(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134288
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】発泡成形品の製造方法及び成形型
(51)【国際特許分類】
B29C 44/00 20060101AFI20240926BHJP
B29C 44/02 20060101ALI20240926BHJP
B29C 44/58 20060101ALI20240926BHJP
B29C 33/10 20060101ALI20240926BHJP
B29C 39/26 20060101ALI20240926BHJP
B29C 39/38 20060101ALI20240926BHJP
B29C 33/02 20060101ALI20240926BHJP
B29C 33/06 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
B29C44/00
B29C44/02
B29C44/58
B29C33/10
B29C39/26
B29C39/38
B29C33/02
B29C33/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044513
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100158067
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 基
(74)【代理人】
【識別番号】100147854
【弁理士】
【氏名又は名称】多賀 久直
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩
(72)【発明者】
【氏名】近藤 勇史
(72)【発明者】
【氏名】安井 達彦
【テーマコード(参考)】
4F202
4F204
4F214
【Fターム(参考)】
4F202AB02
4F202AG20
4F202AK04
4F202CA01
4F202CA30
4F202CB01
4F202CN01
4F202CN05
4F202CN15
4F202CN18
4F202CN27
4F202CP01
4F204AB02
4F204AG20
4F204AK04
4F204EA01
4F204EB01
4F204EF27
4F204EK13
4F204EK15
4F204EK24
4F214AB02
4F214AG20
4F214AK04
4F214UA01
4F214UA21
4F214UB01
4F214UD13
4F214UD15
4F214UD19
4F214UF04
4F214UK31
4F214UQ13
(57)【要約】
【課題】発泡成形品の製造サイクルを短縮する。
【解決手段】発泡成形品の製造方法は、キャビティを形成する成形型10の成形面22a,32a内に、発泡剤を含む未発泡の固形原料を注入する注入工程と、注入工程後に成形型10を外側から赤外線で加熱する加熱工程と、加熱工程後に成形型10を冷却する冷却工程とを備えている。また、加熱工程においては、成形型10における成形面22a,32aと反対側の型背面を、赤外線で直接加熱する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティを形成する成形型の成形面内に、発泡剤を含む未発泡の固形原料を注入する注入工程と、
前記注入工程後に前記成形型を外側から赤外線で加熱する加熱工程と、
前記加熱工程後に前記成形型を冷却する冷却工程と、を備え、
前記加熱工程では、前記成形面と反対側の型背面を前記赤外線で直接加熱する
ことを特徴とする発泡成形品の製造方法。
【請求項2】
前記冷却工程では、前記型背面にミスト及び高圧エアを吹き付けることで前記成形型を冷却する請求項1に記載の発泡成形品の製造方法。
【請求項3】
発泡剤を含む未発泡の固形原料を用いて発泡成形品を成形する成形型であって、
キャビティを形成する成形面を有する型部と、
前記型部を支持する支持部と、を備え、
前記型部には、前記成形面から前記成形面と反対側の型背面に通じる複数の通孔が設けられており、
前記支持部は、前記型背面を外部に露出させる露出開口を有する
ことを特徴とする成形型。
【請求項4】
前記型部は、第1型と第2型とを型閉じして前記キャビティを形成し、
前記第1型及び前記第2型の両方の前記型部に、前記複数の通孔が設けられている請求項3に記載の成形型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発泡成形品の製造方法及び成形型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
所定形状の発泡成形品は、例えば以下のように製造することが提案されている(例えば特許文献1)。まず、ポリオレフィン樹脂に発泡剤、架橋剤を添加混練し、得られた架橋性発泡性組成物を密閉金型Aに充填し、加圧下に加熱、整形して中間成形品を取り出す。次いで、密閉金型Aとは別の密閉金型Bに中間成形品を入れて、加圧下に加熱して発泡剤、架橋剤を分解した後に冷却して中間成形品よりも小さい発泡体を得る。更に、得られた発泡体を金型Cに入れて、加圧下に加熱して熱圧成形することで、目的とする形状の発泡成形品を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した方法は、中間成形品を得る一次工程、発泡体を得る二次工程及び発泡成形品を得る三次工程を行うことから工程が多く、また金型の加熱・冷却に時間がかかることもあり、製造サイクルが長くなる難点がある。
【0005】
本発明は、従来の技術に係る前記課題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、製造サイクルを短縮できる発泡成形品の製造方法及び成形型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る発泡成形品の製造方法の第1態様は、
キャビティを形成する成形型の成形面内に、発泡剤を含む未発泡の固形原料を注入する注入工程と、
前記注入工程後に前記成形型を外側から赤外線で加熱する加熱工程と、
前記加熱工程後に前記成形型を冷却する冷却工程と、を備え、
前記加熱工程では、前記成形面と反対側の型背面を前記赤外線で直接加熱することを要旨とする。
【0007】
本発明に係る発泡成形品の製造方法の第2態様は、前記第1態様において、
前記冷却工程では、前記型背面にミスト及び高圧エアを吹き付けることで前記成形型を冷却するようにしてもよい。
【0008】
本発明に係る成形型の第1態様は、
発泡剤を含む未発泡の固形原料を用いて発泡成形品を成形する成形型であって、
キャビティを形成する成形面を有する型部と、
前記型部を支持する支持部と、を備え、
前記型部には、前記成形面から前記成形面と反対側の型背面に通じる複数の通孔が設けられており、
前記支持部は、前記型背面を外部に露出させる露出開口を有することを要旨とする。
【0009】
本発明に係る成形型の第2態様は、前記成形型の第1態様において、
前記型部は、第1型と第2型とを型閉じして前記キャビティを形成し、
前記第1型及び前記第2型の両方の前記型部に、前記複数の通孔が設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る発泡成形品の製造方法によれば、成形型の加熱及び冷却を効率よく行うことができることから、製造サイクルを短縮できる。
本発明に係る成形型によれば、加熱及び冷却を効率よく行うことができることから、製造サイクルを短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】型開きした状態における成形型の概略斜視図である。
【
図2】型閉じした状態における成形型の概略斜視図である。
【
図3】成形型の第1型を下側から見た概略斜視図である。
【
図4】発泡成形品の製造過程のうち、固形原料を成形型に供給する工程を示す説明図である。
【
図5】発泡成形品の製造過程のうち、成形型を型閉じする工程を示す説明図である。
【
図6】発泡成形品の製造過程のうち、成形型を加熱する工程を示す説明図である。
【
図7】発泡成形品の製造過程のうち、発泡成形品が発泡膨張する工程を示す説明図である。
【
図8】
図7の成形型の一部を拡大して示す断面図である。
【
図9】発泡成形品の製造過程のうち、成形型を冷却する工程を示す説明図である。
【
図10】発泡成形品の製造過程のうち、成形型を型開きする工程を示す説明図である。
【
図11】発泡成形品の製造過程のうち、発泡成形品を脱型する工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明に係る発泡成形品の製造方法及び成形型につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。以下に説明する実施の形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。
【実施例0013】
発泡成形品50を製造する製造装置は、発泡成形品50を成形する成形型10(
図1及び
図2参照)と、成形型10を加熱する加熱手段12(
図6及び
図7参照)と、成形型10を冷却する冷却手段14(
図9参照)とを備えている。また、製造装置は、得られた発泡成形品50の成形型10からの脱型を補助する脱型補助手段16(
図10及び
図11)を備えていてもよい。発泡成形品50は、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系発泡体の型成形品である。
【0014】
図1及び
図2に示す成形型10は、発泡剤を含む未発泡の固形原料40(
図6参照)を用いて発泡成形品50を成形するものである。成形型10は、第1型20と、第1型20に対して相対的に開閉可能な第2型30とを備えている。成形型10において、型閉じした第1型20及び第2型30の間に、キャビティ10aが形成される(
図5~
図9参照)。実施例において、第1型20が凹状の第1成形面22aを有する雌型であり、第2型30が凸状の第2成形面32aを有する雄型である(
図4参照)。成形型10では、型閉じした状態において、第2型30が第1型20の上側に配置される(
図2及び
図5参照)。
【0015】
図1及び
図3に示すように、第1型20は、キャビティ10aを形成する第1成形面(成形面)22aを有する第1型部(型部)22と、第1型部22を支持する第1支持部(支持部)24とを備えている。第1型部22には、第1成形面22aから第1成形面22aと反対側の第1型背面(型背面)22bに通じる複数の第1通孔(通孔)23(
図8参照)が設けられている。第1型部22は、板状である。また、第1型部22は、第1型背面22bが第1成形面22aの凹凸に合わせて凹凸している(
図4参照)。第1支持部24は、第1型背面22bを外部に露出させる第1露出開口(露出開口)24aを有している。実施例の第1支持部24は、矩形板状の第1型部22の外縁部下面に、第1型背面22bを囲う壁状に配置されている。このように、第1支持部24が、第1型部22の第1型背面22b側の外周を支持している。なお、第1支持部24の下端が、下側へ突出する凸形状の第1型背面22bよりも下側に位置している。第1露出開口24aは、第1支持部24に囲われて形成される。第1露出開口24aは、第1型背面22bの下側において第1型背面22bと重なる位置に配置され、第1露出開口24aにより、第1型背面22bの下側が開放されている。このように、第1型20において、第1型背面22bの下側がチャンバーなどで塞がれていない。
【0016】
図1~
図3に示すように、第1型20は、送気部26を備えている。送気部26は、第1支持部24に設けられている。送気部26は、第1支持部24から外側へ突出する筒状部材であり、第1支持部24の内外に通じており、脱型補助手段16との接続が可能になっている(
図10及び
図11参照)。そのため、脱型補助手段16は、送気部26を介して、第1型20における第1型部22及び第1支持部24に囲まれる空間に空気を送り込むことができる。
【0017】
図1及び
図2に示すように、第2型30は、キャビティ10aを形成する第2成形面(成形面)32aを有する第2型部(型部)32と、第2型部32を支持する第2支持部(支持部)34とを備えている。第2型部32には、第2成形面32aから第2成形面32aと反対側の第2型背面(型背面)32bに通じる複数の第2通孔33(
図8参照)が設けられている。第2型部32は、板状である。また、第2型部32は、第2型背面32bが第2成形面32aの凹凸に合わせて凹凸している(
図4参照)。第2支持部34は、第2型背面32bを外部に露出させる第2露出開口(露出開口)34aを有している。実施例の第2支持部34は、矩形板状の第2型部32の外縁部上面に、第2型背面32bを囲う壁状に配置されている。このように、第2支持部34が、第2型部32の第2型背面32b側の外周を支持している。第2露出開口34aは、第2支持部34に囲われて形成される。第2露出開口34aは、第2型背面32bの上側において第2型背面32bと重なる位置に配置され、第2露出開口34aにより、第2型背面32bの上側が開放されている。このように、第2型30において、第2型背面32bの上側がチャンバーなどで塞がれていない。
【0018】
図1~
図3に示すように、成形型10は、成形型10を浮かせた状態で設置する際に用いる取付部28を備えている。取付部28は、第1型20に設けられている。実施例の取付部28は、L字状の板形部材である。L字状の板形部材のうち一方の板状部は、第1支持部24の側面に溶接等により固定されており、これにより取付部28が第1支持部24に固定される。取付部28は、第1露出開口24aを挟む第1支持部24の両方の側面に設けられている。また、L字状の板形部材のうち他方の板状部は、第1支持部24の側面から外側へ突出している。取付部28が、製造装置の設置部42(
図6~
図7及び
図9参照)により支持されることで、成形型10の第1露出開口24a及び第2露出開口34aを開放した状態で、成形型10が設置される。
【0019】
第1型部22及び第2型部32は、金属製であるとよく、特にニッケル製であることが好ましい。第1型部22及び第2型部32は、熱伝導性に優れたアルミニウム製であってもよいが、ニッケル製であると、良好な熱伝導性及び適度な強度を有していることから好ましい。
【0020】
第1型部22及び第2型部32の板厚は、特に限定するものではないが、3.0mm~5.0mm程度にすることが好ましい。第1型部22及び第2型部32の板厚が前記範囲であると、第1型背面22b及び第2型背面32bを外側から加熱した際に、第1成形面22a及び第2成形面32aに熱が伝わり易くなる。また、第1型背面22b及び第2型背面32bを外側から冷却した際に、キャビティ10aの熱を外に逃がし易くなる。
【0021】
第1型部22及び第2型部32は、切削加工品であってもよいが、電気鋳造品であることが好ましい。第1型部22及び第2型部32が電気鋳造品であると、板状の第1型部22及び第2型部32を薄く形成することができる。
【0022】
第1型部22及び第2型部32における通孔23,33の直径は、特に限定するものではないが、0.1mm~0.3mm程度に設定することが好ましく、前記範囲にすることで、通孔23,33の痕跡が発泡成形品50に残ることを抑制できる。第1型部22の第1通孔23と第2型部32の第2通孔33とは、直径が同じであっても、直径が異なっていてもよい。第1型部22及び第2型部32において、隣り合う通孔23,33の間隔は、特に限定するものではない。第1型部22における隣り合う第1通孔23の間隔と第2型部32における隣り合う第2通孔33の間隔とが、同じであっても、異なっていてもよい。通孔23,33の形成方法は、例えば第1型部22及び第2型部32が電気鋳造品である場合には、第1型部22及び第2型部32の鋳造時に消失中子を用いて形成したり、第1型部22及び第2型部32を多孔質電気鋳造型で形成したりするなどが挙げられる。
【0023】
第1支持部24及び第2支持部34は、第1型部22及び第2型部32と同じ材料であってもよいが、実施例の第1支持部24及び第2支持部34は、第1型部22及び第2型部32と異なる材料である。例えば、第1支持部24及び第2支持部34を、第1型部22及び第2型部32よりも熱伝導率が低い材料にしたり、第1型部22及び第2型部32よりも赤外線で加熱され難い材料にしたり、第1型部22及び第2型部32よりも強度が高い材料にしたりするなど、適宜材料が選択される。
【0024】
次に、前述した成形型10を用いた発泡成形品50の製造方法について説明する。実施例の製造方法は、キャビティ10aを形成する成形型10の成形面22a,32a内に、発泡剤を含む未発泡の固形原料40を注入する注入工程と、注入工程後に成形型10を外側から赤外線で加熱する加熱工程と、加熱工程後に成形型10を冷却する冷却工程と、冷却工程後に成形型10から発泡成形品50を脱型する脱型工程とを備えている。
【0025】
図4に示すように、注入工程において、第1型20と第2型30とを型開きして、粒状又はペレット状の固形原料40を第1型20における第1型部22の第1成形面22aに供給する。ここで、固形原料40の供給量は、キャビティ10aの容積よりも小さく設定される。本開示の製造方法では、発泡ビーズ成形のように発泡ビーズをキャビティ10aに密に充填するのではなく、固形原料40の発泡膨張によって発泡体をキャビティ10aに充填する飢餓発泡とも呼ばれる方法を採用している。本開示の注入工程は、固形原料40を圧力をかけてキャビティ10aに供給したり、キャビティ10aに供給した固形原料40を圧縮しつつ成形型10を型閉じしたりするなどを要さない。このように、固形原料40を第1成形面22aに入れるだけでよいので、注入工程の効率を向上でき、固形原料40の供給に関する設備を簡易にできる。そして、
図5に示すように、固形原料40を供給した後、成形型10を型閉じする。固形原料40は、樹脂組成物を含んでいる。樹脂組成物としては、特に制限されるものではないが、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂、又はポリエステル系エラストマー(TPEE)等が挙げられる。固形原料40は、粒状やペレット状に限らず、シート状などの形状であってもよい。
【0026】
固形原料40は、発泡剤を含んでいる。発泡剤は、加熱により分解してガスを発生する熱分解型のものが好適に用いられ、特に制限されるものではない。例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、ジアゾアミノベンゼン、ベンゼンスルホニルヒドラジド、ベンゼン-1,3-スルホニルヒドラジド、ジフェニルオキシド-4,4’-ジスルフォニルヒドラジド、4,4’-オキシビスベンゼンスルフォニルヒドラジド、パラトルエンスルフォニルヒドラジド、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N’-ジニトロソ-N,N’-ジメチルフタルアミド、テレフタルアジド、p-t-ブチルベンズアジド、重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム等の一種又は二種以上が用いられる。特にアゾジカルボンアミド、4,4’-オキシビスベンゼンスルフォニルヒドラジドが好適である。
【0027】
固形原料40は、固形原料40に含まれる樹脂組成物の少なくとも一部が電子線架橋されたものであってもよい。電子線架橋は、固形原料40に電子線を照射することで、固形原料40に含まれる樹脂組成物を分子間結合させた架橋構造である。このような電子線架橋は、注入工程の前に行われる。
【0028】
固形原料40は、化学架橋剤を含んでいてもよい。化学架橋剤は、加熱により固形原料40に含まれる樹脂組成物を架橋するものである。化学架橋剤としては、特に制限されるものではないが、例えば、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス-ターシャリーブチルパーオキシヘキサン、1,3-ビス-ターシャリーパーオキシ-イソプロピルベンゼンなどの有機過酸化物等を挙げることができる。
【0029】
図6及び
図7に示すように、加熱工程において、成形型10は、取付部28が設置部42により支持されることで、第1露出開口24a及び第2露出開口34aを塞がないように浮かせた状態で設置される。加熱工程において、第1型20の下側に設置された加熱手段12から赤外線を照射して、第1型部22を加熱する。ここで、下側の加熱手段12は、第1露出開口24aの下側において第1露出開口24aと重なる位置に配置されており、第1露出開口24aを介して第1型背面22bに赤外線を照射している。このように、加熱工程では、第1型部22における第1成形面22aと反対側の第1型背面22bを赤外線で直接加熱している。同様に、加熱工程において、第2型30の上側に設置された加熱手段12から赤外線を照射して、第2型部32を加熱する。ここで、上側の加熱手段12は、第2露出開口34aの上側において第2露出開口34aと重なる位置に配置されており、第2露出開口34aを介して第2型背面32bに赤外線を照射している。このように、加熱工程では、第2型部32における第2成形面32aと反対側の第2型背面32bを赤外線で直接加熱している。
【0030】
加熱手段12では、赤外線(
図6及び
図7の波線矢印参照)を照射可能なものが用いられ、例えば赤外線ヒーターなどが挙げられる。赤外線は、遠赤外線よりも近赤外線又は中赤外線の方が、第1型部22及び第2型部32の加熱効率がよいことから好ましい。また、近赤外線よりも中赤外線の方が、第1型部22及び第2型部32の加熱効率と第1型部22及び第2型部32への負荷軽減とのバランスがよいことから好ましい。近赤外線の波長は、おおよそ0.75μm以上2.5μm未満の範囲であり、中赤外線の波長は、おおよそ2.5μm以上4μm以下の範囲であり、遠赤外線の波長は、おおよそ4μmより大きく1000μm以下の範囲である。
【0031】
加熱工程において、第1型部22及び第2型部32が加熱されることで、固形原料40が溶融すると共に発泡剤の分解で発生するガスにより溶融した樹脂組成物が発泡膨張して発泡体となる。また、固形原料40に化学架橋剤を含んでいる場合、樹脂組成物が架橋されて架橋構造となる。そして、キャビティ10a内の空気や発泡剤のガスなどの余分な気体が、樹脂組成物の発泡膨張に伴って、第1型部22及び第2型部32に設けられた通孔23,33を通って、キャビティ10a外に排出される(
図7及び
図8の直線矢印参照)。このように、加熱工程において、複数の通孔23,33を通じて余分な気体がキャビティ10aから抜けるので、得られる発泡成形品50に欠肉などの成形不良が生じることを回避できる。特に、第1型部22及び第2型部32の両方に通孔23,33があるので、余分な気体をキャビティ10aから円滑に排出できる。そして、キャビティ10a内に発泡成形品50が成形される。
【0032】
図9に示すように、冷却工程において、成形型10は、取付部28が設置部42により支持されることで、第1露出開口24a及び第2露出開口34aを塞がないように浮かせた状態で設置される。冷却工程では、型背面22b,32bにミスト及び高圧エアを吹き付けることで成形型10を冷却している。より具体的には、冷却工程において、第1型20の下側に設置されたミスト噴射機14aからミストを噴射すると共にエア噴射機14bから高圧エアを噴射して、第1型部22を冷却する。ここで、下側の冷却手段14(14a,14b)は、第1露出開口24aの下側において第1露出開口24aと重なる位置に配置されて、第1露出開口24aから第1型背面22bにミスト及び高圧エアを噴射している。このように、冷却工程では、第1型部22における第1成形面22aと反対側の第1型背面22bをミスト及び高圧エアで直接冷却している。同様に、冷却工程において、第2型30の上側に設置されたミスト噴射機14aからミストを噴射すると共にエア噴射機14bから高圧エアを噴射して、第2型部32を冷却する。ここで、上側の冷却手段14(14a,14b)は、第2露出開口34aの上側において第2露出開口34aと重なる位置に配置されて、第2露出開口34aから第2型背面32bにミスト及び高圧エアを噴射している。このように、冷却工程では、第2型部32における第2成形面32aと反対側の第2型背面32bをミスト及び高圧エアで直接冷却している。なお、ミストは、微小な水滴を霧状に噴射したものをいう。また、高圧エアは、1.2MPa以上の圧力の空気をいう。冷却工程において、ミストと併せて高圧エアを吹き付けることで冷却効率を向上させることができる。なお、ミストのみを吹き付けた場合、ライデンフロスト現象により冷却効率を向上させることができない。
【0033】
図10及び
図11に示すように、脱型工程において、第1型20及び第2型30を型開きする。第1型20を、閉塞部44により第1露出開口24aが塞がれた状態で設置する。また、コンプレッサー等の脱型補助手段16と送気部26とを接続する。そして、空気を、脱型補助手段16から、第1型部22、第1支持部24及び閉塞部44で密閉された空間に吹き込むことで、第1型部22における複数の第1通孔23を通って、第1成形面22a側に空気が吹き出す。これにより、第1成形面22aに付着していた発泡成形品50が第1成形面22aから剥離することから、第1型20から発泡成形品50が取り出し易くなる。
【0034】
前述した第1型20の第1支持部24が、第1型背面22bを外部に露出させる第1露出開口24aを有していることから、第1露出開口24aを介して第1型背面22bに赤外線を直接照射することができる。同様に、第2型30の第2支持部34が、第2型背面32bを外部に露出させる第2露出開口34aを有していることから、第2露出開口34aを介して第2型背面32bに赤外線を直接照射することができる。このように成形型10の第1型部22及び第2型部32を効率よく加熱して、加熱工程を短縮することができる。例えば、第1型部22及び第2型部32を170℃~180℃程度に加熱するまで非常に早くなることから、加熱工程を10分程度まで短縮することができる。
【0035】
前述した成形型10によれば、第1露出開口24aを介して第1型背面22bを直接冷却できると共に、第2露出開口34aを介して第2型背面32bを直接冷却できる。このように成形型10の第1型部22及び第2型部32を効率よく冷却して、冷却工程を短縮することができる。冷却工程において、第1型背面22b及び第2型背面32bにミスト及び高圧エアを吹き付けて冷却すると、ライデンフロスト現象の発生を抑制しつつ、第1型背面22b及び第2型背面32bに付着したミストが蒸発する際に効率よく熱を奪うことから冷却効率がよい。例えば、170℃~180℃の第1型部22及び第2型部32を50℃程度に冷却するまでが非常に早くなることから、冷却工程を1分程度まで短縮することができる。
【0036】
前述した製造方法によれば、発泡や架橋させるための加熱、発泡膨張した樹脂組成物の成形及び冷却の各段階を、同じ成形型10で行うことができる。しかも、成形型10における加熱及び冷却を効率よく行うことができる。このように、前述した成形型10及び製造方法によれば、発泡成形品50の製造サイクルを大きく短縮することができる。また、成形型10によれば、固形原料40をキャビティ10aに注入する際にキャビティ10aの内外で圧力差を設ける必要がなく、加熱工程において蒸気などの加熱媒体を型部22,32における型背面22b,32bの外側に充填することもなく、冷却工程において水などの冷却媒体を型部22,32における型背面22b,32bの外側に充填することもない。このため、型部22,32における型背面22b,32bの外側に、チャンバー等の区画された閉塞空間を設ける必要がなく、製造装置を簡略にできる。
【0037】
本開示には、以下の事項が含まれている。
複数の通孔を有する成形型のキャビティに、電子線架橋をし、かつ発泡剤を含む未発泡の固形原料を入れて、加熱することで前記固形原料を発泡させることを特徴とする発泡成形品の製造方法。
【0038】
本開示には、以下の事項が含まれている。
複数の通孔を有する成形型のキャビティに、発泡剤及び化学架橋剤を含む未発泡の固形原料を入れて、加熱することで前記固形原料を発泡させることを特徴とする発泡成形品の製造方法。
【0039】
本開示には、以下の事項が含まれている。
複数の通孔を有する成形型のキャビティに、発泡剤を含む未発泡のポリオレフィン系固形原料を入れて、加熱することで前記ポリオレフィン系固形原料を発泡させることを特徴とする発泡成形品の製造方法。