニアガイド部16を介して、収容部12に保持される。スライド部13の一方の面には、把持基部14、ワーク把持部15及びスライド部移動機構17が配置され、スライド部13の他方の面にはリニアガイド部16が配置される。
【0028】
把持基部14は、ワーク把持部15をスライド部13の短手方向に移動可能に支持するし、圧縮空気が供給されることに応じて、ワーク把持部15をスライド部13の短手方向に移動する。把持基部14は、ワークWを開放する開位置になるように圧縮空気が供給されると、一対のワーク把持部15を外側に移動させる。また、把持基部14は、ワークWを把持する閉位置になるように圧縮空気が供給されると、一対の把持部支持板を内側に移動させる。
【0029】
ワーク把持部15は、把持基部14が有する一対の把持部支持板によって支持され、把持基部14が一対の把持部支持板を移動することに応じて移動する。ワーク把持部15は、開位置ではワークWを開放し、閉位置ではワークWを把持する。把持基部14及びワーク把持部15は、エアチャックとも称される。
【0030】
リニアガイド部16は、スライド部13の一対の長辺の一方に沿って配置される一対のレール及び転がりガイドとも称される玉循環リニア軸受である保持器を有し、スライド部13の一対の長辺の一方に沿ってスライド部13を案内する。スライド部移動機構17は、ラックギア及びピニオンを有し、スライド部13に沿って移動する。
【0031】
図7(a)はカバー20の斜視図(その1)であり、図7(b)はカバー20の斜視図(その2)であり、図7(c)はカバー20の斜視図(その3)であり、図7(d)はカバー20の斜視図(その4)である。
【0032】
カバー20は、カバー基台21と、遮断面22と、第1防壁面23と、第2防壁面24と、第1ガイド25と、第2ガイド26と、第3ガイド27と、付勢装置28とを有する。カバー20は、ワークが加工される加工領域111に壁部112を介して隣接する非加工領域113と加工領域111との間を、壁部112に形成される開口部114を閉塞することで遮断する。また、カバー20は、加工領域111を移動可能である。カバー20は、加工領域111を移動するとき、ワーク保持装置と一体化される。
【0033】
カバー基台21は、遮断面22、第1防壁面23、第2防壁面24、第1ガイド25、第2ガイド26及び付勢装置28を支持する架台である。遮断面22は、壁部112の延伸方向に平行に延伸する加工領域111と非加工領域113との間を遮断可能である。遮断面22は、ワークWの搬出処理前の待機状態では、ワーク保持装置10の基台部11の接合される係止部18によって係止されることで、壁部112の近傍に配置される。係止部18は、壁部112に形成され、ワーク搬送装置1により覆われる開口部114の枠材である。
【0034】
第1防壁面23及び第2防壁面24は、壁部112の延伸方向に直交する方向に延伸する一対の平面であり、互いに対向して平行に延伸するようにカバー基台21に支持される。遮断面22、第1防壁面23及び第2防壁面24に囲まれた領域は、ワーク保持装置10が収容される収容領域29である。
【0035】
第1ガイド25及び第2ガイド26は、壁部112の延伸方向に直交する方向に延伸する棒状の部材であり、ワーク保持装置10の基台部11に接合に接合されることで、カバー基台21を移動可能に支持する。第1ガイド25及び第2ガイド26は、カバー20を加工領域111の内部に案内する。
【0036】
付勢装置28は、シリンダ及びピストンを有し、カバー20を加工領域111から離隔する方向に所定の付勢力を印加する。付勢装置28のシリンダはワーク保持装置10の基台部11に接続され、付勢装置28のシリンダはカバー基台21に接続される。付勢装置28は、シリンダの内部を負圧にしてピストンをシリンダの内部に引っ張ることで、加工領域111から離隔する方向に所定の付勢力を印加する。
【0037】
図8は待機状態であるワーク搬送装置1の斜視図であり、図9は把持状態であるワーク搬送装置1の斜視図であり、図10は搬出状態であるワーク搬送装置1の斜視図である。
【0038】
待機状態では、ワーク保持装置10は、壁部112の近傍に配置されるカバー20の収容領域29に収容される。カバー20は、付勢装置28によって加工領域111から離隔する方向に所定の付勢力が印加されることで、壁部112の近傍に固定される。
【0039】
把持状態では、ワーク保持装置10は、基台部11に配置される水平駆動装置によってレールに沿って加工領域111の内部に移動する。ワーク保持装置10を移動する水平駆動装置の駆動力は、付勢装置28によってカバー20に印加される付勢力よりも大きいので、カバー20は、ワーク保持装置10と一体的に加工領域111の内部に移動する。
【0040】
把持状態では、ワーク保持装置10は、スライド部13が移動すると共にワーク把持部15がワークを把持することで、背面主軸103に保持され、加工領域111において加工されたワークWを保持する。
【0041】
搬出状態では、ワーク保持装置10は、筐体105から出て工作機械100の外部に移動して、保持するワークWを工作機械100の外部に搬出する。カバー20は、遮断面22が係止部18に係止されることで、待機状態の位置で停止し、ワーク保持装置10から分離される。
【0042】
工作機械100において、ワーク保持装置10が移動方向に移動可能な区間である保持装置移動区間は、図2及び3において双方向矢印「WL」で示される。装置移動区間WLは、図9において「WP1」で示される加工領域111の内部の位置と、図10において「WP2」で示される工作機械100の外部の位置との間である。一方、カバー20が移動方向に移動可能な区間であるカバー移動区間は、図2及び3において双方向矢印「CL」で示される。カバー移動区間CLは、図8において「CP1」で示される非加工領域113の内部の位置と、図9において「CP2」で示される加工領域111の内部の位置との間である。ワーク保持装置10が移動方向に移動可能な区間である保持装置移動区間は、カバーが移動方向に移動可能な区間であるカバー移動区間よりも長い。
【0043】
図8において「CP1」で示される非加工領域113の内部の位置と、図10において「WP2」で示される工作機械100の外部の位置との間との間は、カバー移動区間に重畳せず且つ壁部112から離隔する方向に延伸するワーク移動区間である。
【0044】
工作機械100では、ワーク保持装置10が移動方向に移動可能な区間である保持装置移動区間は、カバーが移動方向に移動可能な区間であるカバー移動区間よりも長いので、ワーク保持装置10とカバー20との間の離隔距離を長くすることができる。非加工領域113及び工作機械100の外部等の加工領域111以外の領域にワーク保持装置10を移動することで、ワークWの搬送の自由度が向上する。
【0045】
また、工作機械100では、カバー20の移動区間は、壁部112の近傍の位置と加工領域111の内部の位置との間でのみ移動するため、カバー20の移動時間及び移動距離が最小化される。
【0046】
また、工作機械100では、ワーク保持装置10は、遮断面22、第1防壁面23及び第2防壁面24に囲まれた収容領域29に収容されるので、加工領域111において切削油等により汚損されるおそれが低い。
【0047】
また、ワーク搬送装置1は、カバー移動区間に重畳せず且つ壁部112から離隔する方向に延伸するワーク移動区間を有するので、工作機械100の外部及び非加工領域113を含む広範な領域にワークを搬送することができる。
【0048】
図11(a)は第2実施形態に係るワーク搬送装置の斜視図(その1)であり、図11(b)は第2実施形態に係るワーク搬送装置の斜視図(その2)である。
【0049】
ワーク搬送装置2は、ワーク保持装置30と、カバー40とを有し、ワーク搬送装置1の代わりに工作機械100に配置され、加工されたワークWを工作機械100の外部に搬出する。
【0050】
図12は、ワーク搬送装置2の斜視図である。
【0051】
ワーク保持装置30は、凸部31と、凸部駆動部32と、センサ33と、凸部基台34とを有することがワーク保持装置10と相違する。凸部31、凸部駆動部32、センサ33及び凸部基台34以外のワーク保持装置30の構成要素の構成及び機能は、同一符号が付されたワーク保持装置10の構成要素の構成及び機能と同一なので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0052】
凸部31は、金属板を成形することで形成され、凸部駆動部32の一端に接合される。凸部駆動部32は、シリンダ及びピストンを有し、図11(b)において矢印Aで示され、遮断面22に平行で、第1防壁面23及び第2防壁面24に直交する方向に、凸部31を移動する。
【0053】
センサ33は、近接センサであり、カバー40に形成され、ワーク保持装置30とカバー40との間の位置関係を検出し、検出した位置関係を示す位置関係信号をNC装置110に出力する。具体的には、センサ33は、凸部31に係合する凹部42を検出したときに、凹部42を検出したことを示す検出信号をNC装置110に出力する。NC装置110は、検出信号が入力されたことに応じて、凸部駆動部32によって凸部31を移動して、凸部31を凹部42に係合する。凸部基台34は、平板状の部材であり、基台部11に接続され、凸部31、凸部駆動部32及びセンサ33を搭載する。
【0054】
図13(a)はカバー40の斜視図(その1)であり、図13(b)はカバー40の斜視図(その2)である。
【0055】
カバー40は、カバー基台21及び付勢装置28の代わりにカバー基台41及び凹部42を有することがカバー20と相違する。カバー基台41及び凹部42以外のカバー40の構成要素の構成及び機能は、同一符号が付されたカバー20の構成要素の構成及び機能と同一なので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0056】
カバー基台41は、カバー基台21と同様に、遮断面22、第1防壁面23、第2防壁面24、第1ガイド25及び第2ガイド26を支持する架台である。カバー40は、付勢力を印加する付勢装置28を有さないので、カバー基台41は、カバー基台21よりも剛性が低い構造にすることができる。
【0057】
凹部42は、金属板を成形することで形成され、ワーク保持装置30の凸部31に対向するようにカバー基台41に配置され、ワーク保持装置30の凸部31が凸部駆動部32によって移動されることに応じて、ワーク保持装置30の凸部31と係合する。凹部42が凸部31と係合することで、カバー基台41は、ワーク保持装置30と結合される。凸部31及び凹部42は、ワーク保持装置30をカバー40に結合する結合機構である。
【0058】
図14は待機状態であるワーク搬送装置2の斜視図であり、図15は把持状態であるワーク搬送装置2の斜視図であり、図16は搬出状態であるであるワーク搬送装置2の斜視図である。
【0059】
待機状態では、ワーク保持装置30は、壁部112の近傍に配置されるカバー40の収容領域29に収容される。カバー40は、加工領域111に移動する前に、ワーク保持装置30の凸部31がカバー40の凹部42に係合することで、ワーク保持装置30に結合される。
【0060】
把持状態では、ワーク保持装置30は、基台部11に配置される水平駆動装置によってレールに沿って加工領域111の内部に移動する。カバー20は、ワーク保持装置30の凸部31がカバー40の凹部42に係合するので、ワーク保持装置10と一体的に加工領域111の内部に移動する。
【0061】
把持状態では、ワーク保持装置30は、スライド部13が移動すると共にワーク把持部15がワークを把持することで、背面主軸103に保持され、加工領域111において加工されたワークWを保持する。
【0062】
搬出状態では、ワーク保持装置30は、筐体105から出て工作機械100の外部に移動して、保持するワークWを工作機械100の外部に搬出する。把持状態と搬出状態との間に、加工領域111から非加工領域113に移動した後に、カバー40は、待機状態に対応する位置で、ワーク保持装置30から分離される。
【0063】
ワーク搬送装置2では、カバー基台41は、付勢装置28が配置されずにカバー基台21よりも剛性が低い構造にすることで、ワーク搬送装置1が有するカバー20よりもカバー40を小型化することができる。
【0064】
また、ワーク搬送装置2では、カバー基台41は、付勢力を印加する付勢装置28を有さないので、付勢装置28に付勢力を付加する動力が省略され、ワーク搬送装置1よりも消費電力を抑制することができる。
【0065】
また、ワーク搬送装置2は、ワーク保持装置30とカバー40との間の位置関係を検出するセンサ33を有することで、凸部31と凹部42とを係合することでワーク保持装置30とカバー40とを確度高く結合することができる。
【0066】
また、ワーク搬送装置2では、簡単な構造を有する凸部31及び凹部42を係合することで、ワーク保持装置30とカバー40とを結合するので、結合機構の構造が簡素化され、製造コストが抑制される。
【0067】
ワーク搬送装置1及び2では、ワーク保持装置10及び30は、基台部11の延伸方向に直線状に移動するが、実施形態に係るワーク搬送装置では、ワーク保持装置は、屈曲する方向に移動可能であってもよい。
【0068】
また、ワーク搬送装置1及び2では、カバー20及び40は、加工領域111及び非加工領域113を移動可能であるが、実施形態に係るワーク搬送装置では、少なくとも加工領域111を移動可能であればよい。
【0069】
また、ワーク搬送装置1及び2では、カバー20及び40は、第1防壁面23及び第2防壁面24を有するが、実施形態に係るワーク搬送装置では、カバーは、遮断面22のみを有し、第1防壁面23及び第2防壁面24を有さなくてもよい。
【0070】
また、ワーク搬送装置1では、付勢装置28は、シリンダ及びピストンにより形成されるが、実施形態に係るワーク搬送装置では、付勢装置は、つるまきバネ等の弾性部材によって形成されてもよい。
【0071】
また、ワーク搬送装置2では、ワーク保持装置30は凸部31を有し、カバー40は凹部42を有するが、実施形態に係るワーク搬送装置では、ワーク保持装置は凹部42を有し、カバーは凸部31を有してもよい。
【符号の説明】
【0072】
1、2 ワーク搬送装置
10、30 ワーク保持装置
20、40 カバー
100 工作機械
102 正面主軸
103 背面主軸
111 加工領域
112 壁部
113 非加工領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16