(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013428
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】回転検出器
(51)【国際特許分類】
G01P 3/44 20060101AFI20240125BHJP
G01B 21/22 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
G01P3/44 B
G01B21/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115500
(22)【出願日】2022-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000145806
【氏名又は名称】株式会社小野測器
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(72)【発明者】
【氏名】大島 良太
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 英昭
(72)【発明者】
【氏名】長塩 拓馬
【テーマコード(参考)】
2F069
【Fターム(参考)】
2F069AA83
2F069DD26
2F069DD27
2F069GG04
2F069GG06
2F069GG41
2F069GG63
2F069HH30
2F069JJ17
2F069MM04
(57)【要約】
【課題】基準座標系に固定する必要のない回転検出器を提供する。
【解決手段】回転軸100の回転中心から見た回転軸100の回転方向の角度差が180°となるように配置した加速度センサAと加速度センサBで、回転軸100の径方向の加速度を検出する。回転軸100の回転角をθ、遠心加速度をcf、重力加速度をgfとして、加速度センサAは、cf+gf・sinθの加速度を検出し、加速度センサBはcf+gf・sin(θ+180°)=cf+gf・(-sinθ)=cf-gf・sinθを検出する。信号処理回路では、加速度センサAが検出した加速度と加速度センサBが検出した加速度を加算して、cf+gf・sinθ+cf-gf・sinθ=2cfを検出し、検出した2cfを検出信号として無線通信装置により外部の計測装置に無線送信し、計測装置は、回転中心からの距離をr、角速度をωとする、遠心加速度の方程式cf=r×ω
2により、回転軸100の角速度ωを算定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸の回転を検出する回転検出器であって、
前記回転軸に当該回転軸と共に回転するように固定されるベースと、
前記ベースが前記回転軸に固定された状態において、前記回転軸の回転中心から見た回転軸の回転方向の角度差が180°となるように前記ベースに固定された第1の加速度センサと第2の加速度センサと、
回転検出手段を有し、
前記ベースが前記回転軸に固定された状態において、前記第1の加速度センサと前記第2の加速度センサは、前記回転軸の回転中心軸が中心を通る法線となる円の径方向、かつ、相互の反対方向の加速度を検出し、
前記回転検出手段は、前記第1の加速度センサが検出した加速度を表す信号と第2の加速度センサが検出した加速度を表す信号とを加算した信号の大きさから前記回転軸の回転速度を検出することを特徴とする回転検出器。
【請求項2】
回転軸の回転を検出する回転検出器であって、
前記回転軸に当該回転軸と共に回転するように固定されるベースと、
前記ベースが前記回転軸に固定された状態において、前記回転軸の回転中心から見た回転軸の回転方向の角度差が180°となり、前記回転軸の回転中心からの距離が等しくなるように前記ベースに固定された第1の加速度センサと第2の加速度センサと、
回転検出手段を有し、
前記ベースが前記回転軸に固定された状態において、前記第1の加速度センサと前記第2の加速度センサは、前記回転軸の回転中心軸が中心を通る法線となる円の径方向、かつ、相互の反対方向の加速度を検出し、
前記回転検出手段は、前記第1の加速度センサが検出した加速度を表す信号から第2の加速度センサが検出した加速度を表す信号を減算した信号の位相から前記回転軸の回転角を検出することを特徴とする回転検出器。
【請求項3】
回転軸の回転を検出する回転検出器であって、
前記回転軸に当該回転軸と共に回転するように固定されるベースと、
前記ベースに固定された加速度センサと、
回転検出手段とを有し、
前記ベースが前記回転軸に固定された状態において、前記加速度センサは、前記回転軸の回転中心軸が中心を通る法線となる円の周方向の加速度を検出し、
前記回転検出手段は、前記加速度センサが検出した加速度を表す信号の位相から前記回転軸の回転角を検出することを特徴とする回転検出器。
【請求項4】
回転軸の回転を検出する回転検出器であって、
前記回転軸に当該回転軸と共に回転するように固定されるベースと、
前記ベースが前記回転軸に固定された状態において、前記回転軸の回転中心から見た回転軸の回転方向の角度差が180°となるように前記ベースに固定された第1の加速度センサと第2の加速度センサと、
回転検出手段とを有し、
前記ベースが前記回転軸に固定された状態において、前記第1の加速度センサと前記第2の加速度センサは、前記回転軸の回転中心軸が中心を通る法線となる円の周方向、かつ、相互の反対方向の加速度を検出し、
前記回転検出手段は、前記第1の加速度センサが検出した加速度を表す信号から第2の加速度センサが検出した加速度を表す信号を減算した信号の位相から前記回転軸の回転角を検出することを特徴とする回転検出器。
【請求項5】
回転軸の回転を検出する回転検出器であって、
前記回転軸に当該回転軸と共に回転するように固定されるベースと、
前記ベースが前記回転軸に固定された状態において、前記回転軸の回転中心から見た回転軸の回転方向の角度差が90°となるように前記ベースに固定された第1の加速度センサと第2の加速度センサと、
回転検出手段とを有し、
前記ベースが前記回転軸に固定された状態において、前記第1の加速度センサと前記第2の加速度センサは、前記回転軸の回転中心軸が中心を通る法線となる円の周方向、かつ、相互に90°方向が異なる方向の加速度を検出し、
前記回転検出手段は、前記第1の加速度センサが検出した加速度を表す信号と第2の加速度センサが検出した加速度を表す信号との逆正接を表す信号の大きさから前記回転軸の回転角を検出することを特徴とする回転検出器。
【請求項6】
回転軸の回転を検出する回転検出器であって、
前記回転軸に当該回転軸と共に回転するように固定されるベースと、
前記ベースに固定された加速度センサと、
回転検出手段とを有し、
前記ベースが前記回転軸に固定された状態において、前記加速度センサは、前記回転軸の回転中心軸が中心を通る法線となる円の径方向の加速度である第1の加速度と、前記回転軸の回転中心軸が中心を通る法線となる円の周方向の加速度である第2の加速度とを検出し、
前記回転検出手段は、前記加速度センサが検出した第1の加速度を表す信号と第2の加速度を表す信号との逆正接を表す信号の大きさから前記回転軸の回転角を検出することを特徴とする回転検出器。
【請求項7】
回転軸の回転を検出する回転検出器であって、
前記回転軸に当該回転軸と共に回転するように固定されるベースと、
前記ベースが前記回転軸に固定された状態において、前記回転軸の回転中心から見た回転軸の回転方向の角度差が180°となり、前記回転軸の回転中心からの距離が等しくなるように前記ベースに固定された第1の加速度センサと第2の加速度センサと、
回転検出手段とを有し、
前記ベースが前記回転軸に固定された状態において、前記第1の加速度センサは、前記回転軸の回転中心軸が中心を通る法線となる円の径方向の加速度である第1の加速度と、前記回転軸の回転中心軸が中心を通る法線となる円の周方向の加速度である第2の加速度とを検出し、前記第2の加速度センサは、前記回転軸の回転中心軸が中心を通る法線となる円の径方向、かつ、前記第1の加速度センサが検出する前記第1の加速度と反対方向の加速度である第3の加速度を検出し、
前記回転検出手段は、前記第1の加速度センサが検出した前記第1の加速度から前記第2の加速度センサが検出した第3の加速度を減算した信号を第1の信号、第2の加速度を表す信号を第2の信号として、振幅を一致させた前記第1の信号と前記第2の信号との逆正接を表す信号の大きさから前記回転軸の回転角を検出することを特徴とする回転検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転速度や回転角を検出する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転速度や回転角を検出する技術としては、磁石を含む回転系とホール素子を含む固定系とを備え、回転軸に回転系を固定し基準座標系に固定系を固定した状態において、回転系の磁石の磁力を、固定系のホール素子で検出することにより、回転軸の基準座標系に対する回転角を検出する回転検出器が知られている(たとえば、特許文献1)。
【0003】
また、2軸方向について加速度を検出する、静電容量型の加速度センサの技術も知られている(たとえば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013- 7671号公報
【特許文献2】特開2011- 95007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した回転検出器を検出対象の回転軸が特定されない汎用の回転検出器として適用する場合、回転速度や回転角の検出を行う回転軸を変更する度に、回転検出器の回転系を回転軸に固定すると共に、回転検出器の固定系を基準座標系の回転軸に対して定まる規定の位置に固定する煩雑な作業が必要となる。また、周辺に回転検出器の固定系の基準座標系への固定に適した構造体が存在しない回転軸については、固定のための特段の手段が別途に必要となる。
【0006】
よって、回転系を回転軸に固定するだけで、基準座標系の回転軸に対して定まる規定の位置に固定系を固定することなく、回転軸の基準座標系に対する回転速度や回転角を検出できれば、回転検出器の利便性は大きく向上する。
そこで、本発明は、基準座標系の回転軸に対して定まる規定の位置に固定しなくてはならない固定系を必要とすることなく、基準座標系に対する回転速度や回転角を検出できる回転検出器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題達成のために、本発明は、回転軸の回転を検出する回転検出器に、前記回転軸に当該回転軸と共に回転するように固定されるベースと、前記ベースが前記回転軸に固定された状態において、前記回転軸の回転中心から見た回転軸の回転方向の角度差が180°となるように前記ベースに固定された第1の加速度センサと第2の加速度センサと、回転検出手段を設けたものである。前記ベースが前記回転軸に固定された状態において、前記第1の加速度センサと前記第2の加速度センサは、前記回転軸の回転中心軸が中心を通る法線となる円の径方向、かつ、相互の反対方向の加速度を検出し、前記回転検出手段は、前記第1の加速度センサが検出した加速度を表す信号と第2の加速度センサが検出した加速度を表す信号とを加算した信号の大きさから前記回転軸の回転速度を検出する。
【0008】
また、前記課題達成のために、本発明は、回転軸の回転を検出する回転検出器に、前記回転軸に当該回転軸と共に回転するように固定されるベースと、前記ベースが前記回転軸に固定された状態において、前記回転軸の回転中心から見た回転軸の回転方向の角度差が180°となり、前記回転軸の回転中心からの距離が等しくなるように前記ベースに固定された第1の加速度センサと第2の加速度センサと、回転検出手段を設けたものである。前記ベースが前記回転軸に固定された状態において、前記第1の加速度センサと前記第2の加速度センサは、前記回転軸の回転中心軸が中心を通る法線となる円の径方向、かつ、相互の反対方向の加速度を検出し、前記回転検出手段は、前記第1の加速度センサが検出した加速度を表す信号から第2の加速度センサが検出した加速度を表す信号を減算した信号の位相から前記回転軸の回転角を検出する。
【0009】
また、前記課題達成のために、本発明は、回転軸の回転を検出する回転検出器に、前記回転軸に当該回転軸と共に回転するように固定されるベースと、前記ベースに固定された加速度センサと、回転検出手段とを備えたものである。前記ベースが前記回転軸に固定された状態において、前記加速度センサは、前記回転軸の回転中心軸が中心を通る法線となる円の周方向の加速度を検出し、前記回転検出手段は、前記加速度センサが検出した加速度を表す信号の位相から前記回転軸の回転角を検出する。
【0010】
また、前記課題達成のために、本発明は、回転軸の回転を検出する回転検出器に、前記回転軸に当該回転軸と共に回転するように固定されるベースと、前記ベースが前記回転軸に固定された状態において、前記回転軸の回転中心から見た回転軸の回転方向の角度差が180°となるように前記ベースに固定された第1の加速度センサと第2の加速度センサと、回転検出手段とを備えたものである。前記ベースが前記回転軸に固定された状態において、前記第1の加速度センサと前記第2の加速度センサは、前記回転軸の回転中心軸が中心を通る法線となる円の周方向、かつ、相互の反対方向の加速度を検出し、前記回転検出手段は、前記第1の加速度センサが検出した加速度を表す信号から第2の加速度センサが検出した加速度を表す信号を減算した信号の位相から前記回転軸の回転角を検出する。
【0011】
また、前記課題達成のために、本発明は、回転軸の回転を検出する回転検出器に、前記回転軸に当該回転軸と共に回転するように固定されるベースと、前記ベースが前記回転軸に固定された状態において、前記回転軸の回転中心から見た回転軸の回転方向の角度差が90°となるように前記ベースに固定された第1の加速度センサと第2の加速度センサと、回転検出手段とを備えたものである。前記ベースが前記回転軸に固定された状態において、前記第1の加速度センサと前記第2の加速度センサは、前記回転軸の回転中心軸が中心を通る法線となる円の周方向、かつ、相互に90°方向が異なる方向の加速度を検出し、前記回転検出手段は、前記第1の加速度センサが検出した加速度を表す信号と第2の加速度センサが検出した加速度を表す信号との逆正接を表す信号の大きさから前記回転軸の回転角を検出する
また、前記課題達成のために、本発明は、回転軸の回転を検出する回転検出器に、前記回転軸に当該回転軸と共に回転するように固定されるベースと、前記ベースに固定された加速度センサと、回転検出手段とを備えたものである。前記ベースが前記回転軸に固定された状態において、前記加速度センサは、前記回転軸の回転中心軸が中心を通る法線となる円の径方向の加速度である第1の加速度と、前記回転軸の回転中心軸が中心を通る法線となる円の周方向の加速度である第2の加速度とを検出し、前記回転検出手段は、前記加速度センサが検出した第1の加速度を表す信号と第2の加速度を表す信号との逆正接を表す信号の大きさから前記回転軸の回転角を検出する。
【0012】
また、前記課題達成のために、本発明は、回転軸の回転を検出する回転検出器に、前記回転軸に当該回転軸と共に回転するように固定されるベースと、前記ベースが前記回転軸に固定された状態において、前記回転軸の回転中心から見た回転軸の回転方向の角度差が180°となり、前記回転軸の回転中心からの距離が等しくなるように前記ベースに固定された第1の加速度センサと第2の加速度センサと、回転検出手段とを備えたものである。前記ベースが前記回転軸に固定された状態において、前記第1の加速度センサは、前記回転軸の回転中心軸が中心を通る法線となる円の径方向の加速度である第1の加速度と、前記回転軸の回転中心軸が中心を通る法線となる円の周方向の加速度である第2の加速度とを検出し、前記第2の加速度センサは、前記回転軸の回転中心軸が中心を通る法線となる円の径方向、かつ、前記第1の加速度センサが検出する前記第1の加速度と反対方向の加速度である第3の加速度を検出し、前記回転検出手段は、前記第1の加速度センサが検出した前記第1の加速度から前記第2の加速度センサが検出した第3の加速度を減算した信号を第1の信号、第2の加速度を表す信号を第2の信号として、振幅を一致させた前記第1の信号と前記第2の信号との逆正接を表す信号の大きさから前記回転軸の回転角を検出する。
【0013】
以上のような回転検出器によれば、基準座標系の回転軸に対して定まる規定の位置に固定しなくてはならない固定系を設けることなく、回転軸にベースを介して固定した加速度センサに働く遠心加速度や重力加速度を利用して基準座標系に対する回転速度や回転角を検出できる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、基準座標系の回転軸に対して定まる規定の位置に固定しなくてはならない固定系を必要とすることなく、基準座標系に対する回転速度や回転角を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1/第2実施形態に係る回転ユニットの構成を示す図である。
【
図2】本発明の第1/第2実施形態に係る加速度センサの配置と検出する加速度を示す図である。
【
図3】本発明の第3の実施形態に係る加速度センサの配置と検出する加速度を示す図である。
【
図4】本発明の第4の実施形態に係る加速度センサの配置と検出する加速度を示す図である。
【
図5】本発明の第5/第6の実施形態に係る加速度センサの配置と検出する加速度を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る回転ユニットの他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の回転検出器の実施形態について説明する。
まず、第1実施形態について説明する。
第1実施形態に係る回転検出器は、回転軸に固定して使用する回転ユニットと、回転ユニットから無線通信を介して検出信号を受信し処理する計測装置から構成される。
図1a1-a4に回転検出器の回転ユニットの構成を示す。
便宜上、図中に示すように回転ユニットの前後上下左右を定めるものとして、
図1a1は回転ユニットの上面を、
図1a2は回転ユニットの左側面を、
図1a3は回転ユニットの前面を、
図1a4は回転ユニットの斜視したようすを表す。
なお、回転ユニットの下面は上面と同様に表され、回転ユニットの右面は左面と同様に表され、回転検出器の後面は前面と同様に表される。
図示するように、回転ユニットは、上下左右方向中央に前後方向に貫通する中空を有する前後方向を高さ方向とする円柱を上下に半分に分割した上側部分の形状と下側部分の形状を、それぞれ概ね有する上部ベース1と下部ベース2とを、上から差し込んだ左側の2つのボルト3と下から差し込んだ右側の2つのボルト3で上下に連結した構造を有する。
【0017】
また、上部ベース1には加速度センサAが固定されており、下部ベース2には加速度センサBが固定されている。また、回転ユニットの上下左右方向の中心を通る前後方向の軸に対して対称となる位置に加速度センサAと加速度センサBは配置されている。
ここで、図示は省略したが、回転ユニットには、加速度センサの出力信号を処理する信号処理回路や、信号処理回路で処理した信号を外部の計測装置に検出信号として無線送信する無線通信装置や、これらに電力を供給するバッテリなども内蔵されている。
回転ユニットは、
図1b1に示すように、測定対象の回転軸100が間に位置するように分離した上部ベース1と下部ベース2を配置した上で、
図1b2-b4に示すように、上部ユニットと下部ベース2をボルト3で締結して回転軸100を挟み込むことにより、回転軸100と共に回転するように回転軸100に固定して使用する。なお、固定した状態において、加速度センサAと加速度センサBの、回転軸100の回転中心から見た回転軸100の回転方向の角度差は180°となる。また、固定した状態において、回転軸100の回転中心から加速度センサAと加速度センサBまでの距離は等しくなる
次に、加速度センサA、加速度センサBは、
図2aに示すように、回転軸100の回転中心軸が中心を通る法線となる円の径方向(図の場合は回転軸100の径方向)の加速度を検出する。また、加速度センサA、加速度センサBは、相互に反対方向の加速度を検出し、それぞれ図中に+Zで示す方向の加速度を正の加速度、+Zと反対方向の加速度を負の加速度として検出する。
【0018】
図2b1-b8に示すように、
図2b1の回転軸100の回転角θを0°/360°、図の反時計まわり方向を回転角θの正方向、遠心加速度をcf、重力加速度をgfとすると、加速度センサAは、cf+gf・sinθの加速度を検出し、加速度センサBはcf+gf・sin(θ+180°)=cf+gf・(-sinθ)=cf-gf・sinθを検出する。
【0019】
なお、
図2b1-b8において、加速度センサA、加速度センサBに付随する実線の矢印の和が、その加速度センサで検出される加速度となる。
そこで、信号処理回路では、加速度センサAが検出した加速度と加速度センサBが検出した加速度を加算して、
cf+gf・sinθ+cf-gf・sinθ=2cfを検出し、検出した2cfを検出信号として無線通信装置により外部の計測装置に無線送信する。
【0020】
検出信号を受信した計測装置は、回転中心からの距離をr、角速度をωとする、遠心加速度の方程式
cf=r×ω2
により、検出信号2cfから、回転軸100の角速度ωや、ω=2πN/60によって表される回転速度N(r/min)等を算出する。ただし、計測装置には、rとして、回転軸100の回転中心から加速度センサA、加速度センサBまでの距離を予め設定しておく。
【0021】
次に、第2実施形態について説明する。
第2実施形態に係る回転ユニットは、信号処理回路で検出する検出信号のみが第1実施形態の回転ユニットと異なる。
第2実施形態では、信号処理回路では、加速度センサAが検出した加速度から加速度センサBが検出した加速度を減算して、
cf+gf・sinθ-(cf-gf・sinθ)=2gf・sinθを検出し、検出した2gf・sinθを検出信号として無線通信装置により計測装置に無線送信する。
【0022】
そして、本第2実施形態において、検出信号を受信した計測装置は、受信した検出信号2gf・sinθの位相θを求め、回転軸100の回転角θや、回転角θの時間微分として求まる角速度ωや、ω=2πN/60によって表される回転速度N(r/min)等を算出する。
次に、第3実施形態について説明する。
第3実施形態に係る回転ユニットは、加速度センサA、加速度センサBで検出する加速度の方向と、信号処理回路で検出する検出信号のみが第1実施形態の回転ユニットと異なる。
第3実施形態に係る回転ユニットにおいて、加速度センサA、加速度センサBは、
図3aに示すように、回転軸100の回転中心軸が中心を通る法線となる円の周方向(図の場合は回転軸100の周方向)の加速度を検出する。また、加速度センサA、加速度センサBは、相互に反対方向の加速度を検出し、それぞれ図中に+Xで示す方向の加速度を正の加速度、+Xと反対方向の加速度を負の加速度として検出する。したがって、加速度センサA、加速度センサBは、遠心加速度cfの成分は検出しない。
【0023】
図3b1-b8に示すように、
図3b1の回転軸100の回転角θを0°/360°、図の反時計まわり方向を回転角θの正方向、重力加速度をgfとすると、加速度センサAは、gf・sinθの加速度を検出し、加速度センサBはgf・sin(θ+180°)=gf・(-sinθ)=-gf・sinθを検出する。
【0024】
なお、
図3b1-b8において、加速度センサA、加速度センサBに付随する実線の矢印が、その加速度センサで検出される重力加速度の成分となる。
そこで、信号処理回路では、加速度センサAが検出した加速度と加速度センサBが検出した加速度を減算して、
gf・sinθ-(-gf・sinθ)=2gf・sinθを検出し、検出した2gf・sinθを検出信号として無線通信装置により計測装置に無線送信する。
【0025】
そして、本第3実施形態において検出信号を受信した計測装置は、受信した検出信号2gf・sinθの位相θを求め、回転軸100の回転角θや、回転角θの時間微分として求まる角速度ωや、ω=2πN/60によって表される回転速度N(r/min)等を算出する。
ここで、第3実施形態においては、加速度センサA、加速度センサBの一方のみを設けても良い。
加速度センサAのみを設けた場合、信号処理回路では、加速度センサAが検出した加速度gf・sinθを検出信号として無線通信装置により計測装置に無線送信する。
また、検出信号を受信した計測装置は、受信した検出信号gf・sinθの位相θを求め、回転軸100の回転角θや、回転角θの時間微分として求まる角速度ωや、ω=2πN/60によって表される回転速度N(r/min)等を算出する。
次に、第4の実施形態について説明する。
第4実施形態に係る回転ユニットは、加速度センサA、加速度センサBの配置と、加速度センサA、加速度センサBで検出する加速度の方向と、信号処理回路で検出する検出信号のみが第1実施形態の回転ユニットと異なる。
第4実施形態に係る回転ユニットでは、加速度センサA、加速度センサBを、
図4aに示すように、加速度センサAと加速度センサBの、回転軸100の回転中心から見た回転軸100の回転方向の角度差が90°となるように配置する。
また、加速度センサA、加速度センサBは、回転軸100の回転中心軸が中心を通る法線となる円の周方向の加速度を検出する。また、加速度センサA、加速度センサBは、90°ずれた方向の加速度を検出し、それぞれ図中に+Xで示す方向の加速度を正の加速度、+Xと反対方向の加速度を負の加速度として検出する。
【0026】
図4bに示すときの回転角θを0°/360°とし、図の反時計まわり方向を回転角θの正方向とすると、加速度センサAは、gf・sinθの加速度を検出し、加速度センサBはgf・sin(θ+90°)=gf・cosθを検出する。
そこで、信号処理回路は、加速度センサAと加速度センサBで検出されたgf・sinθとgf・cosθから、逆正接atanを用いて、θ=atan(gf・sinθ/gf・cosθ)によってθを検出し、検出したθを検出信号として無線通信装置により計測装置に無線送信する。
ここで、
図4cに、加速度センサAの検出信号SAと、加速度センサBの検出信号SBと、atan(gf・sinθ/gf・cosθ)信号の、回転角θに対する信号波形を示す。
図示するように、回転角θに対してatan(gf・sinθ/gf・cosθ)は線形であり、atan(gf・sinθ/gf・cosθ)の大きさから直ちにθを求めることができる。
本第4実施形態において検出信号を受信した計測装置は、検出信号が表す回転軸100の回転角θから、回転角θの時間微分として求まる角速度ωや、ω=2πN/60によって表される回転速度N(r/min)等を算出する。
次に、第5の実施形態について説明する。
第5実施形態に係る回転検出器は、加速度センサAのみを設ける点と、加速度センサAとして2軸の加速度センサを用い、加速度センサAで回転軸100の回転中心軸が中心を通る法線となる円の径方向の加速度と、回転軸100の回転中心軸が中心を通る法線となる円の周方向の加速度との方向が90°ずれた2つの加速度のそれぞれを検出する点と、信号処理回路で検出する検出信号のみが第1実施形態の回転検出器と異なる。
【0027】
図5aに示すように、第5実施形態において、加速度センサAは、X方向の加速度については、図中に+Xで示す方向の加速度を正の加速度、+Xと反対方向の加速度を負の加速度として検出し、Z方向の加速度については、図中に+Zで示す方向の加速度を正の加速度、+Zと反対方向の加速度を負の加速度として検出する。
【0028】
図5bに示すときの回転角θを0°/360°とし、図の反時計まわり方向を回転角θの正方向とすると、遠心加速度cfが無視できるほどに小さい場合には、加速度センサAは、X方向の加速度としてgf・sinθを検出し、Z方向の加速度としてgf・cosθを検出する。
【0029】
そこで、信号処理回路は、加速度センサAで検出されたgf・sinθとgf・cosθを用いて、atan(gf・sinθ/gf・cosθ)によってθを検出し、検出したθを検出信号として無線通信装置により計測装置に無線送信する。
本第5実施形態において、検出信号を受信した計測装置は、検出信号が表す回転軸100の回転角θから、回転角θの時間微分として求まる角速度ωや、ω=2πN/60によって表される回転速度N(r/min)等を算出する。
次に、第6実施形態について説明する。
第6実施形態は、
図5cに示すように、加速度センサAと加速度センサBの、回転軸100の回転中心から見た回転軸100の回転方向の角度差が180°となるように加速度センサBを設けた点と、信号処理回路で検出する検出信号のみが第5実施形態の回転検出器と異なる。
【0030】
加速度センサBは、回転軸100の回転中心軸が中心を通る法線となる円の径方向の加速度を検出する。加速度センサBは加速度センサAが検出する径方向の加速度と反対方向の加速度を検出し、加速度センサBは、図中に+Zで示す方向の加速度を正の加速度、+Zと反対方向の加速度を負の加速度として検出する。
【0031】
遠心加速度cfが無視できない場合には、加速度センサAは、X方向の加速度としてgf・sinθを検出し、Z方向の加速度として-cf+gf・cosθを検出する。また、加速度センサBは-cf+gf・cos(θ+180°)=-cf+gf・(-cosθ)=-cf-gf・cosθを検出する。
そこで、信号処理回路は、加速度センサAで検出された-cf+gf・cosθから、加速度センサBで検出された-cf-gf・cosθを減算して、2gf・cosθを算出し、その1/2のgf・cosθを求める。そして、atan(gf・sinθ/gf・cosθ)によってθを検出し、検出したθを検出信号として無線通信装置により計測装置に無線送信する。
【0032】
本第6実施形態において、検出信号を受信した計測装置は、検出された回転軸100の回転角θから、回転角θの時間微分として求まる角速度ωや、ω=2πN/60によって表される回転速度N(r/min)等を算出する。
以上、本発明の実施形態について説明した。
このように各実施形態に係る回転検出器によれば、基準座標系の回転軸に対して定まる規定の位置に固定しなくてはならない固定系を設けることなく、回転軸に固定した回転ユニットの加速度センサに働く遠心加速度や重力加速度を利用して基準座標系に対する回転速度や回転角の少なくとも一方を検出できる。
【0033】
ここで、各加速度センサで検出した加速度を表す信号を、無線通信装置を介して計測装置に無線送信し、以上の各実施形態において信号処理回路が行った処理を、計測装置で行うようにしてもよい。また、逆に、以上の各実施形態において計測装置が行った処理を、信号処理回路で行い、処理結果を、無線通信装置を介して計測装置に無線送信してもよい。
【0034】
また、以上の各実施形態の回転ユニットには回転軸100のトルクを計測する機能を併せ持たせてもよい。
この場合には、
図6aの斜視図と
図6bの断面図に示すように、回転検出器の上部ベース1と下部ベース2を、前後方向の両端でのみ回転軸100に接するように、前後方向についての中央部を肉薄に形成し、肉薄に形成した部分の表側もしくは裏側にひずみゲージ600を固定する。また、回転ユニットに、ひずみゲージ600を用いてひずみを検出する検出回路を内蔵し、検出回路で検出された値を、無線通信装置により計測装置に無線送信し、計測装置において検出された値をトルクに変換する。
【符号の説明】
【0035】
1…上部ベース、2…下部ベース、3…ボルト、100…回転軸、600…ゲージ、A…加速度センサ、B…加速度センサ。